(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144236
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】全固体電池及び全固体電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20220926BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20220926BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220926BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20220926BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20220926BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20220926BHJP
H01M 4/1391 20100101ALI20220926BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20220926BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0562
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/139
H01M4/1391
H01M10/058
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045151
(22)【出願日】2021-03-18
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 博俊
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ03
5H029HJ04
5H029HJ14
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050GA02
5H050GA03
(57)【要約】
【課題】ガーネット型固体電解質を用いた全固体電池において、担持量を高めると共に、常温での充放電を可能とし、さらにサイクル特性を改善する。
【解決手段】全固体電池1Aは、粉末状とした電極活物質材料及び粉末状とした電解質材料との混合材料が焼結された合剤電極層2Aと、粉末状とした電解質材料が焼結された電解質層3Aとを備え、合剤電極層2Aと電解質層3Aが互いの一の面で接し、電解質材料は、Liを含み、La、Zrまたは他の元素を含むガーネット型結晶構造を有する化合物であり、合剤電極層2Aは、粉末状の電極活物質材料と、融点が900℃未満の低融点のLi塩で被覆された粉末状の電解質材料との混合材料の焼結体である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状とした電極活物質材料及び粉末状とした電解質材料との混合材料が焼結された合剤電極層と、
粉末状とした前記電解質材料が焼結された電解質層とを備え、
前記合剤電極層と前記電解質層が互いの一の面で接し、
前記電解質材料は、Liを含み、La、Zrまたは他の元素を含むガーネット型結晶構造を有する化合物であり、
前記合剤電極層は、粉末状の前記電極活物質材料と、融点が900℃未満の低融点のLi塩で被覆された粉末状の前記電解質材料との前記混合材料の焼結体である
全固体電池。
【請求項2】
前記合剤電極層は、加熱加圧された前記混合材料の焼結体である
請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記電極活物質材料は、偏平な粒子形状であり、
前記合剤電極層において、前記電極活物質の偏平な粒子が積層されており、前記電解質層と接している
請求項1または請求項2に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記電極活物質材料は、組成式LiM1-x-yM’xM”yOzで表され、x、yは0~1であり、zは1.5~4.0であり、M、M’、M”はCo、Ni、Mn、Ti、Al、Cu、Feのうちのいずれかであり、
前記電解質材料は、組成式LixMI
x’MII
3MIII
2O12で表され、x + x’≦ 7、 MIはAl, Mgのうちいずれか,あるいはMIを含まず、MIIはアルカリ土類金属,ランタノイドのいずれかまたは両方であり、MIIIはZr, Hf, Y, Sb, Sn, Nb, Taのいずれかまたは2つ以上である
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記電解質材料は,組成式LixMI
x’MII
3MIII
2O12に含まれるMIIのLaの一部がアルカリ土類金属で置換されたものである
請求項4に記載の全固体電池。
【請求項6】
前記融点が900℃未満の低融点のLi塩は、Liの水酸化物、Liと酸素酸の塩、Liのハロゲン化物の何れか、または複数の組み合わせである
請求項1~請求項5の何れか1項に記載の全固体電池。
【請求項7】
前記融点が900℃未満の低融点のLi塩は、LiOH、LiNO3、Li2CO3、Li2SO4、Li3BO3、LiBO2、Li3PO4、LiPO3、LiCl、LiBr、LiIの何れか、または複数の組み合わせである
請求項6に記載の全固体電池。
【請求項8】
前記合剤電極層は、前記電解質材料の表面を被覆する前記融点が900℃未満の低融点のLi塩による焼結前の被覆層の厚さが、平均で10nm以上100nm以下である
請求項1~請求項7の何れか1項に記載の全固体電池。
【請求項9】
前記合剤電極層は、粉末状の前記電極活物質材料と、粉末状の前記電解質材料との間の一部あるいは全てが反応相によって接合されており、
前記反応相は、La4Lix”My”O8で表され、x”+ y”= 1、MはCo、Ni、Mn、Ti、Al、Cu、Feのうちのいずれか、または複数の組み合わせである
請求項1~請求項8の何れか1項に記載の全固体電池。
【請求項10】
前記合剤電極層は、粉末状の前記電極活物質材料と、前記融点が900℃未満の低融点のLi塩で被覆された粉末状の前記電解質材料との前記混合材料の焼結体に、さらにLiNO3溶液が滴下されて再焼結された再焼結体である
請求項1~請求項9の何れか1項に記載の全固体電池。
【請求項11】
粉末状とした電解質材料を加圧成型して電解質層を形成する電解質層成型工程と、
粉末状とした電極活物質材料と粉末状とした前記電解質材料との混合材料を、加圧成形された前記電解質層の上面に堆積させて加圧成型して合剤電極層を形成する合剤電極層成形工程と、
前記電解質層と前記合剤電極層とを焼結させることで一体の複合体とする焼成工程とを有し、
前記電解質材料は、Liを含み、La、Zrまたは他の元素を含むガーネット型結晶構造を有する化合物であり、
前記合剤電極層は、粉末状の前記電極活物質材料と、融点が900℃未満の低融点のLi塩で被覆された粉末状の前記電解質材料との前記混合材料が、前記合剤電極層成形工程で前記電解質層の上面に堆積されて加圧成型され、
前記焼成工程で前記電解質層と前記合剤電極層とが焼結される
全固体電池の製造方法。
【請求項12】
前記合剤電極層成形工程では、前記混合材料が前記電解質層の上面に堆積させて加熱加圧成型される
請求項11に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項13】
前記焼成工程での焼成温度を900℃以上1200℃以下とする
請求項11または請求項12に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項14】
前記焼成工程の後、前記合剤電極層は、粉末状の前記電極活物質材料と、前記融点が900℃未満の低融点のLi塩で被覆された粉末状の前記電解質材料との前記混合材料の焼結体に、さらにLiNO3が滴下され、前記焼成工程での焼成温度より低温で再焼結される
請求項11~請求項13の何れか1項に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項15】
前記電極活物質材料は、組成式LiM1-x-yM’xM”yOzで表され、x、yは0~1であり、zは1.5~4.0であり、M、M’、M”はCo、Ni、Mn、Ti、Al、Cu、Feのうちのいずれかであり、
前記電解質材料は、組成式LixMI
x’MII
3MIII
2O12で表され、x + x’≦ 7、 MIはAl, Mgのうちいずれか,あるいはMIを含まず、MIIはアルカリ土類金属,ランタノイドのいずれかまたは両方であり、MIIIはZr, Hf, Y, Sb, Sn, Nb, Taのいずれかまたは2つ以上である
請求項11~請求項14の何れか1項に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項16】
前記電解質材料は、組成式LixMI
x’MII
3MIII
2O12に含まれるMIIのLaの一部がアルカリ土類金属で置換されたものである
請求項15に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項17】
前記融点が900℃未満の低融点のLi塩は、Liの水酸化物、Liと酸素酸の塩、Liのハロゲン化物の何れか、または複数の組み合わせである
請求項11~請求項16の何れか1項に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項18】
前記融点が900℃未満の低融点のLi塩は、LiOH、LiNO3、Li2CO3、Li2SO4、Li3BO3、LiBO2、Li3PO4、LiPO3、LiCl、LiBr、LiIの何れか、または複数の組み合わせである
請求項17に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項19】
前記合剤電極層は、前記電解質材料の表面を被覆する前記融点が900℃未満の低融点のLi塩による焼結前の被覆層の厚さが、平均で10nm以上100nm以下である
請求項11~請求項18の何れか1項に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項20】
前記電極活物質材料は、偏平な粒子形状であり、
前記合剤電極層において、前記電極活物質の偏平な粒子が積層されており、前記電解質層と接している
請求項11~請求項19の何れか1項に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項21】
前記合剤電極層は、粉末状の前記電極活物質材料と、粉末状の前記電解質材料との間の一部あるいは全てが反応相によって接合され、
前記反応相は、La4Lix”My”O8で表され、x”+ y”= 1、MはCo、Ni、Mn、Ti、Al、Cu、Feのうちのいずれか、または複数の組み合わせである
請求項11~請求項20の何れか1項に記載の全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガーネット型固体電解質を用いた全固体電池及び全固体電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックスの固体電解質を用いた全固体電池は、液漏れや燃焼・爆発の可能性がなく、安全性や信頼性に優れた電池として期待されている。さらに積層化などにより電池の高エネルギー密度化が可能であることから、大型用途やIoTデバイス用電源などの次世代蓄電池の候補として研究・開発が進められている。
【0003】
セラミックスの固体電解質として,硫化物系と酸化物系の化合物が幅広く研究されている。硫化物系固体電解質はイオン伝導性が高いうえ、可塑性を備え,活物質との界面接合が比較的容易であることから、実用化に向けた開発が進められている。しかし、水蒸気と反応して硫化水素を生成することから、製造環境や製品の安全性に課題がある。
【0004】
酸化物系固体電解質は、硫化物系に比べると化学的安定性に優れているが,イオン伝導性や機械特性に劣る。塑性変形をしないため、活物質との界面を形成することが困難である。電池製造のプロセス温度が高ければ、焼結が進行し、活物質粒子とも接合するが、同時にそれぞれの構成元素が相互拡散し、反応相が界面に形成されるため,電気化学特性が低下し、電池として機能しない。逆にプロセス温度が低いと、異相は形成されないが、界面が接合されず粒子同士が点接触した状態となり、電気化学反応場は形成されない。
【0005】
酸化物系固体電解質では、ガーネット型結晶構造を有する化合物とNASICON型結晶構造を有する化合物を中心として、全固体電池への応用が試みられている。
【0006】
ガーネット型固体電解質は、5~8×10-4 S/cmの比較的高いイオン伝導性と、金属リチウムにも安定な優れた耐還元性を兼ね備えている。
【0007】
活物質と固体電解質の界面において、電気化学反応を低下させることなく接合するため、いくつかの報告がなされている。
【0008】
ガーネット型固体電解質を用いた全固体電池として、非特許文献1には、合剤電極を構成する活物質、電解質として、それぞれLiCoO2、ホウ酸リチウムを用いている。両粉末を混合したインクを用いて、スクリーン印刷により電極層を形成し、700℃でアニールを施している。ホウ酸リチウムが溶融し、合剤電極層内の活物質・電解質界面を接合し、イオン伝導経路も構築している。非特許文献1では、活物質の担持量は1.7mg/cm2であり、温度が25℃、電流密度が10μA/cm2(5.75mA/g,0.05C)の条件にて85mAh/gの初回放電容量を得ているとされている。
【0009】
非特許文献2には、合剤電極を構成する活物質としてLiCoO2(LCO)を用い、電解質としてガーネット型固体電解質(LLZO)と炭酸ホウ酸リチウム(Li2.3C0.7B0.3O3,LCBO)を用いている。焼結性を高めるため、LCOの表面に薄いLi2CO3を被覆している。またLLZO粒子表面には、空気中の水分及び二酸化炭素と反応して生成したLi2CO3によって被覆されていると説明している。LCO,LLZO,LCBOからなる合剤電極をスクリーン印刷により作製し、700℃で焼成している。非特許文献2では、活物質の担持量は1.0mg/cm2であり、温度が25℃、電流密度が5.75μA/cm2(5.75mA/g,0.05C)の条件にて、92mAh/gの初回放電容量を得ているとされている。
【0010】
非特許文献3には、合剤電極を構成する活物質としてLiCoO2(LCO)を用い、電解質として,ガーネット型固体電解質(LLZ:Ta)を用いている。LCOとLLZ:Taを含むインクをブラシで塗布し、1050℃で30分間焼成している。非特許文献3では、活物質の担持量は12~16mg/cm2であり、温度が50℃、電流密度が50μA/cm2 (3~4mA/g,0.02~0.03C)の条件にて、113mAh/gの初回放電容量を得ているとされている。
【0011】
非特許文献4には、合剤電極を構成する活物質としてLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2(NCM)を用い、電解質として,ガーネット型固体電解質(LLZ)を用いている。Liイオンの一部をプロトンでイオン交換したLLZ-HとLiOH、LiNO3及び活物質のNCMを混合し、400℃、98MPa、6時間の条件でホットプレスを施している。非特許文献4では、活物質の担持量は13.4mg/cm2であり、温度が25℃、電流密度が40μA/cm2の条件にて、130mAh/gの初回放電容量を得ているとされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】S. Ohta, S. Komagata, J. Seki, T. Saeki, S. Morishita, T. Asaoka, J. Power Sources 238, pp. 53-56 (2013).(豊田中央研究所)
【非特許文献2】F. Han, J. Yue, C. Chen, N. Zhao, X. Fan, Z. Ma, T. Gao, F. Wang, X. Guo, C. Wang, Joule, 2, pp. 497-508 (2018). (U. Maryland, 中国科学院)
【非特許文献3】(3)C.L. Thai, Q. Ma, C. Dellen, S. Lobe, F. Vondahlen, A. Windmuller, D. Gruner, H. Zheng, S. Uhlenbruck, M. Finsterbunsch, F. Tietz, D. Fattekhova-Rohlfing, H. P. Buchkremer, O. Guillon, Sustain. Energy Fuels, 1, pp. 280-291 (2019). (FZ Julich, Helmholtz Inst. et al.)
【非特許文献4】(4)S. Ohta, M. Kawakami, H. Nozaki, C. Yada, T. Saito, H.Iba, J. Mater. Chem. A 8, pp. 8989-8996 (2020). (トヨタ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ガーネット型固体電解質を用いた固体電池において、非特許文献1、非特許文献2には、ホウ酸リチウム、炭酸ホウ酸リチウムを用いた界面接合が開示されている。しかし、これらのイオン伝導性が劣るため、合剤電極層を厚くすると、合剤電極層内の抵抗が増加し、活物質の利用率が低下する。このため活物質の担持量を増やすことが困難である。エネルギー密度が高い電池を実現するには、電池の単位面積あたりの容量(初回放電容量)を増やす必要があるが、非特許文献1、非特許文献2における単位面積あたりの初回放電容量は、それぞれ0.14~0.17mAh/cm2、0.094mAh/cm2である。
【0014】
また、活物質と電解質を直接焼結した非特許文献3の場合、非特許文献1、非特許文献2と比較して担持量が高められており、単位面積あたりの初回放電容量は1.6~2.0mAh/cm2である。しかし、充放電試験の温度を50℃と高めて測定している。
【0015】
非特許文献4の場合、イオン交換した電解質とLiOH、LiNO3を混合することで、LiOH、LiNO3が溶融しつつ、電解質と反応することで、焼結を促進している。400℃という低温で焼結が進行する利点があり、室温で単位面積あたりの初回放電容量は1.7mAh/cm2を得ている。一方、長時間の加圧焼結過程を要することから製造装置のコストが高くなる。また、低温プロセスのため、LiNO3等が一部残存し、充電の際に副反応を生じるため、充電容量と放電容量の差が比較的大きいとされている。
【0016】
そこで、本発明は、ガーネット型固体電解質を用いた全固体電池において、担持量を高めると共に、常温での充放電を可能とし、さらにサイクル特性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的を達成するため、本発明は、粉末状とした電極活物質材料及び粉末状とした電解質材料との混合材料が焼結された合剤電極層と、粉末状とした電解質材料が焼結された電解質層とを備え、合剤電極層と電解質層が互いの一の面で接し、電解質材料は、Liを含み、La、Zrまたは他の元素を含むガーネット型結晶構造を有する化合物であり、合剤電極層は、粉末状の電極活物質材料と、融点が900℃未満の低融点のLi塩で被覆された粉末状の前記電解質材料との混合材料の焼結体である全固体電池である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、常温での充放電が可能で、所定の充放電容量が得られる。また、合剤電極層内の界面抵抗の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施の形態の全固体電池の一例を示す断面図である。
【
図2】実施例1のSEM像及びEDSマッピング像である。
【
図3】実施例1のSTEM像及びEDSマッピング像である。
【
図4】アルミナ基板上に作成した実施例1の合剤電極層のSEM像である。
【
図5】アルミナ基板上に作成した比較例5の合剤電極層のSEM像である。
【
図6】実施例1の全固体電池の初回の充放電曲線である。
【
図7】比較例1の全固体電池の初回の充放電曲線である。
【
図8】比較例2の全固体電池の初回の充放電曲線である。
【
図9】実施例2と比較例3~4の全固体電池の初回の充放電曲線である。
【
図10】比較例5の全固体電池の初回の充放電曲線である。
【
図11】出力及びサイクル試験に伴う充電容量及び放電容量の変化並びに充電容量に対する放電容量の比である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の全固体電池及び全固体電池の製造方法の実施の形態について説明する。
【0021】
<本実施の形態の全固体電池の構成例>
本実施の形態の全固体電池1Aは、粉末状とした電極活物質材料(A)及び粉末状とした電解質材料(B)との混合材料(C)が焼結された合剤電極層2Aと、粉末状とした電解質材料(B)が焼結された電解質層3Aとを備える。
【0022】
全固体電池1Aは、電解質層3Aの一の面に合剤電極層2Aが形成される。また、電解質層3Aの他の面にLi負極等の電極4Aが形成される。
【0023】
合剤電極層2A及び電解質層3Aを構成する電解質材料(B)は、Liを含み、La、Zrまたは他の元素を含むガーネット型結晶構造を有する化合物である。
【0024】
また、合剤電極層2Aを構成する電解質材料(B)は、融点が900℃未満の低融点のLi塩で被覆される。
【0025】
そして、合剤電極層2Aは、上述した粉末状の電極活物質材料(A)と、融点が900℃未満の低融点のLi塩で被覆された上述した粉末状の電解質材料(B)との混合材料(C)の焼結体である。
【0026】
合剤電極層2Aは、上述した混合材料(C)が、所定の圧力及び温度で加圧加熱されて形成された焼結体であることが好ましい。
【0027】
電極活物質材料(A)は、以下の組成式(1)で表される。
LiM1-x-yM’xM”yOz・・・(1)
【0028】
組成式(1)において、M、M’、M”はCo、Ni、Mn、Ti、Al、Cu、Feのうちのいずれかであり、x、yは0~1であり、zは1.5~4.0である。電極活物質材料(A)は、例えば、LiCoO2等が挙げられる。
【0029】
電解質材料(B)は、以下の組成式(2)で表される。
LixMI
x’MII
3MIII
2O12・・・(2)
【0030】
組成式(2)において、MIはAl, Mgのうちいずれか,あるいはMIを含まず、MIIはアルカリ土類金属,ランタノイドのいずれかまたは両方であり、MIIIはZr, Hf, Y, Sb, Sn, Nb, Taのいずれかまたは2つ以上であり、x + x’≦ 7である。電解質材料(B)は、例えば、Li6,5La3Zr1.5Ta0.5O12等が挙げられる。
【0031】
電解質材料(B)は、組成式(2)に示すLixMI
x’MII
3MIII
2O12に含まれるMIIのLaの一部がアルカリ土類金属で置換されたものであってもよく、アルカリ土類金属として、Ca、Sr、Baの何れかでLaの一部が置換されたものであっても良い。組成式(2)において、MIIのLaの一部がアルカリ土類金属で置換された電解質材料(B)は、例えば、Li6,5La2.5Ca0.5Zr1.5Ta0.5O12、Li6,5La2.5Sr0.5Zr1.5Ta0.5O12、Li6,5La2.5Ba0.5Zr1.5Ta0.5O12等が挙げられる。
【0032】
また、合剤電極層2Aにおいて電解質材料(B)を被覆する融点が900℃未満の低融点のLi塩は、Liの水酸化物、Liと酸素酸の塩、Liのハロゲン化物の何れか、または複数の組み合わせである。
【0033】
融点が900℃未満の低融点のLi塩は、具体的には、LiOH、LiNO3、Li2CO3、Li2SO4、Li3BO3、LiBO2、Li3PO4、LiPO3、LiCl、LiBr、LiIの何れか、または複数の組み合わせであることが好ましい。
【0034】
合剤電極層2Aを構成する電解質材料(B)が低融点のLi塩で被覆された全固体電池1Aは、合剤電極層2Aにおいて電解質層3Aとの界面近傍の領域に、Co,La,Cを含まず、合剤電極層2Aの表層側と比較して、電極活物質材料(A)及び電解質材料(B)の粒子周辺に酸素原子が多い層が存在する。また、全固体電池1Aは、合剤電極層2AにLa4LiCoO8を含む。
【0035】
合剤電極層2Aは、電解質材料(B)の表面を被覆する融点が900℃未満の低融点のLi塩による焼結前の被覆層の厚さが、平均で10nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0036】
また、合剤電極層2Aは、粉末状の電極活物質材料(A)と、融点が900℃未満の低融点のLi塩で被覆された粉末状の電解質材料(B)との混合材料(C)の焼結体に、さらにLiNO3が滴下されて再焼結された再焼結体であることが好ましい。また、合剤電極層2Aは、粉末状の電極活物質材料(A)と、粉末状の電解質材料(B)との間の一部あるいは全てが反応相によって接合されており、反応相がLa4Lix”My”O8で表され、x + y = 1、MはCo、Ni、Mn、Ti、Al、Cu、Feのうちのいずれか、または複数の組み合わせであるが好ましい。
【0037】
<本実施の形態の全固体電池の製造方法例>
電解質層成型工程(a)で、粉末状とした上記電解質材料(B)を成型して電解質層3Aを形成する。
【0038】
次に、合剤電極層成形工程(b)で、粉末状とした上記電極活物質材料(A)と粉末状とした上記電解質材料(B)との混合材料(C)を、成型された上記電解質層3Aの上面に塗布して合剤電極層2Aを形成する。
【0039】
具体的には、粉末状の電極活物質材料(A)と、融点が900℃未満の低融点のLi塩で被覆された粉末状の電解質材料(B)との混合材料(C)を、分散媒と混合して所定の粘度のインクを生成し、この混合材料(C)によるインクを、電解質層3Aの上面にスクリーン印刷で塗布する。混合材料(C)によるインクを電解質層3Aの上面に塗布した後、80℃の雰囲気下で乾燥させる。混合材料(C)によるインクの塗布と乾燥を、所定の厚さとなるまで繰り返す。
【0040】
混合材料(C)によるインクの塗布と乾燥を繰り返した後、ホットプレスまたは冷間プレスにより混合材料(C)による堆積層を押圧し、混合材料(C)による堆積層の緻密化を行う。
【0041】
次に、焼結工程(c)で、上記電解質層3Aと上記合剤電極層2Aとを焼結させることで一体の複合体とする。具体的には、電気炉を用い、温度が900oC、雰囲気が空気流通の条件で電解質層3Aと合剤電極層2Aとを焼結させる。焼成工程(c)での焼成温度は、900℃以上1200℃以下とする。
【0042】
次に、再焼結工程(d)で、合剤電極層2AにさらにLiNO3溶液を滴下し、焼成工程(c)での焼成温度より低温、例えば500℃で再焼結する。
【0043】
次に、対極形成工程(e)で、電解質層3Aの下面に溶融した金属リチウムを塗工し、冷却する。
【実施例0044】
[実施例1]
実施例1では、電極活物質材料(A)として偏平な粒子形状をもつLiCoO2用い、電解質材料(B)としてLiOHで被覆されたLi6,5La2.9Ca0.1Zr1.4Ta0.6O12を用いて、上述した電解質層成型工程(a)、合剤電極層成形工程(b)の後に、焼成工程(c)を900℃で行った。さらに再焼結工程(d)及び対極形成工程(e)を行って全固体電池を製造した。
【0045】
実施例1では、合剤電極層成形工程(b)において、混合材料(C)によるインクを塗布して乾燥させる工程を繰り返し、加圧成形により合剤電極層2Aの厚さを50μmとした。
【0046】
この実施例1の全固体電池では、合剤電極層2Aにおける活物質の担持量が8.0mg/cm2であった。また、温度が25℃、電流密度が11.2μA/cm2の条件にて、単位体積あたりの初回充電容量が1.1mAh/cm2、初回放電容量が0.81mAh/cm2であった。
【0047】
[実施例2]
実施例2では、焼成工程(c)を950℃で行ったこと以外は実施例1と同様にして全固体電池を製造した。この実施例2の全固体電池では、合剤電極層2Aにおける活物質の担持量が7.5mg/cm2であった。また、温度が25℃、電流密度が11.2μA/cm2の条件にて、単位体積あたりの初回充電容量が0.91mAh/cm2、初回放電容量が0.70mAh/cm2であった。
【0048】
[比較例1]
比較例1では、合剤電極層2AにさらにLiNO3溶液を滴下しての再焼結工程(d)を行わなかったこと以外は実施例と同様にして全固体電池を製造した。
【0049】
[比較例2]
比較例2では、合剤電極層成形工程(b)において、電解質材料(B)としてLiOHで被覆されていないLi6,5La2.9Ca0.1Zr1.4Ta0.6O12を用いたこと以外は実施例と同様にして全固体電池を製造した。
【0050】
[比較例3]
比較例3では、焼成工程(c)を800℃で行ったこと以外は実施例と同様にして全固体電池を製造した。
【0051】
[比較例4]
比較例4では、焼成工程(c)を850℃で行ったこと以外は実施例と同様にして全固体電池を製造した。
【0052】
[比較例5]
比較例5では、合剤電極層成形工程(b)において、電極活物質材料(A)として球状の粒子形状をもつLiCoO2用いたこと以外は実施例と同様にして全固体電池を製造した。
【0053】
[電子顕微鏡観察]
実施例1の全固体電池の合剤電極層を樹脂に包埋し、断面加工を施してから、SEM観察およびEDS分析を行った。
図2に実施例1のSEM像及びEDSマッピング像を示す。
【0054】
図2に示すように、EDSマッピングでは、Coの分布及びLaの分布がそれぞれ電極活物質材料及び電解質材料に相当する。Oの分布は、電極活物質材料及び電解質材料の領域に加えて、それらの粒子を覆うように分布していた。これらは合剤電極層成形工程(b)及び再焼結工程(d)において加えたLiOH、LiNO
3が溶融し、熱分解して生じたLi
2Oまたは酸化リチウムが大気と反応して生成したLiOHであると考えられる。
【0055】
実施例1の全固体電池の合剤電極層を薄片化加工を施してから、STEM観察およびEDS分析を行った。
図3に実施例1のSTEM像及びEDSマッピング像を示す。
【0056】
図3に示すように、EDSマッピングでは、Coのみからなる粒子、Laのみからなる粒子、CoとLaの両方が含まれる粒子が存在し、互いの粒子が密接に接合していることが分かった。電子線回折の結果から、それぞれの粒子は、電極活物質材料、電解質材料、La
4LiCoO
8であった。焼成工程(c)において、電極活物質材料と電解質材料が溶融したLiOHに溶解し、冷却過程において、溶解した成分の一部がLa
4LiCoO
8となり電極活物質材料と電解質材料を接合したと考えられる。
【0057】
実施例1と比較例5の全固体電池の合剤電極層と同一の方法でアルミナ基板上に作製した合剤電極層に対して、断面加工を施してから、SEM観察を行った。
図4にアルミナ基板上に作成した実施例1の合剤電極層のSEM像を示し、
図5にアルミナ基板上に作成した比較例5の合剤電極層のSEM像を示す。
【0058】
図4に示すように、実施例1と同一の方法でアルミナ基板上に作製した合剤電極層では偏平な形状をした電極活物質粒子が、平たく積層されている様子が観察された。X線回折の結果から、LiCoO
2の結晶構造(六方晶系R-3m)のc軸方向に配向して積層されていることがわかった。この一方、
図5に示すように、比較例5と同一の方法でアルミナ基板上に作製した合剤電極層では、球状の電極活物質粒子が積層されている様子が観察された。X線回折の結果から、電極活物質材料の結晶は特定の方向に配向せずに積層されていることがわかった。
【0059】
[充放電試験]
実施例1、実施例2及び比較例1~5の全固体電池に対し、LiCoO2の重量あたり1.40mA/g(0.01C)の電流密度で4.2Vまで充電した後、さらに4.2Vで10時間保持して充電した。その後1.40mA/gの電流密度で2.5Vまで放電し、電池容量を測定した。充放電測定は25℃で行った。
【0060】
実施例1の全固体電池の初回の充放電曲線を
図6に示し、比較例1の全固体電池の初回の充放電曲線を
図7に示し、比較例2の全固体電池の初回の充放電曲線を
図8に示し、実施例2と比較例3~4の全固体電池の初回の充放電曲線を
図9に示し、比較例5の全固体電池の初回の充放電曲線を
図10に示す。また、実施例1、実施例2及び比較例1~5の全固体電池の初回充電容量密度(単位体積あたりの初回充電容量)、初回放電容量密度(単位体積あたりの初回放電容量)、初回充電効率を表1に示す。なお、表1では、非特許文献4についても初回充電容量密度、初回放電容量密度、初回充電効率を示している。
【0061】
【0062】
図6に示すように、実施例1の全固体電池は初回充電容量、初回放電容量ともに高い値を示した。特に初回充電容量は重量あたりでは電極活物質材料のLiCoO
2の理論容量である140mAh/gにほぼ等しい値を示した。一方、
図7、
図8に示すように、比較例1及び比較例2の全固体電池は、初回充電容量、初回放電容量共に低かった。表1に示すように、初回の充放電効率は実施例1の全固体電池において74%であるのに対し、比較例1及び比較例2の全固体電池は、それぞれ24%および47%であった。これは焼成工程(c)及び再焼結工程(d)において、溶解したLiOH及びLiNO
3が電極活物質材料と電解質材料を強固に接合する働きがあることを示す。
【0063】
また、
図6、
図9及び表1に示すように、実施例1、実施例2及び比較例3~4の全固体電池の初回充電容量、初回放電容量を比較すると、焼成工程(c)における焼成温度は、900℃以上では十分な容量が得られたが、900℃未満では十分な容量が得られなかった。このことから、焼成工程において溶解したLiOHが電極活物質材料と電解質材料を接合するには900℃以上の温度が必要であることがわかる。
【0064】
図6、
図10及び表1に示すように、実施例1及び比較例5の全固体電池の単位重量あたりの初回充電容量は、ともに電極活物質材料の理論容量である140mAh/gに近い値を示した。一方で、単位重量あたりの初回放電容量は、実施例1の全固体電池は100mAh/gであるのに対し、比較例5では69mAh/gであった。この差は充電・放電に伴う電極活物質材料の体積変化による合剤電極層2Aと電解質層3Aの界面に生じるひずみに由来する。実施例1で用いた電極活物質材料は
図4のSEM像に示されるように、偏平な形状のLiCoO
2粒子が積層しており、c軸方向に配向しているが、充電・放電時には主にc軸方向に沿って体積変化が生じる。充放電の際に合剤電極層は膜厚方向に大きく体積変化するが、膜の面内方向の体積変化は小さい。このため合剤電極層と電解質層の界面に生じるひずみは比較的小さい。一方、比較例5で用いた電極活物質材料は
図5のSEM像に示されるように、球状のLiCoO
2粒子が積層しており、結晶はランダムな方向を向いている。充放電に伴い、合剤電極層は膜の面内方向にも体積変化するため、合剤電極層と電解質層の界面に大きなひずみが生じる。ひずみが界面の強度の限界を超えると、合剤電極層と電解質層の界面は剥がれ、電気化学的な活性を失い、電池の容量は低下する。
【0065】
[出力及びサイクル試験]
実施例1の全固体電池に対して、電流密度を変えて充放電試験を繰り返した。1~3サイクルは充電をCC-CVモードにより0.01Cで行い、放電をCCモードで0.01Cで行った。4~9サイクルは充電を0.02C(CC-CVモード)、放電を0.02C(CCモード)で行った。10~12サイクルは充電を0.05C(CC-CVモード)、放電を0.05C(CCモード)で行った。13~15サイクルは充電を0.01C(CC-CVモード)、放電を0.1C(CCモード)で行った。16~18サイクルは充電を0.01C(CC-CVモード)、放電を0.01C(CCモード)で行った。19~48サイクルは充電を0.05C(CC-CVモード)、放電を0.05C(CCモード)で行った。49~50サイクルは充電を0.01C(CC-CVモード)、放電を0.01C(CCモード)で行った。出力及びサイクル試験に伴う初回充電容量及び初回放電容量の変化並びに充電容量に対する放電容量の比(クーロン効率)を
図11及び表1に示す。
【0066】
図11及び表1に示すように、実施例1で作製した全固体電池は、初期のうちは比較的容量の低下が大きかったが、その後は安定した容量を示した。出力試験の後に再び充放電レートを0.01Cに戻した18サイクル目の放電容量は、初回放電容量の77%を維持した。50サイクル目の放電容量は,初回放電容量の67%を維持した。また25サイクル目以降のクーロン効率は99.8%を示した。
【0067】
[活物質の担持量と初回放電容量]
実施例1における活物質の担持量、初回放電容量密度(単位体積あたりの初回放電容量)と、非特許文献1~4に記載の活物質の担持量、初回放電容量密度(単位体積あたりの初回放電容量)を表2に示す。
【0068】
【0069】
実施例1では、合剤電極層2Aにおける活物質の担持量が8.0mg/cm2であった。また、温度が25℃、電流密度が11.2μA/cm2の条件にて、単位面積あたりの初回放電容量が0.81mAh/cm2であった。
【0070】
これに対し、非特許文献1では、活物質の担持量は1.7mg/cm2であり、温度が25℃、電流密度が10μA/cm2(5.75mA/g,0.05C)の条件にて0.15mAh/cm2の初回放電容量を得ているとされている。また、非特許文献2では、活物質の担持量は1.0mg/cm2であり、温度が25℃、電流密度が5.75μA/cm2(5.75mA/g,0.05C)の条件にて、0.094mAh/cm2の初回放電容量を得ているとされている。非特許文献1、2共、活物質の担持量が少なく、単位面積あたりの初回放電容量も低いことが判る。
【0071】
非特許文献3では、活物質の担持量は12~16mg/cm2であり、温度が50℃、電流密度が50μA/cm2 (3~4mA/g,0.02~0.03C)の条件にて、1.4mAh/cm2の初回放電容量を得ているとされている。非特許文献3の場合、非特許文献1、非特許文献2と比較して担持量が高められており、単位面積あたりの初回放電容量も高くなっている。しかし、充放電試験の温度が50℃であり、常温での充放電では上記性能が得られない。
【0072】
非特許文献4では、活物質の担持量は13.4mg/cm2であり、温度が25℃、電流密度が40μA/cm2の条件にて、1.7mAh/cm2の初回放電容量を得ているとされている。表1に示すように、初回の充放電効率は実施例1の全固体電池において74%、非特許文献4の場合75%であるのに対し、30サイクル後の充放電効率は実施例1の全固体電池において99.8%、非特許文献4の場合80-90%であった。また、容量維持率は、実施例1の全固体電池においては、温度が25℃、18サイクル後の条件にて77%であるのに対し、非特許文献4では、温度が100℃、20サイクル後の条件にて50%以下であった。
【0073】
以上より、上記実施例1及び実施例2では、合剤電極層における活物質の担持量を7mg/cm2以上として、常温での充放電が可能、かつ、合剤電極層にLiNO3溶液を滴下しての再焼結工程(d)が行われておらず、本発明の規定外の比較例1、電解質材料(B)としてLiOHで被覆されていないガーネット型固体電解質(LLZO)が用いられ、本発明の規定外の比較例2に対して、単位体積あたりの初回放電容量が高いものとなった。また、界面接合にホウ酸リチウムが用いられ、本発明の規定外の非特許文献1、炭酸ホウ酸リチウムを用いられ、本発明の規定外の非特許文献2に対しても、単位体積あたりの初回放電容量が高いものとなった。
【0074】
更に、焼成工程(c)における焼成温度が900℃未満であり、本発明の規定外の比較例3、4に対しても、単位体積あたりの初回放電容量が高いものとなった。
【0075】
また、合剤電極層成形工程(b)において、電極活物質材料(A)が球状の粒子形状であり、本発明の規定外の比較例5に対して、単位重量あたりの初回放電容量が高いものとなった。