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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144112
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20220926BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20220926BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20220926BHJP
   G10K 11/172 20060101ALI20220926BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20220926BHJP
   B60N 2/06 20060101ALN20220926BHJP
   B60N 2/16 20060101ALN20220926BHJP
   B60N 2/22 20060101ALN20220926BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/68
G10K11/16 150
G10K11/172
G10K11/162
B60N2/06
B60N2/16
B60N2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044979
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 康夫
(72)【発明者】
【氏名】栗本 智行
(72)【発明者】
【氏名】松代 広正
【テーマコード(参考)】
3B087
5D061
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087DE00
3B087DE10
5D061AA06
5D061CC04
5D061CC11
(57)【要約】
【課題】フレームに支持されるモーターに簡単な組み付け作業で防音カバーを取り付けることができる車両用シートを提供する。
【解決手段】車両用シートは、フレーム32と、フレーム32に支持されるモーター55と、モーター55に装着される防音カバー56とを備える。防音カバー56は、モーター55を部分的に覆う第1半体56aと、第1半体56aにリビングヒンジ63で連結されて、リビングヒンジ63の働きで、第1半体56aから遠ざかる開放位置、および、第1半体56aとの間にモーター55を収容する結合位置の間で変位する第2半体56bと、第2半体56bに一体に形成されて、弾性力に応じて第1半体56aに係り合って結合位置に第2半体56bを保持する係り合い片64とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに支持されるモーターと、
前記モーターに装着される防音カバーとを備え、
前記防音カバーは、
前記モーターを部分的に覆う第1半体と、
前記第1半体にヒンジで連結されて、前記ヒンジの働きで、前記第1半体から遠ざかる開放位置、および、前記第1半体との間に前記モーターを収容する結合位置の間で変位する第2半体と、
前記第2半体に一体に形成されて、弾性力に応じて前記第1半体に係り合って前記結合位置に前記第2半体を保持する係り合い片と
を有することを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記防音カバーは、リビングヒンジとして前記ヒンジを含む樹脂成形体から形成されることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用シートにおいて、前記第2半体が前記結合位置に位置すると、前記第1半体および前記第2半体は、前記モーターの駆動軸の配置を許容する1つの開口以外で連続する合わせ面を形成することを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1に記載の車両用シートにおいて、前記第1半体および前記第2半体の内壁面から前記モーターに向かって立ち、前記第2半体が前記結合位置に配置される際に先端で前記モーターに接触することで弾性力を蓄える厚みを有するリブをさらに備えることを特徴とする車両用シート。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1に記載の車両用シートにおいて、
前記フレームに固定されて、取付面で前記モーターを受け止める台座と、
前記第1半体および前記第2半体のうち少なくとも一方に形成されて、前記第2半体が前記結合位置に位置すると、前記台座の特定部位に噛み合って前記取付面の垂直方向に前記防音カバーの抜けを防止する突片と
をさらに備えることを特徴とする車両用シート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1に記載の車両用シートにおいて、前記第1半体および前記第2半体のうち少なくとも一方は、前記モーターに接する空間に貫通孔で接続される共鳴空間を区画することを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレームと、フレームに支持されるモーターとを備える車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両用シートの高さを調整するパワーシートモーターユニットを開示する。パワーシートモーターユニットは、車両用シートのフレームに固定されるギアボックスと、ギアボックスに結合されるモーターとを備える。モーターの駆動力は、ギアボックスに収容されるギアアセンブリからリンク部材に伝達される。リンク部材は水平軸線回りでベースフレームに対してシートクッションフレームの上下移動を案内する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-181968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ギアボックスは1段目のギアの位置で防音カバーに覆われる。防音カバーに埋め込まれるマスの作用に応じて低周波数の騒音は低減されることができる。しかしながら、防音カバーは、ギアボックスの外面を覆うものの、モーターを覆ってはいない。しかも、防音カバーは部分的にしかギアボックスを覆っていない。防音カバーは、ギアボックスを支持する金属板に向かって開放される。
【0005】
本発明は、フレームに支持されるモーターに簡単な組み付け作業で防音カバーを取り付けることができる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によれば、フレームと、前記フレームに支持されるモーターと、前記モーターに装着される防音カバーとを備え、前記防音カバーは、前記モーターを部分的に覆う第1半体と、前記第1半体にヒンジで連結されて、前記ヒンジの働きで、前記第1半体から遠ざかる開放位置、および、前記第1半体との間に前記モーターを収容する結合位置の間で変位する第2半体と、前記第2半体に一体に形成されて、弾性力に応じて前記第1半体に係り合って前記結合位置に前記第2半体を保持する係り合い片とを有する車両用シートは提供される。
【0007】
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記防音カバーは、リビングヒンジとして前記ヒンジを含む樹脂成形体から形成される。
【0008】
第3側面によれば、第1または第2側面の構成に加えて、前記第2半体が前記結合位置に位置すると、前記第1半体および前記第2半体は、前記モーターの駆動軸の配置を許容する1つの開口以外で連続する合わせ面を形成する。
【0009】
第4側面によれば、第1~第3側面のいずれか1の構成に加えて、車両用シートは、前記第1半体および前記第2半体の内壁面から前記モーターに向かって立ち、前記第2半体が前記結合位置に配置される際に先端で前記モーターに接触することで弾性力を蓄える厚みを有するリブをさらに備える。
【0010】
第5側面によれば、第1~第4側面のいずれか1の構成に加えて、車両用シートは、前記フレームに固定されて、取付面で前記モーターを受け止める台座と、前記第1半体および前記第2半体のうち少なくとも一方に形成されて、前記第2半体が前記結合位置に位置すると、前記台座の特定部位に噛み合って前記取付面の垂直方向に前記防音カバーの抜けを防止する突片とをさらに備える。
【0011】
第6側面によれば、第1~第5側面のいずれか1の構成に加えて、前記第1半体および前記第2半体のうち少なくとも一方は、前記モーターに接する空間に貫通孔で接続される共鳴空間を区画する。
【発明の効果】
【0012】
第1側面によれば、防音カバーの第2半体は開放位置で第1半体から遠ざかることから、第2半体に邪魔されずに第1半体はモーターを部分的に覆うことができる。ヒンジの働きで第2半体が結合位置に位置すると、第2半体と第1半体との間にモーターは収容されることができる。こうして防音カバーはモーターに装着されることができる。簡単な組み付け作業で防音カバーはモーターに装着されることができる。
【0013】
第2側面によれば、効果的に防音は実現されることができる。加えて、防音カバーは軽量で安価に製造されることができる。
【0014】
第3側面によれば、モーターでは駆動軸から駆動力は取り出される。第1半体および第2半体の合わせ面は駆動軸の配置を許容する1つの開口以外で連続することから、モーターは開口以外で第1半体および第2半体に覆われることができる。モーターは可能な限り広い範囲で防音カバーに覆われることができる。モーターの騒音は防音カバー内に良好に閉じ込められることができる。
【0015】
第4側面によれば、モーターが防音カバーに収容される際にリブの弾性力に応じて防音カバーのがたつきは防止されることができる。リブの弾性変形に応じて防音カバーまたはモーターの寸法誤差は吸収されることができる。リブの弾性力は第1半体に対して係り合い片の係り合いを強めることができる。車体が振動してもモーターから防音カバーの離脱は防止されることができる。
【0016】
第5側面によれば、台座に固定されるモーターに防音カバーが装着されると、突片は台座の特定部位に噛み合うことができる。車体の振動がフレームからモーターに伝わっても、取付面の垂直方向に防音カバーの抜けは防止されることができる。
【0017】
第6側面によれば、共鳴空間の働きで騒音の特定の周波数成分は効率的に減衰されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの全体構成を概略的に示す斜視図である。
図2】シートフレームの構造を概略的に示す斜視図である。
図3】シートクッションパッドおよびシートバックパッドの構成を概略的に示す斜視図である。
図4】(A)電動式前後移動装置の電動モーターに装着される防音カバーの構成を示す概念図、(B)展開された防音カバー単体の平面図、および(C)展開された防音カバー単体の側面図である。
図5】電動式前後移動装置の電動モーターを示す平面図である。
図6】電動式上下移動装置の電動モーターに装着される際に展開された防音カバーの平面図である。
図7】(A)展開された防音カバー単体の平面図、および(B)展開された防音カバー単体の側面図である。
図8】変形例に係る防音カバーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、前後、左右および上下は通常の着座姿勢(例えば運転時の基本姿勢)で車両用シートに着座した乗員から見た方向をいう。
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係る車両用シートの全体構成を概略的に示す。車両用シート11は、例えば車両のモノコック構造の1構成要素として機能するフロアパネル12に結合されるスライドレール13と、前後方向に移動可能にスライドレール13に支持されて、乗員の臀部および大腿部を受け止めるシートクッション14と、揺動軸線SX回りで前後方向に揺動可能にシートクッション14に連結されて、乗員の背中を受け止めるシートバック15と、シートバック15の上端に支持されて、乗員の頭を受け止めるヘッドレスト16とを備える。シートクッション14、シートバック15およびヘッドレスト16は個別に内部のパッドを包み込む表皮材14a、15a、16aを有する。表皮材15a、16aは、吊り込み糸17の働きでパッドの窪みに倣ってパッドの外面に密着する。パッドの詳細は後述される。車両用シート11は左座席用に構成される。車両用シート11が右座席用に用いられる場合には、車両用シート11で左右が入れ替えられればよい。
【0021】
シートクッション14はサイドカバー(カバー部材)18を備える。サイドカバー18には第1スイッチ(操作部材)19aおよび第2スイッチ(操作部材)19bが取り付けられる。第1スイッチ19aは、前後方向に長い摘まみで形成される。第1スイッチ19aが前方に操作されると、シートクッション14およびシートバック15は前方に移動する。第1スイッチ19aが後方に操作されると、シートクッション14およびシートバック15は後方に移動する。第1スイッチ19aが上方に操作されると、シートクッション14およびシートバック15は上方に移動する。第1スイッチ19aが下方に操作されると、シートクッション14およびシートバック15は下方に移動する。第2スイッチ19bは、上下方向に長い摘まみで形成される。第2スイッチ19bが前方に操作されると、シートバック15は揺動軸線SX回りで前方に揺動する。第2スイッチ19bが後方に操作されると、シートバック15は揺動軸線SX回りで後方に揺動する。
【0022】
ヘッドレスト16は、シートバック15の上端から上方に延びるヘッドレストピラー21に固定される。ヘッドレストピラー21は、上下方向に軸方向に変位自在にシートバック15に支持される。ヘッドレストピラー21の変位に応じてヘッドレスト16の高さは調整されることができる。
【0023】
図2に示されるように、車両用シート11は、パッドを支持するシートフレーム23を備える。シートフレーム23は、シートクッション14のパッドを支持するシートクッションフレーム24と、揺動軸線SX回りに揺動可能にシートクッションフレーム24に連結されて、シートバック15のパッドを支持するシートバックフレーム25と、長手方向に前後移動自在にスライドレール13に案内されて、スライドレール13上でシートクッションフレーム24を支持するベースフレーム26とを備える。シートクッションフレーム24はリンク機構27でベースフレーム26に連結される。リンク機構27は、左右方向に延びる水平軸線FH回りで回転自在にベースフレーム26に結合される一端と、水平軸線FHに平行に左右方向に延びる水平軸線SH回りで回転自在にシートクッションフレーム24に結合される他端とを有するリンク部材28を備える。リンク部材28は水平軸線FH回りでベースフレーム26に対してシートクッションフレーム24の上下移動を案内する。
【0024】
シートクッションフレーム24は、個々のスライドレール13に並んで延びるサイドフレーム24aと、シートクッション14の前端でサイドフレーム24a同士を接続するパンフレーム24bと、シートクッション14の後端でサイドフレーム24a同士を連結する連結パイプ24cとを備える。パンフレーム24bと連結パイプ24cとの間には複数のSばね(図示されず)が配置される。個々のSばねはジグザグ形状で前後に延びる。ジグザグ形状は、前後方向に延びる線材と、左右方向に延びる線材とが交互に組み合わせられて形成される。
【0025】
ベースフレーム26には電動式前後移動装置29が取り付けられる。電動式前後移動装置29は、ベースフレーム26に支持される電動モーターユニット31を備える。電動モーターユニット31には、電動モーターユニット31から揺動軸線SXに並列に延びて右のベースフレーム26に結合される連結体32が接続される。後述のように、電動モーターユニット31は、電力の供給に応じて動力を生成する電動モーターを含む。電力は第1スイッチ19aの操作に基づき供給される。電動モーターユニット31の動力はスライドレール13に沿ってベースフレーム26の前後移動を引き起こす。
【0026】
シートクッションフレーム24のサイドフレーム24aには電動式上下移動装置33が取り付けられる。電動式上下移動装置33は、サイドフレーム24aに支持されて、リンク機構27に連結されるアクチュエーター34を備える。アクチュエーター34は、サイドフレーム24aの外側に配置されて、電力の供給に応じて動力を生成する電動モーター35と、サイドフレーム24aに固定されながら取付面36aで電動モーター35を受け止めて、動力の伝達機構を収容するギアボックス(台座)36と、ギアボックス36に一体に形成されて、電力の供給に用いられるハーネス37の雄カプラー38を受け入れる雌カプラー39と、電動モーター35に装着される防音カバー41とを含む。伝達機構は、例えば、電動モーター35の駆動軸に固定されるウオームと、ウオームに協働してウオームギアを形成するウオームホイールと、水平軸線SH回りでリンク部材28に固定される被動ギアと、順番に相互に噛み合ってウオームホイールから被動ギアに動力を伝達するギア群とを含むことができる。電動モーター35の動力に応じて、水平軸線SH回りにサイドフレーム24aに対してリンク部材28の回転は引き起こされる。電力は第1スイッチ19aの操作に基づき供給される。電動モーター35の動力は水平軸線FH回りでサイドフレーム24aの上下移動を引き起こす。
【0027】
シートクッションフレーム24には、連結パイプ24cの後上方で揺動軸線SXに同軸に支軸44が組み込まれる。支軸44は例えば中空の金属管から成形される。金属管は軸方向に高い剛性を有する。支軸44は左右のサイドフレーム24aに挟まれる。支軸44にシートバックフレーム25は支持される。
【0028】
シートバックフレーム25は、支軸44で個々のサイドフレーム24aの内側に連結される板金フレーム25aと、板金フレーム25aの上端を相互に接続するアッパーフレーム25bとを備える。板金フレーム25aは例えば1枚の金属板から成形される。アッパーフレーム25bは例えば金属管から成形される。アッパーフレーム25bには上下方向にスライド可能にヘッドレストピラー21を支持するヘッドレストピラーガイド45が固定される。
【0029】
シートバックフレーム25の板金フレーム25aには電動式リクライニング装置46が取り付けられる。電動式リクライニング装置46は、揺動軸線SX周りでシートバックフレーム25の板金フレーム25aに取り付けられるアクチュエーター47を備える。アクチュエーター47は、板金フレーム25aの内側に配置されて、電力の供給に応じて動力を生成する電動モーター48と、板金フレーム25aに固定されながら取付面49aで電動モーター48を受け止めてる台座49と、電動モーター48に装着される防音カバー51とを含む。電動モーター48の動力は伝達機構の働きで揺動軸線SX回りの駆動力に変換される。伝達機構は、例えば、電動モーター48の駆動軸に固定されるウオームと、ウオームに協働してウオームギアを形成し、揺動軸線SX回りで支軸44に固定されるウオームホイールとを含むことができる。電力は第2スイッチ19bの操作に基づき供給される。電動モーター48の動力はシートクッションフレーム24に対して揺動軸線SX回りでシートバックフレーム25の前後揺動を引き起こす。
【0030】
図3に示されるように、シートクッション14は、シートクッションフレーム24に支持されて、表皮材14aに包み込まれるシートクッションパッド53をさらに備える。シートバック15は、シートバックフレーム25に支持されて、表皮材15aに包み込まれるシートバックパッド54をさらに備える。シートクッションパッド53およびシートバックパッド54は例えば発泡ウレタンといった弾力性を有する素材から形成される。
【0031】
図4に示されるように、電動式前後移動装置29の電動モーターユニット31は、電動モーター55に装着される防音カバー56を備える。防音カバー56は例えば樹脂成形体から構成される。防音カバー56は、電動モーター55を部分的に覆う第1半体56aと、第1半体56aに結合されて、第1半体56aとの間に電動モーター55を収容する第2半体56bとを備える。防音カバー56の右端には連結体32の配置を許容する1つの開口(以下「第1開口」)57が区画される。連結体32には、電動モーター55から右ベースフレーム26に向かって延びる駆動軸が収容されることができる。駆動軸は連結体32に並列に配置されてもよい。防音カバー56の左端には、電動モーター55から左ベースフレーム26に向かって延びて左ベースフレーム26に電動モーター55を固定する支持脚58の配置を許容する1つの開口(以下「第2開口」)59が区画される。第2開口59内には、電動モーター55から左ベースフレーム26に向かって延びる駆動軸が配置されることができる。駆動軸は支持脚58に並列に配置されればよい。第2開口59には、電動モーター55から突出する雄カプラー61の配置を許容する1つの開口62が連続する。
【0032】
第1半体56aおよび第2半体56bの連結にあたって第1半体56aおよび第2半体56bの間にはリビングヒンジ63が形成される。リビングヒンジ63の働きで、第2半体56bは、第1半体56aから遠ざかる開放位置、および、第1半体56aとの間に電動モーター55を収容する結合位置の間で変位することができる。第2半体56bには、弾性力に応じて第1半体56aに係り合って結合位置に第2半体56bを保持する係り合い片64が一体に形成される。
【0033】
ここでは、係り合い片64は、第2半体56bの縁から第1半体56aの外面に沿って延び、規定の空間64aを囲む枠体で形成される。第1半体56aの外面には枠体内の空間64aに対応して突起65が形成される。第2半体56bが結合位置に位置すると、枠体内の空間64aに突起65は進入する。突起65には、第2半体56bの結合位置で枠体を拘束する接触面が形成されることができる。突起65には、第2半体56bが開放位置から結合位置に変位する際に第1半体56aの外面から遠ざかる方向に枠体の弾性変形を促すスライド面が形成されるとよい。枠体の変位はリビングヒンジ63の回転軸線66から遠心方向に規制されるとよい。
【0034】
第2半体56bが結合位置に位置すると、第1半体56aおよび第2半体56bは、第1開口57および第2開口59以外で連続する合わせ面67を形成する。第1半体56aおよび第2半体56bは合わせ面67で相互に重ね合わせられる。重ね合わせの位置はリビングヒンジ63で規制されることができる。係り合い片64や突起65は、電動モーター55を収容する空間を挟んでリビングヒンジ63から反対側に配置されればよい。
【0035】
第1半体56aおよび第2半体56bは、電動モーター55の収容空間を囲む周壁68aと、周壁68aの右端から連続して、収容空間の一端を塞ぐ端壁68bとを有する。周壁68aの左端は途切れる。すなわち、収容空間の他端は開放される。収容空間の開放端は第2開口59を形成する。端壁68bの合わせ面67には、第2半体56bが結合位置に位置すると第1開口57を形成する第1切り欠き69aが形成される。周壁68aの合わせ面67には、第2半体56bが結合位置に位置すると開口62を形成する第2切り欠き69bが形成される。第2切り欠き69bは周壁の左端から連続する。
【0036】
第1半体56aおよび第2半体56bの内壁面には、電動モーター55に向かって立ち、第2半体56bが結合位置に配置される際に先端で電動モーター55に接触するリブ71が形成される。リブ71は、例えば、リビングヒンジ63の回転軸線66に並列に延びる。リブ71は、第2半体56bが結合位置に配置される際に先端で電動モーター55に接触することで弾性力を蓄える厚みを有する。リブ71の弾性力に応じて、第1半体56aおよび第2半体56bには電動モーター55の外面から遠ざかる反発力が生成されることができる。
【0037】
図5に示されるように、電動モーター55は、揺動軸線SXに並列に延びて、ステーターおよびローター並びにその他の構成部品を収容する筐体72と、筐体72の外周から突出して、電力の供給に用いられるハーネス73の雄カプラー74を受け入れる雌カプラー75とを備える。連結体32は筐体72の右端から右のベースフレーム26に向かって延びる。支持脚58は筐体72の左端から左のベースフレーム26に向かって延びる。
【0038】
図6および図7に示されるように、アクチュエーター34の防音カバー41は例えば樹脂成形体から構成される。防音カバー41は、電動モーター35を部分的に覆う第1半体41aと、第1半体41aに結合されて、第1半体41aとの間に電動モーター35を収容する第2半体41bとを備える。防音カバー41の後端には、電動モーター35からギアボックス36に進入する駆動軸の配置を許容する1つの開口77が区画される。
【0039】
第1半体41aおよび第2半体41bの連結にあたって第1半体41aおよび第2半体41bの間にはリビングヒンジ78が形成される。リビングヒンジ78の働きで、第2半体41bは、第1半体41aから遠ざかる開放位置、および、第1半体41aとの間に電動モーター35を収容する結合位置の間で変位することができる。第2半体41bには、弾性力に応じて第1半体41aに係り合って結合位置に第2半体41bを保持する係り合い片79が一体に形成される。
【0040】
ここでは、係り合い片79は、第2半体41bの縁から第1半体41aの外面に沿って延び、規定の空間79aを囲む枠体で形成される。第1半体41aの外面には枠体内の空間79aに対応して突起81が形成される。第2半体41bが結合位置に位置すると、枠体内の空間79aに突起81は進入する。突起81には、第2半体41bの結合位置で枠体を拘束する接触面が形成されることができる。突起81には、第2半体41bが開放位置から結合位置に変位する際に第1半体41aの外面から遠ざかる方向に枠体の弾性変形を促すスライド面が形成されるとよい。枠体の変位はリビングヒンジ78の回転軸線82から遠心方向に規制されるとよい。
【0041】
第2半体41bが結合位置に位置すると、第1半体41aおよび第2半体41bは、開口77以外で連続する合わせ面83を形成する。第1半体41aおよび第2半体41bは合わせ面83で相互に重ね合わせられる。重ね合わせの位置はリビングヒンジ78で規制されることができる。係り合い片79や突起81は、電動モーター35を収容する空間を挟んでリビングヒンジ78から反対側に配置されればよい。
【0042】
第1半体41aおよび第2半体41bは、電動モーター35の収容空間を囲む周壁84aと、周壁84aの前端から連続して、収容空間の一端を塞ぐ端壁84bとを有する。周壁84aの後端は途切れる。すなわち、収容空間の他端は開放される。収容空間の開放端は開口77を形成する。
【0043】
第1半体41aおよび第2半体41bの内壁面には、電動モーター35に向かって立ち、第2半体41bが結合位置に配置される際に先端で電動モーター35に接触するリブ85が形成される。リブ85は、例えば、リビングヒンジ78の回転軸線82に並列に延びる。リブ85は、第2半体41bが結合位置に配置される際に先端で電動モーター35に接触することで弾性力を蓄える厚みを有する。リブ85の弾性力に応じて、第1半体41aおよび第2半体41bには電動モーター35の外面から遠ざかる反発力が生成されることができる。
【0044】
第2半体41bには、周壁84aの後端から連続して後方に突き出るフック片86が形成される。フック片86の先端には、防音カバー41が電動モーター35に装着される際に第2半体41bが結合位置に配置されるとギアボックス36に向き合う爪86aが形成される。爪86aは、ギアボックス36の特定部位に噛み合って取付面36aの垂直方向に防音カバー41の抜けを防止することができる。ギアボックス36の特定部位には、取付面36aの裏側で後向きに面して爪86aの噛み合いを受け止める噛み合い面87が形成される。電動モーター35はギアボックス36の取付面36aにネジ88で固定される。アクチュエーター47の防音カバー51は防音カバー41と同様に構成されればよい。
【0045】
第1スイッチ19aが前方または後方に操作されると、電動モーター55に電力は供給される。電動モーター55は作動する。電動モーター55の駆動軸から駆動力は取り出される。駆動力に基づきシートクッション14およびシートバック15の前後動は実現されることができる。このとき、電動モーター55の作動音は防音カバー56内に閉じ込められる。車室内の静寂性は高められることができる。
【0046】
第1スイッチ19aが上方または下方に操作されると、電動モーター35に電力は供給される。電動モーター35は作動する。電動モーター35の駆動軸から駆動力は取り出される。駆動力は伝達機構からリンク部材28に伝達される。シートクッション14およびシートバック15の上下動は実現されることができる。このとき、電動モーター35の作動音は防音カバー41内に閉じ込められる。車室内の静寂性は高められることができる。
【0047】
第2スイッチ19bが前方または後方に操作されると、電動モーター48に電力は供給される。電動モーター48は作動する。電動モーター48の駆動軸から駆動力は取り出される。駆動力に基づきシートバック15の前後動は実現されることができる。このとき、電動モーター48の作動音は防音カバー51内に閉じ込められる。車室内の静寂性は高められることができる。
【0048】
本実施形態に係る車両用シート11のアクチュエーター34では、第1半体41aおよび第2半体41bは、電動モーター35の駆動軸の配置を許容する1つの開口77以外で連続する合わせ面83を形成する。第1半体41aおよび第2半体41bの合わせ面83は駆動軸の配置を許容する1つの開口77以外で連続することから、電動モーター35は開口77以外で第1半体41aおよび第2半体41bに覆われることができる。電動モーター35は可能な限り広い範囲で防音カバー41に覆われることができる。電動モーター35の騒音は防音カバー41内に良好に閉じ込められることができる。
【0049】
同様に、本実施形態に係る車両用シート11の電動モーターユニット31では、第1半体56aおよび第2半体56bは第1開口57および第2開口59以外で連続する合わせ面67を形成する。第1半体56aおよび第2半体56bの合わせ面67は第1開口57および第2開口59以外で連続することから、電動モーター55は第1開口57および第2開口59以外で第1半体56aおよび第2半体56bに覆われることができる。電動モーター55は可能な限り広い範囲で防音カバー56に覆われることができる。電動モーター55の騒音は防音カバー56内に良好に閉じ込められることができる。
【0050】
防音カバー41、56では、第1半体41a、56aおよび第2半体41b、56bの内壁面から電動モーター35、55に向かって立ち、第2半体41b、56bが結合位置に配置される際に先端で電動モーター35、55に接触することで弾性力を蓄える厚みを有するリブ85、71をさらに備える。リブ85、71の弾性力に応じて防音カバー41、56のがたつきは防止されることができる。リブ85、71の弾性変形に応じて防音カバー41、56または電動モーター35、55の寸法誤差は吸収されることができる。リブ85、71の弾性力は第1半体41a、56aに対して係り合い片79、64の係り合いを強めることができる。車体が振動しても電動モーター35、55から防音カバー41、56の離脱は良好に防止されることができる。防音カバー51でも同様にリブの形成に応じて防音カバー51のがたつきは防止されることができる。
【0051】
本実施形態に係るアクチュエーター34では、ギアボックス36の特定部位に噛み合って取付面36aの垂直方向に防音カバー41の抜けを防止するフック片86が第2半体41bに形成される。ギアボックス36に固定される電動モーター35に防音カバー41が装着されると、フック片86はギアボックス36の噛み合い面87に噛み合うことができる。車体の振動がシートフレーム23から電動モーター35に伝わっても、取付面36aの垂直方向に防音カバー41の抜けは防止されることができる。同様に、アクチュエーター47でも突片の形成に応じて取付面49aの垂直方向に防音カバー51の抜けは防止されることができる。突片の噛み合いにあたって台座49には例えば突片の進入を受け入れる凹部が形成されればよい。
【0052】
車両用シート11の製造にあたって、電動モーター55はシートフレーム23に取り付けられる。その後、電動モーター55には防音カバー56は装着される。防音カバー56の第2半体56bは開放位置で第1半体56aから遠ざかることから、第2半体56bに邪魔されずに第1半体56aは電動モーター55を部分的に覆うことができる。リビングヒンジ63の働きで第2半体56bが結合位置に位置すると、第2半体56bと第1半体56aとの間に電動モーター55は収容されることができる。こうして防音カバー56は電動モーター55に装着されることができる。簡単な組み付け作業で防音カバー56は電動モーター55に装着されることができる。
【0053】
同様に、電動モーター35はシートフレーム23に取り付けられる。その後、電動モーター35には防音カバー41は装着される。防音カバー41の第2半体41bは開放位置で第1半体41aから遠ざかることから、第2半体41bに邪魔されずに第1半体41aは電動モーター35を部分的に覆うことができる。リビングヒンジ78の働きで第2半体41bが結合位置に位置すると、第2半体41bと第1半体41aとの間に電動モーター35は収容されることができる。こうして防音カバー41は電動モーター35に装着されることができる。簡単な組み付け作業で防音カバー41は電動モーター35に装着されることができる。防音カバー51は防音カバー41と同様な構造を有することから、同様に、電動モーター48には簡単な組み付け作業で防音カバー51は装着されることができる。
【0054】
図8に示されるように、防音カバー56では、第1半体56aおよび第2半体56bは、電動モーター55に接する空間に貫通孔91で接続される共鳴空間92を区画してもよい。共鳴空間92はヘルムホルツ共鳴の原理に基づき効率的に騒音の特定の周波数成分を減衰することができる。同様に、防音カバー41、51には共鳴空間が区画されることができる。
【符号の説明】
【0055】
11…車両用シート、23…フレーム(シートフレーム)、35…モーター(電動モーター)、36…台座(ギアボックス)、36a…取付面、41…防音カバー、41a…第1半体、41b…第2半体、48…モーター(電動モーター)、49…台座、49a…取付面、51…防音カバー、55…モーター(電動モーター)、56…防音カバー、56a…第1半体、56b…第2半体、63…ヒンジ(リビングヒンジ)、64…係り合い片、71…リブ、77…開口、78…ヒンジ(リビングヒンジ)、79…係り合い片、83…合わせ面、85…リブ、86…突片(フック片)、91…貫通孔、92…共鳴空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8