(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143765
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】燃料電池及び燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20220926BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20220926BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20220926BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20220926BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20220926BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04 J
H01M8/04537
H01M8/04746
H01M8/12 101
H01M8/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044456
(22)【出願日】2021-03-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】521067441
【氏名又は名称】アビオスエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173679
【弁理士】
【氏名又は名称】備後 元晴
(72)【発明者】
【氏名】吉田 泰三
(72)【発明者】
【氏名】太田 隆司
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA03
5H127AA04
5H127AA06
5H127AA07
5H127AB05
5H127BA01
5H127BA02
5H127BA03
5H127BA05
5H127BA12
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB39
5H127DB52
5H127DC18
5H127EE02
5H127EE05
(57)【要約】
【課題】屋内及び/又は屋外で利用可能であり、軽量かつ持ち運び容易な燃料電池及び燃料電池システムを提供する。
【解決手段】本発明の燃料電池2は、燃料を用いて発電可能なセル24と、セル24に設けられ、外部から供給される燃料を流すことが可能な燃料流路241と、燃料流路241内部の気体を排気可能な排気弁27と、排気弁27の開閉状態を制御可能な排気制御部222と、を備え、排気制御部222は、発電の状況に応じて排気弁27の開閉状態を制御可能である。排気制御部222は、外部から燃料流路241への燃料の供給が開始されてから所定の時間発電が行われない場合に排気弁27の弁開度を上げる制御が可能であることが好ましい。本発明の燃料電池システム1は、少なくとも、上述の燃料電池2と、燃料電池2とは別体に設けられ、燃料電池2に水素を供給可能な水素供給手段(
図1の燃料供給手段3)と、を含んで構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を用いて発電可能なセルと、
前記セルに設けられ、外部から供給される燃料を流すことが可能な燃料流路と、
前記燃料流路内部の気体を排気可能な排気弁と、
前記排気弁の開閉状態を制御可能な排気制御部と、
を備え、
前記排気制御部は、前記発電の状況に応じて前記開閉状態を制御可能である、
燃料電池。
【請求項2】
前記排気制御部は、前記燃料流路を流れる前記燃料の量に応じて前記開閉状態を制御可能である、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記排気制御部は、前記外部から前記燃料流路への前記燃料の供給が開始される場合に前記排気弁の弁開度を上げる制御が可能である、請求項1又は2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記排気制御部は、前記外部から前記燃料流路への前記燃料の供給が開始されてから所定の時間前記発電が行われない場合に前記排気弁の弁開度を上げる制御が可能である、請求項1又は2に記載の燃料電池。
【請求項5】
緊急用照明、非常用照明、作業用照明、演出用照明、及び/又は保安用照明に電力を供給可能である、請求項1から4のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の燃料電池と、
前記燃料電池とは別体に設けられ、前記燃料電池に水素を供給可能な水素供給手段と、を含んで構成される、燃料電池システム。
【請求項7】
前記燃料電池が持ち運び可能に構成され、前記燃料電池の質量が20kg以下である、請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記排気弁に取り付け可能な気液分離手段を含む、請求項6又は7に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池(fuel cell)及び燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
還元剤として機能する燃料と酸化剤として機能する気体とを外部から連続的に供給し、燃料と気体とを電気化学的に反応させて電気エネルギーを取り出す装置である燃料電池が利用されている。
【0003】
燃料電池は、タービン等を介さない発電を行うことにより、重量及び/又は体積あたりの発電効率を他の発電方式より高くし得る。電気化学反応を利用する一次電池及び/又は二次電池は、電気化学反応に伴う反応生成物が内部に蓄積され、発電効率を低下させる。燃料電池は、反応生成物が内部に蓄積されないため、一次電池及び/又は二次電池より長時間の発電を行い得る。
【0004】
燃料電池の利用に関し、屋外等における非常用電源及び/又は作業用電源等として燃料電池を利用する要望がある。このような用途の燃料電池では、持ち運び可能であり、かつ、軽量であることが求められ得る。
【0005】
屋外等で利用する燃料電池に関し、特許文献1は、屋外等に独立して設置され、水素ガスを燃料として発電するパッケージ形の燃料電池発電装置であって、パッケージ内に、複数の水素ガスボンベ、複数の水素ガスボンベが連結されるカードル、カードルを介して供給された水素の流量及び圧力を調整する水素発生機器、及び水素発生機器から供給される水素と空気を反応させて発電する発電ユニット等を有する燃料電池発電装置を開示している。特許文献1によれば、需要地での設置性に優れた燃料電池を提供し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、パッケージ内に、複数の水素ガスボンベ、カードル、水素発生機器等を有するため、燃料電池発電装置の重量が大きくなり得る。したがって、特許文献1は、燃料電池を軽量にする点において、さらなる改良の余地がある。
【0008】
特許文献1は、屋外等に独立して設置されるよう構成されている。したがって、特許文献1は、燃料電池を持ち運び可能とする点においても、さらなる改良の余地がある。また、特許文献1は、燃料電池を屋内で利用可能とする点においても、さらなる改良の余地がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、屋内及び/又は屋外で利用可能であり、軽量かつ持ち運び容易な燃料電池及び燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、外部から供給される燃料を流すことが可能であるよう燃料流路を構成し、発電の状況に応じて燃料流路内部の気体を排気可能とすること等により、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
第1の特徴に係る発明は、燃料を用いて発電可能なセルと、前記セルに設けられ、外部から供給される燃料を流すことが可能な燃料流路と、前記燃料流路内部の気体を排気可能な排気弁と、前記排気弁の開閉状態を制御可能な排気制御部と、を備え、前記排気制御部は、前記発電の状況に応じて前記開閉状態を制御可能である、燃料電池を提供する。
【0012】
燃料を用いて発電する燃料電池において、燃料を供給する燃料供給手段は、比較的大きな重量となり得る。燃料供給手段に関し、例えば、重量が約12kgである水素ガス充てん量1.5m3の水素ガスボンベが市販されている。燃料電池が複数の水素ガスボンベ、複数の水素ガスボンベが連結されるカードル、及び該カードルを介して供給された水素の流量及び圧力を調整する水素発生機器等を有する燃料供給手段等を含む場合、燃料電池の重量が大きくなり、燃料電池の持ち運びが困難となり得る。
【0013】
第1の特徴に係る発明によれば、燃料を用いて発電可能なセルと、前記セルに設けられ、外部から供給される燃料を流すことが可能な燃料流路とを備えることにより、燃料供給手段を外部において別体に構成し、使用の際に外部の燃料供給手段を燃料流路に接続して燃料を供給し得る。これにより、燃料電池を軽量とし得る。燃料電池を軽量とし得るため、持ち運びを容易とし得る。
【0014】
外部の燃料供給手段を燃料流路に接続するとき及び/又はその前において、燃料流路は、外部の空気と接し得る。これにより、燃料流路に空気が混入し、燃料流路を流れる燃料の量が減少し得る。したがって、使用の際に燃料供給手段を燃料流路に接続する構成では、燃料流路を流れる燃料の量が減少することにより、発電が行われないリスクが生じ得る。
【0015】
燃料流路内部の気体を排気可能な排気弁があれば、外部から供給される燃料が燃料流路を流れることによって、排気弁を介して燃料流路内部の気体を押し出し、排気し得る。したがって、排気ポンプ等の比較的大型の排気手段を設けることなく、燃料流路を流れる燃料によって気体を排気できる。
【0016】
第1の特徴に係る発明によれば、発電の状況に応じて排気弁の開閉状態を制御可能であるため、空気が混入して発電が行われない場合に、混入した空気によって燃料の量が減少した気体を燃料流路から排気し得る。この排気により、燃料流路を流れる燃料の量が減少することにより発電が行われないリスクを軽減し、セルが発電を行い得る。
【0017】
また、第1の特徴に係る発明によれば、発電の状況に応じて排気弁の開閉状態を制御可能であるため、燃料流路における燃料の量が発電可能な量である気体が燃料流路から排気されることを防ぎ得る。
【0018】
第1の特徴に係る発明によれば、排気ポンプ等の排気手段を設けることなく、また、燃料濃度計等の燃料流路を流れる燃料の量を測定可能な手段を燃料流路に設けることなく、排気弁と排気制御部とによる簡易な構成で燃料流路からの排気を制御可能であるため、燃料電池を軽量とし得る。燃料電池を軽量とし得るため、持ち運びを容易とし得る。これにより、燃料電池を屋内及び/又は屋外へ持ち運んで利用できる。
【0019】
第1の特徴に係る発明によれば、燃料電池を軽量とし得る。したがって、屋内及び/又は屋外の利用する場所へ燃料電池を容易に持ち運びし得る。したがって、第1の特徴に係る発明によれば、屋内及び/又は屋外における小出力電源装置及び/又は非常用小型電源装置として燃料電池を利用できる。
【0020】
したがって、第1の特徴に係る発明によれば、屋内及び/又は屋外で利用可能であり、軽量かつ持ち運び容易な燃料電池を提供できる。
【0021】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、前記排気制御部は、前記燃料流路を流れる前記燃料の量に応じて前記開閉状態を制御可能である、燃料電池を提供する。
【0022】
第2の特徴に係る発明によれば、燃料流路を流れる燃料の量が発電に十分な量である場合に排気弁を閉じ、発電に十分な量の燃料を含む気体が燃料流路から排気されることを防ぎ得る。
【0023】
第2の特徴に係る発明によれば、燃料流路を流れる燃料の量が発電に十分な量でない場合に排気弁を開き、発電に十分な量の燃料を含まない気体を燃料流路から排気し得る。これにより、外部から供給される燃料を燃料流路に流し、燃料流路を流れる燃料の量を発電に十分な量とし得る。
【0024】
第2の特徴に係る発明によれば、排気ポンプ等の排気を行う部材を設けることなく、排気弁と排気制御部とによる簡易な構成で燃料流路からの排気を制御可能であるため、燃料電池を軽量とし得る。燃料電池を軽量とし得るため、持ち運びを容易とし得る。これにより、燃料電池を屋内及び/又は屋外へ持ち運んで利用できる。
【0025】
したがって、第2の特徴に係る発明によれば、屋内及び/又は屋外で利用可能であり、軽量かつ持ち運び容易な燃料電池を提供できる。
【0026】
第3の特徴に係る発明は、第1又は第2の特徴に係る発明であって、前記排気制御部は、前記外部から前記燃料流路への前記燃料の供給が開始される場合に前記排気弁の弁開度を上げる制御が可能である、燃料電池を提供する。
【0027】
発電が行われない場合において常に排気弁の弁開度を上げる制御では、燃料の供給が開始されていない場合にも排気弁の弁開度が大きい状態に制御され得る。これにより、排気弁を介して燃料流路に空気が混入するリスクが高まり得る。
【0028】
使用の際に燃料供給手段を燃料流路に接続することにより、燃料流路への空気の混入が生じ得る。使用の際において、燃料の供給が開始されてから、発電が行われる。したがって、燃料の供給が開始される場合において燃料流路に空気が混入しているリスクは、発電中において燃料流路に空気が混入しているリスクより高い。
【0029】
第3の特徴に係る発明によれば、燃料の供給が開始される場合に排気弁の弁開度を上げる制御が可能であるため、排気弁を介して燃料流路に空気が混入するリスクを軽減しつつ、燃料流路に空気が混入しているリスクが比較的高い場合である、燃料の供給が開始される場合において、空気が混入して燃料の量が減少した気体をより確実に排気するよう制御し得る。
【0030】
第3の特徴に係る発明によれば、燃料の量を測定する燃料濃度計等を燃料流路に備えることなく、このような制御を実現可能である。したがって、燃料電池をよりいっそう軽量とし得る。燃料電池をよりいっそう軽量とし得るため、持ち運びを容易とし得る。これにより、燃料電池を屋内及び/又は屋外へ持ち運んで利用できる。
【0031】
したがって、第3の特徴に係る発明によれば、屋内及び/又は屋外で利用可能であり、軽量かつ持ち運び容易な燃料電池を提供できる。
【0032】
第4の特徴に係る発明は、第1又は第2の特徴に係る発明であって、前記排気制御部は、前記外部から前記燃料流路への前記燃料の供給が開始されてから所定の時間前記発電が行われない場合に前記排気弁の弁開度を上げる制御が可能である、燃料電池を提供する。
【0033】
発電が行われない場合において常に排気弁の弁開度を上げる制御では、燃料の供給が開始されていない場合にも排気弁の弁開度が大きい状態に制御され得る。これにより、排気弁を介して燃料流路に空気が混入するリスクが高まり得る。
【0034】
燃料の供給が開始される場合に排気弁の弁開度を上げる制御では、燃料流路を流れる燃料の量が発電可能な量である場合にも、燃料流路からの排気が行われ得る。このような制御では、発電可能な量の燃料を含む気体が排気され、燃料が発電に使われることなく排気され得る。
【0035】
燃料の量を測定する燃料濃度計等を燃料流路に備えれば、燃料流路を流れる燃料の量が発電可能な量である場合において、燃料が発電に使われることなく排気されることを軽減し得るが、燃料濃度計等によって燃料電池の重量が増し得る。
【0036】
第4の特徴に係る発明によれば、燃料の供給が開始されてから所定の時間発電が行われない場合に、排気弁の弁開度を上げる制御が可能であるため、燃料流路を流れる燃料の量が発電可能な量である場合に排気を行うことを軽減することと、空気が混入して燃料の量が減少した気体を燃料流路から排気することとを、燃料濃度計等を備えることなく両立し得る。したがって、燃料電池をよりいっそう軽量とし得る。燃料電池をよりいっそう軽量とし得るため、持ち運びを容易とし得る。これにより、燃料電池を屋内及び/又は屋外へ持ち運んで利用できる。
【0037】
したがって、第4の特徴に係る発明によれば、屋内及び/又は屋外で利用可能であり、軽量かつ持ち運び容易な燃料電池を提供できる。
【0038】
第5の特徴に係る発明は、第1の特徴から第4の特徴のいずれかに係る発明であって、緊急用照明、非常用照明、作業用照明、演出用照明、及び/又は保安用照明に電力を供給可能である、燃料電池を提供する。
【0039】
災害現場などでは、救助活動や防災活動のための緊急用照明が必要とされ得る。停電時では、災害避難所などでの非常用照明が必要とされ得る。住宅街等での夜間工事では、作業用照明が必要とされ得る。キャンプや野外イベントでは、演出用照明、及び/又は保安用照明が必要とされ得る。
【0040】
これらの照明では、商用電源を利用できない場合があり得る。したがって、屋外で利用可能な軽量かつ持ち運び容易な電力供給手段の需要がある。一次電池及び/又は二次電池を用いた電力供給手段では、長時間の発電を行う点において、さらなる改良の余地がある。ガソリン式発電機等の内燃機関を用いた電力供給手段では、内燃機関に由来する騒音を軽減する点において、さらなる改良の余地がある。
【0041】
燃料電池は、一次電池及び/又は二次電池を用いた電力供給手段より長時間の発電を行い得る。燃料電池は、電気化学反応を用いて発電するため、内燃機関を用いた電力供給手段より騒音を軽減し得る。内燃機関を用いないため、二酸化炭素の排出量を減らすことも見込み得る。しかしながら、燃料供給手段を一体に構成した燃料電池では、重量が大きくなり得る。重量が大きいことにより、燃料電池の持ち運びが困難になり得る。
【0042】
第5の特徴に係る発明によれば、燃料供給手段を別体に構成し、使用の際に燃料供給手段を燃料流路に接続して燃料を供給し得ることにより、燃料電池を軽量とし得る。燃料電池を軽量とし得るため、持ち運び容易に燃料電池を構成できる。
【0043】
したがって、第5の特徴に係る発明によれば、屋内及び/又は屋外で利用可能であり、軽量かつ持ち運び容易な燃料電池を提供できる。
【0044】
第6の特徴に係る発明は、第1の特徴から第5の特徴のいずれかに係る燃料電池と、前記燃料電池とは別体に設けられ、前記燃料電池に水素を供給可能な水素供給手段と、を含んで構成される、燃料電池システムを提供する。
【0045】
第6の特徴に係る発明によれば、別体に設けられた水素供給手段が燃料である水素を燃料流路に供給可能であるため、使用の際に水素供給手段を燃料流路に接続して燃料を供給し得る。これにより、燃料電池を軽量とし得る。燃料電池を軽量とし得るため、持ち運びを容易とし得る。
【0046】
液化石油ガス(liquefied petroleum gas、LPG、LPガス)及び天然ガス(natural gas)等によって例示される水素を含む化合物を燃料とする燃料電池と水素ガスを燃料とする燃料電池とが利用されている。水素を含む化合物を燃料とする燃料電池では、燃料を発電に適した水素ガスの態様に改質する改質器を必要とし得る。
【0047】
第6の特徴に係る発明によれば、水素供給手段と接続可能に構成されるため、改質器を備えることなく燃料電池を構成し得る。したがって、燃料電池をよりいっそう軽量とし得る。燃料電池をよりいっそう軽量とし得るため、持ち運びを容易とし得る。これにより、燃料電池を屋内及び/又は屋外へ持ち運んで利用できる。
【0048】
したがって、第6の特徴に係る発明によれば、屋内及び/又は屋外で利用可能であり、軽量かつ持ち運び容易な燃料電池システムを提供できる。
【0049】
第7の特徴に係る発明は、第6の特徴に係る発明であって、前記燃料電池が持ち運び可能に構成され、前記燃料電池の質量が20kg以下である、燃料電池システムを提供する。
【0050】
第7の特徴に係る発明によれば、水素供給手段を別体に構成し、使用の際に水素供給手段を燃料流路に接続して燃料を供給し得ることにより、改質器を備えることなく燃料電池を構成し得る。したがって、燃料電池を20kg以下の軽量とし得る。燃料電池を20kg以下の軽量とし得るため、燃料電池を一人で持って運搬し得る。すなわち、持ち運び容易な燃料電池を含む燃料電池システムを構成できる。
【0051】
使用の際に水素供給手段を燃料流路に接続するとき及び/又はその前に空気が燃料流路に混入し得る。第7の特徴に係る発明によれば、排気弁と排気制御部とによる簡易な構成で空気が混入した気体を燃料流路から排気可能であるため、燃料電池を20kg以下の軽量とし得る。
【0052】
第7の特徴に係る発明によれば、燃料電池を20kg以下の軽量とし得るため、燃料電池を一人で持って運搬し得る。すなわち、持ち運び容易に燃料電池を構成できる。これにより、軽量かつ屋内及び/又は屋外へ持ち運んで利用できる燃料電池を含む燃料電池システムを構成できる。
【0053】
したがって、第7の特徴に係る発明によれば、屋内及び/又は屋外で利用可能であり、軽量かつ持ち運び容易な燃料電池システムを提供できる。
【0054】
第8の特徴に係る発明は、第6又は第7の特徴に係る発明であって、前記排気弁に取り付け可能な気液分離手段を含む、燃料電池システムを提供する。
【0055】
混入した空気によって燃料の量が減少した気体を燃料流路から排気する場合、燃料流路内部の水が排気弁から排出され得る。これにより、燃料電池の周辺が水で濡れ得る。第8の特徴に係る発明によれば、気液分離手段によって水を分離できる。これにより、水を排出することなく、燃料の量が減少した気体のみを排気し得る。したがって、燃料電池を屋内で利用する場合において、屋内が水で濡れることを防ぎ得る。これにより、屋内でよりいっそう利用可能な燃料電池システムを提供できる。
【0056】
したがって、第8の特徴に係る発明によれば、屋内及び/又は屋外で利用可能であり、軽量かつ持ち運び容易な燃料電池システムを提供できる。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、屋内及び/又は屋外で利用可能であり、軽量かつ持ち運び容易な燃料電池及び燃料電池システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、燃料電池システム1のハードウェア構成及びソフトウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態における燃料電池2の概略を模式的に示す概略模式図である。
【
図3】
図3は、制御部22で実行される発電制御処理の好ましい流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、持ち運び状態の燃料電池システム1を右方からみた概略図である。
【
図5】
図5は、使用状態の燃料電池システム1を右方からみた概略図である。
【
図6】
図6は、燃料電池2に接続部4を介して燃料供給手段3を接続するときの空気の混入を説明する説明図である。
【
図7】
図7は、燃料流路241に空気が混入した気体がある状態を説明する説明図である。
【
図8】
図8は、空気が混入した気体を燃料流路241から排気することを説明する説明図である。
【
図9】
図9は、台車Cの形状が
図4と異なる燃料電池システム1を右方からみた概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、本発明を実施するための好適な形態の一例について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0060】
<燃料電池システム1>
図1は、燃料電池システム1のハードウェア構成及びソフトウェア構成を示すブロック図である。以下、
図1を用いて、本実施形態の燃料電池システム1の好ましい態様の一例を説明する。
【0061】
燃料電池システム1(以下、単に「システム1」とも称する。)は、少なくとも、燃料電池2と、接続部4を介して燃料電池2に燃料を供給可能な燃料供給手段3とを含んで構成される。
【0062】
必須の態様ではないが、システム1は、燃料電池2が発電する電力を利用する電気機器5を含むことが好ましい。システム1が電気機器5を含むことにより、燃料電池2が発電した電力を利用して電気機器5を作動させ得る。
【0063】
〔燃料電池2〕
図2は、本発明の実施形態における燃料電池2の概略を模式的に示す概略模式図である。燃料電池2は、少なくとも、筐体21、制御部22、セル24、吸気部25、排気部26、排気弁27、電力供給部28を備える。
【0064】
必須の態様ではないが、燃料電池2は、セル24への燃料の供給状態を制御可能な燃料弁23を備えることが好ましい。これにより、燃料供給手段3及び/又は接続部4において燃料の供給状態を制御することなく、セル24への燃料の供給状態を制御し得る。また、燃料供給手段3及び/又は接続部4が燃料を供給する状態である場合に、セル24への燃料の供給状態をセル24に燃料を供給する状態とセル24に燃料を供給しない状態との間で制御し得る。
【0065】
必須の態様ではないが、燃料電池2は、セル24の温度を調整可能な調温部29を備えることが好ましい。これにより、セル24の温度を発電に適した温度範囲に調整し得る。
【0066】
燃料電池2の重量の上限は、20kg以下であることが好ましく、14kg以下であることがさらに好ましい。
【0067】
燃料電池2の重量の上限を20kg以下とすることにより、燃料電池2を一人で持って運搬し得る。すなわち、持ち運び容易な燃料電池2を含む燃料電池システム1を構成できる。
【0068】
燃料電池2の重量の上限を14kg以下とすることにより、燃料電池2を片手で持って運搬し得る。すなわち、よりいっそう持ち運び容易な燃料電池2を含む燃料電池システム1を構成できる。
【0069】
燃料電池2の重量の下限は、7kg以上であることが好ましく、10kg以上であることが好ましく、12kg以上であることがさらに好ましい。燃料電池2の重量の下限を上述のとおり定めることにより、より大型のセル24等を含む構成の燃料電池2とし得る。これにより、電気機器5を動作させるために十分な電力を発電し得る。
【0070】
[筐体21]
筐体21は、燃料電池2を構成する各種の構成要素を収容可能に構成された筐体であり、少なくとも、筐体本体211及び燃料供給手段接続部213を有する。
【0071】
必須の態様ではないが、筐体21は、把持することで、燃料電池2の持ち運びを容易にすることが可能な把持部212を有することが好ましい。これにより、システム1及び/又は燃料電池2を利用する利用者は、把持部212を把持して燃料電池2を容易に持ち運び得る。
【0072】
必須の態様ではないが、筐体21は、燃料電池2に関する各種の操作を実行可能な操作部214を有することが好ましい。これにより、システム1及び/又は燃料電池2を利用する利用者は、操作部214を介して燃料電池2を操作し得る。
【0073】
(筐体本体211)
筐体本体211は、燃料電池2を構成する各種の構成要素を所定の位置関係において収容する。筐体本体211は、特に限定されず、従来技術の燃料電池の筐体本体でよい。筐体21が筐体本体211を有することにより、セル24及び排気弁27によって例示される各種の構成要素を燃料電池2が好適に動作する所定の位置関係において収容できる。
【0074】
筐体本体211は、外部の水が内部に侵入することを防ぐ構造を有するよう構成されることが好ましい。これにより、雨、霧、及び雪等によって例示される気象現象によって水が筐体21に付着し得る屋外であっても、燃料電池2を構成する各種の構成要素に含まれる電気素子等が水に触れることを防ぎ得る。これにより、電気素子等の故障を防ぎ得る。したがって、屋外で利用可能な燃料電池2を提供できる。
【0075】
筐体本体211における外部の水が内部に侵入することを防ぐ構造は、鉛直に落下する水滴が内部に侵入することを防ぐ構造であることが好ましく(例えば、JIS C 0920におけるIPX1)、15°以内で傾斜しても鉛直に落下する水滴が内部に侵入することを防ぐ構造であることがより好ましく(同IPX2)、散水が内部に侵入することを防ぐ構造であることがさらに好ましく(同IPX3)、水の飛まつが内部に侵入することを防ぐ構造であることがさらにいっそう好ましい(同IPX4)。筐体本体211における外部の水が内部に侵入することを防ぐ構造が上述の構造であることにより、電気素子等の故障をよりいっそう防ぎ得る。
【0076】
外部の水が内部に侵入することを防ぐ構造は、特に限定されず、従来技術の防滴構造及び/又は防水構造を含む構造でよい。外部の水が内部に侵入することを防ぐ構造は、例えば、封止材によって隙間を防ぐ構造、筐体本体211を二重に形成する構造、内部に侵入しようとする水を排水する構造、撥水加工を施した構造、及び筐体本体211の少なくとも一部を継目のない形状とする構造の1以上を含む構造でよい。
【0077】
(把持部212)
把持部212は、把持することで、燃料電池2の持ち運びを容易にすることが可能な把持部であれば、特に限定されず、従来技術の把持部でよい。把持部212は、例えば、筐体本体211に固定された複数の土台部とこれら複数の土台部に接続された取手部とを含む把持部等でよい。筐体21が把持部212を有することにより、把持部212を把持して燃料電池2を容易に持ち運び得る。
【0078】
(燃料供給手段接続部213)
燃料供給手段接続部213は、接続部4を介して燃料供給手段3とセル24とを接続可能にする燃料供給手段接続部であれば、特に限定されず、従来技術の燃料供給手段を接続可能な接続部でよい。燃料供給手段接続部213を有することにより、燃料供給手段接続部213及び接続部4を介して燃料供給手段3をセル24に接続し得る。
【0079】
燃料供給手段接続部213は、例えば、接続部4を接続可能な燃料補給口等を含む燃料供給手段接続部でよい。燃料供給手段接続部213は、燃料供給手段3とセル24とを接続しない場合に外部の空気がセル24内部に侵入することを防ぐよう構成されることが好ましい。これにより、セル24内部に外部の空気が侵入することを防ぎ得る。
【0080】
燃料供給手段3が燃料電池2に水素を供給する場合、燃料供給手段接続部213は、燃料供給手段接続部213の中心に対して略下方に接続部4と接続される部分を設けるよう構成されることが好ましい。これにより、水素より比重が大きい気体である空気が燃料供給手段接続部213を介してセル24内部に侵入することを軽減し得る。
【0081】
(操作部214)
操作部214は、燃料電池2に関する各種の操作を提供可能な操作部であれば、特に限定されず、電源スイッチ、非常停止スイッチ、及び発電量調節スイッチ等によって例示される従来技術の操作部でよい。筐体21が操作部214を有することにより、燃料電池2に関する各種の操作を提供し得る。
【0082】
操作部214は、燃料電池2に関する各種の操作に関する情報を制御部22に提供可能な操作部であることが好ましい。これにより、燃料電池2に関する各種の操作に関する情報を、操作部214を介して制御部22に提供し得る。
【0083】
操作部214は、例えば、切替えスイッチ、トグルスイッチ、スライドスイッチ、回転スイッチ、レバースイッチ、鍵付スイッチ、フットスイッチ、及び電子スイッチ等によって例示される従来技術のスイッチを用いる操作手段及び/又はタッチパネルを用いる操作手段等の1以上を含む操作部でよい。
【0084】
操作部214は、例えば、有線リモートコントローラ、無線リモートコントローラ、及び/又は通信ネットワーク(例えば、携帯電話ネットワーク、有線LAN、無線LAN、USB等のバスネットワーク、Bluetooth(登録商標)規格に対応したネットワーク等)を介した操作を受信可能な操作手段等によって例示される遠隔操作を実行可能な従来技術の操作手段の1以上を含む操作部でもよい。
【0085】
[制御部22]
制御部22は、燃料電池2におけるソフトウェア構成の要素である発電制御部221及び排気制御部222等を実現可能な制御部であれば特に限定されず、集積回路(integrated circuit、IC)等を用いて構成された電子回路、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)等を用いて構成されたマイクロコンピュータの1以上を有する制御部でよい。
【0086】
燃料電池2が制御部22を備えることにより、発電制御部221及び排気制御部222を実現し、後に
図3を用いて詳細に説明する発電制御処理を実行できる。
【0087】
必須の態様ではないが、制御部22は、操作部214から提供される燃料電池2に関する各種の操作に関する情報を受信可能であることが好ましい。これにより、制御部22は、燃料電池2に関する各種の操作に関する情報を受信し、利用し得る。
【0088】
[燃料弁23]
燃料弁23は、セル24への燃料の供給状態を制御可能な燃料弁であれば、特に限定されず、従来技術の燃料弁でよい。燃料電池2が燃料弁23を備えることにより、燃料供給手段3及び/又は接続部4において燃料の供給状態を制御することなく、セル24への燃料の供給状態を制御し得る。また、燃料供給手段3及び/又は接続部4が燃料を供給する状態である場合に、セル24への燃料の供給状態をセル24に燃料を供給する状態とセル24に燃料を供給しない状態との間で制御し得る。
【0089】
必須の態様ではないが、燃料弁23は、制御部22からの制御に応じて弁の開閉状態を電気的に制御可能な弁であることが好ましい。これにより、制御部22は、燃料供給手段3及び/又は接続部4において燃料の供給状態を制御することなく、セル24への燃料の供給状態を制御し得る。また、制御部22は、燃料供給手段3及び/又は接続部4が燃料を供給する状態である場合に、セル24への燃料の供給状態をセル24に燃料を供給する状態とセル24に燃料を供給しない状態との間で制御し得る。
【0090】
電気的に制御可能な弁である燃料弁23は、特に限定されず、従来技術の電磁弁、電磁バルブ、電動弁、及び/又は電動バルブを含む燃料弁でよい。
【0091】
[セル24]
セル24は、燃料を用いて発電可能なセルである。セル24は、特に限定されず、従来技術における燃料電池のセルでよい。セル24の数は、1以上であれば、特に限定されない。セル24は、燃料流路241、燃料極242、電解質243、酸素極244、及び酸素流路245を有する。
【0092】
セル24は、例えば、固体酸化物形燃料電池(Solid oxide fuel cell、SOFC)のセル、アルカリ電解質形燃料電池(Alkaline Fuel Cell、AFC)のセル、溶融炭酸塩型燃料電池(Molten-carbonate fuel cells、MCFC)のセル、りん酸形燃料電池(Phosphoric acid fuel cell、PAFC)のセル、固体高分子形燃料電池(Proton-exchange membrane fuel cells、PEMFC、polymer electrolyte membrane、PEM)のセル、及びこれらのセルの1以上を含むセルでよい。
【0093】
セル24は、りん酸形燃料電池及び/又は固体高分子形燃料電池のセルを含むセルであることがより好ましい。りん酸形燃料電池及び/又は固体高分子形燃料電池は、200℃以下の比較的低温で動作可能であるため、200℃を超える高温までセル24の温度を上昇可能な大型の調温部等を設けることなく構成し得る。したがって、燃料電池2をよりいっそう軽量にし得る。
【0094】
セル24は、固体高分子形燃料電池のセルを含むセルであることがさらに好ましい。固体高分子形燃料電池は、100℃以下の比較的低温で動作可能であるため、100℃を超える高温までセル24の温度を上昇可能な比較的大型の調温部等を設けることなく構成し得る。また、りん酸形燃料電池において電解質243として利用するリン酸水溶液を含むことなく燃料電池2を構成し得る。したがって、燃料電池2をさらにいっそう軽量にし得る。以下、セル24は、固体高分子形燃料電池のセルを含むセルであるものとして説明する。
【0095】
(燃料流路241)
燃料流路241は、セル24に設けられ、セル24における電気化学反応を用いた発電において還元剤として機能する燃料の流路である。燃料流路241は、燃料弁23を介して外部から供給される燃料を燃料極242に供給可能に構成される。セル24が外部から供給される燃料を燃料極242に供給可能な燃料流路241を有することにより、燃料極242に燃料を供給できる。
【0096】
これにより、セル24は、外部から供給される燃料を用いて、連続的に発電し得る。したがって、一次電池及び/又は二次電池より大きい電力量を連続的に取り出すことが可能な燃料電池2を提供できる。
【0097】
燃料電池2が燃料を用いて発電可能なセル24と、セル24に設けられ、外部から供給される燃料を流すことが可能な燃料流路241とを備えることにより、燃料供給手段3を外部において別体に構成し、使用の際に外部の燃料供給手段3を燃料流路241に接続して燃料を供給し得る。これにより、燃料電池2を軽量とし得る。燃料電池2を軽量とし得るため、持ち運びを容易とし得る。
【0098】
燃料流路241は、排気弁27を介して内部の気体を排気可能に構成される。これにより、燃料流路241内部に空気が混入して発電が行われない場合に、混入した空気によって燃料の量が減少した気体を燃料流路241から排気し得る。
【0099】
セル24が固体高分子形燃料電池のセルを含むセルである場合、燃料流路241は、燃料極242及び/又は電解質243に水を供給可能な流路であることが好ましい。これにより、固体高分子形燃料電池のセル24における燃料極242及び/又は電解質243が乾燥し、発電効率が低下することを防ぎ得る。
【0100】
燃料流路241が燃料極242及び/又は電解質243に水を供給可能な流路である場合、燃料流路241は、酸素流路245から供給される水を利用可能であることが好ましい。これにより、酸素流路245以外の水を供給する手段を備えることなく、及び/又は酸素流路245以外の水を供給する手段を小型に構成して、燃料極242及び/又は電解質243に水を供給し得る。したがって、燃料電池2をよりいっそう軽量にし得る。
【0101】
燃料電池2が複数のセル24を備える場合、燃料流路241は、他のセル24が有する燃料流路241の1以上と連通するよう構成されることが好ましい。これにより、内部に発電可能な燃料がある場合に、他のセル24が有する燃料流路241に燃料を供給し得る。また、これにより、内部に発電可能な燃料がない場合に、他のセル24が有する燃料流路241から燃料を供給され得る。
【0102】
燃料流路241が他のセル24が有する燃料流路241の1以上と連通するよう構成されることにより、燃料流路241は、燃料弁23と直接接続することなく、他のセル24が有する燃料流路241を介して外部から供給される燃料を燃料極242に供給し得る。これにより、燃料流路241における燃料弁23と接続する構造の数を減らし、燃料電池2をよりいっそう軽量にし得る。
【0103】
燃料流路241が他のセル24が有する燃料流路241の1以上と連通するよう構成されることにより、燃料流路241は、排気弁27と直接接続することなく、他のセル24が有する燃料流路241を介して内部の気体を排気し得る。これにより、燃料流路241における排気弁27と接続する構造の数を減らし、燃料電池2をよりいっそう軽量にし得る。
【0104】
(燃料極242)
燃料極242は、セル24に設けられ、電解質243及び酸素極244と協働することで、燃料流路241から供給された燃料を用いて電子を外部に供給する反応を実現可能なアノードである。燃料極242は、特に限定されず、従来技術の燃料電池の燃料極でよい。セル24が燃料極242を有することにより、燃料流路241から供給された燃料を用いて電子を電力供給部28に供給することができる。これにより、セル24は、燃料を用いて発電できる。
【0105】
燃料極242は、燃料を用いて電子を外部に供給する反応を促す触媒を含むことが好ましい。これにより、セル24における発電効率をよりいっそう高めることができる。触媒は、特に限定されず、従来技術の燃料電池の燃料極で用いる触媒でよい。
【0106】
燃料極242は、燃料を拡散可能な拡散構造を含むことが好ましい。これにより、燃料を拡散し、燃料を用いて電子を電力供給部28に供給する反応をよりいっそう効率的に行い得る。そして、セル24における発電効率をよりいっそう高めることができる。
【0107】
セル24がりん酸形燃料電池及び/又は固体高分子形燃料電池のセルである場合、燃料極242は、燃料を還元することで生成した水素イオンを、電解質243を介して酸素極244に供給可能であることが好ましい。これにより、酸素極244に正の電荷を有する水素イオンを供給し、電子を外部に供給し得る。
【0108】
(電解質243)
電解質243は、セル24に設けられ、燃料極242と酸素極244との間におけるイオンの移動を媒介可能な電解質である。電解質243は、特に限定されず、従来技術の燃料電池の電解質でよい。セル24が電解質243を有することにより、燃料極242と酸素極244との間におけるイオンの移動を媒介し、燃料極242が電力供給部28を外部に供給するようにし得る。
【0109】
セル24がりん酸形燃料電池のセルである場合、電解質243は、リン酸水溶液を含むことが好ましい。これにより、リン酸水溶液によって水素イオンの移動を媒介し、燃料極242が電子を外部に供給するようにし得る。
【0110】
セル24が固体高分子形燃料電池のセルである場合、電解質243は、イオン伝導性を有する高分子(イオン交換樹脂)を含むことが好ましい。これにより、イオン交換樹脂によって水素イオンの移動を媒介し、燃料極242が電子を電力供給部28に供給するようにし得る。
【0111】
イオン交換樹脂は、イオン交換樹脂を膜状にしたイオン交換膜であることが好ましい。これにより、水素イオンの移動距離を短くし、水素イオンがよりいっそう容易に移動し得る。したがって、セル24の発電効率を高め得る。
【0112】
(酸素極244)
酸素極244は、セル24に設けられ、燃料極242及び電解質243と協働することで、酸素流路245から供給された酸素を用いた電気化学反応によって電流を生成可能なカソードである。酸素極244は、特に限定されず、従来技術の燃料電池の酸素極でよい。セル24が酸素極244を有することにより、酸素流路245から供給された酸素を用いた電気化学反応によって燃料極242が電力供給部28に供給した電子を受け取り、電流を生成することができる。これにより、セル24は、燃料を用いて発電できる。
【0113】
酸素極244は、酸素を用いた電気化学反応を促す触媒を含むことが好ましい。これにより、セル24における発電効率をよりいっそう高めることができる。触媒は、特に限定されず、従来技術の燃料電池の酸素極で用いる触媒でよい。
【0114】
酸素極244は、酸素を拡散可能な拡散構造を含むことが好ましい。これにより、酸素を拡散し、酸素を用いた電気化学反応をよりいっそう効率的に行い得る。そして、セル24における発電効率をよりいっそう高めることができる。
【0115】
セル24がりん酸形燃料電池及び/又は固体高分子形燃料電池のセルである場合、酸素極244は、電解質243を介して燃料極242から水素イオンを受け取ることが可能であることが好ましい。これにより、燃料極242から正の電荷を有する水素イオンを受け取り、電流を生成し得る。
【0116】
(酸素流路245)
酸素流路245は、セル24に設けられ、セル24における電気化学反応を用いた発電において酸化剤として機能する酸素を含む気体の流路である。セル24が酸素流路245を有することにより、酸素極244に酸素を供給できる。
【0117】
酸素流路245は、空気吸気部25を介して外部から供給される気体に含まれる酸素を酸素極244に供給可能に構成される。これにより、セル24は、外部から供給される気体に含まれる酸素を用いて、連続的に発電し得る。したがって、一次電池及び/又は二次電池より大きい電力量を連続的に取り出すことが可能な燃料電池2を提供できる。
【0118】
酸素流路245は、空気排気部26を介して発電後の気体を酸素流路245の外部に排出可能に構成されることが好ましい。これにより、発電によって酸素の量が減少した発電後の気体が酸素流路245に残り、セル24の発電効率が低下することを防ぎ得る。
【0119】
燃料電池2が複数のセル24を備える場合、酸素流路245は、他のセル24が有する酸素流路245の1以上と連通するよう構成されることが好ましい。これにより、内部に発電可能な酸素がある場合に、他のセル24が有する酸素流路245に酸素を供給し得る。また、これにより、内部に発電可能な酸素がない場合に、他のセル24が有する酸素流路245から酸素を供給され得る。
【0120】
酸素流路245が他のセル24が有する酸素流路245の1以上と連通するよう構成されることにより、酸素流路245は、空気吸気部25と直接接続することなく、他のセル24が有する酸素流路245を介して外部から供給される酸素を含む気体を酸素極244に供給し得る。これにより、酸素流路245における空気吸気部25と接続する構造の数を減らし、燃料電池2をよりいっそう軽量にし得る。
【0121】
酸素流路245が他のセル24が有する酸素流路245の1以上と連通するよう構成されることにより、酸素流路245は、空気排気部26と直接接続することなく、他のセル24が有する酸素流路245を介して発電後の気体を排気し得る。これにより、酸素流路245における空気排気部26と接続する構造の数を減らし、燃料電池2をよりいっそう軽量にし得る。
【0122】
セル24がりん酸形燃料電池及び/又は固体高分子形燃料電池のセルである場合、酸素極244における電気化学反応では、燃料極242から電解質243を介して供給された水素イオンと酸素流路から供給された酸素とが結合し、水を生成する。
【0123】
セル24が固体高分子形燃料電池のセルであり、かつ、燃料流路241が燃料極242及び/又は電解質243に水を供給可能な流路である場合、酸素流路245は、酸素極244における電気化学反応によって生成された水を燃料流路241に供給可能であることが好ましい。これにより、酸素流路245以外の水を供給する手段を備えることなく、及び/又は酸素流路245以外の水を供給する手段を小型に構成して、燃料極242及び/又は電解質243に水を供給し得る。したがって、燃料電池2をよりいっそう軽量にし得る。
【0124】
[空気吸気部25]
空気吸気部25は、燃料電池2外部の空気を酸素流路245に提供可能な吸気部である。燃料電池2が空気吸気部25を備えることにより、燃料電池2外部の空気を酸素流路245に提供し、空気に含まれる酸素を酸素極244に供給し得る。空気吸気部25は、特に限定されず、ポンプ及びファン等によって例示される空気を移動可能な従来技術の手段の1以上を含む吸気部でよい。
【0125】
酸素流路245に提供される空気の量が多ければ、セル24における電気化学反応が活発に行われ、発電量が増大し得る。酸素流路245に提供される空気の量が少なければ、セル24における電気化学反応が抑制され、発電量が減少し得る。
【0126】
空気吸気部25は、制御部22から制御可能であることが好ましい。これにより、制御部22の制御に応じて酸素流路245に提供する空気の量を増減し得る。したがって、制御部22は、空気吸気部25の制御を介してセル24における発電量を増減し得る。
【0127】
[空気排気部26]
空気排気部26は、酸素流路245内部の気体を排気可能な排気部である。燃料電池2が空気排気部26を備えることにより、発電によって酸素の量が減少した発電後の気体が酸素流路245に残り、セル24の発電効率が低下することを防ぎ得る。空気排気部26は、特に限定されず、例えば、酸素流路245内部とセル24外部とを連通する排気口等の従来技術の排気部でよい。
【0128】
セル24が固体高分子形燃料電池のセルである場合、酸素極244における電気化学反応は、水を生成する。燃料電池2外部の気温が低い場合、この水が空気排気部26において凍結し、空気排気部26における排気を妨げ得る。
【0129】
空気排気部26は、燃料電池2外部と空気排気部26とを断熱可能な断熱構造を有することが好ましい。これにより、例えば、燃料電池2外部の気温が0℃以下の低温であっても、水が空気排気部26において凍結し、空気排気部26における排気を妨げることを防ぎ得る。したがって、寒冷地及び/又は冬季等において低温となり得る屋外で利用可能な燃料電池2を提供できる。
【0130】
燃料電池2外部と空気排気部26とを断熱可能な断熱構造は、燃料電池2外部の気温が-10℃以下の低温であっても、水が空気排気部26において凍結することを防ぎ得る断熱構造であることが好ましい。これにより、水が空気排気部26において凍結し、空気排気部26における排気を妨げることをよりいっそう防ぎ得る。したがって、寒冷地及び/又は冬季等において低温となり得る屋外で利用可能な燃料電池2を提供できる。
【0131】
[排気弁27]
排気弁27は、制御部22からの制御に応じて弁の開閉状態を制御可能であり、燃料流路241内部の気体を排気可能な弁である。
【0132】
外部の燃料供給手段3を燃料流路241に接続するとき及び/又はその前において、燃料流路241は、外部の空気と接し得る。これにより、燃料流路241に空気が混入し、燃料流路241を流れる燃料の量が減少し得る。したがって、使用の際に燃料供給手段3を燃料流路241に接続する構成では、燃料流路241を流れる燃料の量が減少することにより、発電が行われないリスクが生じ得る。
【0133】
燃料電池2が排気弁27を備えることにより、外部から供給される燃料が燃料流路241を流れることによって、排気弁27を介して燃料流路241内部の気体を押し出し、排気し得る。したがって、排気ポンプ等の比較的大型の排気手段を設けることなく、燃料流路241を流れる燃料によって空気が混入した気体を排気できる。
【0134】
排気弁27は、制御部22からの制御に応じて弁の開閉状態を電気的に制御可能な弁であれば、特に限定されない。電気的に制御可能な弁である排気弁27は、特に限定されず、従来技術の電磁弁、電磁バルブ、電動弁、及び/又は電動バルブを含む燃料弁でよい。排気弁27が制御部22からの制御に応じて弁の開閉状態を電気的に制御可能な弁であることにより、後述する発電制御処理において排気弁27を制御できる。
【0135】
燃料供給手段3が供給する燃料が水素である場合、排気弁27は、燃料流路241の中心より略下方において燃料流路241と接続されていることが好ましい。水素は、空気より比重が軽い。これにより、空気と水素とが混合された気体において、水素は、気体の略上方へ移動し、空気は、気体の略下方へ移動する。
【0136】
排気弁27が燃料流路241の中心より略下方において燃料流路241と接続されていることにより、排気弁27から排気される気体に含まれる空気の量を水素の量より多くし得る。これにより、燃料流路241内部の気体に含まれる空気をよりいっそう排気し得る。
【0137】
必須の態様ではないが、排気弁27は、セル24内部の水を排出可能であることが好ましい。セル24内部において、電気化学反応によって水が生成される。生成された水により、セル24内部に余剰の水が生じ、セル24の発電効率が低下し得る。排気弁27がセル24内部の水を排出可能であることにより、余剰の水をセル24内部から排出し、発電効率を改善し得る。
【0138】
必須の態様ではないが、排気弁27は、チューブ、ホース、及びパイプ等によって例示される移送手段を介して気体を排気可能であることが好ましい。これにより、燃料電池2と異なる位置に気体を排気し得る。これにより、燃料電池2を屋内で利用する場合において、燃料電池2と異なる位置である屋外に気体を排気し得る。したがって、屋内に燃料を含む気体を排気することを防ぎ得る。これにより、屋内でよりいっそう利用可能な燃料電池2を提供できる。
【0139】
[電力供給部28]
電力供給部28は、セル24において発電された電力を電気機器5等の外部の電気機器に供給可能な電力供給部である。燃料電池2が電力供給部28を備えることにより、セル24において発電された電力を外部の電気機器に供給できる。
【0140】
電力供給部28は、セル24において発電された電力を電気機器が好適に利用可能な態様に変換する手段を有することが好ましい。これにより、電気機器は、セル24において発電された電力を好適に利用し得る。
【0141】
セル24において発電された電力を電気機器が利用可能な態様に変換する手段は、特に限定されず、直流電流を交流電流に変換するインバータ及び電圧を調整する電圧調整器等によって例示される従来技術の電力を変換可能な手段の1以上を含む手段でよい。
【0142】
電力供給部28は、漏電等による過電流から燃料電池2が備える各種の電気素子を保護可能な過電流保護手段を有することが好ましい。これにより、屋外において生じた水ぬれ等による漏電が仮に生じたとしても、燃料電池2が備える各種の電気素子を過電流から保護し得る。したがって、雨、雪、及び霧等によって例示される気象現象によって燃料電池2がぬれ得る屋外で利用可能な燃料電池2を提供できる。
【0143】
電力供給部28は、セル24において発電された電力量に関する情報を制御部22に提供可能であることが好ましい。これにより、制御部22は、発電された電力量を用いた発電制御処理を行い得る。
【0144】
[調温部29]
調温部29は、セル24の温度を調整可能な調温部である。燃料電池2が調温部29を備えることにより、セル24の温度を発電に適した温度範囲に調整し得る。
【0145】
調温部29は、セル24の温度を調整可能な調温部であれば、特に限定されず、ヒーター、冷却ファン、及びペルチェ素子等によって例示される従来技術の温度を調整可能な手段の1以上を含む調温部でよい。
【0146】
なかでも、調温部29は、ペルチェ素子を含む調温部であることが好ましい。ペルチェ素子は、単一の素子で加熱及び冷却を行うことが可能であるため、調温部を小型かつ軽量に構成し得る。したがって、燃料電池2をよりいっそう軽量にし得る。
【0147】
調温部29は、制御部22の制御に応じてセル24の温度を調整可能であることが好ましい。これにより、制御部22は、調温部29の制御を介してセル24の温度を発電に適した温度範囲に調整し得る。
【0148】
調温部29は、セル24の温度に関する情報を取得可能であることが好ましい。これにより、セル24の温度に応じてセル24の温度を調整し得る。調温部29は、セル24の温度に関する情報を制御部22に提供可能であることが好ましい。これにより、制御部22は、セル24の温度に応じてセル24の温度を調整し得る。
【0149】
調温部29は、セル24の発電量に関する情報を取得可能であることが好ましい。これにより、セル24の発電量に応じてセル24の温度を調整し得る。調温部29は、セル24の発電量に関する情報を制御部22に提供可能であることが好ましい。これにより、制御部22は、セル24の発電量に応じてセル24の温度を調整し得る。
【0150】
調温部29が冷却ファンを含み、かつ、セル24の温度及び/又は発電量に応じてセル24の温度を調整可能であることにより、冷却ファンから生じる騒音を必要最小限に抑え得る。これにより、夜間の住宅街等によって例示される騒音を抑える要望がある屋外で利用可能な燃料電池2を提供できる。
【0151】
[その他の構成要素]
(電源部)
必須の態様ではないが、燃料電池2は、制御部22、燃料弁23、空気吸気部25、排気弁27、調温部29等によって例示される燃料電池2が備える各種の構成要素に電力を供給可能な電源部(図示せず)を有することが好ましい。これにより、屋外等の外部から電力を供給することに困難が生じ得る場合であっても、燃料電池2が備える各種の構成要素に電力を供給し得る。これにより、屋外で利用可能な燃料電池2を提供できる。
【0152】
電源部は、充電可能な二次電池を含むことが好ましい。これにより、セル24が発電した電力を用いて電源部に含まれる二次電池を充電し得る。したがって、二次電池を含まない電源部より長期間、制御部22に電力を供給し得る。二次電池は、単三型二次電池、単四型二次電池、単五型二次電池、及びコイン型二次電池によって例示される小型の二次電池であることが好ましい。これにより、燃料電池2をよりいっそう軽量にし得る。
【0153】
(計量部)
必須の態様ではないが、燃料電池2は、セル24の温度、セル24における発電量、及び/又は燃料流路241を流れる燃料の量を計量可能な計量部(図示せず)を備えることが好ましい。これにより、セル24の温度及び/又は発電量に応じて調温部29を制御し得る。また、これにより、燃料流路241を流れる燃料の量が発電に十分な量である場合に排気弁27を閉じ、発電に十分な量の燃料を含む気体が燃料流路241から排気されることを防ぎ得る。
【0154】
計量部を備えることにより、燃料流路241を流れる燃料の量が発電に十分な量でない場合に排気弁27を開き、発電に十分な量の燃料を含まない気体を燃料流路241から排気し得る。これにより、外部から供給される燃料を燃料流路241に流し、燃料流路241を流れる燃料の量を発電に十分な量とし得る。
【0155】
計量部は、特に限定されず、燃料の流量を計量可能な流量計、燃料の圧力を計量可能な圧力計、及び燃料の濃度を計量可能な濃度計等により例示される従来技術における各種センサの1以上を含む計量部でよい。
【0156】
(表示部)
燃料電池2は、燃料電池2の動作状態に関する情報を表示可能な表示部(図示せず)を備えてもよい。これにより、燃料電池2の動作状態に関する情報を表示し、利用者に提供し得る。
【0157】
〔燃料供給手段3〕
燃料供給手段3は、燃料電池2に燃料を供給可能な燃料供給手段である。燃料供給手段3は、特に限定されず、従来技術の燃料電池に燃料を供給可能な燃料供給手段でよい。これにより、燃料電池2に燃料を供給し、長時間に渡る発電を行い得る。
【0158】
燃料電池2と別体に設けられた燃料供給手段3が燃料を燃料流路241に供給可能であるため、使用の際に燃料供給手段3を燃料流路241に接続して燃料を供給し得る。これにより、燃料電池2を軽量とし得る。燃料電池2を軽量とし得るため、持ち運びを容易とし得る。
【0159】
燃料供給手段3が供給可能な燃料は、特に限定されず、水素、液化石油ガス(liquefied petroleum gas、LPG、LPガス)、天然ガス(natural gas)、メタノール、ジメチルエーテル、及びボロハイドライド系燃料の1以上を含む燃料でよい。
【0160】
燃料供給手段3が供給可能な燃料は、水素ガス、メタノール、及びジメチルエーテルの1以上を含むことが好ましい。これにより、燃料を発電に適した態様に改質する改質器を備えることなく、燃料電池2に燃料を供給できる。
【0161】
燃料供給手段3は、燃料電池2に水素を供給可能な水素供給手段を含むことが好ましい。水素を燃料として用いる燃料電池は、メタノールを改質せずに直接燃料として用いる直接メタノール形燃料電池、ジメチルエーテルを改質せずに燃料として用いる直接ジメチルエーテル形燃料電池より発電効率が高いことが知られている。したがって、より発電効率が高い発電を行い得る。
【0162】
燃料供給手段3が水素供給手段を含むことにより、別体に設けられた水素供給手段が燃料である水素を燃料流路241に供給し得る。これにより、使用の際に水素供給手段を燃料流路241に接続して燃料を供給し得る。したがって、燃料電池2を軽量とし得る。燃料電池2を軽量とし得るため、持ち運びを容易とし得る。
【0163】
液化石油ガス及び天然ガス等によって例示される水素を含む化合物を燃料とする燃料電池と水素ガスを燃料とする燃料電池とが利用されている。水素を含む化合物を燃料とする燃料電池では、燃料を発電に適した水素ガスの態様に改質する改質器を必要とし得る。
【0164】
燃料供給手段3が水素供給手段を含むことにより、改質器を備えることなく燃料電池2を構成し得る。したがって、燃料電池2をよりいっそう軽量とし得る。燃料電池2をよりいっそう軽量とし得るため、持ち運びを容易とし得る。これにより、燃料電池2を屋内及び/又は屋外へ持ち運んで利用できる。
【0165】
〔接続部4〕
接続部4は、燃料供給手段3と燃料電池2とを接続可能な接続部である。システム1が接続部4を含むことにより、使用の際に燃料供給手段3と燃料電池2とを接続し、燃料電池2に燃料を供給できる。
【0166】
接続部4は、特に限定されず、ホース等によって例示される従来技術の燃料供給手段3と燃料電池2とを接続可能な接続部でよい。
【0167】
〔電気機器5〕
電気機器5は、燃料電池2が送電する電力を利用可能な電気機器である。電気機器5は、特に限定されず、従来技術における各種の電気機器でよい。
【0168】
電気機器5は、緊急用照明、非常用照明、作業用照明、演出用照明、及び保安用照明によって例示される屋外で利用される照明の1以上を含むことが好ましい。
【0169】
災害現場などでは、救助活動や防災活動のための緊急用照明が必要とされ得る。停電時では、災害避難所などでの非常用照明が必要とされ得る。住宅街等での夜間工事では、作業用照明が必要とされ得る。キャンプや野外イベントでは、演出用照明、及び/又は保安用照明が必要とされ得る。
【0170】
これらの屋外で利用される照明では、商用電源を利用できない場合があり得る。したがって、屋外で利用可能な軽量かつ持ち運び容易な電力供給手段の需要がある。一次電池及び/又は二次電池を用いた電力供給手段では、長時間の発電を行う点において、さらなる改良の余地がある。ガソリン式発電機等の内燃機関を用いた電力供給手段では、内燃機関に由来する騒音を軽減する点において、さらなる改良の余地がある。
【0171】
燃料電池は、一次電池及び/又は二次電池を用いた電力供給手段より長時間の発電を行い得る。燃料電池は、電気化学反応を用いて発電するため、内燃機関を用いた電力供給手段より騒音を軽減し得る。内燃機関を用いないため、二酸化炭素の排出量を減らすことも見込み得る。しかしながら、燃料供給手段を一体に構成した燃料電池では、重量が大きくなり得る。重量が大きいことにより、燃料電池の持ち運びが困難になり得る。
【0172】
本実施形態の燃料電池2では、燃料供給手段3を別体に構成し、使用の際に燃料供給手段3を燃料流路241に接続して燃料を供給し得ることにより、燃料電池2を軽量とし得る。燃料電池2を軽量とし得るため、持ち運び容易に燃料電池2を構成できる。したがって、屋外で利用される照明に電力を供給し得る。
【0173】
〔台車C〕
必須の態様ではないが、システム1は、システム1を持ち運ぶ持ち運び状態において、燃料電池2、燃料供給手段3、接続部4、及び/又は電気機器5を載置して持ち運び可能な台車Cを含むことが好ましい。これにより、よりいっそう容易にシステム1を持ち運びし得る。
【0174】
〔支持部材S〕
必須の態様ではないが、システム1は、システム1を使用する使用状態において、燃料電池2、燃料供給手段3、接続部4、及び/又は電気機器5を支持可能な支持部材Sを含むことが好ましい。
【0175】
これにより、システム1を使用する使用状態において、燃料電池2、燃料供給手段3、接続部4、及び/又は電気機器5を支持し得る。これにより、風等の気象現象によって横からの力がかかり得る屋外において利用可能な燃料電池システム1を提供できる。
【0176】
支持部材Sは、特に限定されず、従来技術の支持部材でよい。支持部材Sは、伸縮可能な棒状の部材を含むことが好ましい。これにより、システム1を使用する使用状態において、燃料電池2、燃料供給手段3、接続部4、及び/又は電気機器5を支持し得ることと、システム1を持ち運びする持ち運び状態において持ち運び容易な短い形状であることとを両立し得る。
【0177】
〔気液分離手段〕
必須の態様ではないが、システム1は、排気弁27に取り付け可能な気液分離手段(図示せず)を含むことが好ましい。
【0178】
混入した空気によって燃料の量が減少した気体を燃料流路241から排気する場合、燃料流路241内部の水が排気弁27から排出され得る。これにより、燃料電池2の周辺が水で濡れ得る。
【0179】
システム1が排気弁27に取り付け可能な気液分離手段を含むことにより、気液分離手段によって水を分離できる。これにより、水を排出することなく、燃料の量が減少した気体のみを排気し得る。したがって、燃料電池2を屋内で利用する場合において、屋内が水で濡れることを防ぎ得る。これにより、屋内でよりいっそう利用可能な燃料電池2を提供できる。
【0180】
気液分離手段は、特に限定されず、気体と液体とを分離可能な従来技術の気液分離手段でよい。気液分離手段は、燃料電池2と一体に設けられていてもよく、燃料電池2と別体に設けられていてもよい。
【0181】
気液分離手段が燃料電池2と一体に設けられることにより、水の排出をよりいっそう確実に防ぎ得る。また、分離した水をセル24において利用し得る。気液分離手段が燃料電池2と別体に設けられることにより、燃料電池2をよりいっそう軽量とし得る。したがって、屋内でよりいっそう利用可能な燃料電池2を提供できる。
【0182】
気液分離手段は、チューブ、ホース、及びパイプ等によって例示される移送手段を介して排気弁27に取り付け可能でもよい。これにより、燃料電池2と異なる位置で水を分離し得る。したがって、燃料電池2の周辺が水で濡れることをよりいっそう防ぎ得る。これにより、屋内でよりいっそう利用可能な燃料電池2を提供できる。
【0183】
気液分離手段は、チューブ、ホース、及びパイプ等によって例示される移送手段を介して水を分離した気体を排気可能でもよい。これにより、燃料電池2と異なる位置に気体を排気し得る。したがって、燃料電池2を屋内で利用する場合において、屋内に燃料を含む気体を排気することを防ぎ得る。これにより、屋内でよりいっそう利用可能な燃料電池2を提供できる。
【0184】
〔制御部22で実行される発電制御処理のフローチャート〕
図3は、制御部22で実行される発電制御処理の好ましい流れの一例を示すフローチャートである。以下では、
図3を参照しながら、燃料電池2が行う発電制御処理の好ましい手順について説明する。
【0185】
[ステップS1:発電開始指令を受信したか否かを判別]
制御部22は、発電制御部221を実行し、発電開始指令を受信したか否かを判別する(ステップS1)。発電開始指令を受信したならば、制御部22は、処理をステップS2に移す。発電開始指令を受信していないならば、制御部22は、処理をステップS1に移す。
【0186】
ステップS1で行われる処理により、発電開始指令を受信した場合に発電の開始に関する制御を行い得る。また、発電開始指令を受信していない場合に発電を行わないように制御し得る。
【0187】
発電開始指令を受信したか否かを判別する手段は、特に限定されず、例えば、操作部214の操作を介して与えられた発電開始指令を受信したか否かを判別する手段、操作部214の操作が有する電源スイッチの操作を介して制御部22への給電が開始されたか否かを判別する手段等でよい。
【0188】
必須の態様ではないが、発電制御処理は、ステップS2で実行される燃料弁の弁開度を上げる処理を含むことが好ましい。
【0189】
[ステップS2:燃料弁の弁開度を上げる]
制御部22は、発電制御部221を実行し、燃料弁23の弁開度を上げる(ステップS2)。制御部22は、処理をステップS3に移す。
【0190】
ステップS2で行われる処理により、燃料供給手段3及び/又は接続部4において燃料の供給状態を制御することなく、セル24への燃料の供給状態を制御し得る。また、ステップS2で行われる処理により、燃料供給手段3及び/又は接続部4が燃料を供給する状態である場合に、セル24への燃料の供給状態をセル24に燃料を供給する状態とセル24に燃料を供給しない状態との間で制御し得る。
【0191】
これにより、燃料電池2を利用する利用者は、燃料供給手段3等に備えられた燃料供給バルブ等を逐一操作することなく、セル24への燃料の供給状態を制御し得る。屋外では、手を保護する手袋等により、バルブ等の操作に困難が生じ得る。したがって、ステップS2で行われる処理により、屋外で利用可能な燃料電池2を提供できる。
【0192】
ステップS2で行われる処理は、酸素流路245へ空気を供給するよう、吸気部25を制御する処理を含むことが好ましい。これにより、酸素流路245へ空気を供給し、酸素流路245内部に空気に含まれる酸素を供給し得る。
【0193】
必須の態様ではないが、発電制御処理は、ステップS3で実行される発電を開始したか否かを判別する処理を含むことが好ましい。
【0194】
[ステップS3:発電を開始したか否かを判別]
制御部22は、排気制御部222を実行し、発電を開始したか否かを判別する(ステップS3)。発電を開始したならば、制御部22は、処理をステップS6に移す。発電を開始していないならば、制御部22は、処理をステップS4に移す。
【0195】
ステップS3で行われる処理により、発電の状況に応じて排気弁27の開閉状態を制御し得る。これにより、空気が混入して発電が行われない場合に、混入した空気によって燃料の量が減少した気体を燃料流路241から排気し得る。この排気により、燃料流路241を流れる燃料の量が減少することにより発電が行われないリスクを軽減し、セル24が発電を行い得る。
【0196】
また、発電の状況に応じて排気弁27の開閉状態を制御可能であるため、燃料流路241における燃料の量が発電可能な量である気体が燃料流路241から排気されることを防ぎ得る。
【0197】
ステップS3で行われる処理により、発電を開始した場合に、電気機器5への送電に関する処理を実行できる。
【0198】
必須の態様ではないが、ステップS3で行われる処理は、発電開始指令を受信してから所定時間が経過する前に発電を開始したか否かを判別する処理を含むことが好ましい。
【0199】
発電が行われない場合において常に排気弁27の弁開度を上げる制御では、燃料の供給が開始されていない場合にも排気弁27の弁開度が大きい状態に制御され得る。これにより、排気弁27を介して燃料流路241に空気が混入するリスクが高まり得る。
【0200】
燃料の供給が開始される場合に排気弁27の弁開度を上げる制御では、燃料流路241を流れる燃料の量が発電可能な量である場合にも、燃料流路241からの排気が行われ得る。このような制御では、発電可能な量の燃料を含む気体が排気され、燃料が発電に使われることなく排気され得る。
【0201】
燃料の量を測定する燃料濃度計等を燃料流路241に備えれば、燃料流路241を流れる燃料の量が発電可能な量である場合において、燃料が発電に使われることなく排気されることを軽減し得るが、燃料濃度計等によって燃料電池2の重量が増し得る。
【0202】
発電開始指令を受信してから所定時間が経過する前に発電を開始したか否かを判別する処理を含むことにより、燃料の供給が開始されてから所定の時間発電が行われない場合に、排気弁27の弁開度を上げる制御を行い得る。
【0203】
これにより、燃料流路241を流れる燃料の量が発電可能な量である場合に排気を行うことを軽減することと、空気が混入して燃料の量が減少した気体を燃料流路241から排気することとを、燃料濃度計等を備えることなく両立し得る。したがって、燃料電池2をよりいっそう軽量とし得る。燃料電池2をよりいっそう軽量とし得るため、持ち運びを容易とし得る。これにより、燃料電池2を屋内及び/又は屋外へ持ち運んで利用できる。
【0204】
発電開始指令を受信してから所定時間が経過する前に発電を開始したか否かを判別する処理における所定の時間の下限は、20秒以上であることが好ましく、25秒以上であることがより好ましく、30秒以上であることがさらに好ましい。所定の時間の下限を上述のとおり定めることにより、燃料流路241を流れる燃料の量が発電可能な量である場合において、燃料が発電に使われることなく排気されることをよりいっそう軽減し得る。
【0205】
発電開始指令を受信してから所定時間が経過する前に発電を開始したか否かを判別する処理における所定の時間の上限は、120秒以下であることが好ましく、90秒以下であることがより好ましく、60秒以下であることがさらに好ましい。所定の時間の上限を上述のとおり定めることにより、空気が混入して燃料の量が減少した気体を燃料流路241から排気するまでの時間をよりいっそう短くし得る。これにより、セル24における発電を好適に行うことが可能になるまでの時間を短くし得る。
【0206】
セル24の温度によって、セル24が発電を開始するまでの時間及び/又はセル24が好ましい効率で発電を行うまでの時間が変化し得る。
【0207】
発電開始指令を受信してから所定時間が経過する前に発電を開始したか否かを判別する処理を含む場合、所定時間は、セル24の温度に基づいて決定された時間であることが好ましい。これにより、セル24の温度に応じたセル24が発電を開始するまでの時間において排気弁27の弁開度を上げる制御を行うことを防ぐことと、空気が混入して燃料の量が減少した気体により発電が開始されない場合に排気弁27の弁開度を上げる制御を可能な限り迅速に行うこととを両立し得る。したがって、燃料流路241を流れる燃料の量が発電可能な量である場合に排気を行うことをよりいっそう軽減することと、空気が混入して燃料の量が減少した気体を燃料流路241から可能な限り迅速に排気することとを両立し得る。
【0208】
[ステップS4:排気弁の弁開度を上げる]
制御部22は、排気制御部222を実行し、排気弁27の弁開度を上げる(ステップS4)。制御部22は、処理をステップS5に移す。
【0209】
ステップS2及びS4で行われる処理により、外部から燃料流路241への燃料の供給が開始される場合に排気弁27の弁開度を上げる制御を行い得る。
【0210】
発電が行われない場合において常に排気弁27の弁開度を上げる制御では、燃料の供給が開始されていない場合にも排気弁27の弁開度が大きい状態に制御され得る。これにより、排気弁27を介して燃料流路241に空気が混入するリスクが高まり得る。
【0211】
使用の際に燃料供給手段3を燃料流路241に接続することにより、燃料流路241への空気の混入が生じ得る。使用の際において、燃料の供給が開始されてから、発電が行われる。したがって、燃料の供給が開始される場合において燃料流路241に空気が混入しているリスクは、発電中において燃料流路241に空気が混入しているリスクより高い。
【0212】
ステップS2及びS4で行われる処理により、燃料の供給が開始される場合に排気弁27の弁開度を上げる制御が可能であるため、排気弁27を介して燃料流路241に空気が混入するリスクを軽減しつつ、燃料流路241に空気が混入しているリスクが比較的高い場合である、燃料の供給が開始される場合において、空気が混入して燃料の量が減少した気体をより確実に排気するよう制御し得る。
【0213】
ステップS3及びS4で行われる処理により、発電の状況に応じて排気弁27の開閉状態を制御し得る。これにより、空気が混入して発電が行われない場合に、混入した空気によって燃料の量が減少した気体を燃料流路241から排気し得る。この排気により、燃料流路241を流れる燃料の量が減少することにより発電が行われないリスクを軽減し、セル24が発電を行い得る。
【0214】
また、発電の状況に応じて排気弁27の開閉状態を制御可能であるため、燃料流路241における燃料の量が発電可能な量である気体が燃料流路241から排気されることを防ぎ得る。
【0215】
ステップS3で行われる処理が発電開始指令を受信してから所定時間が経過する前に発電を開始したか否かを判別する処理を含む場合、ステップS2-S4で行われる処理により、外部から燃料流路241への燃料の供給が開始されてから所定の時間発電が行われない場合に排気弁27の弁開度を上げる制御を行い得る。
【0216】
燃料の供給が開始される場合に排気弁27の弁開度を上げる制御では、燃料流路241を流れる燃料の量が発電可能な量である場合にも、燃料流路241からの排気が行われ得る。このような制御では、発電可能な量の燃料を含む気体が排気され、燃料が発電に使われることなく排気され得る。
【0217】
燃料の量を測定する燃料濃度計等を燃料流路241に備えれば、燃料流路241を流れる燃料の量が発電可能な量である場合において、燃料が発電に使われることなく排気されることを軽減し得るが、燃料濃度計等によって燃料電池2の重量が増し得る。
【0218】
ステップS3で行われる処理が発電開始指令を受信してから所定時間が経過する前に発電を開始したか否かを判別する処理を含む場合におけるステップS2-S4で行われる処理によれば、燃料の供給が開始されてから所定の時間発電が行われない場合に、排気弁27の弁開度を上げる制御が可能であるため、燃料流路241を流れる燃料の量が発電可能な量である場合に排気を行うことを軽減することと、空気が混入して燃料の量が減少した気体を燃料流路241から排気することとを、燃料濃度計等を備えることなく両立し得る。したがって、燃料電池2をよりいっそう軽量とし得る。燃料電池2をよりいっそう軽量とし得るため、持ち運びを容易とし得る。これにより、燃料電池2を屋内及び/又は屋外へ持ち運んで利用できる。
【0219】
ステップS4で行われる処理によれば、燃料の量を測定する燃料濃度計等を燃料流路241に備えることなく、このような制御を実現可能である。したがって、燃料電池2をよりいっそう軽量とし得る。燃料電池2をよりいっそう軽量とし得るため、持ち運びを容易とし得る。これにより、燃料電池2を屋内及び/又は屋外へ持ち運んで利用できる。
【0220】
ステップS4で行われる処理は、燃料流路241を流れる燃料の量に応じて排気弁27の開閉状態を制御する処理を含んでもよい。燃料の量を判別する手段は、特に限定されず、計量部が有する各種のセンサを用いて燃料の量に関する情報(例えば、燃料の流量、燃料の圧力、燃料の濃度等)を取得し、該情報を用いて燃料の量を判別する手段でよい。
【0221】
ステップS4で行われる処理が燃料流路241を流れる燃料の量に応じて排気弁27の開閉状態を制御する処理を含むことにより、燃料流路241を流れる燃料の量が発電に十分な量である場合に排気弁27を閉じ、発電に十分な量の燃料を含む気体が燃料流路241から排気されることを防ぎ得る。
【0222】
ステップS4で行われる処理が燃料流路241を流れる燃料の量に応じて排気弁27の開閉状態を制御する処理を含むことにより、燃料流路241を流れる燃料の量が発電に十分な量でない場合に排気弁27を開き、発電に十分な量の燃料を含まない気体を燃料流路241から排気し得る。これにより、外部から供給される燃料を燃料流路241に流し、燃料流路241を流れる燃料の量を発電に十分な量とし得る。
【0223】
[ステップS5:発電を開始したか否かを判別]
制御部22は、排気制御部222を実行し、発電を開始したか否かを判別する(ステップS5)。発電を開始したならば、制御部22は、処理をステップS6に移す。発電を開始していないならば、制御部22は、処理をステップS5に移す。
【0224】
ステップS5で実行される処理により、発電を開始した場合に、電気機器5への送電に関する処理を実行できる。
【0225】
必須の態様ではないが、ステップS5で行われる処理は、ステップS4において排気弁27の弁開度を上げてからの特定の時間が経過した場合に利用者に異常を通知する処理及び/又は燃料弁23の弁開度を下げる処理を含むことが好ましい。
【0226】
ステップS5で行われる処理が特定の時間が経過した場合に利用者に異常を通知する処理を含むことにより、排気弁27の弁開度を上げたにもかかわらず、発電が開始されない状況を利用者に通知し得る。利用者は、該通知を用いて、セル24に障害が発生している場合及びは燃料供給手段3と燃料電池2とが適切に接続されていない場合等によって例示される排気弁27の弁開度を上げても発電が開始されない場合に対応し得る。
【0227】
ステップS5で行われる処理が特定の時間が経過した場合に燃料弁23の弁開度を下げる処理を含むことにより、セル24に障害が発生している場合等の排気弁27の弁開度を上げても発電が開始されない場合に、発電に利用されない燃料が燃料電池2に供給されることを軽減し得る。
【0228】
ステップS5で行われる処理が特定の時間が経過した場合に燃料弁23の弁開度を下げる処理を含む場合、特定の時間の下限は、5秒以上であることが好ましく、7秒以上であることがより好ましく、9秒以上であることがさらに好ましい。特定の時間の下限を上述のとおり定めることにより、排気弁27の弁開度を上げることによって発電が開始される場合において発電に十分な量の燃料を含まない気体を燃料流路241からよりいっそう確実に排気し得る。
【0229】
ステップS5で行われる処理が特定の時間が経過した場合に燃料弁23の弁開度を下げる処理を含む場合、特定の時間の上限は、20秒以下であることが好ましく、15秒以上であることがより好ましく、12秒以下であることがさらに好ましい。特定の時間の下限を上述のとおり定めることにより、排気弁27の弁開度を上げても発電が開始されない場合において発電に利用されない燃料が燃料電池2に供給されることをよりいっそう軽減し得る。
【0230】
ステップS5で行われる処理が特定の時間が経過した場合に燃料弁23の弁開度を下げる処理を含む場合、特定の時間は、9秒以上かつ12秒以下の時間であることが好ましい。これにより、排気弁27の弁開度を上げても発電が開始されない場合において発電に利用されない燃料が燃料電池2に供給されることをよりいっそう軽減することと、排気弁27の弁開度を上げることによって発電が開始される場合において発電に十分な量の燃料を含まない気体を燃料流路241からよりいっそう確実に排気することとを両立し得る。
【0231】
必須の態様ではないが、発電制御処理は、ステップS6で行われる弁開度を下げる処理を含むことが好ましい。
【0232】
[ステップS6:弁開度を下げる]
制御部22は、排気制御部222を実行し、排気弁27の弁開度を下げる(ステップS6)。制御部22は、処理をステップS7に移す。これにより、燃料流路241における燃料の量が発電可能な量である気体が燃料流路241から排気されることを防ぎ得る。
【0233】
必須の態様ではないが、発電制御処理は、ステップS6及びS7で行われる送電に関する処理を含むことが好ましい。
【0234】
[ステップS7:送電開始指令を受信したか否かを判別]
制御部22は、発電制御部221を実行し、送電開始指令を受信したか否かを判別する(ステップS7)。送電開始指令を受信したならば、制御部22は、処理をステップS8に移す。送電開始指令を受信していないならば、制御部22は、処理をステップS7に移す。
【0235】
ステップS7で行われる処理により、送電開始指令を受信した場合に送電の開始に関する制御を行い得る。また、送電開始指令を受信していない場合に送電を行わないように制御し得る。
【0236】
送電開始指令を受信したか否かを判別する手段は、特に限定されず、例えば、操作部214の操作を介して与えられた送電開始指令を受信したか否かを判別する手段等でよい。
【0237】
[ステップS8:送電を開始]
制御部22は、発電制御部221を実行し、電気機器5への送電を開始する(ステップS8)。制御部22は、発電制御処理を終了し、ステップS1からステップS8の処理を繰り返す。
【0238】
ステップS7及びS8で行われる処理により、送電開始指令を受信した場合に電気機器5への送電を開始できる。また、送電開始指令を受信していない場合に電気機器5への送電を行わないように制御し得る。
【0239】
<使用例>
図4は、持ち運び状態の燃料電池システム1を右方からみた概略図である。
図5は、使用状態の燃料電池システム1を右方からみた概略図である。
図6は、燃料電池2に接続部4を介して燃料供給手段3を接続するときの空気の混入を説明する説明図である。
図7は、燃料流路241に空気が混入した気体がある状態を説明する説明図である。
図8は、空気が混入した気体を燃料流路241から排気することを説明する説明図である。
図9は、台車Cの形状が
図4と異なる燃料電池システム1を右方からみた概略図である。以下、必要に応じて
図4から
図9を参照し、本実施形態の燃料電池システム1の使用例を説明する。以下では、燃料供給手段3は、水素(H
2)を供給可能な水素供給手段を含む燃料供給手段3であるものとして説明する。
【0240】
〔燃料電池2を屋外へ持ち運ぶ〕
燃料電池システム1の利用者(以下、単に利用者とも称する。)は、把持部212を把持し、台車Cの上に燃料電池2、燃料供給手段3、接続部4、及び電気機器5を載置する。これにより、システム1は、持ち運び容易な持ち運び状態となる(
図4)。利用者は、持ち運び状態のシステム1を屋外へ持ち運ぶ。
【0241】
〔燃料電池2を使用状態にする〕
利用者は、伸ばした支持部材Sを用いて、燃料電池2、燃料供給手段3、接続部4、及び電気機器5を台車Cの上面において支持する(
図5)。これにより、風等の気象現象によって横からの力がかかり得る屋外においてシステム1を利用できる。
【0242】
〔燃料供給手段を燃料電池に接続〕
利用者は、接続部4を介して燃料供給手段3を燃料電池2の燃料供給手段接続部213に接続する。利用者は、燃料供給手段3を操作し、燃料電池2への燃料供給を開始する。
【0243】
燃料供給手段3を燃料供給手段接続部213に接続する際に、燃料供給手段接続部213は、燃料電池2外部の空気と接触し得る。また、接続部4には、空気が混入している場合がある。これらの事情により、燃料供給手段3を燃料電池2の燃料供給手段接続部213に接続する際に、燃料供給手段接続部213を介して窒素(
図6に示すN
2)及び酸素(
図6に示すO
2)を含む空気が燃料流路241に混入し得る(
図6)。
【0244】
〔発電開始指令を送信〕
利用者は、操作部214を操作し、燃料電池2に発電開始指令を送信する。燃料弁23の弁開度が上がり、燃料である水素(H2)が燃料流路241に供給される。また、空気吸気部25が窒素(N2)及び酸素(O2)を含む空気を酸素流路245に供給する。
【0245】
[混入した空気による燃料の量の減少]
燃料供給手段3を燃料供給手段接続部213に接続する際に空気が燃料流路241に混入した場合、燃料流路241内部には、混入した空気が含まれる。この空気(
図7に示すN
2及びO
2)により、燃料流路241内部における燃料(
図7に示すH
2)の量が発電可能な量より少なくなり得る(
図7)。
【0246】
燃料流路241内部における燃料の量が発電可能な量より少なくなることにより、燃料及び空気をセル24に供給しているにもかかわらず、セル24での発電が行われない場合があり得る。
【0247】
〔燃料流路内部の気体を排気〕
セル24での発電が行われない場合及び/又はセル24での発電が一定時間行われない場合、制御部22は、排気制御部222を実行し、排気弁27の弁開度を上げ、燃料流路241内部の気体を排気する。
【0248】
排気弁27の弁開度を上げることにより、燃料流路241内部の空気(
図8に示すN
2及びO
2)は、接続部4から供給される燃料(
図8に示すH
2)によって押され、排気弁27から排気される。これにより、燃料流路241内部に燃料(H
2)が供給される(
図8)。
【0249】
したがって、燃料流路241内部における燃料(H2)の量が発電可能な量となり、セル24が発電を開始する。これにより、使用の際に燃料供給手段3を燃料流路241に接続する構成によって燃料電池2を軽量にすることと、接続の際に燃料流路241に混入する空気によって発電が行われないリスクを防ぐこととを両立し得る。
【0250】
本実施形態のシステム1によれば、排気ポンプ等の排気手段を設けることなく、また、燃料濃度計等の燃料流路241を流れる燃料の量を測定可能な手段を燃料流路241に設けることなく、排気弁27と排気制御部222とによる簡易な構成で燃料流路241からの排気を制御可能であるため、燃料電池2を軽量とし得る。燃料電池2を軽量とし得るため、持ち運びを容易とし得る。これにより、燃料電池2を屋内及び/又は屋外へ持ち運んで利用できる。
【0251】
〔排気弁の弁開度を下げる〕
セル24での発電が行われた場合、制御部22は、排気制御部222を実行し、排気弁27の弁開度を下げる。これにより、燃料流路241における燃料の量が発電可能な量である気体が燃料流路241から排気されることを防ぎ得る。
【0252】
〔電気機器5へ送電〕
利用者は、操作部214を操作し、燃料電池2に送電開始指令を送信する。燃料電池2は、電力供給部28を介して電気機器5に電力を供給する。電気機器5は、燃料電池2から供給される電力を用いて各種の動作を行う。
【0253】
〔燃料電池2を屋内の使用する場所へ持ち運ぶ〕
燃料電池システム1は、屋内でも利用できる。利用者は、把持部212を把持し、台車Cの上に燃料電池2、燃料供給手段3、及び接続部4を載置する(
図9)。台車Cの上に電気機器5を載置しないことにより、システム1をよりいっそう軽量とし得る。これにより、システム1は、よりいっそう持ち運び容易となる。利用者は、システム1を屋内の利用する場所へ持ち運ぶ。
【0254】
システム1が軽量かつ容易に持ち運び可能であることにより、停電等の場合において、介護用ベッド等によって例示される介護用機器、医療用機器、照明装置、冷房装置、暖房装置、電子機器、情報機器等の各種の電気機器がある屋内にシステム1を持ち運び得る。したがって、これらの電気機器に電力を供給可能な非常用小型電源装置として、システム1を好適に利用できる。
【0255】
したがって、本実施形態のシステム1によれば、屋内及び/又は屋外で利用可能であり、軽量かつ持ち運び容易な燃料電池2を提供できる。
【0256】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限るものではない。また、上述の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したものに過ぎず、本発明による効果は、上述の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。また、上述の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0257】
1 燃料電池システム
2 燃料電池
21 筐体
211 筐体本体
212 把持部
213 燃料供給手段接続部
214 操作部
22 制御部
221 発電制御部
222 排気制御部
23 燃料弁
24 セル
241 燃料流路
242 燃料極
243 電解質
244 酸素極
245 酸素流路
25 空気吸気部
26 空気排気部
27 排気弁
28 電力供給部
29 調温部
3 燃料供給手段
4 接続部
5 電気機器
C 台車
S 支持部材
【手続補正書】
【提出日】2021-08-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を用いて発電可能なセルと、
前記セルに設けられ、外部から供給される燃料を流すことが可能な燃料流路と、
前記セルの温度を調整可能な調温部と、
前記燃料流路内部の気体を排気可能な排気弁と、
前記排気弁の開閉状態を制御可能な排気制御部と、
を備え、
燃料濃度計を非搭載であり、
前記排気制御部は、前記外部から前記燃料流路への前記燃料の供給が開始されてから所定の時間が経過するまでの間に前記発電が行われない場合、前記燃料流路における前記燃料の濃度に関わらず前記排気弁の弁開度を上げる制御が可能であり、
持ち運び可能に構成され、質量が20kg以下であり、
商用電源を利用できない場所であって緊急用照明、非常用照明、作業用照明、演出用照明、及び保安用照明から選択される1種以上の所定の照明のある場所で屋内外の非常用電源及び/又は作業用電源として電力を供給可能な燃料電池。
【請求項2】
前記セルは、100℃以下の温度で発電可能な固体高分子形燃料電池のセルであり、
前記調温部は、100℃以下の範囲に限って前記セルの温度を調整可能な小型部材である、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記調温部がペルチェ素子及び冷却ファンをさらに含み、
前記調温部は、前記ペルチェ素子による前記セルの温度の第1調整を行い、前記第1調整では前記セルの温度が前記発電に適した温度範囲にならない場合に前記冷却ファンによる前記セルの温度の第2調整を行う、請求項1又は2に記載の燃料電池。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池と、
前記燃料電池とは別体に設けられ、前記燃料電池に水素を供給可能な水素供給手段と、を含んで構成され、
前記水素供給手段は、重量12kg以下、水素ガス充てん量1.5m
3
以下の水素ガスボンベであり、
前記燃料電池及び前記水素ガスボンベの両方を一の台車に搭載可能である、可搬式の燃料電池システム。
【請求項5】
前記排気弁に取り付け可能な気液分離手段を含む、請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の燃料電池システムにおいて、前記燃料電池及び前記水素供給手段を搭載した前記一の台車を前記所定の照明がある前記商用電源を利用できない場所まで動かし、前記水素ガスボンベを交換することなく連続して前記燃料電池を駆動する、燃料電池システムの使用方法。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を用いて発電可能なセルと、
前記セルに設けられ、外部から供給される燃料を流すことが可能な燃料流路と、
前記セルの温度を調整可能な調温部と、
前記燃料流路内部の気体を排気可能な排気弁と、
前記排気弁の開閉状態を制御可能な排気制御部と、
を備え、
燃料濃度計を非搭載であり、
前記排気制御部は、前記外部から前記燃料流路への前記燃料の供給が開始されてから所定の時間が経過するまでの間に前記発電が行われない場合、前記燃料流路における前記燃料の濃度に関わらず前記排気弁の弁開度を上げる制御が可能であり、
持ち運び可能に構成され、質量が20kg以下であり、
商用電源を利用できない場所であって緊急用照明、非常用照明、作業用照明、演出用照明、及び保安用照明から選択される1種以上の所定の照明のある場所で屋内外の非常用電源及び/又は作業用電源として電力を供給可能な燃料電池。
【請求項2】
前記セルは、100℃以下の温度で発電可能な固体高分子形燃料電池のセルであり、
前記調温部は、100℃以下の範囲に限って前記セルの温度を調整可能な小型部材である、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料電池と、
前記燃料電池とは別体に設けられ、前記燃料電池に水素を供給可能な水素供給手段と、を含んで構成され、
前記水素供給手段は、重量12kg以下、水素ガス充てん量1.5m3以下の水素ガスボンベであり、
前記燃料電池及び前記水素ガスボンベの両方を一の台車に搭載可能である、可搬式の燃料電池システム。
【請求項4】
前記排気弁に取り付け可能な気液分離手段を含む、請求項3に記載の燃料電池システム。