(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144111
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】軟化食品製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/70 20160101AFI20220926BHJP
A23L 17/40 20160101ALN20220926BHJP
A23L 17/50 20160101ALN20220926BHJP
【FI】
A23L13/70
A23L17/40 A
A23L17/50 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044978
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中山 沙希
(72)【発明者】
【氏名】伊佐治 由貴
(72)【発明者】
【氏名】冨田 晴雄
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC05
4B042AD39
4B042AG02
4B042AG06
4B042AG67
4B042AG72
4B042AH01
4B042AP02
4B042AP03
4B042AP06
4B042AP07
4B042AP17
4B042AP18
4B042AP27
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】肉類を原材料とする軟化食品であって、柔らかさを備えつつ、食味の悪化が抑えられた軟化食品を製造できる軟化食品製造方法を提供する。
【解決手段】肉類からなる軟化食品を製造する方法であって、肉類を所定温度まで加熱する前処理工程と、加熱した肉類を所定の含水率に調整する含水率調整工程と、所定の含水率に調整した肉類に、当該肉類中の所定の基質を分解する酵素を浸透させる浸透工程と、酵素を浸透させた肉類を、酵素の活性温度まで加熱する加熱工程と、を実施する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉類からなる軟化食品を製造する方法であって、
前記肉類を所定温度まで加熱する前処理工程と、
前記加熱した肉類を所定の含水率に調整する含水率調整工程と、
前記所定の含水率に調整した肉類に、当該肉類中の所定の基質を分解する酵素を浸透させる浸透工程と、
前記酵素を浸透させた肉類を、前記酵素の活性温度まで加熱する加熱工程と、を実施する軟化食品製造方法。
【請求項2】
前記含水率調整工程は、前記加熱した肉類を凍結乾燥する凍結乾燥工程と、凍結乾燥した前記肉類に、当該肉類が前記所定の含水率となるように水分を吸収させる水分吸収工程と、からなる工程である請求項1に記載の軟化食品製造方法。
【請求項3】
前記含水率調整工程は、前記加熱した肉類を前記所定の含水率となるまで乾燥させる乾燥工程である請求項1に記載の軟化食品製造方法。
【請求項4】
前記含水率調整工程では、前記肉類の含水率を、前記前処理工程後の前記肉類の含水率の5%以上85%以下に調整する請求項1~3のいずれか一項に記載の軟化食品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉類からなる軟化食品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化に伴い、嚥下障害を有する者や咀嚼力が低下した者が増加していることから、歯茎や舌で容易に潰すことができる軟化食品(所謂、やわらか食)の開発が求められている。従来の軟化食品は、食材を細かく刻む、ミキサー等ですり潰すといった手法を用いて製造されていた。しかしながら、これらの手法で製造した軟化食品は、食材が原形をとどめておらず、見た目や食味が元の食材と比較して悪化していることで、軟化食品を食する者の食欲の減退を招いていた。
【0003】
そこで、近年、食品業界では、食材の形状をできる限り維持したまま食材を軟化させる方法の一つとして、酵素によりタンパク質などの基質を分解して食材を軟化させる方法に注目が集まっており、本願出願人も特許文献1記載の軟化食品製造方法を提案している。
【0004】
特許文献1記載の軟化食品製造方法では、肉類を所定温度まで加熱する前処理工程と、加熱した肉類を凍結乾燥する凍結乾燥工程と、凍結乾燥した肉類に酵素を浸透させる浸透工程と、酵素を浸透させた肉類を酵素の活性温度まで加熱する工程とを行う。この軟化食品製造方法では、前処理工程を行うことによって、肉類中に残存するタンパク質複合体の量が減少するとともに、肉類中のタンパク質が適度に分解されるようになる。そのため、当該軟化食品製造方法により得られる食品は、最終的に、食味や見た目、形状の悪化が抑えられた柔らかいものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の軟化食品製造方法では、加熱した肉類を凍結乾燥することで、当該肉類に酵素を浸透し易くさせているが、凍結乾燥工程を実際の製造現場で行う場合、原料のサイズや種類にばらつきがあることを考慮し、原料内の含水率にムラ出ることを防止するため、これ以上続けても含水率の目立った減少がみられなくなる限界まで凍結乾燥させる必要がある。
【0007】
しかしながら、原料によっては、上記のように限界まで凍結乾燥させると、浸透工程で酵素が浸透しすぎ、加熱工程を行った際に酵素の分解が進み過ぎて食味が悪くなるという問題が生じる。したがって、上記従来の軟化食品製造方法には改善の余地があった。
【0008】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであり、肉類を原材料とする軟化食品であって、柔らかさを備えつつ、食味の悪化が抑えられた軟化食品を製造できる方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る軟化食品製造方法の特徴構成は、
肉類からなる軟化食品を製造する方法であって、
前記肉類を所定温度まで加熱する前処理工程と、
前記加熱した肉類を所定の含水率に調整する含水率調整工程と、
前記所定の含水率に調整した肉類に、当該肉類中の所定の基質を分解する酵素を浸透させる浸透工程と、
前記酵素を浸透させた肉類を、前記酵素の活性温度まで加熱する加熱工程と、を実施する点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、浸透工程前に含水率調整工程を行い、肉類の含水率を調整することができる。これにより、浸透工程での肉類への酵素の過剰な浸透が抑えられ、加熱工程において酵素による基質の分解が適度なものとなり、製造される軟化食品の食味の悪化を防止できる。したがって、得られる軟化食品は、柔らかく、食味の悪化が抑えられたものとなる。
【0011】
また、本発明に係る軟化食品製造方法の更なる特徴構成は、
前記含水率調整工程は、前記加熱した肉類を凍結乾燥する凍結乾燥工程と、凍結乾燥した前記肉類に、当該肉類が前記所定の含水率となるように水分を吸収させる水分吸収工程と、からなる工程である点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、凍結乾燥工程を行うことで、肉類中の含水率を一旦大きく低下させることができるため、肉類の長期保存が可能となる。更に、水分吸収工程を行うことで、浸透工程に供する肉類を所定の含水率にでき、浸透工程での肉類への酵素の過剰な浸透を抑えられる。
【0013】
また、本発明に係る軟化食品製造方法の更なる特徴構成は、
前記含水率調整工程は、前記加熱した肉類を前記所定の含水率となるまで乾燥させる乾燥工程である点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、浸透工程に供する肉類の含水率を調整し、浸透工程での肉類への酵素の過剰な浸透を抑えられる。
【0015】
また、本発明に係る軟化食品製造方法の更なる特徴構成は、
前記含水率調整工程では、前記肉類の含水率を、前記前処理工程後の前記肉類の含水率の5%以上85%以下に調整する点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、浸透工程に供する肉類の含水率が適度なものとなり、浸透工程において酵素が適度に浸透する。これにより、加熱工程における酵素による基質の分解が適度なものとなり、軟化食品の食味の悪化を抑えられる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る軟化食品製造方法について説明する。尚、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0018】
実施形態に係る軟化食品製造方法は、肉類からなる軟化食品を製造する方法であって、
肉類を所定温度まで加熱する前処理工程と、加熱した肉類を所定の含水率に調整する含水率調整工程と、所定の含水率に調整した肉類に、当該肉類中の所定の基質を分解する酵素を浸透させる浸透工程と、酵素を浸透させた肉類を、酵素の活性温度まで加熱する加熱工程と、を実施する。尚、以下においては、基質がタンパク質である場合を例にとって説明するが、基質はタンパク質に限られるものではない。
【0019】
また、本実施形態に係る軟化食品製造方法では、含水率調整工程として、加熱した肉類を凍結乾燥する凍結乾燥工程と、凍結乾燥した肉類に、当該肉類が所定の含水率となるように水分を吸収させる水分吸収工程とを行う。
【0020】
つまり、本実施形態に係る軟化食品製造方法では、前処理工程において肉類を所定温度(例えば90℃程度)まで加熱することによって、肉類中のタンパク質が適度に変性、分解する。その後、このタンパク質が適度に変性、分解した肉類を凍結乾燥することにより、タンパク質が変性、分解した状態を維持しつつ、肉類を乾燥させる。その後、凍結乾燥により乾燥させた肉類に所定の含水率となるように水分を吸収させる。しかる後、所定の含水率に調整した肉類に酵素を浸透させ、当該酵素を浸透させた肉類を酵素の活性温度まで加熱する。これにより、酵素による分解作用によって肉類中のタンパク質が適度に分解され、食味の悪化が抑えられつつ、肉類が軟化する。
【0021】
前処理工程においては、具体的に、蒸す、煮る、炒めるといった加熱方法を用いて肉類を加熱し、肉類中のタンパク質を適度に変性、分解する。尚、肉類を蒸して加熱することで、調理中のドリップが少なくなり、軟化食品の食味が悪化し難くなる。したがって、前処理工程では、肉類を蒸すことで所定温度まで加熱することが好ましい。尚、所定温度としては、タンパク質を適度に変性、分解するという観点から、90℃以上120℃以下とすることが好ましい。
【0022】
ここで、この軟化食品製造方法では、前処理工程を実施することで、以下のような利点がある。即ち、前処理工程を実施することによって、肉類中のタンパク質複合体を予め適度に複数のサブユニットに分離した状態にできるため、軟化食品中にタンパク質複合体が残存し難くなり、また、後工程で酵素によるタンパク質の分解が進み易くなる。更に、前処理工程を実施することで、肉類中のタンパク質が予め適度に変性した状態となり、この変性したタンパク質には酵素が作用しないため、変性していないタンパク質が酵素によって分解されることになる。このように、この軟化食品製造方法によれば、前処理工程を実施することによって、肉類中に残存するタンパク質複合体の量が減少するとともに、タンパク質が適度に分解されるようになる。そのため、得られる軟化食品は、柔らかく、食味の悪化が抑えられたものとなる。
【0023】
凍結乾燥工程においては、例えば、超低温冷凍機や液体窒素などを用いて前処理工程後の肉類を凍結した後、凍結後の肉類を既知の凍結乾燥装置を用いて乾燥させる。これにより、肉類は、タンパク質が適度に変性、分解した状態が維持されたまま乾燥され、長期保存も可能となる。尚、本願において、「凍結乾燥する」とは、これ以上続けても肉類中の含水率の目立った減少がみられなくなる限界まで凍結乾燥することを意味し、含水率の目立った原料がみられなくなるような凍結乾燥期間としては、例えば2~3日程度である。
【0024】
水分吸収工程においては、凍結乾燥した肉類に水分を吸収させて、当該肉類が所定の含水率となるようにする。肉類に水分を吸収させる方法としては、肉類を水に浸漬させる方法や、肉類を飽和水蒸気中に保管する方法、肉類にミストを吹き付ける方法、濡れ布巾で肉類を包む方法、などが挙げられる。また、肉類に水分を吸収させる際に使用する水には、調味料(塩、醤油、酒類、みりん、砂糖、ソース等)が含まれていてもよい。水分吸収工程では、肉類の含水率を、前処理工程後の肉類の含水率の5%以上85%以下に調整することが好ましく、より好ましくは、前処理工程後の肉類の含水率の15%以上80%以下に調整することがより好ましい。
【0025】
このように、凍結乾燥工程及び水分吸収工程を行って、凍結乾燥後の肉類を適度な含水率を有するものとし、続く浸透工程での肉類への酵素の過剰な浸透を抑えることができる。
【0026】
浸透工程においては、具体的に、酵素を含有する処理液に肉類を浸漬させて、当該肉類に酵素を浸透させることができる。尚、処理液としては、酵素を水やアルコールを含む水系の溶媒に分散させたものを用いることができ、当該処理液は、酵素の他、pH調整剤や調味料、増粘剤など各種添加剤を含有していてもよい。
【0027】
また、処理液中の酵素の濃度は、特に限定されるものではないが、酵素の濃度が0.001質量%未満であると、酵素の分解作用が弱くなり過ぎて処理に要する時間が増大する。一方、1質量%より高いと、酵素自身の味が製造される軟化食品の味に強く現れすぎる、或いは、酵素の分解作用が強くなり過ぎて形状の維持が困難になる。したがって、処理液中の酵素の濃度は、0.001質量%以上1質量%以下であることが好ましい。
【0028】
使用する酵素としては、肉類中の任意の基質を分解することができるものであれば、特に限定されないが、基質がタンパク質である場合には、プロテアーゼを使用する。尚、プロテアーゼとしては、ブロメラインF(活性温度65~75℃)、パパインW-40(活性温度70~90℃)、アロアーゼ(登録商標)XA-10(活性温度60~75℃)、アロアーゼAP-10(活性温度50~65℃)、プロチンNY100(活性温度50~55℃)、プロチンSD-AY10(活性温度70~80℃)、ヌクレイシン(登録商標)(活性温度55~65℃)、アルカラーゼ(登録商標)、ビオプラーゼ(登録商標)OP(活性温度50~60℃)、ビオプラーゼSP-20(活性温度60~70℃)、オリエンターゼ(登録商標)22BF(活性温度60~70℃)、オリエンターゼAY(活性温度50~60℃)、オリエンターゼOP、プロテアーゼA「アマノ」SD(活性温度40~50℃)、プロテアーゼP「アマノ」SD(活性温度40~50℃)、プロテアーゼM「アマノ」G、スミチーム(登録商標)AP、スミチームACP-G、スミチームLP-G、スミチームFP-G、スミチームFLAP-G、スミチームDPP-G、デナプシン2P、デナチーム(登録商標)プロテアーゼYP-SS、デナチームAP(活性温度45~55℃)、デナチームPMC SOFTER(活性温度40~60℃)、パンチダーゼ(登録商標)NP-2(活性温度50~60℃)、サモアーゼ(活性温度50~60℃)、コラゲナーゼ(活性温度30~50℃)、ニューラーゼF3G(活性温度40~50℃)、グルクザイムAF6(活性温度58℃)、ヘミセルラーゼ「アマノ」90(活性温度50℃)、セルラーゼT「アマノ」4、(活性温度45℃)、プロテアーゼM「アマノ」SD(活性温度50℃)、プロテアーゼP「アマノ」3SD(活性温度40℃)、プロチンSD-NY10(活性温度50℃)、Flavourzyme(登録商標) 1000 L(活性温度40~50℃)、Flavourzyme 500 MG(活性温度40~50℃)、プロテアックス(活性温度70℃)、ペプチダーゼR(活性温度37℃)、バイオコープ・ジャパン株式会社製のキウイフルーツ酵素(活性温度50~70℃)を例示することができる。また、酵素は、1種又は相互に阻害しないものを2種以上組み合わせて使用してもよい。更に、酵素は、植物由来であっても微生物由来であってもよく、植物由来のものと微生物由来のものとを組み合わせて使用してもよい。
【0029】
また、浸透工程においては、0.02MPa以下の減圧下において、含水率調整後の肉類に酵素を浸透させるようにすることが好ましい。このようにすれば、肉類の内部にまで酵素が短時間で浸透し易くなり、肉類全体に短時間で均一に酵素を浸透させることができる。
【0030】
加熱工程においては、具体的に、酵素を浸透させた肉類を所定温度(例えば60℃程度)まで加熱し、その後、所定温度を一定時間(例えば30分~120分程度)維持することで、酵素による分解反応によってタンパク質を分解して肉類を軟化させる。尚、肉類を所定温度に加熱して温度を一定時間維持する方法としては、酵素を浸透させた肉類をジッパー付保存袋内に入れ、所定温度の恒温槽内に一定時間放置する方法が挙げられる。
【0031】
尚、本願において「肉類」とは、鶏肉や鴨肉、牛肉、馬肉、羊肉、猪肉などの鳥類・獣類の肉や、魚類や甲殻類、貝類などの魚介類の肉も含む概念である。
【0032】
〔別実施形態〕
〔1〕上記実施形態では、含水率調整工程を凍結乾燥工程及び水分吸収工程からなる態様としたが、これに限られるものではない。含水率調整工程は、加熱した肉類を所定の含水率となるまで乾燥させる乾燥工程であってもよい。この場合、例えば、加熱した肉類を所定の含水率となるまで自然乾燥させたり、既知の凍結乾燥装置を用いて、凍結後の肉類を不完全乾燥させる。尚、「凍結後の肉類を不完全乾燥させる」とは、本願における「凍結乾燥させる」こととは異なる概念であり、具体的には、肉類中の含水率が減少している最中に、凍結乾燥装置を停止させるような場合である。
【実施例0033】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。尚、本発明が実施例に限定されないことは言うまでもない。
【0034】
実施例1~8及び比較例1については、サンプルとしてエビを使用した。また、実施例9では牛モモ肉、実施例10では鴨肉、実施例11ではタコをそれぞれサンプルとして使用した。
【0035】
各サンプルは、圧力鍋で30分間蒸して少なくとも100℃以上に加熱した後(前処理工程)、凍結乾燥装置を用いて24時間乾燥させた(凍結乾燥工程)。実施例1~11については、凍結乾燥後のサンプルに対して水分吸収工程を実施した。
【0036】
実施例1~5及び10については、水を入れた容器に凍結乾燥後のサンプルを所定時間浸漬して吸水させた。尚、浸漬時間を変えることで、含水率を調整した。
実施例6,9及び10については、凍結乾燥後のサンプルに霧吹きで水を吹き付けて吸水させた。
実施例7については、凍結乾燥後のサンプルに水で濡らした布巾をかけて吸水させた。
実施例8については、凍結乾燥後のサンプルを槽内温度33℃、相対湿度99%の恒温恒湿槽内に保管して吸水させた。
【0037】
実施例1~11については含水率調整後のサンプル、比較例1については凍結乾燥後のサンプルを、酵素としてのパパインW-40をエビ、牛モモ肉及び鴨肉については0.1質量%、タコについては0.05質量%となるように溶かした処理液に浸漬して1時間吸水させた後、0.02MPaの減圧下で内部まで酵素を浸透させた(浸透工程)。しかる後、各サンプルをジッパー付保存袋に入れ、60℃の恒温槽中でエビ及びタコについては120分間、牛モモ肉及び鴨肉については30分間反応させた(加熱工程)。反応後のサンプルをテクスチャーメーター(株式会社山電製のRE2 33005B)で破断試験を行って硬さを計測して、「○(100kPa以下)」、「△(200kPa未満)」又は「×(200kPa以上)」で評価するとともに、形状についても評価した。また、食味について「○(良い)」「△(まあ良い)」又は「×(悪い)」で評価した。更に、硬さ、形状及び食味を考慮して、「否」、「可」又は「良」で総合評価した。
【0038】
実施例1~11及び比較例1の「サンプル」、「含水率調整条件」、「前処理後含水率」、「FD後含水率(凍結乾燥後の含水率)」及び「吸水後含水率」を以下の表1にまとめ、「硬さ」、「形状」、「食味」及び「総合評価」を以下の表2にまとめた。尚、含水率は、各処理後のサンプルを135℃で1時間加熱し、加熱前後の重量変化を加熱前の重量で除して得られた値である。
【0039】
【0040】
【0041】
凍結乾燥後に含水率の調整を行っていない比較例1は、十分な柔らかさを備えているが食味が悪くなっている。これに対して、含水率の調整を行った実施例1~11では、サンプルの種類にかかわらず、ある程度の柔らかさを備えつつ、食味も比較的良好である。尚、実施例5は、含水率の調整を行っているが、含水率が前処理後の含水率の85%以上である60.91%になっているため、他の実施例と比較して総合評価は若干劣ったが、比較例1と比較した場合には良好であった。
【0042】
以上のことから、柔らかさを備えつつ、食味の悪化が抑えられた軟化食品を製造するためには、浸透工程を行う前に、肉類の含水率を調整して当該肉類への酵素の過剰な浸透を抑えることが重要であることが確認できた。
【0043】
また、肉類の含水率は、前処理後の含水率の85%以下とすることが好ましいことも確認できた。
【0044】
また、実施例1~8と実施例9~11との比較から、サンプルに違いがあっても、含水率の調整を行うことによって、柔らかさを備えつつ、食味の悪化が抑えられた軟化食品を製造できることが確認できた。