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特開2022-144161特許活用支援装置、特許活用支援方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144161
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】特許活用支援装置、特許活用支援方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/18 20120101AFI20220926BHJP
【FI】
G06Q50/18 310
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045055
(22)【出願日】2021-03-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 隆勝
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC33
(57)【要約】
【課題】 特許の社会的な有効活用を図ることができる特許活用支援装置を提供する。
【解決手段】 活用対象となる対象特許の識別情報が入力される入力部2と、入力された識別情報に基づき特許情報データベース20を検索し、対象特許の特許分類を示す特許分類情報を取得する分類情報取得部3と、取得した特許分類情報に基づき特許情報データベース20を検索し、対象特許との関連性が高い複数の特許文献を抽出する文献抽出部4と、抽出された複数の特許文献の保有者または発明者の情報に基づき、保有者または発明者の順位付けを行うことにより、対象特許のニーズが高い保有者または発明者に対する活用情報を生成する活用情報生成部5と、生成された活用情報を出力する出力部6とを備える特許活用支援装置1である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の特許情報が格納された特許情報データベースを利用する特許活用支援装置であって、
活用対象となる対象特許の識別情報が入力される入力部と、
入力された識別情報に基づき前記特許情報データベースを検索し、対象特許の特許分類を示す特許分類情報を取得する分類情報取得部と、
取得した特許分類情報に基づき前記特許情報データベースを検索し、対象特許との関連性が高い複数の特許文献を抽出する文献抽出部と、
抽出された複数の特許文献の保有者または発明者の情報に基づき、保有者または発明者の順位付けを行うことにより、対象特許のニーズが高い保有者または発明者に対する活用情報を生成する活用情報生成部と、
生成された活用情報を出力する出力部とを備える特許活用支援装置。
【請求項2】
前記入力部は、対象特許の複数の活用先候補が更に入力され、
前記文献抽出部は、入力された活用先候補が保有者または発明者である特許文献の中から特許文献を抽出する請求項1に記載の特許活用支援装置。
【請求項3】
前記活用情報生成部は、前記文献抽出部により抽出された特許文献に付随する情報から当該特許文献の特許重要度を取得して、特許分類情報の関連度を示す技術関連度および特許重要度を用いて対象特許との特許分類の合致指標を算出し、当該合致指標に基づき保有者または発明者の順位付けを行う請求項1または2に記載の特許活用支援装置。
【請求項4】
前記特許重要度は、当該特許の共有者の有無、権利化の有無および経時劣化の程度に基づき算出される請求項3に記載の特許活用支援装置。
【請求項5】
前記活用情報には、技術分野の合致指標および発明者の合致指標に基づき決定した対象特許との関連性が高い技術分野および発明者に関する情報が含まれる請求項1から4のいずれかに記載の特許活用支援装置。
【請求項6】
前記活用情報には、複数の対象特許毎に対象特許のニーズが高い保有者または発明者を示す情報が含まれる請求項1から5のいずれかに記載の特許活用支援装置。
【請求項7】
前記活用情報には、特定の保有者または発明者について、ニーズが高い複数の対象特許を示す情報が含まれる請求項1から5のいずれかに記載の特許活用支援装置。
【請求項8】
コンピュータが、複数の特許情報が格納された特許情報データベースを利用して実行する特許活用支援方法であって、
活用対象となる対象特許の識別情報が入力される入力ステップと、
入力された識別情報に基づき前記特許情報データベースを検索し、対象特許の特許分類を示す特許分類情報を取得する分類情報取得ステップと、
取得した特許分類情報に基づき前記特許情報データベースを検索し、対象特許との関連性が高い複数の特許文献を抽出する文献抽出ステップと、
抽出された複数の特許文献の保有者または発明者の情報に基づき、保有者または発明者の順位付けを行うことにより、対象特許のニーズが高い保有者または発明者に対する活用情報を生成する活用情報生成ステップと、
生成された活用情報を出力する出力ステップとを備える特許活用支援方法。
【請求項9】
請求項8に記載の特許活用支援方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許活用支援装置、特許活用支援方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
大学等の研究機関は、研究開発の成果として特許を取得しても一般には自ら実施することが無い、いわゆる特許不実施機関であるため、保有する特許を、企業への譲渡やライセンシングなどの方法により社会実装へと繋げていく必要がある。そこで、各研究機関は、保有特許の活用推進のために、技術シーズ集を作成して広く企業に配布することや、産学連携推進の専門家(コーディネーター)により、研究シーズと企業ニーズとのマッチングを推進すること等を行っている。
【0003】
技術シーズ集の作成は、広範な企業に対してさまざまなシーズを含んだ同一の資料を配布できるため、一企業に費やす広報作業量としては効率的である反面、受け取った企業にとっては、十分に企業ニーズにターゲットを絞られた内容となっていない。そのため、たとえその企業にとって価値ある特許が技術シーズ集に掲載されていたとしても、受け取った企業の受取人は、その価値に気づかない、あるいは、企業内での該当する開発者がわからず情報を届けられないなど、広報がしっかりと機能しないリスクが存在する。
【0004】
また、シーズとニーズとのマッチングは、コーディネーターにより推進されるため、上記のようなリスクが低く有効な広報が実現できる反面、コーディネーターは、さまざまな企業について、個別企業ニーズを調査し、それに適した特許を抽出し、技術分野の合致点等から企業開発者と研究機関研究者との紐づけを行う必要があり、調査に大量の時間と労力を負担することとなる。さらに多くの有能なコーディネーターを獲得するのには限界があり、広報範囲を拡大するという点において課題がある。
【0005】
このため、公開された特許情報を利用してマッチング先企業を効率よく選定することが、従来から検討されている。例えば、特許文献1に開示された情報処理装置は、複数の特許データを所定技術分野毎に分類した各クラスに属する特許データの属性情報を利用して、クラス毎にクラス毎評価値を算出し、企業毎のクラス毎評価値の分布傾向から得られる情報を用いて、提携先を選定するための情報を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】再公表特許第2008/075744号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の情報処理装置は、自社および複数の他社がそれぞれ保有する複数の特許データに基づいて、自社と各他社との技術補完度等を算出することにより、企業間の補完関係を高める提携先を選定可能にするものであり、特許不実施機関等が保有する特許について、個別に活用先を検討する用途に適したものではない。
【0008】
そこで、本発明は、特許の社会的な有効活用を図ることができる特許活用支援装置、特許活用支援方法およびプログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の前記目的は、複数の特許情報が格納された特許情報データベースを利用する特許活用支援装置であって、活用対象となる対象特許の識別情報が入力される入力部と、入力された識別情報に基づき前記特許情報データベースを検索し、対象特許の特許分類を示す特許分類情報を取得する分類情報取得部と、取得した特許分類情報に基づき前記特許情報データベースを検索し、対象特許との関連性が高い複数の特許文献を抽出する文献抽出部と、抽出された複数の特許文献の保有者または発明者の情報に基づき、保有者または発明者の順位付けを行うことにより、対象特許のニーズが高い保有者または発明者に対する活用情報を生成する活用情報生成部と、生成された活用情報を出力する出力部とを備える特許活用支援装置により達成される。
【0010】
この特許活用支援装置において、前記入力部は、対象特許の複数の活用先候補が更に入力されてもよく、前記文献抽出部は、入力された活用先候補が保有者または発明者である特許文献の中から特許文献を抽出することができる。
【0011】
前記活用情報生成部は、前記文献抽出部により抽出された特許文献に付随する情報から当該特許文献の特許重要度を取得して、特許分類情報の関連度を示す技術関連度および特許重要度を用いて対象特許との特許分類の合致指標を算出し、当該合致指標に基づき保有者または発明者の順位付けを行うことが好ましい。前記特許重要度は、当該特許の共有者の有無、権利化の有無および経時劣化の程度に基づき算出されることが好ましい。
【0012】
前記活用情報には、技術分野の合致指標および発明者の合致指標に基づき決定した対象特許との関連性が高い技術分野および発明者に関する情報が含まれることが好ましい。前記活用情報には、複数の対象特許毎に対象特許のニーズが高い保有者または発明者を示す情報が含まれてもよく、あるいは、特定の保有者または発明者についてニーズが高い複数の対象特許を示す情報が含まれてもよい。
【0013】
また、本発明は、コンピュータが、複数の特許情報が格納された特許情報データベースを利用して実行する特許活用支援方法であって、活用対象となる対象特許の識別情報が入力される入力ステップと、入力された識別情報に基づき前記特許情報データベースを検索し、対象特許の特許分類を示す特許分類情報を取得する分類情報取得ステップと、取得した特許分類情報に基づき前記特許情報データベースを検索し、対象特許との関連性が高い複数の特許文献を抽出する文献抽出ステップと、抽出された複数の特許文献の保有者または発明者の情報に基づき、保有者または発明者の順位付けを行うことにより、対象特許のニーズが高い保有者または発明者に対する活用情報を生成する活用情報生成ステップと、生成された活用情報を出力する出力ステップとを備える特許活用支援方法により達成される。
【0014】
また、本発明は、上記の特許活用支援方法をコンピュータに実行させるためのプログラムにより達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特許の社会的な有効活用を図ることができる特許活用支援装置、特許活用支援方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る特許活用支援装置の機能を示すブロック図である。
図2】特許活用支援方法の手順を示すフローチャートである。
図3】活用情報の一例を示す図である。
図4】活用情報の他の例を示す図である。
図5】活用情報の更に他の例を示す図である。
図6】活用情報の更に他の例を示す図である。
図7】活用情報の更に他の例を示す図である。
図8】活用情報の更に他の例を示す図である。
図9】活用情報の更に他の例を示す図である。
図10】活用情報の更に他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る特許活用支援装置の機能を示すブロック図である。図1に示すように、特許活用支援装置1は、入力部2、分類情報取得部3、文献抽出部4、活用情報生成部5、および出力部6を備えており、サーバ等のコンピュータにより構成することができる。特許活用支援装置1は、インターネット等のネットワーク10を介して、特許情報データベース20に接続されている。
【0018】
入力部2は、キーボードやマウス等からなり、利用者の操作により各種情報を入力する。分類情報取得部3、文献抽出部4および活用情報生成部5は、メモリに格納されたプログラムやデータに基づき、CPUにより実行される。出力部6は、ディスプレイやプリンタ等からなり、出力情報の画面表示や印刷等を行う。入力部2は、ネットワーク10を介して接続されたスマートフォンやPC等の端末30から受信した情報を入力してもよく、出力部6は、端末30に向けて情報出力を行ってもよい。
【0019】
特許情報データベース20は、特許情報を格納するデータベースである。特許情報は、複数の特許を識別する識別情報(例えば特許番号や公開番号等)に対応付けられた、特許分類(インデックス)、出願日、保有者(出願人や特許権者)、発明者、権利状況(権利化の有無)等の情報を含んでいる。特許情報データベース20は、日本や外国の特許庁が公開する情報を利用して作成することができ、定期的な更新により特許庁から新たに発行された特許情報を追加することで、最新の状態を維持することが好ましい。特許情報データベース20は、特許情報の提供サービスを行う民間事業者等のデータベースであってもよい。特許情報データベース20は、本実施形態のように特許活用支援装置1の外部装置に設けてもよく、あるいは、特許活用支援装置1の内部に設けてもよい。
【0020】
次に、上記の構成を備える特許活用支援装置1の作動を説明する。図2は、特許活用支援装置1が実行する特許活用支援方法の手順を示すフローチャートである。この手順は、特許活用支援装置1のメモリに格納されたプログラムにより実行される。
【0021】
まず、利用者は、特許不実施機関等が保有する未利用特許等のように、活用を希望する対象特許の識別情報を入力部2から入力すると共に、活用先となり得る複数の活用先候補を入力部2から入力する(ステップS1)。
【0022】
対象特許は、権利化された特許でもよく、あるいは、審査が完了していない出願中の特許でもよい。識別情報の入力は、上述したように、特許活用支援装置1に接続された端末30からネットワーク10を介して行ってもよい。また、活用先候補の入力は、活用先として適当な企業名や個人名を必要な数だけ個別に入力してもよく、あるいは、企業情報を格納する外部のデータベース(例えば、企業情報データベースや、全省庁統一資格の有資格者名簿などの入札参加資格取得者データベース)を利用して企業規模や地域等により絞り込みを行い、適当な数の活用先候補を抽出してもよい。
【0023】
分類情報取得部3は、入力部2から入力された識別情報に基づき特許情報データベース20を検索し、対象特許の特許文献(例えば特許公報や公開公報等)に記載される特許分類を示す特許分類情報を取得する(ステップS2)。特許分類は、特許の技術分野を示すものとして各国の特許庁により付与され、特許の審査や調査等において利用される指標である。具体的な特許分類としては、IPC、Fターム、FI、テーマコード等を例示することができ、上位階層など特許分類の一部のみを指標として用いてもよい。分類情報取得部3は、対象特許に対して特許分類が複数付与されている場合には、すべての特許分類情報を取得する。
【0024】
文献抽出部4は、入力部2から入力された活用先候補情報に基づき特許情報データベース20を検索し、保有者(出願人、権利者)または発明者を検索キーとして、活用先候補に関連する特許文献の絞り込みを行う。更に、文献抽出部4は、分類情報取得部3が取得した特許分類情報に基づき、絞り込みが行われた複数の特許文献から、特許分類を検索キーとして、対象特許と技術分野の関連性が高い特許文献を抽出する(ステップS3)。
【0025】
例えば、対象特許の特許分類情報としてA,B,C,DおよびEの5つが設定されている場合、活用先候補の1つである企業aが保有者である特許文献に付与されている特許分類が、対象特許の特許分類情報と共通する特許文献を抽出する。特許分類が共通する特許文献としては、例えば、特許分類がAからEの少なくともいずれかに一致するもの(検索式:A+B+C+D+E)が挙げられるが、特許分類がAからEの全てに一致するもの(検索式:A*B*C*D*E)であってもよい。また、特許分類が、対象特許との関連性を考慮した順序で記載されている場合には、この関連性を考慮してもよい。例えば、特許分類Aが、技術分野として最も適合する筆頭IPCや筆頭FI等の場合には、特許分類に少なくともAを含む特許文献を抽出することができる(検索式:A、検索式:A*B、検索式:A*(B+C+D+E)など)。
【0026】
活用情報生成部5は、抽出された複数の特許文献の保有者または発明者の情報に基づき、保有者または発明者の順位付けを行うことにより、対象特許のニーズが高い保有者または発明者の情報を含む活用情報を生成する(ステップS4)。より具体的には、活用情報生成部5は、抽出された特許文献について、保有者または発明者ごとに、特許分類情報の関連度を示す技術関連度、および、特許の重要性を示す特許重要度を用いて対象特許との合致指標を算出し、当該合致指標に基づき保有者または発明者の順位付けを行う。
【0027】
技術関連度は、対象特許の特許分類が、技術分野の関連性が高い順に複数示されている場合には、記載順位の重み付けを行った上で算出することができる。例えば、特許分類の記載数がNである場合、1番目からN番目の特許分類の各重みを、1,1/√2,1/√3,・・・,1/√Nとして、すべての重みの合計が1.0となるように基準化すると、j番目に記載された特許分類の重みjは、下記の数式1で求められる。
【0028】
【数1】
【0029】
抽出された特許文献(抽出文献)と対象特許との技術関連度は、抽出文献の特許分類が対象特許の特許分類に一致するか否かを判別し、一致する特許分類に上記の重み付けを行うことにより、算出することができる。すなわち、mk個の特許分類jk(jk=1,・・・,mk)を有する抽出文献ikについて、対象特許と抽出文献ikとの技術関連度ikは、下記の数式2で求められる。数式2において、一致度ikは、対象特許と抽出文献ikとの特許分類が一致する場合を1とし、特許分類が一致しない場合を0とする。
【0030】
【数2】
【0031】
一例として、抽出文献の特許分類が4つ記載されており、記載順位が3番目の特許分類が対象特許の特許分類と一致する場合、特許分類の重みが0.21となり、一致度が1となるため、技術関連度は0.21(=0.21×1)となる。また、抽出文献の特許分類が2つ記載されており、いずれも対象特許の特許分類と一致する場合、特許分類の重みおよび一致度はいずれも1となるため、技術関連度は1(=1×1)となる。
【0032】
特許分類の重みは、筆頭IPCや筆頭FI等のように技術分野の適合性が高い1番目の特許分類の重みを大きくして、2番目以降の特許分類の重みをこれよりも小さい同じ重みに設定してもよい。また、特許分類の記載順序が技術分野の適合性と無関係である場合には、各特許分類を同じ重みとして重み付けを行わないこともできる。
【0033】
また、抽出文献ikの特許重要度は、下記の数式3で求められる。数式3において、企業関与指標ikは、抽出文献ikの保有者が複数存在する場合に保有者の記載順位から求めることができ、例えば、上記の数式1と同様の重み付けを行うことにより、抽出文献ikへの関与の重みとして算出する。権利化指標ikは、抽出文献ikの審査経過情報から求めることができ、例えば、審査前または特許査定の場合を1.0、取り下げまたは放棄の場合を0.5、拒絶査定に対して審判請求しない場合を0.8、拒絶査定に対して審判請求した場合を1.0とする。経時劣化指標ikは、抽出文献ikの出願日から求めることができ、例えば、出願日からの経過年数をyとすると、y^(-0.5)とすることができる(出願から20年経過時に約0.22)。
【0034】
【数3】
【0035】
一例として、抽出文献が、単独出願(企業関与指標1.0)で、特許査定(権利化指標1.0)となっており、5年前の出願(経時劣化指標0.4)の場合、特許重要度は、0.4(=1.0×1.0×0.4)となる。
【0036】
対象特許と抽出文献ikとの特許分類の合致指標は、技術関連度ikと特許重要度ikとの積として求めることができる。こうして、企業aの特許として抽出された全ての特許文献について、特許分類の合致指標の総和を求めることにより、対象特許に対する企業aの合致指標を算出する。すなわち、N個の特許文献が抽出された保有者の合致指標は、下記の数式4で求められる。
【0037】
【数4】
【0038】
保有者の合致指標を、活用先候補となる全ての保有者について求めた後、順位付けを行うことにより、対象特許のニーズが高い保有者を決定する。活用情報生成部5は、この保有者に対する活用情報を生成する。活用情報の提示先となる保有者は、合致指標が最も高い保有者のみであってもよく、あるいは、合致指標が上位の複数の保有者であってもよい。
【0039】
上述した保有者の合致指標の算出方法は、技術分野の合致指標や発明者の合致指標の算出にも利用することができ、これによって、対象特許との関連性が高い技術分野や発明者を決定して、これらの情報を活用情報に含めることができる。
【0040】
技術分野の合致指標は、対象特許のmr個の特許分類jr(jr=1,・・・,mr)のそれぞれについて、保有者のn個の特許ik(ik=1,・・・,n)における特許重要度、重みおよび一致度から求めた合致指標の総和である。すなわち、対象特許の特許分類jrに対応する技術分野の合致指標は、特許分類jrと一致する特許ikの特許分類jkの重みを、特許分類jkの重みikとして、下記の数式5で表すことができる。この数式5を用いて、全ての特許分類について技術分野の合致指標の順位付けを行うことにより、対象特許との関連性が高い1または上位複数の技術分野を決定することができる。なお、数式5において、特許分類jr_jk の一致度ikは、対象特許と保有者の特許との一致1、不一致0を表すマトリクスである。
【0041】
【数5】
【0042】
一例として、対象特許に含まれる特許分類Aが、抽出文献に記載された4つの特許分類の3番目に一致する場合、特許分類Aの重みは、上記の数式1から0.21となる。この抽出特許の特許重要度が、上記の数式3から0.4であるとすると、この抽出特許についての技術分野の合致指標は、0.084(=0.21×0.4)となる。この技術分野の合致指標を、抽出特許の全てについて合算することで、特許分類Aに対応する技術分野の合致指標を算出することができる。こうして、対象特許に含まれるすべての特許分類AからEについて、それぞれに対応する技術分野の合致指標を算出し、優先順位付けを行うことで、優先順位の高い1または複数の特許分類に対応する技術分野を決定することができる。
【0043】
また、発明者の合致指標は、保有者である企業に属する全ての発明者をリスト化した発明者リストにおいて、発明者jdL(jdL=1,・・・,mdL)と一致する発明者が特許ik(ik=1,・・・,n)に存在すれば、その発明者jdの特許ikにおける重みikを、発明者jdの重みik (jd=1,・・・,md)として、下記の数式6で表すことができる。この数式6を用いて、全ての発明者について発明者の合致指標の順位付けを行うことにより、対象特許との関連性が高い1または上位複数の発明者を決定することができる。なお、数式6において、発明者jdL_jd の一致度ikは、発明者リストの発明者jdLと特許ikにおける発明者jdとの一致1、不一致0を表すマトリクスである。
【0044】
【数6】
【0045】
一例として、発明者リストに含まれる発明者Aが、抽出文献に記載された3人の発明者の2番目に一致する場合、発明者Aの重みは、上記の数式1から0.31となる。この抽出特許の技術関連度および特許重要度が、上記の数式2および数式3からそれぞれ0.21、0.4であるとすると、この抽出特許についての発明者の合致指標は、0.026(=0.31×0.21×0.4)となる。この発明者の合致指標を、抽出特許の全てについて合算することで、発明者Aの合致指標を算出することができる。こうして、発明者リストに含まれるすべての発明者について、発明者の合致指標を算出し、優先順位付けを行うことで、優先順位の高い1または複数の発明者を決定することができる。
【0046】
出力部6は、生成された活用情報を出力部6から出力する(ステップS5)。こうして、利用者は画面や印刷媒体等に示された活用情報を閲覧することができる。活用情報の出力は、上述したように、特許活用支援装置1に接続された端末30に向けてネットワーク10を介して行ってもよい。
【0047】
図3は、出力された活用情報の一例を示す図である。図3に示す活用情報は、保有者の合致指標が最も高い保有者である企業の代表者等に向けて作成されたものであり、対象特許の公開番号、発明の名称、要約等の内容に関する情報が表示される。更に、図3に示す活用情報は、当該保有者について算出された技術分野の合致指標および発明者の合致指標に基づき、「貴社と合致する技術分野」および「関連する貴社の開発者」が、優先順位の高い2つまでそれぞれ表示される。なお、活用情報には、参考情報として、抽出特許の中で対象特許との関連性が高いものが、「関連する貴社の特許出願」として表示される。
【0048】
これにより、企業の代表者等は、提示された対象特許を活用できる可能性がある自社の技術分野を具体的に把握することができ、譲渡やライセンス等の要否を検討することができる。また、対象特許との関連性が高い開発者が示されるため、当該発明者に対象特許の理解や必要性の検討などを促すことができ、譲渡やライセンスの可能性を高めることができる。この結果、活用情報を利用して、対象特許の社会的な有効活用を図ることができる。
【0049】
図4は、出力された活用情報の他の例を示す図である。図4に示す活用情報は、企業開発者向けに作成されたものである。この活用情報は、保有者の順位付けを行う代わりに発明者の順位付けを行うことにより、対象特許のニーズが高い発明者に対して生成されたものであり、上述した特許活用支援方法において、保有者を発明者に置き換えることにより、上記と同様の手順で作成することができる。これにより、対象特許について興味を示し易い発明者をピンポイントで特定して、特許情報を効率良く提示することができる。図4に示す活用情報は、保有者の合致指標を用いて保有者の順位付けを行うことにより、合致指標が最も高い保有者を決定した後、当該保有者に属する発明者の合致指標を用いて発明者の順位付けを行うことにより、合致指標が最も高い発明者を決定し、当該発明者に提示する情報であってもよい。
【0050】
図5は、出力された活用情報の更に他の例を示す図である。図5に示す活用情報は、複数の対象特許毎に、それぞれとの関連性が高い保有者(企業)を、関連性が高い技術分野や発明者と共に一覧表示したものである。図6に示す活用情報は、図5に示す活用情報において、各対象特許との関連性が高い企業の欄に、関連性が高い発明者を併せて記載したものである。
【0051】
図5および図6に示す活用情報は、研究機関の産学連携部門等が、複数の対象特許について広報戦略を検討する資料として有効であり、保有者または発明者の合致指標が上位のものから広報活動を実施することで、ミスマッチの可能性を下げて、効率的な広報を行うことができる。
【0052】
図7は、出力された活用情報の更に他の例を示す図である。図7に示す活用情報は、対象特許に対して、保有者の合致指標が高い上位複数の保有者(企業)を、保有者の合致指標や関連性が高い発明者等と共に表示したものである。図7に示す活用情報についても、関連性が高い企業の欄に関連性が高い発明者を併せて記載して、図8に示すような活用情報とすることができる。図7および図8に示す活用情報は、例えば、研究機関の発明者が自ら広報戦略を検討するための資料として有効である。
【0053】
図9は、出力された活用情報の更に他の例を示す図である。図9に示す活用情報は、特定の保有者(企業)に対して、保有者の合致指標が上位となる複数の対象特許を、おすすめ特許として表示したものである。図10は、出力された活用情報の更に他の例を示す図である。図10に示す活用情報は、特定の発明者である企業開発者向けに作成されたものであり、発明者の合致指標が上位となる複数の対象特許を、おすすめ特許として表示したものである。
【0054】
図9および図10に示す活用情報は、例えば、特定企業や特定開発者向けの広報戦略検討用として有効である他、研究機関の窓口等への来訪者に対する提供資料としても有効である。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、本実施形態の特許活用支援装置1は、対象特許の複数の活用先候補を入力部2から入力するように構成されているが、複数の活用先候補を特許活用支援装置1が自動で作成するように構成することもできる。例えば、特許情報データベース20に格納されている全ての特許について、活用対象となる対象特許と特許分類が共通する特許文献を抽出し、それぞれの特許の保有者としての重み付けも考慮して保有者の順位付けを行うことにより、上位複数の保有者を活用先候補とすることができる。特許文献の抽出は、例えば、段落[0025]に記載された検索式を利用することができる。また、順位付けを行った保有者に対して、上述した外部データベース等を利用して絞り込みを行った後、複数の活用先候補を決定してもよい。活用先候補の数は特に限定されず、特許活用支援装置1の処理速度に応じて適宜決定することができ、処理速度が十分な場合には、全ての保有者を対象として、上述した特許活用支援方法を実行することもできる。
【符号の説明】
【0056】
1 特許活用支援装置
2 入力部
3 分類情報取得部
4 文献抽出部
5 活用情報生成部
6 出力部
20 特許情報データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-11-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の特許情報が格納された特許情報データベースを利用する特許活用支援装置であって、
活用対象となる対象特許の識別情報が入力される入力部と、
入力された識別情報に基づき前記特許情報データベースを検索し、対象特許の特許分類を示す特許分類情報を取得する分類情報取得部と、
取得した特許分類情報に基づき前記特許情報データベースを検索し、対象特許との関連性が高い複数の特許文献を抽出する文献抽出部と、
抽出された複数の特許文献の保有者または発明者の情報に基づき、保有者または発明者の順位付けを行うことにより、対象特許のニーズが高い保有者または発明者に対する活用情報を生成する活用情報生成部と、
生成された活用情報を出力する出力部とを備え
前記活用情報生成部は、前記文献抽出部により抽出された特許文献に付随する情報から当該特許文献の特許重要度を取得して、特許分類情報の関連度を示す技術関連度および特許重要度を用いて対象特許との特許分類の合致指標を算出し、当該合致指標に基づき保有者または発明者の順位付けを行う特許活用支援装置。
【請求項2】
前記入力部は、対象特許の複数の活用先候補が更に入力され、
前記文献抽出部は、入力された活用先候補が保有者または発明者である特許文献の中から特許文献を抽出する請求項1に記載の特許活用支援装置。
【請求項3】
前記特許重要度は、当該特許の共有者の有無、権利化の有無および経時劣化の程度に基づき算出される請求項1または2に記載の特許活用支援装置。
【請求項4】
前記活用情報には、技術分野の合致指標および発明者の合致指標に基づき決定した対象特許との関連性が高い技術分野および発明者に関する情報が含まれる請求項1からのいずれかに記載の特許活用支援装置。
【請求項5】
前記活用情報には、複数の対象特許毎に対象特許のニーズが高い保有者または発明者を示す情報が含まれる請求項1からのいずれかに記載の特許活用支援装置。
【請求項6】
前記活用情報には、特定の保有者または発明者について、ニーズが高い複数の対象特許を示す情報が含まれる請求項1からのいずれかに記載の特許活用支援装置。
【請求項7】
コンピュータが、複数の特許情報が格納された特許情報データベースを利用して実行する特許活用支援方法であって、
活用対象となる対象特許の識別情報が入力される入力ステップと、
入力された識別情報に基づき前記特許情報データベースを検索し、対象特許の特許分類を示す特許分類情報を取得する分類情報取得ステップと、
取得した特許分類情報に基づき前記特許情報データベースを検索し、対象特許との関連性が高い複数の特許文献を抽出する文献抽出ステップと、
抽出された複数の特許文献の保有者または発明者の情報に基づき、保有者または発明者の順位付けを行うことにより、対象特許のニーズが高い保有者または発明者に対する活用情報を生成する活用情報生成ステップと、
生成された活用情報を出力する出力ステップとを備え、
前記活用情報生成ステップは、前記文献抽出ステップにより抽出された特許文献に付随する情報から当該特許文献の特許重要度を取得して、特許分類情報の関連度を示す技術関連度および特許重要度を用いて対象特許との特許分類の合致指標を算出し、当該合致指標に基づき保有者または発明者の順位付けを行う特許活用支援方法。
【請求項8】
請求項に記載の特許活用支援方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の前記目的は、複数の特許情報が格納された特許情報データベースを利用する特許活用支援装置であって、活用対象となる対象特許の識別情報が入力される入力部と、入力された識別情報に基づき前記特許情報データベースを検索し、対象特許の特許分類を示す特許分類情報を取得する分類情報取得部と、取得した特許分類情報に基づき前記特許情報データベースを検索し、対象特許との関連性が高い複数の特許文献を抽出する文献抽出部と、抽出された複数の特許文献の保有者または発明者の情報に基づき、保有者または発明者の順位付けを行うことにより、対象特許のニーズが高い保有者または発明者に対する活用情報を生成する活用情報生成部と、生成された活用情報を出力する出力部とを備え、前記活用情報生成部は、前記文献抽出部により抽出された特許文献に付随する情報から当該特許文献の特許重要度を取得して、特許分類情報の関連度を示す技術関連度および特許重要度を用いて対象特許との特許分類の合致指標を算出し、当該合致指標に基づき保有者または発明者の順位付けを行う特許活用支援装置により達成される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
記特許重要度は、当該特許の共有者の有無、権利化の有無および経時劣化の程度に基づき算出されることが好ましい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
また、本発明は、コンピュータが、複数の特許情報が格納された特許情報データベースを利用して実行する特許活用支援方法であって、活用対象となる対象特許の識別情報が入力される入力ステップと、入力された識別情報に基づき前記特許情報データベースを検索し、対象特許の特許分類を示す特許分類情報を取得する分類情報取得ステップと、取得した特許分類情報に基づき前記特許情報データベースを検索し、対象特許との関連性が高い複数の特許文献を抽出する文献抽出ステップと、抽出された複数の特許文献の保有者または発明者の情報に基づき、保有者または発明者の順位付けを行うことにより、対象特許のニーズが高い保有者または発明者に対する活用情報を生成する活用情報生成ステップと、生成された活用情報を出力する出力ステップとを備え、前記活用情報生成ステップは、前記文献抽出ステップにより抽出された特許文献に付随する情報から当該特許文献の特許重要度を取得して、特許分類情報の関連度を示す技術関連度および特許重要度を用いて対象特許との特許分類の合致指標を算出し、当該合致指標に基づき保有者または発明者の順位付けを行う特許活用支援方法により達成される。