(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144041
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20220926BHJP
B60C 11/01 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B60C11/03 200A
B60C11/01 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044881
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】中島 幸一
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC19
3D131BC20
3D131BC44
3D131EB11X
3D131EB43X
3D131EB46X
3D131EB72X
(57)【要約】
【課題】ウェット性能及び耐ハイドロプレーニング性能を維持しつつノイズ性能を向上させたタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部2を有するタイヤである。トレッド部2は、トレッド端Teと、タイヤ周方向に連続して延びるショルダー周方向溝5と、これらの間で区画されたショルダー陸部6とを含む。ショルダー陸部6のショルダー周方向溝5側には、ショルダー陸部6内で閉塞した輪郭形状を有しかつタイヤ軸方向に並んだ複数個の窪み9がタイヤ周方向に複数設けられている。ショルダー陸部6の窪み9のタイヤ軸方向の外側には、窪み9からタイヤ軸方向に距離を隔てた位置からトレッド端Teまで延びるショルダー横溝10がタイヤ周方向に複数設けられている。タイヤ軸方向に並ぶ窪み9のタイヤ軸方向の間隔は、2mm以上である。ショルダー横溝10と窪み9との間のタイヤ軸方向の間隔は2mm以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、トレッド端と、タイヤ周方向に連続して延びるショルダー周方向溝と、これらの間で区画されたショルダー陸部とを含み、
前記ショルダー陸部の前記ショルダー周方向溝側には、前記ショルダー陸部内で閉塞した輪郭形状を有する少なくとも1個の窪みが設けられており、
前記ショルダー陸部の前記窪みのタイヤ軸方向の外側には、前記窪みからタイヤ軸方向に距離を隔てた位置から前記トレッド端まで延びるショルダー横溝が設けられており、
前記ショルダー横溝と前記窪みとの間のタイヤ軸方向の間隔は2mm以上である、
タイヤ。
【請求項2】
前記ショルダー陸部には、タイヤ軸方向に並んだ複数個の前記窪みがタイヤ周方向に複数設けられており、
タイヤ軸方向に並ぶ前記窪みのタイヤ軸方向の間隔は、2mm以上である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記窪みの深さは4mm以上である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
1個の前記窪みの開口面積は4~60mm2である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記ショルダー横溝と前記窪みとは、タイヤ周方向で同じ位置に設けられている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ショルダー横溝と前記窪みとは、タイヤ周方向で同じ位置に並ばないように位置ずれしている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ショルダー陸部の接地面において、前記窪みの輪郭形状は、円形状、楕円形状、又は、多角形状である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ショルダー横溝の溝幅は、前記窪みのタイヤ周方向の長さ以上である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、ショルダー陸部に複数のショルダー横溝が設けられた空気入りタイヤが提案されている。この空気入りタイヤは、前記ショルダー横溝によってウェット性能を高めることを期待している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなショルダー横溝は、接地時の変形によって溝内に空気が出入りし、その際にエアポンピング音を発生させ、ひいてはノイズ性能を悪化させる原因となっている。エアポンピング音を小さくするには、ショルダー横溝の溝容積等を小さくすることが有効である。
【0005】
しかしながら、ショルダー横溝の溝容積等を小さくすると、ウェット性能や耐ハイドロプレーニング性能の悪化を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、ウェット性能及び耐ハイドロプレーニング性能を維持しつつノイズ性能を向上させたタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、トレッド端と、タイヤ周方向に連続して延びるショルダー周方向溝と、これらの間で区画されたショルダー陸部とを含み、前記ショルダー陸部の前記ショルダー周方向溝側には、前記ショルダー陸部内で閉塞した輪郭形状を有する少なくとも1個の窪みが設けられており、前記ショルダー陸部の前記窪みのタイヤ軸方向の外側には、前記窪みからタイヤ軸方向に距離を隔てた位置から前記トレッド端まで延びるショルダー横溝が設けられており、前記ショルダー横溝と前記窪みとの間のタイヤ軸方向の間隔は2mm以上である。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記ショルダー陸部には、タイヤ軸方向に並んだ複数個の前記窪みがタイヤ周方向に複数設けられており、タイヤ軸方向に並ぶ前記窪みのタイヤ軸方向の間隔は、2mm以上であるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記窪みの深さは4mm以上であるのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、1個の前記窪みの開口面積は4~60mm2であるのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記ショルダー横溝と前記窪みとは、タイヤ周方向で同じ位置に設けられているのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記ショルダー横溝と前記窪みとは、タイヤ周方向で同じ位置に並ばないように位置ずれしているのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記ショルダー陸部の接地面において、前記窪みの輪郭形状は、円形状、楕円形状、又は、多角形状であるのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記ショルダー横溝の溝幅は、前記窪みのタイヤ周方向の長さ以上であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタイヤは、上述の構成を採用したことにより、ウェット性能及び耐ハイドロプレーニング性能を維持しつつノイズ性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
【
図4】本発明の他の実施形態のショルダー陸部の拡大平面図である。
【
図5】比較例1のタイヤのショルダー陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に用いられる。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0018】
図1に示されるように、トレッド部2は、2つのトレッド端Teの間でタイヤ周方向に連続してのびる複数の周方向溝3と、周方向溝3に区分された複数の陸部とを含む。
【0019】
2つのトレッド端Teは、それぞれ、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置に相当する。
【0020】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0021】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0022】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0023】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、「正規荷重」は、タイヤの標準装着状態において、1つのタイヤに作用する荷重を指す。前記「標準装着状態」とは、タイヤの使用目的に応じた標準的な車両にタイヤが装着され、かつ、前記車両が走行可能な状態で平坦な路面上に静止している状態を指す。
【0024】
周方向溝3は、例えば、2本のクラウン周方向溝4と2本のショルダー周方向溝5とを含んでいる。
【0025】
2本のクラウン周方向溝4は、タイヤ赤道Cを挟むように設けられている。2本のショルダー周方向溝5は、2本のクラウン周方向溝4を挟むように設けられている。クラウン周方向溝4の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの5%~15%である。ショルダー周方向溝5の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの20%~35%である。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における一方のトレッド端Teから他方のトレッド端Teまでのタイヤ軸方向の距離である。
【0026】
各周方向溝3は、例えば、タイヤ周方向に平行に直線状にのびている。各周方向溝3は、タイヤ周方向にジグザグ状又は波状にのびるものでも良い。
【0027】
周方向溝3の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの4.0%~7.0%であるのが望ましい。周方向溝3の深さ(図示省略)は、例えば、5.0~15.0mmであるのが望ましい。但し、周方向溝3は、このような態様に限定されるものではない。
【0028】
本実施形態の陸部は、ショルダー陸部6、ミドル陸部7及びクラウン陸部8を含んでいる。ショルダー陸部6は、トレッド端Teとショルダー周方向溝5との間で区画されている。ミドル陸部7は、ショルダー周方向溝5とクラウン周方向溝4との間に区画されている。クラウン陸部8は、2本のクラウン周方向溝4の間に区画されている。本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2が2つのショルダー陸部6、2つのミドル陸部7及び1つのクラウン陸部8で構成された所謂5リブタイヤである。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、トレッド部2が2つのショルダー陸部6及び2つのミドル陸部7で構成された所謂4リブタイヤでも良い。
【0029】
図2には、
図1のショルダー陸部6の拡大斜視図が示されている。
図3には、
図1のショルダー陸部6の拡大平面図が示されている。
図2及び
図3に示されるように、ショルダー陸部6のショルダー周方向溝5側には、ショルダー陸部6内で閉塞した輪郭形状を有する少なくとも1個の窪み9が設けられている。ショルダー陸部6の窪み9のタイヤ軸方向の外側には、窪み9からタイヤ軸方向に距離を隔てた位置からトレッド端Teまで延びるショルダー横溝10が設けられている。ショルダー横溝10と窪み9との間のタイヤ軸方向の間隔t1は2mm以上である。本発明のタイヤ1は、上記の構成を採用したことによって、ウェット性能及び耐ハイドロプレーニング性能を維持しつつノイズ性能を向上させることができる。その理由としては、以下のメカニズムが推察される。
【0030】
一般に、ショルダー陸部6は、トレッド端Teに近い程、踏面に作用する接地圧が小さく、ショルダー周方向溝5に近い程、踏面に作用する接地圧が大きい傾向がある。このため、ショルダー横溝10がショルダー周方向溝5に近い場合や、ショルダー横溝10がショルダー周方向溝5に連通している場合、接地時のショルダー横溝10の変形が大きくなり、エアポンピング音が大きくなる傾向がある。
【0031】
本発明では、比較的大きな接地圧が作用するショルダー陸部6のショルダー周方向溝5側に、少なくとも1個の窪み9が設けられており、その外側にショルダー横溝10が設けられている。これにより、ショルダー陸部6のショルダー周方向溝5側では、その変形が抑制される。一方、ショルダー陸部6のトレッド端Te側の領域では、作用する接地圧が小さいため、ショルダー横溝10の変形が小さい。このような作用により、ショルダー横溝10のエアポンピング音の発生を抑制することができ、ひいてはノイズ性能が向上する。
【0032】
一方、ショルダー周方向溝5が十分な排水性を発揮するため、ショルダー陸部6のショルダー周方向溝5側の領域において溝要素が少なくなっていても、耐ハイドロプレーニング性能を維持することができる。また、ショルダー陸部6のトレッド端Te側の領域においては、トレッド端Teまで延びたショルダー横溝10が十分な排水性を発揮し、ひいては耐ハイドロプレーニング性能を維持することができる。
【0033】
また、一般に、ウェット性能を確保するためには、陸部の踏面に作用する接地圧を大きくし、路面上の水膜を押し切ることがポイントとなる。本発明では、少なくとも1個の窪み9を設けることにより、ショルダー陸部6に作用する接地圧を高め、ウェット性能を維持している。また、本発明では、前記間隔t1を2mm以上と特定することにより、窪み9とショルダー横溝10との間の陸部壁が十分な補強効果を発揮し、窪み9やショルダー横溝10によるエアポンピング音の発生を抑制しつつ、ウェット性能を維持している。
【0034】
以上の通り、本発明では、ショルダー陸部6のタイヤ軸方向の内側及び外側における接地圧の差を利用し、従来では背反性能とされている、ノイズ性能と、ウェット性能及び耐ハイドロプレーニング性能との両立を図っている。なお、本発明では、ショルダー陸部6のショルダー周方向溝5側の領域での変形が抑制されるため、転がり抵抗を小さくする効果も期待できる。また、本発明では、窪み9によってウェット性能を補うことができるため、ショルダー横溝10の溝幅を適正な範囲に設定でき、ひいてはヒールアンドトゥ摩耗の抑制も期待できる。
【0035】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0036】
図3に示されるように、ショルダー横溝10の溝幅W3は、例えば、ショルダー周方向溝5の溝幅W2(
図1に示す)の50%~70%である。これにより、ウェット性能とノイズ性能とがバランス良く向上する。一方、ショルダー横溝10は、ショルダー陸部6内に途切れ端を有しているため、過度な変形が抑制され、上記のような溝幅であっても、ヒールアンドトゥ摩耗を抑制することができる。
【0037】
ショルダー横溝10の最大の深さは、例えば、ショルダー周方向溝5の最大の深さの50%~100%である。
【0038】
本実施形態のショルダー横溝10は、トレッド端Teを横切ってタイヤ軸方向外側に延び、バットレス面で開口している。ショルダー陸部6の接地面における、ショルダー横溝10のタイヤ軸方向の長さL3は、ショルダー陸部6の接地面のタイヤ軸方向の幅W4の40%~60%である。これにより、ショルダー横溝10に大きな接地圧が作用し難く、エアポンピング音が低減し得る。
【0039】
ショルダー横溝10のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15°以下であり、望ましくは5°以下である。より望ましい態様として、本実施形態のショルダー横溝10は、タイヤ軸方向に対して平行に延びている。
【0040】
本実施形態のショルダー陸部6には、タイヤ軸方向に並んだ複数個(本実施形態では2個である)の窪み9がタイヤ周方向に複数設けられている。また、タイヤ軸方向に並ぶ窪み9のタイヤ軸方向の間隔t2は、2mm以上である。これにより、窪み9に挟まれた陸部壁が十分な補強効果を発揮し、窪み9によるエアポンピング音の発生を抑制しつつ、ウェット性能を維持することができる。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、1本のショルダー横溝10のタイヤ軸方向内側に少なくとも1個の窪み9が配されれば、本発明の効果は期待できる。
【0041】
ショルダー横溝10と窪み9との間のタイヤ軸方向の間隔t1、及び、タイヤ軸方向に並ぶ窪み9のタイヤ軸方向の間隔t2は、ショルダー陸部6を補強する役割を持っている。このため、前記間隔t1及びt2が2mmを下回ると、補強効果が低下し、ショルダー横溝10が変形し易くなる。一方、前記間隔t1及びt2が過度に大きいと、ウェット性能が損なわれるおそれがある。このため、前記間隔t1及びt2は、例えば、4mm以下であり、望ましくは3mm以下である。
【0042】
ショルダー陸部6の接地面において、窪み9の輪郭形状は、円形状、楕円形状、又は、多角形状である。望ましい態様とし、本実施形態の窪み9の輪郭形状は、四角形状とされている。
【0043】
本実施形態では、1つの窪み9の開口面積が4~60mm2とされている。前記開口面積が4mm2を下回ると、接地圧が小さくなり、ウェット性能の低下を招く可能性が高く、前記開口面積が60mm2を超えると、窪み9自体がエアポンピング音の起点となり、ノイズ性能の低下を招くおそれがある。ウェット性能とノイズ性能とをバランス良く向上させる観点から、窪み9の開口面積は、望ましくは10mm2以上、より望ましくは15mm2以上であり、望ましくは35mm2以下、より望ましくは25mm2以下である。
【0044】
窪み9の深さが小さい場合、路面上の水膜を押し切る力が発揮されないおそれがあり、かつ、摩耗によって早期に窪み9が消失してしまうおそれがある。このため、窪み9の深さは、4mm以上が望ましい。一方、窪み9の深さが大きいと、ノイズ性能の悪化を招くおそれがあるため、窪み9の深さは、6mm以下が望ましい。
【0045】
ショルダー横溝10の溝幅W3は、窪み9のタイヤ周方向の長さL4以上であるのが望ましい。これにより、優れたウェット性能及び耐ハイドロプレーニング性能が得られる。一方、ノイズ性能を確保する観点から、ショルダー横溝10の溝幅W3は、窪みのタイヤ周方向長さL4の200%以下が望ましく、より望ましくは150%以下である。
【0046】
本実施形態では、ショルダー横溝10と窪み9とは、タイヤ周方向で同じ位置に設けられているのが望ましい。この態様は、トレッド平面視において、ショルダー横溝10をタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域が、窪み9の少なくとも一部と重複する態様を含むものとする。望ましい態様では、窪み9の開口面積の50%以上、より望ましくは80%以上が、前記投影領域と重複する。さらに望ましい態様として、本実施形態では、窪み9の開口面積の全部が、前記投影領域と重複している。これにより、ウェット性能及びノイズ性能がバランス良く向上する。
【0047】
図4には、他の実施形態のショルダー陸部6の拡大図が示されている。
図4に示されるように、ショルダー横溝10と窪み9とは、タイヤ周方向で同じ位置に並ばないように位置ずれしているものでも良い。換言すれば、この実施形態では、トレッド平面視において、ショルダー横溝10をタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域が、窪み9と全く重複していない。このような実施形態は、窪み9とショルダー横溝10との接地タイミングをずらすことができ、窪み9及びショルダー横溝10が発生するノイズの周波数帯域を分散させることができる。
【0048】
図3及び
図4に示されるように、ショルダー陸部6には、上述のショルダー横溝10及び窪み9以外には、溝やサイプが設けられていない。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、ショルダー陸部6には、必要に応じて他の溝やサイプが設けられても良い。
【0049】
また、
図1に示されるように、本実施形態のミドル陸部7及びクラウン陸部8は、溝やサイプが設けられていない平滑リブとして構成されているが、必要に応じて溝やサイプが設けられても良い。
【0050】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0051】
図1の基本パターンを有するサイズ205/55R16の空気入りタイヤが試作された。比較例1として、
図5に示されるように、ショルダー陸部aに、少なくともトレッド端Teから延びかつショルダー陸部a内で途切れるショルダー横溝bのみが設けられ、窪みが設けられていないタイヤが試作された。比較例1のショルダー横溝bの開口面積の総合計は、実施例1のショルダー横溝及び窪みの開口面積の総合計と同じである。比較例1のタイヤは、上述の事項を除き、実施例のタイヤと実質的に同じ構成を備えている。各テストタイヤのノイズ性能、ウェット性能、耐ハイドロプレーニング性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:16×6.5J
タイヤ内圧:200kPa
テスト車両:排気量1600cc、前輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0052】
<ノイズ性能>
上記テスト車両でドライ路面を速度50km/hで走行したときの、ノイズ(ショルダー横溝のエアポンピング音)が測定された。結果は、比較例1の前記ノイズの逆数を100とする指数であり、数値が大きい程、ノイズ性能が優れていることを示す。
【0053】
<ウェット性能>
上記テスト車両でウェット路面(路面上の水膜が1mm以下である。)を走行したときの性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点であり、数値が大きい程、ウェット性能が優れていることを示す。
【0054】
<耐ハイドロプレーニング性能>
上記テスト車両を高速で水膜が5mmの水溜まりに侵入させ、ハイドロプレーニング現象の発生速度が測定された。結果は、比較例1の前記発生速度を100とする指数であり、数値が大きい程、耐ハイドロプレーニグ性能が優れていることを示す。
テスト結果が表1及び2に示される。
【0055】
【0056】
【0057】
表1~2に示されるように、テストの結果、実施例のタイヤは、ウェット性能及び耐ハイドロプレーニング性能を維持しつつノイズ性能を向上させていることが確認できた。
【0058】
なお、ウェット性能、耐ハイドロプレーニング性能及びノイズ性能を含めた総合性能を示す指標として、表1~2における各評価項目の合計点が用いられても良い。表1~2に示されるように、実施例のタイヤは、前記総合性能が優れていることも確認できた。