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特開2022-143900寝具、枕構成体の製造方法、枕構成体の製造プログラム及び枕構成体の製造装置
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  • 特開-寝具、枕構成体の製造方法、枕構成体の製造プログラム及び枕構成体の製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143900
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】寝具、枕構成体の製造方法、枕構成体の製造プログラム及び枕構成体の製造装置
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/10 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
A47G9/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044667
(22)【出願日】2021-03-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年11月20日 インターネット上のウェブサイト(アドレス:https://www.makuake.com/project/rakuna/)で枕を掲載
(71)【出願人】
【識別番号】511292817
【氏名又は名称】株式会社アメイズプラス
(71)【出願人】
【識別番号】519366237
【氏名又は名称】NatureArchitects株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】谷道 鼓太朗
(72)【発明者】
【氏名】横江 俊一
【テーマコード(参考)】
3B102
【Fターム(参考)】
3B102AA02
3B102AB07
(57)【要約】
【課題】頭を傾け易くすることができる寝具、枕構成体の製造方法、枕構成体の製造プログラム及び枕構成体の製造装置を提供する。
【解決手段】枕10は、クッション性を有する枕本体11と、枕本体11に形成された収容空間16と、収容空間16に設けられた枕構成体13と、を備える。枕構成体13は、就寝者の頭を下方から受ける頭受け部21と、頭受け部21の略中央部から下方に延び、頭受け部21を下方から支える支持部22と、を有している。支持部22は、上下方向と交差する方向に傾倒可能に構成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
就寝者の頭を載せる枕部を備える寝具であって、
前記枕部は、
枕本体と、
前記枕本体に形成された収容空間と、
前記収容空間に設けられた枕構成体と、を備え、
前記枕構成体は、
前記就寝者の頭を下方から受ける頭受け部と、
前記頭受け部の略中央部から下方に延び、前記頭受け部を下方から支える支持部と、
を有しており、
前記支持部は、上下方向と交差する方向に傾倒可能に構成されている、寝具。
【請求項2】
前記支持部は、左右方向に傾倒可能とされている、請求項1に記載の寝具。
【請求項3】
前記支持部は、前記頭受け部の略中央部を通って上下方向に延びる中心軸線に沿って前記頭受け部から下方に延びる軸部を有している、請求項1又は2に記載の寝具。
【請求項4】
前記軸部は、上下方向と交差する方向に傾倒可能とされ、
前記支持部は、前記軸部の外周側に設けられ、前記軸部の傾倒に伴い弾性変形する弾性変形部を有する、請求項3に記載の寝具。
【請求項5】
前記軸部は、平面視において全方向に傾倒可能とされ、
前記弾性変形部は、前記軸部の周りを周回しながら螺旋状に延びる螺旋部である、請求項4に記載の寝具。
【請求項6】
前記支持部は、前記頭受け部の略中心部を通って上下方向に延びる中心軸線を中心として、板面が上下方向を向いた状態で螺旋板状に形成されており、
前記支持部の内縁が前記中心軸線上に位置することにより、前記中心軸線に沿って延びる部分を有している、請求項1又は2に記載の寝具。
【請求項7】
螺旋板状とされた前記支持部のうち、前記頭受け部との連結側である上端側の一部については、それよりも下方の部分と比べて外縁が内側に位置するように形成されている、請求項6に記載の寝具。
【請求項8】
前記頭受け部は、上方に開口した凹形状に形成されている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の寝具。
【請求項9】
前記収容空間は、下方に開口した凹状をなしており、
前記収容空間を下方から覆うとともに、前記収容空間に収容された前記枕構成体が載置される裏蓋を備え、
前記枕本体の下面には、前記裏蓋の厚みと同じだけ凹んだ凹部が設けられ、
前記凹部に前記裏蓋が配設された状態で、前記枕本体と前記裏蓋とをまとめて覆う枕カバーを備える、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の寝具。
【請求項10】
前記枕本体は、クッション性を有して形成され、前記収容空間を上方から覆う覆い部分を有しており、
前記覆い部分は、前記枕本体における前記覆い部分の周囲に設けられた部分と一体形成されている、請求項9に記載の寝具。
【請求項11】
前記頭受け部と前記支持部とは、3Dプリンタ造形物として一体形成されている、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の寝具。
【請求項12】
コンピュータが、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の寝具が有する前記枕構成体の3次元構造に関する入力データを取得し、
前記入力データを3Dプリンタに与えて3次元構造を造形させる、
枕構成体の製造方法。
【請求項13】
コンピュータを、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の寝具が有する前記枕構成体の3次元構造に関する入力データを取得する手段、及び、
前記入力データを3Dプリンタに与えて3次元構造を造形させる手段
として機能させる、枕構成体の製造プログラム。
【請求項14】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の寝具が有する前記枕構成体の3次元構造に関する入力データを取得する手段と、
前記入力データを3Dプリンタに与えて3次元構造を造形させる手段と、
を備える、枕構成体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枕部を備える寝具、枕部が有する枕構成体の製造方法、枕構成体の製造プログラム及び枕構成体の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、就寝者の安眠を促す枕として、頭を載せる部分が、遊動可能な遊動枕部とされたものが開示されている。特許文献1の枕には、上方に開口され遊動枕部が配置された凹部と、その凹部から下方に向けて延びる孔部とが設けられている。孔部にはコイル状のスプリングが挿入され、そのスプリングの上方に浮遊枕部が配置されている。この枕によれば、浮遊枕部に頭を載せた際に、浮遊枕部にスプリングの弾性力が下方から作用するため、あたかも空中に浮かんでいるような感覚が得られ、それにより安眠が促されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-130036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の枕では、スプリングが孔部に挿入されているため、スプリングの変位方向が上下方向に規制されている。そのため、寝返りを行うために頭を傾けようとしても、浮遊枕部全体が沈み込んでしまうだけで、頭をスムーズに傾けるのが難しいと考えられる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、頭を傾け易くすることができる寝具、枕構成体の製造方法、枕構成体の製造プログラム及び枕構成体の製造装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明の寝具は、
就寝者の頭を載せる枕部を備える寝具であって、
前記枕部は、
枕本体と、
前記枕本体に形成された収容空間と、
前記収容空間に設けられた枕構成体と、を備え、
前記枕構成体は、
前記就寝者の頭を下方から受ける頭受け部と、
前記頭受け部の略中央部から下方に延び、前記頭受け部を下方から支える支持部と、
を有しており、
前記支持部は、上下方向と交差する方向に傾倒可能に構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の寝具によれば、就寝者の頭が枕部に載せられると、枕本体の収容空間に設けられた枕構成体の頭受け部により就寝者の頭が受けられる。頭受け部の略中央部からは下方に向けて支持部が延びており、その支持部は傾倒可能に構成されている。この場合、就寝者が頭を傾けることにより、頭受け部の中央部からずれた位置に下向き荷重が作用すると、支持部が傾倒し、それにより頭受け部が傾いた状態となる。そのため、就寝者は頭を傾け易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】枕の構成を示す縦断面図。
図2】(a)は枕本体を示す底面図であり、(b)は裏蓋を示す底面図である。
図3】枕構成体を示す斜視図。
図4】枕構成体を示す平面図。
図5】枕構成体を示す正面図。
図6】枕構成体を示す縦断面図。
図7】枕構成体の作用を説明するための図。
図8】製造装置の概略構成を示す図。
図9】製造処理の流れを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は枕の構成を示す縦断面図である。図2は、(a)が枕本体を示す底面図であり、(b)が裏蓋を示す底面図である。なお、以下の説明では、平面視において左右方向と直交する方向を前後方向とする。
【0010】
図1に示すように、枕10は、枕本体11と、枕カバー12と、枕構成体13と、裏蓋14とを備える。枕本体11は、クッション性を有する素材により形成され、例えば高密度高反発ウレタンにより形成されている。なお、枕10が枕部及び寝具に相当する。
【0011】
枕本体11は、図2(a)に示すように、扁平の直方体状に形成されている。枕本体11には、枕構成体13を収容する収容空間16が形成されている。収容空間16は下方に開口された凹状の空間であり、上下方向に延びる円柱状に形成されている。収容空間16は、平面視において枕本体11の中央部に位置し、その上方が枕本体11により閉じられている。つまり、枕本体11は、収容空間16を上方から覆う覆い部分11aを有しており、覆い部分11aは、枕本体11において覆い部分11aの周囲に設けられた周囲部分11bと一体形成されている。
【0012】
枕本体11の下面側には、裏蓋14が設けられている。裏蓋14は、例えばウレタンフォームにより形成されている。裏蓋14は、収容空間16に枕構成体13が収容された状態で、収容空間16を下方から覆うものである。この場合、枕構成体13は裏蓋14の上面に載置される。裏蓋14は、図2(b)に示すように、前後方向に長い矩形板状に形成され、前後方向の長さが枕本体11の前後方向の長さと略同じとなっている。
【0013】
裏蓋14は、枕本体11の下面に形成された凹部17に配設されている。凹部17は、前後方向に延びる溝状とされ、前後方向の両側がそれぞれ開放されている。凹部17は、枕本体11の左右方向の中央部に形成され、収容空間16と連続している。凹部17の凹み寸法(上下方向の寸法)は裏蓋14の厚み寸法と同じとなっている。そのため、凹部17に裏蓋14が配置された状態で、裏蓋14の下面と枕本体11の下面とは略面一の状態とされる。
【0014】
凹部17に裏蓋14が配置された状態で、枕本体11には枕カバー12が被せられている。この場合、裏蓋14は枕本体11とともに枕カバー12により覆われている。これにより、裏蓋14が凹部17から外れることが防止され、ひいては枕構成体13が収容空間16から脱落することが防止されている。
【0015】
続いて、枕構成体13について図3図6に基づいて説明する。図3は枕構成体13を示す斜視図であり、図4は平面図であり、図5は正面図であり、図6は縦断面図である。なお、図6図4のA-A線断面図に相当する。
【0016】
図3図6に示すように、枕構成体13は、就寝者の頭を受ける頭受け部21と、頭受け部21を下方から支える支持部22とを備える。枕構成体13は、合成樹脂材料により形成され、例えばナイロン樹脂により形成されている。また、枕構成体13は、3Dプリンタ(三次元造形装置)により形成されている。そのため、枕構成体13の頭受け部21と支持部22とは3Dプリンタ造形物として一体形成されている。
【0017】
頭受け部21は、中央側が下方に凹んだ皿形状(皿板状)とされ、平面視において円形状とされている。換言すると、頭受け部21は、上方に開口した凹形状に形成されている。頭受け部21は部分的に肉抜きされており、それにより、頭受け部21には厚み方向に貫通する複数の開口部24が形成されている。この場合、頭受け部21は、これらの開口部24を区画する複数の梁部25を有し、それら複数の梁部25が相互につながった形状となっている。
【0018】
複数の梁部25には、頭受け部21の外周部を構成する円環状の梁部25aと、その梁部25aから頭受け部21の中央部に向けて延びる複数の梁部25bとが含まれている。複数の梁部25bは、円板状の中央板部26を介して互いに接続されている。中央板部26は、その中心が頭受け部21の中央部に位置するよう形成され、その外径が梁部25bの幅よりも大きくなっている。
【0019】
支持部22は、頭受け部21の中心部を通って上下方向に延びる中心軸線Eを中心(螺旋中心)とした螺旋板状に形成されている。この場合、支持部22の板面は上下方向を向いている。支持部22は、頭受け部21の中心部から下方に向けて螺旋板状に延びている。支持部22の上端部は頭受け部21の中央板部26に連結されている。
【0020】
支持部22は、平面視において矩形形状をなしており、詳しくは正方形状をなしている。換言すると、支持部22は、平面視における外縁29の形状が正方形状となっている。支持部22は、平面視における中央部が頭受け部21の中心軸線E上に位置している。また、支持部22は、平面視の大きさが頭受け部21よりも小さくされ、そのため、平面視において、頭受け部21の外周部全域が支持部22の外縁29からはみ出した状態とされている。
【0021】
螺旋板状とされた支持部22の内縁28は頭受け部21の中心軸線E上に位置している。これにより、支持部22は、頭受け部21の中心軸線Eに沿って上下に延びる部分を有している。以下、この部分を軸部31という。軸部31は、頭受け部21の中央部から中心軸線Eに沿って下方に延びている。軸部31は、支持部22の上下方向全域に亘って連続して延びている。
【0022】
詳しくは、軸部31は、頭受け部21の中心軸線Eに沿って螺旋をなすように上下方向に延びている。但し、軸部31は、頭受け部21の中心軸線Eに沿って丸棒状をなすように延びていてもよい。要するに、軸部31は、中心軸線Eに沿って上下方向に連続して延びていればよい。
【0023】
支持部22において軸部31の外周側は螺旋部32となっている。螺旋部32は、軸部31の周りを周回しながら螺旋板状に延びる部分である。螺旋部32は、その内周側において軸部31と接続され、軸部31から径方向の外側に拡がっている。また、螺旋部32は部分的に肉抜きされ、それにより、螺旋部32には板厚方向に貫通する複数の開口部34が形成されている。螺旋部32は、それらの開口部34を区画する複数の梁部35が相互につながった形状とされている。なお、図6では、開口部34の図示を省略している。
【0024】
支持部22は、その下端部に水平板状のベース部33を有している。支持部22は、ベース部33から上方に向けて螺旋板状に延びている。ベース部33には、軸部31の下端部が連結されている。軸部31は、そのベース部33に連結された下端部を支点として、長さ方向と交差する方向に撓み変形可能とされている。つまり、軸部31は、上下方向と交差(直交)する方向に撓み変形可能とされている。この場合、軸部31が上記の方向に撓むことにより、軸部31は全体として上記の方向に傾倒した状態とされる。そのため、軸部31は、その下端部を支点として上下方向と交差する方向に傾倒可能となっている(図7(b)及び(c)も参照)。この場合、軸部31は、平面視において全方向に傾倒可能となっている。
【0025】
軸部31が上下方向と交差する方向に傾倒すると、それに伴い、軸部31の外周側に設けられた螺旋部32が弾性変形する。詳しくは、螺旋部32を構成する板状部が上記傾倒側に傾くように螺旋部32が変形し、それにより、螺旋部32が全体として上記傾倒側に傾いた状態となる。したがって、この場合、軸部31と螺旋部32とを含む支持部22全体が、上記傾倒側に傾いた状態となる。そのため、支持部22は、上下方向と交差する方向に傾倒可能とされている。なお、螺旋部32が弾性変形部に相当する。
【0026】
支持部22のうち、頭受け部21との連結側である上端側の一部の部分(以下、連結側部分37という)については、それよりも下方の部分(以下、通常部分38という)と比べて外縁29が内側に位置するように形成されている。詳しくは、通常部分38においては、外縁29の全域が、平面視において同一の正方形(以下、基準正方形という)の外縁ライン上に位置しているのに対し、連結側部分37においては、外縁29の全域が、平面視において基準正方形の外縁ラインよりも内側に位置している。より詳しくは、連結側部分37においては、外縁29の(平面視)位置が、外縁29の下端部から上端部に向かうにつれ、基準正方形の外縁ライン上から徐々に内側へと移行している。
【0027】
上述した枕構成体13は、図1に示すように、枕本体11の収容空間16に配設されている。枕構成体13は、ベース部33が裏蓋14の上面に載置された状態で配設されている。枕構成体13の高さ寸法は、裏蓋14と枕本体11の覆い部分11aとの間の距離と略同じとなっている。そのため、枕構成体13が収容空間16に配設された状態では、枕構成体13の頭受け部21が枕本体11の覆い部分11aに当接又は近接した状態とされている。
【0028】
頭受け部21の外径は、収容空間16の内径と略同じであり、詳しくは収容空間16の内径よりも若干小さくなっている。この場合、枕構成体13が収容空間16に配設された状態で、支持部22の外縁29と収容空間16の内周面とは互いに離間している。そのため、収容空間16において支持部22の外周側には、支持部22が傾倒するのに十分なスペースが確保されている。なお、枕本体11は、支持部22の傾倒や、それに伴う頭受け部21の傾きを妨げることがないよう、十分なクッション性(柔軟性)を有して形成されている。
【0029】
次に、枕構成体13の作用について図7に基づき説明する。図7は、枕構成体13の作用を説明するための図である。
【0030】
図7(a)に示すように、就寝者は自らの頭Hを枕10に載せる際、枕10の中央部に頭Hの後頭部を載せる。これにより、就寝者の頭Hが枕本体11の覆い部分11aを介して枕構成体13の頭受け部21により受けられる。この場合、頭受け部21の中央部に下向きの荷重が作用することになる。ここで、支持部22は、頭受け部21の中心軸線Eに沿って延びる軸部31を有しているため、この場合、頭受け部21が沈み込むことが抑制される。
【0031】
次に、図7(b)に示すように、就寝者が頭Hを左側に傾けて寝返りしようとすると、頭受け部21における中央部から左側にずれた位置に下向きの荷重が作用することになる。この場合、支持部22が左側に傾倒し、その傾倒に伴い頭受け部21が左側に傾いた状態となる。具体的には、この場合、軸部31により頭受け部21の沈み込みが抑制されながら、頭受け部21が左側に傾くことになる。これにより、就寝者は左側に頭を傾け易く、寝返りし易くなっている。
【0032】
これと同様に、図7(c)に示すように、就寝者が頭Hを右側に傾けて寝返りしようとする際には、支持部22が右側に傾倒し、それに伴い頭受け部21が右側に傾いた状態となる。そのため、就寝者は右側に頭を傾け易く、寝返りし易くなっている。
【0033】
次に、枕構成体13を製造する際の流れについて図8及び図9に基づき説明する。図8は製造装置40の概略構成を示す図であり、図9は製造処理の流れを示す図である。
【0034】
図8に示すように、枕構成体13の製造には、製造装置40が用いられる。製造装置40は、3Dプリンタ41と、3Dプリンタ41に接続された製造用の端末42とを備える。端末42はパーソナルコンピュータからなり、「コンピュータ」に相当する。端末42には、枕構成体13を製造するための製造プログラム43が記憶されている。端末42(詳しくは端末42の制御部)は、その製造プログラム43に基づき、3Dプリンタ41による枕構成体13の製造処理を実施する。
【0035】
製造処理では、図9に示すように、端末42が、枕構成体13の3次元構造に関する入力データを取得する(ステップS11)。例えば、端末42の記憶部にはあらかじめ入力データが記憶され、その入力データを記憶部から読み出して取得する。また、入力データが記憶された別の端末にアクセスし、その別の端末から入力データを取得してもよい。
【0036】
次に、端末42は、取得した入力データを3Dプリンタ41に出力し、3Dプリンタ41に入力データに対応する3次元構造を造形させる(ステップS12)。これにより、枕構成体13が製造される。
【0037】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0038】
・枕本体11の収容空間16に枕構成体13を設け、その枕構成体13を、就寝者の頭を受ける頭受け部21と、頭受け部21の中央部から下方に延び頭受け部21を下方から支える支持部22とを有して構成した。また、支持部22については、左右方向と交差する方向に傾倒可能に構成した。かかる構成によれば、就寝者が頭を傾けることにより、頭受け部21の中央部からずれた位置に下向き荷重が作用すると、支持部22が傾倒し、それにより頭受け部21が傾いた状態となる。そのため、就寝者は頭を傾け易くすることができる。
【0039】
・支持部22を左右方向に傾倒可能としたため、左右方向に頭を傾け易く、寝返りをし易くすることができる。
【0040】
・支持部22が、頭受け部21の中央部から頭受け部21の中心軸線Eに沿って下方に延びる軸部31を有する構成とした。頭受け部21に後頭部を載せた場合、頭受け部21の中央部に下向き荷重が作用する。この場合、軸部31により頭受け部21が下方へ沈み込むのを抑制することができる。一方、就寝者が頭を傾け、頭受け部21の中央部からずれた位置に下向き荷重が作用すると、頭受け部21の沈み込みが抑制されながら、頭受け部21が傾くことになる。そのため、頭をより傾け易くすることができる。
【0041】
・支持部22が、左右方向と交差する方向に傾倒可能な軸部31に加え、軸部31の外周側に、軸部31の傾倒に伴い弾性変形する螺旋部32を有する構成とした。かかる構成では、軸部31が傾倒して、頭受け部21が傾く際、軸部31に対して当該軸部31を元に戻す側への弾性力が作用し、ひいては頭受け部21を元に戻す側への弾性力が作用する。そのため、頭を傾ける際に、頭がその傾く側から支えられ浮遊しているような感覚を得ることができ、心地よさを感じながら頭を傾けることができる。
【0042】
・就寝者が寝返り等で頭を傾ける際には、頭が左右方向だけでなく前後方向にも傾くことが想定される。その点、上記の実施形態では、軸部31を、平面視にて全方向に傾倒可能としたため、頭を自然な状態で傾け易くすることができる。また、軸部31の外周側に設けた弾性変形部を、軸部31の周りを螺旋状に周回する螺旋部32としたため、軸部31がいずれの方向に傾倒しても螺旋部32が弾性変形し、それにより軸部31ひいては頭受け部21に元に戻る側への弾性力が作用する。これにより、頭をいずれの方向に傾ける際にも、浮遊するような心地よさを感じながら頭を傾けることができる。
【0043】
・支持部22を、頭受け部21の中心軸線Eを中心とする螺旋板状に形成したため、支持部22を平面視において全方向に傾倒可能とすることができる。そのため、頭を自然な状態で傾け易くすることができる。また、支持部22の内縁を頭受け部21の中心軸線E上に位置させることにより、支持部22の一部に中心軸線Eに沿って上下に延びる部分(つまり軸部31)を形成した。この場合、上記延びる部分により頭受け部21の沈み込みを抑えることができるため、頭を傾けた際、頭受け部21の沈み込みを抑えながら、頭受け部21を傾けることができる。これにより、頭をより傾け易くすることができる。
【0044】
また、支持部22が螺旋板状とされているため、支持部22が傾倒して頭受け部21が傾く際には、支持部22が弾性変形した状態となり、それにより、頭受け部21には元に戻る側への弾性力が作用する。そのため、頭を傾ける際に、頭がその傾く側から支えられ浮遊しているような感覚を得ることができ、心地よさを感じながら頭を傾けることができる。
【0045】
・螺旋板状の支持部22のうち、頭受け部21との連結側である上端側の一部については、頭受け部21と一体となって変形することが考えられる。そのため、支持部22の上端側の一部については支持部22の変形に影響を与えない部分であると考えられる。そこで、上記の実施形態では、この点に着目し、支持部22の上端側の一部(連結側部分37)については、それよりも下方の部分(通常部分38)と比べて外縁29が内側に位置するように形成した。この場合、支持部22の変形に影響を与えることなく、支持部22の材料低減を図ることができる。
【0046】
・頭受け部21を上方に開口した凹形状に形成したため、就寝者の頭を頭受け部21により包み込むようにして位置決めすることができる。また、就寝者が頭を傾けたときに、頭受け部21が頭の動きに追従して傾き易くすることができる。
【0047】
・収容空間16を下方に開口させたため、枕構成体13を収容空間16から取り出すことができる。そのため、枕10を洗濯する際に便利である。また、収容空間16を下方から覆う裏蓋14を設け、その裏蓋14の上に枕構成体13を載置するようにした。また、枕本体11の下面に裏蓋14の厚みと同じだけ凹んだ凹部17を設け、その凹部17に裏蓋14を配設した状態で枕本体11と裏蓋14とをまとめて枕カバー12により覆うようにした。この場合、裏蓋14が安定し、その結果、裏蓋14上に枕構成体13を安定して設けることができる。
【0048】
・枕本体11に収容空間16を上方から覆う覆い部分11aを設け、その覆い部分11aを、枕本体11における覆い部分11aの周囲に設けられた周囲部分11bと一体形成した。これにより、枕本体11の覆い部分11aを介して頭受け部21に頭が載せられる構成にあって、枕本体11のクッション性を好適に得ることができる。
【0049】
・枕構成体13において頭受け部21と支持部22とを3Dプリンタ41により一体形成した。これにより、支持部22が螺旋板状に形成された複雑な構造のものであっても簡単に造形することができる。また、例えば、頭受け部21と支持部22とをそれぞれ別部材として形成し、その後、頭受け部21及び支持部22を接着等して一体化する構成の場合、頭受け部21と支持部22との接合部分に頭の荷重に起因した応力集中が生じると、その接合部分で頭受け部21と支持部22とが分離するおそれがある。それに対して、頭受け部21と支持部22とを3Dプリンタ造形物として一体形成する構成では、こうした分離を生じにくくする利点もある。
【0050】
・頭受け部21を部分的に肉抜きすることにより、複数の梁部25が相互につながった形状とした。これと同様に、支持部22についても部分的に肉抜きすることにより、複数の梁部35が相互につながった形状とした。この場合、材料コストを抑えつつ、成形スピードを確保することができる。また、単なる肉抜きとせず複数の梁部25,35が組み合わさった形状とすることで、頭の支持強度の低下を抑制しながら、上記の効果を得ることができる。
【0051】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0052】
(1)上記実施形態では、枕構成体13の支持部22において、軸部31と螺旋部32(弾性変形部に相当)とが一体形成されていたが、軸部31に対して螺旋部32を別体として形成してもよい。具体的には、支持部22を、頭受け部21の中央部から下方に延び下端部がベース部33に固定された棒状の軸部と、その軸部と別体で形成され軸部の周りを螺旋状に延びる螺旋部とを有する構成とすることが考えられる。この場合、螺旋部は、軸部に固定されていても固定されていなくてもよい。かかる構成においても、軸部の傾倒に伴い、螺旋部が弾性変形することになる。また、この場合、螺旋部は、螺旋板状に限らず、線材を螺旋状に周回させたコイル状であってもよい。その場合、例えば、螺旋部としてコイルばねを用いることが考えられる。
【0053】
(2)軸部に対して螺旋部(弾性変形部に相当)を別体で設けた上記(1)の構成において、弾性変形部として、螺旋部に代え、ゴム材料からなる弾性部材を用いてもよい。この場合、弾性部材を、軸部とベース部33とを斜めに接続する線状に形成し、その線状の弾性部材を軸部の周りに複数設けることが考えられる。かかる構成によれば、軸部が傾倒すると、それに伴い弾性部材が長手方向に弾性変形(つまり伸長又は収縮)する。そのため、この場合にも、軸部ひいては頭受け部21に元に戻る側への弾性力を作用させることができる。
【0054】
(3)上記実施形態では、軸部31が撓むことにより軸部31が傾倒する構成となっていたが、軸部が回動することにより軸部が傾倒する構成としてもよい。例えば、上述した(1)の構成において、軸部の下端部をベース部33に前後方向に延びる回動軸を介して回動可能に連結する構成が考えられる。その場合、軸部は、回動軸を中心として左右方向に回動可能とされ、その回動により左右方向に傾倒可能とされる。
【0055】
(4)上記実施形態では、支持部22の連結側部分37については、外縁29を通常部分38よりも内側に位置させたが、必ずしも内側に位置させる必要はない。すなわち、支持部22の上下方向全域に亘り、外縁29を平面視にて同一正方形の外縁ライン上に位置させるようにしてもよい。
【0056】
また、支持部22の外縁29は必ずしも平面視にて正方形状である必要はなく、円形状等、その他の形状であってもよい。
【0057】
(5)上記実施形態では、枕構成体13の頭受け部21及び支持部22をそれぞれ肉抜きしたが、頭受け部21及び支持部22のうちいずれか一方だけ肉抜きしてもよい。また、頭受け部21及び支持部22の両方を肉抜きしないようにしてもよい。
【0058】
(6)上記実施形態では、枕構成体13を3Dプリンタによる造形により形成したが、例えば、枕構成体13を樹脂成型により形成してもよいし、切削加工等の加工により形成してもよい。
【0059】
(7)上記実施形態では、枕構成体13をナイロン樹脂により形成したが、その他の樹脂材料により形成してもよい。また、金属材料やゴム材料等、樹脂材料以外の材料により形成してもよい。
【0060】
(8)上記実施形態では、枕本体11が収容空間16を上方から覆う覆い部分11aを有していたが、枕本体11が覆い部分11aを有さない構成としてもよい。つまり、枕本体11に収容空間16を上方に開口させるように形成してもよい。この場合、就寝者の頭が枕構成体13の頭受け部21の上に枕カバー12のみを介して載せられることになる。また、かかる構成とした場合、頭受け部21の上面側にクッション材を取り付けるようにしてもよい。
【0061】
また、収容空間16を上方及び下方のいずれにも開口しない閉空間とし、その閉空間に枕構成体13を取り出し不能な状態で設けてもよい。
【0062】
(9)上記実施形態では、本発明を枕10に適用したが、枕部を有する寝具であれば、枕10に限らず本発明を適用することが可能である。例えば、枕部を有する枕付きのマットレス等に本発明を適用することが考えられる。
【符号の説明】
【0063】
10…枕部及び寝具としての枕、11…枕本体、12…枕カバー、13…枕構成体、14…裏蓋、16…収容空間、21…頭受け部、22…支持部、31…軸部、32…弾性変形部としての螺旋部、41…3Dプリンタ、42…コンピュータとしての端末、E…中心軸線。
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