(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144253
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】マットレス
(51)【国際特許分類】
A47C 27/12 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
A47C27/12 E
A47C27/12 H
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045172
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】519186392
【氏名又は名称】株式会社ブレインスリープ
(71)【出願人】
【識別番号】511192768
【氏名又は名称】株式会社エコ・ワールド
(71)【出願人】
【識別番号】513318799
【氏名又は名称】株式会社テクセット
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】道端 孝助
(72)【発明者】
【氏名】江口 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】中森 一良
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AA02
3B096AB07
3B096AC05
3B096AD04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自然体の横臥状態となる、睡眠の質を高めるマットレスを提供する。
【解決手段】マットレス1は、人の頭を支持する第1部分10と、第1部分10に隣接し、人の腰を支持する第2部分20と、第2部分20に隣接し、人の脚を支持する第3部分30と、を備える。第3部分30のクッションの高さは、第2部分20のクッションの高さよりも大きい。また第2部分20のクッションの硬さ、糸状繊維密度は、第1部分10よりも大きく、第3部分30のクッションの硬さ、糸状繊維密度は、第1部分10よりも小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横臥状態の人を支持するマットレスであって、
人の頭を支持する第1部分と、
前記第1部分に隣接し、人の腰を支持する第2部分と、
前記第2部分に隣接し、人の脚を支持する第3部分と、を備え、
前記第3部分のクッションの高さは、前記第2部分のクッションの高さよりも大きい、マットレス。
【請求項2】
前記第3部分のクッションの高さは、前記第2部分のクッションの高さよりも20mm以上大きい、請求項1に記載のマットレス。
【請求項3】
前記マットレスは、人の頭の側に位置する端部である第1端と、人の脚の側に位置する端部である第2端と、を含み、
前記第3部分は、前記第2端まで広がっている、請求項1又は2に記載のマットレス。
【請求項4】
前記第3部分のクッションは、前記第2部分に対面する壁面と、上面と、前記壁面と上面との間に位置し、面取りされているコーナーと、を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のマットレス。
【請求項5】
前記コーナーは、20mm以上の面取り寸法を有する、請求項4に記載のマットレス。
【請求項6】
前記コーナーは、湾曲している、請求項4又は5に記載のマットレス。
【請求項7】
前記第1部分のクッションは、第1硬さを有し、
前記第2部分のクッションは、前記第1硬さに比べて15%以上大きい第2硬さを有し、
前記第3部分のクッションは、前記第1硬さに比べて10%以上小さい第3硬さを有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のマットレス。
【請求項8】
前記第1部分、前記第2部分及び前記第3部分のクッションは、互いに絡み合わされた複数の糸状樹脂によって構成されている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のマットレス。
【請求項9】
前記第2部分における前記糸状樹脂の密度は、前記第1部分における前記糸状樹脂の密度よりも大きく、
前記第3部分における前記糸状樹脂の密度は、前記第1部分における前記糸状樹脂の密度よりも小さい、請求項8に記載のマットレス。
【請求項10】
前記第3部分のクッションは、第1層と、前記第1層の下に位置する第2層と、を含み、
前記第2層における前記糸状樹脂の密度は、前記第1層における前記糸状樹脂の密度よりも大きい、請求項8又は9に記載のマットレス。
【請求項11】
前記第1部分のクッションは、中央領域と、前記中央領域の両サイドに位置するサイド領域と、を含み、
前記サイド領域の硬さは、前記中央領域の硬さよりも大きい、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のマットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横臥状態の人を支持するマットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
横臥状態の人を支持する製品として、マットレスが知られている。例えば特許文献1は、ウレタンからなるクッションと、クッションを覆うカバーとを備えるマットレスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
睡眠の質を高めるためには、マットレスが、自然体の横臥状態を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、横臥状態の人を支持するマットレスであって、
人の頭を支持する第1部分と、
前記第1部分に隣接し、人の腰を支持する第2部分と、
前記第2部分に隣接し、人の脚を支持する第3部分と、を備え、
前記第3部分のクッションの高さは、前記第2部分のクッションの高さよりも大きい、マットレスである。
【0006】
本発明によるマットレスにおいて、前記第3部分のクッションの高さは、前記第2部分のクッションの高さよりも20mm以上大きくてもよい。
【0007】
本発明によるマットレスにおいて、前記マットレスは、人の頭の側に位置する端部である第1端と、人の脚の側に位置する端部である第2端と、を含み、前記第3部分は、前記第2端まで広がっていてもよい。
【0008】
本発明によるマットレスにおいて、前記第3部分のクッションは、前記第2部分に対面する壁面と、上面と、前記壁面と上面との間に位置し、面取りされているコーナーと、を含んでいてもよい。
【0009】
本発明によるマットレスにおいて、前記コーナーは、20mm以上の面取り寸法を有していてもよい。
【0010】
本発明によるマットレスにおいて、前記コーナーは、湾曲していてもよい。
【0011】
本発明によるマットレスにおいて、前記第1部分のクッションは、第1硬さを有し、前記第2部分のクッションは、前記第1硬さに比べて15%以上大きい第2硬さを有し、前記第3部分のクッションは、前記第1硬さに比べて10%以上小さい第3硬さを有していてもよい。
【0012】
本発明によるマットレスにおいて、前記第1部分、前記第2部分及び前記第3部分のクッションは、互いに絡み合わされた複数の糸状樹脂によって構成されていてもよい。
【0013】
本発明によるマットレスにおいて、前記第2部分における前記糸状樹脂の密度は、前記第1部分における前記糸状樹脂の密度よりも大きく、前記第3部分における前記糸状樹脂の密度は、前記第1部分における前記糸状樹脂の密度よりも小さくてもよい。
【0014】
本発明によるマットレスにおいて、前記第3部分のクッションは、第1層と、前記第1層の下に位置する第2層と、を含み、前記第2層における前記糸状樹脂の密度は、前記第1層における前記糸状樹脂の密度よりも大きくてもよい。
【0015】
本発明によるマットレスにおいて、前記第1部分のクッションは、中央領域と、前記中央領域の両サイドに位置するサイド領域と、を含み、前記中央領域の硬さは、前記サイド領域の硬さよりも小さくてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、睡眠の質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】マットレスが折りたたまれる様子を示す図である。
【
図4】
図2のマットレス1をA-A方向から見た断面図である。
【
図5】マットレスのクッションを構成する材料の一例を示す図である。
【
図6】マットレスのクッションの層構成の一例を示す断面図である。
【
図8】
図7のマットレスの硬さの分布の一例を示す図である。
【
図10】マットレスの一変形例を示す平面図である。
【
図11】マットレスの一変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係るマットレスについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本明細書で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は、説明の都合上、実際の比率とは異なる場合がある。また、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0019】
本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
【0020】
本明細書において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補及び複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。例えば、「パラメータBは、例えばA1以上であり、A2以上であってもよい。パラメータBは、例えばA3以下であり、A4以下であってもよい。」と記載されている場合を考える。この場合、パラメータBの数値範囲は、A1以上A3以下であってもよく、A1以上A4以下であってもよく、A2以上A3以下であってもよく、A2以上A4以下であってもよい。
【0021】
(マットレス)
図1及び
図2は、マットレス1の一例を示す斜視図及び平面図である。マットレス1は、横臥状態の人を支持する。人を支持するマットレス1の面内方向において人の頭から脚に向かう方向を、長さ方向D1とも称する。人を支持するマットレス1の面内方向において長さ方向D1に直交する方向を、幅方向D2とも称する。長さ方向D1における頭側のマットレス1の端を第1端3と称し、長さ方向D1における脚側のマットレス1の端を第2端4と称する。幅方向D2におけるマットレス1の端を側端5と称する。
【0022】
マットレス1は、長さ方向D1に並ぶ第1部分10、第2部分20及び第3部分30を備える。第2部分20は、長さ方向D1において第1部分10に隣接している。第2部分20は第1部分10に接していてもよい。第3部分30は、長さ方向D1において第2部分20に隣接している。第3部分30は第2部分20に接していてもよい。
【0023】
第1部分10は、人の頭を支持する。第2部分20は、人の腰を支持する。第3部分30は、人の脚を支持する。例えば、第3部分30は、膝から足先までの部分を少なくとも支持する。脚の付け根から膝までの部分は、第2部分20によって支持されてもよく、第3部分30によって支持されてもよい。
【0024】
マットレス1は、折り畳み可能であるよう構成されていてもよい。
図3は、マットレス1が2か所で折り畳まれる様子を示す図である。この場合、第1部分10、第2部分20及び第3部分30は、折り畳みの境界に基づいて区画されてもよい。マットレス1は、第1部分10と第2部分20とを接続する第1接続部41、及び、第2部分20と第3部分30とを接続する第2接続部42を備える。第1接続部41は、第1部分10の上面101と第2部分20の上面201を接続している。第2接続部42は、第2部分20の下面202と第3部分30の下面302を接続している。
【0025】
マットレス1が折り畳み可能であることにより、マットレス1の輸送性及び収納性を高めることができる。また、第1部分10、第2部分20及び第3部分30の機械的特性、形状などをそれぞれ独立に定めることができる。また、マットレス1の修理が容易になる。例えば、第3部分30の機械的特性が劣化した場合に、第3部分30のみを交換することによりマットレス1を修理できる。
【0026】
図4は、
図2のマットレス1をA-A方向から見た断面図である。第1部分10は、第1クッション11と、第1クッション11を覆う第1カバー12とを含む。第2部分20も同様に、第2クッション21と、第2クッション21を覆う第2カバー22と、を含む。第3部分30も同様に、第3クッション31と、第3クッション31を覆う第3カバー32と、を含む。各クッション11,21,31は、互いに独立している。上述の第1接続部41は、上面101,201において第1カバー12と第2カバー22を接続している。上述の第2接続部42は、下面202,302において第2カバー22と第3カバー32を接続している。
【0027】
図4において、符号T1、T2及びT3はそれぞれ、第1クッション11の高さ、第2クッション21の高さ及び第3クッション31の高さを表す。
図4に示すように、第1クッション11の高さT1は、第2クッション21の高さT2と同一であってもよい。図示はしないが、第1クッション11の高さT1は、第2クッション21の高さT2よりも大きくてもよく、小さくてもよい。
【0028】
図4に示すように、第3クッション31の高さT3は、第2クッション21の高さT2よりも大きい。これにより、人の足先の位置を上昇させることができる。このため、高さT3が高さT2と同一である場合に比べて、血液やリンパ液の循環を高めることができる。また、踵がマットレス1から受ける反発力を低減できる。これにより、例えば、人の身体および心をリラックスさせることができるので、睡眠の質を高めることができる。
【0029】
無重力状態において人がとる姿勢が、人が最も身体および心をリラックスさせることができる姿勢であるという研究結果がある。無重力状態においては、腰に比べて足先が高い位置にある。本実施の形態によれば、第3クッション31の高さT3を第2クッション21の高さT2よりも大きくすることにより、腰に比べて足先を高い位置に置くことができる。
【0030】
また、人の足先の位置を上昇させることにより、腰が丸まった状態になりやすい。これにより、腰における体圧を分散させるができるので、腰痛を緩和できる。
【0031】
高さT3と高さT2の差は、例えば20mm以上であり、30mm以上であってもよく、40mm以上であってもよい。高さT3と高さT2の差を20mm以上にすることにより、血液やリンパ液の循環を高めることができる。一方、高さT3と高さT2の差が大きすぎると、人の身体に緊張が生じる可能性がある。この点を考慮し、高さT3と高さT2の差は、例えば100mm以下であってもよく、80mm以下であってもよい。
【0032】
高さT1、T2及びT3は、人が横臥するクッションの位置で測定される。例えばシングルベッド用のマットレス1の場合、幅方向D2における中心の位置で高さT1、T2及びT3が測定される。
【0033】
図4に示すように、第3クッション31は、上面301と壁面303との間に位置するコーナー304を含む。壁面303は、上面301と下面302との間に位置し、高さ方向D3に広がる面である。
図4に示すように、第2クッション21に対面する壁面303と上面301との間に位置するコーナー304は、面取りされていてもよい。「面取りされている」とは、
図4のような断面図において、上面301の延長線と壁面303の延長線の交点よりもコーナー304が内側に位置することを意味する。「内側」とは、第3クッション31の中心に向かう側である。
【0034】
第3クッション31の高さT3が第2クッション21の高さT2よりも大きい場合、脚の裏側がコーナー304に接触する。例えば、太ももの裏側がコーナー304に接触する。コーナー304が角張っていると、脚が圧迫されて血液やリンパ液の循環が阻害されることが考えられる。本実施の形態においては、コーナー304が面取りされているので、コーナー304によって脚が圧迫されることを抑制できる。このため、コーナー304が角張っている場合に比べて、血液やリンパ液の循環を高めることができる。
【0035】
コーナー304における面取りの程度を面取り寸法Rで表す。面取り寸法Rは、
図4に示すように、上面301の高さが下降し始める位置から壁面303までの、長さ方向D1における距離である。面取り寸法Rは、例えば20mm以上であり、30mm以上であってもよく、40mm以上であってもよい。面取り寸法Rを20mm以上にすることにより、コーナー304によって脚が圧迫されることを抑制できる。一方、面取り寸法Rが大きすぎると、人の身体と第3部分30との間の接触面積が小さくなり、身体の負担が大きくなることが考えられる。この点を考慮し、面取り寸法Rは、例えば100mm以下であってもよく、80mm以下であってもよい。
【0036】
図4に示すように、コーナー304は湾曲していてもよい。この場合、コーナー304の面取り寸法Rは、コーナー304の曲率半径であってもよい。
【0037】
図4に示すように、長さ方向D1において第3部分30が第2端4まで広がっていてもよい。すなわち、第3部分30が、第2部分20よりも大きい高さT3を第2端4に至るまで有していてもよい。これにより、腰に比べて足先をより確実に高い位置に置くことができる。なお、「第3部分30が第2端4まで広がる」という記載は、
図4に示すように第2端4において第3部分30の上面301と壁面303との間にコーナー304が存在することを除外するものではない。
【0038】
各クッション11,21,31の硬さは、同一であってもよく、異なっていてもよい。以下、各クッション11,21,31の硬さが異なる場合の例について、第1クッション11の硬さを基準として説明する。
【0039】
第1クッション11、第2クッション21及び第3クッション31の硬さを、それぞれ第1硬さH1、第2硬さH2及び第3硬さH3と称する。
第2硬さH2は、第1硬さH1よりも大きくてもよい。例えば、第2硬さH2は、第1硬さH1に比べて15%以上大きくてもよく、20%以上大きくてもよく、25%以上大きくてもよく、30%以上大きくてもよい。「15%以上大きい」とは、(H2-H1)×100/H1が15以上であることを意味する。
第3硬さH3は、第1硬さH1よりも小さくてもよい。例えば、第3硬さH3は、第1硬さH1に比べて10%以上小さくてもよく、15%以上小さくてもよく、20%以上小さくてもよい。「10%以上小さい」とは、(H1-H3)×100/H1が10以上であることを意味する。
【0040】
各クッション11,21,31の硬さH1、H2及びH3は、JIS K 6400-2 A法に基づいて測定されてもよく、JIS K 6400-2 A法と類似の方法に基づいて測定されてもよい。例えば、硬さの測定器は、高さ方向D3に移動可能な加圧板と、固定の支持板との間で、クッションを圧縮する。具体的には、クッションの厚さが初期の厚さの70%になるまで圧縮する工程を3回繰り返し、その後、クッションの厚さが初期の厚さの40%になるまでクッションを圧縮する。クッションの厚さが初期の厚さの40%に圧縮されているときに加圧板に加えられている力を、クッションの硬さとして算出する。測定条件は下記のとおりである。
・高さ方向における加圧板の移動速度:100±20mm/分
・平面視における加圧板の形状:直径200±30mmの円形
・測定環境:温度25℃、相対湿度50%RH
【0041】
硬さH1、H2及びH3も高さT1、T2及びT3と同様に、人が横臥するクッションの位置で測定される。例えばシングルベッド用のマットレス1の場合、幅方向D2における中心の位置で硬さH1、H2及びH3が測定される。
【0042】
次に、クッションの材料を説明する。
図5は、クッションを構成する材料の構造の一例を示している。各クッション11,21,31は、互いに絡み合わされた複数の糸状樹脂50によって構成されていてもよい。この場合、各クッション11,21,31は、2つの糸状樹脂50が接触する接触部分51を含む。接触部分51においては、2つの糸状樹脂50が接合されていてもよい。糸状樹脂の材料は、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなどである。
【0043】
図5に示す例においては、接触部分51以外の空間に空隙52が形成されている。空隙52は空気を通すことができる。このため、上述の特許文献1のようにクッションがウレタンによって構成されている場合に比べて、クッションの通気性を高めることができる。このことも、睡眠の質の向上に寄与できる。例えば、褥瘡が生じることを抑制できる。なお、上述の血液の循環の改善も、褥瘡の抑制に寄与できる。
【0044】
クッションが糸状樹脂50によって構成されている場合、糸状樹脂50の密度が大きいほど、クッションの硬さが大きくなる。各クッション11,21,31の硬さの違いは、糸状樹脂50の密度を調整することによって実現されていてもよい。例えば、第2クッション21における糸状樹脂50の密度は、第1クッション11における糸状樹脂50の密度よりも大きくてもよい。例えば、第3クッション31における糸状樹脂50の密度は、第1クッション11における糸状樹脂50の密度よりも小さくてもよい。
【0045】
次に、クッションの層構成を説明する。
図6は、第3クッション31の層構成の一例を示す断面図である。
図6に示すように、第3クッション31は、第1層311及び第2層312を含んでいてもよい。第1層311は、第3クッション31の上面を構成している。
【0046】
第2層312における糸状樹脂50の密度は、第1層311における糸状樹脂50の密度と異なっていてもよい。例えば、第2層312における糸状樹脂50の密度は、第1層311における糸状樹脂50の密度よりも大きくてもよい。この場合、第1層311は、低反発で身体を包むアジャストレイヤーとして機能でき、第2層312は、高反発で寝返りをサポートするアクティブレイヤーとして機能できる。
【0047】
第3クッション31は、第3クッション31は、第2層312の下に位置する第3層313を含んでいてもよい。第3層313における糸状樹脂50の密度は、第2層312における糸状樹脂50の密度と異なっていてもよい。例えば、第3層313における糸状樹脂50の密度は、第2層312における糸状樹脂50の密度よりも大きくてもよい。
【0048】
第1層311の密度と第2層312の密度が異なる場合、第1層311と第2層312の境界部分における糸状樹脂50の密度が徐々に変化してもよい。例えば、第2層312の密度が第1層311の密度よりも大きい場合、境界部分の密度は、第1層311側から第2層312側に向かうにつれて徐々に増加してもよい。これにより、第1層311と第2層312の境界で糸状樹脂50の密度が急激に変化することを抑制できる。第2層312と第3層313の境界部分も同様に構成されてもよい。
【0049】
第2クッション21も第3クッション31と同様に、第1層211、第2層212及び第3層213を含んでいてもよい。第1層211、第2層212及び第3層213の密度などの特徴は、第3クッション31の第1層311、第2層312及び第3層313の特徴と同様であるので、説明を省略する。
【0050】
図示はしないが、第1クッション11も第3クッション31と同様に、第1層、第2層及び第3層を含んでいてもよい。第1クッション11の第1層、第2層及び第3層の密度などの特徴は、第3クッション31の第1層311、第2層312及び第3層313の特徴と同様であるので、説明を省略する。
【0051】
図6に示すように、コーナー304は第1層311に位置していてもよい。この場合、コーナー304の形状は、例えば、コーナー304に対応した形状を有する型を用いて第1層311を成型することによって実現される。図示はしないが、コーナー304は、第1層311及び第2層312の両方にまたがっていてもよい。本実施の形態においては、第3クッション31が第2クッション21から独立しているので、コーナー304などの第3クッション31の形状を調整しやすい。
【0052】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態においては、第3クッション31の高さT3が、第2クッション21の高さT2よりも大きい。これにより、人の足先の位置を上昇させることができる。このため、高さT3が高さT2と同一である場合に比べて、血液やリンパ液の循環を高めることができる。また、第3クッション31のコーナー304が面取りされているので、コーナー304によって脚が圧迫されることを抑制できる。このことによっても、コーナー304が角張っている場合に比べて、血液やリンパ液の循環を高めることができる。これらのことにより、人の身体および心をリラックスさせることができるので、睡眠の質を高めることができる。
【0053】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0054】
(第1の変形例)
上述の実施の形態においては、第1部分10の第1クッション11の硬さが幅方向D2において一定である例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1部分10の第1クッション11の硬さが幅方向D2の位置に応じて異なっていてもよい。
図7は、マットレス1の第1の変形例を示す平面図である。
【0055】
図7に示す例において、第1部分10の第1クッション11は、中央領域13及びサイド領域14を含む。サイド領域14は、中央領域13の両サイドに位置する。サイド領域14は、中央領域13とは異なる硬さを有する。例えば、サイド領域14の硬さは、中央領域13の硬さよりも大きい。これにより、肩の位置を上昇させることができる。
【0056】
肩の位置が低い場合、腕の重みによって大胸筋が広がり緊張状態が生じることがある。
図7に示す例によれば、大胸筋の緊張を緩和できるので、人の身体および心をリラックスさせることができる。
【0057】
図7に示すように、第1部分10の第1クッション11は、中央領域13から見てサイド領域14の外側に位置する端領域15を含んでいてもよい。端領域15の硬さは、中央領域13の硬さ及びサイド領域14の硬さよりも大きくてもよい。
【0058】
中央領域13、サイド領域14及び端領域15の硬さを、それぞれ第11硬さH11、第12硬さH12及び第13硬さH13と称する。
第12硬さH12は、第11硬さH11に比べて10%以上大きくてもよく、15%以上大きくてもよく、20%以上大きくてもよい。
第13硬さH13は、第11硬さH11に比べて20%以上大きくてもよく、30%以上大きくてもよく、40%以上大きくてもよい。
【0059】
幅方向D2における中央領域13及びサイド領域14の寸法は、例えば、人の2つの肩がそれぞれ2つのサイド領域14に位置するように定められる。幅方向D2における中央領域13の寸法は、例えば230mm以上であり、240mm以上であってもよい。幅方向D2における中央領域13の寸法は、例えば320mm以下であり、310mm以下であってもよい。幅方向D2におけるサイド領域14の寸法は、例えば90mm以上である。
【0060】
ところで、硬さを測定する測定器の加圧板の寸法Dが、幅方向D2における中央領域13の寸法の寸法よりも大きい場合、加圧板が中央領域13及びサイド領域14の両方に重なる。このため、中央領域13単独の硬さを測定できない場合がある。この場合、
図8に示すように、幅方向D2に沿った複数の位置で加圧版61を用いて第1部分10の硬さを測定してもよい。これにより、
図8のグラフに示すように、幅方向D2の各位置において、加圧板に加えられている力、すなわち第1クッション11の硬さを算出できる。サイド領域14の硬さが中央領域13の硬さよりも大きい場合、
図8に示すように、力の測定点のグラフが中央領域13において極小値を示す。幅方向D2における測定間隔Pは、例えば50mmである。
【0061】
第2部分20の第2クッション21の硬さは、幅方向D2において一定であってもよい。若しくは、第2部分20の第2クッション21の硬さは、第1部分10の第1クッション11の場合と同様に、幅方向D2の位置に応じて異なっていてもよい。
【0062】
第3部分30の第3クッション31の硬さは、幅方向D2において一定であってもよい。若しくは、第3部分30の第3クッション31の硬さは、第1部分10の第1クッション11の場合と同様に、幅方向D2の位置に応じて異なっていてもよい。
【0063】
(第2の変形例)
図9は、マットレス1の第2の変形例を示す平面図である。マットレス1は、2人で使用可能なものであってもよい。この場合、
図9に示すように、第1部分10の第1クッション11が2つの中央領域13を含んでいてもよい。各中央領域13の両サイドにはサイド領域14が設けられている。側端5には端領域15が設けられていてもよい。
【0064】
(第3の変形例)
図10は、マットレス1の第3の変形例を示す平面図である。マットレス1は、3人で使用可能なものであってもよい。この場合、
図10に示すように、第1部分10の第1クッション11が3つの中央領域13を含んでいてもよい。各中央領域13の両サイドにはサイド領域14が設けられている。側端5には端領域15が設けられていてもよい。
【0065】
(第4の変形例)
上述の実施の形態においては、第3クッション31のコーナー304が湾曲している例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、
図11に示すように、コーナー304は平坦であってもよい。この場合であっても、コーナー304が面取りされていることにより、コーナー304によって脚が圧迫されることを抑制できる。
【0066】
なお、上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【実施例0067】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
図7に示すマットレス1を準備した。マットレス1の主要な構成要素の特性は下記のとおりである。
・第1部分10の高さT1及び第2部分20の高さT2:50mm
・第3部分30の高さT3:90mm
・第3部分30のコーナー304の曲率半径:40mm
・第2クッション21の硬さH2:中央領域13の硬さH11に比べて+30%
・第3クッション31の硬さH3:中央領域13の硬さH11に比べて-20%
・サイド領域14の硬さH12:中央領域13の硬さH11に比べて+20%
・端領域15の硬さH13:中央領域13の硬さH11に比べて+40%
【0069】
(実施例2)
実施例1のマットレス1と、ピローを準備した。
【0070】
(比較例1)
ウレタン製のマットレスを準備した。
【0071】
(比較例2)
羽毛布団を準備した。
【0072】
(比較例3)
第3部分30の高さT3が第1部分10の高さT1及び第2部分20の高さT2と同一であること以外は、実施例1の場合と同一のマットレスを準備した。
【0073】
〔沈み込み量の評価〕
実施例1,2及び比較例1,2において、人が横臥した場合の沈み込み量を測定した。結果を
図12に示す。実施例1のマットレス1における沈み込み量は、比較例1のウレタン製のマットレス及び比較例2の羽毛布団に比べて全体的に小さかった。
【0074】
〔血流の評価〕
実施例1及び比較例1,3において、横臥状態且つ睡眠状態にある人の血流の量を測定した。結果を
図13に示す。実施例1のマットレス1における血流の量は、比較例1及び比較例3の場合に比べて大きかった。
【0075】
〔リラックス度の評価〕
実施例1及び比較例1,3において、横臥状態且つ睡眠状態にある人の脳波を測定した。また、脳波中のα波の含有率を算出した。α波の含有率が大きいほど、リラックス度が高いと言われている。結果を
図14に示す。実施例1のマットレス1におけるα波の含有率は、比較例1及び比較例3の場合に比べて大きかった。
【0076】
実施例1及び比較例1,3において、横臥状態且つ睡眠状態にある人の心電図を測定した。LLF/HFは、交感神経活動の指標である。LF/HFが小さいほど、リラックス度が高いと言われている。結果を
図15に示す。実施例1のマットレス1におけるLF/HFは、比較例1及び比較例3の場合に比べて小さかった。
【0077】
〔体圧分布の評価〕
実施例1及び比較例1,2において、横臥状態にある人に加わる体圧の分布を測定した。結果を
図16に示す。
図16に示すように、比較例1,2の場合は、8.0kPa以上の体圧が腰に加えられていた。一方、実施例1においては、腰に加わる耐圧は最大でも6.0kPa以上7.0kPa未満の範囲内であった。