(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143869
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】判定装置及び判定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20220926BHJP
A61B 5/01 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
A61B5/00 101L
A61B5/01 350
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044620
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】恩田 正宏
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XA07
4C117XB01
4C117XB02
4C117XD04
4C117XD38
4C117XE27
4C117XE48
4C117XE54
4C117XJ13
4C117XJ46
4C117XL03
4C117XL11
(57)【要約】
【課題】個人間の接触を適切に把握することできる判定装置を提供する。
【解決手段】判定装置は、人物と他の人物が所定のエリアを通行するときの足の接触による圧力を検出して圧力検出値を生成する床センサと、前記圧力検出値により算出される前記人物の位置と前記他の人物の位置に基づき、前記人物が前記他の人物と所定の距離以内で通行しているか否かを判定し、所定の距離以内の近距離で通行していると判定した場合には、前記人物と前記他の人物とをグループであると判定するグループ判定部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人物と他の人物が所定のエリアを通行するときの足の接触による圧力を検出して圧力検出値を生成する床センサと、
前記圧力検出値により算出される前記人物の位置と前記他の人物の位置に基づき、前記人物が前記他の人物と所定の距離以内で通行しているか否かを判定し、所定の距離以内の近距離で通行していると判定した場合には、前記人物と前記他の人物とをグループであると判定するグループ判定部と、
を備える判定装置。
【請求項2】
前記人物を撮影して前記人物の表面温度に応じた撮影画像データを生成する赤外線カメラと、
前記撮影画像データに基づいて前記人物の体温を検出する体温検出部と、
前記体温検出部によって検出された前記人物の体温が前記人物の平熱よりも所定の温度以上高いか所定の体温以上である体温異常の有無を判定する体温異常判定部と、
前記グループ判定部によって、前記人物と前記他の人物がグループであると判定され、かつ前記体温異常判定部によって体温異常ありと判定された人物が前記グループに含まれるとき、データベースに、前記人物と前記他の人物とがグループであることを示すグルーピング情報を登録する登録部と、
をさらに備える請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
人物と他の人物が所定のエリアを通行するときの足の接触による圧力を検出して圧力検出値を生成するステップと、
前記圧力検出値により算出される前記人物の位置と前記他の人物の位置に基づき、前記人物が前記他の人物と所定の距離以内で通行しているか否かを判定し、所定の距離以内の近距離で通行していると判定した場合には、前記人物と前記他の人物とをグループであると判定するステップと、
を含む判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定装置及び判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染予防対策として、店舗または施設等に入場する人物をカメラで撮影して体温を測定する検温装置が普及している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-56011号公報
【特許文献2】特開2009-104526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
新型コロナウイルスは感染力が強いため、新型コロナウイルスに感染している人または感染している可能性のある人と行動している人を把握することが望まれる。この要望は、新型コロナウイルスに限らず、感染力が強いウイルスであれば同様である。また、新型コロナウイルスに感染している人などと行動している人を把握するためには、個人間の接触を把握する必要がある。
【0005】
本発明は、個人間の接触を適切に把握することができる判定装置及び判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、人物と他の人物が所定のエリアを通行するときの足の接触による圧力を検出して圧力検出値を生成する床センサと、前記圧力検出値により算出される前記人物の位置と前記他の人物の位置に基づき、前記人物が前記他の人物と所定の距離以内で通行しているか否かを判定し、所定の距離以内の近距離で通行していると判定した場合には、前記人物と前記他の人物とをグループであると判定するグループ判定部とを備える判定装置を提供する。
【0007】
本発明は、人物と他の人物が所定のエリアを通行するときの足の接触による圧力を検出して圧力検出値を生成するステップと、前記圧力検出値により算出される前記人物の位置と前記他の人物の位置に基づき、前記人物が前記他の人物と所定の距離以内で通行しているか否かを判定し、所定の距離以内の近距離で通行していると判定した場合には、前記人物と前記他の人物とをグループであると判定する判定するステップとを含む判定方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の判定装置及び判定方法によれば、個人間の接触を適切に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態の判定装置を示すブロック図である。
【
図2】通路を通行する通行人を赤外線カメラが撮影している状態を示す図である。
【
図3A】第1の通行人が通路を通行するときに床センサが生成する圧力検出値の変化の一例を示す図である。
【
図3B】第2の通行人が通路を通行するときに床センサが生成する圧力検出値の変化の一例を示す図である。
【
図4A】第1の通行人が通路を通行したときの、所定の値以上の圧力検出値を検出した接触面積の時間経過に伴う変化の一例を示す図である。
【
図4B】第2の通行人が通路を通行したときの、所定の値以上の圧力検出値を検出した接触面積の時間経過に伴う変化の一例を示す図である。
【
図5A】第1の通行人が通路を通行したときの、圧力検出値に基づいて算出される合計荷重の時間経過に伴う変化の一例を示す図である。
【
図5B】第2の通行人が通路を通行したときの、圧力検出値に基づいて算出される合計荷重の時間経過に伴う変化の一例を示す図である。
【
図6】データベースに登録されているメンバーの個人特定情報の一例を示す図である。
【
図7】一人の通行人が通路を通行するときに左右の足の接触によって床センサが圧力検出値を生成する位置を示す図である。
【
図8】表示部に表示される赤外線カメラによる撮影画像に通行人の体温を重畳した表示画像の一例を示す図である。
【
図9】データベースにグルーピング情報を登録した状態の一例を示す図である。
【
図10】一実施形態の判定装置の動作及び一実施形態の判定方法による処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態の判定装置及び判定方法について、添付図面を参照して説明する。
図1に示すように、一実施形態の判定装置100は、赤外線カメラ1、床センサ2、制御部3、データベース4、表示部5、スピーカ6、操作部7を備える。赤外線カメラ1は、遠赤外線カメラ(FIRカメラ)である。制御部3は、体温検出部31、個人特定部32、体温異常判定部33、画像分析部34、表示制御部35、音声出力制御部36、書込・読出部37を有する。個人特定部32はグループ判定部321を含む。制御部3は、マイクロコンピュータまたはマイクロプロセッサで構成することができる。床センサ2は、圧力センサで構成されている。
【0011】
図2に示すように、判定装置100のうちの少なくとも赤外線カメラ1は、通路(所定のエリア)10を通行する通行人(人物)を撮影するように配置されている。
図2においては、通行人11A~11Cは、互いに所定の距離以内である近距離で通路10を通行している。その後方に通路10を通行する通行人11Dは、他の通行人11と所定の距離を超えた距離だけ離れて単独で通行している。任意の通行人を通行人11と称することとする。通路10は会社または施設の入口等に向かうための通路であって、通路10を通行する通行人11は予めデータベース4に登録されているとする。即ち、通路10は不特定の通行人が通行する通路ではない。
【0012】
通路10の床面の少なくとも一部には、床センサ2が配置されている。床センサ2は、通行人11の通行を検出するよう、通路10の最上位の床材の下に配置されている。床センサ2は通路10の最上位に配置されていてもよい。床センサ2は、各通行人11が通路10を通行するときの足の接触による圧力を検出して圧力検出値を生成する。圧力検出値は、電圧または電流のような電気的な値として出力される。足の接触には、直接的な接触だけでなく、床材を介した間接的な接触が含まれる。
【0013】
図3A及び
図3Bは、それぞれ、第1及び第2の通行人11が通路10を通行するときに床センサ2が生成する圧力検出値の変化の例を示している。白は圧力検出値が小さいことを示しており、濃いグレーとなるほど圧力検出値が大きいことを示している。
図3A及び
図3Bは、右足における圧力検出値の変化を示している。
【0014】
足のかかとが最初に通路10に接触して、荷重の移動に伴って圧力検出値が大きい部分がつま先へと移動する。
図3A及び
図3Bに示すように、かかとが通路10に接触してからつま先が通路10から離れるまでの圧力検出値の変化は、通行人11によって異なる。
図3Aは第1の通行人11として通行人11Aが通路10を通行したときの圧力検出値の変化を示し、
図3Bは第2の通行人11として通行人11Bが通路10を通行したときの圧力検出値の変化を示しているとする。
【0015】
図4A及び
図4Bは、それぞれ、通行人11A及び11Bが通路10を通行したときの、所定の値以上の圧力検出値を検出した面積の合計である接触面積の時間経過に伴う変化の例を示している。
図4A及び
図4Bは右足が通路10に1回接触して離れるまでの接触面積の変化を示している。接触面積の時間経過に伴う変化も通行人11によって異なる。
図5A及び
図5Bは、それぞれ、通行人11A及び11Bが通路10を通行したときの、右足が通路10に1回接触して離れるまでの床センサ2で検出する圧力検出値に基づいて算出される合計荷重の時間経過に伴う変化の例を示している。合計荷重の時間経過に伴う変化も通行人11によって異なる。
【0016】
図6に示すように、データベース4には、通路10を通行することがある全ての通行人11を登録メンバーとし、各メンバーを一意に識別するIDに対応付けて、各メンバーの体重、歩幅、接触面積時間変化情報、合計荷重時間変化情報、及び平熱が記憶されている。体重、歩幅、接触面積時間変化情報、合計荷重時間変化情報の組を、各メンバー(即ち、各通行人11)を特定する個人特定情報と称することとする。データベース4に、各メンバーの右足及び左足の接触面積時間変化情報及び合計荷重時間変化情報が記憶されるのがよい。通行人11AのIDは19940101、通行人11BのIDは19940102、通行人11CのIDは19940103であるとする。
【0017】
データベース4に通行人11の体重、歩幅、接触面積時間変化情報、及び合計荷重時間変化情報が未登録であれば、制御部3は、床センサ2が検出する圧力検出値に基づいて得られる体重、歩幅、接触面積時間変化情報、及び合計荷重時間変化情報をデータベース4に登録する。通行人11の体重は、床センサ2より電気的な値として出力される圧力検出値を実際の圧力の大きさを表す圧力値に変換して、接触面積分の圧力値を合計することによって算出できる。
【0018】
データベース4に通行人11の平熱が未登録であれば、制御部3は、後述するように検出した通行人11の体温をデータベース4に記憶させる。制御部3は、通行人11の体温を検出するたびに通行人11の体温をデータベース4に記憶させて、複数回検出した体温の平均値を通行人11の平熱として登録するのがよい。
【0019】
データベース4に登録する接触面積時間変化情報は、経過時間ごとの接触面積を示す数値である。接触面積時間変化情報は、
図4A及び
図4Bに示すような、経過時間ごとの接触面積の分布図を示す形状データであってもよい。データベース4に登録する合計荷重時間変化情報は、経過時間ごとの合計荷重を示す数値である。合計荷重時間変化情報は、
図5A及び
図5Bに示すような、経過時間ごとの合計荷重の分布図を示す形状データであってもよい。接触面積時間変化情報及び合計荷重時間変化情報は、それぞれ、接触面積の時間経過に伴う変化及び合計荷重の時間経過に伴う変化に基づいてどのように数値化されていてもよい。
【0020】
図3A及び
図3Bに示す床センサ2による圧力検出値の変化、
図4A及び
図4Bに示す接触面積の時間経過に伴う変化、
図5A及び
図5Bに示す合計荷重の時間経過に伴う変化は、同じ通行人11であっても、履いている履物によって異なることがある。そこで、データベース4は、各通行人11のIDに対応付けて、履物の種類ごとに接触面積時間変化情報及び合計荷重時間変化情報を登録してもよい。
【0021】
通路10を通行している通行人11が通路10上の床センサ2が配置されている位置に至ると、
図1に示す個人特定部32には、
図3A及び
図3Bに示すような床センサ2が生成する圧力検出値が入力される。
図7に示す11FRは、一方の足の接触によって所定の時間内に圧力検出値が得られる領域を示している。個人特定部32は、領域11FRの最長距離Lが得られている箇所に引いた直線の左右のどちらに荷重が多くかかっているかによって、領域11FRは右足の接触によるものか左足の接触によるものかを判定する。
図7に示す例では、領域11FRは右足の接触によるものである。
【0022】
このとき、個人特定部32は、最長距離Lまたは幅Eが所定の範囲内にないときに、通行人11の足の接触ではないと判定して、床センサ2から入力される圧力検出値を無視してもよい。例えば、最長距離Lの下限値は20cm、上限値は35cmであり、幅Eの下限値は5cm、上限値は15cmである。
【0023】
領域11FRのかかとの位置において圧力検出値が得られた時刻から所定の時間内に領域11FRよりも前方で圧力検出値が得られる領域が、同一の通行人11のもう一方の足の接触による圧力検出値の領域の候補となる。同一の通行人11のもう一方の足の接触による領域11FLは、領域11FRの最長距離Lが得られている箇所に引いた直線と領域11FRの先端との交点から左側に角度θ1以内か、右側に角度θ2以内に位置する。角度θ1は例えば80°であり、角度θ2例えば10°である。実線で示す領域11FLは
領域11FRに対応して位置する通常の位置であり、二点鎖線で示す領域11FLは右側に最大にずれた位置を示している。
【0024】
図7に示す例では、領域11FRは右足の接触によるものであり、領域11FLは左足の接触によるものであるから、左側の角度θ1が広い角度であり、右側の角度θ2が狭い角度となる。最初に領域11FLが得られた場合には、右側の角度θ2が広い角度であり、左側の角度θ1が狭い角度となる。
【0025】
さらに、領域11FRの最長距離Lが得られている箇所に引いた直線と、領域11FLの最長距離Lが得られている箇所に引いた直線との間隔が、左方向に距離W1以内であるか、右方向に距離W1より短い距離W2以内である。最初に領域11FLが得られた場合には、2つの直線の間隔は、左方向に距離W1以内であるか、右方向に距離W1より長い距離W2以内となる。
【0026】
このように、個人特定部32は、領域11FR及び11FLが右足の接触によるものか左足の接触によるものかを判定する。また、個人特定部32は、領域11FR及び11FLが一人の通行人11の通行によって生成された圧力検出値であると判定する。このとき、個人特定部32は、領域11FRの検出時刻から領域11FLの検出時刻までの時間、最初に得られた領域11FRに対する領域11FLの角度、領域11FR及び11FLの両者間に進行方向と直交する方向の距離を用いて判定する。個人特定部32は、領域11FR及び11FLにおける荷重の最大値がほぼ同一であるか否かも考慮して、一人の通行人11による圧力検出値であると判定してもよい。
【0027】
図2に示すように例えば3人の通行人11A~11Cが互いに近距離で通路10を通行していたとしても、個人特定部32は、通行人11A~11Cそれぞれの領域11FR及び11FLを互いに区別することができる。
【0028】
個人特定部32は、各通行人11が通路10を通行するときに、床センサ2が生成する圧力検出値に基づいて、各通行人11の体重を算出し、接触面積時間変化情報及び合計荷重時間変化情報を生成する。また、個人特定部32は、圧力検出値が生成される床センサ2上の位置に基づいて各通行人11の歩幅を算出する。
【0029】
個人特定部32は、書込・読出部37によって、データベース4に記憶されているIDに対応付けられている各組の個人特定情報を読み出し、通路10を現在通行している通行人11の個人特定情報と一致する組の個人特定情報を抽出する。なお、データベース4に記憶されている個人特定情報と通路10を現在通行している通行人11の個人特定情報とが完全に一致しなくても、所定の一致率以上で一致するときは一致するとみなすことができる。個人特定部32は、個人特定情報の一致によって現在通行している通行人11のIDを特定し、通行人11がデータベース4に登録されている複数のメンバーのうちのいずれであるかを特定する。
【0030】
図2に示すように3人の通行人11A~11Cが通路10を通行しているとき、個人特定部32は、通行人11A~11CそれぞれのIDを特定する。通行人11Dが通路10を通行する場合も同様に、個人特定部32は通行人11DのIDを特定する。個人特定部32が特定した各通行人11のIDは体温異常判定部33に供給される。
【0031】
グループ判定部321は、圧力検出値が生成される床センサ2上の位置に基づいて、二人またはそれ以上の通行人11が互いに近距離で通行しているか否かを判定する。二人またはそれ以上の通行人11が予め定めた時間、互いに近距離で通行していれば、グループ判定部321は、二人またはそれ以上の通行人11をグループと判定する。
図2に示す例では、グループ判定部321は、3人の通行人11A~11Cをグループと判定する。
図1においては、グループ判定部321を個人特定部32内に設けているが、個人特定部32とは別に設けてもよい。
【0032】
グループ判定部321の判定手法についてより具体的に説明する。グループ判定部321は、床センサ2によって検出された接触面積と、その接触面積に対する圧力検出値の分布に基づいて、通行人11の2次元的な重心位置を算出する。グループ判定部321は、二人以上の通行人11の重心位置を算出し、一方の通行人11の重心位置と、他方の通行人11の重心位置とが、予め設定した距離内であれば、通行人11が互いに近距離で通行していると判定する。また、グループ判定部321は、それぞれの重心位置が予め設定した距離内でなければ、近距離で通行していないと判定する。
【0033】
グループ判定部321は、通行人11が互いに近距離で通行していると判定した場合、時間の計測を開始する。グループ判定部321は、通行人11が互いに近距離で通行していると判定されたときから、近距離で通行していないと判定されたときまでの時間を計測し、その時間が予め定めた時間以上であれば通行人11同士をグループと判定する。グループ判定部321は、その時間が予め定めた時間より短ければ通行人11同士をグループと判定しない。なお、グループの判定は必ずしも時間の計測を必要としない。グループ判定部321は、通行人11が互いに近距離で通行していると判定した場合には、二人またはそれ以上の通行人11をグループと判定してもよい。
【0034】
図2に示すように配置されている赤外線カメラ1は、赤外線カメラ1に近付いてくる各通行人11を撮影した撮影画像データを、体温検出部31、画像分析部34、及び表示制御部35に供給する。撮影画像データは、フレーム内の画素ごとに温度に応じた輝度値によって構成されている。即ち、撮影画像データは被写体である各通行人11の表面温度を示す温度データに相当する。画像分析部34は、撮影画像データを分析して、各通行人11の顔を含む領域を検出する。各通行人11の顔を含む領域を示す領域情報は、体温検出部31及び表示制御部35に供給される。
【0035】
体温検出部31は、撮影画像データが示す輝度値を温度に変換する変換テーブルを備える。体温検出部31は、変換テーブルを参照して、入力される領域情報が示す各通行人11の顔を含む領域内の輝度値を温度に変換する。体温検出部31は、フレーム全体の各画素の輝度値を温度に変換しないので、温度への変換処理が簡略化される。体温検出部31は、顔の中心部付近の温度の最大値から各通行人11の体表面温度を取得して、その体表面温度に基づき所定の補正処理により算出した値を体温として決定し、その体温を体温異常判定部33に供給する。
【0036】
体温異常判定部33には、書込・読出部37がデータベース4より読み出した、個人特定部32によって特定された通行人11のIDに対応する平熱が入力される。体温異常判定部33は、体温検出部31より供給された各通行人11の体温が平熱よりも所定の温度(例えば1℃)以上高いか否かを判定する。
【0037】
体温異常判定部33は、各通行人11の体温が平熱よりも所定の温度以上高くなければ異常なしと判定する。体温異常判定部33は、各通行人11の体温と、異常なしを示す判定値(例えば0)とを対応付けて表示制御部35に供給し、異常なしを示す判定値を音声出力制御部36に供給する。体温異常判定部33は、各通行人11の体温が平熱よりも所定の温度以上高ければ異常ありと判定する。体温異常判定部33は、各通行人11の体温と、異常ありを示す判定値(例えば1)とを対応付けて表示制御部35に供給し、異常ありを示す判定値を音声出力制御部36に供給する。
【0038】
体温異常判定部33は、体温異常の有無の判定方法として、各通行人11の体温が平熱よりも所定の温度以上高いか否かによって異常なしと異常ありとのいずれであるかを判定している。体温異常判定部33は、他の体温異常の有無の判定方法として、各通行人11の体温が所定の体温(例えば37.5℃)以上であるか否かによって異常なしと異常ありとのいずれであるかを判定してもよい。
【0039】
図8は、表示制御部35による制御によって表示部5に表示される表示画像50の一例を示している。なお、表示画像50は赤外線カメラ1による撮影画像に基づいて生成されるので、実際には、通行人11A~11Cは可視光カメラで撮影した撮影画像のように明瞭には表示されない。
図8では理解をしやすいよう表示画像50を可視光カメラで撮影した撮影画像のように図示している。
【0040】
表示画像50は、赤外線カメラ1が通行人11A~11Cを撮影した撮影画像データの撮影画像に、顔を含む領域を示す矩形画像と、通行人11A~11Cの体温とを重畳した画像である。表示制御部35は、通行人11A~11Cの体温に異常なしを示す判定値が対応付けられていれば、第1の表示状態として例えば緑色の背景の矩形内に体温を表示する。表示制御部35は、通行人11A~11Cの体温に異常ありを示す判定値が対応付けられていれば、第2の表示状態として例えば赤色の背景の矩形内に体温を表示するよう表示部5を制御する。表示制御部35は矩形画像とともに特定された通行人11のIDあるいはIDに基づいて登録済みの氏名を表示してもよい。
【0041】
音声出力制御部36は、異常ありを示す判定値が入力されれば、スピーカ6より所定のアラーム音あるいは音声アナウンスを発生させるようスピーカ6を駆動する。
【0042】
図9に示すように、書込・読出部37は、データベース4の測定体温の欄に、体温検出部31によって新たに検出された通行人11A~11Cの体温を記憶させる。また、書込・読出部37は、異常ありと判定された通行人11Bのフラグの欄に異常ありを示すフラグとして値1を記憶させる。さらに、書込・読出部37は、グループ判定部321によってグループであると判定された通行人11A~11Cのグルーピング情報の欄に1つのグループであることを示す共通の値(ここでは202102051305)を記憶させる。書込・読出部37は、グルーピング情報を登録する登録部として機能する。
図9においては、グルーピングされた通行人11A~11Cの情報を太実線で囲んでいる。
【0043】
体温に異常があったメンバーは、ウイルスに感染しているか感染している可能性がある。データベース4に登録されているメンバーをグルーピングすることによって、ウイルスに感染しているメンバーまたは感染している可能性のあるメンバーと近距離で行動しているメンバーを把握することができる。
【0044】
制御部3は、複数の測定体温の欄に体温が記憶されたら、複数の体温の平均値を新たに平熱として更新するのがよい。但し、制御部3は、異常ありと判定された体温を体温の平均値の算出に用いない。データベース4に登録されているメンバーが通行人11として通路10を通行するたびに体温が検出され、測定体温の欄の最も過去の体温が新しい体温に上書きされて複数の測定体温の欄の体温が更新される。制御部3は、各メンバーの体重、歩幅、接触面積時間変化情報、及び合計荷重時間変化情報を同様に更新してもよい。
【0045】
判定装置100の管理者は、操作部7を操作することによって、体温に異常があったメンバーを含むグループを表示部5に表示させることができる。操作部7によって所定の操作がなされると、書込・読出部37は体温に異常があったメンバーを含むグループの各メンバーのID及び測定体温をデータベース4から読み出して表示制御部35に供給する。表示制御部35は、各メンバーのID及び測定体温を表示部5に表示させる。管理者は、体温に異常があったメンバーと近距離で行動している人を確認することができる。
【0046】
図10に示すフローチャートを用いて、判定装置100の動作及び判定装置100が実行する判定方法による処理を説明する。
図10において、判定装置100の電源がオンされて処理を開始すると、制御部3(個人特定部32)は、ステップS1にて、床センサ2の圧力検出値に基づいて各通行人を特定する。制御部3(体温検出部31)は、ステップS2にて、赤外線画像である撮影画像データに基づいて、特定された各通行人11の体温を検出する。
【0047】
制御部3(グループ判定部321)は、ステップS3にて、通行人11がグループであるか否かを判定する。床センサ2は、通行人11が通路10を通行するときの足の接触による圧力を検出して圧力検出値を生成する。このとき、グループ判定部321は、圧力検出値が生成される位置に基づいて、二人またはそれ以上の通行人11が互いに近距離で通路10を通行しているか否かを判定する。グループ判定部321は、二人またはそれ以上の通行人11が互いに近距離で通路10を通行していれば、二人またはそれ以上の通行人11はグループであると判定する。
【0048】
ステップS3にて通行人11がグループでなければ(NO)、制御部3(体温異常判定部33)は、ステップS4にて、通行人11の体温は平熱より所定の温度以上高いか否かを判定する。通行人11の体温が平熱より所定の温度以上高くなければ(NO)、制御部3(表示制御部35)は、ステップS5にて、通行人11の体温を第1の表示態様にて表示部5に表示して、処理をステップS7に移行させる。通行人11の体温が平熱より所定の温度以上高ければ(YES)、制御部3(表示制御部35)は、ステップS6にて、通行人11の体温を第2の表示態様にて表示部5に表示して、処理をステップS7に移行させる。
【0049】
図10においては図示を省略しているが、通行人11の体温が平熱より所定の温度以上高いとき、音声出力制御部36はスピーカ6よりアラーム音あるいは音声アナウンスを発生させる。
【0050】
上記のように、制御部3(体温異常判定部33)は、通行人11の体温が平熱より所定の温度以上高いか否かを判定する代わりに、通行人11の体温が所定の体温以上であるか否かを判定してもよい。
【0051】
制御部3(書込・読出部37)は、ステップS7にて、通行人11の体温をデータベース4に登録して、処理をステップS8に移行させる。通行人11の体温が平熱より所定の温度以上高いときには、制御部3(書込・読出部37)は、通行人11の体温をデータベース4に登録するのに併せて、異常ありを示すフラグを記憶させる。
【0052】
一方、ステップS3にて通行人11がグループであれば(YES)、制御部3(体温異常判定部33)は、ステップS11にて、グループ内に体温が平熱より所定の温度以上高い人がいるか否かを判定する。グループ内に体温が平熱より所定の温度以上高い人がいなければ(NO)、制御部3(表示制御部35)は、ステップS12にて、各通行人11の体温を第1の表示態様にて表示部5に表示して、処理をステップS7に移行させる。
【0053】
ステップS11にてグループ内に体温が平熱より所定の温度以上高い人がいれば(YES)、制御部3(表示制御部35)は、ステップS13にて、体温が平熱より所定の温度以上高い通行人11の体温を第2の表示態様で、それ以外の通行人11の体温を第1の表示態様で表示する。
【0054】
続けて、制御部3(書込・読出部37)は、ステップS14にて、各通行人11の体温とグルーピング情報をデータベース4に登録して、処理をステップS8に移行させる。制御部3(書込・読出部37)は、体温が平熱より所定の温度以上高い通行人11の体温をデータベース4に登録するのに併せて、異常ありを示すフラグを記憶させる。
【0055】
制御部3は、ステップS8にて、判定装置100の電源がオフされたか否かを判定する。判定装置100の電源がオフされなければ(NO)、制御部3は処理をステップS1に戻してステップS1以降の処理を繰り返す。判定装置100の電源がオフされれば(YES)、制御部3は処理を終了させる。
【0056】
以上説明した本実施形態により、個人間の接触を適切に把握することできる。また、本実施形態により、ウイルスに感染している人または感染している可能性のある人と行動している人を把握することができる。
【0057】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 赤外線カメラ
2 床センサ
3 制御部
4 データベース
5 表示部
6 スピーカ
31 体温検出部
32 個人特定部
33 体温異常判定部
34 画像分析部
35 表示制御部
36 音声出力制御部
37 書込・読出部(登録部)
100 判定装置
321 グループ判定部