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特開2022-143936ポリプロピレン系樹脂組成物および成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143936
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂組成物および成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
C08L23/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044733
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上北 弘幸
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB151
4J002BB152
4J002EC056
4J002EG006
4J002EG076
4J002EW046
4J002FD206
4J002GG01
(57)【要約】
【解決手段】下記要件(A1)および(A2)を満たすプロピレン系共重合体(A)80~90質量部、下記要件(B1)および(B2)を満たすプロピレン系共重合体(B)10~20質量部、および造核剤(D)0.01~0.6質量部を含み(ただし、プロピレン系共重合体(A)およびプロピレン系共重合体(B)の合計を100質量部とする)、下記要件(C1)を満たすポリプロピレン系樹脂組成物。(A1)プロピレン系共重合体(A)のエチレンに由来する構成単位の含有量が1.0~3.0質量%である。(A2)プロピレン系共重合体(A)の135℃デカリン中における極限粘度[η](A)が1.0~2.0dl/gである。(B1)プロピレン系共重合体(B)のエチレンに由来する構成単位の含有量が20~40質量%である。(B2)プロピレン系共重合体(B)の135℃デカリン中における極限粘度[η](B)が1.0~2.0dl/gでかつ、プロピレン系共重合体(B)/プロピレン系共重合体(A)の極限粘度比[η](B)/[η](A)が0.8~1.4である。(C1)JIS K 7210に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定した、メルトフローレート(MFR)が10~50g/10分である。
【効果】本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ボトルキャップ等の用途において、特にヒンジ部の耐白化性と耐衝撃性とを両立させることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(A1)および(A2)を満たすプロピレン系共重合体(A)80~90質量部、下記要件(B1)および(B2)を満たすプロピレン系共重合体(B)10~20質量部、および造核剤(D)0.01~0.6質量部を含み(ただし、プロピレン系共重合体(A)およびプロピレン系共重合体(B)の合計を100質量部とする)、下記要件(C1)を満たすポリプロピレン系樹脂組成物。
(A1)プロピレン系共重合体(A)のエチレンに由来する構成単位の含有量が1.0~3.0質量%である。
(A2)プロピレン系共重合体(A)の135℃デカリン中における極限粘度[η](A)が1.0~2.0dl/gである。
(B1)プロピレン系共重合体(B)のエチレンに由来する構成単位の含有量が20~40質量%である。
(B2)プロピレン系共重合体(B)の135℃デカリン中における極限粘度[η](B)が1.0~2.0dl/gでかつ、プロピレン系共重合体(B)/プロピレン系共重合体(A)の極限粘度比[η](B)/[η](A)が0.8~1.4である。
(C1)JIS K 7210に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定した、メルトフローレート(MFR)が10~50g/10分である。
【請求項2】
さらに下記要件(C2)~(C4)を満たす請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
(C2)JIS K 7161に準拠して測定した、引張弾性率が800~900MPaである。
(C3)ASTM D 3763-02高速衝撃試験法に準拠して0℃環境下で測定した高速面衝撃全エネルギーが20J以上である。
(C4)射出成形で得られた試験片中心部に剛球を落下させ、落下前後で測定した試験片中心部のL/a/bにおけるL値変化ΔLが10以下である。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を含む成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐白化性および耐衝撃性を有するポリプロピレン系樹脂組成物、および該組成物を含む成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プロピレン樹脂は安価で、かつ機械特性、衛生適合性、および成形加工性に優れ、成形品外観も良好であることから、食品容器、飲料容器、医療容器などの幅広い分野における成形品製造に利用されている。
【0003】
飲料容器キャップ、液体食品容器キャップ等、スクリューキャップ、ヒンジ形状キャップ問わず、内容物を加熱充填する必要性のある容器キャップについては耐熱性に優れたポリプロピレン樹脂が多く用いられている。
【0004】
一方で、これらの容器キャップは、製造工程において金型から製品を取り出す際、急激な応力負荷が生じる場合がある。またヒンジ形状キャップにおいてはヒンジ部に繰返し屈曲による応力負荷が加わる事となる。従来のポリプロピレン樹脂組成物であると、この急激な応力負荷や、繰返し屈曲の応力負荷が起因となって、白化現象や変形、剥離等を生じやすく、キャップ自体の外観が損なわれ、またキャップの機能が低下する恐れがある。
【0005】
このような白化現象を代表とする製品不良を防止する技術として、特許文献1には、キャップ成形時における応力負荷により生じる白化現象を抑制できる飲料ボトル用キャップを提供することができるポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。特許文献2には、耐白化性および耐衝撃性に優れたポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-84393号公報
【特許文献2】特表2016-528356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
キャップの中でも、繰返し屈曲、湾曲するヒンジ部を有するキャップにおいては、このヒンジ部において特に白化現象が起こりやすい。
また、ポリプロピレン樹脂に対しては耐衝撃性を高めることが要求されるが、耐白化性と耐衝撃性とを両立させようとするとヒンジ部耐剥離性が悪化する傾向がある。一方、ヒンジ部耐剥離性を向上させるために引張弾性率を向上させ、耐白化性も向上させようとすると、耐衝撃性が低下する傾向がある。
【0008】
本発明の目的は、ボトルキャップ等の用途において、特にヒンジ部の耐白化性と耐衝撃性とを両立させることのできるポリプロピレン系樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、特定のプロピレン系共重合体を二種組み合わせて使用し、さらに造核剤を配合することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、例えば以下の[1]~[3]に関する。
[1] 下記要件(A1)および(A2)を満たすプロピレン系共重合体(A)80~90質量部、下記要件(B1)および(B2)を満たすプロピレン系共重合体(B)10~20質量部、および造核剤(D)0.01~0.6質量部を含み(ただし、プロピレン系共重合体(A)およびプロピレン系共重合体(B)の合計を100質量部とする)、下記要件(C1)を満たすポリプロピレン系樹脂組成物。
(A1)プロピレン系共重合体(A)のエチレンに由来する構成単位の含有量が1.0~3.0質量%である。
(A2)プロピレン系共重合体(A)の135℃デカリン中における極限粘度[η](A)が1.0~2.0dl/gである。
(B1)プロピレン系共重合体(B)のエチレンに由来する構成単位の含有量が20~40質量%である。
(B2)プロピレン系共重合体(B)の135℃デカリン中における極限粘度[η](B)が1.0~2.0dl/gでかつ、プロピレン系共重合体(B)/プロピレン系共重合体(A)の極限粘度比[η](B)/[η](A)が0.8~1.4である。
(C1)JIS K 7210に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定した、メルトフローレート(MFR)が10~50g/10分である。
[2] さらに下記要件(C2)~(C4)を満たす[1]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
(C2)JIS K 7161に準拠して測定した、引張弾性率が800~900MPaである。
(C3)ASTM D 3763-02高速衝撃試験法に準拠して0℃環境下で測定した高速面衝撃全エネルギーが20J以上である。
(C4)射出成形で得られた試験片中心部に剛球を落下させ、落下前後で測定した試験片中心部のL/a/bにおけるL値変化ΔLが10以下である。
[3] [1]または[2]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を含む成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ボトルキャップ等の用途において、特にヒンジ部の耐白化性と耐衝撃性とを両立させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[ポリプロピレン系樹脂組成物]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、後述のプロピレン系共重合体(A)、プロピレン系共重合体(B)および造核剤(D)を含み、後述する要件(C1)を満たす。
【0012】
プロピレン系共重合体(A)は、下記要件(A1)および(A2)を満たす。
(A1)プロピレン系共重合体(A)のエチレンに由来する構成単位の含有量が1.0~3.0質量%である。
【0013】
プロピレン系共重合体(A)は、プロピレンとエチレンとを共重合して得られる共重合体であり、エチレンに由来する構成単位の含有量が1.0~3.0質量%であり、好ましくは1.0~2.8質量%、より好ましくは1.0~2.6質量%である。プロピレン系共重合体(A)中のエチレンに由来する構成単位の含有量が1.0質量%より小さいと、耐剥離性や耐白化性が悪化する場合があり、3.0質量%より大きいと、ヒンジ部の変形が発生するおそれがある。
【0014】
プロピレン系共重合体(A)は、前記の条件を満たす限り、エチレン以外のコモノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。
(A2)プロピレン系共重合体(A)の135℃デカリン中における極限粘度[η](A)が1.0~2.0dl/gである。
【0015】
プロピレン系共重合体(A)は、135℃デカリン中における極限粘度[η](A)が1.0~2.0dl/gであり、好ましくは1.1~1.8dl/gであり、より好ましくは1.2~1.6dl/gである。極限粘度[η](A)が1.0dl/gより小さいと、ヒンジ部の変形を発生しやすくなる場合があり、2.0dl/gより大きいと、耐剥離性や耐白化性が悪化するおそれがある。
【0016】
プロピレン系共重合体(B)は、下記要件(B1)および(B2)を満たす。
(B1)プロピレン系共重合体(B)のエチレンに由来する構成単位の含有量が20~40質量%である。
【0017】
プロピレン系共重合体(B)は、プロピレンとエチレンとを共重合して得られる共重合体であり、エチレンに由来する構成単位の含有量が20~40質量%であり、好ましくは20~35質量%、より好ましくは20~30質量%である。プロピレン系共重合体(B)中のエチレンに由来する構成単位の含有量が20質量%より小さいと、耐衝撃性が低下しヒンジ部の変形が発生しやすくなる場合があり、40質量%より大きいと、耐剥離性と耐白化性が悪化するおそれがある。
【0018】
プロピレン系共重合体(B)は、前記の条件を満たす限り、エチレン以外のコモノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。
(B2)プロピレン系共重合体(B)の135℃デカリン中における極限粘度[η](B)が1.0~2.0dl/gでかつ、プロピレン系共重合体(B)とプロピレン系共重合体(A)との極限粘度比[η](B)/[η](A)が0.8~1.4である。
【0019】
プロピレン系共重合体(B)は、135℃デカリン中における極限粘度[η](B)が1.0~2.0dl/gであり、好ましくは1.2~1.9dl/gであり、より好ましくは1.4~1.8dl/gである。極限粘度[η](B)が1.0dl/gより小さいと、耐衝撃性が低下する場合があり、2.0dl/gより大きいと、耐剥離性と耐白化性が悪化するおそれがある。
【0020】
プロピレン系共重合体(B)とプロピレン系共重合体(A)との極限粘度比[η](B)/[η](A)は0.8~1.4であり、好ましくは0.9~1.4であり、より好ましくは1.0~1.4である。極限粘度比[η](B)/[η](A)が0.8より小さいと、耐剥離性と耐白化性が悪化する場合があり、1.4より大きいと、耐衝撃性が低下するおそれがある。
【0021】
プロピレン系共重合体(A)およびプロピレン系重合体(B)は、以下の方法で製造することができる。
本発明に用いるプロピレン系重合体(A)およびプロピレン系重合体(B)の製造方法としては、特に限定はないが、通常は、メタロセン化合物含有触媒存在下あるいは、チーグラーナッタ触媒存在下で、プロピレンおよびエチレンを共重合することにより得られる。
【0022】
なお、プロピレン系重合体(A)およびプロピレン系重合体(B)は、チーグラーナッタ触媒存在下で、プロピレンおよびエチレンを共重合することにより得られることが好ましい。分子量分布が広く成形性が良好な樹脂が得られ易い為である。
【0023】
(チーグラーナッタ触媒)
本発明に用いるプロピレン系重合体(A)およびプロピレン系重合体(B)は、高立体規則性チーグラーナッタ触媒を用いることにより製造することができる。前記高立体規則性チーグラーナッタ触媒としては、公知の種々の触媒が使用できる。たとえば、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含有する固体状チタン触媒成分と、(b)有機金属化合物触媒成分と、(c)シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する有機ケイ素化合物触媒成分とからなる触媒を用いることができる。
【0024】
上記固体状チタン触媒成分(a)は、マグネシウム化合物(a-1)、チタン化合物(a-2)および電子供与体(a-3)を接触させることにより調製することができる。マグネシウム化合物(a-1)としては、マグネシウム-炭素結合またはマグネシウム-水素結合を有するマグネシウム化合物のような還元能を有するマグネシウム化合物、およびハロゲン化マグネシウム、アルコキシマグネシウムハライド、アリロキシマグネシウムハライド、アルコキシマグネシウム、アリロキシマグネシウム、マグネシウムのカルボン酸塩等で代表される還元能を有さないマグネシウム化合物をあげることができる。
【0025】
固体状チタン触媒成分(a)の調製の際には、チタン化合物(a-2)としては、たとえば下記式(1)で示される4価のチタン化合物を用いるのが好ましい。
Ti(OR)g4-g …(1)
(式(1)中、Rは炭化水素基、Xはハロゲン原子、0≦g≦4である。)
【0026】
具体的にはTiCl4、TiBr4、TiI4などのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC25)Cl3、Ti(O-n-C49)Cl3、Ti(OC25)Br3、Ti(O-iso-C49)Br3などのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH32Cl2、Ti(OC252Cl2、Ti(O-n-C492Cl2、Ti(OC252Br2などのジハロゲン化ジアルコキシチタン;Ti(OCH33Cl、Ti(OC253Cl、Ti(O-n-C493Cl、Ti(OC253Brなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;Ti(OCH34、Ti(OC254、Ti(O-n-C494、Ti(O-iso-C494、Ti(O-2-エチルヘキシル)4などのテトラアルコキシチタン等があげられる。
【0027】
固体状チタン触媒成分(a)の調製の際に用いられる電子供与体(a-3)としては、たとえばアルコール、フェノール、ケトン、アルデヒド、有機酸または無機酸のエステル、有機酸ハライド、エーテル、酸アミド、酸無水物、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアネート、含窒素環状化合物、含酸素環状化合物などがあげられる。
【0028】
上記のようなマグネシウム化合物(a-1)、チタン化合物(a-2)および電子供与体(a-3)を接触させる際には、ケイ素、リン、アルミニウムなどの他の反応試剤を共存させてもよく、また担体を用いて担体担持型の固体状チタン触媒成分(a)を調製することもできる。
【0029】
固体状チタン触媒成分(a)は、公知の方法を含むあらゆる方法を採用して調製することができるが、下記に数例あげて簡単に述べる。
(1)電子供与体(液状化剤)(a-3)を含むマグネシウム化合物(a-1)の炭化水素溶液を、有機金属化合物と接触反応させて固体を析出させた後、または析出させながらチタン化合物(a-2)と接触反応させる方法。
(2)マグネシウム化合物(a-1)および電子供与体(a-3)からなる錯体を有機金属化合物と接触、反応させた後、チタン化合物(a-2)を接触反応させる方法。
(3)無機担体と有機マグネシウム化合物(a-1)との接触物に、チタン化合物(a-2)および電子供与体(a-3)を接触反応させる方法。この際予め接触物をハロゲン含有化合物および/または有機金属化合物と接触反応させてもよい。
(4)液状化剤および場合によっては炭化水素溶媒を含むマグネシウム化合物(a-1)溶液、電子供与体(a-3)および担体の混合物から、マグネシウム化合物(a-1)の担持された担体を得た後、次いでチタン化合物(a-2)を接触させる方法。
(5)マグネシウム化合物(a-1)、チタン化合物(a-2)、電子供与体(a-3)、場合によってはさらに炭化水素溶媒を含む溶液と、担体とを接触させる方法。
(6)液状の有機マグネシウム化合物(a-1)と、ハロゲン含有チタン化合物(a-2)とを接触させる方法。このとき電子供与体(a-3)を少なくとも1回は用いる。
(7)液状の有機マグネシウム化合物(a-1)とハロゲン含有化合物とを接触させた後、チタン化合物(a-2)を接触させる方法。この過程において電子供与体(a-3)を少なくとも1回は用いる。
(8)アルコキシ基含有マグネシウム化合物(a-1)と、ハロゲン含有チタン化合物(a-2)とを接触させる方法。このとき電子供与体(a-3)を少なくとも1回は用いる。
(9)アルコキシ基含有マグネシウム化合物(a-1)および電子供与体(a-3)からなる錯体と、チタン化合物(a-2)とを接触させる方法。
(10)アルコキシ基含有マグネシウム化合物(a-1)および電子供与体(a-3)からなる錯体を、有機金属化合物と接触させた後、チタン化合物(a-2)と接触反応させる方法。
(11)マグネシウム化合物(a-1)と、電子供与体(a-3)と、チタン化合物(a-2)とを任意の順序で接触、反応させる方法。この反応に先立って、各成分を、電子供与体(a-3)、有機金属化合物、ハロゲン含有ケイ素化合物などの反応助剤で予備処理してもよい。
(12)還元能を有さない液状のマグネシウム化合物(a-1)と、液状チタン化合物(a-2)とを、電子供与体(a-3)の存在下で反応させて固体状のマグネシウム・チタン複合体を析出させる方法。
(13)上記(12)で得られた反応生成物に、チタン化合物(a-2)をさらに反応させる方法。
(14)上記(11)または(12)で得られる反応生成物に、電子供与体(a-3)およびチタン化合物(a-2)をさらに反応させる方法。
(15)マグネシウム化合物(a-1)と、チタン化合物(a-2)と、電子供与体(a-3)とを粉砕して得られた固体状物を、ハロゲン、ハロゲン化合物または芳香族炭化水素のいずれかで処理する方法。なおこの方法においては、マグネシウム化合物(a-1)のみを、あるいはマグネシウム化合物(a-1)と電子供与体(a-3)とからなる錯化合物を、あるいはマグネシウム化合物(a-1)とチタン化合物(a-2)とを粉砕する工程を含んでもよい。また粉砕後に反応助剤で予備処理し、次いでハロゲンなどで処理してもよい。反応助剤としては、有機金属化合物あるいはハロゲン含有ケイ素化合物などが用いられる。
(16)マグネシウム化合物(a-1)を粉砕した後、チタン化合物(a-2)を接触させる方法。マグネシウム化合物(a-1)の粉砕時および/または接触時には、電子供与体(a-3)を必要に応じて反応助剤とともに用いる。
(17)上記(11)~(16)で得られる化合物をハロゲン、ハロゲン化合物または芳香族炭化水素で処理する方法。
(18)金属酸化物、有機マグネシウム(a-1)およびハロゲン含有化合物との接触反応物を、電子供与体(a-3)および好ましくはチタン化合物(a-2)と接触させる方法。
(19)有機酸のマグネシウム塩、アルコキシマグネシウム、アリーロキシマグネシウムなどのマグネシウム化合物(a-1)を、チタン化合物(a-2)、電子供与体(a-3)、必要に応じてハロゲン含有炭化水素と接触させる方法。
(20)マグネシウム化合物(a-1)とアルコキシチタンとを含む炭化水素溶液と、電子供与体(a-3)および必要に応じてチタン化合物(a-2)と接触させる方法。この際ハロゲン含有ケイ素化合物などのハロゲン含有化合物を共存させることが好ましい。
(21)還元能を有さない液状のマグネシウム化合物(a-1)と、有機金属化合物とを反応させて固体状のマグネシウム・金属(アルミニウム)複合体を析出させ、次いで電子供与体(a-3)およびチタン化合物(a-2)を反応させる方法。
【0030】
前記有機金属化合物触媒成分(b)としては、周期表第I族~第III族から選ばれる金属を含むものが好ましく、具体的には下記に示すような有機アルミニウム化合物、第I族金属とアルミニウムとの錯アルキル化合物、および第II族金属の有機金属化合物などをあげることができる。
【0031】
式 R1 mAl(OR2npq(式中、R1およびR2は炭素原子を通常1~15個、好ましくは1~4個含む炭化水素基であり、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。
Xはハロゲン原子を表し、0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で示される有機アルミニウム化合物(b-1)。
【0032】
式 M1AlR1 4(式中、M1はLi、NaまたはKであり、R1は前記と同じである。)で示される第I族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物(b-2)。
式 R122(式中、R1およびR2は上記と同様であり、M2はMg、ZnまたはCdである。)で示される第II族または第III族のジアルキル化合物(b-3)。
【0033】
前記有機アルミニウム化合物(b-1)としては、たとえばR1 mAl(OR23-m(R1およびR2は前記と同様であり、mは好ましくは1.5≦m≦3の数である。)で示される化合物、R1 mAlX3-m(R1は前記と同様であり、Xはハロゲンであり、mは好ましくは0<m<3である。)で示される化合物、R1 mAlH3-m(R1は前記と同様であり、mは好ましくは2≦m<3である。)で示される化合物、R1 mAl(OR2nq(R1およびR2は前記と同様であり、Xはハロゲン、0<m≦3、0≦n<3、0≦q<3であり、かつm+n+q=3である。)で示される化合物などをあげることができる。
【0034】
前記有機ケイ素化合物触媒成分(c)の具体的なものとしては、下記式(2)で表される有機ケイ素化合物などがあげられる。
SiR12 n(OR33-n…(2)
(式(2)中、nは0、1または2、R1はシクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる基、R2およびR3は炭化水素基を示す。)
【0035】
式(2)において、R1の具体的なものとしては、シクロペンチル基、2-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、2-エチルシクロペンチル基、3-プロピルシクロペンチル基、3-イソプロピルシクロペンチル基、3-ブチルシクロペンチル基、3-tert-ブチルシクロペンチル基、2,2-ジメチルシクロペンチル基、2,3-ジメチルシクロペンチル基、2,5-ジメチルシクロペンチル基、2,2,5-トリメチルシクロペンチル基、2,3,4,5-テトラメチルシクロペンチル基、2,2,5,5-テトラメチルシクロペンチル基、1-シクロペンチルプロピル基、1-メチル-1-シクロペンチルエチル基などのシクロペンチル基またはその誘導体;シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、2-メチル-1-シクロペンテニル基、2-メチル-3-シクロペンテニル基、3-メチル-3-シクロペンテニル基、2-エチル-3-シクロペンテニル基、2,2-ジメチル-3-シクロペンテニル基、2,5-ジメチル-3-シクロペンテニル基、2,3,4,5-テトラメチル-3-シクロペンテニル基、2,2,5,5-テトラメチル-3-シクロペンテニル基などのシクロペンテニル基またはその誘導体;1,3-シクロペンタジエニル基、2,4-シクロペンタジエニル基、1,4-シクロペンタジエニル基、2-メチル-1,3-シクロペンタジエニル基、2-メチル-2,4-シクロペンタジエニル基、3-メチル-2,4-シクロペンタジエニル基、2-エチル-2,4-シクロペンタジエニル基、2,2-ジメチル-2,4-シクロペンタジエニル基、2,3-ジメチル-2,4-シクロペンタジエニル基、2,5-ジメチル-2,4-シクロペンタジエニル基、2,3,4,5-テトラメチル-2,4-シクロペンタジエニル基などのシクロペンタジエニル基またはその誘導体;さらにシクロペンチル基、シクロペンテニル基またはシクロペンタジエニル基の誘導体としてインデニル基、2-メチルインデニル基、2-エチルインデニル基、2-インデニル基、1-メチル-2-インデニル基、1,3-ジメチル-2-インデニル基、インダニル基、2-メチルインダニル基、2-インダニル基、1,3-ジメチル-2-インダニル基、4,5,6,7-テトラヒドロインデニル基、4,5,6,7-テトラヒドロ-2-インデニル基、4,5,6,7-テトラヒドロ-1-メチル-2-インデニル基、4,5,6,7-テトラヒドロ-1,3-ジメチル-2-インデニル基、フルオレニル基等があげられる。
【0036】
また式(2)において、R2およびR3の炭化水素基の具体的なものとしては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基をあげることができる。R2またはR3が2個以上存在する場合、R2同士またはR3同士は同一でも異なっていてもよく、またR2とR3とは同一でも異なっていてもよい。また式(2)において、R1とR2とはアルキレン基等で架橋されていてもよい。
【0037】
式(2)で表される有機ケイ素化合物の中ではR1がシクロペンチル基であり、R2がアルキル基またはシクロペンチル基であり、R3がアルキル基、特にメチル基またはエチル基である有機ケイ素化合物が好ましい。
【0038】
式(2)で表される有機ケイ素化合物の具体的なものとしては、シクロペンチルトリメトキシシラン、2-メチルシクロペンチルトリメトキシシラン、2,3-ジメチルシクロペンチルトリメトキシシラン、2,5-ジメチルシクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロペンテニルトリメトキシシラン、3-シクロペンテニルトリメトキシシラン、2,4-シクロペンタジエニルトリメトキシシラン、インデニルトリメトキシシラン、フルオレニルトリメトキシシランなどのトリアルコキシシラン類;ジシクロペンチルジメトキシシラン、ビス(2-メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ビス(3-tert-ブチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ビス(2,3-ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ビス(2,5-ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロペンテニルジメトキシシラン、ジ(3-シクロペンテニル)ジメトキシシラン、ビス(2,5-ジメチル-3-シクロペンテニル)ジメトキシシラン、ジ-2,4-シクロペンタジエニルジメトキシシラン、ビス(2,5-ジメチル-2,4-シクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、ビス(1-メチル-1-シクロペンチルエチル)ジメトキシシラン、シクロペンチルシクロペンテニルジメトキシシラン、シクロペンチルシクロペンタジエニルジメトキシシラン、ジインデニルジメトキシシラン、ビス(1,3-ジメチル-2-インデニル)ジメトキシシラン、シクロペンタジエニルインデニルジメトキシシラン、ジフルオレニルジメトキシシラン、シクロペンチルフルオレニルジメトキシシラン、インデニルフルオレニルジメトキシシランなどのジアルコキシシラン類;トリシクロペンチルメトキシシラン、トリシクロペンテニルメトキシシラン、トリシクロペンタジエニルメトキシシラン、トリシクロペンチルエトキシシラン、ジシクロペンチルメチルメトキシシラン、ジシクロペンチルエチルメトキシシラン、ジシクロペンチルメチルエトキシシラン、シクロペンチルジメチルメトキシシラン、シクロペンチルジエチルメトキシシラン、シクロペンチルジメチルエトキシシラン、ビス(2,5-ジメチルシクロペンチル)シクロペンチルメトキシシラン、ジシクロペンチルシクロペンテニルメトキシシラン、ジシクロペンチルシクロペンタジエニルメトキシシラン、ジインデニルシクロペンチルメトキシシランなどのモノアルコキシシラン類;その他、エチレンビスシクロペンチルジメトキシシラン等をあげることができる。
【0039】
上記のような固体状チタン触媒成分(a)、有機金属化合物触媒成分(b)、および有機ケイ素化合物触媒成分(c)からなる触媒を用いてプロピレンの重合を行うに際して、予め予備重合を行うこともできる。予備重合は、固体状チタン触媒成分(a)、有機金属化合物触媒成分(b)、および必要に応じて有機ケイ素化合物触媒成分(c)の存在下に、オレフィンを重合させる。
【0040】
予備重合オレフィンとしては、炭素数2~8のα-オレフィンを用いることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-オクテンなどの直鎖状のオレフィン;3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンなどの分岐構造を有するオレフィン等を用いることができる。これらは共重合させてもよい。
【0041】
予備重合は、固体状チタン触媒成分(a)1g当り0.1~1000g程度、好ましくは0.3~500g程度の重合体が生成するように行うことが望ましい。予備重合量が多すぎると、本重合における(共)重合体の生成効率が低下することがある。予備重合では、本重合における系内の触媒濃度よりもかなり高濃度で触媒を用いることができる。上記のような触媒を用いてプロピレンを連続多段重合させる際には、本発明の目的を損なわない範囲であれば、いずれかの段であるいは全ての段でプロピレンとエチレンとを共重合させてもよい。
【0042】
連続多段重合する場合、各段においてはプロピレンをホモ重合させるか、あるいはプロピレンとエチレンとを共重合させてポリプロピレンを製造する。本重合の際には、固体状チタン触媒成分(a)(または予備重合触媒)を重合容積1L当りチタン原子に換算して約0.0001~50ミリモル、好ましくは約0.001~10ミリモルの量で用いることが望ましい。有機金属化合物触媒成分(b)は、重合系中のチタン原子1モルに対する金属原子量で約1~2000モル、好ましくは約2~500モル程度の量で用いることが望ましい。有機ケイ素化合物触媒成分(c)は、有機金属化合物触媒成分(b)の金属原子1モル当り約0.001~50モル、好ましくは約0.01~20モル程度の量で用いることが望ましい。
【0043】
(プロピレン系重合体(A)の製法)
本発明に用いるプロピレン系重合体(A)は、前述のメタロセン化合物含有触媒存在下あるいは、チーグラーナッタ触媒存在下でプロピレンおよびエチレンを共重合することにより得られる。
【0044】
重合は、気相重合法あるいは溶液重合法、懸濁重合法などの液相重合法いずれで行ってもよく、各段を別々の方法で行ってもよい。また連続式、半連続式のいずれの方式で行ってもよく、各段を複数の重合器たとえば2~10器の重合器に分けて行ってもよい。工業的には連続式の方法で重合するのが最も好ましく、この場合2段目以降の重合を2器以上の重合器に分けて行うのが好ましく、これによりゲルと呼ばれる、耐衝撃性と透明性に好ましくないマイナス効果をもたらす複生成成分である高分子量成分の発生を抑制することができる。
【0045】
重合媒体として、不活性炭化水素類を用いてもよく、また液状のプロピレンを重合媒体としてもよい。また各段の重合条件は、重合温度が約-50~+200℃、好ましくは約20~100℃の範囲で、また重合圧力が常圧~10MPa(ゲージ圧)、好ましくは約0.2~5MPa(ゲージ圧)の範囲内で適宜選択される。
【0046】
プロピレン系重合体(A)を製造する場合は、以下に記載する[工程1]を実施する。
[工程1]は、重合温度0~100℃、重合圧力常圧~5MPaゲージ圧で、プロピレンと必要量のエチレンを共重合させる。[工程1]では、プロピレンに対してエチレンのフィード量を少量とすることによって、[工程1]で製造されるプロピレン系共重合体が要件(A1)を満たすようにする。又、必要に応じて水素ガスに代表される連鎖移動剤も導入し、[工程1]で生成されるプロピレン系共重合体の極限粘度[η]を調整して、[工程1]で製造されるプロピレン系共重合体が要件(A2)を満たすようにする。
【0047】
要件(A1)は、[工程1]を行う際の、プロピレンフィード量とエチレンフィード量を調整することにより調整が可能である。つまり、プロピレンフィード量に対し、エチレンフィード量を多くする事により、ポリプロピレン共重合体(A)中のエチレンに由来する構成単位の質量を多くすることが出来る。また、プロピレンフィード量に対し、エチレンフィード量を少なくする事により、ポリプロピレン共重合体(A)中のエチレンに由来する構成単位の質量を少なくすることが出来る。
【0048】
要件(A2)は[工程1]を行う際の、連鎖移動剤として用いる水素ガスのフィード量で調整が可能である。つまり、プロピレンのフィード量またはプロピレンとエチレンをフィードする場合はプロピレンとエチレンのフィード量に対して、水素ガスのフィード量を多くすることにより極限粘度[η]を小さくすることができ、プロピレンのフィード量またはプロピレンとエチレンをフィードする場合はプロピレンとエチレンのフィード量に対して、水素ガスのフィード量を少なくすることにより極限粘度[η]を大きくすることができる。
重合終了後、必要に応じて公知の触媒失活処理工程、触媒残渣除去工程、乾燥工程等の後処理工程を行うことにより、プロピレン系共重合体(A)がパウダーとして得られる。
【0049】
(プロピレン系重合体(B)の製法)
本発明に用いるプロピレン系重合体(B)は、前述のメタロセン化合物含有触媒存在下あるいは、チーグラーナッタ触媒存在下でプロピレンおよびエチレンを共重合することにより得られる。
【0050】
重合は、気相重合法あるいは溶液重合法、懸濁重合法などの液相重合法いずれで行ってもよく、各段を別々の方法で行ってもよい。また連続式、半連続式のいずれの方式で行ってもよく、各段を複数の重合器たとえば2~10器の重合器に分けて行ってもよい。工業的には連続式の方法で重合するのが最も好ましく、この場合2段目以降の重合を2器以上の重合器に分けて行うのが好ましく、これによりゲルと呼ばれる、耐衝撃性と透明性に好ましくないマイナス効果をもたらす複生成成分である高分子量成分の発生を抑制することができる。
【0051】
重合媒体として、不活性炭化水素類を用いてもよく、また液状のプロピレンを重合媒体としてもよい。また各段の重合条件は、重合温度が約-50~+200℃、好ましくは約20~100℃の範囲で、また重合圧力が常圧~10MPa(ゲージ圧)、好ましくは約0.2~5MPa(ゲージ圧)の範囲内で適宜選択される。
【0052】
プロピレン系重合体(B)を製造する場合は、以下に記載する[工程2]を実施する。
[工程2]は、重合温度0~100℃、重合圧力常圧~5MPaゲージ圧で、プロピレンと必要量のエチレンを共重合させる。[工程2]では、プロピレンに対してエチレンのフィード量を少量とすることによって、[工程2]で製造されるプロピレン系共重合体が要件(B1)を満たすようにする。又、必要に応じて水素ガスに代表される連鎖移動剤も導入し、[工程2]で生成されるプロピレン系共重合体の極限粘度[η]を調整して、[工程2]で製造されるプロピレン系共重合体が要件(B2)を満たすようにする。
【0053】
要件(B1)は、[工程2]を行う際の、プロピレンフィード量とエチレンフィード量を調整することにより調整が可能である。つまり、プロピレンフィード量に対し、エチレンフィード量を多くする事により、ポリプロピレン共重合体(B)中のエチレンに由来する構成単位の質量を多くすることが出来る。また、プロピレンフィード量に対し、エチレンフィード量を少なくする事により、ポリプロピレン共重合体(B)中のエチレンに由来する構成単位の質量を少なくすることが出来る。
【0054】
要件(B2)は[工程2]を行う際の、連鎖移動剤として用いる水素ガスのフィード量で調整が可能である。つまり、プロピレンのフィード量またはプロピレンとエチレンをフィードする場合はプロピレンとエチレンのフィード量に対して、水素ガスのフィード量を多くすることにより極限粘度[η]を小さくすることができ、プロピレンのフィード量またはプロピレンとエチレンをフィードする場合はプロピレンとエチレンのフィード量に対して、水素ガスのフィード量を少なくすることにより極限粘度[η]を大きくすることができる。
重合終了後、必要に応じて公知の触媒失活処理工程、触媒残渣除去工程、乾燥工程等の後処理工程を行うことにより、プロピレン系共重合体(B)がパウダーとして得られる。
【0055】
またそれとは別に、2つ以上の重合器を直列につなげた反応装置で、二つの工程([工程1]および[工程2])を連続的に実施することによってプロピレン系重合体を得てもかまわない。その場合[工程1]にて得られるプロピレン系重合体はプロピレン系重合体(A)であり、[工程2]にて得られるプロピレン系重合体はプロピレン系重合体(B)である。
【0056】
連続で二つの工程([工程1]および[工程2])を行う場合、二つ以上の反応機を直列に連結した重合装置を用いそれぞれの重合装置で[工程1]を行うことができ、また二つ以上の反応機を直列に連結した重合装置を用いそれぞれの重合装置で[工程2]を行うことができる。
【0057】
要件(A1)、(A2)、(B1)および(B2)は以下のようにして調整することができる。
要件(A1)および(B1)は、[工程1]および[工程2]を行う際の、プロピレンフィード量とエチレンフィード量を調整することにより調整が可能である。つまり、プロピレンフィード量に対し、エチレンフィード量を多くする事により、前記プロピレン系共重合体中のエチレンに由来する構成単位の質量を多くすることが出来る。また、プロピレンフィード量に対し、エチレンフィード量を少なくする事により、前記プロピレン系共重合体中のエチレンに由来する構成単位の質量を少なくすることが出来る。
【0058】
要件(A2)および(B2)は、[工程1]および[工程2]を行う際のプロピレンのフィード量またはプロピレンとエチレンをフィードする場合はプロピレンとエチレンのフィード量に対し、連鎖移動剤としての水素ガスのフィード量の調整をする事により調整が可能である。プロピレンのフィード量またはプロピレンとエチレンをフィードする場合はプロピレンとエチレンのフィード量に対し水素フィード量を多くすることにより極限粘度[η]を低くすることが出来、プロピレンのフィード量またはプロピレンとエチレンをフィードする場合はプロピレンとエチレンのフィード量に対し水素フィード量を少なくすることにより極限粘度[η]を高くすることが出来る。
【0059】
プロピレン共重合体(A)およびプロピレン系共重合体(B)はそれぞれ市販されている既存製品を使用することもできる。
連続で二つの工程([工程1]および[工程2])を行う場合、ポリプロピレン共重合体(A)とポリプロピレン共重合体(B)の比率は、上記[工程1]および[工程2]の重合時間を調整することにより調製することが出来る。つまり、上記[工程1]の重合時間を[工程2]の重合時間に比較して長くする事で、プロピレン共重合体(A)の割合を多く、プロピレン共重合体(B)の割合を少なくする事が出来る。また、[工程2]の重合時間を[工程1]の重合時間に比較して長くする事で、プロピレン共重合体(A)の割合を少なく、プロピレン共重合体(B)の割合を多くする事が出来る。
【0060】
造核剤(D)としては、特に制限はなく、パラ第三ブチル安息香酸アルミニウム塩、安息香酸ナトリウム等のカルボン酸金属塩系造核剤、ジベンジリデンソルビトール、ジ-アルキル-ベンジリデンソルビトール等のソルビトール系造核剤、リン酸エステルナトリウム塩等のリン酸エステル金属塩造核剤などを挙げることができる。これらの中でも、リン酸エステル金属塩造核剤であるアデカスタブNA11((株)ADEKA製)、カルボン酸金属塩系造核剤であるAL-PTBBA(大日本インキ化学工業(株)製)等を好適に用いることができる。
【0061】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、プロピレン系共重合体(A)、プロピレン系共重合体(B)および造核剤(D)の含有割合は、プロピレン系共重合体(A)およびプロピレン系共重合体(B)の合計を100質量部として、プロピレン系共重合体(A)80~90質量部、プロピレン系共重合体(B)10~20質量部、造核剤(D)0.01~0.6質量部である。プロピレン系共重合体(A)の含有割合は、好ましくは81~89質量部、より好ましくは82~88質量部である。プロピレン系共重合体(B)の含有割合は、好ましくは11~19質量部、より好ましくは12~18質量部である。造核剤(D)の含有割合は、好ましくは0.03~0.3質量部、より好ましくは0.05~0.2質量部である。
【0062】
プロピレン系共重合体(A)、プロピレン系共重合体(B)および造核剤(D)の含有割合が前記範囲であると、耐白化性と耐衝撃性とが両立したポリプロピレン系樹脂組成物が得られる。
【0063】
ポリプロピレン系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じてさらに、顔料、ビタミン類、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、石油樹脂、ミネラルオイル等の添加物を含んでいてもよい。
【0064】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は下記要件(C1)を満たす。
(C1)JIS K 7210に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が10~50g/10分である。
【0065】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、JIS K 7210に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が10~50g/10分であり、好ましくは15~50g/10分、より好ましくは20~50g/10分である。
【0066】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、前記メルトフローレートが10より小さいと、ヒンジ部における射出時の配向が強くなる事により、剥離や白化を発生しやすくなる。前記メルトフローレートが50より大きいと、ヒンジ部における射出時の配向が弱くなる事により、変形を発生しやすくなる。
【0067】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系共重合体(A)、プロピレン系共重合体(B)および造核剤(D)を前記の含有割合で含み、前記の要件(C1)を満たすことにより、ボトルキャップ等の用途において、ヒンジ部の耐白化性と耐衝撃性とを両立させることができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推測される。
【0068】
プロピレン系共重合体(A)とプロピレン系共重合体(B)との極限粘度の差を小さくすることで、分散粒径が適切にコントロールされ、ヒンジ部の折り曲げや衝撃による二成分界面の剥離を抑制することができ、その結果、耐白化性および耐衝撃性が向上する。
【0069】
プロピレン系共重合体(A)については、適切な比率のエチレンに由来する構成単位を含むことで、プロピレン系共重合体(B)との界面強度を向上させ、かつ、柔軟性を得ることができ、その結果、キャップに求められるボトル部との密着性とキャップ閉時の内容物シール性とを満足させる。
【0070】
上記を満足すると、材料が柔軟となりすぎる為、開閉トルクが弱くなる弊害が発生するが、造核剤の添加により製品表面の配向層を強くすることで、引張弾性率を向上させ、開閉トルクの適正化を達成する。
【0071】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、さらに下記要件(C2)~(C4)を満たすことが好ましい。
(C2)JIS K 7161に準拠して測定した、引張弾性率が800~900MPaである。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、JIS K 7161に準拠して測定した引張弾性率が800~900MPaであることが好ましい。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、前記引張弾性率が800MPaより小さいと、変形を発生しやすくなり、900MPaより大きいと、剥離や白化を発生しやすくなる。
【0072】
(C3)ASTM D 3763-02高速衝撃試験法に準拠して0℃環境下で測定した高速面衝撃全エネルギーが20J以上である。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ASTM D 3763-02高速衝撃試験法に準拠して0℃環境下で測定した高速面衝撃全エネルギーが20J以上であることが好ましい。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、前記高速面衝撃全エネルギーが20Jより小さいと、耐衝撃性が不足する傾向にある。
【0073】
(C4)射出成形で得られた試験片中心部に剛球を落下させ、落下前後で測定した試験片中心部のL/a/bにおけるL値変化がΔ10以下である。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、射出成形で得られた試験片中心部に剛球を落下させ、落下前後で測定した試験片中心部のL/a/bにおけるL値変化ΔLが10以下であることが好ましい。
【0074】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、前記ΔLが10より大きいと、耐白化性が不足する傾向にある。
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法としては、特に限定はないが、例えばプロピレン系共重合体(A)、プロピレン系共重合体(B)および造核剤(D)、さらに必要に応じて用いる各種成分を、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、タンブラーミキサー等の混合機でブレンドした後、一軸乃至二軸の押出機を用いて混錬し、ペレット状として得ることができる。
【0075】
前記要件(C1)~(C4) を満たす組成物は、後述の実施例に記載した方法を参照して製造することができる。
【0076】
[成形体]
本発明の成形体は前記ポリプロピレン系樹脂組成物を含む。前記ポリプロピレン系樹脂組成物を各種成形法により成形することにより、本発明の成形体を得ることができる。前記ポリプロピレン系樹脂組成物は、前述のとおり優れた耐白化性および耐衝撃性を有することから様々な成形体に利用することができ、特にヒンジ部を有するボトル用キャップに好適に利用することができる。
【0077】
ヒンジ部を有するボトル用キャップは、繰返し屈曲、湾曲するヒンジ部において特に白化現象が起こりやすいが、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を含むボトル用キャップは、ヒンジ部においても白化現象が起こりにくく、さらに耐衝撃性が高い。
【0078】
ボトル用キャップの成形方法としては、特に限定されないが、通常は射出成形や圧縮成形が採用される。
【実施例0079】
次に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例における物性の測定方法は以下の通りである。
【0080】
(エチレンに由来する構成単位の含有量)
プロピレン系重合体(A)およびプロピレン系重合体(B)のエチレンに由来する構成単位の重量は13CNMRの測定に基づき下記のようにして測定・算出し決定した。
13C-NMR測定条件
測定装置:日本電子製LA400型核磁気共鳴装置
測定モード:BCM(Bilevel Complete decoupling)
観測周波数:100.4MHz
観測範囲:17006.8Hz
パルス幅:C核45°(7.8μ秒)
パルス繰り返し時間:5秒
試料管:5mmφ
試料管回転数:12Hz
積算回数:20000回
測定温度:125℃
溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン:0.35ml/重ベンゼン:0.2ml
試料量:約40mg
【0081】
測定で得られたスペクトルより、下記文献(1)に準じて、モノマー連鎖分布(トリアッド(3連子)分布)の比率を決定し、プロピレン系重合体のエチレンに由来する構成単位のモル分率(mol%)(以下E(mol%)と記す)およびプロピレンに由来する構成単位のモル分率(mol%)(以下P(mol%)と記す)を算出した。求められたE(mol%)およびP(mol%)から下記(式1)に従い重量%に換算しプロピレン系重合体のDsol中のエチレンに由来する構成単位の重量(重量%)(以下E(wt%)と記す)を算出した。
【0082】
文献(1):Kakugo,M.; Naito,Y.; Mizunuma,K.; Miyatake,T., Carbon-13 NMR determin
ation of monomer sequence distribution in ethylene-propylene copolymers prepared
with delta-titanium trichloride-diethylaluminum chloride. Macromolecules 1982,
15, (4), 1150-1152
E(wt%)=E(mol%)×28×100/[P(mol%)×42+E(mol%)×28](式1)
【0083】
(極限粘度[η])
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた。
[η]= lim(ηsp/C) (C→0)。
【0084】
(メルトフローレート(MFR))
メルトフローレートは、JIS K 7210に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定した。
【0085】
(引張弾性率)
引張弾性率は、JIS K 7161に準拠して、タイプA試験片を用いて測定した。
【0086】
(高速面衝撃全エネルギー)
ポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形し、長さ129mm、幅119mm、厚さ2mmの試験片を作製した。高速面衝撃全エネルギーは、この試験片を用いて、ASTM D 3763-02高速衝撃試験法に準拠して0℃環境下で測定した。
【0087】
(耐衝撃白化性)
前記高速面衝撃全エネルギーの測定で使用した試験片と同じ試験片を用いて、この試験片の中心部に、重さ95.1g、直径28.6mmの剛球を高さ20cmから落下させた。落下の前後での試験片中心部のL/a/bにおけるL値を測定し、落下後のL値の、落下前のL値からの変化をL値変化ΔLとして求めた。
【0088】
(ヒンジ部の性能)
ポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形し、長さ0.4mm(試験片からのテーパー部含めて3mm)、厚み0.2mm、幅14mmのヒンジ部を備えた、長さ80mm、幅20mm、厚さ2mmの試験片を作製した。この試験片をヒンジ部において90°折り曲げる操作を10万回繰り返す試験を行った。ヒンジ部の変形性、耐剥離性および白化性を下記の基準で評価した。
【0089】
・変形性
試験後のヒンジ部の寸法を測定し、ヒンジ部の元の寸法からの変化を求め、ヒンジ部の変形性を下記の基準で評価した。
〇:ヒンジ部の元の寸法からの変化が0.05mm以下であった。
×:ヒンジ部の元の寸法からの変化が0.05mmより大きかった。
【0090】
・耐剥離性
試験後のヒンジ部の状態を目視にて観察し、ヒンジ部の耐剥離性を下記の基準で評価した。
〇:ヒンジ部の表面に剥離による形態変化がなかった。
×:ヒンジ部の表面に剥離による形態変化があった。
【0091】
・白化性
試験後のヒンジ部の状態を目視にて観察し、ヒンジ部の白化性を下記の基準で評価した。
〇:ヒンジ部に白化が認められなかった。
×:ヒンジ部に白化が認められた。
【0092】
実施例および比較例で使用した重合体は下記のとおりである。
[製造例1]
(プロピレン系共重合体(A-1)の製造)
(1)固体触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2-エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
【0093】
このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、-20℃に保持した四塩化チタン200ml中に、この均一溶液の75mlを1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、これより2時間同温度にて攪拌保持した。
【0094】
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間、加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて溶液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
【0095】
ここで、前記遊離チタン化合物の検出は次の方法で確認した。予め窒素置換した100mlの枝付きシュレンクに上記固体触媒成分の上澄み液10mlを注射器で採取し装入した。次に、窒素気流にて溶媒ヘキサンを乾燥し、さらに30分間真空乾燥した。これに、イオン交換水40ml、50容量%硫酸10mlを装入し30分間攪拌した。この水溶液をろ紙を通して100mlメスフラスコに移し、続いて鉄(II)イオンのマスキング剤としてconc.H3PO4 1mlとチタンの発色試薬として3%H22水溶液 5mlを加え、さらにイオン交換水で100mlにメスアップした。このメスフラスコを振り混ぜ、20分後にUVを用い420nmの吸光度を観測し遊離チタンの検出を行った。この吸収が観測されなくなるまで遊離チタンの洗浄除去および遊離チタンの検出を行った。
【0096】
上記のように調製された固体状チタン触媒成分(A)は、デカンスラリーとして保存したが、この内の一部を、触媒組成を調べる目的で乾燥した。このようにして得られた固体状チタン触媒成分(A)の組成は、チタン2.3質量%、塩素61質量%、マグネシウム19質量%、DIBP 12.5質量%であった。
【0097】
(2)予備重合触媒成分の調製
内容積500mlの攪拌機付きの三つ口フラスコを窒素ガスで置換した後、脱水処理したヘプタンを400ml、トリエチルアルミニウム19.2mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン3.8mmol、上記固体状チタン触媒成分(A)4gを加えた。内温を20℃に保持し、攪拌しながらプロピレンを導入した。1時間後、攪拌を停止し結果的に固体状チタン触媒成分(A)1g当たり2gのプロピレンが重合した予備重合触媒成分(B)を得た。
【0098】
重合[工程1]
内容積10lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6l、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.80MPa-G装入し、続いて攪拌しながらプロピレンおよびエチレンを導入した。なお、導入量は、重合槽内の気相部のエチレン濃度が0.80mol%となるように調整した。
【0099】
内温80℃、全圧0.8MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mlを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合を行った。
【0100】
所定時間経過したところで50mlのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6lで固体部を2回洗浄した。得られたプロピレン/エチレン共重合体を真空乾燥してプロピレン系共重合体(A-1)を得た。
得られたプロピレン系共重合体(A-1)のエチレンに由来する構成単位の含有量および極限粘度[η]を表1に示す。
【0101】
[製造例2]
(プロピレン系共重合体(A-2)の製造)
プロピレン系共重合体(A-1)の製造において、重合[工程1]の水素の装入量を0.75MPa-Gとし、重合槽内の気相部のエチレン濃度が0.55mol%となるように調整した以外はプロピレン系共重合体(A-1)の製造と同様にして重合を行い、プロピレン系共重合体(A-2)を得た。
得られたプロピレン系共重合体(A-2)のエチレンに由来する構成単位の含有量および極限粘度[η]を表1に示す。
【0102】
[製造例3]
(重合体(a-1)の製造)
プロピレン系共重合体(A-1)の製造において、重合[工程1]の水素の装入量を0.75MPa-Gとし、重合槽内の気相部のエチレン濃度が1.45mol%となるように調整した以外はプロピレン系共重合体(A-1)の製造と同様にして重合を行い、重合体(a-1)を得た。
得られた重合体(a-1)のエチレンに由来する構成単位の含有量および極限粘度[η]を表1に示す。
【0103】
[製造例4]
(重合体(a-2)の製造)
プロピレン系共重合体(A-1)の製造において、重合[工程1]の重合槽内の気相部のエチレン濃度が1.40mol%となるように調整した以外はプロピレン系共重合体(A-1)の製造と同様にして重合を行い、重合体(a-2)を得た。
得られた重合体(a-2)のエチレンに由来する構成単位の含有量および極限粘度[η]を表1に示す。
【0104】
[製造例5]
(重合体(a-3)の製造)
プロピレン系共重合体(A-1)の製造において、重合[工程1]の重合槽内にエチレンを導入しなかった以外はプロピレン系共重合体(A-1)の製造と同様にして重合を行い、重合体(a-3)を得た。
得られた重合体(a-3)のエチレンに由来する構成単位の含有量および極限粘度[η]を表1に示す。
【0105】
[製造例6]
(プロピレン系共重合体(B-1)の製造)
重合[工程2]
内容積10lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6l、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mlを加え、水素を1.70MPa-G装入し、続いてプロピレン/エチレン:(4.0l/min)/(2.32/min)の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.30MPa-G(導入ガス量により変動)で60分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
【0106】
所定時間経過したところで50mlのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6lで固体部を2回洗浄した。得られたプロピレン/エチレン共重合体を真空乾燥してプロピレン系共重合体(B-1)を得た。
得られたプロピレン系共重合体(B-1)のエチレンに由来する構成単位の含有量および極限粘度[η]を表1に示す。
【0107】
[製造例7]
(プロピレン系共重合体(B-2)の製造)
プロピレン系共重合体(B-1)の製造において、水素挿入後にプロピレン/エチレン:(4.0l/min)/(1.20/min)の混合ガスを導入した以外はプロピレン系共重合体(B-1)の製造と同様にして重合を行い、プロピレン系共重合体(B-2)を得た。
得られたプロピレン系共重合体(B-2)のエチレンに由来する構成単位の含有量および極限粘度[η]を表1に示す。
【0108】
[製造例8]
(重合体(b-1)の製造)
プロピレン系共重合体(B-1)の製造において、水素を1.60MPa-G装入し、プロピレン/エチレン:(4.0l/min)/(0.72/min)の混合ガスを導入した以外はプロピレン系共重合体(B-1)の製造と同様にして重合を行い、重合体(b-1)を得た。
得られた重合体(b-1)のエチレンに由来する構成単位の含有量および極限粘度[η]を表1に示す。
【0109】
[製造例9]
(重合体(b-2)の製造)
プロピレン系共重合体(B-1)の製造において、水素を0.20MPa-G装入し、プロピレン/エチレン:(4.0l/min)/(2.49/min)の混合ガスを導入した以外はプロピレン系共重合体(B-1)の製造と同様にして重合を行い、重合体(b-2)を得た。
得られた重合体(b-2)のエチレンに由来する構成単位の含有量および極限粘度[η]を表1に示す。
【0110】
重合体(b-3):三井化学株式会社製ハイゼックス 2200J(MFR:5.2g/10分、密度:964kg/m3
重合体(b-4):株式会社プライムポリマー製エボリューS P1540(MFR:3.8g/10分、密度:913kg/m3
重合体(b-5):株式会社プライムポリマー製エボリューP SP00206(MFR:18.0g/10分、密度:900kg/m3
【0111】
[実施例1]
プロピレン系共重合体(A-1)、プロピレン系共重合体(B-1)および造核剤(D)としてアデカスタブNA11を表1に示した配合量にて混合し、押出機で溶融混練してポリプロピレン系樹脂組成物を調製した。
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートおよび引張弾性率を上記方法により求めた。結果を表1に示す。
さらに、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、高速面衝撃全エネルギー、L値変化ΔLおよびヒンジ部の性能を上記方法により求めた。結果を表1に示す。
【0112】
[実施例2]
プロピレン系共重合体(A-2)、プロピレン系共重合体(B-2)および造核剤(D)としてAL-PTBBAを表1に示した配合量にて混合し、押出機で溶融混練してポリプロピレン系樹脂組成物を調製した。
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートおよび引張弾性率を上記方法により求めた。結果を表1に示す。
さらに、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、高速面衝撃全エネルギー、L値変化ΔLおよびヒンジ部の性能を上記方法により求めた。結果を表1に示す。
【0113】
[比較例1]
プロピレン系共重合体(A-1)およびプロピレン系共重合体(B-1)を表1に示した配合量にて混合し、押出機で溶融混練してポリプロピレン系樹脂組成物を調製した。
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートおよび引張弾性率を上記方法により求めた。結果を表1に示す。
さらに、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、高速面衝撃全エネルギー、L値変化ΔLおよびヒンジ部の性能を上記方法により求めた。結果を表1に示す。
【0114】
[比較例2]
プロピレン系共重合体(a-1)、プロピレン系共重合体(b-1)および造核剤(D)としてアデカスタブNA21を表1に示した配合量にて混合し、押出機で溶融混練してポリプロピレン系樹脂組成物を調製した。
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートおよび引張弾性率を上記方法により求めた。結果を表1に示す。
さらに、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、高速面衝撃全エネルギー、L値変化ΔLおよびヒンジ部の性能を上記方法により求めた。結果を表1に示す。
【0115】
[比較例3]
プロピレン系共重合体(a-1)、重合体(b-3)および造核剤(D)としてアデカスタブNA11を表1に示した配合量にて混合し、押出機で溶融混練してポリプロピレン系樹脂組成物を調製した。
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートおよび引張弾性率を上記方法により求めた。結果を表1に示す。
さらに、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、高速面衝撃全エネルギー、L値変化ΔLおよびヒンジ部の性能を上記方法により求めた。結果を表1に示す。
【0116】
[比較例4]
プロピレン系共重合体(a-2)、重合体(b-4)および造核剤(D)としてアデカスタブNA21を表1に示した配合量にて混合し、押出機で溶融混練してポリプロピレン系樹脂組成物を調製した。
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートおよび引張弾性率を上記方法により求めた。結果を表1に示す。
さらに、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、高速面衝撃全エネルギー、L値変化ΔLおよびヒンジ部の性能を上記方法により求めた。結果を表1に示す。
【0117】
[比較例5]
プロピレン系共重合体(a-3)、プロピレン系共重合体(b-2)および造核剤(D)としてAL-PTBBAを表1に示した配合量にて混合し、押出機で溶融混練してポリプロピレン系樹脂組成物を調製した。
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートおよび引張弾性率を上記方法により求めた。結果を表1に示す。
さらに、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、高速面衝撃全エネルギー、L値変化ΔLおよびヒンジ部の性能を上記方法により求めた。結果を表1に示す。
【0118】
[比較例6]
プロピレン系共重合体(a-2)、重合体(b-5)および造核剤(D)としてアデカスタブNA21を表1に示した配合量にて混合し、押出機で溶融混練してポリプロピレン系樹脂組成物を調製した。
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートおよび引張弾性率を上記方法により求めた。結果を表1に示す。
さらに、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、高速面衝撃全エネルギー、L値変化ΔLおよびヒンジ部の性能を上記方法により求めた。結果を表1に示す。
【0119】
[比較例7]
プロピレン系共重合体(a-2)および造核剤(D)としてアデカスタブNA21を表1に示した配合量にて混合し、押出機で溶融混練してポリプロピレン系樹脂組成物を調製した。
【0120】
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートおよび引張弾性率を上記方法により求めた。結果を表1に示す。
さらに、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、高速面衝撃全エネルギー、L値変化ΔLおよびヒンジ部の性能を上記方法により求めた。結果を表1に示す。
【0121】
【表1】