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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014412
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 11/00 20210101AFI20220112BHJP
   G03B 17/14 20210101ALI20220112BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20220112BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
G03B11/00
G03B17/14
G03B17/02
H04N5/225 400
H04N5/225 430
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020128688
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000142506
【氏名又は名称】株式会社駒村商会
(72)【発明者】
【氏名】駒村 利之
(72)【発明者】
【氏名】河野 景三
【テーマコード(参考)】
2H083
2H100
2H101
5C122
【Fターム(参考)】
2H083AA01
2H083AA04
2H083AA05
2H083AA06
2H083AA10
2H083AA26
2H083AA35
2H083AA36
2H100BB05
2H100CC07
2H100EE06
2H101EE02
2H101EE08
2H101EE31
5C122FB17
5C122GE04
5C122GE08
5C122HA83
(57)【要約】
【課題】 対象物の映像を複数のモードで撮像し得る撮像装置及びその光学フィルターの構成及びフィルタークリーニング方法に関し、さらに詳しくは、小型化が可能な光学フィルターの切替機構を提供する。
【解決手段】 この発明に係る撮像装置は、入射光束を光電変換する撮像素子と、レンズ交換用レンズマウントと、前記レンズマウントと前記撮像素子との間に配置されたフィルター切替機構とを有する撮像装置であって、前記フィルター切替機構は、フィルターを備え、該フィルターの一端を回動軸又は移動回動軸として回動させることにより、前記入射光束内で撮像素子の入射面と略平行な状態であるフィルターオン状態と、前記入射光束から外れた位置であって、かつ入射光束の近傍位置であるフィルターオフ状態とに切り替えるように構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光束を光電変換する撮像素子と、レンズ交換用レンズマウントと、前記レンズマウントと前記撮像素子との間に配置されたフィルター切換機構とを有する撮像装置であって、
前記フィルター切替機構は、フィルターを備え、該フィルターの一端を回動軸又は移動回動軸として回動させることにより、
前記入射光束内で撮像素子の入射面と略平行な状態であるフィルターオン状態と、
前記入射光束から外れた位置であって、かつ入射光束の近傍位置であるフィルターオフ状態とに切り替えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記フィルターオフ状態が、前記入射光束から外れた位置であって、かつ前記撮像素子の入射面と略垂直な状態であることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記フィルター切替機構は、前記撮像素子の上側又は下側、もしくは右側又は左側のいずれか又は全てに前記フィルターを備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記フィルターは、可視光像取り出しフィルター、NDフィルター、紫外線カットフィルター、赤外線カットフィルター、近赤外取出しフィルター、紫外線取出しフィルター、偏光フィルター又はシフター、光路長補正フィルター、特殊波長用バンドパスフィルターを含む吸収型フィルターのいずれか又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の撮像装置。
【請求項5】
前記フィルター切替機構における前記回動軸又は移動回動軸が前記撮像素子の近傍に位置する場合、前記フィルターは、レンズマウント開口部を介して着脱可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の撮像装置。
【請求項6】
前記フィルター切替機構は、前記フィルターの2個以上をフィルターオン状態として使用しうることを特徴とする請求項2乃至請求項5記載の撮像装置。
【請求項7】
撮像装置は、入射光束を光電変換する撮像素子と、レンズマウントと、前記レンズマウントと前記撮像素子との間に配置されたフィルター切替機構とを有し、
前記フィルター切替機構は、回動可能なフィルターを備え、
前記回動可能なフィルターの回動軸又は移動回動軸が撮像素子の近傍に配置され、前記フィルターを前記回動軸又は移動回動軸として回動させることにより、前記入射光束内で撮像素子と略平行な状態であるフィルターオン状態と、前記入射光束から外れた位置であって、かつ入射光束の近傍位置であるフィルターオフ状態とに切り換えるステップと、
前記フィルターオン状態において前記レンズマウントの開口部よりフィルター表面をクリーニングするステップと、
前記フィルターオフ状態において前記レンズマウントの開口部よりフィルター裏面又は前記撮像素子の前面をクリーニングするステップとを含むことを特徴とする前記撮像装置のフィルター又は撮像素子のクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象物の映像を複数のモードで撮像し得る撮像装置及びその光学フィルターの構成及びフィルタークリーニング方法に関し、さらに詳しくは、小型化が可能な光学フィルターの切替機構及びそのフィルター切替機構を用いたフィルター及び撮像素子のクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオカメラや静止画カメラは、監視用、教育用、医療用、各種測定・分析用、軍需用へと用途が拡大され、可視光像(カラー画像、白黒画像)のみならず赤外光像や紫外光像を併せて撮影したり、特定の波長を取り出して分析、比較する多機能化された撮像装置が必要とされている。例えば、医療用として内視鏡やダーマスコープなどの皮膚表面観察においては、皮膚表面の疾患状態を可視光像で観察すると共に、赤外光像により表皮内層への疾患状態を確認することができる。また、紫外光像を取得し皮下血中のヘモグロビンの変化を比較、分析するなどに用いられている。
【0003】
また、可視光像の撮影においても紫外光カットフィルター、赤外光カットフィルター、P/S偏光フィルター、ND(Neutral Density)フィルター、特殊波長スペクトル用バンドパスフィルター、光路長補正フィルターなどを利用して、所望の可視光像(カラー画像又は白黒画像)を撮像したり、特定波長帯域の像を取得することで画像の比較、分析に利用したりしている。これらの撮像装置は、画像の視覚・芸術的効果を得るだけでなく、監視カメラや航空機用・車載用カメラなどで種々の気象条件下での対象像の把握、自動操作などへ応用するなど適用範囲が拡大している。このような可視光像、赤外光像、紫外光像又は特定の波長帯域像の取得及び画像の加工、色彩効果強調などのためには種々のフィルターを用いる必要がある。
【0004】
従来、レンズ前面のフィルター交換用スクリューマウントに所望のフィルターを取り付けてフィルター交換を行っていたが、撮影の利便性を考慮すると、レンズ前面でフィルターを付け外しするより、撮像装置内又はカメラ・レンズ鏡胴内にフィルターを備えて切り替える方が好都合である。そのため、このようなフィルターをカメラ内やレンズ鏡胴内で切り替える方法が種々提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3など)。これらの方法では、いずれも撮像装置内の撮像素子の前面と平行で、入射光軸上とは垂直に赤外フィルターを配置し、上下左右へスライドさせるスライド式又は円弧状に移動させる回転式により可視光像及び赤外光像を切り替える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6-52935号公報
【特許文献2】特開2001-75140号公報
【特許文献3】特開2003-259167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術においては上下又は左右へのスライド式、又は円弧状の回転式であれ、入射光軸とは垂直で、撮像素子前面と平行してフィルター装着用ターレット板を配置し、移動させる為、外周方向に大きく膨らむ構造となり、小型化出来ないという難点があった。また、フィルター使用時はゴミやくもりが無いようにクリーニングする必要があるが、従来技術のスライド式や回転式フィルター切替機構においてフィルター裏表両面をクリーニングするには筐体を外したり、分解時に清掃するしかできず、フィルターのメンテナンスが出来難い構造であった。
【0007】
近来、撮像装置は、医療用、監視見守り用など利用範囲が多様化することでより小型化したものが求められると共に、撮影目的のバリエーションや撮像加工の必要性からフィルターは数多くの種類が利用され、市販されるフィルターも多種多様なものが利用可能となってきた。そのため、装置を小型化しつつ数多くのフィルターを利用目的に応じて最適なものを選択しうる構造が求められている。
【0008】
この発明は、上述の状況に鑑みて提供されるものであって、以下のような撮像装置及びその光学フィルターの構成並びにフィルタークリーニング法を提供することを目的とする。
(1)小型化された光学フィルター切替機構及びそれを具備する撮像装置。
(2)フィルタークリーニング及び撮像素子のクリーニングが容易なフィルター切替機構及びその方法。
(3)多種のフィルターを交換又は適用しうるフィルター切替機構を具備する撮像装置。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、この発明に係る撮像装置は、入射光束を光電変換する撮像素子と、レンズ交換用レンズマウントと、前記レンズマウントと前記撮像素子との間に配置されたフィルター切替機構とを有する撮像装置であって、前記フィルター切替機構は、フィルターを備え、該フィルターの一端を回動軸又は移動回動軸として回動させることにより、前記入射光束内で撮像素子の入射面と略平行な状態であるフィルターオン状態と、前記入射光束から外れた位置であって、かつ入射光束の近傍位置であるフィルターオフ状態とに切り替えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の撮像装置において、前記フィルターオフ状態が、前記入射光束から外れた位置であって、かつ前記撮像素子の入射面と略垂直な状態であるように構成することができる。
【0011】
また、本発明の撮像装置において、前記フィルター切替機構は、前記撮像素子の上側又は下側、もしくは右側又は左側のいずれか又は全てに前記フィルターを備えているように構成することができる。
【0012】
また、本発明の撮像装置において、前記フィルターは、可視光像取り出しフィルター、NDフィルター、紫外線カットフィルター、赤外線カットフィルター、近赤外取出しフィルター、紫外線取出しフィルター、偏光フィルター又はシフター、光路長補正フィルター、特殊波長用バンドパスフィルターを含む吸収型フィルターのいずれか又はそれらの組み合わせであるように構成することができる。
【0013】
また、本発明の撮像装置において、前記フィルター切替機構における前記回動軸又は移動回動軸が前記撮像素子の近傍に位置する場合、前記フィルターは、レンズマウント開口部を介して着脱可能であるように構成することができる。
【0014】
また、本発明の撮像装置において、前記フィルター切替機構は、前記フィルターの2個以上をフィルターオン状態として使用しうるように構成することができる。
【0015】
また、本発明の撮像装置のフィルター又は撮像素子のクリーニング方法において、撮像装置は、入射光束を光電変換する撮像素子と、レンズマウントと、前記レンズマウントと前記撮像素子との間に配置されたフィルター切替機構とを有し、前記フィルター切替機構は、回動可能なフィルターを備え、前記回動可能なフィルターの回動軸又は移動回動軸が撮像素子の近傍に配置され、前記フィルターを前記回動軸又は移動回動軸として回動させることにより、前記入射光束内で撮像素子と略平行な状態であるフィルターオン状態と、前記入射光束から外れた位置であって、かつ入射光束の近傍位置であるフィルターオフ状態とに切り換えるステップと、前記フィルターオン状態において前記レンズマウントの開口部よりフィルター表面をクリーニングするステップと、前記フィルターオフ状態において前記レンズマウントの開口部よりフィルター裏面又は前記撮像素子の前面をクリーニングするステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
従来技術では光軸と垂直な面で上下、左右にフィルターターレットを移動させて切り替えるスライド方式や回転切替方式であるのに対し、本発明では入射光束の光軸とは略平行な状態にフィルターを跳ね上げることによりフィルターをオン状態又はオフ状態へ切り替えているため、入射光軸に対し外周方向へ膨らむことなくコンパクトに構成できる。また、必然的に必要となるフランジバック長の空間を利用しているため、特別フィルター切替構造用に場所を必要とせず、小型化したフィルター切替機構を得ることができる。また、フィルタークリーニング及び撮像素子のクリーニングが容易なフィルター切替機構が得られる。更に、多種多様なフィルターを交換又は適用しうるフィルター切替機構を具備する撮像装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を適用した、撮像装置の実施例1の態様を示す概略説明図である。
図2】本発明を適用した、撮像装置の実施例2の態様を示す概略説明図である。
図3】本発明に適用しうる着脱可能フィルター構成例の概略説明図である。
図4】本発明を適用した、撮像装置の実施例3の態様を示す概略説明図である。
図5】実施例3を具現化したフィルター切替機構の一例を示す説明図である。
図6】レンズマウントの開口部から内部を見た概略説明図である。
図7】本発明を適用した、撮像装置の実施例4の態様を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態の撮像装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例に記載されているいずれの図面も本発明の説明用に概略的な模式図として描かれており、実際の寸法や形状は特に限定するものではない。また、構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例0019】
図1は、本発明を適用した、撮像装置の実施例1の態様を示す概略説明図である。図は光軸A-A’に沿った断面図を示している。撮像装置は、その筐体1内に交換レンズ10を取り付けるレンズマウント11、及び撮像素子12を有しており、レンズマウント11と撮像素子12との間の空間にフィルター切替機構13が配置されている。レンズマウント11は、交換レンズ10に適合するようにレンズ10と撮像素子12との間隔であるフランジバック長(図1におけるB-C)、開口径、接合方式(「ねじ込み式」、「バネヨット式」及び「スピゴット式」)などの物理的寸法が規格化されている。この撮像装置は、業務用ビデオカメラ及び静止画カメラを想定しているが、民生用のカメラにも同様に適用しうる。
【0020】
このようなビデオカメラ及び静止画カメラは前述の通り多岐に亘る分野で使用されており、使用目的により多種多様なフィルターを適用して所望の画像を取得している。本発明で使用される主なフィルターとして、赤外線又は紫外線カットフィルター、赤外線又は紫外線透過フィルター、偏光フィルター、ND(Neutral Density)フィルター、光路長補正フィルター、特殊バンドパスフィルターなどが考えられる。これらのフィルターは、主として吸収型フィルターを想定している。
【0021】
フィルター切替機構13は、レンズマウント11と撮像素子12との間のフランジバック長(B-C)間の空間に配置されている。撮像素子12が単板の撮像装置では、光束分離を行うプリズムやミラーなどを必要としないため実質的にこのフランジバック長で形成される空間は有効利用することが可能である。このフィルター切替機構13は、撮像素子12の近傍で、撮像素子12の上部(図1の上方)側に一端が回動軸14を軸として回動しうるフィルター取付枠15が設けられ、その取付枠15内にフィルター16が配置されている。フィルター切替機構13は、回動軸14を手動又は電動により略90度だけ回動させ、フィルター16を入射光束内に挿入させてフィルターオン状態及び入射光束から外してフィルターオフ状態にすることが可能な構成となっている。
【0022】
本願において、フィルターが撮像素子12の前面(入射面)と平行で撮像素子への入射光束をフィルターリングしている状態をフィルターオン状態又は単にオン状態と称し、フィルターが入射光束をフィルターリングしない状態、つまり入射光束外にある状態をフィルターオフ状態又は単にオフ状態と称する。図1の実施例において、フィルター16は、フィルター一端の回動軸14を軸として略90度回動する跳ね上げ式の構成が例示されており、フィルターオン状態で撮像素子12の前面(光束入射面)と平行に配置され、フィルターオフ状態では撮像素子12と略垂直となるように構成されている。
【0023】
しかし、このフィルターオフ状態は、当然ながら入射光の光束を遮らない状態である。図1において、入射光束は、点線D及びEに囲まれた範囲を示している。つまりフィルターオフ状態は、この入射光束外の位置で、かつ入射光束の近傍位置に配置されていれば良く、回転軸14の回転角度は必ずしも90度ということではない。このようなフィルター切替機構13によるフィルターオフ状態の位置(フィルター跳ね上げ角度)は、レンズマウント11及び撮像素子12の寸法、レンズマウント毎に規格化されたフランジバック長(B-C)により決定される設計事項である。
【0024】
フィルター切替機構13には、回動軸14に連結されたフィルター保持枠15が設けられており、フィルター保持枠15内にフィルター16が取り付けられている。図示されていないがフィルター回動軸14と連動したモータ又はバネ部材を利用して、フィルター保持枠15及びフィルター16をフィルターオン状態及びオフ状態を自動又は手動により切り替えることができる。これらの切り替え構造は、一眼レフカメラのキックリターン又はクイックリターンミラーと称されるミラー跳ね上げ構成を流用して実現することもできる。また、フィルターの回動軸14は必ずしも1軸に固定されるものでなく、フィルターのオン状態、オフ状態が切り替えられれば2軸や偏芯を含む移動回転軸で回動する構成とすることもできる。また、フィルター切替機構13は、フィルターをオン状態及びオフ状態の2つの設定位置を移動するだけでなく、2つの設定位置の中間部においても係止するように構成することもできる。
【0025】
図1においてフィルター16がオン状態へ設定された場合、センサー支持体17と一体化されたフィルター制止部材18及び19が設けられている。この制止部材18及び19によりそれぞれのフィルターが撮像素子12と平行に位置づけされ、フィルター保持枠及びフィルターはそれぞれ15’及び16’の位置に回動される。この制止部材は光軸AーA’と垂直で、撮像素子12の入射面と平行に規制できるようになっていればいずれの構成であっても構わないし、必ずしも配置すべきというものでもない。
【0026】
上述の実施例1では、フィルター切替機構13が撮像素子12の近傍で、上側に配置され、フィルターオン状態又はフィルターオフ状態の2モードを切り替えているが、この配置場所は、レンズマウント11の近傍であっても、その上下、左右のいずれの側であってもよい。フィルターが入射光束内で撮像素子12と平行に挿入されるオン状態とフィルターが入射光束を遮らない位置へ移動するフィルターオフ状態が形成されれば問題ない。
【実施例0027】
図2では、フィルター切替機構13をレンズマウント11側に配置した実施例2の態様を示す。図2図1との相違は、フィルター切替機構13の回動軸14をレンズマウント11側に配置した点であり、図1と同一部材には同一の番号が付してある。図2でのフィルターオン状態では、フィルター16が撮像素子12の前面と平行で、入射光束をフィルタリングするように配置されており、フィルターオフ状態でフィルターは入射光束外へ回動し、移動する構成である。図2においてフィルターオフ状態では、フィルター16が入射光束外の位置で、かつ入射光束の近傍位置へ回動されれば十分であり、必ずしもフィルターオン状態から90度まで跳ね上げる必要はない。このようにフィルター切替機構13をレンズマウント側に配置した場合、フィルターオン状態では入射光束をすべてカバーしてフィルターリングするためフィルター径が図1の撮像素子12側に配置した場合に比べ大きくする必要がある。
【0028】
本発明におけるフィルター切替機構13は、フランジバック長の空間を利用して、フィルター切り替えによるオン状態とオフ状態とがフィルターの向きを変えるだけであり、入射光軸に対し外周方向へ膨らむことなくフィルター切り替えることができ、撮像装置を小型化することができる。このような実施態様の応用として、フィルターのオン・オフのみで各種フィルター効果の有無2モードを撮影するのに適している。
【0029】
上述の通り、本発明のフィルター切替機構13の配置は、レンズマウント11と撮像素子12との間の空間を利用している。レンズ交換が可能なレンズ10のフランジバック長はレンズマウントの基準面Bと撮像素子の基準面Cの間で設定されるが、このフランジバック長は、レンズマウント毎に規定されている。例えば、フランジバックが短い小型カメラ用のフランジバックを有するCマウント(業界規格)は、フランジバック長17.526mmである。また、一眼レフタイプの各種カメラでは、一般的に可動ミラーが配置されているため、レンズマウントの多くは20mm以上のフランジバック長を有している。単板撮像素子の撮像装置ではフランジバック長の空間はプリズムなどの光束分離光学系を挿入する必要がないため、本発明のフィルター切替機構13を挿入する十分な余地を有している。
【0030】
このフランジバック長は、空気換算で規定されているため、レンズマウント基準面Bと撮像素子基準面Cの間にフィルターが挿入された状態で設計する場合は、挿入されるフィルターの屈折率に応じて空気換算に相当するよう若干調整する必要がある。しかし、フィルターの厚みはさほど厚くないためフィルター切替機構13の配置に影響するほどではないが、影響を無視できない場合は、レンズ側でフォーカス調整するか、又は撮像素子を光軸方向に動かす機構を入れて微調整しても良い。
【0031】
フィルターの寸法は、撮像素子の大きさをカバーする必要があり現在多くの監視カメラで採用されている撮像素子は、1/2インチ型(縦横:8.8x6.6mm)から1/4インチ型(縦横:3.6x2.0mm)のサイズであり、フィルター取り付け枠の形状を考慮しても、本願のフィルター切替機構13をこの空間に設置することは可能である。
【0032】
従来のスライド式や回転式フィルター切替機構においては、フィルターのレンズマウント側にある面(表面のみ)に対してはレンズマウントの開口部からクリーニングが可能であるが、撮像素子側の面(裏面)についてはクリーニングができず、装置を分解してフィルターを取り外してクリーニングする必要があった。しかし、本発明のフィルター切替機構13の回転軸14が、上述の実施例1のように撮像素子12の近傍に配置されている場合、レンズマウント11の開口部からフィルター16のクリーニングを容易に行うことが可能となる。つまり、本発明によるフィルター切替機構を用いてフィルターオン状態とフィルターオフ状態とを切り替えるステップと、フィルターオン状態においてレンズマウント11の開口部よりフィルター表面をクリーニングするステップと、フィルターオフ状態においてレンズマウントの開口部よりフィルター裏面をクリーニングするステップとを含むクリーニング方法により、フィルターをオン状態ではフィルターの前面、オフ状態ではフィルターの後面の両面をレンズマウントの開口部からクリーニングすることができる。フィルターの両面クリーニングが容易にできることは、レンズ交換を頻繁に行って撮影するような場合極めて利便性が高いものである。
【0033】
更に、本発明のフィルター切替機構をオフ状態にすれば、撮像素子の入射面が開口部から直接クリーニングすることも可能となる。撮像素子の前面のクリーニングは、頻繁に行う必要性はないが、フィルターのクリーニング同様、交換レンズを頻繁に交換する場合やゴミが撮像装置内に混入した場合など撮像素子の前面が容易にクリーニングできることは有用である。
【0034】
図3は、本発明のフィルター切替機構に適用しうる着脱可能フィルター構成例の概略説明図である。フィルター切替機構13が実施例1に示すように撮像素子12側の近傍に回動軸14が配置されていれば、フィルター保持枠15を図3に示すとおり、フィルター着脱式として随時入れ替えて所望のフィルターを使用するように構成することができる。フィルター切替機構13は、オン状態とオフ状態とを切り替える場合、2つの設定位置を回動軸により回動させて移動するが、レンズを外した状態では、オン状態とオフ状態との2つの設定位置の中間の角度を保持し、レンズマウント12の開口部よりフィルター16を着脱することが可能である。
【0035】
図3では、フィルターホルダー20に円形フィルター16が配置され、フィルターホルダー20を保持枠15内へ挿入し、フィルター16を装着する様子を示している。フィルター16及びフィルターホルダー20は円形であれ四角形であれ、いずれの形状でも構わない。また、フィルターホルダー20には、フィルター保持枠15と係合して枠内に保持するための係止部(凹部)21が設けられている。このように本発明の実施例1方式において、フィルターを着脱式とすることでレンズマウントの開口部より多種多様なフィルターを簡単に交換することが容易に可能となり、撮影のバリエーションが広がると共に、種々のフィルターによる撮像結果を比較、分析したり、画像分析などに用いることもできる。
【実施例0036】
前述の実施例1では、撮像素子12の上側、一箇所にフィルター切替機構13の回動軸14を配置し、フィルターオン状態又はオフ状態の2モードを得るような構成であるが、このフィルターの位置は撮像素子12の上下、左右のいずれの側にでも配置しうる。図4は、フィルター切替機構40が撮像素子12の上下側、二箇所にフィルターを配置し、それぞれを切り替える構成とした実施例3の態様を示す。図4において図1と同様の部品構成には同じ番号が付されている。図4の実施例3においては、撮像素子12の上側に回動軸14が配置されたフィルター16と撮像素子12の下側に回動軸30が配置されたフィルター32の2枚のフィルターを備えている。
【0037】
このような2枚のフィルター構成において、上側フィルター16をオン状態としたモード、及び下側フィルター32をオン状態としたモード及び両方のフィルターをオフ状態としたモードの合計3モードの画像を得ることができる。この場合、両方のフィルターが同時にオン状態となることはなく、必ずいずれか一方のフィルターのみをオン状態とする必要がある。
【0038】
図5は、実施例3を具現化したフィルター切替機構40の一例である。図5において、図4と同じ部品構成には同じ番号が付されている。撮像素子12の上側には、回動軸14を中心に回動する(上側)フィルター保持枠15が配置され、撮像素子12の下側には、回動軸30を中心に回動する(下側)フィルター保持枠31が配置されている。それぞれのフィルター保持枠15及び31には所定のフィルターが保持されている。上側フィルター保持枠15の中間部にはピン51がアーム52の溝53と係合するように配置されている。また、下側フィルター保持枠31の中間部にはピン54がアーム55の溝56と係合するように配置されている。アーム52及びアーム55は、上下フィルターの中間(図5において光軸A-A’に相当する位置)で回転軸57により結合され、その結合回転軸57を中心として回動しうるように配置されている。図5ではそれぞれのフィルター保持枠15及び31とは、入射光束(点線D及びE)の外側に配置され、フィルターオフ状態を示している。
【0039】
上側アーム52は、回動軸57を回動させる回動ピン58をF0位置からF1位置方向へ時計回りに回動させると、上側アーム52は矢印方向へ時計回りに移動し、上側ピン51と上側アーム溝53との係合により上側フィルター保持枠15は、上側回動軸14を中心に回動し、フィルターオフ状態位置から最終的に撮像素子12の前面と平行なフィルターオン状態位置へ移動する。点線は回動ピン58をF0からF1へ回動した場合の、上側アーム52及び上側フィルター保持枠15が移動してフィルターオン状態となった様子を示している。また、下側アーム55は、回動軸57を回動させる回動ピン58をF0位置からF2位置方向へ反時計回りに回動させると、下側アーム55は反時計回りに移動し、下側ピン54と下側アーム溝56との係合により下側フィルター保持枠31は、下側回動軸30を中心に回動し、フィルターオフ状態位置から最終的に撮像素子12の前面と平行なフィルターオン状態位置へ移動する。このような構成により、回動ピン58がF0の位置で上下フィルターは、それぞれフィルターオフ状態であり、F1方向へ移動し終わった位置で上側フィルターはオン状態となり、F2方向へ移動し終わった位置で下側フィルターがオン状態となる。従って、このようなフィルター切替機構40では、上側フィルター又は下側フィルターのいずれかのオン状態、及び両フィルターをオフ状態とした3つのモードを形成することができる。フィルター切替機構40の動力源としては、手動、電動いずれの方式でも可能であり、結合回転軸57又はフィルター回転軸14及び30、又はそれらを連動させて切替駆動させても良い。
【0040】
このような2枚フィルター切替機構40の応用例として、一方のフィルターにUVフィルター(紫外光カット)、他方のフィルターにNIR(近赤外光)カットフィルターを備えることで、紫外光カット像、赤外光カット像、及び両方のフィルターをオフ状態にして高感度で広帯域の可視光像の3モードを取得することができる。また、NDフィルターで光濃度の異なる2枚のフィルターを取り付けて、それぞれの光濃度の画像及びフィルターなしの画像を取得し、比較することもできる。また、一方のフィルターにP偏光フィルター、他方のフィルターにS偏光フィルターを取り付けることで、P/Sそれぞれの偏光波像及びフィルターオフ状態で偏光なしの画像を取得することもできる。その他、撮像目的に応じて各種フィルターの組み合わせで種々の撮影バリエーションが可能となる。
【0041】
上述の実施例1乃至実施例3においては、撮像素子の上側及び・又は下側にフィルターをそれぞれ配置した構成となっているが、フィルターを上下及び又は左右のいずれの側に配置しても構わないし、すべての側に配置しても構わない。図6はレンズマウント11の開口部61から内部を見た図であり、撮像装置の筐体1の内部に撮像素子12及びフィルター切替機構60に各フィルター上側62,下側63、左側64,右側65の4枚がすべてフィルターオフ状態で配置された様子を示している。上下、左右に4枚のフィルターを配置した場合、それぞれのフィルターのいずれかがオン状態となる各モードとすべてのフィルターをオフ状態とした合計5モードの画像を取得することが出来る。
【0042】
このようなマルチモードのフィルターの活用法としては、例えば、光濃度が異なるNDフィルターを複数枚配置し、それぞれの光濃度が異なる画像を取得したり、また、各波長帯域(R,G,B)毎のBPF(Band Pass Filter)フィルター及びNIR(Near Infra-Red) フィルターを配置し、帯域毎(色別)画像を取得し、撮像対象物の色彩分析や測定に用いるなど種々の活用が期待できる。
【実施例0043】
図7は、本発明による実施例4の態様を示す概略説明図であり、複数のフィルターを重ねて使用し得るフィルター切替機構70の説明図である。実施例1乃至3と実施例4との相違は、実施例1乃至3においてそれぞれのフィルター1枚ずつをオン・オフ状態で切り替えるだけの構成であるのに対し、実施例4では、複数のフィルターを重ねてオン状態として使用しうる点である。図1と同一部材構成には同一の番号が付してある。図7において、撮像素子12の上側に配置されたフィルター16の回動軸14と下側に配置されたフィルター73の回動軸71とはそれぞれのフィルターがオン状態となった場合、重ねてフィルターリング出来るようにずらして配置されている。つまり、下側のフィルター73の回動軸71は上側の回動軸14よりレンズマウント側へずれて配置され、上側フィルター16及び下側フィルター73がそれぞれ単独でオン状態として使用できるのに加えて、両方のフィルターを同時にオン状態とし、重ねてフィルターを使用することも出来る構成である。
【0044】
このようなフィルター構成では、上下それぞれのフィルターを単独でオン状態として使用したモード、両方のフィルターを重ねてオン状態で使用したモード、両方のフィルターをオフ状態にしたモードの合計4モードの異なる使用形態が可能となる。このように2枚のフィルターで4モードを撮像装置内で瞬時に切り替えて取得できるため、種々の波長帯域別の対象物像の分析ができる。例えば、NDフィルターの使用では数多くのフィルターを付け替えながら所望の映像を探すこととなるが、上側及び下側フィルターとして光濃度の異なるNDフィルターを配置した場合、それぞれの光濃度の2つの画像に加えて両方のフィルターを重ねた光濃度の画像及び両方のフィルターをオフ状態にした画像の4モードの画像が得られる。このようなフィルターを重ね使用する場合、重ね使用のNDフィルター光濃度は積算された光濃度となる。つまり、光濃度ND4のフィルターとND8のフィルターを使用した場合、その光濃度はND4xND8となり光濃度ND32に相当する光高濃度NDフィルター効果が得られる。
【0045】
実施例4でのフィルター切替機構70では撮像素子12の上下に配置した2つのフィルターを例示したが、上下のフィルターに加えて左右に配置し(図示せず)、4つのフィルターを重ね使用するように構成することも可能である。また、4つの違う種類のフィルターをそれぞれに組み合わせ数多くのバリエーションのフィルター効果を得ることも可能となる。
【0046】
以上述べたとおり、本発明では交換レンズのフランジバック長の空間にフィルターオン状態及びフィルターオフ状態を構成する跳ね上げ式フィルター切替機構を備えることで撮像装置が入射光軸に対し外周方向へ膨らむことなくコンパクトに構成できる。更に、本発明によるフィルターの回動軸が撮像素子側に設けられた場合、フィルター切替機構のフィルターを着脱式に構成することで、レンズマウントの開口部よりフィルターを交換することが容易となり、併せ、このようなフィルター切替機構を用いたフィルターの表裏両面のクリーニング、ならびに撮像素子前面のクリーニングが容易となる方法が提供できるなど本発明は数多くの利便性を有している。
【産業上の利用可能性】
【0047】
この発明は、小型化されたフィルター切替機構を有する撮像装置であり、かつフィルターの両面や撮像素子の前面のクリーニングを容易にする方法である。本発明により複数のフィルターを組み合わせて使用することが可能となり撮像のバリエーションが拡大し、監視用、教育用、医療用、各種測定・分析用、軍需用、医療用カメラなどの産業用撮像装置に限らず、民生用カメラなどにも広く利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 撮像装置筐体
10 レンズ
11 レンズマウント
12 撮像素子
13、40、60,70 フィルター切替機構
14、30、71 回動軸
15、31、72 フィルター取付枠
16、32、62、63、64、65、73 フィルター
17 撮像素子支持体
18、19 フィルター制止部材
20 フィルターホルダー
21 フィルター係止部
61 レンズマウント開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7