(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144020
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H04L 25/02 20060101AFI20220926BHJP
H02M 3/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H04L25/02 Z
H02M3/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044854
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 ▲琢▼己
【テーマコード(参考)】
5H730
5K029
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730EE61
5H730FF15
5H730XX03
5H730XX12
5H730XX13
5H730XX15
5H730XX23
5H730XX32
5H730XX33
5H730XX35
5H730XX42
5K029AA06
5K029BB03
5K029DD13
5K029HH30
5K029KK06
5K029KK31
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電源システムのPMICが異常の時に、全ての出力チャネルの出力を同時に停止しないようにする。
【解決手段】電源システムにおいて、PMICは、出力電圧を出力する複数の出力端子OUT1~OUTnと、複数の出力端子をグループ分けするグループ設定部と、異常を検知する異常検知部と、異常検知部によって異常が検知されたグループに属する出力端子からの出力を停止し、異常検知部によって異常が検知されていないグループに属する出力端子からの出力を維持する制御部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電圧を出力するように構成される複数の出力端子と、
前記複数の出力端子をグループ分けするように構成されるグループ設定部と、
異常を検知するように構成される異常検知部と、
前記異常検知部によって異常が検知されたグループに属する前記出力端子からの出力を停止し、前記異常検知部によって異常が検知されていないグループに属する前記出力端子からの出力を維持するように構成される制御部と、を備える、電源システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記電源システムがイネーブル状態からディセーブル状態に切り替わると、全てのグループに属する前記出力端子からの出力をシーケンシャルに停止するように構成される、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記異常検知部によって異常が検知されていないグループに属する前記出力端子からの出力を維持した後、前記異常検知部によって異常が検知されていないグループの少なくとも一つに属する前記出力端子からの出力をシーケンシャルに停止するように構成される、請求項1又は請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
複数の半導体集積回路を備え、
前記複数の出力端子の個数は前記複数の半導体集積回路の個数よりも多く、前記複数の出力端子が前記複数の半導体集積回路に分散して配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項5】
第1伝送線と、
第2伝送線と、を備え、
前記複数の半導体集積回路は、単一の第1半導体集積回路と、少なくとも一つの第2半導体集積回路と、を含み、
前記単一の第1半導体集積回路は、前記第1伝送線を介して、クロック信号を前記少なくとも一つの第2半導体集積回路に供給するように構成され、
前記クロック信号に基づき、前記単一の第1半導体集積回路及び前記少なくとも一つの第2半導体集積回路のうちの任意の一つが、前記任意の一つ以外に前記第2伝送線を介してデータを送信するように構成される、請求項4に記載の電源システム。
【請求項6】
前記複数の半導体集積回路はそれぞれ、自己が前記第1半導体集積回路又は前記第2半導体集積回路のいずれに設定されているかを記憶する記憶部を備える、請求項5に記載の電源システム。
【請求項7】
単一の半導体集積回路を備え、
前記複数の出力端子が前記単一の半導体集積回路に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の電源システムを備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、複数の出力チャンネルを有する電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の出力チャンネルを有する電源システムとして、PMIC(Power Management Integrated Circuit)が広く用いられている。一般的に、PMICは、異常状態になった場合に、他のデバイスに依存することなく自律的に電源系統をシャットダウンする機能を有する(例えば特許文献1参照)。つまり、一般的なPMICは、異常発生時に全ての出力チャンネルからの出力電圧の出力を同時に停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-195690号公報(段落0005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PMICの後段に設けられる負荷(例えばSoCなど)の仕様によっては、PMICが異常発生時に全ての出力チャンネルからの出力電圧の出力を同時に停止することが望ましくない場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書中に開示されている電源システムは、出力電圧を出力するように構成される複数の出力端子と、前記複数の出力端子をグループ分けするように構成されるグループ設定部と、異常を検知するように構成される異常検知部と、前記異常検知部によって異常が検知されたグループに属する前記出力端子からの出力を停止し、前記異常検知部によって異常が検知されていないグループに属する前記出力端子からの出力を維持するように構成される制御部と、を備える構成(第1の構成)である。
【0006】
上記第1の構成の電源システムにおいて、前記制御部は、前記電源システムがイネーブル状態からディセーブル状態に切り替わると、全てのグループに属する前記出力端子からの出力をシーケンシャルに停止するように構成される構成(第2の構成)であってもよい。
【0007】
上記第1又は第2の構成の電源システムにおいて、前記制御部は、前記異常検知部によって異常が検知されていないグループに属する前記出力端子からの出力を維持した後、前記異常検知部によって異常が検知されていないグループの少なくとも一つに属する前記出力端子からの出力をシーケンシャルに停止するように構成される構成(第3の構成)であってもよい。
【0008】
上記第1~第3いずれかの構成の電源システムにおいて、複数の半導体集積回路を備え、複数の出力端子の個数は前記複数の半導体集積回路の個数よりも多く、前記複数の出力端子が前記複数の半導体集積回路に分散して配置される構成(第4の構成)であってもよい。
【0009】
上記第4の構成の電源システムにおいて、第1伝送線と、第2伝送線と、を備え、前記複数の半導体集積回路は、単一の第1半導体集積回路と、少なくとも一つの第2半導体集積回路と、を含み、前記単一の第1半導体集積回路は、前記第1伝送線を介して、クロック信号を前記少なくとも一つの第2半導体集積回路に供給するように構成され、前記クロック信号に基づき、前記単一の第1半導体集積回路及び前記少なくとも一つの第2半導体集積回路のうちの任意の一つが残りに前記第2伝送線を介してデータを送信するように構成される構成(第5の構成)であってもよい。
【0010】
上記第5の構成の電源システムにおいて、前記複数の半導体集積回路はそれぞれ、自己が前記第1半導体集積回路又は前記第2半導体集積回路のいずれに設定されているかを記憶する記憶部を備える構成(第6の構成)であってもよい。
【0011】
上記第1~第3いずれかの構成の電源システムにおいて、単一の半導体集積回路を備え、前記複数の出力端子が前記単一の半導体集積回路に配置される構成(第7の構成)であってもよい。
【0012】
本明細書中に開示されている車両は、上記第1~第7いずれかの構成の電源システムを備える構成(第8の構成)である。
【発明の効果】
【0013】
本明細書中に開示されている発明によれば、異常発生時の処理に自由度を持つ電源システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電源システムの概略構成を示す図である。
【
図4】
図4は、PMICの概略構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1伝送線に印加される電圧及び第2伝送線に印加される電圧のタイムチャートである。
【
図6】
図6は、第1伝送線に印加される電圧及び第2伝送線に印加される電圧のタイムチャートである。
【
図7】
図7は、第1伝送線に印加される電圧及び第2伝送線に印加される電圧のタイムチャートである。
【
図8】
図8は、電源システムの出力状態の一例を示すタイムチャートである。
【
図9】
図9は、電源システムの出力状態の他の例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、一実施形態に係る電源システムの概略構成を示す図である。
図1に示す電源システム100は、PMIC1~6と、第1伝送線7と、第2伝送線8と、を備える。第1伝送線7及び第2伝送線8は1つの通信バスを構成する。
【0016】
PMIC1~6それぞれは、出力電圧を出力する出力端子を少なくとも一つ備える。また、PMIC1~6それぞれは、入力電圧が入力される入力端子を備える。PMIC1~6それぞれは、リニアレギュレータ、スイッチングレギュレータ等の電源回路を含み、入力電圧から少なくとも一種類の出力電圧を生成する。
【0017】
PMIC1は、第1伝送線7を介して、クロック信号CLKをPMIC2~6に供給する。以下、PMIC1をマスターと称することがある。以下、PMIC2~6それぞれをスレーブと称することがあり、PMIC2~6それぞれをスレーブ1~5と称することがある。
【0018】
クロック信号CLKに基づき、PMIC1~6のうちの任意の一つが、当該任意の一つ以外に第2伝送線8を介してデータを送信する。つまり、電源システム100では、マスターからスレーブへのデータ送信、或るスレーブから他のスレーブへのデータ送信、スレーブからマスターへのデータ送信が可能である。電源システム100は、複数のPMIC1~6を備える構成であるにもかかわらず、上記データ送信によって、あたかも1つのPMICであるかのように各種処理(例えば、起動時の処理、異常発生時の処理など)を実行することができる。
【0019】
次に、デバイスID及びシステム番号について説明する。
【0020】
PMIC1~6それぞれは、デバイスID及びシステム番号を不揮発的に記憶する記憶部を備える。上記記憶部に記憶されているデバイスID及びシステム番号は書き換え可能であることが望ましい。
【0021】
図2はデバイスIDの例を示す図であり、
図3はシステム番号の例を示す図である。
図2及び
図3中のPN1、PN2それぞれは、PMICの互いに異なる品番である。
図3中のチャンネル数(ch数)は、電源システムが備える、出力電圧を出力する出力端子の総数である。システム番号が「2」~「11」である電源システムでは、チャンネル数(ch数)はPMICの個数(chip数)よりも多く、電源システムの出力端子は複数のPMICに分散して配置される。
【0022】
電源システム100では、PMIC1の記憶部は、デバイスIDとして「3'b000」を記憶し、システム番号として「10」を記憶する。
【0023】
電源システム100では、PMIC2の記憶部は、デバイスIDとして「3'b011」を記憶し、システム番号として「10」を記憶する。
【0024】
電源システム100では、PMIC3の記憶部は、デバイスIDとして「3'b100」を記憶し、システム番号として「10」を記憶する。
【0025】
電源システム100では、PMIC4の記憶部は、デバイスIDとして「3'b101」を記憶し、システム番号として「10」を記憶する。
【0026】
電源システム100では、PMIC5の記憶部は、デバイスIDとして「3'b110」を記憶し、システム番号として「10」を記憶する。
【0027】
電源システム100では、PMIC6の記憶部は、デバイスIDとして「3'b111」を記憶し、システム番号として「10」を記憶する。
【0028】
PMIC1~6の各記憶部が上述したデバイスID及びシステム番号を記憶することにより、電源システム100は、6個のPMICを備え、出力電圧を出力する出力端子の総数(ch数)が17である電源システムとなる。電源システム100は、2種類のPMIC(品番PN1、PN2)を開発することによって開発可能である。そして、2種類のPMIC(品番PN1、PN2)を開発すれば、例えば電源システム100を含む
図3に示す各電源システムを開発することができる。つまり、例えば
図3に示す各電源システムは、多種多様な顧客要求に低コストで対応可能である。
【0029】
次に、通信プロトコルについて説明する。
【0030】
図4は、PMICの概略構成例を示す図である。
図4に示すPMICは、電源回路11と、異常検知部12と、制御部13と、記憶部14と、グループ設定部15と、入力端子INと、出力端子OUT1~OUTnと、第1端子T1と、第2端子T2と、イネーブル端子ENと、を備える。品番PN1のPMICは7つの出力端子OUT1~OUT7を備え、品番PN2のPMICは2つの出力端子OUT1~OUT2を備える。電源システム100では、PMIC1が品番PN1のPMICであり、PMIC2~6が品番PN2のPMICである。したがって、PMIC1は7つの出力端子OUT1~OUT7を備え、PMIC2~6はそれぞれ2つの出力端子OUT1~OUT2を備える。
【0031】
電源回路11は、入力端子INに印加される入力電圧VINを出力電圧VOUT1~VOUTnに変換し、出力電圧VOUT1~VOUTnを出力端子OUT1~OUTnに供給する。
【0032】
異常検知部12は、電源回路11の異常を検知し、検知結果を制御部13に出力する。異常の例としては、各出力電圧VOUT1~VOUTnの過電圧、各出力電圧VOUT1~VOUTnの低電圧、各出力端子OUT1~OUTnに供給する電流の過電流等を挙げることができる。異常検知部12は、出力端子OUT1~OUTnのどの系統で異常が発生しているかを把握して異常を検知する。
【0033】
制御部13は、電源回路11を制御する。言い換えると、制御部13は、電源回路11を管理する。制御部13は、確認部13Aと、調停部13Bと、同期確認部13Cと、クロック信号処理部13Dと、送受信部13Eと、を備える。
【0034】
制御部13は、イネーブル端子ENにHighレベルの電圧が印加されているときにPMICをイネーブル状態にし、イネーブル端子ENにLowレベルの電圧が印加されているときにPMICをディセーブル状態にする。
【0035】
確認部13Aは、制御部13が第2伝送線8へのデータの送信を開始する前に、第2伝送線8がデータを伝送していないことを確認する。
【0036】
調停部13Bは、PMIC1~6のうちの複数が第2伝送線8へのデータの送信を予定している場合、制御部13が第2伝送線8へのデータの送信を開始する前に、データを送信する権限を調停する。
【0037】
同期確認部13Cは、制御部13が第2伝送線8へのデータの送信を開始する前に、クロック信号CLKに同期していることを確認する。
【0038】
クロック信号処理部13Dは、記憶部14に記憶されているデイバスIDによってPMICがマスターに設定されている場合(第1設定に設定されている場合)、クロック信号CLKを第1端子T1から出力する。
【0039】
クロック信号処理部13Dは、記憶部14に記憶されているデイバスIDによってPMICがスレーブに設定されている場合(第2設定に設定されている場合)、クロック信号CLKを第1端子T1から入力する。
【0040】
送受信部13Eは、第2端子T2に入力するデータをクロック信号CLKに基づき受信し、第2端子T2から出力するデータをクロック信号CLKに基づき送信する。
【0041】
グループ設定部15は、出力端子OUT1~OUTnをグループ分けする。グループ設定部15としては、例えばレジスタ等を用いることができる。電源システム100の全ての出力端子が複数のグループに分類されれば良いので、1つのPMICのグループ設定部15は、出力端子OUT1~OUTnを1つのグループに設定してもよく、出力端子OUT1~OUTnを複数のグループに設定してもよい。グループ設定部15の設定内容は、記憶部14に記憶されている内容、I2C等の外部通信等によって変更可能であることが望ましい。
【0042】
図5は、第1伝送線7に印加される電圧及び第2伝送線8に印加される電圧のタイムチャートである。より詳細には、
図5は、マスターであるPMIC1がデータを送信する場合の、第1伝送線7に印加される電圧V7及び第2伝送線8に印加される電圧V8のタイムチャートである。
【0043】
第2伝送線8のデータ通信のプロトコルでは、クロック信号CLKの1周期おき(
図5に示すグレー部分)に、第2伝送線8に印加される電圧V8がLOWレベルになる。したがって、第2伝送線8に印加される電圧V8のHIGHレベルがクロック信号CLKの4周期分継続していれば、第2伝送線8のデータ通信が行われていないことになる。
【0044】
図5では、PMIC1の確認部13Aは、クロック信号CLKの4周期分に渡って第2伝送線8に印加される電圧V8がHIGHレベルであれば、第2伝送線8がデータを伝送していないことを確認する。当該確認が取れたタイミング(
図5に示すタイミングt1)で、PMIC1の送受信部13Eは、第2伝送線8に印加される電圧V8をHIGHレベルからLOWレベルに切り替える。その後、PMIC1の送受信部13Eは、クロック信号CLKの1周期おき(
図5に示すグレー部分)に、第2伝送線8に印加される電圧V8をLOWレベルにする。
【0045】
PMIC1の送受信部13Eは、調停期間の所定時間(調停期間でのクロック信号CLKの最初の1周期分)において第2伝送線8に印加される電圧V8をLOWレベルにする。PMIC1の調停部13Bは、調停期間の第2伝送線8に印加される電圧V8のレベルに基づき、他のPMICであるPMIC2~6がデータ通信を開始しようとしていないことを確認する。より詳細には、PMIC1の調停部13Bは、調停期間でのクロック信号CLKの3,5,7,9,11番目の1周期分において第2伝送線8に印加される電圧V8がHIGHレベルであるので、他のPMICであるPMIC2~6がデータ通信を開始しようとしていないことを確認する。
【0046】
調停期間でのクロック信号CLKの最後の4周期分において、PMIC1~6の各送受信部13Eは、第2伝送線8に印加される電圧V8をクロック信号CLKの1周期毎にLOWレベル、LOWレベル、HIGHレベル、LOWレベルの順に遷移させる。
【0047】
PMIC1の同期確認部13Cは、調停期間でのクロック信号CLKの最後の4周期分において、第2伝送線8に印加される電圧V8がクロック信号CLKの1周期毎にLOWレベル、LOWレベル、HIGHレベル、LOWレベルの順に遷移しているか否かを確認する。第2伝送線8に印加される電圧V8がクロック信号CLKの1周期毎にLOWレベル、LOWレベル、HIGHレベル、LOWレベルの順に遷移していなければ、PMIC1~6で同期がとれていないので、PMIC1の送受信部13Eは、データの送信を中止する。
【0048】
第2伝送線8に印加される電圧V8がクロック信号CLKの1周期毎にLOWレベル、LOWレベル、HIGHレベル、LOWレベルの順に遷移していれば、PMIC1の送受信部13Eは、データ通信期間において、データ送信先のPMICのアドレスと、データ送信先のPMICに送るデータと、を順に送信する。その後、PMIC1の送受信部13Eは、CRCコード通信期間において、データ通信期間のアドレス及びデータに対応するCRCコードをデータ送信先のPMICに送り、データ送信先のPMICの送受信部13Eは、CRCチェック期間において、CRCチェック結果をPMIC1に送る。
【0049】
図6は、第1伝送線7に印加される電圧及び第2伝送線8に印加される電圧のタイムチャートである。より詳細には、
図6は、スレーブ1であるPMIC2がデータを送信する場合の、第1伝送線7に印加される電圧V7及び第2伝送線8に印加される電圧V8のタイムチャートである。
【0050】
図6では、PMIC2の確認部13Aは、クロック信号CLKの4周期分に渡って第2伝送線8に印加される電圧V8がHIGHレベルであれば、第2伝送線8がデータを伝送していないことを確認する。当該確認が取れたタイミング(
図6に示すタイミングt1)で、PMIC2の送受信部13Eは、第2伝送線8に印加される電圧V8をHIGHレベルからLOWレベルに切り替える。その後、PMIC2の送受信部13Eは、クロック信号CLKの1周期おき(
図6に示すグレー部分)に、第2伝送線8に印加される電圧V8をLOWレベルにする。
【0051】
PMIC2の送受信部13Eは、調停期間の所定時間(調停期間でのクロック信号CLKの3番目の1周期分)において第2伝送線8に印加される電圧V8をLOWレベルにする。PMIC2の調停部13Bは、調停期間の第2伝送線8に印加される電圧V8のレベルに基づき、他のPMICであるPMIC1,3~6がデータ通信を開始しようとしていないことを確認する。より詳細には、PMIC2の調停部13Bは、調停期間でのクロック信号CLKの1,5,7,9,11番目の1周期分において第2伝送線8に印加される電圧V8がHIGHレベルであるので、他のPMICであるPMIC1,3~6がデータ通信を開始しようとしていないことを確認する。
【0052】
調停期間でのクロック信号CLKの最後の4周期分において、PMIC1~6の各送受信部13Eは、第2伝送線8に印加される電圧V8をクロック信号CLKの1周期毎にLOWレベル、LOWレベル、HIGHレベル、LOWレベルの順に遷移させる。
【0053】
PMIC2の同期確認部13Cは、調停期間でのクロック信号CLKの最後の4周期分において、第2伝送線8に印加される電圧V8がクロック信号CLKの1周期毎にLOWレベル、LOWレベル、HIGHレベル、LOWレベルの順に遷移しているか否かを確認する。第2伝送線8に印加される電圧V8がクロック信号CLKの1周期毎にLOWレベル、LOWレベル、HIGHレベル、LOWレベルの順に遷移していなければ、PMIC1~6で同期がとれていないので、PMIC2の送受信部13Eは、データの送信を中止する。
【0054】
第2伝送線8に印加される電圧V8がクロック信号CLKの1周期毎にLOWレベル、LOWレベル、HIGHレベル、LOWレベルの順に遷移していれば、PMIC2の送受信部13Eは、データ通信期間において、データ送信先のPMICのアドレスと、データ送信先のPMICに送るデータと、を順に送信する。その後、PMIC2の送受信部13Eは、CRCコード通信期間において、データ通信期間のアドレス及びデータに対応するCRCコードをデータ送信先のPMICに送り、データ送信先のPMICの送受信部13Eは、CRCチェック期間において、CRCチェック結果をPMIC1に送る。
【0055】
図7は、第1伝送線7に印加される電圧及び第2伝送線8に印加される電圧のタイムチャートである。より詳細には、
図7は、スレーブ1であるPMIC2とスレーブ3であるPMIC4とがほぼ同時に第2伝送線8に印加される電圧V8をHIGHレベルからLOWレベルに切り替えた場合の、第1伝送線7に印加される電圧V7及び第2伝送線8に印加される電圧V8のタイムチャートである。
【0056】
図7では、PMIC2及び4それぞれの確認部13Aは、クロック信号CLKの4周期分に渡って第2伝送線8に印加される電圧V8がHIGHレベルであれば、第2伝送線8がデータを伝送していないことを確認する。当該確認が取れたタイミング(
図7に示すタイミングt1)で、PMIC2及び4それぞれの送受信部13Eは、第2伝送線8に印加される電圧V8をHIGHレベルからLOWレベルに切り替える。その後、PMIC2及び4それぞれの送受信部13Eは、調停期間終了後まで、クロック信号CLKの1周期おき(
図7に示すグレー部分)に、第2伝送線8に印加される電圧V8をLOWレベルにし、PMIC4の送受信部13Eは、調停期間終了後、クロック信号CLKの1周期おき(
図7に示すグレー部分)に、第2伝送線8に印加される電圧V8をLOWレベルにする。
【0057】
PMIC2の送受信部13Eは、調停期間の所定時間(調停期間でのクロック信号CLKの3番目の1周期分)において第2伝送線8に印加される電圧V8をLOWレベルにする。PMIC4の送受信部13Eは、調停期間の所定時間(調停期間でのクロック信号CLKの7番目の1周期分)において第2伝送線8に印加される電圧V8をLOWレベルにする。PMIC2の調停部13Bは、調停期間の第2伝送線8に印加される電圧V8のレベルに基づき、他のPMICであるPMIC4がデータ通信を開始しようとしていることを確認する。より詳細には、PMIC2の調停部13Bは、調停期間でのクロック信号CLKの7番目の1周期分において第2伝送線8に印加される電圧V8がLOWレベルであるので、他のPMICであるPMIC4がデータ通信を開始しようとしていることを確認する。PMIC4の調停部13Bは、調停期間の第2伝送線8に印加される電圧V8のレベルに基づき、他のPMICであるPMIC2がデータ通信を開始しようとしていることを確認する。より詳細には、PMIC4の調停部13Bは、調停期間でのクロック信号CLKの3番目の1周期分において第2伝送線8に印加される電圧V8がLOWレベルであるので、他のPMICであるPMIC2がデータ通信を開始しようとしていることを確認する。
【0058】
調停期間でのクロック信号CLKの最後の4周期分において、PMIC1~6の各送受信部13Eは、第2伝送線8に印加される電圧V8をクロック信号CLKの1周期毎にLOWレベル、LOWレベル、HIGHレベル、LOWレベルの順に遷移させる。
【0059】
PMIC2の同期確認部13Cは、調停期間でのクロック信号CLKの最後の4周期分において、第2伝送線8に印加される電圧V8がクロック信号CLKの1周期毎にLOWレベル、LOWレベル、HIGHレベル、LOWレベルの順に遷移しているか否かを確認する。第2伝送線8に印加される電圧V8がクロック信号CLKの1周期毎にLOWレベル、LOWレベル、HIGHレベル、LOWレベルの順に遷移していなければ、PMIC1~6で同期がとれていないので、PMIC2の送受信部13Eは、データの送信を中止する。
【0060】
第2伝送線8に印加される電圧V8がクロック信号CLKの1周期毎にLOWレベル、LOWレベル、HIGHレベル、LOWレベルの順に遷移していれば、PMIC2の送受信部13Eは、データ通信期間において、データ送信先のPMICのアドレスと、データ送信先のPMICに送るデータと、を順に送信する。その後、PMIC2の送受信部13Eは、CRCコード通信期間において、データ通信期間のアドレス及びデータに対応するCRCコードをデータ送信先のPMICに送り、データ送信先のPMICの送受信部13Eは、CRCチェック期間において、CRCチェック結果をPMIC1に送る。
【0061】
各PMICの記憶部14は、データ通信の開始が競合した場合の優先順位を記憶している。本実施形態では、PMIC4の方がPMIC2よりも優先順位が高いものとする。
【0062】
PMIC2は、自己よりも優先順位が高いPMIC4がデータ通信を開始しようとしているので、データ通信の開始を断念する。
【0063】
PMIC4の同期確認部13Cは、調停期間でのクロック信号CLKの最後の4周期分において、第2伝送線8に印加される電圧V8がクロック信号CLKの1周期毎にLOWレベル、LOWレベル、HIGHレベル、LOWレベルの順に遷移しているか否かを確認する。第2伝送線8に印加される電圧V8がクロック信号CLKの1周期毎にLOWレベル、LOWレベル、HIGHレベル、LOWレベルの順に遷移していなければ、PMIC1~6で同期がとれていないので、PMIC4の送受信部13Eは、データの送信を中止する。
【0064】
第2伝送線8に印加される電圧V8がクロック信号CLKの1周期毎にLOWレベル、LOWレベル、HIGHレベル、LOWレベルの順に遷移していれば、PMIC4の送受信部13Eは、データ通信期間において、データ送信先のPMICのアドレスと、データ送信先のPMICに送るデータと、を順に送信する。その後、PMIC4の送受信部13Eは、CRCコード通信期間において、データ通信期間のアドレス及びデータに対応するCRCコードをデータ送信先のPMICに送り、データ送信先のPMICの送受信部13Eは、CRCチェック期間において、CRCチェック結果をPMIC1に送る。
【0065】
電源システム100では、確認期間を設けているので、複数のPMICにおけるデータ送信の競合を回避できることができる。さらに、電源システム100では、調停期間を設けているので、不運にも複数のPMICがほぼ同時にデータの送信を開始しようとした場合でも、複数のPMICにおけるデータ送信の競合を回避できることができる。
【0066】
次に、グループ単位でのシャットダウンについて説明する。
【0067】
電源システム100のグループ設定部は、PMIC1~6の各グループ設定部15を含む。
【0068】
電源システム100の制御部は、PMIC1~6の各制御部13を含み、PMIC1~6の各異常検知部12によって異常が検知されたグループに属する出力端子からの出力を停止し、PMIC1~6の各異常検知部12によって異常が検知されていないグループに属する出力端子からの出力を維持する。
【0069】
ここでは、電源システム100の17個の出力端子を4つのグループ(グループA~グループD)に分けた場合について説明する。
【0070】
図8は、電源システム100の出力状態の一例を示すタイムチャートである。なお、
図8は、起動後にグループAに異常が発生した場合のタイムチャートである。
図8中のイネーブル信号SENは、PMIC1~6の各イネーブル端子ENに供給される。
【0071】
イネーブル信号SENがLowレベルからHighレベルに切り替わると、グループAの出力端子からの出力~グループDの出力端子からの出力はシーケンシャルに起動する。
図8に示す例では、電源システム100の制御部は、グループA、グループB、グループC、グループDの順に起動させる。
【0072】
電源システム100の制御部は、グループAに異常が発生した時点t2で、グループA出力端子からの出力を停止し、異常が検知されていないグループB~グループDの出力端子からの出力を維持する。これにより、異常発生時の処理に自由度を持つ電源システムを実現することができる。
【0073】
イネーブル信号SENがHighレベルからLowレベルに切り替わると、グループAの出力端子からの出力~グループDの出力端子からの出力はシーケンシャルに停止する。
図8に示す例では、異常によりグループAの出力端子からの出力が既に停止しているので、グループAの出力端子からの出力停止はスキップされ、グループBの出力端子からの出力~グループDの出力端子からの出力がシーケンシャルに停止する。
【0074】
なお、
図9に示すように、電源システム100の制御部は、異常が検知されていないグループB~グループDの出力端子からの出力を維持した後、異常が検知されていないグループB~グループDの少なくとも一つの出力端子からの出力をシーケンシャルに停止する。
図9に示す例では、電源システム100の制御部は、異常が検知されていないグループB~グループDの出力端子からの出力全てを、グループB、グループC、グループDの順に停止させる。これにより、異常発生時の処理により一層自由度を持つ電源システムを実現することができる。
【0075】
図10は、一実施形態に係る車両Xの外観図である。車両Xは、電源システム100を備える。また、車両Xは、バッテリ(不図示)を備える。バッテリ(不図示)から出力される電圧は、PMIC1~6の入力電圧となる。電源システム100は、車両Xに搭載される複数の車載機器(不図示)の電源装置となる。
【0076】
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0077】
例えば、PMIC1~6間のデータ通信の手法は、上記実施形態以外のものであってもよい。
【0078】
上述した電源システム100は6個のPMICを備える構成であったが、電源システムが備えるPMIC(第1半導体集積回路及び第2半導体集積回路)の総数は6個に限定されることはなく、5個以下であってもよく7個以上であってもよい。
【0079】
なお、複数のPMICを備える電源システムとして、
図3には、2個のPMICを備える2種類の電源システム(システム番号「2」の電源システム及びシステム番号「3」の電源システム)、3個のPMICを備える2種類の電源システム(システム番号「4」の電源システム及びシステム番号「5」の電源システム)、4個のPMICを備える2種類の電源システム(システム番号「6」の電源システム及びシステム番号「7」の電源システム)、5個のPMICを備える2種類の電源システム(システム番号「8」の電源システム及びシステム番号「9」の電源システム)、並びに6個のPMICを備える2種類の電源システム(システム番号「10」の電源システム及びシステム番号「11」の電源システム)しか記載されていないが、これらはあくまで例示に過ぎない。
【0080】
また例えば、電源システムは単一のPMICを備える構成であってもよい。この場合、PMICは複数の出力端子を備え、当該複数の出力端子が複数のグループに分けられるようにすればよい。
【符号の説明】
【0081】
100 電源システム
1 PMIC(第1半導体集積回路の例)
2~6 PMIC(第2半導体集積回路の例)
7 第1伝送線
8 第2伝送線
11 電源回路
12 異常検知部
13 制御部
13A 確認部
13B 調停部
13C 同期確認部
13D クロック信号処理部
13E 送受信部
14 記憶部
15 グループ設定部
EN イネーブル端子
IN 入力端子
OUT1~OUTn 出力端子
T1 第1端子
T2 第2端子
X 車両