(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144147
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】コンベヤベルト
(51)【国際特許分類】
B65G 15/38 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
B65G15/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045033
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】大倉 達也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 邦俊
【テーマコード(参考)】
3F024
【Fターム(参考)】
3F024AA07
3F024CA04
3F024CA09
3F024CB03
3F024CB08
3F024CB09
3F024CB13
(57)【要約】
【課題】難燃剤をより有効に活用してコンベヤベルトの難燃性を長期に渡って維持できるコンベヤベルトを提供する。
【解決手段】上カバーゴム2と下カバーゴム3との間にコートゴム6により被覆された心体層4が配置され、上カバーゴム2および下カバーゴム3がコートゴム6を介して心体層4と接合されていて、コートゴム6のうち、少なくとも上カバーゴム2と心体層4との間に配置されている上側コートゴム6aに難燃剤を配合することで、この上側コートゴム6aを上カバーゴム2よりも酸素指数が大きい難燃性が高いゴムにする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上カバーゴムと、下カバーゴムと、前記上カバーゴムと前記下カバーゴムとの間に配置されてコートゴムにより被覆された心体層とを有し、前記上カバーゴムおよび前記下カバーゴムが前記コートゴムを介して前記心体層と接合されていて、難燃剤が配合されているゴムが少なくとも一部に使用されているコンベヤベルトにおいて、
前記コートゴムのうち、少なくとも前記上カバーゴムと前記心体層との間に配置されている上側コートゴムが前記上カバーゴムよりも高い難燃性を有することを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項2】
前記コートゴムのうち、前記下カバーゴムと前記心体層との間に配置されている下側コートゴムが前記下カバーゴムよりも高い難燃性を有する請求項1に記載のコンベヤベルト。
【請求項3】
前記心体層が複数の心体を積層して構成されていて、前記心体層のうち、最も上側の前記心体の上下両面が前記上カバーゴムよりも高い難燃性を有する前記コートゴムで覆われていて、最も下側の前記心体の上下両面が前記下カバーゴムよりも高い難燃性を有する前記コートゴムで覆われている請求項1または2に記載のコンベヤベルト。
【請求項4】
前記心体層が複数の心体を積層して構成されていて、それぞれの前記心体の上下両面が前記コートゴムで覆われていて、最も上側および最も下側の前記コートゴムがその他の前記コートゴムよりも高い難燃性を有する請求項1~3のいずれかに記載のコンベヤベルト。
【請求項5】
前記上カバーゴムおよび前記下カバーゴムの酸素指数が22~26、前記上カバーゴムに隣接する前記コートゴムの酸素指数が前記上カバーゴムの酸素指数よりも5以上高く、前記下カバーゴムに隣接する前記コートゴムの酸素指数が前記下カバーゴムの酸素指数よりも5以上高い請求項1~4のいずれかに記載のコンベヤベルト。
【請求項6】
前記難燃剤が前記コートゴムにのみ配合されている請求項1~5のいずれかに記載のコンベヤベルト。
【請求項7】
前記難燃剤が少なくとも前記コートゴムおよび前記上カバーゴムに配合されている請求項1~5のいずれかに記載のコンベヤベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトに関し、さらに詳しくは、難燃剤をより有効に活用してコンベヤベルトの難燃性を長期に渡って維持できるコンベヤベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鉱石や石灰石等の鉱物資源をはじめとして様々な搬送物がコンベヤベルトによって搬送される。コンベヤベルトのカバーゴム、特に搬送物が載置される上カバーゴムは経時的に最も摩耗する部位になる。
【0003】
コンベヤベルトの使用条件によっては、難燃性(自己消火性)を有するコンベヤベルトが用いられる。難燃性を有するコンベヤベルトでは、一般的にカバーゴムに難燃剤が配合されている(例えば、特許文献1参照)。カバーゴムに配合されている難燃剤は、カバーゴムの摩耗に伴って減少するため、経時的にコンベヤベルトの難燃性は低下する。そこで、カバーゴムが摩耗した場合でも難燃性を確保するために、難燃剤の配合量を増やすと、難燃剤は他の材料に比して高価なので材料コストが大幅に上昇する。さらには、難燃剤を配合することに起因してカバーゴムの耐摩耗性が低下するという問題も生じる。それ故、難燃剤を有効に活用してコンベヤベルトの難燃性を長期に渡って維持するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、難燃剤をより有効に活用してコンベヤベルトの難燃性を長期に渡って維持できるコンベヤベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明のコンベヤベルトは、上カバーゴムと、下カバーゴムと、前記上カバーゴムと前記下カバーゴムとの間に配置されてコートゴムにより被覆された心体層とを有し、前記上カバーゴムおよび前記下カバーゴムが前記コートゴムを介して前記心体層と接合されていて、難燃剤が配合されているゴムが少なくとも一部に使用されているコンベヤベルトにおいて、前記コートゴムのうち、少なくとも前記上カバーゴムと前記心体層との間に配置されている上側コートゴムが前記上カバーゴムよりも高い難燃性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コートゴムのうち、少なくとも上カバーゴムと心体層との間に配置されている上側コートゴムが上カバーゴムよりも高い難燃性を有する。即ち、難燃剤が上カバーゴムに比して上側コートゴムに偏在して配合されている。そのため、難燃剤がカバーゴムにのみ配合された従来の難燃性コンベヤベルトに比して、上カバーゴムの摩耗に伴ってコンベヤベルトの難燃性低下を抑制するには有利になる。上側コートゴムに配合されている難燃剤は、上カバーゴムに摩耗に伴って失われることがないのでコンベヤベルトの難燃性を長期に渡って維持するには有利になる。このように難燃剤を無駄なく有効に活用して難燃性を確保できるので、難燃性の配合量を抑制することができ、難燃剤の配合に起因する上カバーゴムの耐摩耗性低下を回避するにも有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のコンベヤベルトの使用状態を側面視で例示する説明図である。
【
図3】
図1のコンベヤベルトを横断面視で拡大して例示する説明図である。
【
図4】コンベヤベルトの別の実施形態を横断面視で拡大して例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のコンベヤベルトを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0010】
図1、
図2に例示するように、本発明のコンベヤベルト1はコンベヤライン7に装着されて使用される。コンベヤベルト1は、上カバーゴム2と、下カバーゴム3と、両者の間に配置された心体層4とが加硫接着によって一体化されて構成されている。
【0011】
コンベヤライン7では、コンベヤベルト1は、駆動プーリ8aと従動プーリ8bの間に架け渡されて所定のテンションで張設されている。コンベヤベルト1は、プーリ8a、8b間では多数の支持ローラ8cによって支持される。図中の矢印Wはコンベヤベルト1の幅方向、矢印Hはコンベヤベルト1の厚さ方向を示している。
【0012】
コンベヤベルト1には搬送物Cが投入されて、搬送物Cはコンベヤベルト1によって搬送先に搬送される。具体的には、コンベヤライン7のキャリア側(搬送物Cが載置されて走行する側)では、コンベヤベルト1の下カバーゴム3が支持ローラ8cによって支持されることで、コンベヤベルト1は幅方向Wの中央部が下方に突出したトラフ状になる。搬送物Cは上カバーゴム2の上面に投入、載置されて搬送される。コンベヤライン7のリターン側では、コンベヤベルト1の上カバーゴム2が支持ローラ8cによってフラットな状態で支持される。
【0013】
搬送物Cとしては、コークス、焼結鉱、表土、鉱石等を例示できる。高温の搬送物Cを搬送する場合や周囲に火気が存在する使用環境などの場合には、コンベヤベルト1に対してより高い難燃性が要求される。そのため、このコンベヤベルト1は難燃仕様になっている。
【0014】
コンベヤベルト1の構造を詳述すると、
図3に例示するように、上カバーゴム2と、下カバーゴム3と、上カバーゴム2と下カバーゴム3との間に配置された心体層4(5a、5b、5c)と、心体層4を被覆するコートゴム6とを有している。コンベヤベルト1には必要に応じて他の部材が備わる。
【0015】
上カバーゴム2は、公知の上カバーゴムに使用されているゴム種を用いることができる。上カバーゴム2には、一般的に耐摩耗性や耐カット性に優れたゴム種が用いられる。上カバーゴム2の層厚は例えば3mm~25mmである。
【0016】
下カバーゴム3は、公知の下カバーゴムに使用されているゴム種を用いることができる。上カバーゴム2と下カバーゴム3のゴム種は異ならせることも、同じにすることもできる。下カバーゴム3の層厚は例えば1.5mm~10mmである。
【0017】
心体層4は、コンベヤベルト1を張設するためのテンションを負担する部材である。心体層4は、コンベヤベルト1の概ね全幅に渡って埋設されている。この実施形態では、心体層4は3層の帯状の心体5(5a、5b、5c)を積層して構成されている。心体5の数はコンベヤベルト1に対する要求性能によって適宜決定され、例えば1~8層程度である。心体5は繊維によって形成された繊維補強部材であり、例えば帆布等が使用される。心体5の層厚は例えば2mm~14mmである。尚、ベルト長手方向に延在するスチールコードをベルト幅方向に多数本並列させて構成された心体5(心体層4)を用いることもできる。
【0018】
心体層4はコートゴム6により被覆されている。上カバーゴム2および下カバーゴム3は、コートゴム6を介して心体層4と接合されて一体化されている。心体層4の上下両面だけでなく左右側面もコートゴム6により被覆されて心体層4の全表面がコートゴム6により被覆されていることが好ましい。
【0019】
コートゴム6は接着力に優れたゴムであり、公知のコンベヤベルトに使用されている公知のコートゴム(接着ゴム)を用いることができる。それぞれのコートゴム6a、6b、6cの層厚は例えば0.2mm~1.0mmであり、上カバーゴム2および下カバーゴム3に比して薄肉である。
【0020】
ただし、このコンベヤベルト1では、難燃性を確保するために少なくとも一部のコートゴム6に難燃剤が配合されている。難燃剤としては、有機難燃剤(ハロゲン系、リン系、複合型など)、無機系難燃剤(金属水酸化物、アンチモン系など)の公知の種々の難燃剤を使用することができる。
【0021】
この実施形態では、上側心体5aは上側コートゴム6aと中側コートゴム6cに被覆され、下側心体5bは下側コートゴム6bと中側コートゴム6cに被覆され、中側心体5cは中側コートゴム6cと中側コートゴム6cに被覆されている。したがって、心体層4の上面、下面はそれぞれ、上側コートゴム6a、下側コートゴム6bにより被覆されている。それぞれの心体5a、5b、5cは隣接して積層されているコートゴム6を介して接合されている。
【0022】
この実施形態では難燃剤が、上側心体5aの上面を覆う上側コートゴム6aおよび下側心体5bの下面を覆う下側コートゴム6bに配合されている。中側心体5cの上面、下面を覆う中側コートゴム6cには難燃剤が配合されていない。そして、上カバーゴム2と心体層4との間に配置されている上側コートゴム6aは上カバーゴム2よりも高い難燃性を有し、下カバーゴム3と心体層4との間に配置されている下側コートゴム6bは下カバーゴム3よりも高い難燃性を有している。上側コートゴム6aは下側コートゴム6bよりも難燃性を高くすることも、同じにすることもできる。尚、上側コートゴム6aは上カバーゴム2よりも高い難燃性を有しているとは、同じサイズ(同じ層厚)で比較した場合、上側コートゴム6aは上カバーゴム2よりも高い難燃性を有しているという意味である。同様に、下側コートゴム6bは下カバーゴム3よりも高い難燃性を有しているとは、同じサイズ(同じ層厚)で比較した場合、下側コートゴム6bは下カバーゴム3よりも高い難燃性を有しているという意味である。以下、本発明では一方は他方よりも高い難燃性を有しているとは、同じサイズ(同じ層厚)で比較した場合での難燃性の優劣を意味している。
【0023】
難燃性のレベル(優劣)はJIS K 7201-2に規定されている試験に基づいて測定される酸素指数の値で評価することができる。酸素指数の数値が大きい程、難燃性に優れていることを意味する。したがって、上カバーゴム2と心体層4との間に配置されている上側コートゴム6aは、上カバーゴム2よりも酸素指数が大きく、下カバーゴム3と心体層4との間に配置されている下側コートゴム6bは下カバーゴム3よりも酸素指数が大きくなっている。
【0024】
コンベヤベルト1では、上カバーゴム2に搬送物Cが投入、載置されるので、上カバーゴム2側の難燃性を優先的に確保することが好ましい。そこで、このコンベヤベルト1では、コートゴム6のうち、少なくとも上カバーゴム2と心体層4との間に配置されている上側コートゴム6aが上カバーゴム2よりも高い難燃性を有していればよい。したがって、難燃剤は、コートゴム6のうち、少なくとも上カバーゴム2と心体層4との間に配置されている上側コートゴム6aに配合されていればよい。換言すると、上カバーゴム2と心体層4との間に配置されている上側コートゴム6aが、上カバーゴム2よりも酸素指数が大きければよい。
【0025】
この上側コートゴム6aの酸素指数が上カバーゴム2の酸素指数よりも大きければ、上カバーゴム2に難燃剤を配合することもできる。したがって、難燃剤を少なくともコートゴム6および上カバーゴム2に配合されている仕様にしてもよい。しかしながら、難燃剤は高価な材料であり、配合することでゴムの耐摩耗性が低下するリスクもある。そのため、材料コスト低減および耐摩耗性の観点からは、難燃剤はコートゴム6のみに配合して、上カバーゴム2、下カバーゴム3に配合しないことが好ましい。
【0026】
上述したように、このコンベヤベルト1では、上側コートゴム6aと上カバーゴム2とでは、難燃剤が上側コートゴム6aに偏在して配合されている。上側コートゴム6aに配合されている難燃剤は、上カバーゴム2の摩耗に伴って失われることがないので、難燃剤がカバーゴムにのみ配合された従来の難燃性コンベヤベルトと比較して、コンベヤベルト1の経時的な難燃性低下を抑制するには有利になっている。その結果、コンベヤベルト1の難燃性を長期に渡って維持することが可能になる。
【0027】
このように難燃剤をコートゴム6(少なくとも上側コートゴム6a)に配合することで、難燃剤を無駄なく有効に活用して難燃性を確保できる。それ故、上カバーゴム2に対する難燃剤の配合量をゼロ或いは少量に抑制することが可能になり、材料コストの高騰を回避するとともに、難燃剤を配合することに起因する上カバーゴム2の耐摩耗性低下を回避するにも有利になる。
【0028】
この実施形態では、下カバーゴム3と心体層4との間に配置されている下側コートゴム6bが下カバーゴム3よりも高い難燃性を有しているので、下側心体5bの燃焼を抑制するのに有利になる。そして、下側コートゴム6bの難燃性は、下カバーゴム3の摩耗によって損なわれることがない。下カバーゴム3に難燃剤を配合することもできるが、配合することで材料コストが上昇する。尚、中側コートゴム6cに難燃剤を配合することもできるが、火気はコンベヤベルト1の外部に存在するので、上側コートゴム6a、下側コートゴム6bよりも難燃性を向上させる重要性(優先度)は低くなる。
【0029】
上カバーゴム2および下カバーゴム3の酸素指数は例えば22~26である。上カバーゴム2に隣接する上側コートゴム6a、下カバーゴム3に隣接する下側コートゴム6bに相応の難燃性を発揮させるには、それぞれの酸素指数は、上カバーゴム2,下カバーゴム3よりもある程度大きいことが好ましい。そこで、上側コートゴム6aの酸素指数は、上カバーゴム2の酸素指数よりも5以上高くし、下側コートゴム6bの酸素指数は、下カバーゴム3の酸素指数よりも5以上高くするとよい。酸素指数を大きくするにはより多量の難燃剤を配合する必要があり、材料コストが高騰する。そのため、上側コートゴム6a、下側コートゴム6bの酸素指数はそれぞれ、上カバーゴム2、下カバーゴム3の酸素指数よりも5~10程度高くするとよい。難燃剤の配合量は、この酸素指数を指標として酸素指数の値が所望の数値範囲になるように決定すればよい。
【0030】
図4に例示するコンベヤベルト1の実施形態は、先の実施形態とコートゴム6の仕様のみが異なる。この実施形態では、難燃剤が、上側心体5aの上面、下面を覆う上側コートゴム6a、下側心体5bの上面、下面を覆う下側コートゴム6bに配合されている。中側心体5cの上面、下面を覆う中側コートゴム6cには難燃剤が配合されていない。そして、それぞれの上側コートゴム6aは上カバーゴム2よりも高い難燃性を有し、それぞれの下側コートゴム6bは下カバーゴム3よりも高い難燃性を有している。
【0031】
この実施形態では、上側心体5aの上下両面が難燃性の高いコートゴム6aで覆われているので、上側心体5aの上面のみが難燃性の高いコートゴム6aで覆われている場合に比して、上側心体5aの燃焼を抑制するのに有利になる。同様に、下側心体5bの上下両面が難燃性の高いコートゴム6bで覆われているので、下側心体5bの下面のみが難燃性の高いコートゴム6bで覆われている場合に比して、下側心体5bの燃焼を抑制するのに有利になる。
【0032】
先の実施形態で説明した種々のアレンジは、この実施形態でも適用することができる。
【0033】
コンベヤベルト1の難燃性は、コンベヤベルト1の表面に近い側に配置されたゴムの難燃性がより大きく影響する。そのため、心体層4が複数の心体5a、5b、5cを積層して構成されている場合、
図3に例示した実施形態のように、それぞれの心体5a、5b、5cの上下両面を覆うコートゴム6のうち、最も上側のコートゴム6a、最も下側のコートゴム6bがその他のコートゴム6cよりも高い難燃性を有する仕様にするとよい。この仕様にすることで、難燃剤の配合量を最小限にしながらも有効な難燃性を確保できる。
【0034】
そして、心体層4が複数の心体5a、5b、5cを積層して構成されている場合、
図4に例示した実施形態のようにすることで、さらに優れた難燃性を確保できる。即ち、それぞれの心体5a、5b、5cの上下両面を覆うコートゴム6のうち、最も上側の心体5aの上下両面が上カバーゴム2よりも高い難燃性を有するコートゴム6aで覆われていて、最も下側の心体5bの上下両面が下カバーゴム3よりも高い難燃性を有するコートゴム6bで覆われている仕様にすることで、難燃剤の配合量を抑制しながらも、より難燃性を向上させることができる。
【実施例0035】
表1に示すように、コンベヤベルトの試験サンプルとして、
図3の積層構造の実施例1および従来例1~3、
図4の積層構造の実施例2を作製した。これら5種類の試験サンプルに対して、JIS K 6324に規定されている難燃性試験を行って、難燃性の等級3級を具備するかを確認し、その結果を表1に示す。
【0036】
表1中のコートゴムの第1層~第6は、上カバーゴム側に近い順に番号を付したものであり、上カバーゴムに最も近い位置のコートゴムが第1層を意味する。
図3の積層構造ではコートゴムが4層なので第5層、第6層は存在していない。また、表1中の酸素指数はJIS K 7201-2に規定されている試験に基づいて測定された値である。酸素指数が24.5の上カバーゴムおよび下カバーは同じゴムであり、難燃剤が配合されている。酸素指数が33のコートゴムはすべて同じゴムであり、難燃剤が配合されている。酸素指数が21のコートゴムはすべて同じゴムであり、難燃剤が配合されていない。また、それぞれの試験サンプルでは心体として同じ仕様の帆布を使用した。従来例1、2、3は、上カバーゴムの層厚が異なるだけである。即ち、従来例1、2はそれぞれ、従来例3の上カバーゴムが2mm、1mm摩耗した状態を再現したものと見做すことができる。
【0037】
【0038】
表1の結果から、実施例1、2、従来例2、3は、JIS K 6324に規定されている3級の難燃性を有している。従来例1は、3級の難燃性を具備せず、難燃性が劣っている。従来例1~3の結果からは、上カバーゴムが摩耗することで難燃性が低下することが分かる。また、上カバーゴムの層厚が同じである実施例1、2、従来例1の結果からは、上カバーゴムが薄くてもコートゴムの難燃性が高ければ、コンベヤベルトの難燃性を確保できることが分かる。