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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144209
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】計測装置、事故点標定システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/08 20200101AFI20220926BHJP
【FI】
G01R31/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045118
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000144108
【氏名又は名称】株式会社三英社製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大原 久征
(72)【発明者】
【氏名】絹村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】野元 浩太郎
【テーマコード(参考)】
2G033
【Fターム(参考)】
2G033AA02
2G033AB01
2G033AC02
2G033AC04
2G033AD21
2G033AE01
2G033AF02
2G033AF05
(57)【要約】
【課題】 事故点標定システムを安価に運用するための計測装置を提供する。
【解決手段】 計測装置は、送電線に接続され、接地された外層を有するケーブルに流れる電流を検出する電流センサと、前記電流センサの検出結果を取得する取得装置と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線に接続され、接地された外層を有するケーブルに流れる電流を検出する電流センサと、
前記電流センサの検出結果を取得する取得装置と、
を備える計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の計測装置であって、
前記ケーブルは、一端がブッシングを介して前記送電線に接続され、他端が開閉装置に接続され、
前記電流センサは、前記ケーブルの前記外層の周囲を囲むように設けられる、
計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の計測装置であって、
前記電流センサは、前記送電線の各相のそれぞれに接続された複数の前記ケーブルのそれぞれの前記外層の周囲を囲むように設けられる、
計測装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の計測装置であって、
前記開閉装置は、遮断器であり、
前記電流センサは、前記遮断器が収納された筐体の内部に設けられる、
計測装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の計測装置であって、
前記電流センサは、ロゴスキーコイルである、
計測装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか一項に記載の計測装置であって、
前記送電線の電圧に応じた電圧を検出する電圧センサ、
を更に備え、
前記取得装置は、
前記電圧センサの検出結果に基づいて、前記送電線に事故が発生したか否かを検出する検出回路と、
前記送電線に事故が発生したタイミングを、事故点標定装置に送信する送信回路と、
を備える計測装置。
【請求項7】
送電線を含む電力系統に設けられた第1計測装置と、
前記電力系統において、前記第1計測装置とは異なる場所に設けられた第2計測装置と、
前記送電線に発生した事故の事故点を標定する事故点標定装置と、を備え、
前記第1及び第2計測装置のそれぞれは、
前記送電線に接続され、接地された外層を有するケーブルに流れる電流を検出する電流センサと、
前記送電線の電圧に応じた電圧を検出する電圧センサと、
前記電圧センサの検出結果に基づいて、前記送電線に事故が発生したか否かを検出する検出回路と、
前記送電線に事故が発生したタイミングを、前記事故点標定装置に送信する送信回路と、
を備える事故点標定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置及び事故点標定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔に取り付けられた計測装置で計測される送電線の電流等に基づいて、送電線の事故点を標定する事故点標定システムがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平02-151229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鉄塔に取り付けられた計測装置を用い、送電線の電流を計測する場合、計測装置の設置やメンテナンスのための費用が高額となる。
【0005】
本発明の目的は、事故点標定システムを安価に運用するための計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明にかかる計測装置の態様は、送電線に接続され、接地された外層を有するケーブルに流れる電流を検出する電流センサと、前記電流センサの検出結果を取得する取得装置と、を備える。
【0007】
上記目的を達成するための本発明にかかる事故点標定システムの態様は、送電線を含む電力系統に設けられた第1計測装置と、前記電力系統において、前記第1計測装置とは異なる場所に設けられた第2計測装置と、前記送電線に発生した事故の事故点を標定する事故点標定装置と、を備え、前記第1及び第2計測装置のそれぞれは、前記送電線に接続され、接地された外層を有するケーブルに流れる電流を検出する電流センサと、前記送電線の電圧に応じた電圧を検出する電圧センサと、前記電圧センサの検出結果に基づいて、前記送電線に事故が発生したか否かを検出する検出回路と、前記送電線に事故が発生したタイミングを、前記事故点標定装置に送信する送信回路と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、事故点標定システムを安価に運用するための計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電力系統10の構成を示す図である。
図2】変電所40aの構成を示す図である。
図3】ケーブル30aの構成を示す図である。
図4】計測装置100aの構成を示す図である。
図5】(A)変電所40aで測定される送電線の短絡時のサージ電流を示す図である。(B)変電所40bで測定される送電線の短絡時のサージ電流を示す図である。
図6】(A)変電所40aで測定される送電線の地絡時のサージ電流を示す図である。(B)変電所40bで測定される送電線の地絡時のサージ電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
==実施形態==
<<<電力系統10>>>
図1は、本実施形態の電力系統10の構成を示す図である。電力系統10は、66kVを22kVへ変圧し、22kVを6kVに変圧して送電する。電力系統10は、鉄塔20a~20d、ケーブル30a~30c,34a~34c、ブッシング31a~31c,33a~33c、送電線21a~21c,22a~22c,32a~32c、変電所40a,40b、事故点標定装置50を含んで構成される。
【0011】
鉄塔20aは、66kVを送電する送電線21a~21cを架設し、鉄塔20b,20cは、22kVを送電する送電線32a~32cを架設し、鉄塔20dは、6kVを送電する送電線22a~22cを架設する。
【0012】
ブッシング31a~31c,33a~33cは、例えば、後述の変電所40aのスイッチギア62に送電線32a~32cの電気を引き込む際に使用される。また、ブッシング31a~31c,33a~33cは、スイッチギア62と絶縁するための磁器製又はポリマー製のがい管と、がい管の中空部に貫通される導体とを含むものである。なお、図1において、送電線32a~32cの電圧がどのように送電されるかを示すため、ブッシング31a~31c,33a~33cは、変電所40a,40bの外に描かれている。
【0013】
変電所40aは、送電線21a~21cで送電される66kVの電圧を22kVの電圧に変圧し、ケーブル30a~30c、ブッシング31a~31c、送電線32a~32c、ブッシング33a~33c、ケーブル34a~34cを介して、22kVの電圧を変電所40bに送電する。変電所40bは、22kVの電圧を6kVの電圧に変圧し、送電線22a~22cを介して送電する。また、送電線32a~32cと、ケーブル30a~30cとは、ブッシング31a~31cの導体を介して電気的に接続される。また、送電線32a~32cと、ケーブル34a~34cとは、ブッシング33a~33cの導体を介して電気的に接続される。
【0014】
事故点標定装置50は、後述する計測装置100a及び計測装置100bと共に、後述する事故点標定システムXを構成する。具体的には、事故点標定装置50は、計測装置100aからの信号51a、及び計測装置100bからの信号51bに基づいて、送電線32a~32cにおける事故点を標定する。
【0015】
GPS衛星52は、時刻情報を示す信号を送信する。計測装置100aは、GPS衛星52からの信号に基づいて事故が発生したタイミングを含む信号51aを事故点標定装置50に送信する。同様に、計測装置100bは、GPS衛星52からの信号に基づいて事故が発生したタイミングを含む信号51bを事故点標定装置50に送信する。なお、計測装置100aは、「第1計測装置」に相当し、計測装置100bは、「第2計測装置」に相当する。
【0016】
===変電所40a===
図2は、変電所40aの構成を示す図である。変電所40aは、第1電圧(例えば、66kV)を、送電線32a~32cのそれぞれが送電する電圧である第2電圧(例えば、22kV)に変圧する。変電所40aは、変圧器60及びスイッチギア(SWG)62を含んで構成される。
【0017】
変圧器60は、第1電圧を第2電圧に変圧する。変圧器60は、第1電圧が印加される一次巻線と、第1電圧に応じた第2電圧を出力する二次巻線とを有する。
【0018】
接地形計器用変圧器(EVT:Earthed Voltage TransformerVoltage Transformer)65は、変圧器60の第2電圧を受け、110V系の相電圧Va~Vc及び零相電圧Vdを出力する。また、相電圧Va~Vcを受ける端子61a~61c、及び零相電圧Vdを受ける端子61dは、後述の筐体64内に設けられる。なお、相電圧Va~Vcは、それぞれ第2電圧の各相の電圧に応じた電圧である。
【0019】
スイッチギア62は、送電線32a~32cで事故が発生した場合に、ケーブル30a~30cと、変圧器60との間の接続を遮断する。スイッチギア62は、筐体64を含んで構成される。なお、筐体64は、開閉装置63a~63cと、計測装置100aのうち、後述する電流センサ70a~70c及び電圧センサ71a~71dとを収納する金属製の箱状の部材である。
【0020】
開閉装置63a~63cは、送電線32a~32cにおいて事故が発生した場合に、ケーブル30a~30cと、変圧器60との間の接続を遮断する遮断器である。ケーブル30a~30cは、一端がブッシング31a~31cを介して送電線32a~32cに接続され、他端が開閉装置63a~63cに接続されている。なお、本実施形態の開閉装置63a~63cのそれぞれは、遮断器であることとしたが、例えば断路器、または開閉器であっても良い。
【0021】
計測装置100aは、ケーブル30a~30cに流れる電流Ia~Icと、相電圧Va~Vcと、零相電圧Vdと、に基づいて送電線32a~32cにおける事故(例えば、短絡や地絡)を検出する。計測装置100aは、電流センサ70a~70c、電圧センサ71a~71d、取得装置72を含んで構成される。なお、取得装置72は、筐体64の外に設けられる。
【0022】
本実施形態において、電流センサ70a~70cは、ケーブル30a~30cに流れる電流Ia~Icをそれぞれ検出するロゴスキーコイルである。
【0023】
図3は、ケーブル30aの構成を示した図である。ケーブル30b及び30cも同様の構成である。ケーブル30aは、中心に電流Iaを流す芯線80と、芯線80の周囲を囲む絶縁層81aとを有する。また、ケーブル30aは絶縁層81aの周囲を囲む外層82と、外層82の周囲を囲む絶縁層81bとを更に有する。なお、外層82は、接地されている。
【0024】
ここで、電流センサ70aは、ケーブル30aの外層82の周囲を囲むように設けられる。すなわち、図3において電流センサ70aを一例として示した通り、電流センサ70a~70cは、送電線32a~32cの各相のそれぞれに接続されたケーブル30a~30cのそれぞれの外層82(実際は絶縁層81b)の周囲を囲むように設けられる。
【0025】
詳細は後述するが、外層82が接地されたケーブル30a~30cのそれぞれを囲むように設けられた電流センサ70a~70cであっても、芯線80に流れるサージ電流を検出することができる。ここで、「サージ電流」とは、定常運転時の送電線において、スイッチの開閉や雷撃等により送電線に瞬間的に定常運転時の電圧を超える過渡電圧が生じ、これに伴い送電線に流れるパルス状の過渡電流である。ただし、本実施形態では、主に地絡又は短絡事故時の過渡電圧により生じる過渡電流をサージ電流と呼ぶ。
【0026】
仮に、計測装置を送電線32a~32cから離れた位置(たとえば、鉄塔20b)に設置した場合、非接触のセンサで送電線32a~32cに流れる電流を検出することとなる。この場合、送電線32a~32cの付着物(例えば、雨水や雪)により、計測装置は、実際の電流とは異なる電流を検出することがある。
【0027】
一方、本実施形態では、ケーブル30aを囲むように電流センサ70aが設けられる。従って、電流センサ70aで測定される電流値は、送電線32aの付着物の影響を受ける可能性が低減される。すなわち、ケーブル30a~30cのそれぞれを囲むように電流センサ70a~70cを用いることにより、より精度良く零相電流又は相電流を検出することができる。なお、電流センサ70a~70cによるサージ電流の検出結果については、図5,6を用いて後述する。
【0028】
電圧センサ71a~71cは、端子61a~61cと接続されている。電圧センサ71a~71cは、端子61a~61cのそれぞれの相電圧Va~Vcを検出する。また、電圧センサ71dは、端子61dの零相電圧Vdを検出する。取得装置72は、電流センサ70a~70cの検出結果と、電圧センサ71a~71dの検出結果とを取得し、送電線32a~32cの事故を検出する。
【0029】
図4は、計測装置100aの構成を示す図である。上述の通り、計測装置100aは、電流センサ70a~70c、電圧センサ71a~71d、取得装置72を含んで構成される。なお、本実施形態では、計測装置100aが、電圧センサ71a~71dを含むこととしたが、必ずしも必須ではなく、電圧センサ71a~71dが計測装置100aの外部にあってもよい。
【0030】
取得装置72は、電流センサ70a~70cのそれぞれの測定結果である電流Ia~Icと、電圧センサ71a~71dの測定結果である電圧Va~Vdと、を取得する。図4に示すように、取得装置72は、受信回路90、CPU91、送信回路92を含んで構成される。
【0031】
受信回路90は、GPS衛星52からの時刻情報を受信し、時刻を出力する。
【0032】
CPU91は、電流センサ70a~70cの検出結果である電流Ia~Ic、及び電圧センサ71a~71dの検出結果である電圧Va~Vdをデジタル値に変化するADC(不図示)を有する。以下では、デジタル値に変換された電流Ia~Icも電流Ia~Icと称し、デジタル値に変換された電圧Va~Vdも電圧Va~Vdと称する。
【0033】
ここで、取得装置72(具体的にはCPU91)は、電圧Va~Vdに基づいて、送電線32a~32cに事故(地絡又は短絡)が発生したか否かを検出する。また、地絡又は短絡の発生の検出方法は従来技術を利用するため、以下では地絡を検出する場合について説明する。一般的に零相電流の変化よりも零相電圧の変化の方が顕著であるため、零相電圧を用いて地絡の発生を検出する。よって、CPU91は、電圧Vdである零相電圧に基づいて、地絡が発生したか否かを検出する。
【0034】
具体的には、CPU91は、求めた零相電圧の大きさや変化量が所定値を超えて変化したと判定した場合、地絡の発生を検出する。
【0035】
そして、事故点(地絡点)を標定するために、零相電圧の大きさや変化量が所定値を超えて変化したと判定し、地絡の発生を検出したタイミングにおいて零相電流サージが発生した際の時刻情報が必要とされる。そのため、CPU91は、事故点標定装置50が事故点(地絡点)を標定するために零相電流を検出する。具体的には、CPU91は、電流センサ70a~70cの検出結果である電流Ia~Icを合成し、零相電流を求める。
【0036】
たとえば、送電線32a~32cに地絡点がある場合、CPU91は、零相電圧に基づいて送電線32a~32cにおける事故(地絡)を検出する。また、CPU91は、零相電流と、受信回路90からの時刻情報に基づく事故が発生したタイミングとを出力する。なお、本実施形態では、事故が発生したタイミングは、受信回路90からの時刻情報に基づくものとしたが、取得装置72内で生成した時刻に基づいてもよい。
【0037】
また、CPU91は、受信回路90から出力される時刻情報(複数のGPS衛星それぞれから送信される情報から演算された絶対時刻)に基づいて計測装置100aの位置を出力する。時刻情報に基づく位置の検出は、従来技術を利用することができる。なお、受信回路90からの時刻情報を用いない場合又は受信回路90がない場合、CPU91は、あらかじめ設定された位置情報に基づいて計測装置100aの位置を出力してもよい。なお、計測装置100aの位置は、送電線32a~32cの長さを求めるために使用される。また、CPU91は、「検出回路」に相当する。
【0038】
送信回路92は、零相電流と、送電線32a~32cに事故が発生したタイミングと、計測装置100aの位置とを含む信号51aを事故点標定装置50へ送信する。また、計測装置100aで計測される「事故が発生したタイミング」とは、零相電圧の大きさや変化量が所定値を超えて変化したと判定した時点をプリトリガとして記録する零相電流波形の先頭または最終の時刻である。そして、計測装置100aは、零相電流として零相電流波形を事故点標定装置50へ送信し、送電線32a~32cに事故が発生したタイミングとして零相電流波形の先頭から最終の時刻を検出し事故点標定装置50へ送信する。
【0039】
その後、計測装置100aは、到達タイミングを「事故が発生したタイミング」として信号51aに含ませ事故点標定装置50へ送信する。また、本実施形態では、送信回路92は、計測装置100aの位置を含む信号51aを送信することとしたが、計測装置100aの位置の代わりに計測装置100aを識別する情報を含む信号51aを送信してもよい。この場合、事故点標定装置50は、計測装置100aを識別する情報からあらかじめ記録された計測装置100aの位置を取得する。
【0040】
以上の通り、計測装置100aは、変電所40a内に設けることができる。すなわち、計測装置100aは、鉄塔20b等の高所部に設ける必要がないため、設置やメンテナンスの費用が安価で済む。
【0041】
なお、変電所40aと変電所40bは構成が同一であるため、変電所40bに関する説明は省略する。また、計測装置100bの構成は計測装置100aと同様であるため、計測装置100bの構成の説明は省略する。
【0042】
また、計測装置100bにおける送信回路92は、零相電流と、送電線32a~32cに事故が発生したタイミングと、計測装置100bの位置とを含む信号51bを事故点標定装置50へ送信する。
【0043】
そして、事故点標定装置50は、計測装置100a及び計測装置100bのそれぞれから、少なくとも零相電流と、事故が発生したタイミングとの情報を得られれば、事故点を標定することができる。
【0044】
<<<短絡・地絡事故検出時のサージ電流の検出結果>>>
図5は、送電線の短絡時のサージ電流を示す図である。具体的に、図5の(A)は、変電所40aにおける計測装置100aで測定された送電線32a~32cの事故点での短絡時のサージ電流を示す図であり、図5の(B)は変電所40bにおける計測装置100bで測定された送電線32a~32cの短絡時のサージ電流を示す図である。なお、図5の(A)及び(B)のサージ電流の波形は、短絡電流から商用周波成分を除去した波形である。
【0045】
なお、図5の(A)及び(B)は、ケーブル30a~30cにそれぞれ流れる電流Ia~Icのサージ電流を示した図である。また、サージ電流は、外層82が接地されたケーブル30a~30cに取り付けられた電流センサ70a~70cによって検出されたものである。
【0046】
図6は、送電線の地絡時のサージ電流を示す図である。具体的に、図6の(A)は、変電所40aにおける計測装置100aで測定された送電線32a~32cの事故点での地絡時のサージ電流を示す図であり、図6の(B)は変電所40bにおける計測装置100bで測定された送電線32a~32cの地絡時のサージ電流を示す図である。なお、図6の(A)及び(B)のサージ電流の波形は、零相電流から商用周波成分を除去した波形である。
【0047】
なお、図6の(A)及び(B)は、電流センサ70a~70cの測定結果を合成した零相電流でのサージ電流を示した図である。また、サージ電流は、外層82が接地されたケーブル34a~34cに取り付けられた電流センサ70a~70cによって検出されたものである。
【0048】
これらの検出結果から明らかなように、外層82が接地されたケーブル30a~30c,34a~34cの周囲に電流センサ70a~70cを設けることにより、事故点の標定に利用するためのサージ電流を計測することが可能である。
【0049】
<<<事故点標定システム>>>
事故点標定システムXは、例えば、送電線32a~32cで発生する事故の事故点を標定するシステムである。事故点標定システムXは、電力系統10において、上述の計測装置100aと、計測装置100aとは異なる場所に設けられた計測装置100bと、事故点標定装置50とを備える。
【0050】
事故点標定システムXは、事故(例えば、地絡)が発生した際のサージ電流が計測装置100a及び100bに到達した時刻を利用して、地絡点を標定する。
【0051】
ここで、上述の通り、計測装置100a及び計測装置100bは、電流センサ70a~70cの検出結果に基づく零相電流と、電圧センサ71dの検出結果である零相電圧Vdと、を取得する。
【0052】
計測装置100a及び計測装置100bは、地絡が発生したか否かを、零相電圧の大きさや変化量が所定値を超えて変化したか否かにより検出する。
【0053】
地絡を検出した場合、計測装置100aは、零相電流と、送電線32a~32cに地絡が発生したタイミングと、計測装置100aの位置とを含む信号51aを事故点標定装置50に送信する。なお、計測装置100bについても同様の情報を事故点標定装置50に送信する。
【0054】
事故点標定装置50は、計測装置100a及び計測装置100bからの零相電流、地絡が発生したタイミング及び、計測装置100a及び計測装置100bの位置に基づいて、送電線32a~32cに発生した地絡の地絡点を標定する。地絡点の標定は、従来技術を用いることができる。
【0055】
なお、ここまで、地絡点の標定について説明したが、電流センサ70a~70cで検出される相電流と、電圧センサ71a~71cで検出された相電圧Va~Vcから求められる線間電圧に基づく短絡点の標定は、従来技術を利用することができる。
【0056】
計測装置100a及び計測装置100bを用いることにより、鉄塔20b等に送電線32a~32cとは別に設けられた非接触のセンサで送電線32a~32cに流れる電流を検出する方式とは異なり、送電線の付着物等の影響を受けることが低減される。
【0057】
===まとめ===
本実施形態の計測装置100aは、電流センサ70a~70cと、取得装置72とを備える。電流センサ70a~70cは、接地された外層82を有するケーブル30a~30cに流れる電流を検出する。ケーブル30a~30cは、送電線32a~32cに接続される。これにより、電流センサ70a~70cを高所の送電線32a~32cに設置する必要がなくなり、事故点標定システムXの運用のためのコストが安価となる。すなわち、事故点標定システムを安価に運用するための計測装置を提供することができる。
【0058】
また、ケーブル30a~30cは、一端がブッシング31a~31cを介して送電線32a~32cに接続され、他端が開閉装置63a~63cに接続される。また、電流センサ70a~70cは、ケーブル30a~30cの外層82の周囲を囲むよう設けられる。このように、スイッチギア62内の開閉装置63a~63cの近くに電流センサ70a~70cを設けることにより、電流センサ70a~70cを鉄塔等の高所部に設置する必要が無い。よって、計測装置100aを取り付けるためのコストが安価となる。
【0059】
また、電流センサ70a~70cは、送電線32a~32cの各相のそれぞれに接続された複数のケーブル30a~30cのそれぞれの外層82の周囲を囲むように設けられる。電流センサ70a~70cが、ケーブル30a~30cのそれぞれの外層82を囲む場合、電流Ia~Icを合成した零相電流の精度がよくなる。
【0060】
また、開閉装置63a~63cは、遮断器であり、電流センサ70a~70cは、遮断器が収納された筐体64の内部に設けられる。これにより、電流センサ70a~70cは、送電線32a~32cへの付着物により実際の電流とは異なる電流を検出することがなくなり、付着物等の影響を受けることが低減される。また、筐体内のケーブル30a~30cに電流センサ70a~70cを設けることにより、電流センサ70a~70cを鉄塔20b等の高所部に設ける必要がない。よって、計測装置100a及び計測装置100bの設置又はメンテナンスのコストが安価になる。
【0061】
また、電流センサ70a~70cとしてロゴスキーコイルを用いることができる。ロゴスキーコイルは一般に小さい電流の測定が困難であるところ、本実施形態のようにロゴスキーコイルを配置することにより、外層82が接地されたケーブル30a~30cに流れるサージ電流を測定することができる。
【0062】
また、計測装置100aは、送電線32a~32cの第2電圧に応じた零相電圧Vdを検出する電圧センサ71d及び相電圧Va~Vcを検出する電圧センサ71a~71cを更に備える。そして、取得装置72は、電圧センサ71dの検出結果である零相電圧Vdに基づいて送電線32a~32cに地絡が発生したか否かを検出する。これにより、計測装置100aは、サージ電流ではなく、比較的大きな変化を示す零相電圧Vdに基づいて地絡の発生を検出することができる。
【0063】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【0064】
例えば、本実施形態では、電流センサ70a~70cにロゴスキーコイルを用いることとしたが、巻線(CT)方式のコイルを用いてもよい。
【0065】
例えば、本実施形態では、電流センサ70aは、ケーブル30a~30cのそれぞれの外層の周囲を囲むように設けられることとしたが、ケーブル30a~30cをまとめて外層の周囲を囲むように設けられてもよい。
【0066】
例えば、本実施形態では、電圧センサ71dの検出結果である零相電圧Vdにより、地絡を検出することとしたが、電流Ia~Ic及び零相電圧Vdにより、地絡を検出してもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 電力系統
20a~20d 鉄塔
30a~30c ケーブル
31a~31c ブッシング
32a~32c 送電線
33a~33c ブッシング
34a~34c ケーブル
40a,40b 変電所
50 事故点標定装置
51a,51b 信号
52 GPS衛星
60 変圧器
61a~61d 端子
62 スイッチギア
63a~63c 開閉装置
64 筐体
70a~70c 電流センサ
71a~71d 電圧センサ
72 取得装置
80 芯線
81a,81b 絶縁層
82 外層
90 受信回路
91 CPU
92 送信回路
100a、100b 計測装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6