(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143716
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】受信装置、受信方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/08 20060101AFI20220926BHJP
H01Q 3/24 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H04B7/08 800
H01Q3/24
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044386
(22)【出願日】2021-03-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省、「電波資源拡大のための研究開発」における「5.7GHz帯における高効率周波数利用技術の研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】314012087
【氏名又は名称】株式会社光電製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】矢島 武
(72)【発明者】
【氏名】茂木 智広
(72)【発明者】
【氏名】満井 勉
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA10
5J021DB04
5J021EA04
5J021FA13
5J021FA17
5J021FA29
5J021FA30
5J021FA31
5J021GA02
5J021HA08
(57)【要約】
【課題】耐久性が高く簡易な構成で、空間を移動する送信装置に、指向性のある受信アンテナを高速に追従させる。
【解決手段】空間を移動する送信装置の位置変化に応じ、互いに異なる方向に指向性を持つ複数個の受信アンテナのうち送信装置の方向に指向性を持つ受信アンテナに切り替える切り替え処理を実行し、切り替えた受信アンテナで送信装置から送信された無線信号を受信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を移動する送信装置の位置変化に応じ、互いに異なる方向に指向性を持つ複数個の受信アンテナのうち前記送信装置の方向に指向性を持つ受信アンテナに切り替える切り替え処理を実行し、切り替えた前記受信アンテナで前記送信装置から送信された無線信号を受信する、受信装置。
【請求項2】
請求項1の受信装置であって、
前記複数個の受信アンテナのうち、第1方向に指向性を持つ第1受信アンテナのメインローブの半値幅は、第2方向に指向性を持つ第2受信アンテナのメインローブの半値幅よりも小さく、
水平面に対する前記第1方向の仰角は、前記水平面に対する前記第2方向の仰角よりも小さい、受信装置。
【請求項3】
請求項1または2の受信装置であって、
前記複数個の受信アンテナのメインローブの半値幅の仰角成分の大きさは、前記半値幅の方位角成分の大きさよりも小さい、受信装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかの受信装置であって、
前記複数個の受信アンテナは、第3受信アンテナと、互いに異なる方向に指向性を持つ複数個の第4受信アンテナとを含み、
前記第3受信アンテナのメインローブの半値幅は、前記複数個の第4受信アンテナのメインローブの半値幅よりも大きく、
前記第3受信アンテナのメインローブは、前記複数個の第4受信アンテナのメインローブと重複し、
前記第3受信アンテナが指向性を持つ方向に位置する前記送信装置は、前記複数個の第4受信アンテナの何れかが指向性を持つ方向に位置する、受信装置。
【請求項5】
請求項4の受信装置であって、
前記切り替え処理は、
前記第3受信アンテナが指向性を持つ方向および前記複数個の第4受信アンテナの何れかが指向性を持つ方向に前記送信装置が位置する場合に、前記送信装置との通信状態、前記送信装置までの距離、および前記無線信号の単位時間当たりの情報量の少なくとも何れかに基づき、前記第3受信アンテナに切り替えるか、または、前記複数個の第4受信アンテナの少なくとも何れかに切り替える処理である、受信装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れかの受信装置であって、
前記無線信号は、周期的にパイロットデータが挿入された時系列信号を表し、
当該受信装置は、
前記パイロットデータの何れかである第1パイロットデータを表す前記無線信号を受信した時間区間で前記切り替え処理を行い、
前記第1パイロットデータを用いることなく、前記パイロットデータの何れかであって前記1パイロットデータ以外の第2パイロットデータを用いて受信処理を実行する、通信処理。
【請求項7】
請求項1から6の何れかの受信装置であって、
受信した前記無線信号の自動利得制御に用いる受信レベルを固定した状態で前記切り替え処理を行う、通信処理。
【請求項8】
空間を移動する送信装置の位置変化に応じ、互いに異なる方向に指向性を持つ複数個の受信アンテナのうち前記送信装置の方向に指向性を持つ受信アンテナに切り替える切り替え処理を実行し、切り替えた前記受信アンテナで前記送信装置から送信された無線信号を受信する、受信方法。
【請求項9】
請求項1から7の何れかの受信装置の処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間を移動する送信装置から送信された無線信号を受信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年実用化が進められているドローン等の小型飛行体では、地上の操作者や監視者が無線通信を利用して小型飛行体を操作したり、小型飛行体からの情報を取得したりしている。この無線通信では2.4GHzや5GHz周波数帯を使用し、例えば小型飛行体の操作用通信機ではコーリニアアンテナを使用して周波数変調波による通信を行っている。その他、数十m程度離れた距離ではWi-Fi(登録商標)を用いてデータ伝送が行われることもある。
【0003】
小型飛行体から数km程度離れた長距離通信の場合、無線電力が大きいほど安定した通信が行えるが、実際には法律等で上限が定められていることや小型飛行体に搭載できる機器の大きさなどの制限により、利用できる無線電力の大きさには限界がある。このため、より安定した通信を行うためには高利得の受信アンテナを使用することが望ましい。ここで、アンテナサイズを大きくせずにアンテナ利得を向上させるためには、受信アンテナに指向性を持たせる必要がある。また、小型飛行体と地上局間の無線通信時には大地反射によるフェージングの影響が考えられる。受信アンテナに指向性を持たせて大地反射波の到来方向を受信アンテナの受信範囲から外すことができれば、その成分を減衰させ、フェージングの影響を軽減できる。このように高利得な指向性を持つ受信アンテナを使用することで、アンテナサイズを大きくすることなく、安定した長距離通信を行うことができると期待できる。
【0004】
ただし、指向性を持つ受信アンテナを使用して空間内を移動する小型飛行体との通信を行う場合、指向性を考慮して受信アンテナを小型飛行体に向ける指向性制御が必要となる。受信アンテナの指向性制御方法としては、フェーズドアレイアンテナのように多数のアンテナ素子の個々の位相を制御することでアレイアンテナの指向性を制御する方法(例えば、非特許文献1等参照)や、雲台などで受信アンテナを機械的に動かして小型飛行体に受信アンテナを向ける方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Robert J. Mailloux,“Phased Array Antenna Handbook. Second edition”, Artech House、2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アレイアンテナの指向性を制御する方法は、指向性制御を電子的に行うため指向性制御速度が速く、また信号処理によって指向性を変化させることができるなど柔軟性も高い。しかし、この方法では、アレイアンテナの素子毎に位相や振幅を調整する必要があり、構成が複雑で回路規模が大きく高価になる。一方、受信アンテナを機械的に動かす方法は、指向性制御速度が遅く、小型飛行体が高速で移動している場合に追従することが難しく、また機械的な可動機構が必要なことから耐久性が低い。
【0007】
このような問題は小型飛行体との通信を行う場合のみならず、空間を移動する送信装置から送信された無線信号を受信する場合に共通する問題である。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、耐久性が高く簡易な構成で、空間を移動する送信装置に、指向性のある受信アンテナを高速に追従させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
空間を移動する送信装置の位置変化に応じ、互いに異なる方向に指向性を持つ複数個の受信アンテナのうち送信装置の方向に指向性を持つ受信アンテナに切り替える切り替え処理を実行し、切り替えた受信アンテナで送信装置から送信された無線信号を受信する。
【発明の効果】
【0010】
これにより、耐久性が高く簡易な構成で、空間を移動する送信装置に、指向性のある受信アンテナを高速に追従させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は第1実施形態の無線伝送システムの全体構成図である。
図1は水平面の直交する二軸をX軸とY軸とし、鉛直方向の軸をZ軸とした3次元座標系におけるX-Z平面側からみた構成を例示している。
【
図2】
図2は第1実施形態の無線伝送システムの全体構成図である。上述の3次元座標系における
図2はX-Y平面側からみた構成を例示している。
【
図3】
図3は第1実施形態の送信措置の機能構成を例示したブロック図である。
【
図4】
図4は第1実施形態の受信システムの機能構成を例示したブロック図である。
【
図5】
図5は第1実施形態の信号切り替え部および復調処理部の機能構成の詳細を例示したブロック図である。
【
図6】
図6は第1実施形態の復調処理部の機能構成の詳細を例示したブロック図である。
【
図7】
図7は第1実施形態の受信アンテナの指向性を例示するための概念図である。
【
図8】
図8は第1実施形態の受信アンテナの指向性を例示するための概念図である。
【
図9】
図9は第1実施形態の受信アンテナの指向性を例示するための概念図である。
【
図10】
図10Aは受信装置で受信される無線信号が表すデジタルデータのデータ構造を例示する概念図である。
図10Bは
図10Aの各フレームのデータ構造を例示する概念図である。
【
図11】
図11は受信装置の動作を例示するためのフロー図である。
【
図12】
図12は第2実施形態の受信アンテナの指向性を例示するための概念図である。
【
図13】
図13は第2実施形態の受信アンテナの指向性を例示するための概念図である。
【
図14】
図14は第3実施形態の受信アンテナの指向性を例示するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
[第1実施形態]
まず第1実施形態を説明する。
<構成>
図1および
図2に本実施形態の無線伝送システム1の全体構成図を例示する。ここで、
図1は水平面の直交する二軸をX軸とY軸とし、鉛直方向の軸をZ軸とした3次元座標系におけるX-Z平面側からみた無線伝送システム1の構成を例示しており、
図2はX-Y平面側からみた無線伝送システム1の構成を例示している。
図1および
図2に例示するように、本実施形態の無線伝送システム1は、送信装置11および受信システム12を有し、本実施形態の受信システム12は、利得が高く指向性を持つ複数個の受信アンテナ121-iおよび受信装置122を有する。ただし、i=1,…,nであり、nは2以上の整数である。本実施形態では、受信システム12が3個の受信アンテナ121-1,2,3を持つ場合(n=3の場合)を例示するが、これは本発明を限定するものではない。また本実施形態では受信システム12が地上に配置されるが、これは本発明を限定するものではなく、受信システム12が空中に設置されてもよい。また本実施形態の送信装置11はドローン等の小型飛行体であるが、これも本発明を限定するものではなく、空間を移動しながら無線通信を行うその他の装置が送信装置11であってもよい。
図3に例示するように、本実施形態の送信装置11は、カメラ111、映像エンコーダ112、GPS(Global Positioning System)モジュール113、変調処理部114、増幅部115、および送信アンテナ116を有する。
図4に例示するように、本実施形態の受信装置122は、信号切り替え部122a、復調処理部122b、切り替え制御部122c、映像デコーダ122d、およびディスプレイ等の映像表示部122eを有する。
図5および
図6に例示するように、本実施形態の復調処理部122bは、周波数フィルタ122ba、AGC(Automatic Gain Control)回路122bb、周波数変換部122bc、A/D変換部122bd、受信レベル計算部122be、メモリ122bf,122bj、ガード相関算出部122bg、FFT(Fast Fourier Transformation)計算部122bh、パイロット信号検出部122bi、等化処理部122bk、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)復調部122bm、および誤り訂正部122bnを有する。
【0013】
図1および
図2に例示するように、複数個の受信アンテナ121-i(ただし、i=1,…,n)は、送信装置11の移動エリアを各受信アンテナ121-iのメインローブの半値幅の範囲でそれぞれカバーするように配置される。これにより、受信アンテナ121-iからの水平距離d(例えば、数km)以下、高さh(例えば、150m)以下の空間内の送信装置11の移動エリアが、各受信アンテナ121-iの半値幅の範囲でカバーされる各エリア101-i(ただし、i=1,…,n)に区分される。すなわち、各受信アンテナ121-iは、互いに異なるエリア101-iを通信範囲としてカバーするように設置される。
図1の例では、送信装置11の移動エリアが3個のエリア101-1,2,3に区分され、受信アンテナ121-1がエリア101-1内の送信装置11との通信をカバーし、受信アンテナ121-2がエリア101-2内の送信装置11との通信をカバーし、受信アンテナ121-3がエリア101-3内の送信装置11との通信をカバーする。
【0014】
このように配置された複数個の受信アンテナ121-i(ただし、i=1,…,n)は、互いに異なる方向(指向方向)m-iに指向性を持つ(
図1,
図2および
図7)。なお、受信アンテナ121-iの指向性の方向(指向方向)m-iは、受信アンテナ121-iに対するメインローブ111-i側の方向を意味する(
図8および
図9)。本実施形態では、受信アンテナ121-1,2,3の指向性の方向m-1,2,3の仰角成分が互いに異なり(
図1)、方位角成分が同一またはほぼ同一である例を示す(
図2)。すなわち、受信アンテナ121-iの指向性の方向m-iの水平面に対する仰角θ-iは互いに相違し、本実施形態の例ではθ-1<θ-2<θ-3である(
図7)。
【0015】
また例えば、指向性の方向m-iの仰角θ-i成分が小さい受信アンテナ121-iほど、そのメインローブ111-iの半値幅(半値角)が小さいことが望ましい。例えば、指向性の方向m-iの仰角θ-i成分が小さい受信アンテナ121-iほど、そのメインローブ111-iの半値幅の仰角成分ω
XZ-i(
図8)および/または方位角成分ω
XY-i(
図9)が小さいことが望ましい。
図1では指向性の方向m-iの仰角θ-i成分が小さい受信アンテナ121-iほど、そのメインローブ111-iの半値幅の仰角成分ω
XZ-iが小さい例を示しており、例えば、ω
XZ-1,ω
XZ-2,ω
XZ-3がそれぞれ4°,15°,60°である。すなわち、複数個の受信アンテナ(例えば、受信アンテナ121-1,2,3)のうち、第1方向(例えば、方向m-1)に指向性を持つ第1受信アンテナ(例えば、受信アンテナ121-1)のメインローブの半値幅は、第2方向(例えば、方向m-3)に指向性を持つ第2受信アンテナ(例えば、受信アンテナ121-3)のメインローブの半値幅よりも小さく、水平面に対する第1方向(例えば、方向m-1)の仰角(θ-1)は、水平面に対する第2方向(例えば、方向m-3)の仰角(θ-3)よりも小さいことが望ましい。この理由は以下の通りである。まず、指向性の方向m-iの仰角θ-i成分が小さい受信アンテナ121-iほど、地表に近いエリア101-iをカバーすることになる。地表に近いエリア101-iでは大地反射によるフェージングの影響が大きくなる。このようなエリア101-iをカバーする受信アンテナ121-iのメインローブの半値幅を小さくすることで、大地反射波の到来方向を受信アンテナ121-iの受信範囲から外し、フェージングの影響を軽減することができる。また、指向性の方向m-iの仰角θ-i成分が小さい受信アンテナ121-iほど遠方の範囲までカバーする必要がある(
図1)。特に法規制などによって送信装置11の飛行高度が制限されている場合、その傾向が顕著である。このような指向性の方向m-iの仰角θ-i成分が小さい受信アンテナ121-iのメインローブの半値幅を小さくすることで利得を大きくでき、このような遠方の範囲までカバーすることが可能になる。
【0016】
なお、前述のように、受信アンテナ121-iの指向性を水平方向に広くしても大地反射によるフェージングの影響は大きく変化しない。そのため、水平方向には受信アンテナ121-iの指向性を広くとることができる。また、送信装置11が移動する際、その水平方向の位置の変化は少なく、機械的な追従も十分可能な場合が多い。そのため、本実施形態では、送信装置11の移動エリアはX-Z平面の仰角範囲でのみ複数に区分され(
図1)、X-Y平面の方位角範囲では複数に区分されない(
図2)。
図2に例示する各エリア101-iは、受信アンテナ121-iからみた方位角範囲がλ
123となるエリア101-1,2,3である。送信装置11がこのエリア101-1,2,3から外れそうなときには、機械的に受信アンテナ121-iを方位角方向に回転させてもよいし、送信装置11がこのエリア101-1,2,3から外れないように操作してもよい。また好ましくは、複数の受信アンテナ121-i(ただし、i=1,…,n)のメインローブ111-iの半値幅の仰角ω
XZ-i成分(
図8)の大きさは、半値幅の方位角ω
XY-i成分(
図9)の大きさよりも小さいことが望ましい。これにより、X-Y平面方向に広めのエリア101-iを確保できる。ここで半値幅の仰角ω
XZ-i成分は小さくしてあるため、半値幅の方位角ω
XY-i成分を広めにしても、送信装置11からの無線信号を十分に受信できる。
【0017】
<事前設定>
次に、事前設定内容を例示する。
各受信アンテナ121-i(ただし、i=1,…,n)の通信範囲であるエリア101-iを特定する経度情報および緯度情報が予め取得され、各受信アンテナ121-iの識別情報に対応付けて受信装置122の切り替え制御部122cに設定される。また、送信装置11の駆動後に最初に使用する受信アンテナ121-is(ただし、is∈{1,…,n})の識別情報が初期値として切り替え制御部122cに設定される。例えば、ドローンである送信装置11の離陸位置を予め想定しておき、その位置から送信された無線信号を確実に受信ができる受信アンテナ121-isを選択し、その識別情報を初期値として切り替え制御部122cに設定しておく。
【0018】
<送信装置11の動作>
次に、送信装置11の動作を例示する。
ドローンなどの送信装置11は何れかのエリア101-iを飛行しながら、カメラ111によって撮影を行って映像データを取得する。取得された映像データは映像エンコーダ112に出力される。この映像データは、例えば、HDMI(登録商標)信号やSDI信号形式で映像エンコーダ112に出力される。映像エンコーダ112は、入力された映像データを符号化して得られる映像デジタルデータを出力する。例えば、映像エンコーダ112は、入力された映像データをH.264規格等に準拠した方式でエンコードし、トランスポートストリームパケット形式に従ってカプセル化して得られる映像デジタルデータを出力する。映像エンコーダ112から出力された映像デジタルデータは変調処理部114に出力される。また、GPSモジュール113で得られた送信装置11の位置情報等のGPSデータも変調処理部114に出力される。GPSデータは、例えばシリアルデータとして変調処理部114に出力される。変調処理部114は、入力された映像デジタルデータおよびGPSデータの変調処理を行う。例えば、変調処理部114は、トランスポートストリームパケット形式等の映像デジタルデータを16QAM変調やOFDM変調し、シリアルデータ等のGPSデータをトランスポートストリームパケット形式に従ってカプセル化して、映像デジタルデータのパケットストリームに周期的に挿入して変調する。このとき、受信側でGPSデータを分離抽出できるように、送信装置11と受信装置12との間で予め定義しておいたパケット識別子がGPSデータに付与される。このようにして得られた変調信号は変調処理部114から出力され、増幅部115に入力される。
図10Aに例示するように、変調処理部114から出力される変調信号は
図10Aに例示するようなフレームごとの時系列データ(デジタルデータ)である。
図10Bに例示するように、各フレームのデジタルデータはSymbol1,...,7の7個のシンボルに区分けされている。Symbol1,2,3,5,6,7にはCP(Cyclic Prefix)とData(映像を表すデータまたはGPSデータ)が格納され、Symbol4にはCPとパイロットデータ(Pilot Data)が格納されている。増幅部115は、入力された変調信号を無線出力に適した信号レベルに増幅した無線信号を生成して送信アンテナ116に出力する。送信アンテナ116は無線信号を無線出力する。
【0019】
<受信システム12の動作>
次に、受信システム12の動作を説明する。
図4に例示するように、各受信アンテナ121-iは受信装置122の信号切り替え部122aに電気的に接続され、受信した無線信号を信号切り替え部122aに出力する。信号切り替え部122aは、切り替え制御部122cの制御のもとで、復調処理部122bに電気的に接続する受信アンテナ121-iを切り替えることができる。すなわち、切り替え部122aは、各受信アンテナ121-iで受信された無線信号のうち復調処理部122bに出力する無線信号を切り替えることができる。本実施形態では、信号切り替え部122aは、いずれか1個の受信アンテナ121-iを復調処理部122bに電気的に接続する。前述のように、送信装置11の駆動時の初期状態では、最初に使用する受信アンテナ121-i
sの識別情報が初期値として切り替え制御部122cに設定されており、切り替え制御部122cはこの受信アンテナ121-i
sを復調処理部122bに電気的に接続する。
【0020】
信号切り替え部122aによって復調処理部122bに電気的に接続された受信アンテナ121-iで受信された無線信号は、復調処理部122bに出力される。復調処理部122bは、入力された無線信号に対する復調処理を行って、映像デジタルデータとGPSデータを得る。例えば、復調処理部122bは、入力された無線信号に対してOFDM復調や16QAM復調を行い、GPSデータが挿入されたトランスポートストリームパケットを得、さらにGPSデータに付されたパケット識別子に基づいてGPSデータをそこから分離して、映像のトランスポートストリームパケット(映像デジタルデータ)とGPSデータを得る。映像デジタルデータは映像デコーダ122dに出力され、GPSデータは切り替え制御部122cに出力される。映像デコーダ122dは、入力された映像デジタルデータを伸長・復号して映像データを得て映像表示部122eに出力する。映像データは、例えば、HDMI(登録商標)信号やSDI信号形式で映像表示部122eに出力される。映像表示部122eは、入力された映像データが表す映像を表示する。
【0021】
切り替え制御部122cは、入力されたGPSデータと予め設定された各受信アンテナ121-iの通信範囲であるエリア101-iの経度情報および緯度情報とを参照し、復調処理部122bに電気的に接続する受信アンテナ121-iの切り替え処理が必要であるか否かを判定し、切り替えが必要な場合に受信アンテナ121-iの切り替えを指示する。すなわち、切り替え制御部122cは、復調処理部122bに電気的に接続されている受信アンテナ121-ic(ただし、ic∈{1,…,n})の通信範囲であるエリア101-icから送信装置11が外れそうであるかを判定し、送信装置11が当該エリア101-icから外れそうであれば、送信装置11が次に属すると予測されるエリア101-in(ただし、in∈{1,…,n})をカバーする受信アンテナ121-inへの切り替えを指示する。エリア101-icから送信装置11が外れそうであるか否かは、例えば、エリア101-icの境界線から送信装置11までの距離が所定値以下であるか否かによって判定する。また、送信装置11が次に属すると予測されるエリア101-inは、例えば、送信装置11の位置と進行方向と各エリア101-i(ただし、i∈{1,…,n})の経度情報および緯度情報とに基づいて推定される。受信アンテナ121-iの切り替えの指示は信号切り替え部122aに送られ、信号切り替え部122aはこれに基づいて、復調処理部122bに電気的に接続する受信アンテナ121-iを切り替える。その後、切り替え後の受信アンテナ121-iで受信された無線信号は信号切り替え部122aを介して復調処理部122bに送られ、前述した復調処理部122bの処理が行われる。すなわち、切り替え制御部122cおよび信号切り替え部122aは、空間を移動する送信装置11の位置変化に応じ、互いに異なる方向に指向性を持つ複数個の受信アンテナ121-i(ただし、i∈{1,…,n})のうち送信装置11の方向に指向性を持つ受信アンテナ121-iに切り替える切り替え処理を実行し、切り替えた受信アンテナ121-iで送信装置11から送信された無線信号を受信する。
【0022】
<受信アンテナ121-iの切り替え処理の詳細>
図4から
図6および
図11を用い、上述の受信アンテナ121-iの切り替え処理の詳細を例示する。
《復調処理部122bの処理の詳細》
まず、復調処理部122bの処理の詳細を例示する。復調処理部122bに電気的に接続された受信アンテナ121-iで受信された無線信号は、復調処理部122bの周波数フィルタ122baに出力される。周波数フィルタ122baは、受け取った無線信号から所望の帯域以外の信号を減衰させた減衰信号を生成して、AGC回路122bbに出力する。AGC回路122bbは、後述のように受信レベル計算部122beで算出されてメモリ122bfに格納されている受信レベルに基づき、減衰信号の自動利得制御を行って利得調整信号を得る。すなわち、AGC回路122bbは、メモリ122bfに格納されている受信レベルが低い場合には利得を上げ、受信レベルが高い場合には減衰器を挿入して利得を下げ、信号レベルが適正となるように減衰信号の利得を自動的に調整した利得調整信号を得る。AGC回路122bbから出力された利得調整信号は、周波数変換部122bcに出力される。周波数変換部122bcは、利得調整信号を周波数の低いベースバンド信号に変換し、さらに復調を行った復調信号を得る。例えば、周波数変換部122bcは、5.7GHz帯のような無線信号の周波数と同じ周波数の局部発信機で発生させた正弦波信号を使用し、周波数ミキサによって利得調整信号をベースバンド信号に変換する。さらに、周波数変換部122bcは、また同時に局部発信機でsin波とcos波のような位相が90°異なる信号を発生させて、当該ベースバンド信号に対応する2つの周波数変換信号を生成する直交復調を行う。Cos波の周波数変換信号をI信号、sin波での周波数変換信号をQ信号とした2つの復調信号(アナログベースバンドIQ信号)をA/D変換部122bdに出力する。A/D変換部122bdは、入力された復調信号をデジタル信号に変換する。例えば、A/D変換部122bdは、アナログベースバンドIQ信号を、30.72MHz等のサンプリング周波数でサンプリングして14bit等の階調で量子化したデジタル信号に変換する。得られたデジタル信号は、受信レベル計算部122beおよびガード相関算出部122bgに入力される。受信レベル計算部122beは、入力されたデジタル信号の受信レベルを計算してメモリ122bfに格納し、メモリ122bfに格納された受信レベルを更新する。すなわち、通常の状態では、受信された無線信号に対応する最新のデジタル信号の受信レベルがメモリ122bfに格納される。またガード相関算出部122bgは、入力されたデジタル信号からシンボル(
図10B)を抽出する。例えば、ガード相関算出部122bgは、送信時に挿入したOFDM変調波のガードインターバル信号を検出し、シンボルを検出する。デジタル信号はシンボルごとにFFT計算部122bhに入力され、FFT計算部122bhはシンボルごとにデジタル信号に対してフーリエ変換処理を行い、OFDM復調データを得る。復調されたOFDM復調データ(信号)はパイロット信号検出部122biに入力される。このOFDM復調データの各フレームでは周期的に特定のシンボル(Symbol4)(パイロットシンボル)にパイロットデータが格納されており(
図10Bのデジタルデータを参照)、パイロット信号検出部122biは逐次入力されるOFDM復調データ(信号)のシンボルがパイロットシンボルであるか否か判定する。この判定結果は切り替え制御部122cにも送られる。パイロット信号検出部122biは、当該シンボルがパイロットシンボルであると判定した場合、そこに格納されているパイロットデータをメモリ122bjに格納し、メモリ122bjのパイロットデータを更新する。すなわち、通常の状態では、受信された無線信号の最新のパイロットデータがメモリ122bjに格納される。等化処理部122bkには、シンボルごとの映像デジタルデータおよびメモリ122bjに格納されているパイロットデータが入力される。等化処理部122bkは、このパイロットデータを用いてシンボルごとの信号に対する等化処理(受信処理)を実行し、それによって得られた等化処理信号をQAM復調部122bmに出力する。QAM復調部122bmは、等化処理信号を復調して復調信号を得て出力する。復調信号は誤り訂正部122bnに入力され、誤り訂正部122bnは復調信号の誤り訂正を行って、最終的に映像デジタルデータ(映像のトランスポートストリームパケット)およびGPSデータを得て出力する。前述のように、映像デジタルデータは映像デコーダ122dに入力され、GPSデータは切り替え制御部122cに入力される。入力され、GPSデータは切り替え制御部122cに入力される。
【0023】
《切り替え制御部122cの処理の詳細》
次に切り替え制御部122cの処理の詳細を例示する。切り替え制御部122cは、信号切り替え部122aで受信アンテナ121-iを切り替えた際に信号が途切れてしまってもエラーが生じないように、受信アンテナ121-iの切り替えを制御する点に特徴がある。以下に詳細に説明する。
図11に例示するように、切り替え制御部122cは、入力されたGPSデータに基づいて送信装置11の位置情報を取得する(ステップS1)。切り替え制御部122cは、送信装置11の位置情報およびエリア101-iを特定する経度情報ならびに緯度情報を用い、前述したように、受信アンテナ121-iの切り替え処理が必要か否かを判断する(ステップS2)。ここで、受信アンテナ121-iの切り替え処理が不要であればステップS1に戻る。一方、受信アンテナ121-iの切り替え処理が必要であれば、切り替え制御部122cは復調処理部122bによるメモリ122bfの受信レベルの更新を停止する。すなわち、切り替え制御部122cは、受信された無線信号の自動利得制御に用いる受信レベルを固定する。これにより、AGC回路122bbは、その時点でメモリ122bfに格納されていた受信レベルに基づき、自動利得制御を行って利得調整信号を得る。その結果、受信アンテナ121-iの切り替えによって信号レベルが一時的に不連続かつ急激に低下し、それに基づいて自動利得制御が行われることで利得が不連続かつ急激に上昇してしまうことを防止できる(ステップS3)。この場合、さらに切り替え制御部122cは、前述のパイロット信号検出部122biが、シンボルはパイロットシンボルであると判定したか否かを判断する(ステップS4)。ここで、パイロットシンボルであると判定されていない場合(Symbol1,2,3,5,6,7の何れかである判定された場合)、ステップS3に戻る。一方、パイロットシンボルであると判定されていた場合(Symbol4であると判定された場合)、切り替え制御部122cは、パイロット信号検出部122biによるメモリ122bjのパイロットデータの更新を停止する。すなわち、切り替え制御部122cは、ステップS4で判定されたパイロットシンボルのパイロットデータによるメモリ122bjの更新を行わない。すなわち、等化処理部122bkは、ステップS4で判定されたパイロットシンボルのパイロットデータ(第1パイロットデータ)を用いることなく、メモリ122bjに格納された何れかのパイロットデータ(パイロットデータの何れかであって1パイロットデータ以外の第2パイロットデータ)を用いて等化処理(受信処理)を実行する。例えば、等化処理部122bkは、直前の更新でメモリ122bjに格納されたパイロットデータを用いて等化処理を実行する(ステップS5)。次に、切り替え制御部122cは、信号切り替え部122aに受信アンテナ121-iの切り替え信号を出力し、受信アンテナ121-iの切り替えを指示する。この切り替え信号によって特定の受信アンテナ121-iが指定される。これにより、信号切り替え部122aは受信アンテナ121-iの切り替え処理を行い、それ以降、切り替えられた受信アンテナ121-iで受信された無線信号が復調処理部122bに入力される。この受信アンテナ121-iの切り替え処理は、ステップS4で判定されたパイロットシンボルが受信された時間区間で行われる。すなわち、受信された無線信号は、周期的にパイロットデータが挿入された時系列信号を表し、受信アンテナ121-iの切り替え処理はパイロットデータの何れかである第1パイロットデータを表す無線信号を受信した時間区間で行われる。受信アンテナ121-iの切り替えに伴い、受信中の無線信号の何れかシンボルのデータが破損することになる。あるパイロットシンボルが受信されているタイミングで受信アンテナ121-iの切り替えを行うと、当該パイロットシンボルに格納されているパイロットデータは破損する。しかしながら、この受信アンテナ121-iの切り替えによって、その他のシンボルに格納された映像を表すデータは破損しない。これにより、受信アンテナ121-iの切り替えに伴う映像を表すデータの破損を防止できる。なお、アンテナ121-iの切り替え時点のパイロットデータは破損するが、前述のように等化処理部122bkは、ステップS4で判定されたパイロットシンボルのパイロットデータ(第1パイロットデータ)を用いることなく、メモリ122bjに格納された何れかのパイロットデータ(第2パイロットデータ)を用いて等化処理を実行するため、大きな問題は生じない。特に、ステップS4で判定されたパイロットシンボルに近い時点のパイロットシンボル(例えば、直前のパイロットシンボル)であれば、パイロットデータも類似しており、等化処理に大きな問題は生じない(ステップS6)。その後、切り替え制御部122cは、復調処理部122bによるメモリ122bfの受信レベルの更新を再開する(ステップS7)。その後、切り替え制御部122cは、パイロット信号検出部122biが、シンボルはパイロットシンボルであると判定したか否かを判断する(ステップS8)。ここで、パイロットシンボルであると判定されていない場合(Symbol1,2,3,5,6,7の何れかである判定された場合)、ステップS8の処理を繰り返す。一方、パイロットシンボルであると判定されていた場合(Symbol4であると判定された場合)、切り替え制御部122cは、パイロット信号検出部122biによるメモリ122bjのパイロットデータの更新を再開する(ステップS9)。その後、ステップS1に戻る。
【0024】
<本実施形態の特徴>
本実施形態では、互いに異なる方向に指向性を持つ複数個の受信アンテナ121-1,…,nを設置し、空間を移動する送信装置の位置変化に応じ、互いに異なる方向に指向性を持つ複数個の受信アンテナ121-1,…,nのうち送信装置の方向に指向性を持つ受信アンテナ121-iに切り替える切り替え処理を実行し、切り替えた受信アンテナ121-iで送信装置から送信された無線信号を受信することとした。ここで、指向性を持つ受信アンテナ121-iを用いることで長距離通信時の受信電力が増大することから安定した通信が行える。また、複数個の受信アンテナ121-1,…,nを切り替える構成は簡易であり、回路規模も小さく安価である。さらに、受信アンテナ121-iの切り替えは電気的に可能であるため、指向性制御速度が速く、耐久性も高い。
【0025】
また、
図1に例示したように、複数個の受信アンテナ(例えば、受信アンテナ121-1,2,3)のうち、第1方向(例えば、方向m-1)に指向性を持つ第1受信アンテナ(例えば、受信アンテナ121-1)のメインローブの半値幅は、第2方向(例えば、方向m-3)に指向性を持つ第2受信アンテナ(例えば、受信アンテナ121-3)のメインローブの半値幅よりも小さく、水平面に対する第1方向(例えば、方向m-1)の仰角(θ-1)は、水平面に対する第2方向(例えば、方向m-3)の仰角(θ-3)よりも小さいこととした場合、大地反射波の到来方向を受信アンテナ121-iの受信範囲から外し、フェージングの影響を軽減することができる。
【0026】
また、受信装置122が、受信した無線信号の自動利得制御に用いる受信レベルを固定した状態で切り替え処理を行うことで、受信アンテナ121-iの切り替えによって信号レベルが一時的に不連続かつ急激に低下し、それに基づいて自動利得制御が行われることで利得が不連続かつ急激に上昇してしまうことを防止できる。
【0027】
また、無線信号が周期的にパイロットデータが挿入された時系列信号を表し、受信装置122は、パイロットデータの何れかである第1パイロットデータを表す無線信号を受信した時間区間で切り替え処理を行い、第1パイロットデータを用いることなく、パイロットデータの何れかであって1パイロットデータ以外の第2パイロットデータを用いて受信処理(等化処理等)を実行することで、受信アンテナ121-iの切り替え時の映像を表すデータの破損をおさえることができる。
【0028】
[第1実施形態の変形例1]
前述のように、第1実施形態では、ステップS3で受信アンテナ121-iの切り替えの前に受信レベルを固定し、固定された受信レベルで自動利得制御を行った。しかし、AGC回路122bbの処理速度が遅い場合には、ステップS3の処理が省略されても大きな影響がない場合も多い。そのため、ステップS3の処理が実行されなくてもよい。また、第1実施形態では、パイロットシンボルが受信された場合にパイロットデータの更新を停止し、パイロットシンボルが受信されているタイミング(ステップS4)で受信アンテナ121-iの切り替えを行った(ステップS6)。しかしながら、映像を表すデータの破損が大きな問題とならないのであれば、これらの処理が省略され、任意のタイミングで受信アンテナ121-iの切り替えを行ってもよい。
【0029】
[第2実施形態]
第1実施形態では、各エリア101-iをそれぞれ1個の受信アンテナ121-iでカバーする例を示した。しかしながら、1個のエリア101-iを1個の受信アンテナ121-iでカバーするモードと、このエリア101-iを受信アンテナ121-iよりも半値幅の小さな複数個の受信アンテナ121-i-1,…,121-i-kでカバーするモードとの切り替えが可能であってもよい。ただし、kは2以上の整数である。なお、
図13はk=3の例を示しているがこれは本発明を限定するものではない。例えば、
図12に例示ように、1個の受信アンテナ121-iの半値幅の範囲でカバーされるエリア201-i(ただし、i=1,…,n)が、
図13のように受信アンテナ121-iよりも半値幅が小さな受信アンテナ121-i-1,…,121-i-kでもカバーされるようにし、受信アンテナ121-iを用いるか、または、受信アンテナ121-i-1,…,121-i-kの全部もしくは一部を用いるかが選択可能であってもよい。すなわち、同一のエリア201-iをカバーするように、受信アンテナ121-i(第3受信アンテナ)と、互いに異なる方向に指向性を持つ複数個の受信アンテナ121-i-1,…,121-i-k(第4受信アンテナ)とが設置されてもよい。ここで、受信アンテナ121-iのメインローブ211-iの半値幅は、複数個の受信アンテナ121-i-1,…,121-i-kのメインローブ211-i-1,…,211-i-kの半値幅よりも大きく、受信アンテナ121-iのメインローブ211-iは、複数個の受信アンテナ121-i-1,…,121-i-kのメインローブ211-i-1,…,211-i-kと重複している。また、受信アンテナ121-iが指向性を持つ方向に位置する送信装置11は、複数個の受信アンテナ121-i-1,…,121-i-kのメインローブ211-i-1,…,211-i-kの何れかが指向性を持つ方向に位置する。半値幅が広い受信アンテナ121-iは単体でエリア201-iをカバーできるが、メインローブの利得は半値幅が狭い受信アンテナ121-i-1,…,121-i-kのメインローブ211-i-1,…,211-i-kに劣る。そのため、状況に応じて、受信アンテナ121-i単体でエリア201-iをカバーするモード1と、複数個の受信アンテナ121-i-1,…,121-i-kでエリア201-iをカバーするモード2との切り替えが行われてもよい。モード2の場合、各受信アンテナ121-i-j(ただし、j=1,…,k)のメインローブ211-i-jの利得が受信アンテナ121-iのものよりも大きいため、より多くの電力を確保でき、安定した通信が可能になる。さらにモード2の場合、エリア201-iだけではなく、それよりも遠くエリア202-iをカバーすることもできる。そのため、受信システム12と送信装置11との通信状態、受信アンテナ121-iから送信装置11までの距離、および送信装置11から送信される無線信号の単位時間当たりの情報量に応じて、モード1またはモード2への切り替えが行われてもよい。例えば、受信システム12と送信装置11との通信状態、受信アンテナ121-iから送信装置11までの距離、および送信装置11から送信される無線信号の単位時間当たりの情報量の少なくとも何れかが所定の基準を超えない場合にはモード1に切り替えられ、当該基準を超えた場合にモード2に切り替えられてもよい。あるいは、受信システム12と送信装置11との通信状態、受信アンテナ121-iから送信装置11までの距離、および送信装置11から送信される無線信号の単位時間当たりの情報量の少なくとも何れかの単調増加関数値が所定の基準を超えない場合にはモード1に切り替えられ、当該基準を超えた場合にモード2に切り替えられてもよい。なお、モード2の場合、複数個の受信アンテナ121-i-1,…,121-i-kのうち、送信装置11の方向に指向性を持つ受信アンテナに切り替える切り替え処理が行われ、切り替えた受信アンテナで送信装置11から送信された無線信号を受信する。あるいは、モード2の場合、複数個の受信アンテナ121-i-1,…,121-i-kのすべてで無線信号を受信し、それらを合成した信号や、それらから選択された信号(例えば、最も受信状態のより無線信号)を用いて復調処理などが行われてもよい。
【0030】
[第2実施形態の変形例1]
第2実施形態では、エリア201-iを受信アンテナ121-iでカバーするモード1と、受信アンテナ121-i-1,…,121-i-kの全部もしくは一部でカバーするモード2との切り替えを行った。しかし、受信アンテナ121-i-jでカバーするエリアをさらに半値幅が小さく互いに異なる方向に指向性を持つ複数の受信アンテナでカバーするモード3が加えられ、上述したような基準でモード1,2,3の何れかが選択されてもよい。同様に4個以上のモードが設けられ、それらの何れかが選択されてもよい。
【0031】
[第3実施形態]
第1実施形態、第2実施形態、およびそれらの変形例では、送信装置11の移動エリアがX-Z平面の仰角範囲でのみ複数のエリアに区分され(
図1)、X-Y平面の方位角範囲では複数に区分されていなかった(
図2)。しかし、送信装置11の移動エリアがX-Z平面の仰角範囲で複数に区分され、さらに、X-Y平面の方位角範囲でも複数に区分され、区分されたそれぞれのエリアを互いに指向性の異なる受信アンテナでカバーしてもよい。X-Y平面の方位角範囲は均等に区分されてもよいし、不均等に区分されてもよい。例えば、特定の方位の方位角範囲を他の方位の方位角範囲よりも狭くし、当該特定の方位の方位角範囲を他の方位の方位角範囲よりも半値幅の小さな受信アンテナでカバーしてもよい。X-Y平面の方位角範囲の一部が受信アンテナでカバーされていなくてもよい。また、X-Y平面の方位角範囲は、さらにX-Z平面の仰角範囲で複数に区分されてもよいし、されていないくてもよい。例えば、
図14の例では、送信装置11の移動エリアが方位角λ
123のエリア101-1,2,3、方位角λ
45のエリア101-4,5、方位角λ
6のエリア101-6、および方位角λ
78のエリア101-7,8に区分されている。ただし、λ
123+λ
45+λ
6+λ
78=360°である。エリア101-1,2,3はX-Z平面の仰角範囲で3個のエリア101-1,2,3に区分され、エリア101-4,5はX-Z平面の仰角範囲で2個のエリア101-4,5に区分され、エリア101-6はX-Z平面の仰角範囲で複数に区分されておらず、エリア101-7,8はX-Z平面の仰角範囲で2個のエリア101-7,8に区分されている。各エリア101-i(ただし、i=1,…,8)は、例えば、第1実施形態で説明したように互いに指向性の異なる受信アンテナ121-iでカバーされている。あるいは第2実施形態で説明したように、各エリア101-iを単数の受信アンテナでカバーするモードと、複数の受信アンテナでカバーするモードとの切り替えが可能であってもよい。
【0032】
[その他の変形例等]
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、送信装置11がドローン以外の移動体であってもよい。例えば、航空機、気球、人工衛星、自動運転車、自動走行ロボットなどが送信装置11であってもよい。また、送信装置11が映像データを無線送信することに代えて、音声その他のデータを送信することとしてもよい。
図1では、指向性の方向m-iの仰角θ-i成分が小さい受信アンテナ121-iほど、そのメインローブ111-iの半値幅(半値角)が小さい例を示した。しかし、少なくとも一部の受信アンテナがこの基準から外れていてもよい。また、互いに異なる方向に指向性を持つ複数個の受信アンテナのうち、送信装置の方向に指向性を持つ複数のエリアをカバーする複数個の受信アンテナに切り替え、切り替えた複数個の受信アンテナで送信装置から送信された無線信号を受信してもよい。この場合、複数個の受信アンテナで受信された無線信号が合成されてよいし、受信状態の最もよい無線信号が選択されてもよい。
【0033】
上述の各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【0034】
上記の受信装置122は、例えば、CPU(central processing unit)等のプロセッサ(ハードウェア・プロセッサ)およびRAM(random-access memory)・ROM(read-only memory)等のメモリ等を備える汎用または専用のコンピュータが所定のプログラムを実行することで構成される。このコンピュータは1個のプロセッサやメモリを備えていてもよいし、複数個のプロセッサやメモリを備えていてもよい。このプログラムはコンピュータにインストールされてもよいし、予めROM等に記録されていてもよい。また、CPUのようにプログラムが読み込まれることで機能構成を実現する電子回路(circuitry)ではなく、プログラムを用いることなく処理機能を実現する電子回路を用いて一部またはすべての処理部が構成されてもよい。1個の装置を構成する電子回路が複数のCPUを含んでいてもよい。
【0035】
上述の構成をコンピュータによって実現する場合、受信装置122が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体の例は、非一時的な(non-transitory)記録媒体である。このような記録媒体の例は、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等である。
【0036】
このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD-ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0037】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。処理の実行時、このコンピュータは、自己の記憶装置に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。
【0038】
コンピュータ上で所定のプログラムを実行させて受信装置122の処理機能が実現されるのではなく、これらの処理機能の少なくとも一部がハードウェアで実現されてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 無線伝送システム
11 送信装置
12 受信システム
121-i 受信アンテナ
122 受信装置
【手続補正書】
【提出日】2022-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を移動する送信装置の位置変化に応じ、互いに異なる方向に指向性を持つ複数個の受信アンテナのうち前記送信装置の方向に指向性を持つ受信アンテナに切り替える切り替え処理を実行し、切り替えた前記受信アンテナで前記送信装置から送信された無線信号を受信し、
前記複数個の受信アンテナは、第3受信アンテナと、互いに異なる方向に指向性を持つ複数個の第4受信アンテナとを含み、
前記第3受信アンテナのメインローブの半値幅は、前記複数個の第4受信アンテナのメインローブの半値幅よりも大きく、
前記第3受信アンテナのメインローブは、前記複数個の第4受信アンテナのメインローブと重複し、
前記第3受信アンテナが指向性を持つ方向に位置する前記送信装置は、前記複数個の第4受信アンテナの何れかが指向性を持つ方向に位置する、受信装置。
【請求項2】
請求項1の受信装置であって、
前記切り替え処理は、
前記第3受信アンテナが指向性を持つ方向および前記複数個の第4受信アンテナの何れかが指向性を持つ方向に前記送信装置が位置する場合に、前記送信装置との通信状態、前記送信装置までの距離、および前記無線信号の単位時間当たりの情報量の少なくとも何れかに基づき、前記第3受信アンテナに切り替えるか、または、前記複数個の第4受信アンテナの少なくとも何れかに切り替える処理である、受信装置。
【請求項3】
受信装置であって、
空間を移動する送信装置の位置変化に応じ、互いに異なる方向に指向性を持つ複数個の受信アンテナのうち前記送信装置の方向に指向性を持つ受信アンテナに切り替える切り替え処理を実行し、切り替えた前記受信アンテナで前記送信装置から送信された無線信号を受信し、
前記無線信号は、周期的にパイロットデータが挿入された時系列信号を表し、
当該受信装置は、
前記パイロットデータの何れかである第1パイロットデータを表す前記無線信号を受信した時間区間で前記切り替え処理を行い、
前記第1パイロットデータを用いることなく、前記パイロットデータの何れかであって前記第1パイロットデータ以外の第2パイロットデータを用いて受信処理を実行する、受信装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかの受信装置であって、
受信した前記無線信号の自動利得制御に用いる受信レベルを固定した状態で前記切り替え処理を行う、受信装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れかの受信装置であって、
前記複数個の受信アンテナのうち、第1方向に指向性を持つ第1受信アンテナのメインローブの半値幅は、第2方向に指向性を持つ第2受信アンテナのメインローブの半値幅よりも小さく、
水平面に対する前記第1方向の仰角は、前記水平面に対する前記第2方向の仰角よりも小さい、受信装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れかの受信装置であって、
前記複数個の受信アンテナのメインローブの半値幅の仰角成分の大きさは、前記半値幅の方位角成分の大きさよりも小さい、受信装置。
【請求項7】
空間を移動する送信装置の位置変化に応じ、互いに異なる方向に指向性を持つ複数個の受信アンテナのうち前記送信装置の方向に指向性を持つ受信アンテナに切り替える切り替え処理を実行し、切り替えた前記受信アンテナで前記送信装置から送信された無線信号を受信し、
前記複数個の受信アンテナは、第3受信アンテナと、互いに異なる方向に指向性を持つ複数個の第4受信アンテナとを含み、
前記第3受信アンテナのメインローブの半値幅は、前記複数個の第4受信アンテナのメインローブの半値幅よりも大きく、
前記第3受信アンテナのメインローブは、前記複数個の第4受信アンテナのメインローブと重複し、
前記第3受信アンテナが指向性を持つ方向に位置する前記送信装置は、前記複数個の第4受信アンテナの何れかが指向性を持つ方向に位置する、受信方法。
【請求項8】
受信方法であって、
空間を移動する送信装置の位置変化に応じ、互いに異なる方向に指向性を持つ複数個の受信アンテナのうち前記送信装置の方向に指向性を持つ受信アンテナに切り替える切り替え処理を実行し、切り替えた前記受信アンテナで前記送信装置から送信された無線信号を受信し、
前記無線信号は、周期的にパイロットデータが挿入された時系列信号を表し、
当該受信方法は、
前記パイロットデータの何れかである第1パイロットデータを表す前記無線信号を受信した時間区間で前記切り替え処理を行い、
前記第1パイロットデータを用いることなく、前記パイロットデータの何れかであって前記第1パイロットデータ以外の第2パイロットデータを用いて受信処理を実行する、受信方法。
【請求項9】
請求項1から6の何れかの受信装置の処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。