(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144022
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】硬化性シロキサン誘導体
(51)【国際特許分類】
C08G 77/26 20060101AFI20220926BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C08G77/26
C07F7/18 U
C07F7/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044856
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】金谷 慎吾
【テーマコード(参考)】
4H049
4J246
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ28
4H049VQ64
4H049VR21
4H049VR22
4H049VR42
4H049VR43
4H049VU20
4H049VW01
4J246AA03
4J246AB15
4J246BA04X
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4J246BB022
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4J246CB02
4J246FA071
4J246FA131
4J246FA441
4J246FB081
4J246GA04
4J246GC53
4J246GD08
4J246HA65
(57)【要約】
【課題】高誘電率の硬化物を形成することのできる硬化性シロキサン誘導体を提供する。
【解決手段】対アニオンを有するイミダゾリウム基含有トリアルコキシシラン(A)および反応性官能基含有アルコキシシラン(B)を含み、(A)成分の含有量が全モノマー成分中25mol%以上である硬化性シロキサン誘導体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対アニオンを有するイミダゾリウム基含有トリアルコキシシラン(A)および
反応性官能基含有アルコキシシラン(B)を含み、
(A)成分の含有量が全モノマー成分中25mol%以上である硬化性シロキサン誘導体。
【請求項2】
対アニオンがCl-、Br-、I-、F-、NO3
-、NO2
-、BF4
-、PF6
-、CF3COO-、CF3SO3
-、(CF3SO2)2N-、(CF3SO2)3C-、(C2F5SO2)2N-、(CN)2N-、CH3COO-、CH3SO3
-、C3H7SO3
-、およびHOOC(CH)2COO-からなる群から選択される1以上である、請求項1に記載の硬化性シロキサン誘導体。
【請求項3】
(A)成分の含有量が全モノマー成分中25~60mol%である、請求項1または2に記載の硬化性シロキサン誘導体。
【請求項4】
(B)成分がジアルコキシシランである、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性シロキサン誘導体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性シロキサン誘導体を含む硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
反応性希釈剤をさらに含む、請求項5に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項8】
比誘電率が5以上である請求項7に記載の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、硬化性シロキサン誘導体に関する。
【0002】
スマートフォン、タブレットをはじめとした電子機器は高機能化・小型化が進み、無線通信のアンテナに割り当てられるスペースは縮小する傾向がある。アンテナの感度を維持しつつ小型化を進めるために、高誘電率の材料が求められている。アンテナの他に、電力材料や指紋認証センサーなどの用途でも、高誘電率の材料が求められている。
【0003】
これまで、チタン酸バリウム等の高誘電率の無機フィラーと、エポキシ樹脂やポリカーボネート樹脂等の複合体が実用化されている。例えば、特許文献1は不飽和基を有するポリシロキサンからなるポリマーマトリックス中に導電性繊維および非導電性微粒子を配合することを記載している。しかし、無機フィラーの充填量には上限があり、樹脂成分のさらなる誘電率向上が求められている。
【0004】
特許文献2には、イミダゾリウム基含有トリアルコキシシランとテトラエトキシシランのシリケートプレポリマーにより、半導体基板とフォトレジストの間の中間膜を形成する発明が開示されており、当該中間膜はハードマスクや反射防止膜として機能することが記載されている。しかし、リソグラフィー工程で良好なパターン形状を得るために、シラン化合物全体のうち、イミダゾリウム基含有トリアルコキシシランの配合量はごく微量とすべきことが記載されている。また、硬化物の誘電率は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-519705号公報
【特許文献2】国際公開WO2010/021290
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高誘電率の硬化物を形成することのできる硬化性シロキサン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々の成分を検討した結果、特定のイオン液体成分をシロキサン骨格に導入した硬化性シロキサン誘導体は、その硬化物が高い誘電率を有することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、対アニオンを有するイミダゾリウム基含有トリアルコキシシラン(A)および反応性官能基含有アルコキシシラン(B)を含み、(A)成分の含有量が全モノマー成分中25mol%以上である硬化性シロキサン誘導体に関する。
【0009】
対アニオンがCl-、Br-、I-、F-、NO3
-、NO2
-、BF4
-、PF6
-、CF3COO-、CF3SO3
-、(CF3SO2)2N-、(CF3SO2)3C-、(C2F5SO2)2N-、(CN)2N-、CH3COO-、CH3SO3
-、C3H7SO3
-、およびHOOC(CH)2COO-からなる群から選択される1以上であることが好ましい。
【0010】
(A)成分を全モノマー成分中25~60mol%含むことが好ましい。
【0011】
(B)成分がジアルコキシシランであることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、前記硬化性シロキサン誘導体を含む硬化性樹脂組成物に関する。
【0013】
硬化性樹脂組成物は、反応性希釈剤をさらに含むことが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前記硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物に関する。
【0015】
前記硬化物の比誘電率が5以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の硬化性シロキサン誘導体の硬化物は、高い誘電率を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<<硬化性シロキサン誘導体>>
本発明は、対アニオンを有するイミダゾリウム基含有トリアルコキシシラン(A)および反応性官能基含有アルコキシシラン(B)を含み、(A)成分の含有量が全モノマー成分中25mol%以上である硬化性シロキサン誘導体に関する。イミダゾリウム基含有トリアルコキシシラン(A)を所定の量で反応させることにより、この硬化性シロキサン誘導体の硬化物は高い誘電率を有する。
【0018】
<対アニオンを有するイミダゾリウム基含有トリアルコキシシラン(A)>
対アニオンを有するイミダゾリウム基含有トリアルコキシシラン(A)は、下記式(1)で表される。
【化1】
【0019】
式(1)中、R1、R2は独立に、炭素数1~8のアルキル基を表し、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が挙げられる。これらの中でもメチル基、エチル基が好ましい。R2は環の2位に付加されていることが好ましい。n=0~3であるが、0または1が好ましい。
【0020】
式(1)中、R3は炭素数1~12のアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基を表す。
【0021】
R3がアルキレン基である場合、炭素数は1~6が好ましい。アルキレン基の具体例としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基が挙げられる。
【0022】
R3がアリーレン基である場合、炭素数は6~10が好ましい。アリーレン基の具体例としてはフェニレン基、ベンジレン基、ナフチレン基が挙げられる。
【0023】
式(1)中、OR4で表されるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~4のアルコキシ基が挙げられる。これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0024】
式(1)中、X-は、イミダゾリウム基の対アニオンであり、特に限定されないが、例えばCl-、Br-、I-、F-、NO3
-、NO2
-、BF4
-、PF6
-、CF3COO-、CF3SO3
-、(CF3SO2)2N-、(CF3SO2)3C-、(C2F5SO2)2N-、(CN)2N-、CH3COO-、CH3SO3
-、C3H7SO3
-、HOOC(CH)2COO-が挙げられる。これらの中でもCl-、Br-、I-、F-、CF3SO3
-、CF3COO-が好ましく、Cl-、Br-、I-がより好ましい。
【0025】
対アニオンを有するイミダゾリウム基含有トリアルコキシシラン(A)の具体例としては、下記式(2)の化合物
【化2】
下記式(3)の化合物
【化3】
が挙げられる。
【0026】
対アニオンを有するイミダゾリウム基含有トリアルコキシシランは、イミダゾリウム化合物とイミダゾリウム化合物に結合しうる反応性官能基Xを有するトリアルコキシシランとの反応により得ることができる。イミダゾリウム化合物は、下記式(4)で表される。
【0027】
【0028】
式(4)中、R1、R2、nは、式(1)について前述した通りである。イミダゾリウム化合物の具体例としては、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1―エチルイミダゾール、1―プロピルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、1-ヘキシルイミダゾールなどが挙げられる。
【0029】
イミダゾリウム化合物に結合しうる反応性官能基Xを有するトリアルコキシシランは、下記一般式(5):
X-R3-Si-(OR4)3(5)
で表される。式(5)中、R3、R4、Xは式(1)について前述した通りである。
【0030】
式(5)中、Xはイミダゾリウム化合物に結合しうる反応性官能基であり、具体例としては式(1)について前述したXと同じものが挙げられるが、Cl、Br、Iが好ましい。イミダゾリウム化合物とトリアルコキシシランの反応と同時に所望の対アニオンを生成させることができない場合は、さらなる工程において公知の方法にて対アニオンを交換することができる。
【0031】
イミダゾリウム化合物に結合しうる反応性官能基Xを有するトリアルコキシシランとしては3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-クロロメチルトリメトキシシラン、3-クロロメチルトリエトキシシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリメトキシシラン、4-(クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、3―ブロモプロピルトリメトキシシラン、3-ブロモプロピルトリメトキシシラン、3―ブロモヘプチルトリメトキシシラン、3―ブロモウンデシルトリメトキシシラン、3-ヨードプロピルトリメトキシシラン、3-ヨードプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0032】
イミダゾリウム化合物とトリアルコキシシランを、例えば無溶媒系で撹拌しながら70~120℃で10~48時間反応させることにより、イミダゾリウム基含有トリアルコキシシラン(A)を得ることができる。
【0033】
<反応性官能基含有アルコキシシラン(B)>
反応性官能基含有アルコキシシラン(B)は、下記式(6)で表される。
R5-Si(OR6)mR7
3-m(6)
【0034】
式(6)中、R5は反応性官能基を有する炭素数1~20のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、R6は炭素数1~5のアルキル基を表し、R7は炭素数1~10のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。
【0035】
反応性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、脂環式エポキシ基、グリシジル基、アリル基などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性や耐久性の観点から、アクリロイル基、メタクリロイル基、脂環式エポキシ基、グリシジル基が好ましい。
【0036】
式(6)中、mは1~3の整数を表すが、2~3が好ましく、硬化性シロキサン誘導体のハンドリング性を向上させるために、2がより好ましい。
【0037】
反応性官能基含有アルコキシシラン(B)の具体例としては、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらの中でも、ジアルコキシシランが好ましく、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランがより好ましい。
【0038】
<硬化性シロキサン誘導体の合成>
対アニオンを有するイミダゾリウム基含有トリアルコキシシラン(A)と反応性官能基含有アルコキシシラン(B)との反応は、例えば、両成分が有するアルコキシ基の加水分解による水酸基の形成、及び、形成された水酸基同士の縮合反応により行われる。これらの反応は、(A)成分と(B)成分を共存させて一段階で行うことができる。両成分中に水酸基が存在する場合には、その水酸基が直接、縮合反応に用いられる。反応時の温度条件は特に限定されないが、好ましくは20~100℃、より好ましくは40~60℃である。時間条件は特に限定されないが、好ましくは10~72時間、より好ましくは15~50時間である。
【0039】
硬化性シロキサン誘導体に含まれる全モノマー成分中、対アニオンを有するイミダゾリウム基含有トリアルコキシシラン(A)の含有量は25mol%以上であるが、30mol%以上が好ましく、35mol%以上がより好ましい。25mol%未満では、硬化性シロキサン誘導体の硬化物の誘電率が不十分となる傾向がある。また、対アニオンを有するイミダゾリウム基含有トリアルコキシシラン(A)の含有量の上限は特に限定されないが、60mol%以下が好ましく、50mol%以下がより好ましい。50mol%を超えると高粘度となりハンドリングが難しくなる傾向がある。なお、ここでいう「硬化性シロキサン誘導体に含まれる全モノマー成分」とは、対アニオンを有するイミダゾリウム基含有トリアルコキシシラン(A)と反応性官能基含有アルコキシシラン(B)に加えて、任意で含まれていてもよい、反応性官能基を含有しないシラン化合物も含めた成分のことを意味する。
【0040】
(A)成分と(B)成分の反応は酸性条件、または塩基性条件で行われる。酸性条件はpH2~5が好ましく、pH3~4がより好ましい。pH調整のためにはギ酸、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸、ホウ酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルフォン酸、及びp-トルエンスルホン酸等の水溶液を添加することができる。この時、反応液中の水分量は、(A)成分と(B)成分の合計量100質量部に対し、5~1000質量部が好ましく、10~500質量部がより好ましい。
【0041】
塩基性条件はpH8~12が好ましく、pH8~10がより好ましい。pH調整のために水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等の水溶液を添加することができる。
【0042】
(A)成分と(B)成分との反応により硬化性シロキサン誘導体が得られるが、硬化性シロキサン誘導体中には、未反応のアルコキシ基、アルコキシ基が加水分解した水酸基が一部残存していてもよい。
【0043】
(A)成分と(B)成分との反応は、溶媒、反応性官能基を含有しないシラン化合物等の任意成分の存在下で行ってもよい。
【0044】
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチル-1-アセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類を挙げることができる。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中では、硬化性シロキサン誘導体を効率的に形成でき、得られた硬化性シロキサン誘導体のポットライフを向上させられることから、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類が好ましい。溶媒の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計量100質量部に対し、50~2000質量部が好ましく、100~1000質量部がより好ましい。
【0045】
反応性官能基を含有しないシラン化合物としては、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランが挙げられる。
【0046】
モノアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、メトキシ(ジメチル)オクタデシルシラン、メトキシ(ジメチル)-n-オクチルシランが挙げられる。
【0047】
ジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0048】
トリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシランが挙げられる。
【0049】
テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランが挙げられる。
【0050】
(A)成分と(B)成分との反応を、反応性官能基を含有しないシラン化合物の存在下で行う場合、反応性官能基を含有しないシラン化合物の合計量は、反応性官能基含有アルコキシシラン(B)100重量部に対し0.5~10重量部が好ましく、1~5重量部がより好ましい。
【0051】
(A)成分と(B)成分との反応の終了後は、必要に応じて反応溶液のpHの調整や溶媒の留去を行ってもよい。
【0052】
硬化性シロキサン誘導体の重量平均分子量は500~30,000が好ましく、1,000~20,000がより好ましい。500未満では硬化性シロキサン誘導体が硬化不良となる傾向があり、30,000を超えると硬化性シロキサン誘導体のゲル化が生じやすく安定性が低下する傾向がある。
【0053】
硬化性シロキサン誘導体の粘度は50~50000mPa・sが好ましく100~30000mPa・sがより好ましい。粘度は、例えばE型粘度計、B型粘度計により求められる。
【0054】
<<硬化性樹脂組成物>>
硬化性樹脂組成物は、上記硬化性シロキサン誘導体を含む。硬化性樹脂組成物中、硬化性シロキサン誘導体の含有量は10~99重量%が好ましく、50~98重量%がより好ましい。
【0055】
硬化性樹脂組成物は、硬化性シロキサン誘導体に加えて、任意に他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、反応性希釈剤、溶媒、アルコキシシラン、無機微粒子、重合開始剤、レベリング剤、界面活性剤、光増感剤、消泡剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、増粘剤等が挙げられる。
【0056】
反応性希釈剤としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、ベンゼン環を多数有した多官能型であるテトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン型又はトリス(ヒドロキシフェニル)メタン型、ビフェニル型、トリフェノールメタン型、ナフタレン型、オルソノボラック型、ジシクロペンタジエン型、アミノフェノール型、脂環式等のエポキシ樹脂、シリコーンエポキシ樹脂等のエポキシ樹脂;ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、レゾルシンジグリシジルエーテル、カテコールジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、t-ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4-ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテルジグリシジルエーテル、ジメチルジ-t-ブチルビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物;3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド等の脂環式エポキシ化合物;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジメチロールシクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,3-シクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,2-シクロヘキサンジグリシジルエーテル、ジメチロールジシクロペンタジエンジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロテレフタル酸ジグリシジルエステル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物;2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート等のアクリレート;メラミン等が挙げられる。
【0057】
反応性希釈剤の配合量は、硬化性シロキサン誘導体100重量部に対して1~200重量部が好ましく、5~100重量部がより好ましく、さらに好ましくは10~50重量部である。
【0058】
溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチル-1-アセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類が挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中では、硬化性シロキサン誘導体のポットライフを向上させられることから、エーテル類、ケトン類、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、またはそれらと水の混合溶媒が好ましい。
【0059】
アルコキシシランとしては、硬化性シロキサン誘導体の合成に使用可能なシラン化合物を使用することができる。
【0060】
無機微粒子としては特に限定されないが、例えば、金属酸化物微粒子、窒化物、2種以上の金属元素から構成される複合酸化物、金属酸化物に異種の元素がドープされた化合物等が挙げられる。金属酸化物微粒子として、具体的には、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化鉄(Fe2O3、FeO、Fe3O4)等が挙げられる。無機微粒子の配合量は、硬化性シロキサン誘導体100重量部に対して10~80重量部が好ましく、20~70重量部がより好ましい。
【0061】
重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤等を使用できる。これらの重合開始剤は単独で使用してもよく、併用してもよい。
【0062】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等を挙げることができる。
【0063】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)バラレート、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m-トルイルパーオキサイド等を挙げることができる。
【0064】
ラジカル重合開始剤の配合量は、硬化性シロキサン誘導体と反応性希釈剤の合計量100重量部に対して、0.1~25重量部が好ましく、0.5~15重量部がより好ましく、1~10重量部がさらに好ましい。
【0065】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、オニウム塩、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物などの、放射線により酸を発生する光酸発生剤を用いることができる。オニウム塩としては、例えばトリフレートあるいはヘキサフレートとのヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられ、ハロゲン含有化合物としては、ハロアルキル基含有炭化水素化合物あるいはハロアルキル基含有複素環式化合物、例えば、フェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、メトキシフェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジンなどの(トリクロロメチル)-s-トリアジン誘導体や、トリブロモネオペンチルアルコール、ヘキサブロモヘキサンなどの臭素化合物、ヘキサヨードヘキサンなどのヨウ素化合物などが挙げられる。また、ジアゾメタン化合物としては、例えばビス(トリフルオロメチルスルホニウム)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニウム)ジアゾメタンなどが挙げられる。スルホン化合物としては、例えばβ-ケトスルホン、β-スルホニルスルホン等が挙げられ、スルホン酸化合物としては、アルキル(C1-12)スルホン酸エステル、ハロアルキル(C1-12)スルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホナート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
光カチオン重合開始剤の配合量は、硬化性シロキサン誘導体と反応性希釈剤の合計量100重量部に対して、0.01~15重量部が好ましく、0.05~10重量部がより好ましく、0.1~5重量部がさらに好ましい。
【0067】
レベリング剤としては特に限定されず、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等のシロキサン系化合物;パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等のフッ素系化合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、プロピレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合体などのポリエーテル系化合物;ヤシ油脂肪酸アミン塩、ガムロジン等のカルボン酸;ヒマシ油硫酸エステル類、リン酸エステル、アルキルエーテル硫酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、スルホン酸エステル、コハク酸エステル等のエステル系化合物;アルキルアリールスルホン酸アミン塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホン酸塩化合物;ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸塩化合物;ヤシ油脂肪酸エタノールアマイド等のアミド化合物;アクリル系化合物等が挙げられる。
【0068】
レベリング剤の配合量は、硬化性樹脂組成物の固形分中、0.001~5重量%が好ましく、0.01~1重量%がより好ましく、0.05~0.5重量%がさらに好ましい。
【0069】
上記の硬化性樹脂組成物は、高誘電物品の製造用途に好適に使用することができる。
【0070】
<<硬化物>>
本発明の硬化物は、硬化性樹脂組成物を硬化することにより得られる。硬化条件は特に限定されない。硬化に露光が必要な場合、露光条件は特に限定されないが、例えば100~2000mJ/cm2の光照射量が挙げられる。
【0071】
硬化前に、硬化性樹脂組成物を成形してもよい。成形方法としては、注型、射出成型、トランスファー成形、3Dプリンターなどが挙げられる。
【0072】
硬化前に、硬化性樹脂組成物を基材に塗布してもよい。塗布は蒸着やスパッタリングなど一般的な方法により行うことができる。基材の材質としては、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂(PMMA)、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂等が挙げられる。基材の厚みは50~200μmが好ましい。必要に応じて、塗膜形成前に、基材にコロナ処理やプライマー処理を施してもよい。
【0073】
本発明の硬化物は、上記硬化性シロキサン誘導体の硬化物であるため、優れた比誘電率を有する。比誘電率は5以上であることが好ましく、比5.5以上であることが好ましく、比8以上であることがさらに好ましい。本発明の硬化物は、高い誘電率が求められるアンテナ、電力材料、指紋認証センサー、コネクタ、無線LAN装置、GPS装置などの材料として好適に使用できる。
【実施例0074】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
【0075】
(1)使用した薬品
(1-1)イミダゾリウム基含有トリアルコキシシラン
IL-S(後述する方法で作製)
(1-2)反応性官能基含有アルコキシシラン
3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業製、KBM-502)
(1-3)反応性官能基を含有しないアルコキシシラン
フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業製、KBM-103)
(1-4)反応性希釈剤
2-ヒドロキシメチルメタクリレート(日本触媒製、HEMA)
(1-5)光重合開始剤
1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IGM製、Omirad184)
(1-6)比較用樹脂
エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル製、JER828)の酸無水物硬化物
ポリカーボネート樹脂:パンライトL-1225Y(帝人製)
(1-7)触媒、溶媒
ギ酸(88%、富士フイルム和光純薬製)
エタノール(95%、林純薬工業製)
【0076】
(2)比誘電率の評価方法
実施例1~5、比較例1~4に記載の要領で、厚み2mm、20mm×20mmの試験片を作製し、以下の方法で比誘電率を求めた。
【0077】
アジレント・テクノロジー株式会社製PRECISION LCR METER 4284A型にDIELECTRIC TEST FIXTURE 16451Bを取り付け、1MHzの周波数にて平行板コンデンサ法により測定し、下記式により比誘電率を算出した。
【0078】
εr=(ta×Cp)/(A×ε0)
=(ta×Cp)/(π×(d/2)2×ε0)
εr:試料の比誘電率
ta:試料の平均の厚さ[m]
Cp:等価の並列容量[F]
A:主電極の面積[m2]
ε0:真空の誘電率(=8.854×10-12)
d:主電極の直径[m]
【0079】
(3)イミダゾリウム基含有トリアルコキシシラン(IL-S)の製造
50mLナスフラスコに3-クロロプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業製)10.0g(0.050mol)、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製)4.1g(0.050mol)仕込み、窒素気流下100℃で24時間撹拌し、下記式(2)の化合物を得た。反応の終点は、ガスクロマトグラフィー分析による原料ピークの消失で確認した。
【化5】
【0080】
(4)硬化性シロキサン誘導体の製造(合成例1~7)
(合成例1)300mLセパラブルフラスコにエタノール50g、蒸留水2.8g(0.2mol)、ギ酸1.1g(0.02mol)、IL-S14.4g(0.051mol)、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン35.6g(0.15mol)を仕込み、45℃で15時間反応を行った。続いてエバポレータで溶媒留去し、目的の硬化性シロキサン誘導体を40.6g得た。
【0081】
(合成例2)300mLセパラブルフラスコにエタノール50g、蒸留水2.8g(0.20mol)、ギ酸1.1g(0.020mol)、IL-S17.1g(0.061mol)、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン32.9g(0.14mol)を仕込み、45℃で15時間反応を行った。続いてエバポレータで溶媒留去し、目的の硬化性シロキサン誘導体を41.0g得た。
【0082】
(合成例3)300mLセパラブルフラスコにエタノール50g、蒸留水2.8g(0.20mol)、ギ酸1.1g(0.020mol)、IL-S19.7g(0.070mol)、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン30.3g(0.13mol)を仕込み、45℃で15時間反応を行った。続いてエバポレータで溶媒留去し、目的の硬化性シロキサン誘導体を41.2g得た。
【0083】
(合成例4)300mLセパラブルフラスコにエタノール50g、蒸留水2.8g(0.20mol)、ギ酸1.1g(0.020mol)、IL-S22.3g(0.079mol)、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン27.7g(0.12mol)を仕込み、45℃で15時間反応を行った。続いてエバポレータで溶媒留去し、目的の硬化性シロキサン誘導体を40.2g得た。
【0084】
(合成例5)300mLセパラブルフラスコにエタノール50g、蒸留水2.8g(0.20mol)、ギ酸1.1g(0.02mol)、IL-S27.4g(0.097mol)、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン22.6g(0.097mol)を仕込み、45℃で15時間反応を行った。続いてエバポレータで溶媒留去し、目的の硬化性シロキサン誘導体を40.7g得た。
【0085】
(合成例6)300mLセパラブルフラスコにエタノール50g、蒸留水2.0g(0.16mol)、ギ酸1.0g(0.020mol)、IL-S11.0g(0.039mol)、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン39.0g(0.16mol)を仕込み、45℃で15時間反応を行った。続いてエバポレータで溶媒留去し、目的の硬化性シロキサン誘導体を41.0g得た。
【0086】
(合成例7)300mLセパラブルフラスコにエタノール50g、蒸留水3.2g(0.23mol)、ギ酸1.2g(0.023mol)、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン18.1g(0.091mol)、フェニルトリメトキシシラン31.9g(0.14mol)を仕込み、45℃で15時間反応を行った。続いてエバポレータで溶媒留去し、目的の硬化性シロキサン誘導体を42.0g得た。
【0087】
合成例1~7で得られた硬化性シロキサン誘導体の粘度を測定した。結果を表1に示す。
【表1】
【0088】
(5)硬化物の製造
(5-1)実施例1~5、比較例1~2
(実施例1)20mL遮光スクリュー管に合成例1の硬化性シロキサン誘導体10g、Omirad184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、IGM製)を0.2g加え、ホットプレート付きマグネチックスターラーを用いて120℃で30分間撹拌して硬化性樹脂組成物を作製した。次に、硬化性樹脂組成物を、厚み2mmのガラス板をスペーサーとした2枚のスライドガラス(松浪ガラス製)に挟み、高圧水銀ランプで露光量500mJ/cm2照射して硬化物を作製した。
【0089】
(実施例2~5、比較例1~2)
20mL遮光スクリュー管に表2の重量比で原料を仕込み、実施例1と同様に硬化物を作製した。
た。
【0090】
(5-2)比較例3~4
(比較例3)300mLセパラブルフラスコにJER828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル製)11g、硬化剤としてリカシッドMH-700(4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロフタル酸の混合物、新日本理化製)9g、硬化促進剤として2-メチル4-エチルイミダゾール(東京化成工業製)0.1gを加え、室温で30分間撹拌した。次に樹脂組成物を所定の金型に流し込み、80℃1時間、150℃3時間の加熱により硬化物を作製した。
【0091】
(比較例4)エンジニアリングテストピース社より入手したポリカ試験片(パンライトL-1225Y、帝人製)を用いた。
【0092】
実施例1~5、比較例1~4で得られた硬化物の比誘電率を測定した。結果を表2に示す。
【0093】
【0094】
比較例1~4では、硬化性シロキサン誘導体中に対アニオンを有するイミダゾリウム基含有トリアルコキシシラン(A)を含まないか、またはその含有量が小さいため、誘電率に劣っていた。実施例1~5では、無機フィラーを含まないにもかかわらず樹脂単体で高い誘電率が確認された。