(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144065
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】医療機器、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20220926BHJP
G09G 5/10 20060101ALI20220926BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20220926BHJP
A61M 5/14 20060101ALN20220926BHJP
【FI】
A61M5/168 540
G09G5/10 B
G09G5/00 550C
A61M5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044907
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】和田 優矢
(72)【発明者】
【氏名】常井 光亮
(72)【発明者】
【氏名】深澤 太郎
【テーマコード(参考)】
4C066
5C182
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066QQ71
4C066QQ78
5C182AA02
5C182AA03
5C182AB12
5C182BA29
5C182BA45
5C182CA01
5C182DA65
(57)【要約】
【課題】医療従事者が表示部の輝度を調整しやすい、医療機器、制御方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】医療機器は、情報を表示する表示部と、前記表示部の輝度を調整する制御部と、物体の近接を検出可能な近接センサと、を備え、前記制御部は、前記物体が第1距離の範囲内に近接した状態であることを前記近接センサが検出している場合、前記表示部の輝度を第1輝度に調整し、前記物体が前記第1距離よりも近い第2距離の範囲内に近接した状態であることを前記近接センサが検出している場合、前記表示部の輝度を第2輝度に調整する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を表示する表示部と、
前記表示部の輝度を調整する制御部と、
物体の近接を検出可能な近接センサと、
を備え、
前記制御部は、
前記物体が第1距離の範囲内に近接した状態であることを前記近接センサが検出している場合、前記表示部の輝度を第1輝度に調整し、
前記物体が前記第1距離よりも近い第2距離の範囲内に近接した状態であることを前記近接センサが検出している場合、前記表示部の輝度を第2輝度に調整する、
医療機器。
【請求項2】
前記制御部は、前記物体が前記第2距離の範囲内に近接したことを検出した後、所定時間、前記表示部の輝度を第2輝度に維持する、請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記第2輝度は、前記第1輝度よりも輝度が低い、請求項1又は2に記載の医療機器。
【請求項4】
前記第2距離は、当該医療機器の前記近接センサが配置された位置に対して、ユーザが手をかざしているか否かを検出するために設定される閾値に対応した距離である、請求項1から3のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項5】
情報を表示する表示部と、物体の近接を検出可能な近接センサと、を備える医療機器が実行する、制御方法であって、
前記物体が第1距離の範囲内に近接した状態であることを前記近接センサにより検出した場合、前記表示部の輝度を第1輝度に調整するステップと、
前記物体が前記第1距離よりも近い第2距離の範囲内に近接した状態であることを前記近接センサにより検出した場合、前記表示部の輝度を第2輝度に調整するステップと、
を含む、制御方法。
【請求項6】
情報を表示する表示部と、物体の近接を検出可能な近接センサと、を備える医療機器に、
前記物体が第1距離の範囲内に近接した状態であることを前記近接センサにより検出した場合、前記表示部の輝度を第1輝度に調整するステップと、
前記物体が前記第1距離よりも近い第2距離の範囲内に近接した状態であることを前記近接センサにより検出した場合、前記表示部の輝度を第2輝度に調整するステップと、
を実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療機器、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器が備える表示画面の輝度を調整する装置が知られている。例えば、特許文献1には、周囲の照度が設定値より低くなった場合に表示部の表示濃度を変更する装置が記載されている。また、例えば、特許文献2には、照度センサ及び近接センサからの入力に基づいて表示部の輝度を調整する電子機器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09-154937号公報
【特許文献2】特開2014-107153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された装置では、例えば医療機器が備える表示部の輝度の変更を医療従事者が意図する通りに行えない場合がある。
【0005】
本開示は、医療従事者が表示部の輝度を調整しやすい、医療機器、制御方法及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様としての医療機器は、情報を表示する表示部と、前記表示部の輝度を調整する制御部と、物体の近接を検出可能な近接センサと、を備え、前記制御部は、前記物体が第1距離の範囲内に近接した状態であることを前記近接センサが検出している場合、前記表示部の輝度を第1輝度に調整し、前記物体が前記第1距離よりも近い第2距離の範囲内に近接した状態であることを前記近接センサが検出している場合、前記表示部の輝度を第2輝度に調整する。
【0007】
本開示の1つの実施形態として、前記制御部は、前記物体が前記第2距離の範囲内に近接したことを検出した後、所定時間、前記表示部の輝度を第2輝度に維持する。
【0008】
本開示の1つの実施形態として、前記第2輝度は、前記第1輝度よりも輝度が低い。
【0009】
本開示の1つの実施形態として、前記第2距離は、当該医療機器の前記近接センサが配置された位置に対して、ユーザが手をかざしているか否かを検出するために設定される閾値に対応した距離である。
【0010】
本開示の第2の態様としての制御方法は、情報を表示する表示部と、物体の近接を検出可能な近接センサと、を備える医療機器が実行する、制御方法であって、前記物体が第1距離の範囲内に近接した状態であることを前記近接センサにより検出した場合、前記表示部の輝度を第1輝度に調整するステップと、前記物体が前記第1距離よりも近い第2距離の範囲内に近接した状態であることを前記近接センサにより検出した場合、前記表示部の輝度を第2輝度に調整するステップと、を含む。
【0011】
本開示の第3の態様としての制御プログラムは、情報を表示する表示部と、物体の近接を検出可能な近接センサと、を備える医療機器に、前記物体が第1距離の範囲内に近接した状態であることを前記近接センサにより検出した場合、前記表示部の輝度を第1輝度に調整するステップと、前記物体が前記第1距離よりも近い第2距離の範囲内に近接した状態であることを前記近接センサにより検出した場合、前記表示部の輝度を第2輝度に調整するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の医療機器、制御方法及び制御プログラムによれば、医療従事者が表示部の輝度を調整しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る医療機器の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図1に示す制御部が実行する輝度の調整処理の第1例を示すフローチャートである。
【
図3】輝度の調整処理の第1例における、
図1に示す近接センサの受光部における反射光の受光量の変化と、輝度の変化との一例を示す図である。
【
図4】
図1に示す制御部が実行する輝度の調整処理の第2例を示すフローチャートである。
【
図5】輝度の調整処理の第2例における、
図1に示す近接センサの受光部における反射光の受光量の変化と、輝度の変化との一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図において共通の構成部には、同一の符号を付している。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る医療機器10の概略構成を示す機能ブロック図である。医療機器10は、情報を表示する表示部を備える任意の医療機器とすることができる。医療機器10は、例えば、シリンジポンプ、輸液ポンプ、栄養ポンプ、血液ポンプ等の医療用ポンプであってよい。また、医療機器10は、例えば、超音波画像診断装置又は光画像診断装置等であってもよい。医療機器10は、ここで示した例に限られず、他の医療機器や関連するディスプレイとすることができる。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る医療機器10は、制御部11と、記憶部12と、表示部13と、入力部14と、近接センサ15と、を備える。
【0017】
制御部11は、医療機器10の各機能部をはじめとして、医療機器10の全体を制御及び管理する。制御部11は、少なくとも1つのプロセッサを含んで構成される。制御部11は、制御手順を規定したプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ又は各機能の処理に特化した専用のプロセッサで構成される。
【0018】
本実施形態において、制御部11は、表示部13の輝度を調整する。具体的には、制御部11は、近接センサ15による物体の近接の状態に応じて、表示部13の輝度を調整する。制御部11が実行する輝度の調整処理の詳細については、後述する。
【0019】
記憶部12は、半導体メモリ又は磁気メモリ等で構成されることができる。記憶部12は、例えば、各種情報及び医療機器10を動作させるためのプログラム等を記憶する。記憶部12は、例えば本実施形態で説明する処理を実行させるための制御プログラムを記憶する。記憶部12は、ワークメモリとしても機能してもよい。
【0020】
表示部13は、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)又は有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electroluminescence Display)等の周知のディスプレイにより構成される表示デバイスである。表示部13は、各種情報を表示する。例えば、表示部13は、医療機器10の設定に関する情報や、医療機器10による測定結果に関する情報を表示する。例えば、医療機器10がシリンジポンプである場合、表示部13は、シリンジポンプにより送液される液体の投与量の設定値や実測値等を表示してよい。表示部13は、ここに示した例に限られず、他の任意の情報を表示してよい。
【0021】
入力部14は、医療機器10を操作する医療従事者からの操作入力を受け付ける。入力部14は、例えば、操作ボタン、音声入力部、バーコードリーダ等により構成される。入力部14は、例えばタッチスクリーンにより構成され、表示部13の一部に医療従事者からの操作入力を受け付ける入力領域を表示して、医療従事者によるタッチ操作入力を受け付けてもよい。
【0022】
近接センサ15は、物体の近接を検出するセンサである。近接センサ15は、任意の公知の方式により、物体の近接を検出してよい。例えば、近接センサ15は、赤外線を射出し、射出した赤外線の反射光の受光強度(受光量)に基づいて物体の近接を検出してよい。例えば、近接センサ15は、発光部16と、受光部17と、を含んで構成される。
【0023】
発光部16は、物体の近接を検出するために用いられる照射光を射出する。発光部16は、例えば、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)又はLD(Laser Diode:レーザダイオード)等の光を射出する発光素子で構成される。発光部16は、例えば赤外線を射出する。
【0024】
受光部17は、発光部16が射出した光の反射光を受光可能である。本実施形態では、受光部17は、物体が医療機器10に近接した場合に、当該物体により反射された反射光を受光可能である。受光部17は、例えば、PT(Photo Transistor:フォトトランジスタ)又はPD(Photo Diode:フォトダイオード)等の受光素子で構成される。
【0025】
近接センサ15は、受光部17の受光素子における反射光の受光量を示す信号に基づいて、物体の近接を検出することができる。本実施形態では、近接センサ15は、物体が第1距離の範囲内に近接した状態であるか否かを検出するとともに、物体が第2距離の範囲内に近接した状態であるか否かを検出する。
【0026】
ここで、第1距離は、医療機器10の付近に医療従事者等の人が存在するか否かを検出するために設定される閾値に対応した距離である。第1距離は、例えば、数m(例えば、0.5~5m)の範囲で適宜設定される。例えば、医療従事者等が、医療機器10の方に歩いて近づいてくるなどしたことにより、医療機器10に対して、設定された第1距離まで近づいた場合に、近接センサ15は、物体が第1距離の範囲内に近接したと検出することができる。
【0027】
第2距離は、医療機器10の近接センサ15が配置された位置に対して、医療従事者等のユーザが手をかざしているか否かを検出するために設定される閾値に対応した距離である。第2距離は、第1距離よりも近い距離として設定される。第2距離は、例えば、数cm(例えば0.5~10cm)の範囲で適宜設定される。例えば、医療従事者等が、医療機器10の近接センサ15が配置された位置に、手を近づけたり、手をかざしたり、あるいは医療機器10の近接センサ15が配置された位置を手で覆ったりすることにより、医療機器10と手との距離が第2距離まで近づいた場合に、近接センサ15は、物体が第2距離の範囲内に近接したと検出することができる。
【0028】
近接センサ15は、物体が第1距離又は第2距離の範囲内に近接したと検出した場合、それぞれ、物体が第1距離又は第2距離の範囲内に近接したことを示す信号を制御部11に送信する。
【0029】
医療機器10は、患者に対して使用されている場合、患者の安全を守るため、表示部13の表示を、例えばスタンバイ状態にする等して消去することができないものがある。しかしながら、表示部13の輝度が常に高い状態にあると、患者の生活に支障をきたす場合がある。例えば、夜間、患者が寝る場合には、患者がいる病室を消灯させたとしても、医療機器10の表示部13が高い輝度で表示されたままの状態の場合、表示部13が明るいため、患者の睡眠を妨げるおそれがある。
【0030】
これに対し、夜間には表示部13の輝度を下げることができる夜間モードが設定される場合があった。この場合、医療機器10は、例えば医療従事者等が近づいた場合、医療従事者等が表示部13に表示された内容を確認できるように、表示部13の輝度を上げるように設定されることがあった。しかし、この場合、夜間モードであっても、医療従事者等が医療機器10に近接すると、表示部13の輝度が上がるため、患者の睡眠の妨げになることがあった。これにより、患者のQOL(Quality of Life:クオリティ・オブ・ライフ)が低下するという問題があった。
【0031】
このような問題に対し、本実施形態に係る医療機器10では、制御部11が表示部13の輝度を調整することができる。以下、本実施形態に係る医療機器10の制御部11による、輝度の調整処理の詳細について、説明する。
【0032】
図2は、
図1に示す制御部11が実行する輝度の調整処理の第1例を示すフローチャートである。輝度の調整処理の第1例では、制御部11は、表示部13の輝度を、第1輝度と、第2輝度とで調整する。第2輝度は、第1輝度よりも輝度が低い。すなわち、第1輝度の場合、表示部13の表示は明るく、第2輝度の場合、表示部13の表示は暗い。例えば、第1輝度は、日中を含む平時にも、医療従事者等が明確に表示部13の表示を視認しやすい明るさである。例えば、第2輝度は、夜間等の周囲が暗い環境で、医療従事者等が表示部13の表示を視認できるが、患者の睡眠を妨げにくくなる明るさである。
【0033】
図2のフローは、例えば夜間等の周囲が暗い環境である場合に実行される。ただし、
図2のフローは、日中等の周囲が明るい環境である場合に実行されてもよい。
図2のフローの開始時点において、制御部11は、表示部13の輝度を第2輝度に調整している。
【0034】
図3は、輝度の調整処理の第1例における、
図1に示す近接センサ15の受光部17における反射光の受光量の変化と、輝度の変化との一例を示す図である。
図3において、横軸は時刻を示し、縦軸は受光部17における反射光の受光量を示す。また、
図3において、受光量A
1は、物体が第1距離に近接した場合に受光部17が受光する受光量に対応した閾値を示し、受光量A
2は、物体が第2距離に近接した場合に受光部17が受光する受光量に対応した閾値を示す。従って、制御部11は、受光部17における受光量が受光量A
1を超えると、物体が第1距離の範囲内に近接したと判定し、受光部17における受光量が受光量A
2を超えると、物体が第2距離の範囲内に近接したと判定する。
【0035】
制御部11は、物体が第1距離の範囲内に近接した状態であることを近接センサ15が検出している場合、表示部13の輝度を第1輝度に調整する。例えば、制御部11は、
図2のフローのステップS11及びステップS12により、物体が第1距離の範囲内に近接した状態であることを近接センサ15が検出している場合、表示部13の輝度を第1輝度に調整する。
【0036】
すなわち、制御部11は、物体(例えば医療従事者)が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態であるか否かを判定する(ステップS11)。
【0037】
制御部11は、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態でないと判定した場合(ステップS11のNo)、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態であると判定するまで、表示部13の輝度を第2輝度にしたまま、ステップS11を繰り返す。ここで言う「物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態でないと制御部11が判定した場合」とは、例えば、当該医療機器10が配置された病室に医療従事者等が来ていない状態である。
図3では、時刻t
1より前は、医療従事者等が医療機器10に近づいておらず、従って、受光部17における反射光の受光量も変化しない。
【0038】
一方、制御部11は、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態であると判定した場合(ステップS11のYes)、表示部13の輝度を第1輝度にする(ステップS12)。すなわち、制御部11は、表示部13の表示画面を明るくする。ここで言う「物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態であると制御部11が判定した場合」とは、例えば、当該医療機器10が配置された病室に医療従事者等が来た状態である。この場合に、表示部13の輝度を第1輝度にすることによって、医療従事者等に対して表示部13における表示画面を見やすくすることができる。
【0039】
図3に示す例では、時刻t
1から、受光部17における反射光の受光量が増加している。これにより、制御部11は、医療機器10に対して物体が近接していることを検出できる。制御部11は、受光部17における反射光の受光量が受光量A
1を超えると、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接したと判定する。すなわち、
図3に示す例では、時刻t
2において、制御部11は、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接したと判定する。そして、表示部13の輝度を第2輝度から第1輝度にする。
【0040】
制御部11は、さらに、物体が第2距離の範囲内に近接した状態であることを近接センサ15が検出している場合、表示部13の輝度を第2輝度に調整する。本実施形態では、制御部11は、物体が第2距離の範囲内に近接したことを検出した後、所定時間、表示部の輝度を第2輝度に維持する。具体的には、制御部11は、ステップS13からステップS15により、この制御を行う。
【0041】
すなわち、制御部11は、物体が医療機器10の第2距離の範囲内に近接した状態であるか否かを判定する(ステップS13)。例えば、医療従事者が、医療機器10の近接センサ15が配置された位置に、手を近づけたり、手をかざしたり、物体を近づけたり、あるいは医療機器10の近接センサ15が配置された位置を手で覆ったりした場合、物体が医療機器10の第2距離の範囲内に近接した状態であると判定され得る。例えば、夜間等に医療機器10の表示部13の表示画面が第1輝度であると、明るすぎて患者の睡眠の妨げになると医療従事者等が判断した場合、医療従事者等は、医療機器10の近接センサ15が配置された位置に、手を近づけたり、手をかざしたり、物体を近づけたり、あるいは医療機器10の近接センサ15が配置された位置を手で覆ったりする。
【0042】
制御部11は、物体が医療機器10の第2距離の範囲内に近接した状態であると判定した場合(ステップS13のYes)、表示部13の輝度を第2輝度にする(ステップS14)。すなわち、制御部11は、表示部13の表示画面を暗くする。物体が医療機器10の第2距離の範囲内に近接した状態であると制御部11が判定した場合は、医療従事者等が、表示画面が明るすぎると判断した場合であるから、制御部11が表示部13の表示画面を暗くすることにより、患者の睡眠を妨げにくくなる。
【0043】
図3に示す例では、時刻t
3において、医療従事者等が立ち止まったことによって、受光部17における反射光の受光量が一定となっている。その後、医療従事者等は、時刻t
4において、手を近接センサ15が配置された位置に近づける。すると、
図3に示すように、時刻t
4から、受光部17における反射光の受光量が増加する。そして、時刻t
5において、受光部17における反射光の受光量が受光量A
2を超えると、制御部11は、物体が医療機器10の第2距離の範囲内に近接したと判定する。すなわち、
図3に示す例では、時刻t
5において、制御部11は、物体が医療機器10の第2距離の範囲内に近接したと判定する。そして、表示部13の輝度を第1輝度から第2輝度にする。
【0044】
制御部11は、ステップS14で表示部13の輝度を第2輝度にした後、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS15)。所定時間は、医療従事者等が医療機器10に対して入力操作をするのに要すると考えられる時間である。所定時間は、例えば数10秒から5分の範囲内で適宜定められてよい。
【0045】
制御部11は、所定時間が経過していないと判定した場合(ステップS15のNo)、所定時間が経過したと判定するまで、ステップS15を繰り返す。すなわち、制御部11は、表示部13の輝度を第2輝度にした後は、所定時間が経過するまで、物体の近接状態に関わらず、表示部13の輝度を第2輝度のまま維持する。これにより、例えば医療従事者等が、手を近接センサ15が配置された位置から離しても、所定時間は、表示部13の表示画面が暗い状態が維持される。これにより、医療従事者等は、表示画面が、患者の睡眠を妨げにくい暗い状態を維持したまま、両手で医療機器10に対して入力操作を行うことができる。
【0046】
例えば、
図3に示す例では、医療従事者等が、手を近接センサ15が配置された位置から離すことによって、時刻t
6から、受光部17における反射光の受光量が受光量A
2を下回る。これにより、制御部11は、物体が医療機器10の第2距離の範囲内に近接しなくなったと判定できる。しかし、制御部11は、所定時間が経過するまでは、表示部13の輝度を第2輝度に維持する。
【0047】
制御部11は、所定時間が経過したと判定した場合(ステップS15のYes)、物体が医療機器10の第2距離の範囲内に近接した状態であるか否かを判定する(ステップS16)。
【0048】
制御部11は、物体が医療機器10の第2距離の範囲内に近接した状態であると判定した場合(ステップS16のYes)、ステップS14に移行する。すなわち、制御部11は、表示部13の輝度を第2輝度にしたまま、再び所定時間が経過するまで、表示部13の輝度を第2輝度に維持する。例えば、所定時間が経過しても、医療従事者等が、手を近接センサ15が配置された位置に近づけた状態である場合には、制御部11が、表示画面が暗い状態を維持する。
【0049】
一方、制御部11は、物体が医療機器10の第2距離の範囲内に近接した状態でないと判定した場合(ステップS16のNo)、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態であるか否かを判定する(ステップS17)。
【0050】
制御部11は、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態であると判定した場合(ステップS17のYes)、ステップS12に移行し、表示部13の輝度を第1輝度に調整する。例えば、制御部11がステップS14において表示部13の輝度を第2輝度にしてから所定時間経過後に、医療従事者等が、医療機器10に対して第1距離の範囲内におり、かつ、手を近接センサ15が配置された位置に近づけていない場合、制御部11は、ステップS17のYesに該当すると判定し、表示部13の輝度を第1輝度に調整することによって表示画面を明るくする。
【0051】
一方、制御部11は、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態でないと判定した場合(ステップS17のNo)、表示部13の輝度を第2輝度に維持したまま、ステップS11に移行する。すなわち、この場合、このフローは冒頭に戻る。例えば、制御部11がステップS14において表示部13の輝度を第2輝度にしてから、医療従事者が所定時間内に医療機器10に対する入力操作を終えて、医療機器10から離れたことによって、第1距離の範囲内に近接する物体がなくなった場合、制御部11は、ステップS17のNoに該当すると判定し、ステップS11に移行する。
【0052】
一方、ステップS13において、制御部11は、物体が医療機器10の第2距離の範囲内に近接した状態でないと判定した場合(ステップS13のNo)、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態であるか否かを判定する(ステップS18)。
【0053】
制御部11は、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態であると判定した場合(ステップS18のYes)、ステップS13に移行する。例えば、医療従事者等が医療機器10の第1距離の範囲内に近づいたまま、手を近接センサ15が配置された位置に近づけていない場合、制御部11は、ステップS18のYesに該当すると判定する。
【0054】
一方、制御部11は、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態でないと判定した場合(ステップS18のNo)、表示部13の輝度を第2輝度に調整する(ステップS19)。そして、ステップS11に移行する。すなわち、この場合、このフローは冒頭に戻る。例えば、医療従事者等が医療機器10に対して第1距離の範囲内に近接した後、第1距離の範囲から離れた場合、制御部11は、ステップS18のNoに該当すると判定する。
【0055】
輝度の調整処理の第1例では、制御部11が、第1輝度と第2輝度との2段階で輝度を調整する場合の例について説明した。しかしながら、制御部11が調整する輝度は、必ずしも2段階でなくてもよい。制御部11は、3段階以上の段階で、輝度を調整してもよい。ここでは、一例として、制御部11が、第1輝度と第2輝度と第3輝度との3段階で輝度を調整する場合の第2例について、説明する。
【0056】
図4は、
図1に示す制御部11が実行する輝度の調整処理の第2例を示すフローチャートである。輝度の調整処理の第2例では、制御部11は、表示部13の輝度を、第1輝度と、第2輝度と、第3輝度とで調整する。第2輝度は、第1輝度よりも輝度が低い。また、第3輝度は、第2輝度よりも輝度が低い。従って、第1輝度の場合が表示画面が最も明るく、第3輝度の場合が表示画面が最も暗い。例えば、第1輝度は、日中を含む平時にも、医療従事者等が明確に表示部13の表示を視認しやすい明るさである。例えば、第2輝度は、夜間等の周囲が暗い環境で、医療従事者等が表示部13の表示を視認でき、入力等の操作は行いやすいが、患者の睡眠を妨げにくくなる明るさである。例えば、第3輝度は、表示部13の表示を視認できるが、入力等の操作は行うことが難しく、患者の睡眠をさらに妨げにくい明るさである。
【0057】
図4のフローは、例えば夜間等の周囲が暗い環境である場合に実行される。ただし、
図4のフローは、日中等の周囲が明るい環境である場合に実行されてもよい。
図4のフローの開始時点において、制御部11は、表示部13の輝度を第3輝度に調整している。
【0058】
図5は、輝度の調整処理の第2例における、
図1に示す近接センサ15の受光部17における反射光の受光量の変化と、輝度の変化との一例を示す図である。
図5において、横軸は時刻を示し、縦軸は受光部17における反射光の受光量を示す。また、
図5において、受光量A
1及び受光量A
2は、
図3で説明したものと同様である。
【0059】
以下、第2例について、第1例と同じ点については適宜説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0060】
第2例において、制御部11は、物体が第1距離の範囲内に近接した状態であることを近接センサ15が検出している場合(ステップS21のYes)、表示部13の輝度を第1輝度に調整する(ステップS22)。ステップS21及びステップ22の処理は、それぞれ第1例で説明したステップS11及びステップS12と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0061】
図5に示す例では、時刻t
1から、受光部17における反射光の受光量が増加している。これにより、制御部11は、医療機器10に対して物体が近接していることを検出できる。制御部11は、受光部17における反射光の受光量が受光量A
1を超えると、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接したと判定する。すなわち、
図5に示す例では、時刻t
2において、制御部11は、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接したと判定する。そして、表示部13の輝度を第3輝度から第1輝度にする。
【0062】
制御部11は、さらに、物体が第2距離の範囲内に近接した状態であることを近接センサ15が検出している場合(ステップS23のYes)、表示部13の輝度を第2輝度に調整する(ステップS24)。本実施形態では、制御部11は、物体が第2距離の範囲内に近接したことを検出した後、所定時間、表示部の輝度を第2輝度に維持する(ステップS25)。ステップS23からステップS25の処理は、それぞれ第1例で説明したステップS13からステップS15と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0063】
図5に示す例では、時刻t
3において、医療従事者等が立ち止まったことによって、受光部17における反射光の受光量が一定となっている。その後、医療従事者等は、時刻t
4において、手を近接センサ15が配置された位置に近づける。すると、
図5に示すように、時刻t
4から、受光部17における反射光の受光量が増加する。そして、時刻t
5において、受光部17における反射光の受光量が受光量A
2を超えると、制御部11は、物体が医療機器10の第2距離の範囲内に近接したと判定する。すなわち、
図5に示す例では、時刻t
5において、制御部11は、物体が医療機器10の第2距離の範囲内に近接したと判定する。そして、表示部13の輝度を第1輝度から第2輝度にする。制御部11は、所定時間が経過するまでは、表示部13の輝度を第2輝度に維持する。
【0064】
制御部11は、所定時間が経過したと判定した場合(ステップS25のYes)、物体が医療機器10の第2距離の範囲内に近接した状態であるか否かを判定する(ステップS26)。
【0065】
制御部11は、物体が医療機器10の第2距離の範囲内に近接した状態であると判定した場合(ステップS26のYes)、ステップS24に移行する。
【0066】
一方、制御部11は、物体が医療機器10の第2距離の範囲内に近接した状態でないと判定した場合(ステップS26のNo)、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態であるか否かを判定する(ステップS27)。
【0067】
制御部11は、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態であると判定した場合(ステップS27のYes)、ステップS22に移行し、表示部13の輝度を第1輝度に調整する。
【0068】
一方、制御部11は、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態でないと判定した場合(ステップS27のNo)、表示部13の輝度を第3輝度に調整する(ステップS29)。そして、ステップS21に移行する。すなわち、このフローの冒頭に戻る。
【0069】
例えば、
図5に示す例において、医療従事者等が、時刻t
4に、手を近接センサ15が配置された位置に近づけ、時刻t
5に、受光部17における反射光の受光量が受光量A
2を超えることによって表示部13の輝度が第2輝度に調整された後、当該医療従事者等が、所定時間が経過する前に、医療機器10に対する入力操作を終えて、時刻t
7から、医療機器10のもとを離れたとする。これにより、医療従事者等は、第1距離の範囲内から離れ、近接センサ15は、第1距離の範囲内に物体を検出しなくなる。そして、時刻t
5から所定時間経過後の時刻t
8に、制御部11は、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態でないと判定し(ステップS27のNo)、表示部13の輝度を第3輝度に調整する(ステップS29)。
【0070】
このように、第2例においては、制御部11がステップS24において表示部13の輝度を第2輝度にしてから、医療従事者が所定時間内に医療機器10に対する入力操作を終えて、医療機器10から離れたことによって、第1距離の範囲内に近接する物体がなくなった場合、制御部11は、表示部13の輝度を第3輝度に調整することにより、表示画面を、患者の睡眠を妨げない最も暗いレベルにする。これにより、医療従事者が近接した状態でない場合に、患者の睡眠がさらに妨げられにくいようにすることができる。
【0071】
一方、ステップS23において、制御部11は、物体が医療機器10の第2距離の範囲内に近接した状態でないと判定した場合(ステップS23のNo)、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態であるか否かを判定する(ステップS28)。
【0072】
制御部11は、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態であると判定した場合(ステップS28のYes)、ステップS23に移行する。
【0073】
一方、制御部11は、物体が医療機器10の第1距離の範囲内に近接した状態でないと判定した場合(ステップS28のNo)、表示部13の輝度を第3輝度に調整する(ステップS29)。そして、ステップS21に移行する。すなわち、このフローの冒頭に戻る。例えば、医療従事者等が医療機器10に対して第1距離の範囲内に近接した後、第1距離の範囲から離れた場合、制御部11は、ステップS28のNoに該当すると判定し、表示画面を、患者の睡眠を妨げない最も暗いレベルにする。これにより、医療従事者が近接した状態でない場合に、患者の睡眠がさらに妨げられにくいようにすることができる。
【0074】
このように、本実施形態に係る医療機器10によれば、物体が第1距離の範囲内に近接した状態であることを近接センサ15が検出している場合、表示部13の輝度を第1輝度に調整し、物体が第2距離の範囲内に近接した状態であることを近接センサ15が検出している場合、表示部13の輝度を第2輝度に調整する。そのため、医療機器10と物体との距離に応じて、医療従事者が表示部13の輝度を調整しやすくなる。
【0075】
例えば、本実施形態では、第2距離は、医療機器10の近接センサ15が配置された位置に対して、医療従事者等のユーザが手をかざしているか否かを検出するために設定される閾値に対応した距離であるため、医療従事者等は、手をかざすことにより、容易に表示部13の輝度を調整できる。
【0076】
特に、本実施形態では、物体が第2距離の範囲内に近接した状態であることを近接センサ15が検出している場合、表示部13の輝度は、第1輝度より低い第2輝度に調整される。そのため、医療従事者等は、特定の動作(本実施形態では、手をかざすこと)により、表示部13の表示画面を暗くすることができる。これにより、夜間であっても医療従事者にとって作業に必要な最低限の明るさを確保しつつ、患者の睡眠が妨げられにくくなる。その結果、医療従事者の作業を妨げることなく、患者のQOLが向上する。
【0077】
また、本実施形態では、近接センサ15が検出した物体との距離に基づいて制御部11が輝度を調整するため、医療機器10に対して、特別な追加の構成を付加することなく、近接センサ15を利用して上述の処理を実行することができる。
【0078】
また、上記第2例のように、3段階の輝度の制御が行われる場合には、2段階の輝度の制御が行われる場合と比較して、医療機器10の表示部13の表示画面を閲覧したり医療機器10の入力部14に対して入力操作を行ったりするときに、必要最低限の明るさへ調整できるため、患者の睡眠が妨げられにくくなると同時に、医療従事者の作業効率を向上させることができる。その結果、患者のQOLの向上と医療従事者の利便性を両立させ得る。
【0079】
上記実施形態において、第2輝度が第1輝度よりも輝度が低い場合について説明した。しかしながら、第2輝度は、第1輝度よりも輝度が高くてもよい。この場合も、医療従事者等は、近接センサ15が配置された位置に対して手をかざすことにより、輝度の変更を行うことができる。第1輝度、第2輝度及び第3輝度は各々適宜設定可能である。
【0080】
本発明は、上述した各実施形態で特定された構成に限定されず、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、各構成部、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、本実施形態では、特定の動作は手をかざす動作としたが、これに限らず、受光量を変更可能な位置に物品を配置したりすることであってもよく、同等の手段によって適宜調整可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示は、医療機器、制御方法及び制御プログラムに関する。
【符号の説明】
【0082】
10:医療機器
11:制御部
12:記憶部
13:表示部
14:入力部
15:近接センサ
16:発光部
17:受光部