IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士電機株式会社の特許一覧

特開2022-143796沸騰冷却装置、および発熱体の冷却方法
<>
  • 特開-沸騰冷却装置、および発熱体の冷却方法 図1
  • 特開-沸騰冷却装置、および発熱体の冷却方法 図2
  • 特開-沸騰冷却装置、および発熱体の冷却方法 図3
  • 特開-沸騰冷却装置、および発熱体の冷却方法 図4
  • 特開-沸騰冷却装置、および発熱体の冷却方法 図5
  • 特開-沸騰冷却装置、および発熱体の冷却方法 図6
  • 特開-沸騰冷却装置、および発熱体の冷却方法 図7
  • 特開-沸騰冷却装置、および発熱体の冷却方法 図8
  • 特開-沸騰冷却装置、および発熱体の冷却方法 図9
  • 特開-沸騰冷却装置、および発熱体の冷却方法 図10
  • 特開-沸騰冷却装置、および発熱体の冷却方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143796
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】沸騰冷却装置、および発熱体の冷却方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/427 20060101AFI20220926BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20220926BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H01L23/46 A
F28D15/02 101L
F28D15/02 102H
H05K7/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044509
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】特許業務法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA05
5E322AA10
5E322AB06
5E322DB02
5E322DB06
5E322EA10
5E322FA01
5E322FA04
5E322FA06
5F136BA05
5F136BA32
5F136CC34
5F136CC37
5F136CC38
5F136CC40
5F136DA27
5F136FA02
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】冷却性能の低下を抑制することができる沸騰冷却装置を提供する。
【解決手段】沸騰冷却装置1は、受熱部10と、鉛直線Aに対して傾斜して配置される放熱容器21を有する放熱部20と、気相冷媒を放熱部20に輸送する第1流路S1を有する第1管部31と、液相冷媒を受熱部10に輸送する第2流路S2を有する第2管部32と、を備える。第1流路S1の中心線A1および第2流路S2の中心線A2のそれぞれは、直線状に延びる。第1管部31は、受熱部10に向けて開口する第1開口部301と、放熱部20に向けて開口する第2開口部302と、を有する。第2管部32は、受熱部10に向けて開口する第3開口部303と、放熱部110に向けて開口する第4開口部304と、を有する。第1開口部301の中心O1は、第3開口部303の中心O3よりも上方に位置する。第2開口部302の中心O2は、第4開口部304の中心O4よりも上方に位置する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を収容し、発熱体からの熱を受ける受熱部と、
鉛直線に対して傾斜して配置される放熱容器を有し、前記受熱部からの熱を放熱する放熱部と、
前記受熱部で前記冷媒が気化されることにより生成された気相冷媒を前記放熱部に輸送する第1流路を有する第1管部と、
前記放熱部で前記気相冷媒が凝縮されることにより生成された液相冷媒を前記受熱部に輸送する第2流路を有する第2管部と、を備え、
前記第1流路の中心線および前記第2流路の中心線のそれぞれは、直線状に延び、
前記第1管部は、前記受熱部に向けて開口する第1開口部と、前記放熱部に向けて開口する第2開口部と、を有し、
前記第2管部は、前記受熱部に向けて開口する第3開口部と、前記放熱部に向けて開口する第4開口部と、を有し、
前記第1開口部の中心は、前記第3開口部の中心よりも上方に位置し、
前記第2開口部の中心は、前記第4開口部の中心よりも上方に位置する、
沸騰冷却装置。
【請求項2】
前記第1流路の中心線は、前記第2流路の中心線よりも上方に位置する、
請求項1に記載の沸騰冷却装置。
【請求項3】
前記第1流路の断面積は、前記第2流路の断面積よりも大きい、
請求項1または2に記載の沸騰冷却装置。
【請求項4】
前記第1管部の一部は、前記放熱容器内に位置する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の沸騰冷却装置。
【請求項5】
前記第1管部は、前記放熱容器内に位置する第5開口部を、さらに有し、
前記第2開口部および前記第5開口部のそれぞれは、前記第1管部の側方に開口し、
請求項4に記載の沸騰冷却装置。
【請求項6】
前記第2開口部は、下方を向く、
請求項5に記載の沸騰冷却装置。
【請求項7】
前記第5開口部は、上方を向く、
請求項6に記載の沸騰冷却装置。
【請求項8】
前記第5開口部は、前記第2開口部よりも下方に位置し、
前記第5開口部の開口面積は、前記第2開口部の開口面積よりも大きい、
請求項5から7のいずれか1項に記載の沸騰冷却装置。
【請求項9】
前記放熱部は、前記放熱容器に熱的に接続される放熱フィンを、さらに有し、
前記放熱フィンは、鉛直線に対して傾斜している、
請求項1から8のいずれか1項に記載の沸騰冷却装置。
【請求項10】
冷媒を収容し、発熱体からの熱を受ける受熱部と、
放熱容器を有し、前記受熱部からの熱を放熱する放熱部と、前記受熱部で前記冷媒が気化されることにより生成された気相冷媒を前記放熱部に輸送する第1流路を有する第1管部と、
前記放熱部で前記気相冷媒が凝縮されることにより生成された液相冷媒を前記受熱部に輸送する第2流路を有する第2管部と、を備え、
前記第1管部の一部は、前記放熱容器内に位置し、
前記第1管部は、前記受熱部に向けて開口する第1開口部と、前記放熱容器内に位置する第2開口部と、前記放熱容器内に位置する第5開口部と、を有し、
前記第2管部は、前記受熱部に向けて開口する第3開口部と、前記放熱部に向けて開口する第4開口部と、を有し、
前記第2開口部および前記第5開口部のそれぞれは、前記第1管部の側方に開口する、
沸騰冷却装置。
【請求項11】
前記第5開口部の開口面積は、前記第2開口部の開口面積よりも大きい、
請求項10に記載の沸騰冷却装置。
【請求項12】
冷媒を収容し、発熱体からの熱を受ける受熱部と、放熱容器を有し、前記受熱部からの熱を放熱する放熱部と、前記受熱部で前記冷媒が気化されることにより生成された気相冷媒を前記放熱部に輸送する第1流路を有する第1管部と、前記放熱部で前記気相冷媒が凝縮されることにより生成された液相冷媒を前記受熱部に輸送する第2流路を有する第2管部と、を備える沸騰冷却装置を用いた発熱体の冷却方法であって、
前記第1流路の中心線および前記第2流路の中心線のそれぞれは、直線状に延び、
前記第1管部は、前記受熱部に向けて開口する第1開口部と、前記放熱部に向けて開口する第2開口部と、を有し、
前記第2管部は、前記受熱部に向けて開口する第3開口部と、前記放熱部に向けて開口する第4開口部と、を有し、
前記放熱容器を水平面に対して傾斜させて配置することと、
前記第1開口部の中心を前記第3開口部の中心よりも上方に位置させ、かつ、前記第2開口部の中心を前記第4開口部の中心よりも上方に位置させることと、を含む、
発熱体の冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰冷却装置、および発熱体の冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒の沸騰に伴う潜熱による熱輸送を利用して発熱体を冷却する沸騰冷却装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の冷却装置は、受熱部と、放熱部と、これらを連結する2つの連結部と、を有する。受熱部は、冷却対象物からの熱を受け、当該熱により冷媒を気化させる。放熱部は、冷媒を凝縮液化させる。2つの連結部のうちの一方は、受熱部で気化した冷媒を放熱部に輸送する蒸気管である。他方は、放熱部で凝縮液化した冷媒を受熱部に輸送する液管である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/146110号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放熱部内では、冷媒が凝縮することにより、液膜が形成される。従来の冷却装置が有する放熱部を鉛直線に対して傾斜させて使用する場合、放熱部を鉛直線に沿って配置させて使用する場合に比べ、当該液膜の厚さが不均一になる。このため、放熱部には、放熱部を傾斜させずに使用する場合に比べて、液膜の厚さが厚い部分が生じる。当該部分では、厚さの増加に伴って液膜の熱抵抗が大きくなってしまう。この結果、凝縮熱伝達の効率が低下してしまう。それゆえ、液体が循環し難くなってしまい、よって、冷却性能が低下してしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の一態様に係る沸騰冷却装置は、冷媒を収容し、発熱体からの熱を受ける受熱部と、水平面に対して傾斜して配置される放熱容器を有し、前記受熱部からの熱を放熱する放熱部と、前記受熱部で前記冷媒が気化されることにより生成された気相冷媒を前記放熱部に輸送する第1流路を有する第1管部と、前記放熱部で前記気相冷媒が凝縮されることにより生成された液相冷媒を前記受熱部に輸送する第2流路を有する第2管部と、を備え、前記第1流路の中心線および前記第2流路の中心線のそれぞれは、直線状に延び、前記第1管部は、前記受熱部に向けて開口する第1開口部と、前記放熱部に向けて開口する第2開口部と、を有し、前記第2管部は、前記受熱部に向けて開口する第3開口部と、前記放熱部に向けて開口する第4開口部と、を有し、前記第1開口部の中心は、前記第3開口部の中心よりも上方に位置し、前記第2開口部の中心は、前記第4開口部の中心よりも上方に位置する。
【0007】
本発明の一態様に係る沸騰冷却装置は、冷媒を収容し、発熱体からの熱を受ける受熱部と、放熱容器を有し、前記受熱部からの熱を放熱する放熱部と、前記受熱部で前記冷媒が気化されることにより生成された気相冷媒を前記放熱部に輸送する第1流路を有する第1管部と、前記放熱部で前記気相冷媒が凝縮されることにより生成された液相冷媒を前記受熱部に輸送する第2流路を有する第2管部と、を備え、前記第1管部の一部は、前記放熱容器内に位置し、前記第1管部は、前記受熱部に向けて開口する第1開口部と、前記放熱容器内に位置する第2開口部と、前記放熱容器内に位置する第5開口部と、を有し、前記第2管部は、前記受熱部に向けて開口する第3開口部と、前記放熱部に向けて開口する第4開口部と、を有し、前記第2開口部および前記第5開口部のそれぞれは、前記第1管部の側方に開口する。
【0008】
本発明の一態様に係る発熱体の冷却方法は、冷媒を収容し、発熱体からの熱を受ける受熱部と、放熱容器を有し、前記受熱部からの熱を放熱する放熱部と、前記受熱部で前記冷媒が気化されることにより生成された気相冷媒を前記放熱部に輸送する第1流路を有する第1管部と、前記放熱部で前記気相冷媒が凝縮されることにより生成された液相冷媒を前記受熱部に輸送する第2流路を有する第2管部と、を備える沸騰冷却装置を用いた発熱体の冷却方法であって、前記第1流路の中心線および前記第2流路の中心線のそれぞれは、直線状に延び、前記第1管部は、前記受熱部に向けて開口する第1開口部と、前記放熱部に向けて開口する第2開口部と、を有し、前記第2管部は、前記受熱部に向けて開口する第3開口部と、前記放熱部に向けて開口する第4開口部と、を有し、前記放熱容器を水平面に対して傾斜させて配置することと、前記第1開口部の中心を前記第3開口部の中心よりも上方に位置させ、かつ、前記第2開口部の中心を前記第4開口部の中心よりも上方に位置させることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る沸騰冷却装置の概略構成を示す断面斜視図である。
図2図1に示す沸騰冷却装置の平面図である。
図3図1に示す沸騰冷却装置を示す縦断面図である。
図4】第2実施形態の沸騰冷却装置を示す縦断面図である。
図5】第2実施形態の沸騰冷却装置の横断面図である。
図6図5に示す第1管部の他の例を示す図である。
図7】第3実施形態の沸騰冷却装置を示す縦断面図である。
図8】第1変形例における第1管部および第2管部を示す横断面図である。
図9図8に示す第1管部の他の例を示す図である。
図10】第2変形例における沸騰冷却装置の概略構成を示す断面斜視図である。
図11図10に示す沸騰冷却装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法または縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0011】
1.第1実施形態
1-1.沸騰冷却装置1の概略
図1は、第1実施形態に係る沸騰冷却装置1の概略構成を示す断面斜視図である。図2は、図1に示す沸騰冷却装置1の平面図である。なお、図1では、図2中のB-B線断面が示される。また、以下では、説明の便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて説明する。また、X軸に沿う一方向をX1方向とし、X1方向とは反対の方向をX2方向とする。Y軸に沿う一方向をY1方向とし、Y1方向とは反対の方向をY2方向とする。Z軸に沿う一方向をZ1方向とし、Z1方向とは反対の方向をZ2方向とする。また、Z1方向またはZ2方向でみることを平面視とする。
【0012】
図1および図2に示す沸騰冷却装置1は、例えば、鉄道車両、自動車または家庭用電気機械等に搭載されるインバーターまたは整流器等のパワーエレクトロニクス製品における冷却に用いられる。パワーエレクトロニクス製品は、例えば、ダイオードまたはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体素子を有する。当該パワー半導体素子は、沸騰冷却装置1における冷却の対象物である発熱体の一例である。
【0013】
また、沸騰冷却装置1は、気化した冷媒REと液化した冷媒REとの密度差を利用したループ型サーモサイフォンの冷却器である。沸騰冷却装置1は、水平面に対して傾斜した状態で発熱体の冷却に用いられる。すなわち、沸騰冷却装置1は、鉛直線に対して傾斜した状態で用いられる。
【0014】
図1に示す沸騰冷却装置1は、受熱部10と放熱部20と熱輸送部30とを有する。熱輸送部30は、第1管部31および第2管部32を有する。また、放熱部20は、受熱部10よりもZ1方向に位置しており、受熱部10および放熱部20は、熱輸送部30を介して接続される。以下、各部について説明する。
【0015】
1-1a.受熱部10
図1に示す受熱部10は、収容室S10を有し、図示しない発熱体からの熱を受ける構造体である。収容室S10は、液状の冷媒REを収容する空間である。受熱部10では、図示しない発熱体の熱によって冷媒REが気化されることにより気相冷媒が生成される。
【0016】
図1に示す例では、受熱部10は、収容室S10を形成する箱状をなす。受熱部10は、底板11と天板12と側壁13とを有する。底板11と天板12と側壁13とで囲まれた空間が、収容室S10である。底板11および天板12のそれぞれは、Z軸に直交する方向に広がる平板である。側壁13は、底板11と天板12との間に位置し、底板11および天板12の外周同士を全周にわたって連結する。なお、底板11と側壁13とは図示の例では一体である。また、側壁13は、Z軸に沿って延びる。図示の例では、側壁13は、底板11に対して直交するが、底板11に対して直交していなくてもよい。また、天板12は、熱輸送部30が有する後述の第1管部31が挿入される孔と、熱輸送部30が有する第2管部32が挿入される孔とを有する。
【0017】
受熱部10は、熱伝導性に優れる材料で構成される。底板11、天板12および側壁13の各具体的な材料としては、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属材料が挙げられる。底板11、天板12および側壁13の材料は、互いに同じであっても異なってもよい。なお、底板11、天板12および側壁13のそれぞれは別部材で構成されてもよいし、底板11、天板12および側壁13は、一体で構成されてもよい。
【0018】
かかる受熱部10は、図示しない発熱体に熱的に接続される。「熱的に接続」とは、次の条件a、bまたはcのいずれかを満たすことをいう。条件a:2つの部材が物理的に直接に接する。条件b:2つの部材が50μm以下の間隙を介して配置される。条件c:2つの部材が10W・m-1・K-1以上の熱伝導率の他の部材を介して物理的に接続される。なお、各条件における2つの部材間には、伝熱グリースおよび接着剤等が存在してもよい。この場合、接着剤は、熱伝導性を高める観点から、熱伝導性のフィラー等を含むことが好ましい。
【0019】
冷媒REとしては、特に限定されないが、例えば、水等の水系冷媒、メタノール等のアルコール系冷媒、アセトン等のケトン系冷媒、エチレングリコール等のグリコール系冷媒、フロリナート等のフッ化炭素系冷媒、HFC134a等のフロン系冷媒、およびブタン等の炭化水素系冷媒等が挙げられる。なお、冷媒REには、必要に応じて、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤または炭化水素系界面活性剤等の界面活性剤等が添加されてもよい。また、冷媒REは、前述の冷媒の2種以上を組み合わせてもよい。
【0020】
1-1b.放熱部20
図1に示す放熱部20は、受熱部10からの熱を放熱する構造体である。放熱部20は、冷媒REを気化した状態から凝縮液化させる空間である凝縮室S20を有する。放熱部20では、受熱部10で生成された気相冷媒が凝縮されることにより液相冷媒が生成される。具体的には、放熱部20は、凝縮室S20で冷媒REを外部の流体との熱交換により受熱部10からの熱を外部へ放熱することにより気相冷媒を凝縮液化する。当該外部の流体は、特に限定されず、液体でも気体でもよいが、典型的には、例えば空気である。
【0021】
図1に示す例では、放熱部20は、放熱容器21と、複数の放熱フィン22とを有する。放熱容器21は、凝縮室S20を形成する箱状の部材である。図示の例では、放熱容器21は、Z1方向を長手方向とする縦長の容器である。沸騰冷却装置1による発熱体の冷却は、例えば、放熱容器21が水平面に対して傾斜した状態で行われる。
【0022】
放熱容器21は、底板211と天板212と筒部213とを有する。底板211と天板212と筒部213とで囲まれた空間が、凝縮室S20である。底板211および天板212は、互いに平行に配置される。底板211および天板212のそれぞれは、Z軸に直交する方向に広がる平板である。筒部213は、底板211と天板212との間に位置し、底板211および天板212の外周同士を全周にわたって連結する。筒部213は、Z軸に沿って延びる。図示の例では、筒部213は、底板211に対して直交するが、直交していなくてもよい。また、底板211は、熱輸送部30が有する後述の第1管部31が挿入される孔と、熱輸送部30が有する第2管部32が挿入される孔とを有する。
【0023】
放熱容器21が有する凝縮室S20の形状は、円柱状であるが、例えば角柱状でもよい。また、図2に示すように、凝縮室S20の平面視形状は、円形であるが、例えば多角形でもよい。また、放熱容器21は、熱伝導性に優れる材料で構成される。放熱容器21の具体的な材料としては、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属材料が挙げられる。なお、図示の例では、底板11、天板12および側壁13は、一体で構成されるが、底板11、天板12および側壁13のそれぞれは別部材で構成されてもよい。
【0024】
図1に示す各放熱フィン22は、放熱容器21に熱的に接続される。各放熱フィン22は、平板状の部材である。図示の例では、各放熱フィン22は、Z軸に直交する方向に広がる。また、複数の放熱フィン22は、互いに厚さ方向に間隔を隔てて配置される。本実施形態の各放熱フィン22は、平面視で受熱部10のほぼ全範囲にわたり重なるように配置される。また、各放熱フィン22は、複数の放熱容器21を挿入するための孔を有する。各放熱フィン22は、熱伝導性に優れる材料で構成される。放熱フィン22の具体的な材料としては、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属材料が挙げられる。また、例えば、放熱フィン22は、放熱容器21に拡管、圧入、接着剤、ネジ止め、ロウ付けまたは溶接等により固定される。
【0025】
なお、放熱フィン22の形状は、図1に示す例に限定されず、任意である。また、放熱フィン22は、必要に応じて設ければよく、省略してもよい。ただし、放熱部20が複数の放熱フィン22を有することで、冷媒REの気体を効率的に凝縮液化させることができる。
【0026】
1-1c.熱輸送部30
図1に示す熱輸送部30は、冷媒REの移動を用いて受熱部10から放熱部20へと熱を輸送する構造体である。図1に示す例では、熱輸送部30は、第1管部31と第2管部32とを有する。なお、前述の受熱部10が有する天板12は、熱輸送部30の一部を兼ねてもよい。
【0027】
第1管部31は、受熱部10で冷媒REが気化されることにより生成された気相冷媒を放熱部20に輸送する。本実施形態では、第1管部31は、Z軸に沿って直線状に延びる管で構成される。また、第1管部31は、受熱部10および放熱部20のそれぞれに接続される。具体的には、第1管部31は、受熱部10の天板12と、放熱部20の底板211とのそれぞれに接続される。
【0028】
第2管部32は、放熱部20で気相冷媒が凝縮されることにより生成された液相冷媒を受熱部10に輸送する。本実施形態では、第2管部32は、Z軸に沿って直線状に延びる管で構成される。また、第2管部32は、受熱部10および放熱部20のそれぞれに接続される。具体的には、第2管部32は、受熱部10の天板12と、放熱部20の底板211とのそれぞれに接続される。また、図2に示す例では、第1管部31と第2管部32とは、X軸に沿う方向に並ぶ。
【0029】
第1管部31および第2管部32は、熱伝導性に優れる材料で構成される。第1管部31および第2管部32の具体的な構成材料としては、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属材料が挙げられる。また、第1管部31および第2管部32は、天板12に対してロウ付け等により固定される。なお、第1管部31および第2管部32は、互いに同じ材料で構成されてもよいし、互いに異なる材料で構成されてもよい。
【0030】
以上の概略構成を有する沸騰冷却装置1は、前述のようにサーモサイフォンの冷却器である。沸騰冷却装置1では、受熱部10で冷媒REが気化されることにより生成された気相冷媒が、気体と液体との密度差により第1管部31から放熱部20へ導入される。当該気相冷媒は放熱部20で凝縮液化されることにより、液相冷媒が生成される。当該液相冷媒は、重力により第2管部32から受熱部10へ導入される。そして、液相冷媒が再び気化されることにより気相冷媒になる。このように冷媒REの相変化を伴う循環流の形成により、受熱部10から放熱部20へ潜熱による熱輸送が行われる。このようにサーモサイフォンの冷却器によれば、ポンプを用いずに冷媒REを循環させることができる。
【0031】
1-1d.熱輸送部30の詳細構成
図3は、図1に示す熱輸送部30を示す縦断面図、すなわち図2中のB-B線断面図である。例えば、図3に示すように、沸騰冷却装置1が発熱体の冷却に用いられる場合、放熱容器21の中心線A0が鉛直線Aに対して傾斜するように沸騰冷却装置1は所定の箇所に載置される。本明細書では、鉛直上方向、および鉛直斜め上方向のそれぞれを「上方」とする。鉛直下方向、および鉛直斜め下方向のそれぞれを「下方」とする。
【0032】
図3に示すように、第1管部31と第2管部32とは、互いに平行に配置される。具体的には、第1管部31が有する第1流路S1の中心線A1と第2管部32が有する第2流路S2の中心線A2とは、互いに平行である。
【0033】
第1管部31は、受熱部10と放熱部20とのそれぞれに接続されており、収容室S10および凝縮室S20のそれぞれに開口している。第1管部31は、第1流路S1を形成する第1内壁面310を有する。第1流路S1は、受熱部10で冷媒REが気化されることにより生成された気相冷媒を放熱部20に輸送する空間である。第1流路S1を介して各凝縮室S20は受熱部10の収容室S10に連通する。
【0034】
図示の例では、第1管部31の厚さは、一定である。第1管部31の第1内壁面310は、第1流路S1の中心線A1に平行な円筒状の面である。第1内壁面310の内径は、一定である。したがって、第1流路S1の断面積は、一定である。
【0035】
第1管部31は、受熱部10に向けて開口する第1開口部301と、放熱部20に向けて開口する第2開口部302とを有する。第1開口部301は、第1内壁面310のZ2方向での端により囲まれる空間である。第2開口部302は、第1内壁面310のZ1方向での端により囲まれる空間である。第1開口部301および第2開口部302の平面視での各形状は、円形である。
【0036】
第1開口部301のZ1方向での位置は、天板12の下面のZ1方向での位置と同じである。ただし、第1開口部301は、例えば、天板12の下面に対してZ2方向に位置してもよい。また、第1開口部301は、収容室S10内に存在する冷媒REの液面RE0に対して上方に位置する。別の言い方をすると、第1開口部301は、液面RE0と放熱部20との間に位置する。したがって、第1開口部301は、液面RE0に接触していない。
【0037】
第2開口部302のZ1方向での位置は、底板211の上面のZ1方向での位置と同じである。ただし、第2開口部302は、放熱容器21の底板211に対してZ1方向に位置してもよい。
【0038】
図3に示すように、第2管部32は、受熱部10と放熱部20とのそれぞれに接続されており、収容室S10および凝縮室S20のそれぞれに開口している。各第2管部32は、第2流路S2を形成する第2内壁面320を有する。第2流路S2は、放熱部20で気相冷媒が凝縮されることにより生成された液相冷媒を受熱部10に輸送する空間である。第2流路S2を介して各放熱容器21の凝縮室S20は受熱部10の収容室S10に連通する。
【0039】
図示の例では、第2管部32の厚さは、一定である。第2管部32の第2内壁面320は、第2流路S2の中心線A2に平行な円筒状の面である。第2内壁面320の内径は、一定である。したがって、第2流路S2の断面積は、一定である。
【0040】
第2管部32は、受熱部10に向けて開口する第3開口部303と、放熱部20に向けて開口する第4開口部304とを有する。第3開口部303は、第2内壁面320のZ2方向での端により囲まれる空間である。第4開口部304は、第2内壁面320のZ1方向での端により囲まれる空間である。第3開口部303および第4開口部304の平面視での各形状は、円形である。
【0041】
第3開口部303のZ1方向での位置は、天板12の下面のZ1方向での位置と同じである。ただし、第3開口部303は、例えば、天板12の下面に対してZ2方向に位置してもよい。本実施形態では、第3開口部303は、収容室S10内に存在する冷媒REの液面RE0に対して上方に位置する。別の言い方をすると、第3開口部303は、液面RE0と放熱部20との間に位置する。したがって、第3開口部303は、液面RE0に接触していない。
【0042】
第4開口部304のZ1方向での位置は、例えば、底板211の上面のZ1方向での位置と同じである。ただし、第4開口部304は、放熱容器21の底板211に対してZ1方向に位置してもよい。
【0043】
また、図示の例では、前述した第1管部31が有する第1流路S1の平均断面積は、第2管部32が有する第2流路S2の平均断面積よりも大きい。このため、第1流路S1の断面積および第2流路S2の断面積が同じである場合に比べ、第1流路S1に気相冷媒が流れ易く、かつ、第2流路S2に液相冷媒が流れ易くなる。よって、沸騰冷却装置1をループ型のサーモサイフォンとして好適に機能させることができる。
【0044】
また、前述したように、第1管部31および第2管部32は、直線状に延びる管である。したがって、第1流路S1の中心線A1および第2流路S2の中心線A2のそれぞれは、直線状に延びる。このため、第1管部31および第2管部32が屈曲している場合に比べ、第1流路S1および第2流路S2における流路抵抗を小さくすることができる。よって、冷媒REの循環が阻害され難くなる。したがって、冷媒REを円滑に循環させることができる。また、第1管部31および第2管部32のそれぞれの製造時に曲げ加工等の加工が不要である。このため、第1管部31および第2管部32のそれぞれを安価に製造することができる。
【0045】
また、前述のように、沸騰冷却装置1が発熱体の冷却に用いられる場合、放熱容器21が鉛直線Aに対して傾斜して配置されるよう、沸騰冷却装置1は所定の箇所に載置される。具体的には、放熱容器21の底板211、天板212および筒部213のそれぞれは鉛直線Aまたは水平面G0に対して傾斜するよう、沸騰冷却装置1は所定の箇所に載置される。また、放熱容器21の傾斜に伴って、第1管部31と、第2管部32と、受熱部10の底板11、天板12および側壁13とは、鉛直線Aに対して、放熱容器21と同一方向に傾斜している。
【0046】
ここで、放熱容器21内の気相冷媒は、外気により冷却された放熱容器21との接触により、放熱容器21の内壁面上で冷却され、潜熱を放出しながら液相冷媒となる。当該液相冷媒は、放熱容器21内で液膜F0となる。液膜F0は、底板211の上面および筒部213の内壁面に沿って下方に流下する。この結果、放熱容器21の下方に向かうに従って液膜F0の厚さが厚くなる。液膜F0が厚くなるほど、熱抵抗が大きくなる。このため、液膜F0の厚い部分では、液膜F0の薄い部分に比べて、凝縮熱伝達の効率の低下により、冷却性能が低下してしまう。
【0047】
本実施形態では、このような液膜F0の影響による冷却性能の低下を抑制するよう、放熱容器21が鉛直線Aに対して傾斜した状態で、第2開口部302は、第4開口部304よりも上方に位置している。具体的には、第2開口部302の中心O2が第4開口部304の中心O4よりも上方に位置している。
【0048】
中心O2が中心O4よりも上方に位置していることで、中心O2が中心O4よりも下方に位置する場合に比べ、第2開口部302が液膜F0によって塞がれ難い。よって、第2開口部302から噴出される気相冷媒による蒸気流の運動量の低下が抑制される。それゆえ、蒸気流によって放熱容器21内の液膜F0を効率良く攪乱させることができる。この結果、液膜F0の厚膜化を抑制でき、よって、液膜F0の熱抵抗の増大を抑制することができる。したがって、凝縮熱伝達の効率の低下を抑制できるので、冷却性能の低下を抑制することができる。特に、第2開口部302の全体が第4開口部304の全体よりも上方に位置していることで、冷却性能の低下を効果的に抑制することができる。
【0049】
さらに、中心O4が中心O2よりも下方に位置することで、中心O4が中心O2よりも上方に位置する場合に比べ、放熱容器21内の液相冷媒が第4開口部304に流入し易くなる。したがって、冷媒REを円滑に循環させることができる。
【0050】
また、放熱容器21が鉛直線Aに対して傾斜した状態で、第1開口部301の中心O1は、第3開口部303の中心O3よりも上方に位置する。このため、中心O1が中心O3よりも下方に位置する場合に比べ、第1開口部301が液状の冷媒REにより塞がれ難いので、第1開口部301に気相冷媒が流入し易くなる。したがって、冷媒REを円滑に循環させることができる。また、第1開口部301の全体が第3開口部303の全体よりも上方に位置することで、第1開口部301に気相冷媒が特に流入し易くなる
【0051】
なお、放熱容器21の傾斜角度θは、特に限定されないが、例えば、0°よりも大きく、かつ45°よりも小さい。傾斜角度θは、放熱容器21の中心線A0と鉛直線Aとのなす角度である。
【0052】
また、第1流路S1の中心線A1は、第2流路S2の中心線A2よりも上方に位置する。このため、中心線A1が中心線A2よりも下方に位置する場合に比べ、第2開口部302を第4開口部304よりも上方に位置させ易い。
【0053】
また、前述のように、放熱部20は、放熱容器21に熱的に接続される放熱フィン22を有する。そして、放熱フィン22は、鉛直線Aに対して傾斜している。このため、放熱フィン22が鉛直線Aに直交する水平面G0に沿って配置される場合に比べ、放熱容器21を効率良く冷却することができる。放熱フィン22が水平面G0に平行であると、放熱フィン22間で温められた空気が上昇しようとしても、当該空気の移動が放熱フィン22によって妨げられる。よって、放熱フィン22間に熱が滞留し易くなり、自然滞留が生じ難い。これに対して、放熱フィン22が水平面G0に対して傾斜していることで、傾斜していない場合に比べ、放熱フィン22間で温められた空気を放熱フィン22に沿って上方に移動させ易くなるので、放熱フィン22間での熱の滞留を抑制できる。よって、放熱容器21内の冷却性能を高めることができる。
【0054】
なお、放熱フィン22は、中心線A0に直交する平面に対して傾斜してもよい。ただし、放熱部20の組み立ての容易性の観点から、放熱フィン22は、放熱容器21の傾斜に伴って鉛直線Aに対して傾斜していることが好ましい。具体的に、放熱フィン22は、中心線A0に直交する平面に対して平行であること、すなわち、底板211に対して平行であることが好ましい。これにより、放熱容器21と放熱フィン22との組み立てが容易であり、かつ、放熱容器21の傾斜に伴って放熱フィン22を簡単に傾斜させることができる。
【0055】
2.第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0056】
図4は、第2実施形態の沸騰冷却装置1Aを示す縦断面図である。図5は、第2実施形態の沸騰冷却装置1Aの横断面図であり、図4のC-C線断面に相当する。図4および図5に示す沸騰冷却装置1Aは、第1実施形態の熱輸送部30の代わりに、熱輸送部30Aを有すること以外、第1実施形態の熱輸送部30と同じである。以下では、熱輸送部30Aについて熱輸送部30との相違点を説明し、熱輸送部30と同じ事項の説明は省略する。
【0057】
図4に示すように、熱輸送部30Aは、第1管部31Aと、第2管部32とを有する。第1管部31Aの一部は、第1管部31AのZ1方向での端が放熱容器21の底板211よりもZ1方向に位置するよう、放熱容器21内に位置する。また、第1管部31Aは、複数の開口部を有する。具体的には、第1管部31Aは、第2開口部302Aと、第5開口部305とを有する。第2開口部302Aおよび第5開口部305のそれぞれは、第1管部31Aの管壁を貫通する孔である。なお、第1管部31AのZ1方向での端には、開口部が設けられておらず、当該端は、塞がれている。
【0058】
図5に示すように、第2開口部302Aおよび第5開口部305のそれぞれは、第1管部31Aの側方に開口する。具体的には、第2開口部302Aは、X2方向に向けて開口する。第5開口部305は、X1方向に向けて開口する。したがって、第2開口部302Aおよび第5開口部305は、互いに反対方向に開口する。放熱容器21が傾斜した状態で、第5開口部305の中心O5は、第2開口部302Aの中心O2よりも下方に位置する。また、第2開口部302Aの中心O2および第5開口部305の中心O5のそれぞれは、第4開口部304の中心O4よりも上方に位置する。
【0059】
本実施形態においても第1実施形態と同様に、第2開口部302Aの中心O2が第4開口部304の中心O4よりも上方に位置する。このため、中心O2が中心O4よりも下方に位置する場合に比べ、第2開口部302Aが液膜F0によって塞がれ難い。よって、放熱容器21内の液膜F0を蒸気流によって効率良く攪乱させることができる。したがって、凝縮熱伝達の効率の低下を抑制できるので、冷却性能の低下を抑制することができる。
【0060】
また、前述のように、第1管部31Aの一部は、放熱容器21内に位置する。別の言い方をすると、第1管部31Aの一部は、底板211からZ1方向に突出する。このため、第1管部31Aの一部が底板211から突出していない場合に比べ、第2開口部302Aが液膜F0によって、より塞がれ難い。それゆえ、放熱容器21内の液膜F0を蒸気流によって効率良く攪乱させることができる。
【0061】
さらに、前述のように、第1管部31Aは、第2開口部302Aに加え、第5開口部305を有する。第1管部31Aが複数の開口部を有することで、1つの開口部のみを有する場合に比べ、第1管部31Aから噴射される気相冷媒による蒸気流によって放熱容器21内の液膜F0を効率良く攪乱させることができる。
【0062】
また、第2開口部302Aおよび第5開口部305は、第1管部31Aの側方に開口する。このため、第1管部31Aの上端が開口する場合に比べ、放熱容器21内の液膜F0を蒸気流によって効率良く攪乱させることができる。
【0063】
また、第2開口部302Aおよび第5開口部305が第1管部31Aの側方に開口する場合、第1管部31Aの上端には、開口部が設けられていないことが好ましい。上端に開口部が設けられていないことで、第2開口部302Aおよび第5開口部305から噴出される気相冷媒による蒸気流によって、放熱容器21内の液膜F0を効率良く攪乱させることができる。
【0064】
なお、第2開口部302Aおよび第5開口部305が第1管部31Aの側方に開口していることで、放熱容器21が鉛直線Aに対して傾斜している場合に限らず、傾斜していない場合であっても、液膜F0を蒸気流によって効率良く攪乱させることができる。よって、放熱容器21が鉛直線Aに対して傾斜していない場合であっても、冷却性能の向上を図ることができる。
【0065】
また、放熱容器21が鉛直線Aに対して傾斜した状態で、第2開口部302Aは、下方に向く。具体的には、第2開口部302Aは、鉛直斜め下方を向く。第2開口部302Aが下方を向くことで、液膜F0の厚さが最も厚い放熱容器21内の下方部分に向けて、第2開口部302Aから気相冷媒を噴射させることができる。このため、放熱容器21内の液膜F0を当該気相冷媒による蒸気流によって、より効率良く攪乱させることができる。
【0066】
一方、放熱容器21が鉛直線Aに対して傾斜した状態で、第5開口部305は、上方を向く。具体的には、第5開口部305は、鉛直斜め上方を向く。このため、第2開口部302Aが下方に向くのに対し、第5開口部305が上方を向くことで、第5開口部305が下方に向く場合に比べ、放熱容器21内の液膜F0を蒸気流によって効率良く攪乱させることができる。すなわち、第5開口部305および第2開口部302Aが互いに反対方向に向くことで、同一方向を向く場合に比べ、放熱容器21内の液膜F0を蒸気流によって、より効率良く攪乱させることができる。
【0067】
第5開口部305は、第2開口部302Aよりも下方に位置する。そして、第5開口部305の開口面積すなわち断面積は、第2開口部302Aの開口面積すなわち断面積よりも大きい。このため、第5開口部305の断面積が第2開口部302Aの断面積よりも大きいことで、第5開口部305の断面積の方が小さい場合に比べ、第5開口部305から噴射される気相冷媒による蒸気流の量を多くすることができる。また、第5開口部305が第2開口部302Aよりも下方に位置するので、第5開口部305から、液膜F0の厚さが最も厚い放熱容器21内の下方部分に向けて、気相冷媒を噴射させることができる。
【0068】
なお、第5開口部305の断面積が第2開口部302Aの断面積よりも大きいことで、放熱容器21が鉛直線Aに対して傾斜している場合に限らず、傾斜していない場合であっても、放熱容器21内の液膜F0を蒸気流によって効率良く攪乱させることができる。よって、放熱容器21が鉛直線Aに対して傾斜していない場合であっても、冷却性能の向上を図ることができる。
【0069】
図6は、第5に示す第1管部31Aの他の例を示す図である。図6に示す第1管部31Aは、3以上の開口部を有する。具体的には、第1管部31Aは、第2開口部302Aおよび第5開口部305に加え、第6開口部306および第7開口部307を有する。第6開口部306はY1方向に開口する。第7開口部307は、Y2方向に開口する。複数の開口部を有することで、放熱容器21内の液膜F0を当該蒸気流によって、より効率良く攪乱させることができる。また、図6に示す例では、平面視において複数の開口部が開口する方向は、互いに異なる。このため、複数の開口部が互いに同一方向に開口する場合に比べ、液膜F0をより効率良く攪乱させることができる。また、複数の開口部は、鉛直線A上の位置およびZ1方向での位置が互いに異なる。このため、複数の開口部の鉛直線A上の位置およびZ1方向での位置が互いに同じ場合に比べ、液膜F0をより効率良く攪乱させることができる。
【0070】
3.第3実施形態
以下、本発明の第3実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0071】
図7は、第3実施形態の沸騰冷却装置1Bを示す縦断面図である。図7に示す沸騰冷却装置1Bは、第1実施形態の熱輸送部30の代わりに、熱輸送部30Bを有すること以外、第1実施形態の熱輸送部30と同じである。以下では、熱輸送部30Bについて熱輸送部30との相違点を説明し、熱輸送部30と同じ事項の説明は省略する。
【0072】
図7に示すように、熱輸送部30Bは、第1管部31Bと、第2管部32Bとを有する。第1管部31Bの一部は、放熱容器21内に位置する。別の言い方をすると、第1管部31Bの一部は、底板211に対して上方に突出する。
【0073】
第2管部32Bの一部は、受熱部10内に位置する。別の言い方をすると、第2管部32Bの一部は、天板12に対して下方に突出する。また、第3開口部303Bは、収容室S10内に存在する冷媒REの液面RE0に対して下方に位置する。別の言い方をすると、第3開口部303Bは、液状の冷媒REに接触している。
【0074】
本実施形態においても第1実施形態と同様に、第2開口部302Bの中心O2が第2管部32Bの第4開口部304Bの中心O4よりも上方に位置する。このため、中心O2が中心O4よりも下方に位置する場合に比べ、第2開口部302Bが液膜F0によって塞がれ難い。よって、放熱容器21内の液膜F0を第2開口部302Bからの気相冷媒の噴射による蒸気流によって効率良く攪乱させることができる。したがって、冷却性能の低下を抑制することができる。
【0075】
また、前述のように、第1管部31Bの一部は、放熱容器21内に位置する。第1管部31Bの一部が底板211からZ1方向に突出することで、第1管部31Bの一部が底板211から突出していない場合に比べ、第2開口部302Bが液膜F0によって塞がれ難い。それゆえ、蒸気流によって液膜F0をより効率良く攪乱させることができる。
【0076】
また、本実施形態では、第1管部31Bの第1流路S1の断面積は、第2管部32Bの第2流路S2の断面積とほぼ等しい。この場合、第1管部31Bの一部が放熱容器21内に位置することで、一部が放熱容器21内に位置していない場合に比べ、第2開口部302Bの鉛直線A上の位置を上方に位置させ易い。よって、第1管部31Bに液相冷媒が流入することがより抑制される。このため、第4開口部304に比べ、第2開口部302Bに液相冷媒がより流入し難くなる。
【0077】
また、前述のように、第2管部32Bの第3開口部303Bは、第1管部31の第1開口部301よりも下方に位置する。よって、第3開口部303Bは、第1開口部301に比べて冷媒REに接触し易い。一方、第1管部31Bの第1開口部301は、冷媒REに接触し難い。このため、第1管部31Bに比べて、第2管部32Bに放熱部20からの液相冷媒が流下し易く、かつ第1管部31Bに受熱部10の気相冷媒が流入し易い。したがって、冷媒REをより円滑に循環させることができる。
【0078】
4.変形例
以上に例示した実施形態は多様に変形され得る。前述の実施形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。また、第1実施形態に関する以下の変形例は、矛盾しない範囲で第2または第3実施形態に適宜併合され得る。
【0079】
4-1.第1変形例
第1実施形態では、第1管部31および第2管部32は、X1方向に並ぶが、Z軸に交差する方向に並んでいればよく、X1方向以外の方向に並んでもよい。
【0080】
図8は、第1変形例における第1管部31および第2管部32を示す横断面図である。図8に示す第1管部31および第2管部32は、平面視においてX1方向およびY1方向の両方に交差する方向に並ぶ。なお、第2開口部302と第4開口部304とは、平面視でX1方向およびY1方向の両方に交差する方向に並ぶ。また、図8に示す第1管部31と第2管部32とは、X1方向およびY1方向で互いに重なっていない。図8に示す例においても、第1実施形態と同様に、放熱容器21が鉛直線Aに対して傾斜した状態で、第1管部31の中心線A1を第2管部32の中心線A2よりも鉛直線A上で上方に位置させることで、冷却性能の低下を抑制することができる。
【0081】
図9は、図8の第1管部31の他の例を示す図である。図9に示す第1管部31と第2管部32とは、Y1方向で互いに重なる部分を有する。なお、第2開口部302と第4開口部304とは、Y1方向で互いに重なる部分を有する。図9に示す例においても、第1実施形態と同様に、放熱容器21が鉛直線Aに対して傾斜した状態で、第1管部31の中心線A1を第2管部32の中心線A2よりも鉛直線A上で上方に位置させることで冷却性能の低下を抑制することができる。
【0082】
4-2.第2変形例
前述の第1実施形態では、1つの受熱部10に対して、1つの放熱容器21、1つの第1管部31および1つの第2管部32が設けられている。しかし、1つの受熱部10に対して、複数の放熱容器21、複数の第1管部31および複数の第2管部32が設けられてもよい。
【0083】
図10は、第2変形例における沸騰冷却装置1Cの概略構成を示す断面斜視図である。図10に示すように、沸騰冷却装置1Cは、受熱部10と、放熱部20Cと、熱輸送部30Cとを有する。放熱部20Cは、複数の放熱容器21を有する。熱輸送部30Cは、複数の第1管部31Cおよび複数の第2管部32Cを有する。第1管部31Cおよび第2管部32Cのそれぞれは、放熱容器21ごとに設けられる。複数の第1管部31Cおよび複数の第2管部32Cは、共通の受熱部10に接続される。
【0084】
図11は、図10に示す沸騰冷却装置1Cの平面図である。図11に示す例では、複数の放熱容器21は、平面視で千鳥状に配置される。なお、放熱容器21の配置は、千鳥配置に限定されず、例えば行列配置等の他の規則的な配置でもよいし、不規則な配置でもよい。また、放熱容器21の数は、図11に示す例に示す数に限定されず、任意である。また、複数の凝縮室S20の容積は互いに等しいが、互いに異なっていてもよい。
【0085】
なお、第2変形例では、受熱部10は、収容室S10を形成する1つの容器を有するが、収容室S10を形成する複数の容器を有してもよい。当該容器は、放熱容器21ごとに設けられてもよい。
【0086】
以上、好適な各実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は前述の実施形態に限定されない。前述した各実施形態の任意の構成同士を組み合わせてもよい。また、本発明の各部の構成は、前述の実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成に置換でき、また、任意の構成を付加できる。
【符号の説明】
【0087】
1…沸騰冷却装置、10…受熱部、11…底板、12…天板、13…側壁、20…放熱部、21…放熱容器、22…放熱フィン、30…熱輸送部、31…第1管部、32…第2管部、211…底板、212…天板、213…筒部、301…第1開口部、302…第2開口部、303…第3開口部、304…第4開口部、305…第5開口部、306…第6開口部、307…第7開口部、310…第1内壁面、320…第2内壁面、A…鉛直線、A0…中心線、A1…中心線、A2…中心線、F0…液膜、G0…水平面、O1…中心、O2…中心、O3…中心、O4…中心、O5…中心、RE…冷媒、RE0…液面、S1…第1流路、S10…収容室、S2…第2流路、S20…凝縮室、θ…傾斜角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11