(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143812
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】補強方法及び摩擦圧接接合構造
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
B23K20/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044531
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 和章
(72)【発明者】
【氏名】江村 勝
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA02
4E167BF02
4E167CC04
4E167DA14
(57)【要約】
【課題】火花、臭気、粉塵等の拡散を抑制することである。
【解決手段】鋼材2を板材3で補強する補強方法であって、ビット4を挿入するための入口部3cと入口部から奥へ向かって狭まる奥部3dとを有する挿入孔3aを、板材に形成する挿入孔形成工程と、鋼材に板材を添設する板材添設工程と、保持部材5でビットを鋼材側に向けて保持しつつ、ビットを挿入孔に挿入して摩擦圧接接合する摩擦圧接接合工程と、摩擦圧接接合工程の後に、保持部材をビットと切り離す切り離し工程と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材を板材で補強する補強方法であって、
摩擦圧接接合部材を挿入するための入口部と前記入口部から奥へ向かって狭まる奥部とを有する挿入孔を、前記板材に形成する挿入孔形成工程と、
前記鋼材に前記板材を添設する板材添設工程と、
保持部材で前記摩擦圧接接合部材を前記鋼材側に向けて保持しつつ、前記摩擦圧接接合部材を前記挿入孔に挿入して摩擦圧接接合する摩擦圧接接合工程と、
前記摩擦圧接接合工程の後に、前記保持部材を前記摩擦圧接接合部材と切り離す切り離し工程と、
を有することを特徴とする補強方法。
【請求項2】
請求項1に記載の補強方法であって、
前記挿入孔形成工程は、工場で行われ、前記摩擦圧接接合工程は、現場で行われることを特徴とする補強方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の補強方法であって、
前記挿入孔形成工程においては、前記板材を貫通させることなく閉塞部を備えるように前記挿入孔を形成し、
前記摩擦圧接接合工程においては、前記摩擦圧接接合部材を前記挿入孔に挿入し閉塞部を貫通させて摩擦圧接接合することを特徴とする補強方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の補強方法であって、
前記挿入孔形成工程においては、
前記摩擦圧接接合部材を前記挿入孔に挿入する際に先行して挿入される前記摩擦圧接接合部材の前端部分が、前記入口部より狭径で、
前記摩擦圧接接合部材の後端部分が、前記入口部より広径となるように、
前記入口部を形成することを特徴とする補強方法。
【請求項5】
鋼材と、
前記鋼材に添設されている板材と、
前記鋼材に摩擦圧接接合されている摩擦圧接接合部材と、
を有する摩擦圧接接合構造であって、
前記板材は、
広径部と該広径部から前記鋼材の側に向かい狭まっている狭径部とを備え、前記摩擦圧接接合部材が挿入されている挿入部を有することを特徴とする摩擦圧接接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強方法及び摩擦圧接接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼構造物の補強を行う場合は、一般的に溶接作業を伴う。そして、かかる溶接作業は、例えば、特開文献1に開示されているような溶接装置により行われる。つまり、溶接ガンのチャックにスタッドボルトを装着し、溶接対象にスタッドボルトをスタッド溶接する溶接装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような溶接装置により溶接作業を行うと、火花、臭気、粉塵等が発生するので、火花による火事の発生、臭気による第三者等への異臭トラブル、粉塵による健康被害等を招くおそれがあった。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、火花、臭気、粉塵等の拡散を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、鋼材を板材で補強する補強方法であって、摩擦圧接接合部材を挿入するための入口部と前記入口部から奥へ向かって狭まる奥部とを有する挿入孔を、前記板材に形成する挿入孔形成工程と、前記鋼材に前記板材を添設する板材添設工程と、保持部材で前記摩擦圧接接合部材を前記鋼材側に向けて保持しつつ、前記摩擦圧接接合部材を前記挿入孔に挿入して摩擦圧接接合する摩擦圧接接合工程と、前記摩擦圧接接合工程の後に、前記保持部材を前記摩擦圧接接合部材と切り離す切り離し工程と、を有することを特徴とする補強方法である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溶接接合の代わりに火花等がほとんど発生しない摩擦圧接接合を用いることにより、火花、臭気、粉塵等の拡散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0011】
鋼材を板材で補強する補強方法であって、摩擦圧接接合部材を挿入するための入口部と前記入口部から奥へ向かって狭まる奥部とを有する挿入孔を、前記板材に形成する挿入孔形成工程と、前記鋼材に前記板材を添設する板材添設工程と、保持部材で前記摩擦圧接接合部材を前記鋼材側に向けて保持しつつ、前記摩擦圧接接合部材を前記挿入孔に挿入して摩擦圧接接合する摩擦圧接接合工程と、前記摩擦圧接接合工程の後に、前記保持部材を前記摩擦圧接接合部材と切り離す切り離し工程と、を有することを特徴とする補強方法。
【0012】
このような補強方法によれば、溶接接合の代わりに火花等がほとんど発生しない摩擦圧接接合を用いることにより、火花、臭気、粉塵等の拡散を抑制することができる。
【0013】
かかる補強方法であって、前記挿入孔形成工程は、工場で行われ、前記摩擦圧接接合工程は、現場で行われることが望ましい。
【0014】
このような補強方法によれば、挿入孔形成工程を工場にて行うことにより、高精度な装置、検査等にて精度の高い挿入孔を形成でき、摩擦圧接接合を作業現場にて行うことにより、溶接作業に比べて、火花による火事の発生、臭気による第三者等への異臭トラブル、粉塵による健康被害等を抑制することができる。
【0015】
かかる補強方法であって、前記挿入孔形成工程においては、前記板材を貫通させることなく閉塞部を備えるように前記挿入孔を形成し、前記摩擦圧接接合工程においては、前記摩擦圧接接合部材を前記挿入孔に挿入し閉塞部を貫通させて摩擦圧接接合することが望ましい。
【0016】
このような補強方法によれば、閉塞部があることにより、閉塞部が無い場合に比べて、ビットが閉塞部を貫通して板材を摩擦圧接接合するので、板材をしっかりと接合することができる。
【0017】
かかる補強方法であって、前記挿入孔形成工程においては、前記摩擦圧接接合部材を前記挿入孔に挿入する際に先行して挿入される前記摩擦圧接接合部材の前端部分が、前記入口部より狭径で、前記摩擦圧接接合部材の後端部分が、前記入口部より広径となるように、前記入口部を形成することが望ましい。
【0018】
このような補強方法によれば、摩擦圧接接合部材が挿入孔の入口部よりも広径となる部分を有するので、広径となる部分を有さない場合に比べて、挿入孔とビットの間に隙間が生じにくいので、挿入孔の全体を摩擦圧接接合することができ、板材をしっかりと接合することができる。
【0019】
鋼材と、前記鋼材に添設されている板材と、前記鋼材に摩擦圧接接合されている摩擦圧接接合部材と、を有する摩擦圧接接合構造であって、前記板材は、広径部と該広径部から前記鋼材の側に向かい狭まっている狭径部とを備え、前記摩擦圧接接合部材が挿入されている挿入部を有することを特徴とする摩擦圧接接合構造。
【0020】
このような摩擦圧接接合構造によれば、溶接接合の代わりに火花等がほとんど発生しない摩擦圧接接合を用いることにより、火花、臭気、粉塵等の拡散を抑制することができる。
【0021】
===本実施形態===
本実施形態に係る摩擦圧接接合構造1について図を用いて説明する。
図1は、摩擦圧接接合構造1の概略断面図である。
【0022】
本実施形態に係る摩擦圧接接合構造1は、鋼材2と、鋼材2に添設されている板材3と、鋼材2に摩擦圧接接合されているビット4(摩擦圧接接合部材に相当)と、を有する。そして、板材3は、広径部1a(例えば、直径L1となっている符号1aで示した箇所)と該広径部1aから鋼材2の側に向かい狭まっている狭径部1b(例えば、直径L2となっている符号1bで示した箇所)とを備え、ビット4が挿入されている挿入部を有する。
【0023】
なお、
図1においては、鋼材2の下面に板材3を添設している例を示しているが、これに限るものでなく、上下が逆様でも良いし、鋼材2が左側(右側)で板材3が右側(左側)でも良い。
【0024】
鋼材2は、建築物等の構造材であって、例えば、H鋼を用いた鉄骨梁を挙げることができる。
【0025】
板材3は、鋼材2を補強するための補強材であって、鋼材2の下面に板材3の上面が接触して設けられている。板材3の一例としては、鉄骨梁を補強するための補強板を挙げることができる。
【0026】
ビット4は、鋼材2と板材3を摩擦圧接で接合するための部材であって、板材3を鉛直方向に貫通して、ビット4の先端は鋼材2の鉛直方向における中程までに至っており、挿入部を形成している。
【0027】
ここで、摩擦圧接接合とは、接合する部材(たとえば金属や樹脂など)を高速で擦り合わせ、そのとき生じる摩擦熱によって部材を軟化させると同時に圧力を加えて接合する 技術のことである。つまり、本実施形態においては、ビット4を高速回転させて、鋼材2と板材3に擦り合わせて、この時の摩擦熱によって鋼材2と板材3を軟化させると同時に圧力を先端方向(上方向)に向けて加えて、ビット4と鋼材2及び板材3を摩擦圧接にて接合している。
【0028】
本実施形態に係るビット4は、根本(下側)から先端(上側)にかけてその直径が小さくなっている。そして、先端部は略球形状をしている。
【0029】
<<<補強方法について>>>
次に、鋼材2を板材3で補強する補強方法について図を用いて説明する。
図2、
図3は、補強方法を説明するための説明図であり、
図4は、補強方法のフローチャートである。
【0030】
先ずは、
図2aに示すように、板材3にビット4を挿入する挿入孔3aを形成する(ステップS1)。
【0031】
挿入孔3aの断面形状は、ビット4が挿入するための入口部3c(例えば、直径L3となっている符号3cで示した箇所)と入口部3cより直径が小さい奥部3d(例えば、直径L4となっている符号3dで示した箇所)を有する。つまり、この補強方法は、ビット4を挿入するための入口部3cと入口部3cから奥へ向かって狭まる奥部3dとを有する挿入孔3aを、板材3に形成する挿入孔形成工程を有する。なお、挿入孔形成工程においては、板材3を貫通させることなく閉塞部3bを備えるように挿入孔3aを形成する。
【0032】
次に、
図2bに示すように、鋼材2に板材3を添設し、ビット4を高速回転しつつ挿入孔3aに圧力をかけて挿入する(ステップS2)。なお、
図2bに示す保持部材5は、ビット4を保持する部材で円柱形状であり、小径部5aと大径部5bを有している。小径部5aは上側にあって、ビット4の根本(下側)に接続している。本実施形態においては、ビット4と保持部材5は、別部品として加工され、摩擦圧接接合等で接続されている。
【0033】
一方、大径部5bは下側にあって、摩擦圧接接合装置(不図示)に接続している。そして、摩擦圧接接合装置が回転すると、かかる回転が保持部材5を介してビット4に伝達されて摩擦圧接接合が行われる。
【0034】
つまり、この補強方法は、鋼材2に板材3を添接する板材添設工程と、保持部材5でビット4を鋼材2側に向けて保持しつつ、ビット4を挿入孔3aに挿入して摩擦圧接接合する摩擦圧接接合工程を有する。以下、摩擦圧接接合工程について詳しく説明する。
【0035】
ビット4を挿入孔3aに挿入して、
図2cに示すように、挿入孔3aにビット4が接触すると、かかる接触部が摩擦力により軟化していく。そして、ビット4には圧力がかかっているので板材3にビット4が押し込まれていく(ステップS3)。
【0036】
そうすると、ビット4は、板材3の軟化した部分を貫通して、
図3aに示すように、板材3の閉塞部3bを貫通する(ステップS4)。つまり、摩擦圧接接合工程においては、ビット4を挿入孔3aに挿入し閉塞部3bを貫通させて摩擦圧接接合する。
【0037】
そうしたら、続けて鋼材2にビット4が接触し、ビット4は、鋼材2を軟化させつつ、押し込まれていき、
図3bに示すように、ビット4の全体が挿入孔3aに挿入されるまで鋼材2に押し込まれる(ステップS5)。そして、これにより、鋼材2と板材3はビット4により摩擦圧接接合される。この際、
図3bに示すビット4の保持部材5側の後端部分4b(例えば、直径L5となっている符号4bで示した箇所)は、挿入孔3aの入口部3cよりも大きい。つまり、挿入孔形成工程においては、ビット4を挿入孔3aに挿入する際に先行して挿入されるビット4の前端部分4aが、入口部より狭径で、ビット4の後端部分4bが、入口部3cより広径となるように、入口部3cを形成する。
【0038】
なお、ステップS1は、工場で行われ、ステップS2~S6は、建築物を建築する現場にて行われる。つまり、挿入孔形成工程は、工場で行われ、摩擦圧接接合工程は、現場で行われる。
【0039】
そして、
図3cに示すように、最後に保持部材5をビット4から切り離して摩擦圧接接合構造1となる(ステップS6)。つまり、この補強方法は、摩擦圧接接合工程の後に、保持部材5をビット4と切り離す切り離し工程を有する。そして、摩擦圧接接合が完了して接合部が十分に冷えた後に、トルクを掛けて保持部材5をねじ切ってかかる切り離し工程を行うことにより、この摩擦圧接接合の接合強度が所定の強度以上であることを確認することができる。また、保持部材5とビット4がねじ式で接続されているような場合は、切り離し工程として、保持部材5を摩擦圧接接合の際の回転方向と反対の方向に逆回転させて、保持部材5とビット4を切り離すようにしてもよい。
【0040】
<<<補強方法及び摩擦圧接接合構造1の有効性について>>>
上述したように、本実施形態に係る補強方法は、鋼材2を板材3で補強する補強方法であって、ビット4を挿入するための入口部3cと入口部3cから奥へ向かって狭まる奥部3dとを有する挿入孔3aを、板材3に形成する挿入孔形成工程と、鋼材2に板材3を添設する板材添設工程と、保持部材5でビット4を鋼材2側に向けて保持しつつ、ビット4を挿入孔3aに挿入して摩擦圧接接合する摩擦圧接接合工程と、摩擦圧接接合工程の後に、保持部材5をビット4と切り離す切り離し工程と、を有することとした。そのため、火花、臭気、粉塵等の拡散を抑制することができる。
【0041】
鋼構造物の補強を行う場合は、一般的に溶接作業が行われる。そして、溶接作業を行うと、火花、臭気、粉塵等が発生するので、火花による火事の発生、臭気による第三者等への異臭トラブル、粉塵による健康被害等を招くおそれがある。
【0042】
これに対し、本実施形態に係る摩擦圧接接合構造1おいては、溶接接合の代わりに火花等がほとんど発生しない摩擦結合を用いることとした。つまり、溶接接合に代えて摩擦圧接接合を用いることにより、火花、臭気、粉塵等の拡散を抑制することができる。
【0043】
また、スタッド溶接による鋼構造物の補強においては、工場で製作したものを現場で正確に設置するための多くの測量が必要であり、また誤差(測量誤差、製作誤差、施工誤差等)の積み重ねで製品が正確に取りつかない場合もある。
【0044】
そのため、かかる誤差を吸収するようにスタッドを挿入するボルト穴には2~3mmの大きなルーズ穴を用いており、板材3を一体化させることが難しかった。
【0045】
これに対し、摩擦圧接接合による鋼構造物の補強は、逃げ寸法が必要にならない納まり工法なので(ビット4と板材3に遊びがないので)、板材3を一体化させることが可能となる。
【0046】
さらに、摩擦圧接接合による鋼構造物の補強においては、誤差調整等の工程を減らすことができるので、鋼構造物の補強での作業工程を減らすことができる。
【0047】
また、本実施形態のように、鋼材2の下面に板材3を添設するような上方(天井)において接合が必要な場合は、下方(地面)において接合する場合よりも、溶接による火花等がより拡散しやすい。つまり、火花等がほぼ発生しない摩擦圧接接合が、より有効であるといえる。
【0048】
また、本実施形態に係る補強方法おいては、挿入孔形成工程は、工場で行われ、摩擦圧接接合工程は、現場で行われることとした。そして、挿入孔形成工程を工場にて行うことにより、高精度な装置、検査等にて精度の高い挿入孔3aを形成でき、摩擦圧接接合を作業現場にて行うことにより、溶接作業に比べて、火花による火事の発生、臭気による第三者等への異臭トラブル、粉塵による健康被害等を抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る補強方法においては、挿入孔形成工程においては、板材3を貫通させることなく閉塞部3bを備えるように挿入孔3aを形成し、摩擦圧接接合工程においては、摩擦圧接接合部材を挿入孔3aに挿入し閉塞部3bを貫通させて摩擦圧接接合することとした。そして、閉塞部3bがあることにより、閉塞部3bが無い場合に比べて、ビット4が閉塞部3bを貫通して板材3を摩擦圧接接合するので、板材3をしっかりと接合することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る補強方法においては、挿入孔形成工程においては、ビット4を挿入孔3aに挿入する際に先行して挿入されるビット4の前端部分4aが、入口部3cより狭径で、ビット4の後端部分4bが、入口部3cより広径となるように、入口部3cを形成することとした。そして、これにより、ビット4が挿入孔3aの入口部3cよりも広径となる部分を有するので、広径となる部分を有さない場合に比べて、挿入孔3aとビット4の間に隙間が生じにくいので、挿入孔3aの全体を摩擦圧接接合することができ、板材3をしっかりと接合することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る摩擦圧接接合構造1においては、鋼材2と、鋼材2に添設されている板材3と、鋼材2に摩擦圧接接合されているビット4と、を有する摩擦圧接接合構造1であって、板材3は、広径部1aと該広径部1aから鋼材2の側に向かい狭まっている狭径部1bとを備え、ビット4が挿入されている挿入部を有することとした。
【0052】
そして、溶接接合の代わりに火花等がほとんど発生しない摩擦圧接接合を用いることにより、火花、臭気、粉塵等の拡散を抑制することができる。
【0053】
===その他の実施形態について===
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0054】
また、上記実施形態では、板材3に閉塞部3bが設けられていたが、これに限るものではなく、閉塞部3bは設けなくてもよい(入口部3cと奥部3dがあれば挿入孔は板材3を貫通していてもよい)。
【符号の説明】
【0055】
1 摩擦圧接接合構造、1a 広径部、1b 狭径部、2 鋼材、
3 板材、3a 挿入孔、3b 閉塞部、3c 入口部、3d 奥部、
4 ビット(摩擦圧接接合部材)、4a 前端部分、4b 後端部分、
5 保持部材、5a 小径部、5b 大径部、