IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2022-143873塗料組成物、建材、構造部材、及び構造部材の製造方法
<>
  • -塗料組成物、建材、構造部材、及び構造部材の製造方法 図1
  • -塗料組成物、建材、構造部材、及び構造部材の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143873
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】塗料組成物、建材、構造部材、及び構造部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 161/28 20060101AFI20220926BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220926BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220926BHJP
   C09D 161/32 20060101ALI20220926BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20220926BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C09D161/28
C09D7/63
C09D7/61
C09D161/32
C09K21/12
E04B1/94 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044624
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】501352619
【氏名又は名称】三商株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】服部 絵美
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭一
(72)【発明者】
【氏名】広田 正之
(72)【発明者】
【氏名】森田 武
(72)【発明者】
【氏名】水落 秀木
(72)【発明者】
【氏名】浅井 信雄
【テーマコード(参考)】
2E001
4H028
4J038
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001EA08
2E001GA06
2E001HC01
2E001HD11
2E001HF12
2E001JD02
4H028AA06
4H028AA07
4H028AA29
4H028AA35
4H028AA44
4H028BA02
4J038BA022
4J038CE022
4J038DA131
4J038DA161
4J038DF002
4J038HA486
4J038HA526
4J038JB01
4J038JC23
4J038JC37
4J038KA07
4J038KA08
4J038KA19
4J038NA15
4J038NA24
4J038PA18
4J038PA19
4J038PB05
4J038PC04
4J038PC06
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】基材の難燃性を向上させることができ、常温における硬化が速い塗料組成物、建材、構造部材、及び構造部材の製造方法を提供すること。
【解決手段】(a)水溶性メラミン樹脂と、(b)縮重合リン酸エステルと、(c)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニア水のうちの1以上と、(d)分子構造中にアミノ基を有する化合物と、を含有する塗料組成物。基材と、前記基材の表面に形成された塗膜と、を有し、前記塗膜は、(A)水溶性メラミン樹脂と、(B)縮重合リン酸エステルと、(C)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニアのうちの1以上と、(D)分子構造中にアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの重縮合物と、を含む、構造部材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水溶性メラミン樹脂と、(b)縮重合リン酸エステルと、(c)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニア水のうちの1以上と、(d)分子構造中にアミノ基を有する化合物と、を含有する塗料組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の塗料組成物であって、
(e)カオリンをさらに含有する塗料組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塗料組成物であって、
(f)ガラス繊維をさらに含有する塗料組成物。
【請求項4】
基材と、前記基材の表面に形成された塗膜と、を有し、
前記塗膜は、(A)水溶性メラミン樹脂と、(B)縮重合リン酸エステルと、(C)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニアのうちの1以上と、(D)分子構造中にアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの重縮合物と、を含む、
建材。
【請求項5】
基材と、前記基材の表面に形成された塗膜と、を有し、
前記塗膜は、(A)水溶性メラミン樹脂と、(B)縮重合リン酸エステルと、(C)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニアのうちの1以上と、(D)分子構造中にアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの重縮合物と、を含む、
構造部材。
【請求項6】
基材の表面に塗料組成物を塗布する構造部材の製造方法であって、
前記塗料組成物は、(a)水溶性メラミン樹脂と、(b)縮重合リン酸エステルと、(c)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニア水のうちの1以上と、(d)分子構造中にアミノ基を有する化合物と、を含有する、
構造部材の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の構造部材の製造方法であって、
前記塗料組成物は(e)カオリンをさらに含有する、
構造部材の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の構造部材の製造方法であって、
前記塗料組成物は(f)ガラス繊維をさらに含有する、
構造部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
塗料組成物、建材、構造部材、及び構造部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材を難燃化する方法として、難燃剤を木材に浸透させる方法がある。難燃剤を木材に浸透させる方法は、特許文献1に開示されている。プラスチックを難燃化する方法として、プラスチックの組成を変更する方法がある。プラスチックの組成を変更する方法は特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-137805号公報
【特許文献2】特開2000-273298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
難燃剤を木材に浸透させるためには特殊な装置が必要である。また、難燃剤を木材に浸透させるためには、多くの時間とエネルギーとを要する。プラスチックの組成を変更する方法の場合、プラスチックの組成が限定される。
【0005】
塗料組成物を、木材やプラスチック等の可燃性基材に塗布し、塗膜を形成することで、可燃性基材を難燃化することが考えられる。
従来の塗料組成物は常温において硬化が遅かった。硬化が遅い塗料組成物を垂直面に塗布すると、塗料組成物が垂れてしまう。
【0006】
本開示の1つの局面では、基材の難燃性を向上させることができ、常温における硬化が速い塗料組成物、建材、構造部材、及び構造部材の製造方法を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの局面は、(a)水溶性メラミン樹脂と、(b)縮重合リン酸エステルと、(c)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニア水のうちの1以上と、(d)分子構造中にアミノ基を有する化合物と、を含有する塗料組成物である。
【0008】
本開示の1つの局面である塗料組成物は、基材の難燃性を向上させることができ、常温における硬化が速い。
本開示の別の局面は、基材と、前記基材の表面に形成された塗膜と、を有し、前記塗膜は、(A)水溶性メラミン樹脂と、(B)縮重合リン酸エステルと、(C)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニアのうちの1以上と、(D)分子構造中にアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの重縮合物と、を含む建材である。
【0009】
本開示の別の局面である建材は難燃性が高い。また、本開示の別の局面である建材を製造するとき、常温における塗膜の硬化が速い。
本開示の別の局面は、基材と、前記基材の表面に形成された塗膜と、を有し、前記塗膜は、(A)水溶性メラミン樹脂と、(B)縮重合リン酸エステルと、(C)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニアのうちの1以上と、(D)分子構造中にアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの重縮合物と、を含む構造部材である。
【0010】
本開示の別の局面である構造部材は難燃性が高い。また、本開示の別の局面である構造部材を製造するとき、常温における塗膜の硬化が速い。
本開示の別の局面は、基材の表面に塗料組成物を塗布する構造部材の製造方法である。前記塗料組成物は、(a)水溶性メラミン樹脂と、(b)縮重合リン酸エステルと、(c)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニア水のうちの1以上と、(d)分子構造中にアミノ基を有する化合物と、を含有する。
【0011】
本開示の別の局面である構造部材の製造方法によれば、難燃性が高い構造部材を製造できる。また、構造部材を製造するとき、常温における塗膜の硬化が速い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】構造部材の構成を表す断面図である。
図2】塗膜が発泡し、断熱層を形成した状態にある構造部材を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
1.塗料組成物の構成
(1-1)(a)水溶性メラミン樹脂
本開示の塗料組成物は水溶性メラミン樹脂を含む。水溶性メラミン樹脂は、例えば、アルデヒド類とメラミンとをアルカリ触媒存在下で反応させることにより製造することができる。水溶性メラミン樹脂の製造方法は、例えば、特許第257115号公報、特開昭51-114492号公報、特開2006-124457号公報等に開示されている。
【0014】
水溶性メラミン樹脂として、例えば、メチロールメラミン樹脂、アルコキシ化メチロールメラミン樹脂等が挙げられる。メチロールメラミン樹脂として、例えば、モノメチロールメラミン樹脂、ジメチロールメラミン樹脂、トリメチロールメラミン樹脂等が挙げられる。アルコキシ化メチロールメラミン樹脂として、例えば、メチロールメラミン樹脂、メチル化メチロールメラミン樹脂、メトキシメチロール化メラミン樹脂、ブチル化メチロールメラミン樹脂等が挙げられる。
【0015】
アルコキシ化メチロールメラミン樹脂は完全にアルコキシ化されていてもよいし、メチロール基が残存していてもよいし、イミノ基が残存していてもよい。また、本開示の塗料組成物は、水溶性メラミン樹脂とフェノール樹脂等との共重合体を含んでいてもよい。水溶性メラミン樹脂のうち、メチロールメラミン樹脂が一層好ましい。
【0016】
本開示の塗料組成物を、例えば、基材の表面に塗布し、塗膜を形成することができる。基材は、例えば、可燃性の基材である。塗料組成物がメチロールメラミン樹脂を含む場合、基材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。なお、本明細書において透明とは、完全な透明には限定されず、例えば、半透明であってもよい。
【0017】
(1-2)(b)縮重合リン酸エステル
本開示の塗料組成物は縮重合リン酸エステルを含む。縮重合リン酸エステルは、ポリリン酸とアルコールとの縮合反応により得られるエステルである。アルコールとして、例えば、脂肪族アルコール、グリコール、多価アルコール、グリセリン等が挙げられる。
【0018】
脂肪族アルコールとして、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール等が挙げられる。グリコールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。多価アルコールとして、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0019】
縮重合リン酸エステルとして、多価アルコールを用いて得られた縮重合リン酸エステルが好ましい。塗料組成物が、多価アルコールを用いて得られた縮重合リン酸エステルを含む場合、基材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。縮重合リン酸エステルとして、ペンタエリスリトールを用いて得られた縮重合リン酸エステルが一層好ましい。塗料組成物が、ペンタエリスリトールを用いて得られた縮重合リン酸エステルを含む場合、基材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。
【0020】
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する縮重合リン酸エステルの配合割合は、好ましくは120質量部以上350質量部以下であり、より好ましくは130質量部以上200質量部以下であり、最も好ましくは170質量部である。
【0021】
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する縮重合リン酸エステルの配合割合が120質量部以上350質量部以下である場合、基材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。水溶性メラミン樹脂に過剰の縮重合リン酸エステルを混合した場合、基材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。
【0022】
(1-3)(c)成分
本開示の塗料組成物は(c)成分を含む。(c)成分は、リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニア水のうちの1以上を含む。(c)成分は、例えば、リン酸とホウ酸との両方を含む。アンモニウム塩として、例えば、リン酸アンモニウム塩、ホウ酸アンモニウム塩等が挙げられる。
【0023】
アンモニウム塩及びアンモニア水から、アンモニアが徐々に揮発する。揮発したアンモニアは水溶性メラミン樹脂の硬化を遅らせる。
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(c)成分の配合割合は、好ましくは15質量部以上90質量部以下であり、より好ましくは20質量部以上50質量部以下であり、最も好ましくは31質量部である。
【0024】
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(c)成分の配合割合が15質量部以上90質量部以下である場合、基材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。(c)成分が水溶性メラミン樹脂に対し過剰のリン酸又はホウ酸を含む場合、水溶性メラミン樹脂の硬化が促進される。
【0025】
また、(c)成分が水溶性メラミン樹脂に対し過剰のリン酸又はホウ酸を含む場合、余剰のリン酸又はホウ酸が基材の水酸基と化学結合し、塗膜と基材との密着性が向上する。基材が木材の場合、リン酸又はホウ酸はセルロースの水酸基と化学結合する。また、余剰のリン酸又はホウ酸は、火災時の燃焼熱により分解した水溶性メラミン樹脂と化学結合することで、基材の難燃性を一層高める。余剰のリン酸又はホウ酸は、水溶性メラミン樹脂の熱分解により生ずる水酸基と化学結合すると推測される。
【0026】
(1-4)(d)分子構造中にアミノ基を有する化合物
本開示の塗料組成物は、(d)分子構造中にアミノ基を有する化合物(以下では(d)成分ともいう)を含む。塗料組成物が(d)成分を含むことにより、常温における塗料組成物の硬化が速くなる。常温における塗料組成物の硬化が速くなると、垂直面に塗料組成物を塗付した場合の垂れが少なくなる。
【0027】
(d)成分として、例えば、尿素、メラミン、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミンが挙げられる。
脂肪族アミンとして、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、スペルミジン、スペルミン、アマンタジン等が挙げられる。
【0028】
芳香族アミンとして、例えば、アニリン、フェネチルアミン、トルイジン、カテコールアミン、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン等が挙げられる。
複素環式アミンとして、例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オキサゾール、チアゾール、4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0029】
(d)成分として、二以上のアミノ基を有するもの、又は尿素が好ましい。二以上のアミノ基を有する(d)成分として、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
塗料組成物が(d)成分として、二以上のアミノ基を有するもの、又は尿素を含む場合、常温における塗料組成物の硬化が一層速くなる。
【0030】
常温における塗料組成物の硬化が一層速くなる理由は、水溶性メラミン樹脂に残留するホルムアルデヒドと(d)成分との重縮合物が塗料組成物の流動性を低下させるためであると推測される。なお、(d)成分とホルムアルデヒドとの重縮合物は、後述する(D)成分である。
【0031】
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(d)成分の配合割合は、好ましくは0.05質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上5質量部以下であり、特に好ましくは2.5質量部である。水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(d)成分の配合割合が0.05質量部以上5質量部以下である場合、常温における塗料組成物の硬化が一層速くなる。
【0032】
(1-5)(e)カオリン
本開示の塗料組成物は、例えば、(e)カオリンをさらに含む。カオリンとして、ハロイサイト(Al2Si2O5(OH)4・2H2O)が好ましい。ハロイサイトはチューブ状の結晶構造を有する。ハロイサイトは、外側にシロキサン(-Si-O-Si-)を有し、内側にアルミノール(-Al-O-Al-)を有している。そのため、ハロイサイトの表面は酸性を呈する。
【0033】
塗料組成物がカオリンを含む場合、塗料組成物の硬化が速くなる。塗料組成物がハロイサイトを含む場合、塗料組成物の硬化が一層速くなる。
カオリンの粒子径は1μm以上10μm以下であることが好ましい。カオリンの粒子径が1μm以上10μm以下である場合、塗料組成物の硬化が一層早くなる。
【0034】
水溶性メラミン樹脂100質量部に対するカオリンの配合割合は、好ましくは20質量部以上250質量部以下であり、より好ましくは50質量部以上200質量部以下であり、最も好ましくは150質量部以上180質量部以下である。水溶性メラミン樹脂100質量部に対するカオリンの配合割合が250質量部以下である場合、塗膜が白濁することを抑制できる。
(1-6)(f)ガラス繊維
本開示の塗料組成物は、例えば、(f)ガラス繊維をさらに含む。塗料組成物がガラス繊維を含む場合、加熱発泡後の発泡層の形状保持性が向上する。ガラス繊維の直径は、5μm以上15μm以下であることが好ましい。ガラス繊維の長さは、10μm以上200μm以下であることが好ましく、20μm以上50μm以下であることが一層好ましい。ガラス繊維の長さをガラス繊維の直径で除した値を、ガラス繊維のアスペクト比とする。ガラス繊維のアスペクト比は、1.5以上5.5以下であることが好ましい。
【0035】
(1-7)他の成分
本開示の塗料組成物は、例えば、難燃性、塗膜の透明性、及び塗膜の硬化の速さを著しく損なわない範囲で、通常の塗料に使用される添加剤、顔料等を含むことができる。添加剤として、例えば、増粘剤、pH調整剤、分散剤、湿潤剤、防腐剤、染料等、消泡剤、顔料等が挙げられる。
【0036】
増粘剤として、例えば、ポリビニルアルコール、ウレタン変性ポリエーテル、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。pH調整剤として、例えば、アンモニア水、アミン等が挙げられる。顔料として、例えば、無機顔料、有機顔料、体質顔料等が挙げられる。無機顔料として、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。有機顔料として、例えば、キナクリドン、アゾ顔料等が挙げられる。体質含量として、例えば、シリカ、硫酸バリウム、タルク、マイカ等が挙げられる。
【0037】
本開示の塗料組成物は、例えば、酸を含む。酸は、水溶性メラミン樹脂の硬化を促進する。酸として、例えば、スルホン酸、カルボン酸等が挙げられる。スルホン酸として、例えば、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。カルボン酸として、例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、アクリル酸等が挙げられる。
【0038】
本開示の塗料組成物は、例えば、塗膜の透明性を著しく損なわない範囲で、発泡性耐火被覆の成分を含む。発泡性耐火被覆の成分として、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン、多価アルコール等が挙げられる。多価アルコールとして、例えば、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0039】
(1-8)塗料組成物の形態
本開示の塗料組成物の形態は、例えば、第1剤と第2剤とにより構成される2液の形態である。第1剤は水溶性メラミン樹脂を含む。第2剤は、縮重合リン酸エステルと、(c)成分とを含む。第1剤と第2剤とは、使用前に混合される。本開示の塗料組成物の形態が2液の形態である場合、塗料組成物の貯蔵安定性が高い。
【0040】
(d)成分は、第2剤に含まれ、第1剤には含まれないことが好ましい。(d)成分が第2剤に含まれ、第1剤には含まれない場合、塗料組成物の貯蔵安定性が一層高い。
2.塗料組成物の使用方法
本開示の塗料組成物は、例えば、以下のように使用される。塗料組成物の形態が2液の形態である場合、第1剤と第2剤とを攪拌機を用いて混合する。次に、基材の表面に塗料組成物を塗布する。この塗布を1回目の塗布とする。
【0041】
基材として、例えば、可燃性の基材が挙げられる。可燃性の基材として、例えば、木材等が挙げられる。木材として、例えば、厚さ12mm、幅100mm、長さ2000mmのスギ製材等が挙げられる。塗料組成物を塗布する方法として、例えば、刷毛又はローラーを用いる方法等が挙げられる。塗料組成物の塗布量は、例えば、300g/mである。
【0042】
1回目の塗布後、室温で1時間放置する。次に、50℃で16時間強制乾燥を行う。次に、塗料組成物を再度塗布する。この塗布を2回目の塗布とする。2回目の塗布における塗布方法及び塗布量は、1回目の塗布と同じである。2回目の塗布後、室温で1時間放置する。次に、50℃で16時間強制乾燥を行う。
【0043】
次に、アクリル樹脂エマルジョンを含有するつや消し塗料を、エアスプレーを用いて塗布する。つや消し塗料の塗付量は、例えば、100g/mである。次に、50℃で10分間乾燥させる。以上の工程により、難燃性の木質建材を得ることができる。
【0044】
基材は木材に限定されず、任意に選択できる。基材として、例えば、プラスチック、木質建材、紙、布等が挙げられる。プラスチックとして、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、発泡ポリスチレン樹脂等が挙げられる。木質建材として、例えば、製材、集成材、合板、単板積層材(LVL)、直交集成板(CLT)、中密度繊維板(MDF)等が挙げられる。基材の形態は特に限定されない。基材の形態として、例えば、柱状、板状、シート状、布状等が挙げられる。
【0045】
基材として、例えば、木質の構造部材が挙げられる。木質の構造部材として、例えば、柱、梁、壁、床等が挙げられる。
柱として、例えば、角形柱がある。長手方向に直交する断面での角形柱の断面形状は、例えば、正方形である。正方形の一辺の長さは、例えば、90mm以上1100mm以下である。
梁として、例えば、角形梁がある。長手方向に直交する断面での角形梁の断面形状は、例えば、長方形である。長方形の一辺の長さは、例えば、90mm以上800mm以下である。前記一辺に隣接する辺の長さは、例えば、90mm以上1200mm以下である。角形梁の長さは特に限定されないが、例えば、3000mm以上10000mm以下である。
壁の形状は、例えば、長方形である。長方形の短辺の長さは、例えば、3000mm以下である。長方形の短辺の長さは、例えば、500mm以上である。長方形の長辺の長さは、例えば、12000mm以下である。長方形の長辺の長さは、例えば、2000mm以上である。
基材として、例えば、木材の表面に板状又はシート状の部材を取り付けたものが挙げられる。板状又はシート状の部材として、例えば、石膏ボード、耐火シート、化粧材等が挙げられる。
【0046】
塗料組成物の塗布に使用する器具はローラー以外の器具であってもよい。塗料組成物の塗布に使用する器具として、通常の塗料を塗布するための器具を使用することができる。塗料組成物の塗布に使用する器具として、例えば、刷毛、ヘラ、スプレー、ロールコータ等が挙げられる。
【0047】
塗料組成物の塗付量は、必要とされる難燃性能に応じて任意に設定することができる。例えば、ISO5660-1に規定されているコーンカロリーメータ法により50kW/mの輻射強度でスギ製材を10分間加熱した場合の総発熱量を8MJ/m以下にするためには、塗付量が300g/m~1000g/mであることが好ましく、400g/m~600g/mであることがより好ましい。上記の条件で5分間加熱した場合の総発熱量を8MJ/m以下にするためには、塗付量が100g/m~400g/mであることが好ましい。
【0048】
塗料組成物の塗布後、乾燥させるときの乾燥温度は80℃以下であることが好ましい。強制乾燥を行う場合、乾燥温度は35℃~70℃、より好ましくは45~60℃である。強制乾燥に代えて、自然乾燥を行ってもよい。
【0049】
塗料組成物の塗布後における乾燥時間は必要に応じて短縮又は延長することができる。強制乾燥を行う前の室温での放置時間は好ましくは30分~24時間であり、より好ましくは1時間~16時間である。強制乾燥での乾燥温度が60℃以下である場合は、室温での放置を行わず、塗布後すぐに強制乾燥を行ってもよい。
【0050】
つや消し塗料を塗布する目的は、意匠性を付与することである。意匠性を付与することを目的とする塗装を意匠性塗装とする。意匠性塗装では、つや消し塗料に代えてつやあり塗料を用いてもよい。意匠性塗装では、アクリル樹脂エマルジョンを含有する塗料に限らず、基材の視認性を著しく妨げない塗料を適宜選択して用いることができる。
【0051】
意匠性塗装で使用する塗料は、合成樹脂エマルジョンに代えて、合成樹脂溶液や合成樹脂水溶液を含む塗料であってもよい。意匠性塗装で使用する塗料は、アクリル樹脂に限らず、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、オレフィン樹脂等の任意の合成樹脂を含む塗料であってもよい。意匠性塗装では、市販のクリヤー塗料を用いてもよい。意匠性塗装では、オレフィン樹脂溶液を含む塗料を用いることが好ましい。意匠性塗装は行わなくてもよい。
【0052】
3.塗料組成物が奏する効果
(3-1)本開示の塗料組成物を基材の表面に塗布すると、基材の難燃性が高くなる。その理由は以下のように推測される。ここでは、本開示の塗料組成物が(c)成分としてリン酸を含む事例について説明する。
【0053】
本開示の塗料組成物を塗布し、さらに意匠性塗装を行った基材が火災時の燃焼熱を受けると、最表面の意匠性塗装の塗膜が数秒から数十秒で燃焼する。次に、本開示の塗料組成物の塗膜の発泡が始まり、縮重合リン酸エステルとリン酸との縮重合反応が生じて黒色の発泡断熱層を形成する。基材が木材である場合、リン酸は、木材の主成分であるセルロースの水酸基とも縮重合反応を生ずると考えられる。発泡断熱層は火災時の燃焼熱の伝導を抑制して、木材表面が発火温度に到達する時間を遅延させる。木材の発火温度は250~270℃である。その結果、基材の難燃性が向上する。
【0054】
(3-2)本開示の塗料組成物は、他の成分とともに(d)成分を含む。そのため、常温における塗料組成物の硬化が速い。常温における塗料組成物の硬化が速くなると、垂直面に塗料組成物を塗付した場合の垂れが少なくなる。
【0055】
4.建材の構成
本開示の建材は、基材と、前記基材の表面に形成された塗膜とを有する。基材として、例えば、上記「2.塗料組成物の使用方法」の項で挙げたものがある。
【0056】
塗膜は、(A)水溶性メラミン樹脂と、(B)縮重合リン酸エステルと、(C)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニアのうちの1以上(以下では(C)成分ともいう)と、(D)分子構造中にアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの重縮合物(以下では(D)成分ともいう)と、を含む。
【0057】
(A)水溶性メラミン樹脂は、例えば、塗料組成物に含まれる(a)水溶性メラミン樹脂と同様のものである。
(B)縮重合リン酸エステルは、例えば、塗料組成物に含まれる(b)縮重合リン酸エステルと同様のものである。
【0058】
塗膜において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する縮重合リン酸エステルの配合割合は、好ましくは120質量部以上350質量部以下であり、より好ましくは130質量部以上200質量部以下であり、最も好ましくは170質量部である。
【0059】
塗膜において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する縮重合リン酸エステルの配合割合が120質量部以上350質量部以下である場合、建材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。水溶性メラミン樹脂に過剰の縮重合リン酸エステルを混合した場合、建材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。
【0060】
(C)成分は、基本的には、塗料組成物に含まれる(c)成分と同様のものである。ただし、(C)成分における選択肢の1つは、アンモニア水ではなくアンモニアである。
塗膜において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(C)成分の配合割合は、好ましくは15質量部以上90質量部以下であり、より好ましくは20質量部以上50質量部以下であり、最も好ましくは31質量部である。
【0061】
塗膜において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(C)成分の配合割合が15質量部以上90質量部以下である場合、建材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。(C)成分が水溶性メラミン樹脂に対し過剰のリン酸又はホウ酸を含む場合、水溶性メラミン樹脂の硬化が促進される。
【0062】
また、(C)成分が水溶性メラミン樹脂に対し過剰のリン酸又はホウ酸を含む場合、余剰のリン酸又はホウ酸が基材の水酸基と化学結合し、塗膜と基材との密着性が向上する。基材が木材の場合、リン酸又はホウ酸はセルロースの水酸基と化学結合する。また、余剰のリン酸又はホウ酸は、火災時の燃焼熱により分解した水溶性メラミン樹脂と化学結合することで、建材の難燃性を一層高める。余剰のリン酸又はホウ酸は、水溶性メラミン樹脂の熱分解により生ずる水酸基と化学結合すると推測される。
【0063】
(D)成分における分子構造中にアミノ基を有する化合物は、例えば、塗料組成物に含まれる(d)成分と同様のものである。
塗膜において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(D)成分の配合割合は、好ましくは0.05質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上5質量部以下である。水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(D)成分の配合割合が0.05質量部以上5質量部以下である場合、建材を製造するとき、常温における塗膜の硬化が一層速くなる。
【0064】
塗膜は、例えば、例えば、(E)カオリンを含む。(E)カオリンは、例えば、塗料組成物に含まれる(e)成分と同様のものである。
塗膜において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対するカオリンの配合割合は、好ましくは20質量部以上250質量部以下であり、より好ましくは50質量部以上200質量部以下であり、最も好ましくは150質量部以上180質量部以下である。水溶性メラミン樹脂100質量部に対するカオリンの配合割合が250質量部以下である場合、塗膜が白濁することを抑制できる。
【0065】
塗膜は、例えば、(F)ガラス繊維を含む。(F)ガラス繊維は、例えば、塗料組成物に含まれる(f)成分と同様のものである。
塗膜は、例えば、塗料組成物における「他の成分」を含んでいてもよい。塗膜は、例えば、本開示の塗料組成物を塗布することにより形成される。
本開示の建材は難燃性が高い。また、塗膜が(D)成分を含むため、建材を製造するとき、常温における塗膜の硬化が速い。
【0066】
5.構造部材の構成
本開示の構造部材は、基材と、前記基材の表面に形成された塗膜とを有する。構造部材として、例えば、柱、梁、壁、床等が挙げられる。基材として、例えば、上記「2.塗料組成物の使用方法」の項で挙げたものがある。
柱として、例えば、角形柱がある。長手方向に直交する断面での角形柱の断面形状は、例えば、正方形である。正方形の一辺の長さは、例えば、90mm以上1100mm以下である。
梁として、例えば、角形梁がある。長手方向に直交する断面での角形梁の断面形状は、例えば、長方形である。長方形の一辺の長さは、例えば、90mm以上800mm以下である。前記一辺に隣接する辺の長さは、例えば、90mm以上1200mm以下である。角形梁の長さは特に限定されないが、例えば、3000mm以上10000mm以下である。
壁の形状は、例えば、長方形である。長方形の短辺の長さは、例えば、3000mm以下である。長方形の短辺の長さは、例えば、500mm以上である。長方形の長辺の長さは、例えば、12000mm以下である。長方形の長辺の長さは、例えば、2000mm以上である。
【0067】
塗膜は、(A)水溶性メラミン樹脂と、(B)縮重合リン酸エステルと、(C)成分と、(D)成分と、を含む。
(A)水溶性メラミン樹脂は、例えば、塗料組成物に含まれる(a)水溶性メラミン樹脂と同様のものである。
【0068】
(B)縮重合リン酸エステルは、例えば、塗料組成物に含まれる(b)縮重合リン酸エステルと同様のものである。
塗膜において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する縮重合リン酸エステルの配合割合は、好ましくは120質量部以上350質量部以下であり、より好ましくは130質量部以上200質量部以下であり、最も好ましくは170質量部である。
【0069】
塗膜において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する縮重合リン酸エステルの配合割合が120質量部以上350質量部以下である場合、構造部材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。水溶性メラミン樹脂に過剰の縮重合リン酸エステルを混合した場合、構造部材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。
【0070】
(C)成分は、基本的には、塗料組成物に含まれる(c)成分と同様のものである。ただし、(C)成分における選択肢の1つは、アンモニア水ではなくアンモニアである。
塗膜において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(C)成分の配合割合は、好ましくは15質量部以上90質量部以下であり、より好ましくは20質量部以上50質量部以下であり、最も好ましくは31質量部である。
【0071】
塗膜において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(C)成分の配合割合が15質量部以上90質量部以下である場合、構造部材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。(C)成分が水溶性メラミン樹脂に対し過剰のリン酸又はホウ酸を含む場合、水溶性メラミン樹脂の硬化が促進される。
【0072】
また、(C)成分が水溶性メラミン樹脂に対し過剰のリン酸又はホウ酸を含む場合、余剰のリン酸又はホウ酸が基材の水酸基と化学結合し、塗膜と基材との密着性が向上する。基材が木材の場合、リン酸又はホウ酸はセルロースの水酸基と化学結合する。また、余剰のリン酸又はホウ酸は、火災時の燃焼熱により分解した水溶性メラミン樹脂と化学結合することで、構造部材の難燃性を一層高める。余剰のリン酸又はホウ酸は、水溶性メラミン樹脂の熱分解により生ずる水酸基と化学結合すると推測される。
【0073】
(D)成分における分子構造中にアミノ基を有する化合物は、例えば、塗料組成物に含まれる(d)成分と同様のものである。
塗膜において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(D)成分の配合割合は、好ましくは0.05質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上5質量部以下である。水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(D)成分の配合割合が0.05質量部以上5質量部以下である場合、構造部材を製造するとき、常温における塗膜の硬化が一層速くなる。
【0074】
塗膜は、例えば、例えば、(E)カオリンを含む。(E)カオリンは、例えば、塗料組成物に含まれる(e)成分と同様のものである。
塗膜において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対するカオリンの配合割合は、好ましくは20質量部以上250質量部以下であり、より好ましくは50質量部以上200質量部以下であり、最も好ましくは150質量部以上180質量部以下である。水溶性メラミン樹脂100質量部に対するカオリンの配合割合が250質量部以下である場合、塗膜が白濁することを抑制できる。
塗膜は、例えば、(F)ガラス繊維を含む。(F)ガラス繊維は、例えば、塗料組成物に含まれる(f)成分と同様のものである。
【0075】
塗膜は、例えば、塗料組成物における「他の成分」を含んでいてもよい。塗膜は、例えば、本開示の塗料組成物を塗布することにより形成される。
構造部材1は、例えば、図1に示す形態を有する。構造部材1は長尺の柱である。構造部材1の長手方向に直交する断面での構造部材1の形状は矩形である。図1は、長手方向に直交する断面を表す。構造部材1は、木材から成る基材3と、塗膜5とを有する。塗膜5は基材3の表面に形成されている。基材3のうち、外周側の部分は燃えしろ7である。
【0076】
火災が発生し、塗膜5が加熱されると、図2に示すように、塗膜5は発泡し、断熱層9を形成する。断熱層9は基材3の燃焼を抑制する。断熱層9が形成されるため、構造部材1の難燃性を維持しつつ、燃えしろ7の厚みを小さくすることができる。その結果、構造部材1の難燃性を維持しつつ、構造部材1の断面を小さくすることができる。
【0077】
本開示の構造部材は難燃性が高い。また、塗膜が他の成分とともに(D)成分を含むため、構造部材を製造するとき、常温における塗膜の硬化が速い。
6.構造部材の製造方法
本開示の構造部材の製造方法では、基材の表面に塗料組成物を塗布する。構造部材として、例えば、柱、梁、壁、床等が挙げられる。基材として、例えば、上記「2.塗料組成物の使用方法」の項で挙げたものがある。
【0078】
塗料組成物は、上記「1.塗料組成物の構成」の項で説明したものである。塗料組成物の塗布方法は、例えば、上記「2.塗料組成物の使用方法」の項で挙げた方法である。
本開示の構造部材の製造方法により製造された構造部材は、例えば、上記「5.構造部材の構成」の項で挙げたものである。
【0079】
本開示の構造部材の製造方法により製造された構造部材は難燃性が高い。また、塗料組成物が他の成分とともに(d)成分を含むため、構造部材を製造するとき、常温における塗料組成物の硬化が速い。
【0080】
7.実施例
(7-1)塗料組成物及び意匠性塗料の製造
表1及び表2における「塗料組成物」の行に記載された成分と、水とを混合することで実施例1~13及び比較例1~3の塗料組成物を製造した。「塗料組成物」の行に記載された成分の配合量の単位は質量部である。「塗料組成物」の行に記載された成分は不揮発分である。各実施例及び各比較例において、塗料組成物の全質量に対し、不揮発分全体の質量比は64質量%であり、水の質量比は36質量%であった。
【0081】
また、表1及び表2における「意匠性塗料」の行に記載された成分と、水とを混合することで実施例1~13及び比較例1~3の意匠性塗料を製造した。「意匠性塗料」の行に記載された成分の配合量の単位は質量部である。「意匠性塗料」の行に記載された成分は不揮発分である。各実施例及び各比較例において、意匠性塗料の全質量に対し、不揮発分全体の質量比は64質量%であり、水の質量比は36質量%であった。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
(7-2)構造部材の製造
【0084】
各実施例及び各比較例のそれぞれにおいて、構造部材を製造した。構造部材の製造方法は以下のとおりであった。基材の表面に、刷毛を用いて塗料組成物を塗布した。基材は板状の部材であった。基材の材質は、表1及び表2における「基材の種類」の行に記載された材質であった。基材の厚さは、表1及び表2における「基材の厚さ」の行に記載された厚さであった。
塗料組成物の塗布量は、表1及び表2における「塗料組成物」の行のうち、「塗付量(不揮発分)g/m」の行に記載された塗布量であった。その後、23℃、50RH%の条件で乾燥させ、塗膜を形成した。塗膜は、基本的には、塗料組成物における不揮発分の組成を有していた。ただし、塗料組成物に含まれる(d)成分は、化学反応により(D)成分となった。
【0085】
次に、形成した塗膜の表面に、刷毛を用いて意匠性塗料を塗布した。意匠性塗料の塗布量は、表1及び表2における「意匠性塗料」の行のうち、「塗付量(不揮発分)g/m」の行に記載された塗布量であった。その後、23℃、50RH%の条件で乾燥させ、塗膜を形成した。
【0086】
以上の工程により構造部材が完成した。構造部材は、基材と、その基材の表面に形成された塗膜を有していた。塗膜は、塗料組成物の塗布により形成された第1の塗膜と、意匠性塗料の塗装により形成された第2の塗膜との積層塗膜であった。第1の塗膜は、(A)水溶性メラミン樹脂と、(B)縮重合リン酸エステルと、(C)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニアのうちの1以上と、(D)分子構造中にアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの重縮合物と、カオリンと、を含んでいた。
【0087】
(7-3)塗料組成物及び構造部材の評価
各実施例及び各比較例の塗料組成物及び構造部材について以下の評価を行った。
(i)塗膜の硬化の評価
木材の表面に塗料組成物を塗布した。木材の種類はスギであった。塗付量は500g/mであった。塗布後、23℃、50RH%の条件で放置した。塗布した時点から16時間経過したとき、評価者の指で塗膜の表面に触れた。以下の基準で塗膜の硬化を評価した。評価結果を表1及び表2における「塗膜の評価」の行に示す。
【0088】
◎:塗膜に粘着性がない。
〇:塗膜に粘着性はあるものの、指で触れても塗膜が動かない。
△:塗膜が動く。
【0089】
×:塗料が指に付着する。
各実施例では、塗膜の硬化が速かった。各比較例では、塗膜の硬化が遅かった。
(ii)総発熱量及び最大発熱速度の測定
評価用の試験体は、構造部材から切り出した板状の部材であった。試験体のサイズは、縦99mm、横99mm、厚さ30~50mmでであった。試験体の主面は、塗料組成物を塗布して成る塗膜を備えていた。
ISO5660-1に規定されているコーンカロリーメータ法により、試験体に対して50kW/mの輻射強度で10分間加熱した場合の総発熱量及び最大発熱速度の測定を行った。総発熱量の測定結果を表1及び表2における「総発熱量」の行に示す。「〇」は総発熱量が7MJ/m未満であったことを意味する。「△」は総発熱量が7MJ/m以上8MJ/m以下であったことを意味する。「×」は総発熱量が8MJ/mを超えたことを意味する。
【0090】
最大発熱速度の測定結果を表1及び表2における「最大発熱速度」の行に示す。「〇」は200kW/mを超える時間が8秒未満であったことを意味する。「△」は200kW/mを超える時間が8秒以上10秒以下であったことを意味する。「×」は200kW/mを超える時間が10秒を超えたことを意味する。
【0091】
各実施例では、総発熱量及び最大発熱速度が小さかった。比較例1、2では、総発熱量及び最大発熱速度が大きかった。
8.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0092】
1…構造部材、3…基材、5…塗膜、7…燃えしろ、9…断熱層
図1
図2