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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143879
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
A61M25/00 612
A61M25/00 530
A61M25/00 504
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044634
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山口 憲二郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 康弘
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA02
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB06
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB16
4C267BB20
4C267BB25
4C267BB31
4C267BB39
4C267BB40
4C267BB43
4C267BB63
4C267CC04
4C267GG02
4C267GG04
4C267GG21
4C267GG23
4C267GG34
4C267HH08
4C267HH14
4C267HH15
(57)【要約】
【課題】更に良好な操作性を実現することが可能な医療機器を提供する。
【解決手段】医療機器100は、ルーメン20を有する長尺な医療機器本体10を備え、医療機器本体10の外周面は、先端側を向く第1面32と基端側を向く第2面34とを含む凸形状部30を、医療機器本体10の軸方向において互いに異なる位置にそれぞれ有し、第1面32の摩擦抵抗が、第2面34の摩擦抵抗よりも小さい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーメンを有する長尺な医療機器本体を備え、
前記医療機器本体の外周面は、先端側を向く第1面と基端側を向く第2面とを含む凸形状部を、前記医療機器本体の軸方向において互いに異なる位置にそれぞれ有し、
前記第1面の摩擦抵抗が、前記第2面の摩擦抵抗よりも小さい医療機器。
【請求項2】
前記第1面は、前記軸方向に対して直交する直交面に対して傾斜した傾斜面である請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記直交面と前記第1面とのなす角度が、前記直交面と前記第2面とのなす角度よりも大きい請求項2に記載の医療機器。
【請求項4】
前記第2面は、前記軸方向に対して直交する直交面に対して傾斜した傾斜面である請求項1から3のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項5】
前記第2面は、前記軸方向に対して直交する直交面に対して傾斜した傾斜面であり、
前記直交面と前記第1面とのなす角度が、前記直交面と前記第2面とのなす角度よりも小さい請求項1又は2に記載の医療機器。
【請求項6】
前記医療機器本体の外周面は、前記軸方向において互いに異なる位置に配置されていてそれぞれ周回状に形成されている複数の突条を有し、
前記複数の突条の各々が前記凸形状部である請求項1から5のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項7】
前記医療機器本体の外周面は、前記軸方向に螺進する螺線状の突条を有し、
前記突条において前記軸方向において互いに異なる位置に配置されている一部分ずつが、それぞれ前記凸形状部である請求項1から5のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項8】
前記医療機器本体の先端部に、2つ以上の前記凸形状部が配置されている請求項1から7のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項9】
前記第1面と前記第2面とのうち前記第1面に選択的に親水性コーティングが施されている請求項1から8のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項10】
前記第1面と前記第2面との双方に、親水性コーティングが施されており、
前記第1面に施されている前記親水性コーティングの摩擦抵抗が、前記第2面に施されている前記親水性コーティングの摩擦抵抗よりも小さい請求項1から8のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項11】
前記第1面と前記第2面とのうち前記第2面が選択的に粗面化されている請求項1から10のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項12】
前記第1面と前記第2面との双方が粗面化されており、前記第1面の面粗度よりも前記第2面の面粗度が大きい請求項1から10のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項13】
先端側を向く第1傾斜面と基端側を向く第2傾斜面とを有するワイヤが、前記軸方向に螺進する螺線状の配置で前記医療機器本体に埋設されており、
前記医療機器本体の外表面において前記ワイヤと対応する部位に、前記凸形状部が配置されている請求項1から12のいずれか一項に記載の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器としては、体腔内に挿入され、当該体腔内に薬液などの液体を注入するために用いられるタイプのものがある。このような医療機器としては、例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1の医療機器(同文献には、カテーテルと記載)は、長尺な管状部材である医療機器本体(同文献には、カテーテル本体と記載)と、医療機器本体の内腔によって構成されているルーメンと、を備えており、ルーメンを介して体腔内に薬液等の液体を供給可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020―162645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者の検討によれば、特許文献1の医療機器の構造では、医療機器の操作性について、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、更に良好な操作性を実現することが可能な医療機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、ルーメンを有する長尺な医療機器本体を備え、
前記医療機器本体の外周面は、先端側を向く第1面と基端側を向く第2面とを含む凸形状部を、前記医療機器本体の軸方向において互いに異なる位置にそれぞれ有し、
前記第1面の摩擦抵抗が、前記第2面の摩擦抵抗よりも小さい医療機器が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、医療機器の更に良好な操作性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る医療機器の全体構成を示す模式図である。
図2図2(a)及び図2(b)は第1実施形態における医療機器本体の先端部を示す図であり、このうち図2(a)は縦断面図、図2(b)は側面図である。
図3図3(a)及び図3(b)は第2実施形態における医療機器本体の先端部を示す図であり、このうち図3(a)は縦断面図、図3(b)は側面図である。
図4図4(a)及び図4(b)は第3実施形態における医療機器本体の先端部を示す図であり、このうち図4(a)は縦断面図、図4(b)は側面図である。
図5図5(a)及び図5(b)は第4実施形態における医療機器本体の先端部を示す図であり、このうち図5(a)は縦断面図、図5(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について、図1から図5(b)を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。なお、図2(a)、図3(a)、図4(a)及び図5(a)は、医療機器本体10の軸方向に沿った断面図である。
【0010】
以下に説明する各実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更又は改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれる。
本発明の医療機器100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
以下の説明において、医療機器100の遠位側を先端側、その近位側を基端側ともいう。また、先端部は、遠位端(最先端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味し、基端部とは、近位端(最基端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味するものとする。
また、以下において、医療機器本体10の軸方向を単に軸方向と称したり、医療機器本体10の径方向を単に径方向と称したり、医療機器本体10の周方向を単に周方向と称したりする場合がある。
【0011】
〔第1実施形態〕
先ず、図1から図2(b)を用いて第1実施形態を説明する。
図1から図2(b)のいずれかに示すように、本実施形態に係る医療機器100は、ルーメン20を有する長尺な医療機器本体10を備え、医療機器本体10の外周面は、先端側を向く第1面32と基端側を向く第2面34とを含む凸形状部30を、医療機器本体10の軸方向において互いに異なる位置にそれぞれ有し、第1面32の摩擦抵抗が、第2面34の摩擦抵抗よりも小さい。
【0012】
医療機器100は、一例として、カテーテルであり、ルーメン20を介して造影剤や薬液等の液体を体腔内に供給するために用いられる。ただし、医療機器100は、例えば、体腔に挿通されるカテーテル以外の医療機器であってもよい。本実施形態の場合、医療機器100が挿入される体腔は、例えば、血管であることが挙げられるが、当該体腔は、例えば、気管、腸管などの消化管等であってもよい。
【0013】
本実施形態によれば、第1面32の摩擦抵抗が、第2面34の摩擦抵抗よりも小さく、第1面32が先端側を向いており、第2面34が基端側を向いている。これにより、医療機器100を体腔内に挿入する際には、第1面32と第2面34とのうち、主としてより摩擦抵抗の小さい第1面32が体腔の内壁面に対して接触するので、体腔内において医療機器100が先端側に向けて摺動する際の摺動抵抗を低減することができる。よって、医療機器100を体腔内にスムーズに挿入することができる。
また、本実施形態によれば、基端側を向く第2面34の摩擦抵抗が、先端側を向く第1面32の摩擦抵抗よりも大きい。これにより、医療機器100が体腔内に挿入された状態において、医療機器本体10が基端側に移動しようとする際には、第1面32と第2面34とのうち、主としてより摩擦抵抗の大きい第2面34が体腔の内壁面に対してアンカーするようにできるので、液体を体腔内に注入する際に、当該液体が吐出される際の反動によって、意図せず医療機器本体10が基端側に後退してしまうことを抑制できる。
このように、本実施形態によれば、医療機器100の良好な操作性を実現することができる。
【0014】
本実施形態の場合、図1に示すように、医療機器本体10の外周面は、凸形状部30の形成領域と、凸形状部30の非形成領域61と、含み、凸形状部30は、非形成領域61よりも径方向外側に向けて突出している部分である。非形成領域61の外径は、例えば、軸方向における位置にかかわらず実質的に略一定となっている。ただし、非形成領域61の外径は、医療機器本体10の基端から先端に向けて、徐々に又は段階的に縮径していてもよい。
【0015】
医療機器本体10は、長尺な中空の管状部材である。
図1及び図2(a)に示すように、医療機器本体10は、例えば、内層13と、内層13の周囲に設けられた外層14と、を備える二層構造であり、医療機器本体10の軸心側から、内層13と外層14との順に積層されて構成されている。
内層13は、医療機器本体10の最内層であり、例えば、肉厚が軸方向における位置にかかわらず一定の円管状に形成されている。内層13は、医療機器本体10の先端と基端との両端において開口している。本実施形態の場合、ルーメン20は、内層13の内周面によって画定されている。
内層13は、例えば、フッ素系の熱可塑性ポリマー樹脂により構成されている。フッ素系の熱可塑性ポリマー材料は、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)及びペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などとすることができる。
外層14は医療機器本体10の最外層である。例えば、医療機器本体10の肉厚の大部分(過半部)は、外層14の肉厚によって占められている。外層14は、例えば、その肉厚が軸方向における位置にかかわらず略一定の円管状に形成されている。ただし、外層14の先端部の先端の外径は、例えば、先端側に向けて僅かに縮径している。
【0016】
医療機器本体の外径(非形成領域61の外径)は、特に限定されないが、0.3mm以上1.2mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.4mm以上1.0mm以下である。医療機器本体の内径は、特に限定されないが、0.2mm以上1.0mm以下であることが好ましい。また、医療機器本体の全長は、特に限定されないが、500mm以上2000mm以下であることが好ましい。
【0017】
また、医療機器本体10は、例えば、編組された金属ワイヤにより網目状に構成された補強層16(図2(a)参照)を含む。
補強層16は、例えば、外層14に埋設されており、内層13の周囲に配置されている。補強層16は、例えば、内層13と同軸に配置されている。
補強層16は、例えば、医療機器本体10の先端から基端に亘って配設されている。医療機器本体10は、補強層16によってその全体が補強されている。
なお、補強層16は、例えば、コイル状に巻回された金属ワイヤによって構成されたものであってもよい。また、補強層16は、例えば、医療機器本体10の軸方向における一部分に配設されていてもよい。
【0018】
更に、本実施形態の場合、医療機器100は、医療機器本体10の先端部10aに埋設されているマーカー部材11(図2(a)参照)を備えている。
より詳細には、図2(a)に示すように、マーカー部材11は、例えば、外層14の先端部に埋設されている。
マーカー部材11は、例えば、白金やタングステンなどのX線不透過性の材料によって構成されている筒状の部材である。マーカー部材11は、医療機器本体10と同軸の配置で外層14に埋設されている。
マーカー部材11の位置を指標とすることにより、X線(放射線)観察下において体腔内における医療機器本体10の先端部10aの位置を適確に認識することができる。
【0019】
また、図1に示すように、医療機器本体10の基端部10bには、使用者によって把持される把持部50が設けられている。把持部50は、その基端から図示しない注入器(シリンジ)やインジェクターなどの薬液注入デバイスを挿入するための連結部51を有している。連結部51の外周には、シリンジを着脱可能に固定できるようにねじ溝が形成されている。軸方向における把持部50の中央部には、ハブ52が設けられている。把持部50には当該把持部50を先端から基端に亘って軸心方向に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔における先端側の部分に医療機器本体10の基端部10bが挿入されて、把持部50に対して医療機器本体10の基端部10bが固定されている。ハブ52は、把持部50の軸心を介して対向する2枚の羽部53を有している。把持部50の軸心を中心として羽部53を回転させることにより、医療機器本体10の全体を軸回転させるトルク操作が可能であり、体腔に侵入した医療機器本体10の先端の向きを調整することができる。ハブ52の先端側には、プロテクタ54が設けられており、医療機器100の基端部の周囲を覆っている。
【0020】
ここで、図2(a)及び図2(b)に示すように、本実施形態の場合、医療機器本体の先端部10aに、2つ以上の凸形状部30が配置されている。
これにより、医療機器本体10の外表面における第1面32が占める割合を大きくすることができるので、第1面32と体腔の内壁面との接触面積を十分に確保できる。よって、体腔内において医療機器100が先端側に向けて摺動する際の摺動抵抗をより低減することができる。また、同様に、医療機器本体10の外表面における第2面34が占める割合を大きくすることができるので、各第2面34と体腔の内壁面との接触面積を十分に確保することができる。よって、医療機器本体10は、体腔の内壁面に対する第2面34のアンカー性を良好に発揮することができる。
なお、ここでいう先端部10aの範囲(図1に示すL1)は、医療機器本体10の軸方向において、特に限定されないが、例えば、先端から30cm以内の範囲を意味しており、好ましくは25cm以内の範囲である。
【0021】
図1から図2(b)に示す例では、5つの凸形状部30が形成されているが、凸形状部30の数は、特に限定されず。5つ以下の凸形状部30が形成されていてもよいし、5つ以上の凸形状部30が形成されていてもよい。
また、図1から図2(b)に示す例では、凸形状部30が先端部10aに形成されている例を示しているが、凸形状部30は、基端部10bに形成されていてもよいし、先端部10aから基端部10bに亘って、医療機器本体10の長手方向において間欠的に形成されていてもよい。
【0022】
より詳細には、本実施形態の場合、図1及び図2(b)に示すように、医療機器本体10の外周面は、軸方向において互いに異なる位置に配置されていてそれぞれ周回状に形成されている複数の突条36を有し、複数の突条36の各々が凸形状部30である。
これにより、各第1面32及び各第2面34の各々が、医療機器本体の先端部10aにおいて、周回状に形成されている構造となる。よって、医療機器本体10の周方向における全域において、医療機器100が先端側に向けて摺動する際の摺動抵抗を低減することができる。同様に、医療機器本体10が基端側に移動しようとする際に、医療機器本体10の周方向における全域において、より摩擦抵抗の大きい第2面34が体腔の内壁面に対してアンカーするようにできる。
【0023】
本実施形態の場合、各突条36は、周方向において360度周回している。ただし、突条36は、例えば、C環状(周方向において360度未満)に延在していてもよいし、複数の突条が、周方向において間欠的に配置されていてもよい。
また、各突条36は、例えば、軸方向において互いに離間して配置されており、各凸形状部30どうしの間に非形成領域61が介在している。互いに隣り合って配置されている突条36の頂点65bどうしの離間距離(図2(b)に示すD1)は、例えば、0.02mm以上5mm以下であることが好ましい。また、互いに隣り合って配置されている突条36のうち、一方の突条36における他方の突条36側の立ち上がり点65aと、他方の突条36における一方の突条36側の立ち上がり点65aと、の離間距離(図2(b)に示すD2)は、例えば、0.01mm以上4.5mm以下であることが好ましい。
ただし、各突条36は、例えば、軸方向において互いに隣接して配置されていてもよい。この場合、互いに隣り合って配置されている突条36のうち、一方の突条36における他方の突条36側の立ち上がり点65aと、他方の突条36における一方の突条36側の立ち上がり点65aと、の離間距離D2は、実質的に0となる。
本実施形態の場合、一例として、各突条36は、軸方向において、互いに等間隔に配置されている。また、各突条36は、互いに略同等の寸法及び形状に形成されている。したがって、各突条36の頂点65bどうしの離間距離D1は、互い略同等の寸法となっており、各突条36の立ち上がり点65aどうしの離間距離D2も、互いに略同等の寸法となっている。ただし、例えば、各突条36は、軸方向において、互いに不等間隔に配置されていてもよい。また、各突条36は、互いに異なる寸法及び形状に形成されていてもよい。したがって、各突条36の頂点65bどうしの離間距離D1は、互いに異なる寸法となっていてもよく、各突条36の立ち上がり点65aどうしの離間距離D2も、互いに異なる寸法となっていてもよい。
【0024】
ここで、本実施形態の場合、第1面32は、軸方向に対して直交する直交面60(図2(b)参照)に対して傾斜した傾斜面である。なお、図2(b)においては、直交面60を二点鎖線で示している。
これにより、第1面32が先端側に向けて傾斜している構成となるので、医療機器100を体腔内に挿入する際の摺動抵抗を低減できる。
より詳細には、各第1面32は、例えば、先端側に向けて医療機器本体10の軸心側に近づく方向に傾斜している。
ただし、本発明はこの例に限らず、第1面32は、例えば、軸方向に対して直交する直交面であってもよい。
【0025】
また、本実施形態の場合、第2面34は、軸方向に対して直交する直交面60に対して傾斜した傾斜面である。
これにより、体腔の内壁面に対する第2面34の動摩擦力を低減できるので、体腔からの医療機器本体10の抜去がスムーズとなる。
より詳細には、各第2面34は、例えば、基端側に向けて医療機器本体10の軸心側に近づく方向に傾斜している。
ただし、第2面34は、例えば、軸方向に対して直交する直交面であってもよい。
【0026】
より詳細には、図2(a)及び図2(b)に示すように、本実施形態の場合は、第1面32は、先端側の立ち上がり点65aと頂点65bとを結ぶ直線62(図2(b)参照)を基準とすると、斜め先端側に向けて凸の弧状となっている。同様に、第2面34は、基端側の立ち上がり点65aと頂点65bとを結ぶ直線63(図2(b)参照)を基準とすると、斜め基端側に向けて凸の弧状となっている。ただし、例えば、第1面32は、先端側に向けて一定の角度で傾斜していてもよく、第2面34も、基端側に向けて一定の角度で傾斜していてもよい。
また、各第1面32の後端は、例えば、対応する第2面34の先端と接続されている。ただし、例えば、第1面32と対応する第2面34との間には、軸方向における非形成領域61からの高さが略一定となっている台状部(不図示)が介在していてもよい。
本実施形態の場合、直交面60と第1面32とのなす角度(図2(b)に示すR1)は、直交面60と第1面32の直線62とのなす角度である。同様に、直交面60と第2面34とのなす角度(図2(b)に示すR2)は、直交面60と第2面34の直線63とのなす角度である。そして、一例として、直交面60と第1面32とのなす角度R1と、直交面60と第2面34とのなす角度R2とは、互いに略同等の角度に設定されている。なお、図2(b)においては、直線62、63を、それぞれ二点鎖線で示している。
【0027】
直交面60と第1面32とのなす角度R1及び直交面60と第2面34とのなす角度R2の各々は、特に限定されないが、例えば、45度以上80度以下であることが好ましい。
また、本実施形態の場合、一例として、各凸形状部30の角度R1は、互いに略同等に設定されている。ただし、例えば、各凸形状部30の角度R1は、互いに異なる角度に設定されていてもよい。
同様に、本実施形態の場合、一例として、各凸形状部30の角度R2は、互いに略同等に設定されている。ただし、例えば、各凸形状部30の角度R2は、互いに異なる角度に設定されていてもよい。
各凸形状部30の高さ寸法(図2(a)に示すH1)は、特に限定されないが、例えば、0.01mm以上0.1mm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.02mm以上0.08mm以下である。
各凸形状部30の長さ寸法(図2(a)に示すL2)は、特に限定されないが、例えば、0.01mm以上2mm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.02mm以上1mm以下である。
本実施形態の場合、一例として、各凸形状部30の高さ寸法H1及び長さ寸法L2は、互いに略同等に設定されている。ただし、例えば、各凸形状部30の高さ寸法H1及び長さ寸法L2は、互いに異なっていてもよい。
【0028】
本実施形態の場合、複数の凸形状部30(突条36)を形成する手法としては、特に限定されないが、例えば、所望の凸形状部30の数や寸法に応じて、レーザ加工等により医療機器本体10の外層14の表層の一部分を切削する手法や、ナノインプリントなどの微細加工によって凹凸を転写する手法等を挙げることができる。
【0029】
更に、本実施形態の場合、第1面32と第2面34とのうち第1面32に選択的に親水性コーティング18(図2(a)参照)が施されている。
これにより、医療機器本体10が先端側に向けて摺動する際の摺動抵抗をより低減することができる。一方、第2面34には親水性コーティング18が施されていないので、医療機器本体10が基端側に移動しようとする際に、第2面34が体腔の内壁面に対して良好にアンカーするようにできる。
また、図2(a)に示すように、本実施形態の場合、親水性コーティング18は、医療機器本体10(外層14)の外表面における凸形状部30の非形成領域61にも形成されている。親水性コーティング18は、例えば、医療機器本体10の非形成領域61の全域に亘って形成されていてもよいし、または先端部10aにおける当該非形成領域61に選択的に形成されていてもよい。
親水性コーティング18の材料は、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)などの無水マレイン酸系ポリマーやその共重合体、ポリビニルピロリドンなどの親水性の樹脂材料であることが挙げられる。
【0030】
なお、例えば、第1面32と第2面34との双方に、親水性コーティング18が施されていてもよい。この場合、第1面32に施されている親水性コーティング18の摩擦抵抗が、第2面34に施されている親水性コーティング18の摩擦抵抗よりも小さいことが好ましい。
このようにすることにより、体腔の内壁面に対する第2面34のアンカー性は確保しつつも、体腔内からの医療機器本体10の抜去をスムーズに行うことができる。
第1面32に施されている親水性コーティング18の摩擦抵抗を、第2面34に施されている親水性コーティング18の摩擦抵抗よりも小さくする手法としては、特に限定されないが、例えば、第1面32に施されている親水性コーティング18を、より摩擦抵抗の小さい親水性の樹脂材料によって形成する手法が挙げられる。その他に、例えば、18を複数の樹脂材料を混合した材料によって構成する場合に、第1面32に施されている親水性コーティング18の複数の樹脂材料の混合比率と第2面34に施されている親水性コーティング18の材料の混合比率と、を互いに異なる混合比率としてもよい。
【0031】
また、第1面32と第2面34とのうち第2面34が選択的に粗面化されていることも好ましい。
これにより、体腔の内壁と第2面34との間で生じる摩擦抵抗をより大きくすることができるので、液体を体腔内に注入する際に、体腔の内壁面に対する第2面34のアンカー性を十分に確保することができる。
ただし、例えば、第1面32と第2面34との双方が粗面化されていてもよい。この場合、第1面32の面粗度よりも第2面34の面粗度が大きいことが好ましい。この場合も同様に、体腔の内壁と第1面32との間で生じる摩擦抵抗よりも体腔の内壁と第2面34との間で生じる摩擦抵抗の方が大きくなるので、体腔の内壁面に対する第2面34のアンカー性を十分に確保することができる。
【0032】
第1面32(又は第2面34)が粗面化されている場合、粗面を形成する手法は特に限定されず、例えば、医療機器本体10を射出成形する際に、金型に予め形成されている複数の微小の凹凸を転写することによって形成する手法、研磨処理やブラスト処理を用いる手法などを用いることができる。
【0033】
〔第2実施形態〕
次に、図3(a)及び図3(b)を用いて第2実施形態を説明する。
本実施形態に係る医療機器100は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係る医療機器100と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係る医療機器100と同様に構成されている。
【0034】
図3(a)及び図3(b)に示すように、本実施形態の場合、医療機器本体10の外周面は、軸方向に螺進する螺線状の突条36を有し、突条36において軸方向において互いに異なる位置に配置されている一部分ずつが、それぞれ凸形状部30である。
このような構成によっても、医療機器本体10が体腔に挿入される際の摺動抵抗を低減しつつ、液体を体腔内に注入する際には、意図せず医療機器本体10が基端側に後退してしまうことを抑制できる。
ここで、「一部分ずつが、それぞれ凸形状部30である」とは、軸方向に沿った縦断面において、軸方向において互いに異なる位置に配置されている複数の凸形状部30が存在していることを意味している。また、軸方向において互いに異なる位置に配置されているとは、軸方向において互いに隣接して配置されているか、軸方向において互いに離間して配置されているかのどちらかを意味している。
本実施形態の場合、各凸形状部30どうしは、軸方向において互いに離間して配置されており、各凸形状部30どうしの間に非形成領域61が介在している。
なお、例えば、各凸形状部30どうしが互いに隣接して配置されている場合、各凸形状部30どうしの間には非形成領域61が介在しておらず、各凸形状部30どうしの境界部は、非形成領域61と同等の高さ位置まで落ち込んでいる。
【0035】
より詳細には、本実施形態の場合、図3(a)に示すように、先端側を向く第1傾斜面41と基端側を向く第2傾斜面42とを有するワイヤ40が、軸方向に螺進する螺線状の配置で医療機器本体10に埋設されており、医療機器本体10の外表面においてワイヤ40と対応する部位に、凸形状部30が配置されている。
ワイヤ40は、例えば、その全体が外層14に埋設されている。ワイヤ40は、補強層16と同軸に配置されているとともに、補強層16よりも径方向外側に配置されている。そして、ワイヤ40の形状が、凸形状部30の形状に反映されて外層14が形成されているので、外層14においてワイヤ40と対応する部分は、外方に向けて局所的に肉厚となっており、これにより螺線状の突条36が形成されている。
本実施形態の場合、突条36の数は、1本である。ただし、例えば、突条36は、互いに並列する複数の突条であってもよい。また、突条36の各巻回部どうしは、軸方向において互いに離間して配置されている。ただし、例えば、突条36の各巻回部どうしは、軸方向において互いに隣接して配置されていてもよい。
【0036】
図3(a)に示すように、ワイヤ40の第1傾斜面41は、例えば、先端側に向けて医療機器本体10の軸心側に近づく方向に傾斜しており、ワイヤ40の第2傾斜面42は、基端側に向けて医療機器本体10の軸心側に近づく方向に傾斜している。そして、本実施形態の場合、凸形状部30の第1面32は、外層14において第1傾斜面41と対応する部分の肉厚の外表面によって構成されており、凸形状部30の第2面34は、外層14の外表面において第2傾斜面42と対応する部分の肉厚の外表面によって構成されている。したがって、軸方向に沿った断面において、凸形状部30の第1面32は、先端側に向けて医療機器本体10の軸心側に近づく方向に傾斜しており、ワイヤ40の第2傾斜面42は、基端側に向けて医療機器本体10の軸心側に近づく方向に傾斜している。
【0037】
〔第3実施形態〕
次に、図4(a)及び図4(b)を用いて第3実施形態を説明する。
本実施形態に係る医療機器100は、以下に説明する点で、上記の第1、2実施形態に係る医療機器100と相違しており、その他の点では、上記の第1、2実施形態に係る医療機器100と同様に構成されている。
【0038】
図4(a)及び図4(b)に示すように、本実施形態の場合、直交面60と第1面32とのなす角度R1が、直交面60と第2面34とのなす角度R2よりも大きい。換言すると、直交面60と第1面32とのなす角度R1の方が直交面60と第2面34とのなす角度R2よりなだらかである。
これにより、医療機器本体10を体腔に挿入する際の摺動抵抗を低減できる。一方、第1面32よりも第2面34の方がより急斜面となっているので、医療機器本体10のアンカー力をより高めることができる。
したがって、医療機器100を体腔内によりスムーズに挿入することができるとともに、液体を体腔内に注入する際には、意図せず医療機器本体10が基端側に後退してしまうことを、より確実に抑制できる。
【0039】
本実施形態の場合、直交面60と第1面32とのなす角度R1は、特に限定されないが、例えば、55度以上85度以下であることが好ましく、より好ましくは65度以上75度以下である。また、直交面60と第2面34とのなす角度R2は、特に限定されないが、例えば、25度以上65度以下であることが好ましく、より好ましくは35度以上55度以下である。
直交面60と第1面32とのなす角度R1と直交面60と第2面34とのなす角度R2との角度差は、例えば、20度以上50度以下であることが好ましく、より好ましくは30度以上40度以下である。
【0040】
〔第4実施形態〕
次に、図5(a)及び図5(b)を用いて第4実施形態を説明する。
本実施形態に係る医療機器100は、以下に説明する点で、上記の第1~3実施形態に係る医療機器100と相違しており、その他の点では、上記の第1~3実施形態に係る医療機器100と同様に構成されている。
【0041】
図5(a)及び図5(b)に示すように、本実施形態の場合、第2面34は、軸方向に対して直交する直交面60に対して傾斜した傾斜面であり、直交面60と第1面32とのなす角度R1が、直交面60と第2面34とのなす角度R2よりも小さい。換言すると、直交面60と第2面34とのなす角度R2の方が直交面60と第1面32とのなす角度R1よりなだらかである。
これにより、体腔の内壁面に対する第2面34のアンカー性は確保しつつも、体腔の内壁面に対する第2面34の動摩擦力を低減できるので、体腔からの医療機器本体10の抜去がスムーズとなる。
【0042】
本実施形態の場合、直交面60と第1面32とのなす角度R1は、特に限定されないが、例えば、25度以上65度以下であることが好ましく、より好ましくは35度以上55度以下である。また、直交面60と第2面34とのなす角度R2は、特に限定されないが、例えば、55度以上85度以下であることが好ましく、より好ましくは65度以上75度以下である。
直交面60と第1面32とのなす角度R1と直交面60と第2面34とのなす角度R2との角度差は、例えば、20度以上50度以下であることが好ましく、より好ましくは30度以上40度以下である。
【0043】
以上、図面を参照して各実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0044】
例えば、上記においては、医療機器本体10が1つのルーメン20を有している例を説明したが、医療機器本体10は、例えば、複数のルーメン20を備えていてもよい。この場合、医療機器本体10の内壁が、複数のルーメンをそれぞれ画定していてもよいし、複数のチューブが医療機器本体10の内部に埋設されており、複数のチューブの内壁が、複数のルーメン20をそれぞれ画定していてもよい。
【0045】
また、上記においては、医療機器100が非能動カテーテルである例を説明したが、医療機器100は、例えば、能動カテーテルであってもよい。この場合、医療機器100は、ルーメン20とは別のルーメンに挿通されている操作線(不図示)と、操作線の基端部と接続されている操作部(不図示)と、を備えており、操作部の操作により医療機器本体10の先端部10aを屈曲させて医療機器100を選択的に指向させることが可能に構成されていてもよい。
【0046】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)ルーメンを有する長尺な医療機器本体を備え、
前記医療機器本体の外周面は、先端側を向く第1面と基端側を向く第2面とを含む凸形状部を、前記医療機器本体の軸方向において互いに異なる位置にそれぞれ有し、
前記第1面の摩擦抵抗が、前記第2面の摩擦抵抗よりも小さい医療機器。
(2)前記第1面は、前記軸方向に対して直交する直交面に対して傾斜した傾斜面である(1)に記載の医療機器。
(3)前記直交面と前記第1面とのなす角度が、前記直交面と前記第2面とのなす角度よりも大きい(2)に記載の医療機器。
(4)前記第2面は、前記軸方向に対して直交する直交面に対して傾斜した傾斜面である(1)から(3)のいずれか一項に記載の医療機器。
(5)前記第2面は、前記軸方向に対して直交する直交面に対して傾斜した傾斜面であり、
前記直交面と前記第1面とのなす角度が、前記直交面と前記第2面とのなす角度よりも小さい(1)又は(2)に記載の医療機器。
(6)前記医療機器本体の外周面は、前記軸方向において互いに異なる位置に配置されていてそれぞれ周回状に形成されている複数の突条を有し、
前記複数の突条の各々が前記凸形状部である(1)から(5)のいずれか一項に記載の医療機器。
(7)前記医療機器本体の外周面は、前記軸方向に螺進する螺線状の突条を有し、
前記突条において前記軸方向において互いに異なる位置に配置されている一部分ずつが、それぞれ前記凸形状部である(1)から(5)のいずれか一項に記載の医療機器。
(8)前記医療機器本体の先端部に、2つ以上の前記凸形状部が配置されている(1)から(7)のいずれか一項に記載の医療機器。
(9)前記第1面と前記第2面とのうち前記第1面に選択的に親水性コーティングが施されている(1)から(8)のいずれか一項に記載の医療機器。
(10)前記第1面と前記第2面との双方に、親水性コーティングが施されており、
前記第1面に施されている前記親水性コーティングの摩擦抵抗が、前記第2面に施されている前記親水性コーティングの摩擦抵抗よりも小さい(1)から(8)のいずれか一項に記載の医療機器。
(11)前記第1面と前記第2面とのうち前記第2面が選択的に粗面化されている(1)から(10)のいずれか一項に記載の医療機器。
(12)前記第1面と前記第2面との双方が粗面化されており、前記第1面の面粗度よりも前記第2面の面粗度が大きい(1)から(10)のいずれか一項に記載の医療機器。
(13)先端側を向く第1傾斜面と基端側を向く第2傾斜面とを有するワイヤが、前記軸方向に螺進する螺線状の配置で前記医療機器本体に埋設されており、
前記医療機器本体の外表面において前記ワイヤと対応する部位に、前記凸形状部が配置されている(1)から(12)のいずれか一項に記載の医療機器。
【符号の説明】
【0047】
10 医療機器本体
10a 先端部
10b 基端部
11 マーカー部材
13 内層
14 外層
16 補強層
18 親水性コーティング
19 非形成領域
20 ルーメン
30 凸形状部
32 第1面
34 第2面
36 突条
40 ワイヤ
41 第1傾斜面
42 第2傾斜面
50 把持部
51 連結部
52 ハブ
53 羽部
54 プロテクタ
60 直交面
61 非形成領域
62、63 接線
65a 立ち上がりの点
65b 頂点
100 医療機器
図1
図2
図3
図4
図5