(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143710
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】カメラ駆動装置の制御装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G03B 17/56 20210101AFI20220926BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20220926BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G03B17/56 B
G03B15/00 P
H04N5/232 990
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044374
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】内海 信之介
【テーマコード(参考)】
2H105
5C122
【Fターム(参考)】
2H105AA06
2H105AA12
2H105AA14
5C122EA42
5C122EA63
5C122EA66
5C122FE02
5C122GD04
5C122GD06
5C122GE04
5C122GE11
5C122HA82
5C122HB05
5C122HB06
(57)【要約】
【課題】本発明は、ズーム比に関わらず、パン・チルト動作による画面の自然さを得ることである。
【解決手段】本発明は、操作部材(2)からのパン・チルト駆動指令(11)に基づいて、カメラ駆動装置のパン・チルトモータ(M1,M2)を駆動し、前記パン・チルトモータ(M1,M2)を駆動する駆動速度は、ズームレンズ(7a)のズーム比(Z)に応じて変化するようにしたカメラ駆動装置の制御装置において、前記ズームレンズ(7a)の前記ズーム比(Z)に応じて、前記駆動速度の駆動加速度(α)の最大値(MAX)に重み付けを設けるカメラ駆動装置の制御装置及び方法である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材(2)からのパン・チルト駆動指令(11)に基づいて、ズームレンズ(7a)を有するカメラ駆動装置(1A)のパン・チルトモータ(M1,M2)を駆動し、前記パン・チルトモータ(M1,M2)を駆動する駆動速度は、前記ズームレンズ(7a)のズーム比(Z)に応じて変化するようにしたカメラ駆動装置の制御装置において、
前記ズームレンズ(7a)の前記ズーム比(Z)に応じて、前記駆動速度の駆動加速度(α)の最大値(MAX)に重み付けを設けるように構成したことを特徴とするカメラ駆動装置の制御装置。
【請求項2】
前記ズーム比(Z)が所定レベルより大である時、前記駆動加速度(α)の最大値(MAX)を抑えることにより、前記駆動速度を抑える構成としたことを特徴とする請求項1記載のカメラ駆動装置の制御装置。
【請求項3】
操作部材(2)からのパン・チルト駆動指令(11)に基づいて、ズームレンズ(7a)を有するカメラ駆動装置(1A)のパン・チルトモータ(M1,M2)を駆動し、前記パン・チルトモータ(M1,M2)を駆動する駆動速度は、前記ズームレンズ(7a)のズーム比(Z)に応じて変化するようにしたカメラ駆動装置の制御方法において、
前記ズームレンズ(7a)の前記ズーム比(Z)に応じて、前記駆動速度の駆動加速度(α)の最大値(MAX)に重み付けを設けるようにしたことを特徴とするカメラ駆動装置の制御方法。
【請求項4】
前記ズーム比(Z)が所定レベルより大である時、前記駆動加速度(α)の最大値(MAX)を抑えることにより、前記駆動速度を抑えることを特徴とする請求項3記載のカメラ駆動装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ駆動装置の制御装置及び方法に関し、特に、パン・チルトモータの駆動加速度の最大値を、ズーム比に応じて変化させ、パン・チルトモータの動作をズーム比に関わらず滑らかにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、主として放送局等で用いるカメラ駆動装置としては、例えば、特許文献1、2、3の構成を挙げることができる。
特許文献1の「カメラ制御装置及びカメラ制御方法」においては、固定カメラの表示ソフトウェアに関するものである。
特許文献2の「撮像カメラの移動速度制御装置およびズーム比可変速度制御装置」においては、撮像カメラを撮影方向に対して移動する際の速度を制御する構成である。
特許文献3の「カメラズームレンズ自動変倍装置」においては、カメラレンズのズーム制御を行う構成である。
【0003】
前述の特許文献1-3は、何れも本願のカメラ駆動装置の制御装置及び方法とは、殆んど関係しない内容であるが、過去から現代までにおいては、種々なズーム機構が開発されている。
すなわち、
図7に示されるものは、その構成を示すための特許文献名等を開示していないが、カメラ駆動装置1Aの一部をなすオペレーションパネル等からなると共にジョイスティックからなるパン・チルト操作レバー1とズーム操作レバー1Bを有する操作部材2であり、この操作部材2から出力されるカメラ姿勢制御用としての制御信号3は、基台4上に設けられているチルト軸方向用モータM1又はパン軸方向用モータM2又はその両方及びズームレンズ7aのズーム比Zを変えるためのズーム操作レバー1Bが接続されたズームレンズ駆動モータ7bに供給されるように構成されている。
【0004】
前記パン軸方向用モータM2は、パン軸方向P、すなわち、旋回用モータであり、前記基台4上には、前記パン軸方向用モータM2を介して一対のカメラ支持部5、5が前記基台4に対して垂直状に設けられている。
前記各カメラ支持部5、5間には、カメラ6が設けられ、日差し7Aを備えたカメラ部7が、軸支部8によってチルト軸方向Tに沿って往復回動できるように設けられている。
【0005】
一般的に、このようなカメラ駆動装置1Aに搭載されるカメラ部7のズームレンズ7aは、前記操作部材2からそのズーム比Zを変更できるように構成されている。また、このズームレンズ7aのズーム比Zを変えるためのズームレンズ駆動モータ7bには、所定の駆動速度が与えられている。
従って、例えば、カメラ駆動装置1Aの前記ズームレンズ駆動モータ7bの駆動速度及び駆動加速度の最大値MAXを一定にしてしまうと、ズーム比Zによって映像から感じる動き出し及び停止時の印象は、
図8の(A)、(B)で示されるように動きが違うため、異なったものになっている。
すなわち、
図8の(A)では、ズーム比Zが大であるため、速く移動して映像が見にくくなる。また、
図8の(B)では、ズーム比Zが小であるため、移動が遅くなり、映像が見にくい状態となっていた。
【0006】
そこで、ズーム比Zに拘わらず、映像変化を同じように変化させるために、前記ズームレンズ駆動モータ7bの駆動速度に対して、ズーム比Zに応じた重み付けをすることが、従来、一般的に行われている。
図9は操作部材2のパン・チルト操作レバー1の動作を示すもので、
図10の(A)はパン・チルト操作レバー1の倒し量と前記駆動速度との関係を示し、ほぼ直線的に変化していることが明らかである。
また、
図10の(B)は、ズーム比Zと重み付け係数Kとの関係を示し、(B)図における+側曲線C1及び-側曲線C2は、重み付け係数Kの大きさを示しており、(B)図の特性を(A)図に掛け合わせることにより、所要の重み付けのある駆動速度とすることができる。
尚、前述の
図10の各曲線C1、C2は、例えば、用途や客先からの要求で自在に調整することができる。
【0007】
また、前述のような手法は、周知のように、ズームレートコントロール又はレートズームコントロールと呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014-007662号公報
【特許文献2】特開平11-275434号公報
【特許文献3】特開平03-132611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のカメラ駆動装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の各特許文献1-3、並びに
図7、
図8及び
図9で示された各構成においては、ズーム比Zに応じて駆動速度を変化させているのみであるため、
図11のように、駆動加速度の最大値は常に一定値であった。そのため、動き出し、停止時等において、駆動速度が変化する場面では、ズーム比Zによってパン・チルト操作レバー1による映像上の操作感が変わってしまうことになっていた。
従って、
図7のように、操作部材2のパン・チルト操作レバー1の動きと映像の変化具合とが、自然でかつ滑らかな動きとはならず、テレビ等を見ている視聴者の人達も、ズームアップ、ズームダウンの多いスポーツやドラマを見ていると、ズームアップしている時はカメラ旋回による映像の変化が急であり、ズームダウンしている時は映像の変化がゆっくりとなることで、抵抗感を意識することになっていた。
【0010】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、パン・チルトモータの駆動加速度の最大値をズーム比に応じて変化させ、パン・チルトモータの動作をズーム比に関わらず滑らかな撮像ができるようにしたカメラ駆動装置の制御装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるカメラ駆動装置の制御装置は、操作部材からの駆動指令に基づいて、カメラ駆動装置のパン・チルトモータを駆動し、前記パン・チルトモータを駆動する駆動速度は、前記ズームレンズのズーム比に応じて変化するようにしたカメラ駆動装置の制御装置において、前記ズームレンズの前記ズーム比に応じて、前記駆動速度の駆動加速度の最大値に重み付けを設けるようにした構成であり、また、前記ズーム比が所定レベルより大である時、前記駆動加速度の最大値を抑えることにより、前記駆動速度を抑える構成である。
また、本発明によるカメラ駆動装置の制御方法は、操作部材からの指令に基づいて、カメラ駆動装置のパン・チルトモータを駆動し、前記パン・チルトモータを駆動する駆動速度は、前記ズームレンズのズーム比に応じて変化するようにしたカメラ駆動装置の制御方法において、前記ズームレンズの前記ズーム比に応じて、前記駆動速度の駆動加速度の最大値に重み付けを設けるようにした方法であり、また、前記ズーム比が所定レベルより大である時、前記駆動加速度を抑えることにより、前記駆動速度を抑える方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるカメラ駆動装置の制御装置及び方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、操作部材からの駆動指令に基づいて、カメラ駆動装置のパン・チルトモータを駆動し、前記パン・チルトモータを駆動する駆動速度は、前記ズームレンズのズーム比に応じて変化するようにしたカメラ駆動装置の制御装置において、前記ズームレンズの前記ズーム比に応じて、前記駆動速度の駆動加速度の最大値に重み付けを設ける構成及び方法により、ズーム比の全域で駆動加速度の最大値を変化させ、ズーム比の全域で滑らかな操作部材の操作による滑らかな映像変化を得ることができる。
また、前記ズーム比が所定レベルより大である時、前記駆動加速度の最大値を抑えることにより、前記駆動速度を抑えることができ、例えば、カメラ駆動装置によって、番組内容による最適なズームアップ映像を撮像でき、見やすい映像からなる番組を製作することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態によるカメラ駆動装置を示す正面図である。
【
図4】本発明によるカメラ駆動装置の内部構造及び操作部材を示すブロック図である。
【
図5】本発明による駆動加速度の最大値をズーム比に応じて重み付けを行う状態を示す特性図である。
【
図6】ズーム比に対する駆動加速度の最大値の設定を示す特性図である。
【
図7】従来及び本発明に用いているカメラ駆動装置に操作部材を接続した状態を示す構成図である。
【
図8】
図7のカメラ駆動装置を用いて撮像する場合を示す構成図である。
【
図9】
図7のパン・チルト操作レバーを有する操作部材を示す正面図である。
【
図10】従来のパン・チルト操作レバーの重み付けを示す特性図である。
【
図11】従来及び現在において用いられているズーム比に対する駆動加速度の最大値が常に一定であることを示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によるカメラ駆動装置の制御装置及び方法は、カメラレンズのズーム比に応じて駆動加速度の最大値に重み付けを設け、ズーム比の全域で滑らかに操作でき、かつ、滑らかな撮像ができ、カメラ旋回時の映像変化を滑らかとすることである。
【実施例0015】
以下、図面と共に本発明によるカメラ駆動装置の制御装置及び方法について説明する。
尚、従来構成と同一又は同等部分については、同一符号を付して説明する。
図1において、符号1Aで示されるものは、カメラ駆動装置であり、このカメラ駆動装置1Aの基台4内には、パン軸方向用モータM2が設けられている。
前記基台4には旋回機能が設けられており、この基台4上には、一対のカメラ支持部5、5が対抗配置されている。
前記各カメラ支持部5、5の間には、大から小までのズーム比Zを有するズームレンズ7aを有するカメラ6を備えた長手形状のカメラ部7が軸支部8を介してチルト軸方向Tに沿って往復回動できるように設けられている。
【0016】
前記各カメラ支持部5、5の一方には、チルト軸方向用モータM1が設けられ、このチルト軸方向用モータM1の回転動作により、直結又はギヤダウン構成を介して、前記カメラ6がチルト軸方向Tに沿って上下方向に往復回動するように構成されている。
【0017】
従って、パン・チルト操作レバー1によって、前記各モータM1、M2の動作を組み合わせることにより、前記カメラ6は、チルト軸方向Tとパン軸方向Pとを組み合わせた任意の方向の撮像をすることができるように構成されている。
【0018】
前記カメラ駆動装置1Aと、例えば、オペレーションパネルからなる前記操作部材2とを用いて、前記カメラ6のパン軸方向P及びチルト軸方向Tの動作を行う内部構成について
図4と共に述べる。
前記操作部材2はカメラ駆動装置1Aの第1コネクタCN1に接続され、操作部材2からのパン・チルト駆動指令11は、制御基板12に入力される。このカメラ駆動装置1Aの第2コネクタCN2には、電源AC100Vが入力され、ノイズフィルタF及びAC/DC電源を介してパワーアンプ基板24に前記電源AC100Vが入力されている。
【0019】
前記操作部材2からのカメラ・レンズ駆動指令21は、前記カメラ駆動装置1Aの第3コネクタCN3を経て前記制御基板12に入力され、前記各モータM1、M2に入力される。また、操作部材2からのカメラ・レンズ駆動指令21は第3コネクタCN3を介して制御基板12に入力されている。
【0020】
前記制御基板12からの制御信号23は、パワーアンプ基板24を経て、パン軸用駆動装置25及びチルト軸用駆動装置26に入力されている。
前記パワーアンプ基板24によって増幅された前記制御信号23は、前記パン軸用駆動装置25のブレーキ28及びパン軸方向用モータM2に供給されている。
また、前記制御信号23は、前記チルト軸用駆動装置26のブレーキ29及びチルト軸方向用モータM1に供給されている。
【0021】
前記各駆動装置25、26は、カメラ駆動装置部27を構成し、前記各モータM1、M2はエンコーダEを有し、そのエンコーダ出力E1、E2は前記制御基板12に入力されている。また、前記各モータM1、M2には角度センサ30、31が設けられており、角度センサ30、31からの出力は前記制御基板12に入力されている。
【0022】
前述の構成において、前記カメラ6のズームレンズ7aによって、図示しない被写体Hを撮像している時に、前記操作部材2のパネル又はパン・チルト操作レバー(ジョイスティック)1を左右傾動及び回転の組み合わせによって操作すると、前記各駆動装置25、26を介して前記カメラ6のパン及びチルト動作が行われ、ズームレンズ7aが前記カメラ・レンズ駆動指令21の指示に従って、前記被写体Hを自在に撮像することができる。
【0023】
ここで、従来においては、各モータM1、M2にカメラ・レンズ駆動指令21を供給すると、各モータM1、M2の駆動速度はズーム比Zに応じて変化するが、前記駆動速度の駆動加速度αの最大値MAXは変化させることなく、
図11で示されるように、一定のままで駆動するため、ズーム比Zの変化に拘わらず、前記駆動加速度αの最大値MAXは、水平線状となっていた。
【0024】
しかしながら、本発明の構成によれば、前記駆動加速度αの最大値MAXを
図11で示す直線状から
図6で示すように、ズーム比Zに対して駆動加速度αの最大値MAXが曲線状に変化(最大値MAXをズーム比Zに応じて重み付けを任意に行う)するように予め設定調整する。
前記曲線状の形状は、用途や客先からの要求で操作部材2により自在に調整することができる。
尚、前述の最大値MAXは、
図7の操作部材2内における図示しないメモリ内に予めデジタル設定して格納することができ、用途や客先からの要求でズーム操作レバー1Bにより自在に設定することができる。
【0025】
尚、
図6の最大値MAXを曲線状に変化するように設定する裏付けとしては、
図5の(A)で示されるように、
図7の操作部材2のパン・チルト操作レバー(ジョイスティック)1の倒し量と前記ズームレンズ駆動モータ7bの直線状特性に対して、
図5の(B)で示されるように、予め設定されたズーム比Zに対する重み付け係数Kを掛け合わせることにより、例えば、ズーム比Zが所定レベルより大きい場合には、駆動加速度αを抑えることで駆動速度がゆっくり変化するように制御し、ズーム比Zに拘わらず、パン・チルト操作レバー1の滑らかな操作感を実現することができる。尚、“駆動加速度”はパン・チルトモータのM1、M2の加速度であり、そのため、ズーム比Zに関わらず、パン・チルト動作による自然な画面変化が得られる。
本発明によるカメラ駆動装置の制御装置及び方法は、パン・チルトモータの駆動速度の駆動加速度の最大値に重み付けを設けることにより、画面を撮る方も見る方も見やすくなる。