(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144040
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】モジュールブロック形状測定方法、モジュールブロック形状測定システム、および、炉建設方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20220926BHJP
C10B 29/02 20060101ALI20220926BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20220926BHJP
F27D 1/16 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G01B11/24 A
C10B29/02
F27D1/00 V
F27D1/16 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044880
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100195785
【弁理士】
【氏名又は名称】市枝 信之
(72)【発明者】
【氏名】小原 祐司
(72)【発明者】
【氏名】岡田 淳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 友彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 健一
【テーマコード(参考)】
2F065
4K051
【Fターム(参考)】
2F065AA06
2F065AA53
2F065CC14
2F065DD03
2F065EE02
2F065FF11
2F065FF13
2F065FF61
2F065GG04
2F065HH05
2F065HH13
2F065JJ05
2F065MM14
2F065PP02
2F065PP22
2F065QQ21
2F065RR05
4K051AA08
4K051AB03
4K051BH00
4K051LF01
(57)【要約】
【課題】モジュールブロックの3次元形状を精度良く効率的に測定することができる測定方法および測定システムを提供する。
【解決手段】複数の定型耐火物を積み上げて製造されたモジュールブロックの形状を測定するモジュールブロック形状測定方法であって、測定対象のモジュールブロックの近傍に3次元形状データが既知である基準部材を配置する配置工程と、複数の測定手段を用いて、前記基準部材の少なくとも一部が含まれるように前記モジュールブロックの異なる部分の形状を測定して複数の3次元形状データを得る測定工程と、前記測定工程で測定された複数の3次元形状データのそれぞれを、前記3次元形状データに含まれる前記基準部材の3次元形状データを前記基準部材の既知の3次元形状データにフィッティングすることにより補正する補正工程とを含む、モジュールブロック形状測定方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の定型耐火物を積み上げて製造されたモジュールブロックの形状を測定するモジュールブロック形状測定方法であって、
測定対象のモジュールブロックの近傍に3次元形状データが既知である基準部材を配置する配置工程と、
複数の測定手段を用いて、前記基準部材の少なくとも一部が含まれるように前記モジュールブロックの異なる部分の形状を測定して複数の3次元形状データを得る測定工程と、
前記測定工程で測定された複数の3次元形状データのそれぞれを、前記3次元形状データに含まれる前記基準部材の3次元形状データを前記基準部材の既知の3次元形状データにフィッティングすることにより補正する補正工程とを含む、モジュールブロック形状測定方法。
【請求項2】
前記測定手段が、レーザーを線状に照射して形状を測定するプロファイルセンサと、前記プロファイルセンサを前記モジュールブロックに対して相対的に移動させる移動手段とを備える、請求項1に記載のモジュールブロック形状測定方法。
【請求項3】
前記測定工程において、前記モジュールブロックの少なくとも上面と下面の形状を測定する、請求項1または2に記載のモジュールブロック形状測定方法。
【請求項4】
複数の定型耐火物を積み上げて製造されたモジュールブロックの形状を測定するモジュールブロック形状測定システムであって、
3次元形状データが既知である基準部材と、
前記基準部材の少なくとも一部が含まれるように前記モジュールブロックの異なる部分の形状を測定し、複数の3次元形状データを得る複数の測定手段と、
前記複数の測定手段で測定された複数の3次元形状データのそれぞれを、前記3次元形状データに含まれる前記基準部材の3次元形状データを前記基準部材の既知の3次元形状データにフィッティングすることにより補正する演算手段とを備える、モジュールブロック形状測定システム。
【請求項5】
前記測定手段が、レーザーを線状に照射して形状を測定するプロファイルセンサと、前記プロファイルセンサを前記モジュールブロックに対して相対的に移動させる移動手段とを備える、請求項4に記載のモジュールブロック形状測定システム。
【請求項6】
前記複数の測定手段が、前記モジュールブロックの少なくとも上面と下面の形状を測定するよう構成されている、請求項4または5に記載のモジュールブロック形状測定システム。
【請求項7】
複数のモジュールブロックを用いて炉を建設する炉建設方法であって、
前記炉の建設場所以外の場所において複数の定型耐火物を積み上げてモジュールブロックとするモジュールブロック製造工程と、
請求項1~3のいずれか一項に記載のモジュールブロック形状測定方法により、前記モジュールブロック製造工程で得られたモジュールブロックの形状を測定し、前記モジュールブロックの3次元形状データを得る測定工程と、
前記測定工程で得た前記モジュールブロックの3次元形状データを用いて、前記モジュールブロックをコンピュータ上で仮想的に据え付ける仮想据付を行い、嵌め合いが良好なモジュールブロックの組み合わせを選択する仮想据付工程と、
前記仮想据付工程の結果に基づいて、前記モジュールブロックを前記炉の建設場所へ運搬するモジュールブロック運搬工程と、
前記モジュールブロックを設置する位置にモルタルを塗布するモルタル塗布工程と、
前記モルタルが塗布された位置に前記モジュールブロック運搬工程で運搬されたモジュールブロックを据え付けるモジュールブロック設置工程とを備える、炉建設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュールブロック形状測定方法、モジュールブロック形状測定システム、および、炉建設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄に用いられる冶金用コークスは、室炉式コークス炉で石炭を乾留することによって製造される。室炉式コークス炉は、炭化室と、該炭化室に熱を供給する燃焼室とを炉幅方向に交互に配置することによって構成されており、炭化室と燃焼室とを隔てる耐火煉瓦等の定型耐火物を介して燃焼室から炭化室へ熱が供給される。室炉式コークス炉には100門以上の炉室を備えるものもあり、そのような室炉式コークス炉は、全長100m以上、高さ10m以上におよぶ巨大煉瓦構造物といえる。
【0003】
コークス炉を構成する定型耐火物は、一般的な建築物用の煉瓦と異なり、上面から見た形状が長方形、台形、L字型など、複雑な形状をしている。さらに、それら定型耐火物の側面、上面、底面には、ダボと呼ばれるズレ防止用の嵌合凸部や、ホゾと呼ばれるズレ防止用の嵌合凹部が設けられている場合がある。コークス炉は、このように極めて複雑な形状を有する定型耐火物を組み合わせて建設される。
【0004】
このような定型耐火物の形状の複雑さのため、コークス炉の築炉は、現在、築炉工による手積み作業で行われている。手積みによる築炉では、定型耐火物を積む位置にコテ等の工具を用いて所定の目地厚になるようにモルタルを塗布し、次いで、モルタル上へ定型耐火物を積み上げるという作業を繰り返し行う必要がある。その際には、複雑な形状の定型耐火物の表面にモルタルを均一に塗布する必要があるなど、極めて高度な技能が要求されるが、そのような技能を有する熟練した築炉工は常に不足している。また、手作業でモルタルの塗布と定型耐火物の積み上げを行う築炉作業は極めて重労働といえる。
【0005】
以上の理由から、定型耐火物を積み上げる作業を、少ない人手で効率的に行う方法の開発が求められている。
【0006】
例えば、特許文献1では、予めコークス炉の建設場所以外の場所で、水平方向に複数の煉瓦を並べた煉瓦層を、鉛直方向に複数段積層したモジュールブロックを製作し、建設場所に運搬して据え付ける方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1で提案されている方法ではスペースに限りがあるコークス炉建設場所ではない別の場所でモジュールブロックを製造するため、十分な作業スペースを確保することができる。そしてその結果、作業効率が向上することに加え、定型耐火物の積み上げやモルタルの塗布を、ロボット等を用いて自動化することも容易である。
【0009】
しかし、本発明者らの検討の結果、特許文献1などの従来の方法には、以下に述べるようにさらなる改善の余地があることが分かった。
【0010】
すなわち、コークス炉の建設に使用される定型耐火物は焼成して製造されるものであるため、寸法にばらつきがある。例えば、一般的に使用される定型耐火物では、平面視や側面視における対角線距離で1~2mm程度の寸法誤差があり、その寸法誤差は個々の定型耐火物ごとに異なっている。そのため、定型耐火物を積み上げて得られるモジュールブロックにも、個体ごとに形状のばらつきが発生する。
【0011】
特に、コークス炉においては、石炭を炭化室に挿入して乾留し、得られたコークスを側面から押し出して排出するため、炭化室の壁面には高い平坦度が要求される。したがって、モジュールブロックの製造時には、炭化室の壁面が要求される平坦度を備えるように定型耐火物の積み方を調整することが考えられるが、その場合でも、他の以外の部分における形状のばらつきを完全になくすことはできない。
【0012】
このモジュールブロック形状のばらつきのために、コークス炉建設の精度や作業効率が低下するという問題がある。例えば、形状のばらつきのためにモジュールブロック間の距離が小さくなりすぎた場合、モジュールブロックの据付精度が低下することに加え、十分なモルタルの厚さを確保できない場合がある。特に、モジュールブロック同士が干渉する場合には、そのままモジュールブロックを積むことはできないため、干渉が生じないように該モジュールブロックを手直しする必要がある。
【0013】
しかし、モジュールブロックの設置作業は通常、モジュールブロックを運搬用の治具によって把持した状態で行われるため、そのままでは手直しを行うことはできない。そこで、一旦モジュールブロックから治具を外したうえで、該モジュールブロックを構成する定型耐火物を削るか、モジュールブロックの少なくとも一部を分解して定型耐火物を積み直す必要がある。このような手直しは非常に手間のかかる作業であり、コークス炉建設現場で手直しを行うことにより作業効率が著しく低下する。また、反対に、モジュールブロック間の距離が大きくなりすぎた場合にも、据付精度が低下する場合があることに加え、モジュールブロック間の隙間を多量のモルタルで充填する必要があるため、やはり作業効率が低下する。
【0014】
そこで、本発明者らは、モジュールブロックを用いたコークス炉建設方法において精度と効率を向上させるために、モジュールブロックを製造した後、コークス炉の建設場所へ運搬する前に該モジュールブロックの3次元形状を測定することを検討した。モジュールブロックの3次元形状を正確に測定することができれば、測定した形状の情報に基づいてモジュールブロックの据付位置の最適化や、形状が不良であるモジュールブロックの判別を行うことが可能となる。
【0015】
しかし、モジュールブロックは複数の定型耐火物を積み上げて製造されるものであるため、比較的サイズが大きい。そのため、1つの測定手段(センサ等)でモジュールブロックの全体的な形状を測定することは難しい。また、3次元形状の測定方法では、原理上、測定範囲の中心から離れるほど測定精度が低下するため、広範囲の形状を高精度で測定することができない。また、上述したようにモジュールブロックの表面にはダボやホゾと呼ばれる凹凸が存在しているため、センサから見て影となる部分の形状データを得ることができないという問題もある。
【0016】
形状を広範囲にわたって測定する方法としては、複数の測定手段でモジュールブロックの異なる部分の形状を測定し、得られたデータをつなぎ合わせることも考えられる。しかし、データ精度良くつなぎ合わせるためには、気温の変動などに起因する各測定手段の位置および角度の変化を補正して、複数の測定手段で得られる形状データの座標系を正確に一致させる必要がある。しかし、この方法では精度を維持するために何度もキャリブレーションを行う必要があるため、モジュールブロックの製造効率が低下する。
【0017】
上記のような理由から、モジュールブロックの3次元形状を精度良く効率的に測定することができる測定方法が求められている。また、上記モジュールブロックを用いた工法は、コークス炉以外の炉の建設にも適用可能であるが、その場合にも、やはり同様に、モジュールブロックの3次元形状を精度良く効率的に測定することができる測定方法が求められる。
【0018】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、モジュールブロックの3次元形状を精度良く効率的に測定することができる測定方法および測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために本発明者らが検討を行った結果、以下の知見を得た。
【0020】
(1)広範囲の形状を測定するために、複数の測定手段でモジュールブロックの異なる部分の形状を測定し、得られたデータをつなぎ合わせることが考えられる。しかし、複数のデータを精度良くつなぎ合わせるためには、気温の変動などに起因する測定手段の位置の変化を補正して、複数の測定手段で得られる形状データの座標系を正確に一致させる必要がある。しかし、そのためには何度もキャリブレーションを行う必要があるため、モジュールブロックの製造効率が低下する。
【0021】
(2)また、複数の測定手段で重複する領域を含むように測定を行い、該重複する領域のデータ同士をフィッティングすることによりデータのつなぎ合わせを行うことも考えられる。しかし、3次元形状の測定データそれ自体が無視できない誤差を含んでいるため、この方法では、高い精度でデータをつなぎ合わせることができない。また、この方法では、測定手段の数、すなわちつなぎ合わせるデータの数が増加するにともなって誤差が蓄積されるため、測定手段の数が多い場合に顕著に精度が低下する。
【0022】
(3)これに対して、3次元形状データが既知である基準部材を用いて形状測定とフィッティングによる補正を行うことにより、上記の問題を解決し、モジュールブロックの3次元形状を精度良く効率的に測定することが可能となる。
【0023】
本発明は上記知見を元に完成されたものであり、その要旨構成は、以下の通りである。
【0024】
1.複数の定型耐火物を積み上げて製造されたモジュールブロックの形状を測定するモジュールブロック形状測定方法であって、
測定対象のモジュールブロックの近傍に3次元形状データが既知である基準部材を配置する配置工程と、
複数の測定手段を用いて、前記基準部材の少なくとも一部が含まれるように前記モジュールブロックの異なる部分の形状を測定して複数の3次元形状データを得る測定工程と、
前記測定工程で測定された複数の3次元形状データのそれぞれを、前記3次元形状データに含まれる前記基準部材の3次元形状データを前記基準部材の既知の3次元形状データにフィッティングすることにより補正する補正工程とを含む、モジュールブロック形状測定方法。
【0025】
2.前記測定手段が、レーザーを線状に照射して形状を測定するプロファイルセンサと、前記プロファイルセンサを前記モジュールブロックに対して相対的に移動させる移動手段とを備える、上記1に記載のモジュールブロック形状測定方法。
【0026】
3.前記測定工程において、前記モジュールブロックの少なくとも上面と下面の形状を測定する、上記1または2に記載のモジュールブロック形状測定方法。
【0027】
4.複数の定型耐火物を積み上げて製造されたモジュールブロックの形状を測定するモジュールブロック形状測定システムであって、
3次元形状データが既知である基準部材と、
前記基準部材の少なくとも一部が含まれるように前記モジュールブロックの異なる部分の形状を測定し、複数の3次元形状データを得る複数の測定手段と、
前記複数の測定手段で測定された複数の3次元形状データのそれぞれを、前記3次元形状データに含まれる前記基準部材の3次元形状データを前記基準部材の既知の3次元形状データにフィッティングすることにより補正する演算手段とを備える、モジュールブロック形状測定システム。
【0028】
5.前記測定手段が、レーザーを線状に照射して形状を測定するプロファイルセンサと、前記プロファイルセンサを前記モジュールブロックに対して相対的に移動させる移動手段とを備える、上記4に記載のモジュールブロック形状測定システム。
【0029】
6.前記複数の測定手段が、前記モジュールブロックの少なくとも上面と下面の形状を測定するよう構成されている、上記4または5に記載のモジュールブロック形状測定システム。
【0030】
7.複数のモジュールブロックを用いて炉を建設する炉建設方法であって、
前記炉の建設場所以外の場所において複数の定型耐火物を積み上げてモジュールブロックとするモジュールブロック製造工程と、
上記1~3のいずれか一項に記載のモジュールブロック形状測定方法により、前記モジュールブロック製造工程で得られたモジュールブロックの形状を測定し、前記モジュールブロックの3次元形状データを得る測定工程と、
前記測定工程で得た前記モジュールブロックの3次元形状データを用いて、前記モジュールブロックをコンピュータ上で仮想的に据え付ける仮想据付を行い、嵌め合いが良好なモジュールブロックの組み合わせを選択する仮想据付工程と、
前記仮想据付工程の結果に基づいて、前記モジュールブロックを前記炉の建設場所へ運搬するモジュールブロック運搬工程と、
前記モジュールブロックを設置する位置にモルタルを塗布するモルタル塗布工程と、
前記モルタルが塗布された位置に前記モジュールブロック運搬工程で運搬されたモジュールブロックを据え付けるモジュールブロック設置工程とを備える、炉建設方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、炉の建設場所における手直し作業を軽減し、高い精度で効率的に炉を建設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態におけるモジュールブロックの構造の例を模式的に示す上面図である。
【
図2】本発明の一実施形態におけるモジュールブロックの構造の例を模式的に示す側面図である。
【
図3】水平方向に隣接する定型耐火物間における、ダボとホゾの構造の例を模式的に示す上面図である。
【
図4】垂直方向に隣接する定型耐火物間における、ダボとホゾの構造の例を模式的に示す側面図である。
【
図5】本発明の一実施形態における、測定手段の構成を示す模式図である。
【
図7】積み台座上に載置された状態のモジュールブロックを示す模式図である。
【
図9】本発明の一実施形態におけるモジュールブロック形状測定システムを示す模式図である。
【
図10】本発明の一実施形態におけるモジュールブロック形状測定システムを示す模式図である。
【
図11】本発明の一実施形態におけるモジュールブロック形状測定システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態の例について具体的に説明する。なお、以下の説明は、本発明の実施形態を例示的に示すものであり、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではない。また、以下の説明においては、特に断りの無い限り、炉に組み込まれた状態における向きを基準として、定型耐火物、及び該定型耐火物を積み上げて製造されるモジュールブロックについて、上、下、水平、鉛直、及び高さとの用語を用いる。
【0034】
また、本発明における炉の「建設」には、完全に新規に炉を建設する場合に加えて、既存の炉に追加的に新規部分を建設する場合(増設)、および既存の炉の一部を置き換えるように新規部分を建設する場合(補修)も包含するものとする。言い換えると、本発明における「建設」には、新設、増設、および補修を包含する。例えば、稼働中のコークス炉の補修においては、いくつかの燃焼室および炭化室の使用を停止し、それ以外の燃焼室および炭化室については稼働した状態で補修を行うこと(熱間補修)が一般的に行われている。本発明は前記熱間補修にも適用可能である。
【0035】
本発明の一実施形態におけるモジュールブロック形状測定方法は、複数の定型耐火物を積み上げて製造されたモジュールブロックの形状を測定するモジュールブロック形状測定方法であって、以下の工程を含む。
・配置工程
・測定工程
・補正工程
【0036】
また、本発明の一実施形態におけるモジュールブロック形状測定システムは、複数の定型耐火物を積み上げて製造されたモジュールブロックの形状を測定するモジュールブロック形状測定システムであって、以下の構成要素を含む。
・基準部材
・測定手段
・演算手段
【0037】
以下、上記モジュールブロック形状測定方法および上記モジュールブロック形状測定システムについて、具体的に説明する。なお、以下の説明では、コークス炉の建設に使用されるモジュールブロックの形状を測定する場合を例として本発明を説明するが、本発明はコークス炉以外の炉に用いられるモジュールブロックにも適用可能である。
【0038】
[モジュールブロック]
本発明のモジュールブロック形状測定方法およびモジュールブロック形状測定システムは、任意の炉の製造に用いられるモジュールブロックを測定対象とすることができる。前記モジュールブロックは、複数の定型耐火物を積み上げることにより形成することができる。前記モジュールブロックの製造は、後述するようにコークス炉の建設場所以外の場所において行うことが好ましい。
【0039】
前記モジュールブロックは、コークス炉のいずれの部分を構成するためのモジュールブロックとすることもできるが、比較的構造が単純な部分や、繰り返し構造を有する部分をモジュールブロック化すれば、作業効率の向上効果が大きい。そのため、前記モジュールブロックは、蓄熱室を構成するモジュールブロックおよび燃焼室を構成するモジュールブロックの少なくとも一方であることが好ましい。
【0040】
図1、
図2は、本発明の一実施形態におけるモジュールブロックの例を示す模式図であり、コークス炉の燃焼室を構成するモジュールブロックの構造を表している。なお、
図1、2を含む各図面においては、説明のため、定型耐火物の形状や組み合わせ方などを簡略化して示しており、実際の正確な構造を示すものではないことを付記する。
【0041】
モジュールブロック1は、複数の定型耐火物2を積み上げて構成されており、個々の定型耐火物2は、定型耐火物2の間の目地部分に塗布されたモルタル(図示されない)で接合されている。先に述べたように、コークス炉用の定型耐火物2には、
図3、
図4に示すように、ズレ防止などのための嵌合凸部であるダボ3や嵌合凹部であるホゾ4が設けられており、ダボ3とホゾ4とがモルタル5を介して嵌合した状態で接合される。
【0042】
前記モジュールブロックを製造するための定型耐火物としては、特に限定されることなく、レンガやプレキャストブロック等、任意の定型耐火物を用いることができる。なかでも、手積みでコークス炉を建設する際に用いられる通常の定型耐火物を用いることが好ましい。通常の定型耐火物を使用することにより、本発明の方法で築炉する場合においても、従来と同様の炉の設計とすることが可能となり、その結果、少なくとも従来と同等の炉の性能を保証することが可能となる。また、大型のモジュールレンガを用いた場合には、亀裂が入った場合にモジュール全体にわたって亀裂が広がるおそれがあるが、通常の定型耐火物を使用すれば、仮に定型耐火物に亀裂が入ったとしても、その亀裂の伝搬を1つの定型耐火物内でとどめることができる。なお、ここでいう通常の定型耐火物とは、モジュールレンガではない、手積み用の定型耐火物全般を指すが、その寸法は、一般的には、高さ10~15cm、水平方向の長さが20~40cmである。
【0043】
前記モジュールブロックのサイズは特に限定されず、任意のサイズとすることができる。しかし、モジュールブロックの製造を手積みで行う場合、モジュールブロックの高さが過度に高いと、高い位置に定型耐火物を積むために、足場を組み立てる等の方法により作業床を設ける必要がある。例えば、日本においては、労働安全衛生規則第518条の規定により、高さが2m以上で作業を行う場合において墜落のおそれのあるときは、作業床を設けることが求められている。前記モジュールブロックの高さが2m未満であれば、定型耐火物を手積みしてモジュールブロックを製造する場合でも、足場などを設置して高所作業を行う必要がないため、作業効率が高い。また、ロボットを用いてモジュールブロックを製造する場合には、前記モジュールブロックの高さが2m未満であれば、定型耐火物を積む位置の高さを一般的なアーム型ロボットのアームの可動範囲内とすることができる。そのため、ロボットを水平方向に移動させるのみでモジュールブロックを製造することができるため、作業効率が高い。したがって、作業効率の観点からは、モジュールブロックの高さを2m未満とすることが好ましい。一方、前記モジュールブロックの高さの下限についても特に限定されないが、定型耐火物2段以上とすることが好ましい。
【0044】
また、モジュールブロックの長手方向の長さについても限定されないが、作業効率の観点からは、建設するコークス炉の炉長の1/4以上2/3以下とすることが好ましく、1/4以上1/2以下とすることがより好ましい。
【0045】
なお、ここで「モジュールブロックの長手方向長さ」とは、モジュールブロックの水平方向断面における長手方向の長さを指し、「モジュールブロックの高さ」とは、該モジュールブロックの下面から上面までの高さを指す。なお、前記「モジュールブロックの長手方向長さ」および「モジュールブロックの高さ」には、モジュールブロックの側面、上面、および底面に設けられたダボ等の凹凸は含めないものとする。また、「コークス炉の炉長」とは、コークス炉を構成する個々の燃焼室および炭化室の長手方向の長さを意味する。なお、現在使用されている一般的なコークス炉の炉長は、15~17m程度である。
【0046】
[積み台座]
なお、前記モジュールブロックは、フォークリフトなどの運搬機械でハンドリング可能な積み台座上で定型耐火物を積み上げて製造することが好ましい。積み台座上でモジュールブロックを製造した後、前記モジュールブロックを積み台座ごと測定を行うための場所へ運搬することができる。
【0047】
なお、後述する測定工程において、モジュールブロックの下面の形状を測定する場合、開口を有する積み台座を用いることが好ましい。前記開口を通してモジュールブロック下面の形状を測定することができる。前記開口の数、サイズ、および位置は、所望の領域の形状をモジュールブロックの下方から測定できるように決定すればよい。例えば、ダボおよびホゾの形状を測定する場合、測定対象となるダボおよびホゾの位置に前記開口を設ければよい。
【0048】
[配置工程]
まず、測定対象のモジュールブロックの近傍に3次元形状データが既知である基準部材を配置する(配置工程)。
【0049】
前記基準部材としては、とくに限定されることなく、3次元形状データが既知である部材であれば任意の部材を用いることができる。しかし、強度や寸法の安定性などの観点からは、前記基準部材は金属製であることが好ましい。また、前記基準部材の形状はとくに限定されないが、製造しやすさや形状データの取り扱いやすさの観点からは、直方体または立方体形状であることが好ましい。なお、直方体または立方体形状の基準部材を、基準ブロックという場合がある。
【0050】
前記基準部材は、後述する補正工程においてデータをフィッティングする基準として使用されるため、該基準部材の3次元形状データが既知である必要がある。前記基準部材の3次元形状データとしては、例えば、該基準部材の設計データ(3次元CADデータなど)を用いることができる。
【0051】
基準部材を配置する位置は、モジュールブロックの近傍であればよい。ここで、モジュールブロックの近傍とは、後述する測定工程において、複数の測定手段それぞれの測定範囲に、前記基準部材の少なくとも一部が含まれる位置と定義する。したがって、基準部材とモジュールブロックとの間の距離はとくに限定されない。前記基準部材は、測定対象のモジュールブロックに接するように配置してもよく、測定対象のモジュールブロックと接触しないように設置してもよい。基準部材をモジュールブロックと接するように配置する場合、前記基準部材は、前記モジュールブロックと直接接触してもよく、他の部材を介して接触してもよい。
【0052】
また、後述する補正工程におけるフィッティングの精度を高めるという観点からは、前記基準部材がある程度の大きさを有していることが好ましい。具体的には、基準部材の長手方向長さが1m以上であることが好ましく、5m以上であることがより好ましい。一方、基準部材が過度に大きいとモジュールブロックの近傍に設置することが困難となる場合がある。そのため、基準部材の長手方向長さは20m以下であることが好ましく、15m以下であることがより好ましい。
【0053】
また、後述する補正工程におけるフィッティングの精度をさらに高めるという観点からは、前記基準部材自体の寸法精度が高いことが好ましい。具体的には、前記基準部材が対向する表面を有する場合、前記対向する表面の平行度が200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。例えば、直方体または立方体形状の基準部材を用いる場合、前記基準部材の対向する3組の面すべての平行度が200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。ここで、前記平行度はJIS B 0621:1984 で定義される平行度である。同様の理由から、前記基準部材の寸法の公差は±0.5mm以下であることが好ましく、±0.2mm以下であることが好ましい。
【0054】
前記基準部材の数は特に限定されず、1または2以上の任意の数とすることができるが、広範囲にわたって精度良く形状を測定するという観点からは、複数の基準部材を用いることが好ましい。特に、モジュールブロックの対向する面の両方の形状を測定する場合には、測定する両方の面の側に少なくとも1個ずつ基準部材を配置することが好ましい。例えば、モジュールブロックの上面と下面の形状を測定する場合、該モジュールブロックの上と下の両方に基準部材を配置することが好ましい。
【0055】
複数の基準部材を使用する場合、各基準部材の形状および寸法は異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。複数の基準部材が同じ形状と寸法を有していれば、前記複数の基準部材の3次元形状データとして同じデータを使用することができるため、さらに効率的である。
【0056】
基準部材の配置は、任意の方法で行うことができる。例えば、後述する測定工程における測定を実施する測定場所にモジュールブロックを設置し、次いで、該モジュールブロックの近傍に基準部材を設置することができる。また、後述する測定工程における測定を実施する測定場所に予め基準部材を設置しておき、次いで、前記測定場所にモジュールブロックを設置してもよい。
【0057】
[測定工程]
次に、複数の測定手段を用いて前記モジュールブロックの異なる部分の形状を測定して複数の3次元形状データを得る(測定工程)。1つの測定手段で測定を行う場合、モジュールブロック自体や、モジュールブロックの表面に存在するダボおよびホゾ、モジュールブロックが載置されている積み台座、前記積み台座を支持する支柱などの周辺構造物によってセンサから照射された光が遮蔽され、測定が阻害される。本発明では、複数の測定手段を用いることにより、遮蔽物の影響を受けることなく測定が可能となる。
【0058】
さらに本発明では、前記測定工程において、複数の測定手段により測定される3次元形状データのそれぞれが、前記基準部材の少なくとも一部を含むように測定を行うことが重要である。これにより、次の補正工程において、測定された3次元形状データに含まれる前記基準部材の3次元形状データを用いて各測定手段での測定結果を補正することが可能となる。
【0059】
なお、異なる部分の形状を測定するとは、1つの測定手段で測定される領域が、他の測定手段で測定される領域と完全に同じでは無いことを意味するものとする。すなわち、本願発明は、1つの測定手段で測定される領域が、他の測定手段で測定される領域と重複している場合を包含する。むしろ、測定精度をさらに向上させるという観点からは、複数の測定手段に含まれる測定手段のそれぞれは、他の測定手段の少なくとも1つと重複した領域の形状を測定することが好ましい。上述したようにモジュールブロックの表面にはダボやホゾと呼ばれる凹凸が存在しているため、凹凸の影となる部分の形状を測定することが困難である。しかし、同じ領域を複数の測定手段で測定する場合、異なる角度から測定することになるため、凹凸の影響を受けずに一層正確な形状測定が可能となる。
【0060】
前記測定工程においては、とくに限定されることなくモジュールブロックの任意の面を測定することができ、通常は、モジュールブロックの少なくとも一つの面の形状を測定すればよい。しかし、上述したようにモジュールブロックの上面や下面にはダボおよびホゾと呼ばれる凹凸が存在しており、ダボおよびホゾの位置や寸法が適切でない場合、コークス炉建設現場でモジュールブロックを設置する際に、隣接するモジュールブロック間でダボやホゾが干渉することがある。そのため、ダボおよびホゾの位置や寸法を測定するという観点からは、モジュールブロックの上面および下面の少なくとも一方の形状を測定することが好ましく、モジュールブロックの上面と下面の両方の形状を測定することがより好ましい。
【0061】
モジュールブロックの上面と下面の両方の形状を測定する場合、上面と下面の形状は、それぞれ別々の測定手段で測定することが好ましい。例えば、複数の上面用測定手段により上面の形状を測定し、複数の下面用測定手段により下面の形状を測定することができる。
【0062】
また、さらに任意に、モジュールブロックの側面の形状を測定することもできる。側面の形状を測定する場合、モジュールブロックの一側面Aに対向するように複数の測定手段を配置するとともに、前記側面Aと平行な他の側面Bと対向するように複数の測定手段を配置し、モジュールブロックの両側から形状を測定することが好ましい。
【0063】
ただし、後述するように測定工程で得たモジュールブロックの3次元形状データを用いて仮想据付を行う場合には、モジュールブロックの上面と下面の形状データがあればよく、必ずしもモジュールブロック全面の形状データは必要ではない。したがって、モジュールブロックの上面と下面の両方の形状を測定し、側面の形状を測定しない態様とすることもできる。
【0064】
[測定手段]
前記測定手段としては、とくに限定されず、モジュールブロックの3次元形状データを測定できるものであれば任意の手段を用いることができる。前記測定手段としては、モジュールブロックの3次元形状データを、3次元点群データとして取得できる手段を用いることが好ましい。
【0065】
なお、モジュールブロックを構成する定型耐火物の寸法の公差は、一般的に1~2mm程度である。また、コークス炉における定型耐火物の積み付け精度も、一般的に1~2mm程度であることが要求される。そのため、上記輪郭形状の測定において使用する測定方法の測定精度は、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。
【0066】
例えば、本発明の一実施形態においては、前記測定手段として、フォトグラメトリ方式の3次元形状測定装置を用いることができる。フォトグラメトリ方式の3次元形状測定装置では、異なる視点から撮影した複数の画像から、当該画像に写った同一の点の3次元座標を三角測量の原理で求められる。したがって、画像中の多数の点の3次元座標を求めることにより、モジュールブロックの3次元形状データを取得することができる。
【0067】
また、本発明の他の実施形態においては、前記測定手段として、パターン投影方式の3次元形状測定装置を用いることができる。パターン投影方式の3次元形状測定装置では、既知のパターンを測定対象物の表面に投影し、投影されたパターンを撮影した画像を解析することにより表面の3次元形状が測定される。
【0068】
本発明の他の実施形態においては、前記測定手段として、LiDAR(Light Detection and Ranging)方式の3次元形状測定装置を用いることができる。典型的なLiDAR方式の3次元形状測定装置では、レーザーを測定対象物の表面に二次元的に走査しながら照射し、反射光を測定することにより測定対象物表面の3次元形状が測定される。反射光による距離の測定に使用できる方法としては、例えば、TOF(Time of Flight)方式や位相差検出方式などを挙げることができるが、これらに限らず任意の方法を用いることができる。
【0069】
本発明の他の実施形態においては、前記測定手段として、レーザーを線状に照射して形状を測定するプロファイルセンサと、前記プロファイルセンサを前記モジュールブロックに対して相対的に移動させる移動手段とを備える3次元形状測定装置を用いることができる。前記プロファイルセンサは、測距センサの一種であり、一般的には、レーザーを線状に照射し、反射光を検出することにより測定対象の表面までの距離を測定する。したがって、プロファイルセンサを用いることにより、レーザーを走査した線の方向(x軸方向)における高さ(z軸方向における位置)のプロファイルを測定することができる。このようなプロファイルセンサは、2次元プロファイルセンサとも称される。
【0070】
前記移動手段としては、前記プロファイルセンサを前記モジュールブロックに対して相対的に移動させることができるものであれば任意の移動手段を用いることができる。プロファイルセンサをモジュールブロックに対して相対的に移動させるためには、プロファイルセンサとモジュールブロックの一方または両方を移動させればよいが、モジュールブロックに比べて小型で軽量であるプロファイルセンサを移動させることが好ましい。前記移動手段としては、前記プロファイルセンサを直線的に移動させることができる一軸アクチュエータを用いることが好ましい。
【0071】
図5に、2つのプロファイルセンサを用いた測定手段の構成の一例を示す。なお、
図6は測定手段の説明のためのものであるため、基準部材は示していない。
【0072】
プロファイルセンサ11a、11bのそれぞれからは、モジュールブロック1の表面に対してレーザーが直線状に照射される。符号12a、12bは、プロファイルセンサ11a、11bから照射されるレーザーの照射範囲を模式的に示したものであり、以下、「測定平面」という。プロファイルセンサ11a、11bは、レーザーを照射する線が平行となるように配置されており、ここではレーザーが照射される線の方向をx軸とする。言い換えると、測定平面12aと12bが平行となるようにプロファイルセンサ11a、11bが配置されている。
【0073】
プロファイルセンサ11a、11bは、
図5(b)に示すように図示しない移動手段によってy軸方向に移動可能に構成されている。ここで、y軸は、測定平面12aと12bの法線方向である。
【0074】
[補正工程]
本発明では、上述したようにモジュールブロックの異なる部分の形状を測定して複数の3次元形状データを得る。得られた複数の3次元形状データを有効に活用するためには、気温の変動などに起因する測定手段の位置および角度の変化を補正して、複数の3次元形状データの座標系を正確に一致させる必要がある。
【0075】
複数の測定手段で得た測定データを合成する方法としては、重複する領域を含むように測定を行い、重複する領域のデータ同士をフィッティングすることによりデータを合成することが考えられる。しかし、3次元形状の測定データそれ自体が無視できない誤差を含んでいるため、この方法では、高い精度でデータをつなぎ合わせることができない。また、この方法では、測定手段の数、すなわちつなぎ合わせるデータの数が増加するにともなって誤差が蓄積されるため、測定手段の数が多い場合に顕著に精度が低下する。
【0076】
また、測定に先立って、形状が既知である基準部材を利用してキャリブレーションを行い、各測定手段の3次元空間における位置および姿勢を同定しておくことも考えられる。しかし、実際の測定環境においては、気温の変動などにより測定手段の位置および姿勢は時々刻々と変化する。例えば、測定手段を指示しているフレームが気温の変動による熱膨張で変形することで、センサの位置が変化する場合がある。そのため、測定に先立ってキャリブレーションを行う方法で十分な測定精度を得ようとすると、測定のたびにキャリブレーションを行う必要があるため、モジュールブロックの製造効率が低下する。
【0077】
そこで、本発明では、前記測定工程で測定された複数の3次元形状データのそれぞれを、前記3次元形状データに含まれる前記基準部材の3次元形状データを前記基準部材の既知の3次元形状データにフィッティングすることにより補正する(補正工程)。すなわち、測定工程において測定される複数の3次元形状データのそれぞれに、基準部材の少なくとも一部が含まれるように測定を行い、前記3次元形状データに含まれる前記基準部材の3次元形状データを前記基準部材の既知の3次元形状データにフィッティングすることにより補正を実施する。この方法によれば、毎回の測定自体において補正を行うことができるため、別途キャリブレーションを行わずとも、複数の測定データの位置合わせを正確に行うことができる。言い換えると、上記補正を行うことにより、前記測定工程で測定された複数の3次元形状データの座標系のずれを補正して、単一の座標系の3次元データに変換することができる。
【0078】
補正工程におけるフィッティングの精度向上の観点からは、1つのセンサの測定面積全体に占める基準部材の面積の割合を10%以上とすることが好ましい。
【0079】
[マスキング工程]
本発明の一実施形態におけるモジュールブロック形状測定方法は、上記補正工程において補正された3次元形状データに対してマスキング処理を施すマスキング工程をさらに含むことが好ましい。前記マスキング工程においては、例えば、3次元形状データのうち、モジュールブロック以外の構造物に対応する部分をマスキングする。
【0080】
[ノイズ除去工程]
また、本発明の一実施形態におけるモジュールブロック形状測定方法は、上記補正工程において補正された3次元形状データに含まれるノイズを除去するノイズ除去工程をさらに含むことが好ましい。前記ノイズとしては、例えば、原理的に信頼性が低いエッジ部のデータ(流れノイズ)や、空中に浮遊するデータ(浮きノイズ)などが挙げられる。
【0081】
[合成工程]
本発明の一実施形態におけるモジュールブロック形状測定方法は、さらに、前記補正工程で補正された複数の3次元形状データを合成して1つの3次元形状データを生成する合成工程を含んでいてもよい。本発明では、上記補正工程において複数の3次元形状データのそれぞれを補正しているため、それらを合成したとしても、単に重複部分を利用して複数の測定データを順番につなぎ合わせる場合のように誤差が累積することがない。
【0082】
上記合成工程においては、最終的に得られた3次元点群データから、3次元ポリゴンモデルを作成してもよい。具体的には、前記測定工程において、3次元形状データとして3次元点群データを測定し、その後の補正工程において前記3次元点群データを補正し、合成工程においては、補正された複数の3次元点群データを用いてモジュールブロックの3次元ポリゴンモデルを作成することが好ましい。得られた3次元ポリゴンモデルは、後述する仮想据付工程などにおいて使用することができる。
【0083】
[演算手段]
本発明の一実施形態におけるモジュールブロック形状測定システムは、前記複数の測定手段で測定された複数の3次元形状データのそれぞれを、前記3次元形状データに含まれる前記基準部材の3次元形状データを前記基準部材の既知の3次元形状データにフィッティングすることにより補正する演算手段を備えている。言い換えると、本発明の一実施形態におけるモジュールブロック形状測定システムは、上記補正工程を実施するための演算手段を備えている。前記演算手段としては、とくに限定されないが、例えば、一般的なコンピュータなどを用いることができる。
【0084】
前記演算手段は、補正された複数の3次元形状データを合成して1つの3次元形状データを生成する機能をさらに備えていてもよい。言い換えると、本発明の一実施形態におけるモジュールブロック形状測定システムは、上記補正工程と合成工程を実施するための演算手段を備えることができる。前記演算手段は、上述したマスキング工程およびノイズ除去工程の一方または両方を実施するように構成されていることが好ましい。
【0085】
また、本発明の一実施形態におけるモジュールブロック形状測定システムは、測定手段などを制御するための制御手段を備えていることが好ましい。前記演算手段が制御手段を兼ねることもできる。また、本発明の一実施形態におけるモジュールブロック形状測定システムは、前記制御手段としてプログラマブルロジックコントローラ(PLC)を備えることもできる。前記PLCは、前記演算手段に接続されていることが好ましい。
【0086】
次に、図面を参照して本発明のより具体的な実施形態の例を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0087】
図6は、積み台座の形状の例を示す模式図である。
図6に示した積み台座20には、モジュールブロック1の下方の形状測定を可能とするための複数の開口21が、積み台座20の上面から下面まで貫通して複数設けられている。モジュールブロック1の輪郭形状を測定可能とするために、開口21のサイズは、モジュールブロックの輪郭よりも大きいことが好ましい。
【0088】
図7に示すように、積み台座20の上に定型耐火物を積み上げてモジュールブロック1を製造する。なお、
図8に示すように、モジュールブロック1を構成する定型耐火物2の下面には下方へ突出するダボ3が存在する。そのため、ダボ3が積み台座20の上面や地面と干渉することを防止するために、台座20はモジュールブロック1を所定の高さ持ち上げて支持する支持部22を備えることが好ましい。
【0089】
次いで、積み台座20上に製造されたモジュールブロック1をフォークリフトで積み台座20ごと持ち上げて、測定エリアに搬送し、所定の位置に配置する。
【0090】
図9、
図10、
図11は、それぞれ異なる基準部材の配置を有するモジュールブロック形状測定システム100の構造を示す模式図である。
【0091】
図9に示した例では、モジュールブロック1は積み台座20とともに、支持フレーム30に載置されている。モジュールブロック1の上側には、上面形状を測定するためのプロファイルセンサ11が2つ設置されており、同様に、モジュールブロック1の下側には、下面形状を測定するためのプロファイルセンサ11が2つ設置されている。これら合計4つのプロファイルセンサ11は、それぞれ移動手段としての一軸アクチュエータ13によりy軸方向に移動可能に構成されている。一軸アクチュエータ13は、たわみを防止するためにI形鋼14の上に設置されている。
【0092】
モジュールブロック1の上には、基準部材としての基準ブロック40が2つ、間隔をあけて設置されている。また、モジュールブロック1の下にも、基準部材としての基準ブロック40が2つ、間隔をあけて設置されている。
【0093】
モジュールブロック形状測定システム100は、さらに図示されないPLC(プログラマブルロジックコントローラ)、前記PLCに接続された演算手段としてのPC、プロファイルセンサ11からのデータを前記PCに取り込む信号配線、一軸アクチュエータ13の走査距離に応じて生成されるパルス信号をプロファイルセンサ11に伝達する信号配線、および全ての機器に電源供給するための電源配線を備えている。
【0094】
モジュールブロック1が所定位置に設置され、測定準備が整ったところで、測定作業従事者はPCを操作して、測定開始指令を入力する。事前にPLCでプログラミングされた指令に従い、一軸アクチュエータ13が走査動作を開始し、同時に一軸アクチュエータ13に取り付けられたプロファイルセンサ11が連続的に2次元プロファイルデータを取得する。一軸アクチュエータ13で生成されるパルス信号に基づいてy軸方向におけるプロファイルセンサの位置を表す座標値が算出され、信号線を通じてPCに伝達される。PCでは、測定された2次元プロファイルと前記座標値を統合して3次元プロファイルデータとする。
【0095】
前記PCには、事前に、基準ブロックの設計データである3次元CADデータをインポートしておく。そして、仮想空間上で、前記基準ブロックの3次元CADデータにフィッティングすることにより、測定された複数の3次元プロファイルデータのそれぞれを補正する。本実施形態では、モジュールブロック上面を測定した2つのデータはモジュールブロック上面に配置した基準ブロック、下面を測定した2つのデータは下面に配置した基準ブロックで、それぞれ位置合わせされる。その後、位置合わせしたデータに含まれる周辺構造物などの余分なデータを除去し、モジュールブロック上面と下面、それぞれの輪郭形状データを抽出する。
【0096】
図10は、基準ブロック40を、モジュールブロック1から離れた位置に設置した例である。また、本実施形態では、直方体形状の基準ブロック40を、モジュールブロック1の片側当たり3つずつI字状に組み合わせて配置している。このような配置とすることにより、モジュールブロック上側のプロファイルセンサで測定されるデータと、モジュールブロック下側のプロファイルセンサで測定されるデータに共通の基準ブロックが含まれるため、各センサで測定されたデータを1つの座標系に座標変換することができる。なお、その他の点については
図9に示した実施形態と同様とすることができる。
【0097】
図11は、モジュールブロック1の下面と側面の形状を測定する場合の例である。この例では、基準ブロック40が、モジュールブロック1の下面に設置されており、モジュールブロック1の下方と側方に設置された合計4つのプロファイルセンサ11により、基準ブロック40が測定範囲内に収まるように測定が行われる。この場合にも、4つのプロファイルセンサで測定されるデータに共通の基準ブロックが含まれるため、各センサで測定されたデータを1つの座標系に座標変換することができる。なお、その他の点については
図9に示した実施形態と同様とすることができる。
【0098】
次に、本発明の一実施形態における炉建設方法について説明する。本発明の炉建設方法は、複数のモジュールブロックを用いて炉を建設する炉建設方法であって、以下の工程を含む。
・モジュールブロック製造工程
・測定工程
・仮想据付工程
・モジュールブロック運搬工程
・モルタル塗布工程
・モジュールブロック設置工程
【0099】
[モジュールブロック製造工程]
モジュールブロック製造工程においては、コークス炉の建設場所以外の場所において複数の定型耐火物を積み上げてモジュールブロックを製造する。本発明においては、製造したモジュールブロックを、後述するようにコークス炉建設場所に運搬、設置するのみでコークス炉を建設することができるため、従来のように作業性の悪い建設場所において築炉工が一つずつ定型耐火物を手積みする作業を低減し、建設場所における作業効率を格段に向上させることができる。
【0100】
前記「コークス炉の建設場所以外の場所」としては、コークス炉の建設現場とは異なり、かつ定型耐火物を積み上げてモジュールブロックを製造することができる場所であれば特に限定されず、任意の場所を用いることができる。例えば、コークス炉の建設を行うための場所に設けられた仮上屋に隣接する土地等のコークス炉建設場所に隣接する場所、該コークス炉を製鉄所内に建設する場合であれば、該製鉄所内の他の場所などでモジュールブロック製造工程を行うことができる。また、ブロックの製造は、コークス炉建設場所から離れた遠隔地で行うことも可能であるが、運搬にかかる時間やコストを考慮すると、コークス炉建設場所に隣接する場所で行うことが好ましい。モジュールブロック製造工程は、一カ所で集約的に行うことが効率上望ましいが、複数の場所で行って、それぞれの場所で製造されたモジュールブロックを、1つのコークス炉建設現場へ運搬、搬入して用いることもできる。
【0101】
前記モジュールブロックの形状および寸法などはとくに限定されないが、先に述べたとおりとすることができる。
【0102】
[[手積みによるブロックの製造]]
上記モジュールブロックの製造は、例えば、手積みによって行うことができる。本発明では、コークス炉の建設場所以外の場所においてモジュールブロックの製造を行うので、コークス炉建設場所で定型耐火物を手積みする場合とは異なり、十分な作業スペースを確保することが可能となる。したがって、同じ手積みであっても作業者への負荷を低減することができる。また、コークス炉建設場所で定型耐火物を積む場合には、積み上げられた定型耐火物の高さに合わせて足場を組み、その上で作業を行う必要があるが、モジュールブロック単位で定型耐火物を積む作業を行うため、高所作業のための足場を用いる必要がなく、足下のよい地面の上で作業を行うことができる。
【0103】
[[ロボットによるブロックの製造]]
また、上記モジュールブロックの製造は、ロボットを用いて行うこともできる。この場合、ブロックの製造工程の一部または全部を自動化することができるため、定型耐火物の手積みという重労働に従事する作業員の数を減らすことができるとともに、高度な技能を要求される定型耐火物積み上げ作業の一部または全部をロボットにより自動化することが可能となる。
【0104】
モジュールブロックの製造に用いるロボットとしては、特に限定されることなく、任意のロボットを用いることができるが、定型耐火物をハンドリングすることが可能な可動式のアームを有するアーム型ロボットを用いることが好ましい。前記アーム型ロボットの一例としては、産業用ロボットの一種である垂直多関節型ロボットが挙げられる。また、定型耐火物積み上げ用アーム型ロボットとモルタル塗布用アーム型ロボットを用いてモジュールブロックを製造することもできる。
【0105】
[[モジュールブロック製造ライン]]
なお、手積みで行うかロボットを使用するかに関わらず、モジュールブロックの製造ラインは1つとすることも、複数とすることもできる。複数のラインでモジュールブロックを製造すれば、コークス炉建設場所へのモジュールブロックの供給速度を上げることができるため、作業効率の観点からはモジュールブロックの製造ラインの数を2以上とすることが好ましく、3以上とすることがより好ましい。一方、製造ラインの数の上限は特に限定されないが、必要以上にライン数を増やしても、その後のモジュールブロック運搬工程や、コークス炉建設場所において行われるモルタル塗布工程やモジュールブロック設置工程が律速工程となるため、それ以上コークス炉の建設スピードを向上させることが困難となり、費用対効果が低下する。したがって、ライン数は、コークス炉の規模や各工程における作業速度等を考慮して決定すればよい。
【0106】
[積み台座]
先にも述べたように、前記モジュールブロックは、フォークリフトなどの運搬機械でハンドリング可能な積み台座上で定型耐火物を積み上げて製造することが好ましい。積み台座上でモジュールブロックを製造した後、前記モジュールブロックを積み台座ごと測定を行うための場所へ運搬することができる。モジュールブロック下面のダボ、ホゾ位置及びモジュールブロックの輪郭が積み台座の開口部を経由してモジュールブロック下方から入射する測定用光源の測定領域に収まるように、積み台座の開口部寸法、積み台座の厚み、センサ及びアクチュエータ台数、センサ設置位置、基準ブロック形状及び配置を事前に設計しておくことが望ましい。
【0107】
[測定工程]
次に、前記モジュールブロック製造工程で得られたモジュールブロックの形状を、上述したモジュールブロック形状測定方法により測定し、前記モジュールブロックの3次元形状データを得る(測定工程)。なお、モジュールブロック製造工程と測定工程とを異なる場所で実施する場合には、製造されたモジュールブロックを、測定工程を実施する場所へ搬送してから測定を行う。モジュールブロックの搬送には、フォークリフトなどの運搬機械を用いることが好ましい。その際には、積み台座上でモジュールブロックを製造した後、前記モジュールブロックを積み台座ごと運搬することが好ましい。
【0108】
測定工程における具体的な測定方法については、すでに説明したとおりとすることができる。
【0109】
[仮想据付工程]
次いで、前記測定工程で得た前記モジュールブロックの3次元形状データを用いて、前記モジュールブロックをコンピュータ上で仮想的に据え付ける仮想据付を行い、嵌め合いが良好なモジュールブロックの組み合わせを選択する(仮想据付工程)。
【0110】
例えば、後述する隣接するモジュールブロック設置工程において、隣接するモジュールブロック同士が干渉する場合、当該干渉部分において必要な目地厚を確保することができない。また、干渉によりモジュールブロックの設置位置がずれてしまう場合もある。通常、このような干渉は、モジュールブロックを建設場所に運搬し、設置しようとした段階で判明するため、現場においてモジュールブロックの手直しを行う必要があった。これに対して本発明では、測定したモジュールブロックの3次元形状データを用いて前記モジュールブロックをコンピュータ上で仮想的に据え付ける仮想据付を行い、前記仮想据付の結果に基づいて嵌め合いが良好なモジュールブロックの組み合わせを選択する。前記仮想据付を行うことにより、建設場所におけるモジュールブロックの手直しを不要とし、効率的に精度良く炉を建設することが可能となる。
【0111】
上記仮想据付の方法は特に限定されず、任意の方法で行うことができる。例えば、上記モジュールブロック製造工程において複数のモジュールブロックを製造し、得られた各モジュールブロックの形状を上記測定工程で測定する。その後、得られた各モジュールブロックの3次元形状データを使用して仮想据付を行うことができる。
【0112】
また、上記仮想据付工程において、嵌め合いが良好なモジュールブロックの組み合わせを選択する方法についても、とくに限定されず任意の方法で行うことができる。
【0113】
例えば、まず、仮想据付を行って、対象となるモジュールブロックを据え付けた場合の該モジュールブロックとそれに隣接するモジュールブロックとの間の目地厚dを算定する。この仮想据付を複数のモジュールブロックのそれぞれについて行って、各モジュールブロックを設置した場合の目地厚diを求める。そして、得られた目地厚の値diと、予め定めた目標目地厚d0との差Δdi(=di-d0)の絶対値|Δdi|が最小となるモジュールブロックを使用することとする。この方式において、|Δdi|の算出は少なくとも1カ所において行えばよいが、複数箇所において|Δdi|を算出し、各位置における|Δdi|の合計が最小となるようモジュールブロックを選択することが好ましい。また、|Δdi|の算出は任意の位置で行うことができるが、特にばらつきの影響が大きいダボとホゾの位置を含めることが好ましい。また、1つのダボとホゾの組み合わせについて、2カ所以上、好ましくは3カ所以上で|Δdi|を評価することもできる。
【0114】
[モジュールブロック運搬工程]
次に、上記モジュールブロック製造工程で製造されたモジュールブロックをコークス炉建設場所へ運搬する。その際、運搬するモジュールブロックは、上記仮想据付工程の結果に基づいて決定する。
【0115】
モジュールブロック運搬工程におけるモジュールブロックの運搬方法は、特に限定されることなく、モジュールブロックの製造場所とコークス炉の建設場所との距離等に応じて、トラックやトランスポーター(自走運搬台車)、クレーン等の任意の方法を単独または複数組み合わせて使用することができる。例えば、コークス炉建設場所に仮上屋が設けられている場合、モジュールブロックの製造や加工を行った場所から前記仮上屋まではトランスポーターで運搬し、仮上屋内では天井クレーンとステージジャッキを併用して施工位置まで運搬することができる。また、モジュールブロック運搬工程においては、モジュールブロック製造場所からコークス炉建設場所の施工位置まで直接モジュールブロックを運搬することもできるが、まず、モジュールブロック保管場所に運搬して一時的に保管し、築炉の進捗状況に応じて前記ブロック保管場所からコークス炉建設場所の施工位置までモジュールブロックを運搬してもよい。
【0116】
[モルタル塗布工程]
次に、モジュールブロックを設置する位置に、モルタルを塗布する。モルタルの塗布方法は特に限定されず、定型耐火物を積む場合と同様に、モジュールブロックの底面や側面が接触する位置、言い換えれば、モジュールブロックが設置される位置の上面や側面に、モルタルを塗布すればよい。
【0117】
モルタルを塗布した面のうち、据え付けられるモジュールブロックの底面と接触する部分、すなわち、水平方向の目地となる部分には、スペーサーを設置することもできる。当該部分には、モジュールブロックの荷重がかかることにより所期の目地厚が確保できない場合がある。そこで、スペーサーを設置し、その上からモジュールブロックを据え付けることにより、目地厚を容易に確保することが可能となる。前記スペーサーでは、目地厚と同じ高さのものを用いることが好ましい。
【0118】
[モジュールブロック設置工程]
モルタル塗布工程においてモルタルが塗布された位置に、モジュールブロックを設置する。モジュールブロックの設置方法は特に限定されないが、例えば、クレーン等で揚重したモジュールブロックを、モルタルが塗布された面に位置を調整しつつ設置すればよい。このように、モジュールブロック単位で施工することにより、定型耐火物を一つずつ手積みする場合に比べて作業者の負担を低減し、高い精度で定型耐火物を積み上げることができる。
【0119】
以上の手順でモジュールブロックを設置することによりコークス炉を建設することができる。なお、ここまでの説明ではコークス炉の建設を例として本発明を説明したが、上述したように本発明はコークス炉以外の炉の建設にも適用可能である。
【実施例0120】
本発明の効果を確認するために、以下の手順でモジュールブロックを製造し、コークス炉を建設した。
【0121】
具体的には、まず、水平方向に6個、鉛直方向に7段の煉瓦(定型耐火物)を積んだモジュールブロックを39個製造した(モジュールブロック製造工程)。次に、得られたモジュールブロックの3次元形状を、
図9に示した構造のモジュールブロック形状測定システムを用いて測定し、補正、ノイズ除去を経てモジュールブロック上面及び下面の3次元点群データをそれぞれ取得した。前記測定手段としては、2次元プロファイルセンサと一軸アクチュエータからなる3次元形状測定装置を使用した。使用した2次元プロファイルセンサは、モジュールブロックに対してレーザーを走査しながら照射し、反射光を検出することによって光源からモジュールブロックの表面の各点までの距離を測定する3角測量方式の2次元プロファイルセンサである。前記センサの距離分解能は0.025mm、一軸アクチュエータの走査方向分解能は0.5mmであった。
【0122】
次いで、得られた3次元点群データを用いて、複数のモジュールブロックのそれぞれをコンピュータ上で仮想的に据え付ける仮想据付を行った。前記仮想据付を行った状態において、各モジュールブロックを設置した場合の目地厚diを求め、得られた目地厚の値diと、予め定めた目標目地厚d0との差Δdi(=di-d0)の絶対値|Δdi|を算出した。ここで、前記目地厚としては、対象となるモジュールブロックと、該モジュールブロックに隣接するモジュールブロックとの間のダボとホゾの係合部分における目地厚を使用し、1組のダボとホゾにつき、3カ所の目地厚を求めた。本実施例では、ダボとホゾの係合部分が56カ所であったので、合計168カ所(56×3)の目地厚を求め、|Δdi|の積算値を求め、前記積算値が最小となるモジュールブロックを使用することした(モジュールブロック選択工程)。
【0123】
前記選択を完了した後、モジュールブロックをコークス炉の建設場所に運搬し(モジュールブロック運搬工程)、当該モジュールブロックを設置する位置にモルタルを塗布し(モルタル塗布工程)、現地に据え付けた(モジュールブロック設置工程)。モジュールブロックの形状の基準値からの外れから予想された、モジュールブロックのホゾでのモジュールブロック間の干渉は発生せず、現地での修正が少なく、効率的に据え付けを行うことができた。