IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社GSユアサの特許一覧

特開2022-144087推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法
<>
  • 特開-推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法 図1
  • 特開-推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法 図2
  • 特開-推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法 図3
  • 特開-推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法 図4
  • 特開-推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法 図5
  • 特開-推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法 図6
  • 特開-推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法 図7
  • 特開-推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法 図8
  • 特開-推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法 図9
  • 特開-推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法 図10
  • 特開-推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法 図11
  • 特開-推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法 図12
  • 特開-推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法 図13
  • 特開-推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144087
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
H01M10/48 Z
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044936
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】竹花 諒介
【テーマコード(参考)】
5H030
【Fターム(参考)】
5H030FF41
5H030FF51
(57)【要約】
【課題】蓄電素子の形状変化を推定する推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法を提供する。
【解決手段】推定装置は、蓄電素子の形状変化モードが第1モードか第2モードかを判定する判定部と、判定した形状変化モードに応じて蓄電素子の形状変化を推定する推定部とを備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子の形状変化モードが第1モードか第2モードかを判定する判定部と、
前記判定部で判定した形状変化モードに応じて前記蓄電素子の形状変化を推定する推定部と
を備える、
推定装置。
【請求項2】
前記蓄電素子は、巻回電極体を有している、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記第1モードから移行した前記第2モードでの形状変化速度は、前記第1モードでの形状変化速度よりも大きい、
請求項1又は請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記蓄電素子の経過期間に関連する経過パラメータを取得又は算出する第1取得部を備え、
前記判定部は、
前記第1取得部で取得又は算出した経過パラメータに基づいて、形状変化モードを判定する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項5】
前記蓄電素子の通電に関連する経過パラメータを取得又は算出する第2取得部を備え、
前記判定部は、
前記第2取得部で取得又は算出した経過パラメータに基づいて、形状変化モードを判定する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項6】
前記経過パラメータは、
前記蓄電素子の非通電時又は通電時の経過日数、前記蓄電素子の寸法の絶対値、前記蓄電素子の形状の変化量及び前記蓄電素子の総SOC変動量のいずれか1つを含む、
請求項4又は請求項5に記載の推定装置。
【請求項7】
前記判定部は、
前記蓄電素子の正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方の種類に応じて、前記第1モードから前記第2モードへの移行を判定する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項8】
前記形状変化は、前記巻回電極体の厚み変化を含む、
請求項2に記載の推定装置。
【請求項9】
コンピュータに、
蓄電素子の形状変化モードが第1モードか第2モードかを判定し、
判定した形状変化モードに応じて前記蓄電素子の形状変化を推定する、
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項10】
蓄電素子の形状変化モードが第1モードか第2モードかを判定し、
判定した形状変化モードに応じて前記蓄電素子の形状変化を推定する、
推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のセル(単電池)から電池モジュールを構成するために、複数のセルの長側面を対向させた状態で圧迫力をかける方法、複数のセルを非圧迫の状態で対向配置する方法などがある。後者の場合、電池モジュールの使用(充放電)に伴って、セルのケースが膨れる可能性がある。
【0003】
特許文献1には、二次電池の膨張具合を、二次電池に併設された膨張検出手段によって検出し、ユーザに警告することで二次電池の膨張による破損や性能の劣化などを防止する電子機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-17141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二次電池などの蓄電素子の膨れは、主に蓄電素子内部のエレメント構造の変化や、ガス発生により引き起こされると考えられる。蓄電素子の膨れによる電池モジュールの破損を防止するため、或いは蓄電素子の膨れに伴う状態変化や劣化を把握するために、蓄電素子内部の物理現象を検討する必要がある。例えば、モデルベース開発に対応するためには、蓄電素子内部の物理現象も考慮して、蓄電素子の形状変化を適正に推定する必要がある。
【0006】
本発明は、蓄電素子の形状変化を推定する推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る推定装置は、蓄電素子の形状変化モードが第1モードか第2モードかを判定する判定部と、前記判定部で判定した形状変化モードに応じて前記蓄電素子の形状変化を推定する推定部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、蓄電素子の形状変化を適正に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電池モジュールの斜視図である。
図2】セルの斜視図である。
図3】セルの厚みの推移とエレメント構造の推移の関係を示す図である。
図4】セルケース内に収容された巻回電極体のうちの1個の、1/4断面を模擬した図である。
図5】セルの厚みの推移のシミュレーション結果と実測値を示す図である。
図6】エレメント構造の皺の発生と形状変化モードの推移との関係を示す図である。
図7】長側面荷重の推移のシミュレーション結果を示す図である。
図8】推定装置の構成を示す図である。
図9】放置時(非通電時)の蓄電素子の形状変化を推定する方法を示す図である。
図10】通電時の蓄電素子の形状変化を推定する方法を示す図である。
図11】第1モード経時膨張係数及び第2モード経時膨張係数と温度との関係を示す図である。
図12】第1モード経時膨張係数及び第2モード経時膨張係数とΔSOCとの関係を示す図である。
図13】第1モード経時膨張係数及び第2モード経時膨張係数と中心SOCとの関係を示す図である。
図14】推定装置による形状推定の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
推定装置は、蓄電素子の形状変化モードが第1モードか第2モードかを判定する判定部と、前記判定部で判定した形状変化モードに応じて前記蓄電素子の形状変化を推定する推定部とを備える。
【0011】
コンピュータプログラムは、コンピュータに、蓄電素子の形状変化モードが第1モードか第2モードかを判定し、判定した形状変化モードに応じて前記蓄電素子の形状変化を推定する、処理を実行させる。
【0012】
推定方法は、蓄電素子の形状変化モードが第1モードか第2モードかを判定し、判定した形状変化モードに応じて前記蓄電素子の形状変化を推定する。
【0013】
上述した推定装置の判定部は、蓄電素子の形状変化モードが第1モードか第2モードかを判定する。
本発明者は、蓄電素子の形状変化に少なくとも2つのモードが存在することを見出した。具体的には、本発明者は、電極体(エレメント)の形状変化の支配的な要因として、蓄電素子の形状変化に少なくとも2つのモードが存在することを見出した。判定部は、所定の条件に基づいて蓄電素子の形状変化モードが第1モード又は第2モードのいずれであるかを判定する。
【0014】
推定部は、判定部で判定した形状変化モードに応じて蓄電素子の形状変化を推定する。それぞれの形状変化モードにおける蓄電素子の形状変化推定方法を予め用意しておくことにより、形状変化モードに応じて最適な方法を採用でき、蓄電素子の形状変化を精度よく推定できる。
【0015】
前記蓄電素子は、巻回電極体を有していてもよい。
【0016】
本発明者は、後述するように、巻回電極体を有する蓄電素子は、特有の形状変化モードを発現することを見出した。巻回電極体を有する蓄電素子について、形状変化モードを把握することで、形状変化を精度よく推定できる。代替的に、蓄電素子は積層型の電極体を有していてもよい。
【0017】
推定装置は、前記第1モードから移行した前記第2モードでの形状変化速度が、前記第1モードでの形状変化速度よりも大きくなるように推定を行ってもよい。
【0018】
形状変化速度は、例えば、(形状変化量/時間)又は(形状変化量/総SOC変動量)で表すことができる。上述の構成により、モード移行の前後に亘って蓄電素子の形状変化を精度よく推定できる。
【0019】
推定装置は、前記蓄電素子の経過期間に関連する経過パラメータを取得又は算出する第1取得部を備え、前記判定部は、前記第1取得部で取得又は算出した経過パラメータに基づいて、形状変化モードを判定してもよい。
【0020】
蓄電素子の経過期間に関連する経過パラメータは、蓄電素子の形状変化モードが第1モード又は第2モードのいずれかであるかを判定するためのパラメータであればよい。上述の構成により、蓄電素子の形状変化を精度よく推定できる。
【0021】
推定装置は、前記蓄電素子の通電に関連する経過パラメータを取得又は算出する第2取得部を備え、前記判定部は、前記第2取得部で取得又は算出した経過パラメータに基づいて、形状変化モードを判定してもよい。
【0022】
蓄電素子の通電に関連する経過パラメータは、蓄電素子の形状変化モードが第1モード又は第2モードのいずれかであるかを判定するためのパラメータであればよい。上述の構成により、蓄電素子の形状変化を精度よく推定できる。
【0023】
前記経過パラメータは、前記蓄電素子の非通電時又は通電時の経過日数、前記蓄電素子の寸法の絶対値、前記蓄電素子の形状の変化量、及び前記蓄電素子の総SOC変動量のいずれか1つを含んでもよい。
【0024】
例えば、形状変化を時間の関数として予め定式化することにより、時間(経過日数)に応じて形状変化の値を求めることができる。経過日数が閾値以下であれば、形状変化モードが第1モードであると判定し、経過日数が閾値を超えれば、形状変化モードが第2モードであると判定できる。形状変化を示す関数は、第1モードと第2モードとで異なる。
経過パラメータは、蓄電素子の寸法の絶対値でもよく、形状の変化量でもよく、あるいは総SOC変動量でもよい。寸法の絶対値又は形状の変化量が閾値以下であれば、形状変化モードが第1モードであると判定し、寸法の絶対値又は形状の変化量が閾値を超えれば、形状変化モードが第2モードであると判定できる。代替的に、蓄電素子の総SOC変動量が閾値を超えれば、形状変化モードが第2モードであると判定できる。
【0025】
前記判定部は、前記蓄電素子の正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方の種類に応じて、前記第1モードから前記第2モードへの移行を判定してもよい。
【0026】
リチウムイオン電池の場合、充放電に伴ってリチウムイオンが活物質に挿入、あるいは活物質から脱離する。正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方の種類が、挿入脱離時の体積変化が大きい活物質であるか、小さい活物質であるかに応じて、形状変化速度は異なる。そのため、活物質の種類に応じて、第1モードから第2モードへの移行を判定することが好ましい。活物質が異なる蓄電素子は、使用環境、寸法やエレメント構造が同じでも、第1モードから第2モードへの移行時点が異なると考えられる。
【0027】
前記形状変化は、前記巻回電極体の厚み変化を含んでもよい。
【0028】
厚み方向は、巻回電極体の巻回軸方向に直交する方向(蓄電素子の長側面に直交する方向)である。本発明者は、後述するように、巻回電極体はその厚み方向に、特有の形状変化モードを発現することを見出した。上述の構成により、蓄電素子の厚み変化を精度よく推定できる。
【0029】
以下、図面を参照しながら、推定装置、コンピュータプログラム及び推定方法の実施形態を説明する。
【0030】
図1は電池モジュール(蓄電装置)10の斜視図である。電池モジュール10は、直方体状のケース11、ケース11に非圧迫の状態で収容された複数のセル(蓄電素子)20などを備える。
【0031】
セル20は、直方体状(プリズマティック)のセルケース21、蓋板22、蓋板22に設けられた端子23、26、破裂弁24、並びに電極体25などを備える。端子23、26は、図1に示すような溶接端子でもよいし、図2に示すようなボルト端子でもよい。電極体25は、エレメントとも称され、巻回電極体は、正極板、セパレータ、及び負極板を重ねて扁平状に巻回して構成される。縦巻きタイプの電極体25は、その巻回軸方向が蓋板22と平行な姿勢でセルケース21に収容される。横巻タイプの電極体25は、その巻回軸方向が蓋板22と直交する姿勢でセルケース21に収容される。代替的に、電極体25は、積層型電極体でもよい。
【0032】
正極板は、アルミニウムやアルミニウム合金等からなる板状(シート状)又は長尺帯状の金属箔である正極基材箔上に活物質層が形成されたものである。負極板は、銅や銅合金等からなる板状(シート状)又は長尺帯状の金属箔である負極基材箔上に活物質層が形成されたものである。セパレータは、合成樹脂からなる微多孔性のシートである。
【0033】
正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウム、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミ酸化物などのリチウム遷移金属酸化物(Li1+aMeO2 、a≧1、Me:Ni、Mn、Coなどの遷移金属元素を1以上含む)、スピネル型マンガン酸リチウム(LiMe2 4 :Meは少なくともMnを含む1種以上の金属元素)、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウムなどのLiを吸蔵放出できる材料が用いられていればよい。また、これらを2種類以上併用してもよい。
【0034】
負極活物質は、例えば、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、金属Li、一酸化ケイ素、シリコン又はその合金、スズ又はその合金、バナジン酸リチウム、酸化タングステン、酸化チタン、酸化ニオブなどLiを吸蔵放出できる材料が用いられていればよい。また、これらを2種類以上併用してもよい。正極活物質及び負極活物質のいずれか1つが充放電に伴って膨張するものであれば、本発明を適用できる。
【0035】
電池モジュール10の隣り合うセル20の隣り合う端子23、26がバスバー12により電気的に接続されることで、複数のセル20が直列に接続されている。電池モジュール10の両端のセル20の端子23、26には、電力を取り出すためのリード14、13が設けられている。
【0036】
図2はセル20の斜視図である。セルケース21は、対向する長側面21a、21b、及び対向する短側面21c、21dを有する。符号Dで示す長側面21a、12b間の寸法を厚み(厚さ)と称し、符号Lで示す短側面21c、21d間の寸法を長さと称する。長さL>厚みDである。本実施形態では、セル20(蓄電素子)の形状変化として、主に厚み(厚さ)Dの変化を想定している。
【0037】
本発明者は、セル20の形状変化(主に厚みDの変化)に少なくとも2つのモードが存在するという仮説を立案し、この仮説が正しいことを見出した。以下、具体的に説明する。
【0038】
図3はセル20の厚みの推移とエレメント構造の推移の関係を示す図である。図3Aは、放置試験での厚みの推移を表すチャートであり、セル20の充電状態(SOC)を100%とし、温度55℃の環境下に放置し、厚みDの推移を実測した。横軸は時間(日)を示し、縦軸はセル20の厚みの増加率(%)を示す。時刻t0は放置試験の開始時刻である。図3Aに示すように、時刻t1付近において、セル20の厚みの増加率が変化している。具体的には、時刻t0から時刻t1までの間の厚みの変化速度よりも時刻t1以降(時刻t1から時刻t2)の厚みの変化速度が大きくなっている。つまり、セル20の形状変化は二段階で進行する。
【0039】
図3Bは、セル20のエレメント構造(本実施形態では、セルケースに収容され近接配置された2個の縦巻き巻回電極体)の推移を示すチャートであり、3枚のチャートは、図3Aの時刻t0、t1、t2の時点でのセルケース内部の様子を模式的に表している。符号Wで示す線は、電極体25の最内周の巻始め部分に存在するスリットを示す。スリットWは、図3Bのような断面視で細い線のように見える。スリットWは、巻回軸方向(図3Bの紙面に対し垂直な方向)に延びている。時刻t0では、スリットWは、直線状になっている。時刻t0から時刻t1にかけて、セル20の厚みが増加し、時刻t1では、エレメント構造の内部に皺が生じ、スリットWが曲がっている。また、電極体25の最外周が膨らんでいる。さらに、時刻t1以降では、厚みの変化速度が大きくなり、エレメント構造の内部の皺がさらに大きくなり、スリットWの変形も大きくなっている。電極体25の最外周がさらに膨らんでいる。
【0040】
セル20の形状変化が二段階で進行する原因を確かめるための、CAE(Computer Aided Engineering)シミュレーションの結果を図4に示す。
【0041】
図4はセルケース21内に収容された巻回電極体のうちの1個の、1/4断面を模擬した図である。図4中、符号201はセパレータであり、符号202は正極であり、符号203は負極である。セルケース21内のエレメント構造は、正極202、セパレータ201及び負極203が重ねられて巻回されている。このような2DCAEモデル(2次元CAEモデル)を、セルケース21、エレメント構造を構成する材料(セパレータ、正負極合材、箔など)の物性値(例えば、厚み、ヤング率、ポアソン比、線膨張係数、耐力など)と設計値とを基に作成した。エレメント構造の膨張は、正負極合材の厚みを増加させる(例えば、実測値の厚み増加推移を用いる)ことで再現した。図4A、B、Cは、それぞれ時間(経過時間)t=0、t=tb、t=tcにおけるエレメント構造の断面を示す。図4に示すように、時間t=tb付近において、エレメント構造に皺が発生する。そして、時間t=tb以降、時間t=tcに亘って、徐々に変形が大きくなる。
【0042】
図5はセル20の厚みの推移のシミュレーション結果と実測値を示す図である。図5Aに示すシミュレーション結果において、横軸は正負極合材膨張(%)を示し、縦軸はセルの厚みを示す。図5A中、符号A、B、Cで示す点は、それぞれ図4A図4B図4Cのエレメント構造の状態に対応している。図5Bに示す実測値(SOC100%、温度45℃での放置試験)において、横軸は時間(日)を示し、縦軸はセルの厚みを示す。図5B中、ドットで示す点が実測値を示す。
【0043】
シミュレーション結果は、実測値と同様に、セルの膨れの変化点を境に、膨れモード(形状変化モード)が変わることを示している。すなわち、初期段階から変化点までの間の形状変化モード(「第1モード」とも称する)における形状変化速度よりも、変化点以降における形状変化速度の方が大きい。セルの厚みの増加割合(形状変化速度)の変化は、エレメント構造の膨張に依るものであることが示唆される。蓄電素子のエレメント構造(例えば、正負極合材、正負極集電体、セパレータなど)の一部(主に正負極合材)の形状変化に少なくとも2つのモードが存在することが示唆される。
【0044】
次に、皺の発生と形状変化モードの変化との関係について考察する。
【0045】
図6はエレメント構造の皺の発生と形状変化モードの推移との関係を示す図である。図6Aは、初期段階からセルの膨れの変化点付近まで(形状変化モードが第1モードである場合)のエレメント構造を示し、図6Bはセルの膨れの変化点以降(形状変化モードが第2モードである場合)のエレメント構造を示す。上述したように、電極体25は、巻き芯と呼ばれる平板に正極、負極、セパレータを重ねて巻き付け、巻き付けが終了したら巻き芯が取り除かれる。このため、中心部には真っ直ぐなスリットができる。
【0046】
図6Aに示すように、セル20を放置又は通電(充電及び/又は放電)させ、時間が経過すると、正極及び負極が徐々に膨らんでいく。これに伴い、電極体25が外側に向かって膨張しようとする。一方で、電極体25の最外郭の周長は変化しない。正極及び負極が膨張すると、円弧部(ラウンデッド部。R部)では反作用が生じ、正極板及び/又は負極板(「極板」とも称する)は内側に押される。このため、電極体25の平坦部が外側に向かって押される(第1モード)。
【0047】
図6Bに示すように、さらに時間が経過すると、R部での反作用によって、極板は内側に押され続け、極板の膨張による逃げ場が平坦部に向かうしかなく、極板が撓み始め、皺が発生する。皺の発生により、極板は一層撓みやすくなるため、形状変化(厚み変化)の速度が大きくなる(第2モード)。
【0048】
図7は長側面荷重の推移のシミュレーション結果を示す図である。図7中、横軸は正負極合材膨張(%)を示し、縦軸はセルの厚み及び長側面荷重を示す。長側面荷重は、図6において、電極体25の平坦部が外側に向かって押される際の荷重である。図7に示すように、セルの膨れの変化点の前後において、電極体25がセルケース21の長側面に与える荷重の変化モードも変化している。
【0049】
ここでは、巻回型電極体を有するセルの膨れを例に、電極体の皺の形成度合によって膨れ方が第1モードから第2モードに変化することを考慮した蓄電素子の形状変化予測について説明した。代替的に、例えば、積層型電極体を有するセルにおいて、電極の膨れ方(形状変化モード)が変化する場合(例えば、活物質が充放電に伴って徐々に粉砕されて比表面積が増大し、電極上に析出する堆積物の生成量や電池内部でのガスの生成量のモードが変化する場合)にも、本発明を適用できる。
【0050】
次に、推定装置の構成について説明する。
【0051】
図8は推定装置50の構成を示す図である。推定装置50は、装置全体を制御する制御部51、入力部52、記憶部53、計時部54、出力部55、判定部56、推定部57、及び通信部58を備える。制御部51は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等で構成される。記憶部53は、ハードディスク又は半導体メモリ等で構成され、所要のデータを記憶する。
【0052】
入力部52は、形状変化を推定する対象の蓄電素子(例えば、セル20)の時系列データを取得する。対象の蓄電素子は、複数あってもよい。時系列データには、例えば、蓄電素子の電圧、電流、及び温度の時系列データが含まれる。入力部52は、時系列データの他に、時間データを取得する。時間データは、形状変化を推定する推定期間の始点と終点を示すデータであればよい。蓄電素子が放置状態である場合には、入力部52は時間データだけを取得すればよく、蓄電素子が通電状態である場合には、入力部52は時間データとともに推定期間内の時系列データを取得する。時系列データは、実測値でもよく、計算値でもよい。入力部52で取得したデータは記憶部53に記憶してもよい。
【0053】
制御部51は、入力部52で取得した時系列データに基づいて、蓄電素子のΔSOC(State Of Charge)及び中心SOCを特定する。ΔSOCは、蓄電素子への充電または放電に基づいて変化するSOCの最大値と最小値との差である。中心SOCは、変化するSOCの平均である。
【0054】
計時部54は、蓄電素子の形状変化を推定する際の経過時間をカウントする。
【0055】
判定部56は、蓄電素子の形状変化モードが第1モードか第2モードかを判定する。具体的には、判定部56は、所定の条件に基づいて蓄電素子の形状変化モードが第1モード又は第2モードのいずれであるかを判定する。
【0056】
推定部57は、判定部56で判定した形状変化モードに応じて蓄電素子の形状変化を推定する。それぞれの形状変化モードにおける蓄電素子の形状変化推定方法を予め用意しておくことにより、形状変化モードに応じて最適な方法を採用でき、蓄電素子の形状変化を精度よく推定できる。
【0057】
出力部55は、推定部57による推定結果を外部の装置(例えば、表示装置、印刷装置など)に出力する。
【0058】
通信部58は、所要の通信モジュールを備え、外部の装置との間でデータや情報の送受信を行う。例えば、推定装置50の処理を特定するアプリ(プログラム)の受信や更新、後述の各膨張係数の受信や更新を行う。
【0059】
以下、蓄電素子の形状変化の推定について詳細に説明する。
【0060】
本発明者は、巻回電極体を有する蓄電素子は、特有の形状変化モードを発現することを見出した。巻回電極体を有する蓄電素子について、形状変化モードを把握することで、形状変化を精度よく推定できる。初期段階からモード移行時点(セルの膨れの変化点)までは、第1モードに応じて蓄電素子の形状が変化し、それ以降は、第2モードに応じて蓄電素子の形状が変化する。推定時点がモード移行時点よりも前か後かに応じて蓄電素子の形状変化を適正に推定する。
【0061】
第1モードから移行した第2モードでの形状変化速度が、第1モードでの形状変化速度よりも大きくなるように推定されてもよい。形状変化速度は、例えば、(形状変化量/時間)又は(形状変化量/総SOC変動量)で表すことができる。この構成により、モード移行の前後に亘って蓄電素子の形状変化を精度よく推定できる。
【0062】
図9は放置時の蓄電素子の形状変化を推定する方法を示す図である。図9中、横軸は時間(経過時間)(日)を示し、縦軸はセルの厚みDを示す。セルの厚みDはセルケースの厚みである(図2参照)。代替的に、縦軸は、セルの厚みの変化量、あるいはセルの厚みの変化率でもよい。第1モード経時膨張係数K1は、実線で示す直線の傾きを表し、第2モード経時膨張係数K2は、破線で示す直線の傾きを表す。第1モードにおけるセルの厚みDは、D=F1(K1、t)の如く関数F1により求めることができる。ここで、K1は第1モード経時膨張係数であり、tは時間を示す。また、第2モードにおけるセルの厚みDは、D=F2(K2、t)の如く関数F2により求めることができる。ここで、K2は第2モード経時膨張係数であり、tは時間を示す。関数F1(又は第1モード経時膨張係数K1)、及び関数F2(又は第2モード経時膨張係数K2)は、記憶部53に記憶しておけばよい。代替的に、関数F1、F2を演算回路で構成してもよい。
【0063】
推定部57は、形状変化の推定の初期段階では、関数F1を用いて、セルの厚みDを算出する。ここで、関数F1の変数t、及び関数F1により得られる値Dを、経過パラメータと称する。すなわち、推定部57は、時間経過とともに、蓄電素子の形状変化を推定し、同時に経過パラメータを算出する。
【0064】
判定部56は、推定部57が算出した経過パラメータ及び所定の閾値に基づいて、形状変化モードを判定する。経過パラメータは、蓄電素子の形状変化モードが第1モード又は第2モードのいずれであるかを判定するためのパラメータであればよい。図9の例では、経過時間tを用いてもよく、セルの厚みDを用いてもよい。セルの厚みDは、厚みそのもの(絶対値)でもよく、厚みの初期値からの変化量でもよい。この構成により、例えば、放置状態(非通電時)における蓄電素子の形状変化を精度よく推定できる。
【0065】
図9に示すように、経過時間が閾値以上になった場合、あるいは、セルの厚みが閾値以上になった場合、推定部57は、関数F2を用いて、セルの厚みDを算出する。この構成により、例えば、放置状態(非通電時)における蓄電素子の形状変化を精度よく推定できる。
【0066】
図10は通電時の蓄電素子の形状変化を推定する方法を示す図である。図10中、横軸は時間(経過時間)(日)を示し、縦軸はセルの厚みDを示す。代替的に、横軸は総SOC変動量(%)でもよい。第1モード通電膨張係数M1は、実線で示す直線の傾きを表し、第2モード通電膨張係数M2は、破線で示す直線の傾きを表す。第1モードにおけるセルの厚みDは、D=G1(M1、t)の如く関数G1により求めることができる。ここで、M1は第1モード通電膨張係数であり、tは時間を示す。また、第2モードにおけるセルの厚みDは、D=G2(M2、t)の如く関数G2により求めることができる。ここで、M2は第2モード通電膨張係数であり、tは時間を示す。関数G1(又は第1モード通電膨張係数M1)、及び関数G2(又は第2モード通電膨張係数M2)は、記憶部53に記憶しておけばよい。代替的に、関数G1、G2を演算回路で構成してもよい。
【0067】
推定部57は、形状変化の推定の初期段階では、関数G1を用いて、セルの厚みDを算出する。ここで、関数G1の変数t、及び関数G1により得られる値Dを、経過パラメータと称する。すなわち、推定部57は、時間経過とともに、蓄電素子の形状変化を推定し、同時に経過パラメータを算出する。
【0068】
判定部56は、推定部57が算出した経過パラメータ及び所定の閾値に基づいて、形状変化モードを判定する。経過パラメータは、蓄電素子の形状変化モードが第1モード又は第2モードのいずれであるかを判定するためのパラメータであればよい。図10の例では、経過時間tを用いてもよく、セルの厚みDを用いてもよい。セルの厚みDは、厚みそのもの(絶対値)でもよく、厚みの初期値からの変化量でもよい。この構成により、例えば、通電時における蓄電素子の形状変化を精度よく推定できる。
【0069】
図10に示すように、経過時間が閾値以上になった場合、あるいは、セルの厚みが閾値以上になった場合、推定部57は、関数G2を用いて、セルの厚みDを算出する。この構成により、例えば、通電時における蓄電素子の形状変化を精度よく推定できる。
【0070】
図11は第1モード経時膨張係数K1及び第2モード経時膨張係数K2と温度との関係を示す図である。図11において、横軸は時間(日)を示し、縦軸はセルの厚みの変化量(%)を示す。図11には、温度T1、T2(>T1)における第1モード経時膨張係数K1を傾きとする実線の直線、及び温度T1、T2における第2モード経時膨張係数K2を傾きとする破線の直線を示している。図11に示すように、温度Tが高くなるにつれて、第1モード経時膨張係数K1及び第2モード経時膨張係数K2の値が大きくなる。図11では、便宜上、温度T1、T2のみを図示しているが、所要の温度毎に対応付けた第1モード経時膨張係数K1及び第2モード経時膨張係数K2を記憶部53に記憶しておくことにより、蓄電素子の周囲の温度に応じて、最適な第1モード経時膨張係数K1及び第2モード経時膨張係数K2を用いることができる。図示していないが、通電時における第1モード通電膨張係数M1及び第2モード通電膨張係数M2も同様に記憶部53に記憶しておく。代替的に、第1モード経時膨張係数及び第2モード経時膨張係数を温度の関数として定式化し、定式化した演算を行う演算回路を用いてもよい。
【0071】
図12は第1モード経時膨張係数K1及び第2モード経時膨張係数K2とΔSOCとの関係を示す図である。図12において、横軸は時間(日)を示し、縦軸はセルの厚みの変化量(%)を示す。図12には、ΔSOC1、ΔSOC2(>ΔSOC1)における第1モード経時膨張係数K1を傾きとする実線の直線、及びΔSOC1、ΔSOC2における第2モード経時膨張係数K2を傾きとする破線の直線を示している。図12に示すように、ΔSOCが大きくなるにつれて、第1モード経時膨張係数K1及び第2モード経時膨張係数K2の値が大きくなる。図12では、便宜上、ΔSOC1、ΔSOC2のみを図示しているが、所要のΔSOC毎に対応付けた第1モード経時膨張係数K1及び第2モード経時膨張係数K2を記憶部53に記憶しておくことにより、蓄電素子のΔSOCに応じて、最適な第1モード経時膨張係数K1及び第2モード経時膨張係数K2を用いることができる。図示していないが、通電時における第1モード通電膨張係数M1及び第2モード通電膨張係数M2も同様に記憶部53に記憶しておく。代替的に、第1モード経時膨張係数及び第2モード経時膨張係数をΔSOCの関数として定式化し、定式化した演算を行う演算回路を用いてもよい。
【0072】
図13は第1モード経時膨張係数K1及び第2モード経時膨張係数K2と中心SOCとの関係を示す図である。図13において、横軸は時間(日)を示し、縦軸はセルの厚みの変化量(%)を示す。図13には、中心SOC1、中心SOC2(>中心SOC1)における第1モード経時膨張係数K1を傾きとする実線の直線、及び中心SOC1、中心SOC2における第2モード経時膨張係数K2を傾きとする破線の直線を示している。図13に示すように、中心SOCに依存して第1モード経時膨張係数K1及び第2モード経時膨張係数K2の値は変化する。図13では、便宜上、中心SOC1、中心SOC2のみを図示しているが、所要の中心SOC毎に対応付けた第1モード経時膨張係数K1及び第2モード経時膨張係数K2を記憶部53に記憶しておくことにより、蓄電素子の中心SOCに応じて、最適な第1モード経時膨張係数K1及び第2モード経時膨張係数K2を用いることができる。図示していないが、通電時における第1モード通電膨張係数M1及び第2モード通電膨張係数M2も同様に記憶部53に記憶しておく。代替的に、第1モード経時膨張係数及び第2モード経時膨張係数を中心SOCの関数として定式化し、定式化した演算を行う演算回路を用いてもよい。
【0073】
判定部56は、蓄電素子の正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方の種類に応じて、第1モードから第2モードへの移行を判定してもよい。活物質が異なる蓄電素子は、使用環境、寸法やエレメント構造が同じでも、第1モードから第2モードへの移行時点が異なると考えられる。リチウムイオン電池の場合、充放電に伴ってリチウムイオンが活物質に挿入、あるいは活物質から脱離する。正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方の種類が、挿入脱離時に体積変化が大きい活物質であるか、小さい活物質であるかに応じて、形状変化速度が異なるので、第1モードから第2モードへの移行時点を判定することが可能となる。例えば、正極活物質が、リチウムニッケル酸化物系材料である場合、挿入脱離時の体積変化が比較的大きいので、第1モードから第2モードへの移行が比較的早いと判定できる。
【0074】
図14は推定装置50による形状推定の処理手順を示すフローチャートである。以下では便宜上、処理の主体を制御部51として説明する。制御部51は、時間データとともに、蓄電素子の電流、電圧、温度の時系列データを取得し(S11)、ΔSOC、中心SOC、平均温度を特定する(S12)。蓄電素子が放置状態の場合、蓄電素子のΔSOC、中心SOC、平均温度を取得する。蓄電素子が通電状態後の無通電状態(放置状態)にある場合、無通電状態になる直前のΔSOC、中心SOC、平均温度を特定すればよい。
【0075】
制御部51は、経過パラメータを算出し(S13)、算出した経過パラメータが閾値以上であるか否かを判定する(S14)。経過パラメータが閾値以上でない場合(S14でNO)、第1モード経時膨張係数K1及び第1モード通電膨張係数M1を選定し(S15)、形状変化を推定する(S17)。
【0076】
経過パラメータが閾値以上である場合(S14でYES)、制御部51は、第2モード経時膨張係数K2及び第2モード通電膨張係数M2を選定し(S16)、ステップS17の処理を行う。
【0077】
制御部51は、処理を終了するか否かを判定し(S18)、処理を終了しない場合(S18でNO)、ステップS13以降の処理を続け、処理を終了する場合(S18でYES)、処理を終了する。
【0078】
蓄電素子の状態が通電状態と放置状態の両方が混在する場合、形状推定は、経時膨張係数(K1、K2)及び通電膨張係数(M1、M2)を用いて算出した経時膨張量(放置時の形状変化)と通電膨張量(通電時の形状変化)の合計として求めることができる。
【0079】
推定装置50は、CPU(プロセッサ)、RAM(メモリ)などを備えた汎用コンピュータを用いて実現することもできる。すなわち、図14に示すような、各処理の手順を定めたコンピュータプログラムをコンピュータに備えられたRAM(メモリ)にロードし、コンピュータプログラムをCPU(プロセッサ)で実行することにより、コンピュータ上で推定装置50を実現することができる。コンピュータプログラムは記録媒体に記録され流通されてもよい。
【0080】
上述のように、本実施形態によれば、蓄電素子の開発段階や設計段階において、蓄電素子の寿命末期における形状変化(厚み変化)を推定することができ、寿命末期の蓄電素子の形状(厚み)を考慮した最適な電池モジュールの設計が可能となる。これにより、電池モジュールの過度な大型化を回避でき、低コスト化を図り、最大限の電池性能を達成することができる。
【0081】
本実施の形態では、主にエレメント構造の膨れについて説明した。本実施の形態は、エレメント構造の膨れだけでなく、過充電時などの場合に電解液から発生するガスによる蓄電素子の形状変化に対しても、同様に適用することができる。
本実施の形態では、蓄電素子がプリズマティックセルケース(例えば金属製)を有する場合を説明した。代替的に、蓄電素子は、ケースにラミネートフィルムを用いたいわゆるパウチセルであってもよい。
【0082】
実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0083】
10 電池モジュール(蓄電装置)
11 ケース
12 バスバー
13、14 リード
20 セル(蓄電素子)
21 セルケース
21a、21b 長側面
21c、21d 短側面
22 蓋板
23、26 端子
24 破裂弁
25 電極体
50 推定装置
51 制御部
52 入力部
53 記憶部
54 計時部
55 出力部
56 判定部
57 推定部
58 通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14