IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日鐵住金建材株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-接合構造 図1
  • 特開-接合構造 図2
  • 特開-接合構造 図3
  • 特開-接合構造 図4
  • 特開-接合構造 図5
  • 特開-接合構造 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143779
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20220926BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
E04B1/58 G
E04B1/58 508S
E04B1/24 F
E04B1/24 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044474
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 愛実
(72)【発明者】
【氏名】赤丸 一朗
(72)【発明者】
【氏名】石丸 亮
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AA33
2E125AB01
2E125AB16
2E125AC15
2E125AC16
2E125AG04
2E125AG45
2E125AG50
2E125AG57
2E125BB01
2E125BD01
2E125BE02
2E125BF01
2E125CA90
2E125EA33
(57)【要約】
【課題】柱梁接合部にブレースを取り付ける際の設計上および施工上の煩雑さを低減する。
【解決手段】鋼管柱、H形鋼梁およびブレースの間に形成される接合構造であって、H形鋼梁を鋼管柱に接合する第1の接合部、およびブレースをH形鋼梁に接合する第2の接合部を含み、ブレースを鋼管柱に接合する接合部を含まない接合構造が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管柱、H形鋼梁およびブレースの間に形成される接合構造であって、
前記H形鋼梁を前記鋼管柱に接合する第1の接合部、および前記ブレースを前記H形鋼梁に接合する第2の接合部を含み、
前記ブレースを前記鋼管柱に接合する接合部を含まない、接合構造。
【請求項2】
前記第2の接合部は、前記H形鋼梁に接合され前記鋼管柱には接合されないガセットプレートを含み、前記ガセットプレートに前記ブレースが接合される、請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記第1の接合部は、前記鋼管柱に取り付けられたダイアフラムを含み、前記ダイアフラムに前記H形鋼梁が接合される、請求項1または請求項2に記載の接合構造。
【請求項4】
前記第1の接合部は、前記鋼管柱の端部に接合された厚肉鋼管を含み、前記厚肉鋼管に前記H形鋼梁が接合される、請求項1または請求項2に記載の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管柱とH形鋼梁との柱梁接合部は、ラーメン構造であるため従来ブレースを取り付ける例は少なかったが、近年、構造物の変形を抑制する目的で、例えば特許文献1に記載されているようにラーメン構造であってもブレースを用いる例が増えてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-76208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなブレースを含む接合構造では、例えば図5に示すように、接合部で角形鋼管柱1およびH形鋼梁2の両方にそれぞれガセットプレート3を溶接し、ガセットプレート3にブレース4を接合する。この場合、図6に示すように、ブレース4に軸力Pが作用した場合に、角形鋼管柱1とガセットプレート3との接合部分にせん断力S1および引張力T1が作用する。この引張力T1は角形鋼管柱1の管壁を面外変形させる方向に作用するため、設計時には引張力T1を角形鋼管柱1の強度に対して許容可能な範囲に収める必要が生じ、応力の検討が複雑になる。
【0005】
また、上記の接合構造においてガセットプレート3の下端は角形鋼管柱1に取り付けられたダイアフラム5Cに接合される。ダイアフラム5Cを取り付けるためには、角形鋼管柱1を切断してダイアフラム5Cを介挿し、さらに切断された角形鋼管柱1をダイアフラム5Cの両側に溶接する工程が必要になり、これらの工程が通常の柱梁接合部の工程に追加される。このように、柱梁接合部にブレースを取り付けるための接合構造では、設計上および施工上の煩雑さが生じる。
【0006】
そこで、本発明は、柱梁接合部にブレースを取り付ける際の設計上および施工上の煩雑さを低減することが可能な接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]鋼管柱、H形鋼梁およびブレースの間に形成される接合構造であって、H形鋼梁を鋼管柱に接合する第1の接合部、およびブレースをH形鋼梁に接合する第2の接合部を含み、ブレースを鋼管柱に接合する接合部を含まない、接合構造。
[2]第2の接合部は、H形鋼梁に接合され鋼管柱には接合されないガセットプレートを含み、ガセットプレートにブレースが接合される、[1]に記載の接合構造。
[3]第1の接合部は、鋼管柱に取り付けられたダイアフラムを含み、ダイアフラムにH形鋼梁が接合される、[1]または[2]に記載の接合構造。
[4]第1の接合部は、鋼管柱の端部に接合された厚肉鋼管を含み、厚肉鋼管にH形鋼梁が接合される、[1]または[2]に記載の接合構造。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、ブレースに作用する軸力はH形鋼梁を介して間接的に鋼管柱に伝達される。H形鋼梁と鋼管柱との接合部では例えばダイアフラムや厚肉鋼管などがH形鋼梁のフランジに接合されるため、ブレースに作用する軸力が伝達された力が鋼管柱に変形を生じさせることはない。また、上記の構成によれば、H形鋼梁と鋼管柱との接合部以外では、ブレースを鋼管柱に接合するためのダイアフラムなどの部材およびその加工が必要とされない。従って、上記の構成によれば、柱梁接合部にブレースを取り付ける際の設計上および施工上の煩雑さを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る接合構造を示す図である。
図2図1の例における応力の状態を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態の変形例を示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る接合構造を示す図である。
図5】従来例に係る接合構造を示す図である。
図6図5の例における応力の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る接合構造を示す図であり、図2図1の例における応力の状態を示す図である。本実施形態に係る接合構造は、角形鋼管柱1、H形鋼梁2およびブレース4の間に形成される。角形鋼管柱1は、断面が全体として矩形状の鋼管、具体的には例えば冷間ロール成形角形鋼管で形成される。H形鋼梁2は圧延H形鋼、または溶接組立H形鋼で形成され、上フランジ2A、下フランジ2Bおよびウェブ2Cを含む。ブレース4は、角形鋼管柱1とH形鋼梁2を含む柱梁構造の対角線方向に架設され、引張力を伝達することによって柱梁構造の変形を防止する補強材である。ブレース4は、例えば各種の形鋼材や鋼管等で形成される。
【0012】
本実施形態に係る接合構造は、H形鋼梁2を角形鋼管柱1に接合する第1の接合部と、ブレース4をH形鋼梁2に接合する第2の接合部とを含む。第1の接合部は角形鋼管柱1に取り付けられたダイアフラム5A,5Bを含み、ダイアフラム5A,5BにH形鋼梁2の上フランジ2Aおよび下フランジ2Bがそれぞれ溶接される。ダイアフラム5Aは、角形鋼管柱1の端部に溶接される。ダイアフラム5Bは、角形鋼管柱1を切断した間に介挿され、両側に角形鋼管柱1が溶接される。H形鋼梁2のウェブ2Cも、例えばシアプレート(図示せず)を介して角形鋼管柱1に接合されてもよい。
【0013】
第2の接合部は、H形鋼梁2の下フランジ2Bに溶接されるガセットプレート3を含む。ブレース4は、例えば溶接またはボルト接合によってガセットプレート3に接合される。第2の接合部は、さらに、H形鋼梁2に接合されるリブ61およびスティフナー62を含んでもよい。リブ61は、下フランジ2Bとガセットプレート3の側端部とにそれぞれ溶接される。スティフナー62は、リブ61に対応する位置で下フランジ2B、ウェブ2Cおよび上フランジ2Aに溶接される。リブ61およびスティフナー62は、ガセットプレート3およびH形鋼梁2の補強のために必要に応じて配置される。
【0014】
一方、本実施形態に係る接合構造には、ブレース4を角形鋼管柱1に接合する接合部は含まれない。具体的には、上記の第2の接合部においてガセットプレート3は角形鋼管柱1には接合されず、それ以外にもブレース4と角形鋼管柱1との間にそれ以外の接合部材は配置されない。従って、本実施形態では、ブレース4に作用する力は直接的に角形鋼管柱1には伝達されず、ガセットプレート3、H形鋼梁2、およびH形鋼梁2と角形鋼管柱1との間の第1の接合部を介して間接的に伝達される。
【0015】
上記の構成によれば、図2に示されるように、ブレース4に作用する軸力PがH形鋼梁2とガセットプレート3との接合部分に作用するせん断力S2および引張力T2としてH形鋼梁2に伝達される。H形鋼梁2に伝達された力は第1の接合部を介して角形鋼管柱1にも伝達されるが、第1の接合部においてH形鋼梁2の上フランジ2Aおよび下フランジ2Bはそれぞれダイアフラム5A,5Bに接合されるため、伝達される力が角形鋼管柱1の管壁に面外変形を生じさせることはない。従って、本実施形態では柱梁接合部にブレースを取り付ける際の設計上の煩雑さを低減することができる。
【0016】
また、上記の構成によれば、ガセットプレート3が角形鋼管柱1に取り付けられないため、角形鋼管柱1にガセットプレート3の下端を接合するためのダイアフラム(図1の例に示されたダイアフラム5C)を取り付ける必要がない。角形鋼管柱1にダイアフラムを取り付けるためには角形鋼管柱1の切断やダイアフラムの溶接の工程が必要になるが、本実施形態ではH形鋼梁2との接合のために必要になるダイアフラム5A,5B以外にダイアフラムのための部材や加工のための工程が必要とされない。従って、本実施形態では柱梁接合部にブレースを取り付ける際の施工上の煩雑さを低減することができる。
【0017】
なお、上記の例においてブレース4はガセットプレート3を介してH形鋼梁2に接合されたが、例えば図3に示された例のようにブレース4の端部を加工して形成された取付部分4AをH形鋼梁2に接合してもよい。取付部分4Aについても角形鋼管柱1に接合した場合に設計上および施工上の煩雑さが生じる点はガセットプレートと同様であるため、取付部分4AをH形鋼梁2に接合し角形鋼管柱1に接合しないことによって設計上および施工上の煩雑さを低減することができる。また、上記の例において溶接によって接合された部材間は、例えばボルト接合などの他の方法によって接合することも可能である。
【0018】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る接合構造を示す図である。本実施形態において、ブレース4をH形鋼梁2に接合する第2の接合部は、上記の第1の実施形態と同様に構成される。一方、H形鋼梁2を角形鋼管柱1に接合する第1の接合部は、角形鋼管柱1の端部に溶接された厚肉鋼管8を含む。厚肉鋼管8はいわゆるノンダイアフラム形式の柱梁接合部に用いられるものであり、H形鋼梁2の上フランジ2Aおよび下フランジ2Bはそれぞれ厚肉鋼管8に溶接される。H形鋼梁2のウェブ2Cも、例えばシアプレート(図示せず)を介して厚肉鋼管8に接合されてもよい。なお、上記以外の点について本実施形態の構成は上記の第1の実施形態と同様であるため、重複した詳細な説明は省略する。
【0019】
本実施形態でも、ブレース4を角形鋼管柱1に接合する接合部を形成しないことによって、上記の第1の実施形態と同様に柱梁接合部にブレースを取り付ける際の設計上および施工上の煩雑さを低減することができる。厚肉鋼管8を用いたノンダイアフラム形式の柱梁接合部の場合は応力の関係が複雑になる傾向があるため、上記のような設計上の煩雑さの低減によって得られる利点が大きい。
【0020】
なお、上記の実施形態では角形鋼管柱、H形鋼梁およびブレースの間に形成される接合構造の例について説明したが、他の実施形態では角形鋼管柱に代えて円形鋼管柱など他の形状の鋼管柱を用いてもよい。その場合も、ブレースに作用する軸力をH形鋼梁を介して間接的に鋼管柱に伝達することによって鋼管柱の変形(円形鋼管柱であれば径方向の変形)を防止することができる。
【0021】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。本発明の属する技術の分野の当業者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0022】
1…角形鋼管柱、2…H形鋼梁、2A…上フランジ、2B…下フランジ、2C…ウェブ、3…ガセットプレート、4…ブレース、4A…取付部分、5A,5B,5C…ダイアフラム、61…リブ、62…スティフナー、8…厚肉鋼管、P…軸力、S1,S2…せん断力、T1,T2…引張力。
図1
図2
図3
図4
図5
図6