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特開2022-143964電力変換装置および電力変換装置における過電流発生時の素子保護方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143964
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力変換装置における過電流発生時の素子保護方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/00 20070101AFI20220926BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20220926BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220926BHJP
【FI】
H02M1/00 H
H02M1/08 A
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044773
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】大橋 俊介
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM11
5H770GA04
5H770HA02Y
5H770KA01Y
5H770LA02Y
5H770LB07
(57)【要約】
【課題】部品点数の増加を抑制しつつ、ゲートロック処理の解除中に過電流が発生した場合でも、電力変換部の出力側に設けられた素子を保護可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】この電力変換装置100は、電力変換用素子1aを含む電力変換部1と、電力変換部1の出力電流を検出する検出部2と、電力変換用素子1aのゲート信号を制御するマイコン3とを備える。マイコン3は、出力電流と予め設定された過電流閾値とを比較するコンパレータ33と、電力変換用素子1aのゲート信号の波形の制御を行うとともに、検出部2が検出した出力電流に基づく電流検出値と過電流閾値とに基づいて、過電流の発生の有無を判定するCPU32と、電力変換用素子1aへのゲート信号の出力を停止するゲートロック処理を行うPOE35とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換用素子を含む電力変換部と、
前記電力変換部の出力電流を検出する検出部と、
前記電力変換用素子のゲート信号を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記出力電流と予め設定された過電流閾値とを比較する比較器と、
前記電力変換用素子のゲート信号の波形の制御を行うとともに、前記検出部が検出した前記出力電流に基づく電流検出値と前記過電流閾値とに基づいて、過電流の発生の有無を判定する制御部と、
前記電力変換用素子へのゲート信号の出力を停止するゲートロック処理を行うロック処理部と、を含む、電力変換装置。
【請求項2】
前記ロック処理部は、前記比較器における前記出力電流に基づく前記電流検出値と前記過電流閾値との比較により過電流の発生が検出された場合において、ゲート信号の出力を停止する第1ゲートロック処理と、前記制御部の判定に基づいて、ゲート信号の出力を停止する第2ゲートロック処理とを行うように構成されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記ロック処理部は、
前記比較器が、前記電流検出値と前記過電流閾値とを比較して、前記電流検出値が前記過電流閾値以上となった場合に、前記第1ゲートロック処理を行い、
前記第1ゲートロック処理が行われた後において、前記制御部により過電流が発生していないと判定された場合には、前記第2ゲートロック処理を行い、
前記制御部の判定に基づく前記第2ゲートロック処理を行った状態で、前記比較器による比較に基づく前記第1ゲートロック処理を解除するように構成されている、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記制御部の判定に基づく前記第2ゲートロック処理が行われた状態で、前記比較器をリセットし、前記第1ゲートロック処理の解除を行った後、前記第2ゲートロック処理が行われた状態で、前記比較器を再起動させるように構成されている、請求項2または3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記比較器は、前記電流検出値と前記過電流閾値との比較において、前記電流検出値が前記過電流閾値以上となった場合に、前記第1ゲートロック処理を行うための第1の指令を前記ロック処理部に送信するように構成され、
前記制御部は、前記比較器による前記第1の指令の送信後において、前記電流検出値と前記過電流閾値とに基づいて、過電流が発生していないと判定した場合には、前記第2ゲートロック処理を行うための第2の指令を前記ロック処理部に送信するように構成され、
前記ロック処理部は、前記比較器から送信される前記第1の指令に基づいて、前記第1ゲートロック処理を行った後に、前記制御部から送信される前記第2の指令に基づいて、前記第2ゲートロック処理を行うように構成されるととともに、前記第2ゲートロック処理を行った状態で、前記第1ゲートロック処理の解除を行うように構成されている、請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第2ゲートロック処理を行った状態で、前記第1ゲートロック処理の解除および前記比較器の再起動を行った後、前記制御部による過電流の発生の有無の判定に基づいて、前記第2ゲートロック処理を解除するように構成されている、請求項4または5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
電力変換部内の電力変換用素子のゲート信号を制御する制御装置に含まれ、前記電力変換部の出力電流と予め設定された過電流閾値とを比較する比較器が、前記出力電流と前記過電流閾値との比較を行う比較ステップと、
前記比較ステップの結果に基づいて、前記電力変換用素子へのゲート信号の出力を停止するゲートロック処理を行う第1ゲートロック処理ステップと、
前記制御装置に含まれ、ゲート信号の波形の制御を行うための制御部が、過電流の発生の有無を判定する判定ステップと、
前記判定ステップの結果に基づいて、前記電力変換用素子へのゲート信号の出力を停止するゲートロック処理を行う第2ゲートロック処理ステップと、を備える、電力変換装置における過電流発生時の素子保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置および電力変換装置における過電流発生時の素子保護方法に関し、特に、電力変換部の出力電流と閾値との比較を行う電力変換装置および電力変換装置における過電流発生時の素子保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力変換部の出力電流と閾値との比較を行う電力変換装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、電力変換部(インバータ)の出力電流と閾値との比較を行う電力変換装置が開示されている。上記特許文献1に記載の電力変換装置は、スイッチング素子を含むインバータと、インバータの動作を制御するドライブ回路と、インバータの出力電流に基づいて検出信号を出力する検出回路とを備える。そして、この電力変換装置は、出力電流が基準(閾値)を越えた場合には、ドライブ回路がインバータを停止状態にする。ここで、上記特許文献1には明記されていないが、このような従来の電力変換装置では、インバータの動作を制御するドライブ回路用の電子部品の外部に、検出回路用の電子部品としてコンパレータICなどが設けられている。
【0004】
ここで、上記特許文献1には明記されていないが、電力変換装置を構成する回路部品の部品点数の増加を抑制するために、インバータのスイッチング素子の動作を制御する電子部品(マイコン)の内部に搭載されたコンパレータ(比較器)を用いて、過電流発生時における素子保護動作として、電力変換部へのゲート信号の出力を停止する処理(ゲートロック処理)を行うことが考えられる。なお、マイコン内部のコンパレータは、インバータの出力電流が予め設定された閾値を越えた際に、過電流を検出し、ゲートロック処理を行うための信号を送信する。そして、ゲートロック処理後に、インバータの出力電流が閾値より低下した際には、マイコン内部のコンパレータをリセットし、ゲートロック処理の解除が行われる。なお、リセット中は、コンパレータは、非アクティブ状態(過電流を検出できず、ゲートロック処理を行うための信号を送信することができない状態)になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1-295680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、ゲートロック処理解除中(ゲートロックを解除し、再びコンパレータがアクティブ状態になるまでの間)に、過電流(閾値以上の出力電流)が発生した場合には、コンパレータの状態が、非アクティブ状態なので、ゲートロック処理を行うための信号がコンパレータから送信されない。このため、インバータの動作を制御する電子部品(マイコン)は、ゲートロック処理(素子保護動作)を行うことができない。そのため、部品点数の増加を抑制しつつ、ゲートロック処理の解除中に過電流が発生した場合でも、電力変換部の出力側に設けられた素子を保護可能な電力変換装置および電力変換装置における過電流発生時の素子保護方法を提供することが望まれている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、部品点数の増加を抑制しつつ、ゲートロック処理の解除中に過電流が発生した場合でも、電力変換部の出力側に設けられた素子を保護可能な電力変換装置および電力変換装置における過電流発生時の素子保護方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による電力変換装置は、電力変換用素子を含む電力変換部と、電力変換部の出力電流を検出する検出部と、電力変換用素子のゲート信号を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、出力電流と予め設定された過電流閾値とを比較する比較器と、電力変換用素子のゲート信号の波形の制御を行うとともに、検出部が検出した出力電流に基づく電流検出値と過電流閾値とに基づいて、過電流の発生の有無を判定する制御部と、電力変換用素子へのゲート信号の出力を停止するゲートロック処理を行うロック処理部と、を含む。
【0009】
上記第1の局面による電力変換装置では、上記のように、電力変換用素子のゲート信号を制御する制御装置は、電力変換用素子へのゲート信号の出力を停止するゲートロック処理を行うロック処理部を含む。そして、制御装置は、出力電流と予め設定された過電流閾値とを比較する比較器と、検出部が検出した出力電流に基づく電流検出値と過電流閾値とに基づいて過電流の発生の有無を判定する制御部とを含む。これにより、電力変換用素子のゲート信号を制御する制御装置が、出力電流と予め設定された過電流閾値とを比較する比較器と、出力電流に基づく電流検出値と過電流閾値とに基づいて過電流の発生の有無を判定する制御部とによって、過電流の発生を検出することができる。その結果、電力変換用素子のゲート信号を制御する制御装置とは別個に、過電流の発生を検出するための比較器としてコンパレータICなどの電子部品を備える場合と異なり、部品点数の増加を抑制することができる。また、制御装置に含まれる比較器に加えて、制御装置に含まれる制御部により、過電流の発生を検出することができるので、比較器による比較に基づくゲートロック処理の解除中(比較器の非アクティブ状態時)において、過電流が発生した場合でも、制御装置に含まれる制御部が、過電流の発生を検出することができる。その結果、比較器による比較に基づくゲートロック処理の解除中において、過電流が発生した場合でも、制御部により検出された過電流に基づいてゲートロック処理(素子保護動作)を行うことができる。これらの結果、部品点数の増加を抑制しつつ、ゲートロック処理の解除中に過電流が発生した場合でも、電力変換部の出力側に設けられた素子を保護することができる。
【0010】
上記第1の局面による電力変換装置において、好ましくは、ロック処理部は、比較器における出力電流に基づく電流検出値と過電流閾値との比較により過電流の発生が検出された場合において、ゲート信号の出力を停止する第1ゲートロック処理と、制御部の判定に基づいて、ゲート信号の出力を停止する第2ゲートロック処理とを行うように構成されている。このように構成すれば、比較器における電流検出値と過電流閾値との比較に基づく第1ゲートロック処理と、制御部の判定に基づく第2ゲートロック処理とを行うことができるので、比較器における電流検出値と過電流閾値との比較に基づく第1ゲートロック処理の解除中(比較器の非アクティブ状態時)に、過電流が発生した場合でも、制御部の判定に基づく第2ゲートロック処理を行うことができる。その結果、第1ゲートロック処理解除中において、過電流が発生した場合でも、制御部の判定に基づく第2ゲートロック処理により、ゲートロック処理(素子保護動作)を行うことができる。これにより、第1ゲートロック処理の解除中に過電流が発生した場合でも、電力変換部の出力側に設けられた素子を保護することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、ロック処理部は、比較器が、電流検出値と過電流閾値とを比較して、電流検出値が過電流閾値以上となった場合に、第1ゲートロック処理を行い、第1ゲートロック処理が行われた後において、制御部により過電流が発生していないと判定された場合には、第2ゲートロック処理を行い、制御部の判定に基づく第2ゲートロック処理を行った状態で、比較器による比較に基づく第1ゲートロック処理を解除するように構成されている。このように構成すれば、第1ゲートロック処理を解除しても、第2ゲートロック処理によって、電力変換用素子へのゲート信号の出力が停止される。その結果、第1ゲートロック処理の解除中に第2ゲートロック処理を行わない場合と異なり、第1ゲートロック処理解除中の過電流の発生を防止することができる。
【0012】
上記ロック処理部が、第1ゲートロック処理と、第2ゲートロック処理とを行う構成において、好ましくは、制御装置は、制御部の判定に基づく第2ゲートロック処理が行われた状態で、比較器をリセットし、第1ゲートロック処理の解除を行った後、第2ゲートロック処理が行われた状態で、比較器を再起動させるように構成されている。このように構成すれば、比較器のリセットから再起動までの間は、第2ゲートロック処理により、電力変換用素子へのゲート信号の出力が停止されるので、比較器のリセットから再起動までの間において、過電流が発生することを防止することができる。また、比較器を再起動させることによって、第1ゲートロック処理の解除後に、再度、過電流が発生した場合でも、比較器が過電流の発生を検出することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、比較器は、電流検出値と過電流閾値との比較において、電流検出値が過電流閾値以上となった場合に、第1ゲートロック処理を行うための第1の指令をロック処理部に送信するように構成され、制御部は、比較器による第1の指令の送信後において、電流検出値と過電流閾値とに基づいて、過電流が発生していないと判定した場合には、第2ゲートロック処理を行うための第2の指令をロック処理部に送信するように構成され、ロック処理部は、比較器から送信される第1の指令に基づいて、第1ゲートロック処理を行った後に、制御部から送信される第2の指令に基づいて、第2ゲートロック処理を行うように構成されるととともに、第2ゲートロック処理を行った状態で、第1ゲートロック処理の解除を行うように構成されている。このように構成すれば、比較器から送信される第1の指令に基づく第1ゲートロック処理を解除しても、制御部から送信される第2の指令に基づく第2ゲートロック処理により、電力変換用素子へのゲート信号の出力が停止される。その結果、第1の指令に基づく第1ゲートロック処理の解除中に、第2の指令に基づく第2ゲートロック処理を行わない場合と異なり、第1ゲートロック処理解除中の過電流の発生を防止することができる。
【0014】
上記第2ゲートロック処理が行われた状態で、比較器を再起動させる構成において、好ましくは、制御装置は、第2ゲートロック処理を行った状態で、第1ゲートロック処理の解除および比較器の再起動を行った後、制御部による過電流の発生の有無の判定に基づいて、第2ゲートロック処理を解除するように構成されている。このように構成すれば、比較器を再起動させることによって、比較器の比較に基づく第1ゲートロック処理を行える状態で、第2ゲートロック処理の解除を行うことができる。その結果、制御部による過電流の発生の有無の判定後に過電流が発生した状態で、第2ゲートロック処理を解除した場合でも、比較器の比較に基づく第1ゲートロック処理を行うことができる。これにより、制御部による過電流の発生の有無の判定後に過電流が発生した状態で、第2ゲートロック処理を解除した場合でも、電力変換部の出力側に設けられた素子を保護することができる。
【0015】
上記目的を達成するために、この発明の第2の局面による電力変換装置における過電流発生時の素子保護方法は、電力変換部内の電力変換用素子のゲート信号を制御する制御装置に含まれ、電力変換部の出力電流と予め設定された過電流閾値とを比較する比較器が、出力電流と過電流閾値との比較を行う比較ステップと、比較ステップの結果に基づいて、電力変換用素子へのゲート信号の出力を停止するゲートロック処理を行う第1ゲートロック処理ステップと、制御装置に含まれ、ゲート信号の波形の制御を行うための制御部が、過電流の発生の有無を判定する判定ステップと、判定ステップの結果に基づいて、電力変換用素子へのゲート信号の出力を停止するゲートロック処理を行う第2ゲートロック処理ステップと、を備える。
【0016】
上記第2の局面による電力変換装置における過電流発生時の素子保護方法では、上記のように、ゲート信号を制御する制御装置に含まれる比較器の比較結果に基づいて、電力変換用素子へのゲート信号の出力を停止するゲートロック処理を行う第1ゲートロック処理ステップと、ゲート信号を制御する制御装置に含まれる制御部の判定結果に基づいて電力変換用素子へのゲート信号の出力を停止するゲートロック処理を行う第2ゲートロック処理ステップとを備える。これにより、電力変換用素子のゲート信号を制御する制御装置が、比較器の比較結果と、制御部の判定結果とによって、過電流の発生を検出することができる。その結果、電力変換用素子のゲート信号を制御する制御装置とは別個に、過電流の発生を検出するための比較器としてコンパレータICなどの電子部品を備える場合と異なり、部品点数の増加を抑制することができる。また、比較器における比較結果に基づく第1ゲートロック処理と、制御部の判定に基づく第2ゲートロック処理とを行うことができるので、比較器における電流検出値と過電流閾値との比較に基づく第1ゲートロック処理の解除中(比較器の非アクティブ状態時)に、過電流が発生した場合でも、制御部の判定に基づく第2ゲートロック処理を行うことができる。これにより、第1ゲートロック処理解除中において、過電流が発生した場合でも、制御部の判定に基づく第2ゲートロック処理により、ゲートロック処理(素子保護動作)を行うことができる。その結果、第1ゲートロック処理の解除中に過電流が発生した場合でも、電力変換部の出力側に設けられた素子を保護することができる。これらの結果、部品点数の増加を抑制しつつ、第1ゲートロック処理の解除中に過電流が発生した場合でも、電力変換部の出力側に設けられた素子を保護することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、部品点数の増加を抑制しつつ、ゲートロック処理の解除中に過電流が発生した場合でも、電力変換部の出力側に設けられた素子を保護可能な電力変換装置および電力変換装置における過電流発生時の素子保護方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による電力変換装置の構成を示したブロック図である。
図2】過電流発生時のマイコンによる処理の一例を示したフローチャートである。
図3】過電流発生時のマイコンによる処理の他の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1を参照して、本発明の第1実施形態による電力変換装置100の全体構成について説明する。
【0021】
図1に示すように、電力変換装置100は、電力変換用素子1aを含む電力変換部1と、電力変換部1の出力電流を検出する検出部2と、電力変換用素子1aのゲート信号を制御するマイコン(マイクロコントローラ:Microcontroller)3とを備える。なお、マイコン3は、特許請求の範囲に記載の「制御装置」の一例である。また、電力変換装置100は、リアクトル4と、コンデンサ5とを備える。
【0022】
なお、電力変換部1は、複数の電力変換用素子1aによって構成され、電力変換を行うインバータ回路である。そして、電力変換装置100は、インバータ装置である。電力変換装置100は、たとえば、UPS(Uninterruptible Power Supply)、または、PCS(Power Conditioning System)などに用いられるインバータ装置であるが、これに限られない。
【0023】
検出部2は、電力変換部1の出力側(電力変換部1とリアクトル4との間)において、電力変換部1の出力電流(リアクトル電流)を検出するように構成されている。検出部2は、電流センサを含む。また、検出部2は、電力変換部1の出力電圧に基づいて出力電流を検出するように構成されてもよい。検出部2による出力電流の検出値は、マイコン3に送信される。
【0024】
また、マイコン3は、AD変換部31、CPU(Central Processing Unit)32、コンパレータ33、MTU(Multifunction Timer-pulse Unit:マルチファンクションタイマパルスユニット)34、および、POE(Port Output Enable:ポートアウトプットイネーブル)35を含む。
【0025】
なお、AD変換部31、CPU32、コンパレータ33、MTU34、および、POE35は、マイコン3の内部回路として機能的に構成(マイコン3の機能ブロックとして構成)されている。なお、CPU32、コンパレータ33およびPOE35は、それぞれ特許請求の範囲に記載の「制御部」、「比較器」および「ロック処理部」の一例である。
【0026】
AD変換部31は、検出部2が検出した出力電流のアナログの検出値をデジタル変換するように構成されている。そして、AD変換部31によって、デジタル変換された検出値(電流検出値)は、CPU32およびコンパレータ33に送信される。
【0027】
CPU32は、電力変換用素子1aのゲート信号の波形の制御を行うように構成されている。そして、CPU32は、検出部2が検出した出力電流に基づく電流検出値と過電流閾値とに基づいて、過電流の発生の有無を判定する。また、CPU32は、内蔵されたROM(Read Only Memory)に過電流閾値を記憶(格納)している。なお、過電流閾値は、CPU32外部のメモリ(ROM、フラッシュメモリなど)に記憶(格納)されていてもよい。
【0028】
CPU32は、検出部2によって検出された検出値をAD変換部31において、デジタル変換した検出値(電流検出値)と、過電流閾値とを比較する処理をソフトウェア上で行う。そして、CPU32は、処理の結果に基づいて、過電流の発生の有無をソフトウェア上で判定する。なお、過電流の発生の有無を判定するためのプログラムおよび後述する過電流発生時の処理を行うためのプログラムは、CPU32に内蔵されたROMに記憶(格納)されていてもよいし、CPU32外部のメモリ(ROM、フラッシュメモリなど)に記憶(格納)されていてもよい。
【0029】
そして、CPU32は、電流検出値と過電流閾値とに基づいて、過電流が発生していないと判定した場合には、第2ゲートロック処理を行うための第2の指令をPOE35に送信するように構成されている。
【0030】
コンパレータ33は、出力電流と予め設定された過電流閾値とを比較するように構成されている。具体的には、コンパレータ33は、検出部2によって検出された検出値をAD変換部31においてデジタル変換した検出値(電流検出値)と、CPU32から取得される過電流閾値との比較に基づいて、過電流の発生の検出を行う。すなわち、コンパレータ33は、電力変換部1の出力電流に基づく電流検出値と、過電流閾値との比較により過電流の発生を検出する。なお、コンパレータ33における電流検出値と、過電流閾値との比較は、CPU32のソフトウェア上の処理ではなく、電流値に基づく回路的な処理によって行われる。
【0031】
コンパレータ33は、電流検出値と過電流閾値との比較において、電流検出値が過電流閾値以上となった場合に、第1ゲートロック処理を行うための第1の指令をPOE35に送信するように構成されている。
【0032】
MTU34は、CPU32からの指令値から三角波比較し、ゲート信号を生成し、電力変換用素子1aへ出力するように構成されたゲート信号生成部である。MTU34は、たとえば、電力変換部1をPWM制御するためのゲート信号を生成する。
【0033】
POE35は、MTU34からのゲート信号の出力を制御する信号(イネーブル信号など)を出力するように構成された信号出力制御部である。POE35は、電力変換用素子1aへのゲート信号の出力を停止するゲートロック処理を行うように構成されている。POE35は、MTU34に対して、ゲート信号の生成および出力のうち、少なくともいずれかを停止する指令(信号)を送信し、ゲートロック処理を行う。
【0034】
POE35は、コンパレータ33における出力電流に基づく電流検出値と過電流閾値との比較により過電流の発生が検出された場合において、ゲート信号の出力を停止する第1ゲートロック処理と、CPU32の判定に基づいて、ゲート信号の出力を停止する第2ゲートロック処理とを行うように構成されている。すなわち、POE35は、2種類の処理(コンパレータ33による比較と、CPU32による判定と)に基づいてゲートロック処理を行うことが可能である。
【0035】
POE35は、コンパレータ33が、電流検出値と過電流閾値とを比較して、電流検出値が過電流閾値以上となった場合に、第1ゲートロック処理を行うように構成されている。POE35は、コンパレータ33から送信される第1の指令(第1のロック信号)に基づいて、第1ゲートロック処理を行うように構成されている。第1ゲートロック処理は、CPU32を介さないPOE35によるゲートロック処理である。
【0036】
また、POE35は、CPU32により過電流が発生していないと判定された場合には、第2ゲートロック処理を行うように構成されている。POE35は、CPU32から送信される第2の指令(第2のロック信号)に基づいて、第2ゲートロック処理を行うように構成される。第2ゲートロック処理は、コンパレータ33を介さないPOE35によるゲートロック処理である。
【0037】
(過電流発生時の処理)
過電流発生時におけるマイコン3による処理について、図2を参照して、説明する。これらの処理は、電力変換部1の出力側に設けられた素子(リアクトル4)を、電力変換部1内の電力変換用素子1aが短絡した場合などに発生する過電流から保護するための処理である。
【0038】
最初にステップS1において、マイコン3内部のコンパレータ33により過電流の発生の検出が行われる。ステップS1において、コンパレータ33は、前述したように、電流検出値(出力電流)と過電流閾値との比較を行い、過電流の発生を検出する。ステップS1において、コンパレータ33の比較により過電流の発生が検出された場合(電流検出値が過電流閾値以上の場合)には、ステップS2に移行する。また、ステップS1において、コンパレータ33の比較により過電流の発生が検出されなかった場合(電流検出値が過電流閾値より小さい場合)には、ステップS1の処理を繰り返す。なお、ステップS1は、特許請求の範囲に記載の「比較ステップ」の一例である。
【0039】
ステップS2において、コンパレータ33からPOE35へ第1の指令(図1参照)の送信が開始される。すなわち、コンパレータ33が、電流検出値と過電流閾値との比較において、電流検出値が過電流閾値以上となった場合に、第1ゲートロック処理を行うための第1の指令がコンパレータ33からPOE35に送信される。そして、処理ステップは、ステップS3に移行する。
【0040】
ステップS3において、第1ゲートロック処理が行われる。ステップS3では、POE35が、コンパレータ33から送信された第1の指令を受信することによって、ステップS2の結果に基づく第1ゲートロック処理が行われる。すなわち、POE35は、コンパレータ33が、電流検出値と過電流閾値とを比較して、電流検出値が過電流閾値以上となった場合に、第1ゲートロック処理を行う。なお、ステップS3は、特許請求の範囲に記載の「第1ゲートロック処理ステップ」の一例である。また、POE35による第1ゲートロック処理は、ステップS3からステップS7まで継続して行われる。
【0041】
そして、ステップS4において、CPU32による過電流の検出が行われる。CPU32は、前述したように、検出部2が検出した出力電流に基づく電流検出値と過電流閾値とに基づいて、過電流の発生の有無を判定する。ステップS4において、過電流が発生していないとCPU32により判定された場合には、ステップS5に移行する。また、ステップS4において、過電流が発生しているとCPU32により判定された場合には、ステップS4の処理を繰り返す。なお、ステップS4は、特許請求の範囲に記載の「判定ステップ」の一例である。
【0042】
ステップS5において、CPU32からPOE35へ第2の指令(図1参照)の送信が開始される。すなわち、CPU32が、コンパレータ33による第1の指令の送信後(ステップS2後)において、電流検出値と過電流閾値とに基づいて、過電流が発生していないと判定した場合に、第2ゲートロック処理を行うための第2の指令がPOE35に送信される。そして、処理ステップは、ステップS6に移行する。
【0043】
ステップS6において、第2ゲートロック処理が行われる。ステップS6では、POE35が、CPU32から送信された第2の指令を受信することによって、ステップS4の結果に基づく第2ゲートロック処理が行われる。すなわち、POE35は、コンパレータ33から送信される第1の指令に基づいて、第1ゲートロック処理を行った(ステップS3)後に、CPU32から送信される第2の指令に基づいて、第2ゲートロック処理を行う。これにより、MTU34は、2つの指令(第1の指令および第2の指令)に基づいて、POE35によるゲートロック処理が行われた状態になる。なお、ステップS3は、特許請求の範囲に記載の「第2ゲートロック処理ステップ」の一例である。
【0044】
ステップS7において、第1ゲートロック処理の解除が行われる。すなわち、POE35は、第2ゲートロック処理を行った状態で、第1ゲートロック処理の解除を行う。ステップS7では、マイコン3は、CPU32の判定に基づく第2ゲートロック処理が行われた状態で、コンパレータ33をリセットする。ステップS7では、マイコン3は、コンパレータ33の検出状態をリセットし、コンパレータ33を停止させ、コンパレータ33の状態をアクティブ状態から非アクティブ状態に変更する。そして、コンパレータ33がリセットされ、コンパレータ33の状態が非アクティブ状態になったことにより、コンパレータ33から第1の指令が送信されなくなり、第1ゲートロック処理が解除される。ステップS7において、第1の指令が送信されなくなる(停止される)ことによって、MTU34は、2つの指令(第1の指令および第2の指令)に基づいてPOE35によるゲートロック処理が行われた状態から、1つの指令(第2の指令)のみに基づいてゲートロック処理が行われた状態に変更される。そして、コンパレータ33をリセット後、1キャリア分(処理ソフトの演算周期1回分)待機した後に、ステップS8に処理ステップを移行する。なお、コンパレータ33のリセット後の待機は、1キャリア分以上行われてもよい。
【0045】
ステップS8において、コンパレータ33の再起動が行われる。すなわち、マイコン3は、第1ゲートロック処理の解除を行った後、第2ゲートロック処理が行われた状態で、コンパレータ33を再起動させるように構成されている。これにより、マイコン3は、コンパレータ33の状態を、コンパレータ33の比較に基づく第1ゲートロック処理を行える状態(アクティブ状態)に戻す。
【0046】
ステップS9において、CPU32による過電流の検出が行われる。ステップS9では、ステップS4と同様の処理がCPU32によって行われる。ステップS9において、CPU32により過電流が発生していないと判定された場合には、ステップS10に移行する。また、ステップS9において、CPU32により過電流が発生していると判定された場合には、処理ステップは、ステップS4に戻る。
【0047】
ステップS10において、第2ゲートロック処理の解除が行われる。すなわち、マイコン3は、第2ゲートロック処理を行った状態で、第1ゲートロック処理の解除(ステップS7)およびコンパレータ33の再起動(ステップS8)を行った後、ステップS9におけるCPU32による過電流の発生の有無の判定に基づいて、第2ゲートロック処理を解除する。ステップS10においては、ステップS9におけるCPU32の判定に基づいて、CPU32からの第2の指令の送信が停止され、第2ゲートロック処理が解除される。そして、ステップS10における第2ゲートロック処理の解除後、処理ステップは、ステップS1に戻る。
【0048】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0049】
第1実施形態では、電力変換装置100が備えるマイコン3は、電力変換用素子1aへのゲート信号の出力を停止するゲートロック処理を行うPOE35を含む。そして、POE35は、コンパレータ33における電流検出値(出力電流)と過電流閾値との比較により過電流の発生が検出された場合において、ゲート信号の出力を停止する第1ゲートロック処理と、CPU32の判定に基づいてゲート信号の出力を停止する第2ゲートロック処理とを行うように構成されている。これにより、電力変換用素子1aのゲート信号を制御するマイコン3が、電流検出値(出力電流)と過電流閾値とを比較するコンパレータ33と、電流検出値と過電流閾値とに基づいて過電流の発生の有無を判定するCPU32とによって、過電流の発生を検出することができる。その結果、電力変換用素子1aのゲート信号を制御するマイコン3とは別個に、過電流の発生を検出するための比較器としてコンパレータICなどの電子部品を備える場合と異なり、部品点数の増加を抑制することができる。また、コンパレータ33における電流検出値(出力電流)と過電流閾値との比較に基づく第1ゲートロック処理と、CPU32の判定に基づく第2ゲートロック処理とを行うことができるので、コンパレータ33における電流検出値(出力電流)と過電流閾値との比較に基づく第1ゲートロック処理の解除中に、過電流が発生した場合でも、CPU32の判定に基づく第2ゲートロック処理を行うことができる。これにより、第1ゲートロック処理解除中(コンパレータ33の非アクティブ状態時)において、過電流が発生した場合でも、CPU32の判定に基づく第2ゲートロック処理により、ゲートロック処理(素子保護動作)を行うことができる。その結果、第1ゲートロック処理の解除中に過電流が発生した場合でも、電力変換部1の出力側に設けられた素子(リアクトル4)を保護することができる。これらの結果、部品点数の増加を抑制しつつ、第1ゲートロック処理の解除中に過電流が発生した場合でも、電力変換部1の出力側に設けられた素子(リアクトル4)を保護することができる。
【0050】
また、第1実施形態では、上記のように、POE35は、コンパレータ33が、電流検出値と過電流閾値とを比較して、電流検出値が過電流閾値以上となった場合に、第1ゲートロック処理を行う。そして、POE35は、第1ゲートロック処理が行われた後において、CPU32により過電流が発生していないと判定された場合には、第2ゲートロック処理を行い、CPU32の判定に基づく第2ゲートロック処理を行った状態で、コンパレータ33による比較に基づく第1ゲートロック処理を解除するように構成されている。これにより、第1ゲートロック処理を解除しても、第2ゲートロック処理によって、電力変換用素子1aへのゲート信号の出力が停止される。その結果、第1ゲートロック処理の解除中に第2ゲートロック処理を行わない場合と異なり、第1ゲートロック処理解除中の過電流の発生を防止することができる。
【0051】
また、第1実施形態では、上記のように、マイコン3は、CPU32の判定に基づく第2ゲートロック処理が行われた状態で、コンパレータ33をリセットし、第1ゲートロック処理の解除を行った後、第2ゲートロック処理が行われた状態で、コンパレータ33を再起動させるように構成されている。これにより、コンパレータ33のリセットから再起動までの間は、第2ゲートロック処理により、電力変換用素子1aへのゲート信号の出力が停止されるので、コンパレータ33のリセットから再起動までの間において、過電流が発生することを防止することができる。また、コンパレータ33を再起動させることによって、第1ゲートロック処理の解除後に、再度、過電流が発生した場合でも、コンパレータ33が過電流の発生を検出することができる。
【0052】
また、第1実施形態では、上記のように、コンパレータ33は、電流検出値と過電流閾値との比較において、電流検出値が過電流閾値以上となった場合に、第1ゲートロック処理を行うための第1の指令をPOE35に送信するように構成されている。そして、CPU32は、コンパレータ33による第1の指令の送信後において、電流検出値と過電流閾値とに基づいて、過電流が発生していないと判定した場合には、第2ゲートロック処理を行うための第2の指令をPOE35に送信するように構成されている。さらに、POE35は、コンパレータ33から送信される第1の指令に基づいて、第1ゲートロック処理を行った後に、CPU32から送信される第2の指令に基づいて、第2ゲートロック処理を行うように構成されるととともに、第2ゲートロック処理を行った状態で、第1ゲートロック処理の解除を行うように構成されている。これにより、コンパレータ33から送信される第1の指令に基づく第1ゲートロック処理を解除しても、CPU32から送信される第2の指令に基づく第2ゲートロック処理により、電力変換用素子1aへのゲート信号の出力が停止される。その結果、第1の指令に基づく第1ゲートロック処理の解除中に、第2の指令に基づく第2ゲートロック処理を行わない場合と異なり、第1ゲートロック処理解除中の過電流の発生を防止することができる。
【0053】
また、第1実施形態では、上記のように、マイコン3は、第2ゲートロック処理を行った状態で、第1ゲートロック処理の解除およびコンパレータ33の再起動を行った後、CPU32による過電流の発生の有無の判定に基づいて、第2ゲートロック処理を解除するように構成されている。これにより、コンパレータ33を再起動させることによって、コンパレータ33の比較に基づく第1ゲートロック処理を行える状態で、第2ゲートロック処理の解除を行うことができる。その結果、CPU32による判定後に過電流が発生した状態で、第2ゲートロック処理を解除した場合でも、コンパレータ33の比較に基づく第1ゲートロック処理を行うことができる。これにより、CPU32による判定後に過電流が発生した状態で、第2ゲートロック処理を解除した場合でも、電力変換部1の出力側に設けられた素子(リアクトル4)を保護することができる。
【0054】
[第2実施形態]
第2実施形態では、CPU32が電流検出値と過電流閾値とに基づいて、過電流が発生していないと判定した場合に、第2ゲートロック処理を行う上記第1実施形態とは異なり、CPU32が電流検出値と過電流閾値とに基づいて、過電流が発生していると判定した場合に、第2ゲートロック処理を行う。
【0055】
第2実施形態による過電流発生時の処理について、図3を参照して、説明する。なお、第1実施形態におけるマイコン3の処理と同様の処理ステップ(ステップS1~S3)については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
第2実施形態による過電流発生時の処理では、ステップS3において、第1ゲートロック処理が行われた後に、コンパレータ33の検出状態を取得(確認)するステップS204を行う。ステップS204では、CPU32がコンパレータ33の検出状態(フラグの有無)を取得(確認)し、コンパレータ33が過電流を検出している状態の場合には、ステップS204の処理を繰り返す。そして、CPU32がコンパレータ33の検出状態(フラグの有無)を確認し、コンパレータ33が過電流を検出していない状態の場合には、ステップS205に移行する。
【0057】
ステップS205において、CPU32による過電流検出が開始される。ステップS205では、上記第1実施形態におけるステップS4(ステップS9)と同様の処理を開始し、後述するステップS207におけるコンパレータ33の再起動が完了するまで随時行われる。CPU32による過電流検出を開始後、ステップS206に移行する。
【0058】
ステップS206において、第1ゲートロック処理が解除される。ステップS206における第1ゲートロック処理の解除は、上記第1実施形態のステップS7における処理と同様の処理である。第1ゲートロック処理の解除後(ステップS206の完了後)、処理ステップは、ステップS207に移行する。
【0059】
ステップS207において、コンパレータ33が再起動される。ステップS207におけるコンパレータ33の再起動における処理は、上記第1実施形態のステップS8における処理と同様の処理である。第2実施形態では、マイコン3は、ステップS206における第1ゲートロック処理の解除から、ステップS207におけるコンパレータ33の再起動が完了するまでの間、CPU32による過電流検出がステップS205から継続して行われている。そして、ステップS206からステップS207の間に、CPU32によって、過電流が検出された場合(過電流が発生したと判定された場合)には、CPU32の判定結果に基づき、POE35による第2ゲートロック処理を行う。第2実施形態による処理では、CPU32による過電流の検出(過電流の発生の有無の判定)に基づいて、第2ゲートロック処理の開始および解除が、第1ゲートロック処理の解除からコンパレータ33の再起動完了までの間(ステップS206からステップS207完了までの間)に行われる。ステップS207の完了後(コンパレータ33の再起動後)、処理ステップは、ステップS208に移行する。
【0060】
ステップS208において、CPU32による過電流検出が停止される。ステップS208では、ステップS205において開始したCPU32による過電流検出が停止される。そして、処理ステップは、ステップS1に戻る。
【0061】
なお、第2実施形態におけるその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0062】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、部品点数の増加を抑制しつつ、第1ゲートロック処理の解除中に過電流が発生した場合でも、電力変換部1の出力側に設けられた素子(リアクトル4)を保護することができる。
【0063】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0064】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、2つの指令(第1の指令および第2の指令)に基づいて、POE35によるゲートロック処理が行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御装置の外部にコンパレータICなどの比較器をさらに設け、第1の指令および第2の指令に加えて、制御部外部に設けられたコンパレータICなどの比較器の検出結果に基づく指令(信号)によるゲートロック処理をロック処理部が行うように構成してもよい。また、第1の指令および第2の指令に加えて、マイコンなどの制御装置からの信号に基づいて、GPIO(General purpose Input/Output)からの送信される指令(信号)によるゲートロック処理をロック処理部が行うように構成してもよい。すなわち、3つ以上の指令(ロック信号)を用いてロック処理部によるゲートロック処理を行ってもよい。
【0065】
また、上記第2実施形態では、ステップS206における第1ゲートロック処理の解除から、ステップS207においてコンパレータ33が再起動までの間、CPU32による過電流検出を行い、CPU32(制御部)によって、過電流が検出された場合には、第2ゲートロック処理を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1ゲートロック処理の解除(ステップS206)の直前に、制御部の判定結果に基づく第2ゲートロック処理を行い、第1ゲートロック処理の解除からコンパレータ33が再起動までの間(ステップS206からステップS207の完了までの間)、第2ゲートロック処理を行うようにしてもよい。
【0066】
また、上記第1実施形態では、マイコン3(制御装置)は、第2ゲートロック処理を行った状態で、第1ゲートロック処理の解除およびコンパレータ33(比較器)の再起動を行った後、CPU32(制御部)による過電流の発生の有無の判定に基づいて、第2ゲートロック処理を解除する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御装置は、第2ゲートロック処理を行った状態で、第1ゲートロック処理の解除および比較器の再起動を行った後、CPU32(制御部)による過電流の発生の有無の判定を行わずに、第2ゲートロック処理を解除してもよい。
【0067】
また、上記第1および第2実施形態では、コンパレータ33(比較器)から送信される第1の指令をPOE35(ロック処理部)が受信したことによって、POE35が第1ゲートロック処理を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、比較器による比較結果に基づいて、第1ゲートロック処理を行うための指令が、制御部を介して、ロック処理部に送信されてもよい。そして、ロック処理部が、制御部を介して送信された第1ゲートロック処理を行うための指令を受信したことによって、ロック処理部は、第1ゲートロック処理を行ってもよい。
【0068】
また、上記第1および第2実施形態では、説明の便宜上、本発明のデータ通信方法を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 電力変換部
1a 電力変換用素子
2 検出部
3 マイコン(制御装置)
32 CPU(制御部)
33 コンパレータ(比較器)
35 POE(ロック処理部)
100 電力変換装置
図1
図2
図3