(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144076
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】色素増感太陽電池
(51)【国際特許分類】
H01G 9/20 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
H01G9/20 203C
H01G9/20 203B
H01G9/20 111A
H01G9/20 119
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044923
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】中村 やよい
(72)【発明者】
【氏名】小林 君平
(57)【要約】
【課題】小型の色素増感太陽電池を提供すること。
【解決手段】色素増感太陽電池は、複数の第1のユニットと第2のユニットとを有する。第1のユニットは、第1の基板に形成された第1の電極と、第1の基板と対向して配置される第2の基板に形成された第1の対向電極と、第1の電極と第1の対向電極との間に形成された、電子捕集剤と色素とを含む第1の光吸収層と、第1の電解液と、第1の触媒層とを有する。第2のユニットは、第1の基板に形成された第2の電極と、第2の基板に形成された第2の対向電極と、第2の電極と第2の対向電極との間に形成された、電子捕集剤と色素とを含む第2の光吸収層と、第2の電解液と、第2の触媒層とを有する。第1の電解液と第2の電解液とは、第1の光吸収層と第1の触媒層との間及び第2の光吸収層と第2の触媒層との間に共通に充たされた電解液である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板に形成された第1の電極と、前記第1の基板と対向して配置される第2の基板に形成された第1の対向電極と、前記第1の電極と前記第1の対向電極との間に形成された、電子捕集剤と色素とを含む第1の光吸収層と、第1の電解液と、第1の触媒層とを有する複数の第1のユニットと、
前記第1の基板に形成された第2の電極と、前記第2の基板に形成された第2の対向電極と、前記第2の電極と前記第2の対向電極との間に形成された、電子捕集剤と色素とを含む第2の光吸収層と、第2の電解液と、第2の触媒層とを有する複数の第2のユニットと、
を具備し、
前記第1のユニット及び前記第2のユニットは、1次元方向又は2次元方向に交互に配置され、
前記第1の電解液と前記第2の電解液とは、前記第1の光吸収層と前記第1の触媒層との間及び前記第2の光吸収層と前記第2の触媒層との間に共通に充たされた電解液である、
色素増感太陽電池。
【請求項2】
前記第1の電極は、前記第1のユニットにおけるアノード電極であり、
前記第1の対向電極は、前記第1のユニットにおけるカソード電極であり、
前記第1の光吸収層は、前記第1の電極の上に形成され、
前記第1の触媒層は、前記第1の対向電極の上に形成され、
前記第2の電極は、前記第2のユニットにおけるカソード電極であり、
前記第2の対向電極は、前記第2のユニットにおけるアノード電極であり、
前記第2の触媒層は、前記第2の電極の上に形成され、
前記第2の光吸収層は、前記第2の対向電極の上に形成されており、
前記第2の電極は、対応する第2のユニットの両隣に配置された2つの第1のユニットのうちの一方の第1の電極と共通の電極であり、
前記第2の対向電極は、対応する第2のユニットの両隣に配置された2つの第1のユニットのうちの他方の第1の対向電極と共通の電極である、
請求項1に記載の色素増感太陽電池。
【請求項3】
前記第1の電極は、前記第1のユニットにおけるアノード電極であり、
前記第1の対向電極は、前記第1のユニットにおけるカソード電極であり、
前記第1の光吸収層は、前記第1の電極の上に形成され、
前記第1の触媒層は、前記第1の対向電極の上に形成され、
前記第2の電極は、前記第2のユニットにおけるアノード電極であり、
前記第2の対向電極は、前記第2のユニットにおけるカソード電極であり、
前記第2の光吸収層は、前記第2の電極の上に形成され、
前記第2の触媒層は、前記第2の対向電極の上に形成され、
前記第2の電極は、対応する第2の電池ユニットの両隣に配置された2つの第1のユニットのそれぞれの第1の電極と共通の電極であり、
前記第2の対向電極は、対応する第2の電池ユニットの両隣に配置された2つの第1のユニットのそれぞれの第1の対向電極と共通の電極である、
請求項1に記載の色素増感太陽電池。
【請求項4】
前記電子捕集剤は、酸化チタンを含む、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の色素増感太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、色素増感太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、IoT(Internet of Things)デバイス用の電源及びエナジーハーベスティング素子として期待されている。太陽電池は、シリコン系太陽電池、化合物系太陽電池、有機系太陽電池に大別される。有機系太陽電池の中で、色素増感太陽電池(Dye sensitized Solar Cell: DSC)が知られている。色素増感太陽電池は、光を吸収するための色素と、電解液とを用いた酸化還元反応によって発電する。色素増感太陽電池に用いられる電解液には、固体型電解液と液体型電解液とがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】山中良亮,“色素増感太陽電池”,シャープ技報,シャープ株式会社,2010年2月,第100巻,p32-35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
色素増感太陽電池は、受光面積の増加のために直列接続又は並列接続されたモジュールとして用いられ得る。近年、このような色素増感太陽電池モジュールの小型化が望まれている。
【0005】
実施形態は、小型の色素増感太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様の色素増感太陽電池は、複数の第1のユニットと第2のユニットとを有する。第1のユニットは、第1の基板に形成された第1の電極と、第1の基板と対向して配置される第2の基板に形成された第1の対向電極と、第1の電極と第1の対向電極との間に形成された、電子捕集剤と色素とを含む第1の光吸収層と、第1の電解液と、第1の触媒層とを有する。第2のユニットは、第1の基板に形成された第2の電極と、第2の基板に形成された第2の対向電極と、第2の電極と第2の対向電極との間に形成された、電子捕集剤と色素とを含む第2の光吸収層と、第2の電解液と、第2の触媒層とを有する。第1のユニット及び第2のユニットは、1次元方向又は2次元方向に交互に配置されている。第1の電解液と第2の電解液とは、第1の光吸収層と第1の触媒層との間及び第2の光吸収層と第2の触媒層との間に共通に充たされた電解液である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型の色素増感太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る色素増感太陽電池の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、1つのユニットにおける発電原理を説明するための図である。
【
図3】
図3は、色素増感太陽電池の動作を説明するための図である。
【
図4】
図4は、実施形態の変形例に係る色素増感太陽電池の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
図1は、実施形態に係る色素増感太陽電池の構成の一例を示す図である。実施形態に係る色素増感太陽電池1は、複数の色素増感太陽電池のユニットU1、U2、U3、U4が直列接続されて構成される色素増感太陽電池モジュールである。
図1では、ユニットの数は、4つである。ユニットの数は、4つに限定されるものではない。
【0010】
図1で示す4つのユニットのうち、ユニットU1及びU3は、同一の構造を有する第1のユニットである。また、ユニットU2及びU4は、ユニットU1及びU3に対して上下反転された構造を有する第2のユニットである。
【0011】
図1に示すように、色素増感太陽電池1のそれぞれのユニットU1、U2、U3、U4は、第1の基板11と第2の基板12との間に形成される。第1の基板11は、ガラス基板等の透明基板である。第2の基板12は、第1の基板11と対向するように配置される。第2の基板12は、第1の基板11と同様に、ガラス基板等の透明基板である。
【0012】
第1の基板11には、電極13a、13b、13cが間隔を空けて形成されている。間隔は、例えば隣接する電極間でのリーク電流等の影響がない程度の間隔である。電極13a、13b、13cは、酸化インジウム錫(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)といった透明導電酸化膜(TCO)によって形成される。電極13aは、ユニットU4のアノード電極として用いられるために第1の基板11の上のユニットU4と対応する位置に形成される。また、電極13aは、色素増感太陽電池1の外部に引き出され、図示しない負荷の一端に接続される。電極13bは、ユニットU3のカソード電極及びユニットU2のアノード電極として共通に用いられるために第1の基板11の上のユニットU3と対応する位置からユニットU2と対応する位置にかけて形成されている。電極13cは、ユニットU1のカソード電極として用いられるために第1の基板11の上のユニットU1と対応する位置に形成される。また、電極13cは、色素増感太陽電池1の外部に引き出され、図示しない負荷のもう一端に接続される。
【0013】
第2の基板12には、対向電極14a、14bが間隔を空けて形成されている。対向電極14a、14bは、電極13a、13b、13cと同様、酸化インジウム錫(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)といった透明導電酸化膜(TCO)によって形成される。対向電極14aは、ユニットU4のカソード電極及びユニットU3のアノード電極として用いられるために第2の基板12の上のユニットU4と対応する位置からユニットU3と対応する位置にかけて形成されている。対向電極14bは、ユニットU2のカソード電極及びユニットU1のアノード電極として用いられるために第2の基板12の上のユニットU2と対応する位置からユニットU1と対応する位置にかけて形成されている。
【0014】
それぞれのユニットのアノード電極には導電体層15が形成されている。すなわち、導電体層15は、電極13aのユニットU4と対応する位置、対向電極14aのユニットU3と対応する位置、電極13bのユニットU2と対応する位置、対向電極14bのユニットU1と対応する位置にそれぞれ形成されている。導電体層15は、銀等の導電膜で構成される。導電体層15は、金属よりも高抵抗なTCOで構成される電極13a、13b、13cによる損失を抑制するための集電層として設けられ得る。導電体層15は、省略されてもよい。
【0015】
それぞれの導電体層15の上には、光吸収層16が形成されている。光吸収層16は、電子捕集剤に色素が吸着されて構成された層である。電子捕集剤は、例えば微小な酸化物半導体、例えば酸化チタン(TiO2)の集積体である。色素は、例えばルテニウム(Ru)色素(RU)(N719色素等)等である。電子捕集剤は、酸化チタンに限らず、例えば酸化亜鉛、酸化錫、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化インジウム及びその複合体等であってもよい。また、色素は、N719色素に限らない。例えば、ルテニウム系色素として、N3色素、BlackDyeや、純粋有機色素として、D149、キサンテン、PVK、メロシアニン、オキサジン等が用いられてもよい。
【0016】
それぞれのユニットのカソード電極には触媒層17が形成されている。すなわち、触媒層17は、対向電極14aのユニットU4と対応する位置、電極13bのユニットU3と対応する位置、対向電極14bのユニットU2と対応する位置、電極13cのユニットU1と対応する位置にそれぞれ形成されている。触媒層17は、例えば白金層である。
【0017】
それぞれのユニットの光吸収層16と触媒層17との間には、電解液18が充たされている。電解液18の溶媒としては、例えばアセトニトリル、メトキシアセトニトリル、炭酸エチレン等が用いられ得る。電解液18の溶質としては、例えばヨウ素(I
2)、1,2-ジメチル-3-n-プロピルイミダゾリウムアイオダイド(DMPImI)、ヨウ化リチウム(LiI)、4-tert-ブチルピリジン(TBP)等が用いられ得る。
図1に示すように、実施形態では、電解液18は、ユニットの間で仕切られていない。すなわち、電解液18は、ユニットU1、U2、U3、U4で共通化されている。また、電解液18は、第1の基板11と、第2の基板12と、封止層19とによって封止されている。封止層19は、例えば樹脂である。
【0018】
図1で示したように、実施形態の色素増感太陽電池1は、第1のユニットと第2のユニットが1次元方向に交互に配置され、第2のユニットの電極が両隣の第1のユニットのうちの一方の電極と共通であり、第2のユニットの対向電極が両隣の第1のユニットのうちの他方の対向電極と共通であるように各ユニットを直列接続したW型構造の色素増感太陽電池である。また、実施形態の色素増感太陽電池1では、それぞれのユニットで用いられる電解液が共通化されている。
【0019】
図2は、1つのユニットにおける発電原理を説明するための図である。ここで、
図2は、ユニットU4を示している。しかしながら、ユニットU1、U2、U3も同様の発電原理に従って発電する。また、以下の例では電子捕集剤は酸化チタン(TiO
2)であり、色素はルテニウム(Ru)色素であり、電解液18はヨウ素(I)電解液であるとする。
【0020】
まず、色素増感太陽電池1に光が入射すると、その光は基板に形成された色素16aによって吸収される。色素16aは、光を吸収することによって励起する。反応式は、例えば以下の(式1)で示される。
Ru→Ru++e- (式1)
【0021】
ここで、
図2では、光は、第1の基板11の側から入射している。しかしながら、W型構造の色素増感太陽電池の場合、光が第2の基板12の側から入射した場合であっても、色素16aは励起する。
【0022】
励起された色素16aから放出された電子(e-)は、例えば多孔質の酸化チタン(TiO2)で構成される電子捕集剤16bに注入される。電子捕集剤16bに注入された電子は、ユニットU4のアノード電極である電極13aに移動する。
【0023】
一方、電子(e-)を失った色素16aは、電解液18中の例えばヨウ化物イオン(I-)から、電子を供給される。電解液18中のヨウ化物イオン(I-)は、電子(e-)を色素16bに供給すると三ヨウ化物イオン(I3
-)になる。反応式は、例えば以下の(式2)、(式3)で示される。
Ru+e-→Ru (式2)
3I-→I3
-+e- (式3)
【0024】
このような酸化反応によって生じた三ヨウ化物イオン(I3
-)は、ユニットU4のカソード電極である対向電極14aから電子(e-)を受け取ろうとする。このとき、対向電極14aと電極13aとの間には、電位差が発生する。対向電極14aと電極13aとの間に負荷が接続されていれば、電極13aまで移動した電子は、負荷を通って対向電極14aまで移動する。そして、対向電極14aに達した電子は、三ヨウ化物イオン(I3
-)によって吸収される。このような還元反応により、三ヨウ化物イオン(I3
-)はヨウ化物イオン(I-)に戻る。反応式は、例えば以下の(式4)で示される。
I3
-+e-→3I- (式4)
【0025】
以上の酸化還元反応が繰り返されることにより、色素増感太陽電池1のユニットは発電する。このような酸化還元反応が起きるためには、励起状態の色素16aのエネルギー準位は、電子捕集剤16bのエネルギー準位よりも高く、かつ、基底状態の色素16aのエネルギー準位は、電解液18のエネルギー準位より低いという関係を要する。
【0026】
実施形態の色素増感太陽電池のように、第1の基板11及び第2の基板12の何れもが透明基板であり、電極もTCOである場合、第1の基板11から光が入射した場合であっても、第2の基板12から光が入射した場合であっても、それぞれのユニットの色素が光によって励起される。ただし、カソード電極の側からの光入射の場合の発電効率のほうが、アノード電極の側からの光入射の場合の発電効率よりも高い。
【0027】
図3は、色素増感太陽電池1の動作を説明するための図である。前述したように、色素増感太陽電池1は、複数のユニットがW型構造で配置されて直列接続されている。
【0028】
例えば、ユニットU1に着目する。ユニットU1に光が入射した場合、
図2を参照して説明した原理に従って色素から電子が放出される。色素から放出された電子は、電子捕集剤に受け渡され、その後にアノード電極に移動する。ここで、ユニットU1のアノード電極は、ユニットU2のカソード電極と共通の電極である。したがって、ユニットU1のアノード電極に移動した電子は、ユニットU2のカソード電極に移動する。このユニットU2のカソード電極に移動した電子は、ユニットU2における還元反応に用いられる。
【0029】
同様に、ユニットU2における酸化反応に伴って色素から放出された電子は、ユニットU2のアノード電極からユニットU3のカソード電極に移動する。そして、ユニットU3のカソード電極に移動した電子は、ユニットU3における還元反応に用いられる。また、同様に、ユニットU3における酸化反応に伴って色素から放出された電子は、ユニットU3のアノード電極からユニットU4のカソード電極に移動する。そして、ユニットU4のカソード電極に移動した電子は、ユニットU4における還元反応に用いられる。
【0030】
さらに、ユニットU4における酸化反応に伴って色素から放出された電子は、ユニットU4のアノード電極に移動する。ユニットU4のアノード電極は、負荷R0に接続されている。したがって、ユニットU4のアノード電極まで移動した電子は、負荷R0を介してユニットU1のカソード電極まで移動する。そして、ユニットU1のカソード電極に移動した電子は、ユニットU1における還元反応に用いられる。
【0031】
以上のようなそれぞれのユニットでの酸化還元反応が繰り返されることにより、色素増感太陽電池1は発電する。色素増感太陽電池1は、
図2で示した単一のユニットよりも高い発電効率を有する。
【0032】
以上説明したように実施形態によれば、ユニット間が直列接続されたW型構造の色素増感太陽電池において、それぞれのユニットの電解液が共通化されている。つまり、実施形態の色素増感太陽電池は、従来のW型構造の色素増感太陽電池のようにユニット間を仕切るための隔壁等を有していない。このため、実施形態の色素増感太陽電池は、従来のW型の色素増感太陽電池よりも小型化され得る。
【0033】
また、W型構造の色素増感太陽電池において、ユニットが直列接続される場合、隣接するユニットは互いに上下反転されているため、ユニット間を接続する電極が共通化され得る。この場合、ユニット間の直列抵抗R1は低くなる。ユニット間の直列抵抗R1が低くなることにより、ユニット間を移動する電子の電子密度の低下が抑制される。ユニット間での電子密度の低下は、ユニット間での酸化還元反応の不均一化を招く。これにより、色素増感太陽電池は安定して動作できなくなる。実施形態では、このようなユニット間での酸化還元反応の不均一が抑制され、色素増感太陽電池は安定して動作し得る。
【0034】
[変形例]
以下、実施形態の変形例を説明する。実施形態では、ユニットU1-U4は1次元方向に並べられている。これに対し、ユニットは、2次元方向に並べられてもよい。この場合も、電解液18はユニット間で共通化できる。また、第2のユニットの電極が両隣の第1のユニットのうちの一方の電極と共通であり、第2のユニットの対向電極が両隣の第1のユニットのうちの他方の対向電極と共通であるように各ユニットが直列接続されればよい。
【0035】
また、実施形態では、W型構造の色素増感太陽電池においてユニット間の電解液が共通化されている。これに対し、
図4に示すように、ユニットがZ型構造の並列接続された色素増感太陽電池においてもユニット間の電解液が共通化され得る。
図4の色素増感太陽電池1は、ユニットU1、U2、U3、U4は同一の構造である。つまり、第1の基板11にそれぞれのユニットの光吸収層16が形成され、第2の基板12にそれぞれのユニットの触媒層17が形成される。この変形例では、色素増感太陽電池のそれぞれのユニットは、並列接続される。このため、変形例では第1の基板11に1つの電極13が形成されていればよく、また、第2の基板12に1つの対向電極14が形成されていればよい。また、W型構造の直列接続の色素増感太陽電池では、ユニットU4のアノード電極である第1の基板11に形成された電極13aと、ユニットU1のカソード電極である第1の基板11に形成された電極13cとがそれぞれ負荷に接続される。これに対し、Z型の並列接続の色素増感太陽電池では、ユニットU4のアノード電極である第1の基板11に形成された電極13と、ユニットU1のカソード電極である第2の基板12に形成された対向電極14とがそれぞれ負荷に接続される。
【0036】
図4のような色素増感太陽電池でも小型化が図られつつ、ユニット間での酸化還元反応の不均一が抑制され、色素増感太陽電池は安定して動作し得る。
【0037】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0038】
1 色素増感太陽電池、11 第1の基板、12 第2の基板、13,13a,13b,13c 電極、14,14a,14b 対向電極、15 導電体層、16 光吸収層、16a 色素、16b 電子捕集剤、17 触媒層、18 電解液、19 封止層。