(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144266
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】基板処理方法、および、基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20220926BHJP
H01L 21/306 20060101ALN20220926BHJP
【FI】
H01L21/308 F
H01L21/306 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045187
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝佳
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA40
5F043BB27
5F043BB30
5F043DD13
5F043DD30
5F043EE07
5F043EE08
(57)【要約】
【課題】基板の主面に形成された凹部内の被除去層をエッチングする構成において、凹部内のエッチング液の残存を抑制できる基板処理方法、および、基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理方法は、凹部100を形成する凹部形成面104を含む上面を有し、凹部100内に金属層103が形成されている基板Wを処理する。エッチングイオン111を含有するエッチング液110が基板Wの上面に供給され、金属層103がエッチングされる。基板Wの上面上のエッチング液110が濃縮される。エッチング液110の濃縮によって露出した凹部形成面104が親水化される。基板Wの上面にリンス液113を供給することによって、エッチングイオン111がリンス液113中に拡散される。基板Wの上面からリンス液113が除去される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を形成する凹部形成面を含む主面を有し、前記凹部内に被除去層が形成されている基板を処理する基板処理方法であって、
エッチングイオンを含有するエッチング液を前記基板の主面に供給して、前記被除去層をエッチングするエッチング工程と、
前記基板の主面上の前記エッチング液を濃縮する濃縮工程と、
前記エッチング液の濃縮によって露出した前記凹部形成面を親水化する親水化工程と、
前記親水化工程の後、前記基板の主面にリンス液を供給することによって、前記エッチングイオンを前記リンス液中に拡散させるイオン拡散工程と、
前記基板の主面から前記リンス液を除去するリンス液除去工程とを含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記凹部の幅が5nm以下である、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記被除去層が金属層である、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記イオン拡散工程が、前記凹部内において前記リンス液と前記エッチング液とが接触することによって発生するイオン濃度勾配を利用して前記エッチングイオンを前記リンス液中に拡散させる工程を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記リンス液除去工程の後、前記イオン拡散工程および前記リンス液除去工程が少なくとも一回ずつ繰り返される、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記親水化工程が、前記凹部形成面を酸化する酸化工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記酸化工程が、前記基板の主面に液状酸化剤を供給する液状酸化剤供給工程を含む、請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記イオン拡散工程の前に、前記基板の主面に供給された液状酸化剤を前記基板の主面から除去する酸化剤除去工程をさらに含む、請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記酸化工程が、前記基板の主面へのガス状酸化剤の供給、および、前記基板の主面へ光の照射の少なくともいずれかを実行するドライ酸化工程を含む、請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記濃縮工程が、前記基板の主面を乾燥させる乾燥工程を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記エッチング工程が、基板保持部材に保持された前記基板の主面に向けてエッチング液ノズルから前記エッチング液を吐出して前記エッチング液を前記基板の主面に供給するエッチング液供給工程を含み、
前記乾燥工程が、前記基板の主面の中心部を通り前記基板の主面に対して直交する回転軸線まわりに前記基板保持部材を回転させることによって前記基板を回転させて、前記エッチング液に含有される溶媒成分を前記基板の主面から蒸発させる回転蒸発工程を含む、請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記乾燥工程が、前記基板の主面に接する空間を減圧することによって前記エッチング液に含有される溶媒成分を前記基板の主面から蒸発させる減圧蒸発工程を含む、請求項10または11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
凹部を形成する凹部形成面を含む主面を有し、前記凹部内に被除去層が形成されている基板を処理する基板処理装置であって、
エッチングイオンを含有し前記被除去層をエッチングするエッチング液を前記基板の主面に供給するエッチング液供給部材と、
前記基板の主面上の前記エッチング液を濃縮するエッチング液濃縮部材と、
前記エッチング液の濃縮によって露出した前記凹部形成面を親水化する親水化部材と、
前記エッチングイオンを液中に拡散させるリンス液を前記基板の主面に供給するリンス液供給部材と、
前記基板の主面から前記リンス液を除去するリンス液除去部材とを含む、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理方法、および、基板を処理する基板処理装置に関する。
処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウェハ、液晶表示装置および有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
エッチングによって形成されるパターン形状は種々である。パターンの微細化や電子部品の三次元構造化に伴い、開口が狭い凹部をエッチングにより形成することが要求されている。
そこで、下記特許文献1には、開口が狭い凹部へのエッチング液の進入を促進するために、凹部の表面を親水化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エッチング液は、狭所において移動が制限される。そのため、特許文献1において、開口が狭い凹部に進入したエッチング液は、凹部内から充分に除去できないおそれがある。
そこで、この発明の1つの目的は、基板の主面に形成された凹部内の被除去層をエッチングする構成において、凹部内のエッチング液の残存を抑制できる基板処理方法、および、基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の一実施形態は、凹部を形成する凹部形成面を含む主面を有し、前記凹部内に被除去層が形成されている基板を処理する基板処理方法を提供する。
前記基板処理方法は、エッチングイオンを含有するエッチング液を前記基板の主面に供給して、前記被除去層をエッチングするエッチング工程と、前記基板の主面上の前記エッチング液を濃縮する濃縮工程と、前記エッチング液の濃縮によって露出した前記凹部形成面を親水化する親水化工程と、前記親水化工程の後、前記基板の主面にリンス液を供給することによって、前記エッチングイオンを前記リンス液中に拡散させるイオン拡散工程と、前記基板の主面から前記リンス液を除去するリンス液除去工程とを含む。
【0006】
この基板処理方法によれば、金属層等の被除去層がエッチング液によって除去された後に、エッチング液が濃縮される。そのため、エッチング液が凹部内に残存する一方で、凹部形成面が露出する。そのため、その後の親水化工程によって、凹部形成面を良好に親水化することができる。
凹部形成面が親水化された後に、基板の主面にリンス液が供給されるため、リンス液が凹部内に進入しやすい。凹部内に進入したリンス液が濃縮されたエッチング液と接触するため、イオン濃度の差(イオン濃度勾配)が発生する。詳しくは、濃縮によってエッチングイオンの濃度が高まっているエッチング液と、エッチングイオンを含有しないリンス液とが接触する。そのため、エッチングイオンの濃度を均一化するために、エッチングイオンがリンス液中に拡散する。それにより、エッチングイオンが凹部外へ移動し、凹部内におけるエッチング液の残存を抑制できる。その後、基板の主面上からリンス液を除去することで、基板の主面上からエッチングイオンを除去できる。そのため、リンス液が濃縮されてエッチングイオンが凹部内に残留することを抑制できる。
【0007】
この発明の一実施形態では、凹部の幅が5nm以下である。そうであれば、凹部内へのリンス液の移動が制限されやすい。そこで、エッチング液の濃縮した後に凹部形成面を親水化すれば、凹部内へのリンス液の進入を促進することができる。
この発明の一実施形態では、前記リンス液除去工程の後、前記イオン拡散工程および前記リンス液除去工程が少なくとも一回ずつ繰り返される。この方法によれば、一度のリンス液による拡散だけで凹部内に残存するエッチングイオンが充分に除去できない場合であっても、リンス液による拡散を複数回実行することで、凹部内に残存するエッチングイオンを充分に除去することができる。
【0008】
この発明の一実施形態では、前記親水化工程が、前記凹部形成面を酸化する酸化工程を含む。
この発明の一実施形態では、前記酸化工程が、前記基板の主面に液状酸化剤を供給する液状酸化剤供給工程を含む。この方法によれば、エッチング液の供給、および、リンス液の供給の間に実行される凹部形成面の親水化が液状酸化剤、すなわち液体の供給によって達成される。そのため、ガス状酸化剤の供給または紫外線の照射によって凹部形成面を親水化する場合とは異なり、親水化のために基板を別のチャンバに移動させる必要がない。そのため、基板処理を速やかに実行することができる。
【0009】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記イオン拡散工程の前に、前記基板の主面に供給された液状酸化剤を前記基板の主面から除去する酸化剤除去工程をさらに含む。
この方法によれば、基板の主面にリンス液を供給する前に、基板の主面から液状酸化剤が除去される。そのため、基板の主面に供給されたリンス液に酸化剤が混入してリンス液中のイオン濃度が上昇することを抑制できる。したがって、濃縮されたエッチング液とリンス液とが接触することによって生じるイオン濃度勾配が減少することを抑制できる。その結果、凹部内におけるエッチング液の残存を抑制できる。
【0010】
この発明の一実施形態では、前記酸化工程が、前記基板の主面へのガス状酸化剤の供給、および、前記基板の主面へ光の照射の少なくともいずれかを実行するドライ酸化工程を含む。この方法によれば、液体を用いることなく凹部形成面を親水化することができる。そのため、基板の親水化に用いられる液体がリンス液に混入することによるリンス液中のイオン濃度の上昇を防止できる。
【0011】
この発明の一実施形態では、前記濃縮工程が、前記基板の主面を乾燥させる乾燥工程を含む。
この発明の一実施形態では、前記エッチング工程が、基板保持部材に保持された前記基板の主面に向けてエッチング液ノズルから前記エッチング液を吐出して前記エッチング液を前記基板の主面に供給するエッチング液供給工程を含む。そして、前記乾燥工程が、前記基板の主面の中心部を通り前記基板の主面に対して直交する回転軸線まわりに前記基板保持部材を回転させることによって前記基板を回転させて、前記エッチング液に含有される溶媒成分を前記基板の主面から蒸発させる回転蒸発工程を含む。
【0012】
基板の主面へのエッチング液の供給と、基板の主面からのエッチング液の溶媒成分の蒸発とが、いずれも、基板保持部材に基板を保持させた状態で実行される。そのため、エッチングの終了後、速やかにエッチング液を濃縮することができる。
この発明の一実施形態では、前記乾燥工程が、前記基板の主面に接する空間を減圧することによって前記エッチング液に含有される溶媒成分を前記基板の主面から蒸発させる減圧蒸発工程を含む。この方法によれば、基板の主面に接する空間の減圧によってエッチング液を速やかに濃縮できる。
【0013】
この発明の他の実施形態は、凹部を形成する凹部形成面を含む主面を有し、前記凹部内に被除去層が形成されている基板を処理する基板処理装置を提供する。前記基板処理装置は、エッチングイオンを含有し前記被除去層をエッチングするエッチング液を前記基板の主面に供給するエッチング液供給部材と、前記基板の主面上の前記エッチング液を濃縮するエッチング液濃縮部材と、前記エッチング液の濃縮によって露出した前記凹部形成面を親水化する親水化部材と、前記エッチングイオンを液中に拡散させるリンス液を前記基板の主面に供給するリンス液供給部材と、前記基板の主面から前記リンス液を除去するリンス液除去部材とを含む。この基板処理装置によれば、上述した基板処理方法と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】
図1Aは、処理対象となる基板のデバイス面の表層部の構造を説明するための模式的な断面図である。
【
図2A】
図2Aは、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための平面図である。
【
図2B】
図2Bは、前記基板処理装置の構成を説明するための立面図である。
【
図3】
図3は、前記基板処理装置に備えられるウェット処理ユニットの構成例を説明するための断面図である。
【
図4】
図4は、前記基板処理装置の制御に関する構成例を説明するためのブロック図である。
【
図5】
図5は、前記基板処理装置によって実行される基板処理の一例を説明するための流れ図である。
【
図6A】
図6Aは、前記基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。
【
図6B】
図6Bは、前記基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。
【
図6C】
図6Cは、前記基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。
【
図6D】
図6Dは、前記基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、前記基板処理中の基板の上面付近の様子を説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、前記基板処理の別の例を説明するための流れ図である。
【
図9】
図9は、この発明の第2実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための平面図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る基板処理装置に備えられるガス酸化処理ユニットを説明するための模式的な断面図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る基板処理装置によって実行される基板処理の一例を説明するための流れ図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る基板処理中の基板の上面付近の様子を説明するための模式図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る基板処理装置に備えられる光照射処理ユニットの構成例を説明するための模式的な断面図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係る基板処理装置によって実行される基板処理の別の例を説明するための流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
<処理対象となる基板の表層部の構造>
図1Aは、処理対象となる基板Wのデバイス面の表層部の構造を説明するための模式的な断面図である。
図1Bは、
図1Aに示す矢印IBから見た図である。基板Wは、シリコンウエハ等の基板であり、一対の主面を有する。一対の主面のうち少なくとも一方が、凹凸パターンが形成されたデバイス面である。一対の主面のうちの一方は、凹凸パターンが形成されていない非デバイス面であってもよいし、一対の主面がともにデバイス面であっても、互いに異なる凹凸パターンが形成されている場合もあり得る。
【0016】
少なくとも一方のデバイス面の表層部には、たとえば、複数の凹部100が形成された構造物102と、複数の凹部100にそれぞれ埋設された複数の金属層103とが形成されている。構造物102は、たとえば、酸化シリコン(SiO2)層、窒化シリコン(SiN)等の絶縁層、ポリシリコン等の半導体層、またはこれらの組み合わせであってもよい。金属層103は、たとえば、窒化チタンである。金属層103は、被除去層の一例であるが、被除去層は、金属層に限られない。
【0017】
構造物102は、複数の凹部100をそれぞれ形成する複数の凹部形成面104を有する。凹部形成面104は、基板Wの主面の一部を構成している。凹部形成面104は、凹部100の底部を形成する底面104aと、凹部100の開口を形成する側面104bとを有する。
凹部100は、凹部100の深さ方向Dから見て、たとえば、四角形状であり、凹部100の短辺の幅W1は、1nm以上5nm以下であり、凹部100の長辺の幅W2は、10nm以上50nm以下である。
図1Bとは異なり、凹部100は、深さ方向Dから見て、円形状であってもよい。この場合、凹部100の直径(幅)が1nm以上5nm以下である。
【0018】
<第1実施形態に係る基板処理装置の構成>
図2Aは、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の構成を説明するための平面図である。
図2Bは、基板処理装置1の構成を説明するための立面図である。
基板処理装置1は、基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状を有する。この実施形態では、基板Wは、表層部に構造物102が形成されているデバイス面を上方に向けた姿勢で処理される。
【0019】
基板処理装置1は、基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリアCAが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御するコントローラ3とを備える。
搬送ロボットIRは、キャリアCAと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。
【0020】
各搬送ロボットIR,CRは、たとえば、いずれも、一対の多関節アームARと、上下に互いに離間するように一対の多関節アームARの先端にそれぞれ設けられた一対のハンドHとを含む多関節アームロボットである。
複数の処理ユニット2は、水平に離れた4つの位置にそれぞれ配置された4つの処理タワーを形成している。各処理タワーは、上下方向に積層された複数(この実施形態では、3つ)の処理ユニット2を含む(
図2Bを参照)。4つの処理タワーは、ロードポートLPから搬送ロボットIR,CRに向かって延びる搬送経路TRの両側に2つずつ配置されている(
図2Aを参照)。
【0021】
第1実施形態では、処理ユニット2は、液体で基板Wを処理するウェット処理ユニット2Wである。各ウェット処理ユニット2Wは、チャンバ4と、チャンバ4内に配置された処理カップ7とを備えており、処理カップ7内で基板Wに対する処理を実行する。
チャンバ4には、搬送ロボットCRによって、基板Wを搬入したり基板Wを搬出したりするための出入口(図示せず)が形成されている。チャンバ4には、この出入口を開閉するシャッタユニット(図示せず)が備えられている。
【0022】
図3は、ウェット処理ユニット2Wの構成例を説明するための模式的な断面図である。
ウェット処理ユニット2Wは、基板Wを所定の第1保持位置に基板Wを保持しながら、回転軸線A1(鉛直軸線)まわりに基板Wを回転させるスピンチャック5と、スピンチャック5に保持されている基板Wに上方から対向する対向部材6とをさらに備える。回転軸線A1は、基板Wの中心部を通り、基板Wの主面に対して直交する。すなわち、回転軸線A1は、鉛直に延びる。第1保持位置は、
図3に示す基板Wの位置であり、基板Wが水平な姿勢で保持される位置である。
【0023】
スピンチャック5は、水平方向に沿う円板形状を有するスピンベース21と、スピンベース21の上方で基板Wを把持し第1保持位置に基板Wを保持する複数のチャックピン20と、スピンベース21に上端が連結され鉛直方向に延びる回転軸22と、回転軸22をその中心軸線(回転軸線A1)まわりに回転させる回転駆動部材23とを含む。スピンチャック5は、基板保持部材の一例である。
【0024】
複数のチャックピン20は、スピンベース21の周方向に間隔を空けてスピンベース21の上面に配置されている。回転駆動部材23は、たとえば、電動モータ等のアクチュエータである。回転駆動部材23は、回転軸22を回転させることでスピンベース21および複数のチャックピン20が回転軸線A1まわりに回転する。これにより、スピンベース21および複数のチャックピン20とともに、基板Wが回転軸線A1まわりに回転される。
【0025】
複数のチャックピン20は、基板Wの周縁部に接触して基板Wを把持する閉位置と、基板Wの周縁部から退避した開位置との間で移動可能である。複数のチャックピン20は、開閉機構(図示せず)によって移動される。複数のチャックピン20は、閉位置に位置するとき、基板Wの周縁部を把持して基板Wを水平に保持する。開閉機構は、たとえば、リンク機構と、リンク機構に駆動力を付与するアクチュエータとを含む。
【0026】
対向部材6は、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面との間の空間内の雰囲気を当該空間の外部の雰囲気から遮断する板状の部材である。そのため、対向部材6は、遮断板ともいわれる。
対向部材6は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に上側から対向する対向面6aを有する。対向部材6は、基板Wとほぼ同じ径またはそれ以上の径を有する円板状に形成されている。対向部材6において対向面6aとは反対側には、支持軸33が固定されている。
【0027】
対向部材6は、対向部材6を昇降させる対向部材昇降機構34に接続されている。対向部材昇降機構34は、たとえば、支持軸33を昇降駆動する電動モータまたはエアシリンダを有していてもよいし、これら以外のアクチュエータを有していてもよい。対向部材6は、回転軸線A1まわりに回転可能であってもよい。
処理カップ7は、スピンチャック5に保持されている基板Wから飛散する液体を受ける。処理カップ7は、スピンチャック5に保持された基板Wから外方に飛散する液体を受け止める複数(
図3の例では2つ)のガード30と、複数のガード30によって下方に案内された液体を受け止める複数(
図3の例では2つ)のカップ31と、複数のガード30および複数のカップ31を取り囲む円筒状の外壁部材32とを含む。複数のガード30は、ガード昇降駆動機構(図示せず)によって個別に昇降される。ガード昇降駆動機構は、たとえば、各ガード30を昇降駆動する電動モータまたはエアシリンダを有していてもよいし、これら以外のアクチュエータを有していてもよい。
【0028】
ウェット処理ユニット2Wは、スピンチャック5に保持された基板Wの上面(上側の主面)にエッチング液を供給するエッチング液ノズル10と、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に液状酸化剤を供給する液状酸化剤ノズル11と、スピンチャック5に保持された基板Wの上面にリンス液を供給するリンス液ノズル12とをさらに備える。
エッチング液は、たとえば、フッ酸、または、APM液(アンモニア過酸化水素水混合液)であり、エッチングイオンを含有し、金属層103をエッチングする液体である。エッチングイオンは、たとえば、HF2
-、NH4
+等であり、金属層103を酸化して除去するための成分である。エッチング液がフッ酸である場合、エッチングイオンはHF2
-であり、エッチング液がAPM液である場合、エッチングイオンはNH4
+である。エッチング液に含有される溶媒成分は、たとえば、水である。エッチング液は、凹部100内でのエッチングイオンの移動を促進する塩化アンモニウム等の移動促進剤を含有していてもよい。
【0029】
液状酸化剤は、基板Wの主面を親水化する親水化液の一例である。液状酸化剤は、たとえば、基板Wの主面を酸化することによって基板Wの主面を親水化する液状酸化剤である。液状酸化剤は、たとえば、APM液、過酸化水素水、オゾン水、またはこれらの混合液である。液状酸化剤には、酸化剤として、過酸化水素、オゾン等が含有されている。
リンス液は、主に、エッチング液の溶媒成分(たとえば、水)と同じ成分によって構成されていることが好ましい。リンス液は、たとえば、脱イオン水(DIW)、炭酸水、電解イオン水、希釈濃度(たとえば、1ppm以上で、かつ、100ppm以下)の塩酸水、希釈濃度(たとえば、1ppm以上で、かつ、100ppm以下)のアンモニア水、還元水(水素水)のうちの少なくとも1つを含有する成分である。リンス液には電解質が含有されていないことが特に好ましく、リンス液としてDIWを用いることが特に好ましい。
【0030】
エッチング液ノズル10、および、液状酸化剤ノズル11は、いずれも、少なくとも水平方向に移動可能な移動ノズルである。エッチング液ノズル10および液状酸化剤ノズル11は、複数のノズル移動機構(第1ノズル移動機構35および第2ノズル移動機構36)によってそれぞれ水平方向に移動される。各ノズル移動機構は、対応するノズルを支持するアーム(図示せず)と、対応するアームを水平方向に移動させるアーム移動機構(図示せず)とを含む。各アーム移動機構は、電動モータまたはエアシリンダを有していてもよいし、これら以外のアクチュエータを有していてもよい。この実施形態とは異なり、エッチング液ノズル10および液状酸化剤ノズル11は、共通のノズル移動機構によって一体移動するように構成されていてもよい。
【0031】
エッチング液ノズル10および液状酸化剤ノズル11は、鉛直方向にも移動できるように構成されていてもよい。
この実施形態では、リンス液ノズル12は、水平位置および鉛直位置が固定された固定ノズルであるが、エッチング液ノズル10および液状酸化剤ノズル11と同様に、移動ノズルであってもよい。
【0032】
エッチング液ノズル10は、エッチング液ノズル10にエッチング液を案内するエッチング液配管40の一端に接続されている。エッチング液配管40の他端は、エッチング液タンク(図示せず)に接続されている。エッチング液配管40には、エッチング液配管40内の流路を開閉するエッチング液バルブ50Aと、当該流路内のエッチング液の流量を調整するエッチング液流量調整バルブ50Bとが介装されている。
【0033】
エッチング液バルブ50Aが開かれると、エッチング液流量調整バルブ50Bの開度に応じた流量で、エッチング液が、エッチング液ノズル10の吐出口から下方に連続流で吐出される。エッチング液ノズル10は、エッチング液供給部材の一例である。
液状酸化剤ノズル11は、液状酸化剤ノズル11に液状酸化剤を案内する液状酸化剤配管41の一端に接続されている。液状酸化剤配管41の他端は、液状酸化剤タンク(図示せず)に接続されている。液状酸化剤配管41には、液状酸化剤配管41内の流路を開閉する液状酸化剤バルブ51Aと、当該流路内の液状酸化剤の流量を調整する液状酸化剤流量調整バルブ51Bとが介装されている。
【0034】
液状酸化剤バルブ51Aが開かれると、液状酸化剤流量調整バルブ51Bの開度に応じた流量で、液状酸化剤が、液状酸化剤ノズル11の吐出口から下方に連続流で吐出される。液状酸化剤ノズル11は、液状酸化剤供給部材の一例である。
リンス液ノズル12は、リンス液ノズル12にリンス液を案内するリンス液配管42の一端に接続されている。リンス液配管42の他端は、リンス液タンク(図示せず)に接続されている。リンス液配管42には、リンス液配管42内の流路を開閉するリンス液バルブ52Aと、当該流路内のリンス液の流量を調整するリンス液流量調整バルブ52Bとが介装されている。
【0035】
リンス液バルブ52Aが開かれると、リンス液流量調整バルブ52Bの開度に応じた流量で、リンス液が、リンス液ノズル12の吐出口から連続流で吐出される。リンス液ノズル12は、リンス液供給部材の一例である。
図4は、基板処理装置1の制御に関する構成例を説明するためのブロック図である。
コントローラ3は、マイクロコンピュータを備えており、所定のプログラムに従って、基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。より具体的には、コントローラ3は、プロセッサ(CPU)3Aと、プログラムが格納されたメモリ3Bとを含み、プロセッサ3Aがプログラムを実行することによって、基板処理のための様々な制御処理を実行するように構成されている。
【0036】
特に、コントローラ3は、ウェット処理ユニット2Wを構成する各部材(バルブ、モータ等)、搬送ロボットIR,CR等を制御するようにプログラムされている。コントローラ3は、後述するドライ処理ユニット2Dを構成する部材(バルブ、モータ、電源等)についても同様に制御する。
コントローラ3によってバルブが制御されることによって、対応するノズルからの流体の吐出の有無や、対応するノズルからの流体の吐出流量が制御される。以下の各工程は、コントローラ3がこれらの構成を制御することにより実行される。言い換えると、コントローラ3は、以下の各工程を実行するようにプログラムされている。
【0037】
<基板処理の一例>
図5は、基板処理装置1によって実行される基板処理の一例を説明するための流れ図である。
図5には、主として、コントローラ3がプログラムを実行することによって実現される処理が示されている。
図6A~
図6Dは、基板処理装置1によって実行される基板処理の各工程の様子を説明するための模式図である。
【0038】
基板処理装置1による基板処理では、たとえば、
図5に示すように、基板搬入工程(ステップS1)、エッチング液供給工程(ステップS2)、エッチング液除去工程(ステップS3)、液状酸化剤供給工程(ステップS4)、酸化剤除去工程(ステップS5)、リンス液供給工程(ステップS6)、リンス液除去工程(ステップS7)、および、基板搬出工程(ステップS8)がこの順番で実行される。
【0039】
以下では、基板処理装置1によって実行される基板処理について、主に
図3および
図5を参照して説明する。
図6A~
図6Dについては適宜参照する。
まず、未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CR(
図2Aを参照)によってキャリアCAからウェット処理ユニット2Wに搬入され、スピンチャック5に渡される(基板搬入工程:ステップS1)。これにより、基板Wは、スピンチャック5によって水平に保持される(基板保持工程)。スピンチャック5による基板Wの保持は、リンス液除去工程(ステップS7)が終了するまで継続される。基板Wがウェット処理ユニット2Wに搬入される際、対向部材6は、基板Wと対向部材6との間をノズルが通過できる離間位置(
図3に示す対向部材6の位置)に配置されている。スピンチャック5に基板Wが保持されている状態で、回転駆動部材23が基板Wの回転を開始する(基板回転工程)。
【0040】
次に、搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、基板Wの上面にエッチング液を供給するエッチング液供給工程(ステップS2)が実行される。
具体的には、第1ノズル移動機構35が、エッチング液ノズル10を処理位置に移動させ、エッチング液ノズル10が処理位置に位置する状態で、エッチング液バルブ50Aが開かれる。これにより、
図6Aに示すように、基板Wの上面に向けて、エッチング液ノズル10からエッチング液が吐出される(エッチング液吐出工程)。エッチング液ノズル10から吐出されたエッチング液は、基板Wの上面に着液する。エッチング液は、遠心力の作用によって、基板Wの上面上の全体に広がり、基板Wの上面の全体に供給される(エッチング液供給工程)。
【0041】
この基板処理では、エッチング液ノズル10の処理位置は、エッチング液ノズル10の吐出口が基板Wの上面の中央領域に対向する中央位置である。そのため、エッチング液は、基板Wの上面の中央領域に着液する。この基板処理とは異なり、エッチング液ノズル10は、基板Wの上面に沿って水平に移動しながらエッチング液を吐出してもよい。
エッチング液の吐出は、所定の吐出流量で、所定のエッチング液吐出期間の間継続される。エッチング液吐出期間は、たとえば、5秒以上180秒以下である。エッチング液の吐出流量は、たとえば、500mL/min以上2000mL/min以下である。エッチング液の吐出中、基板Wは、たとえば、300rpm以上1200rpm以下の回転速度で回転される。
【0042】
エッチング液供給工程後、基板Wの上面からエッチング液を除去するエッチング液除去工程(ステップS3)が実行される。
具体的には、エッチング液バルブ50Aを閉じてエッチング液の吐出を停止し、かつ、回転駆動部材23が基板Wの回転を加速させて基板Wを高速回転させる。エッチング液除去工程において、基板Wは、たとえば、1500rpm以上2500rpm以下の回転速度で、たとえば、60秒以上180秒以下の期間の間、回転する。基板Wが高速回転することによって、基板Wの上面からエッチング液が振り切られて基板W外にエッチング液の大部分が排出されるとともに、エッチング液中の溶媒成分が基板Wの上面から蒸発される(第1回転排出工程、第1回転蒸発工程)。これにより、基板Wの上面からエッチング液が除去されて、基板Wの上面が乾燥される(第1乾燥工程)。
【0043】
ただし、詳しくは後述するように、エッチング液は、基板Wの上面から完全に除去されずに、後述するリンス液除去工程(ステップS7)が終了するまでの間、凹部100内に残留する。
基板Wの回転による溶媒成分の蒸発について詳しく説明する。基板Wの高速回転時の遠心力は、基板Wの上面上の液体だけでなく、基板Wの上面に接する雰囲気にも作用する。そのため、
図6Bに示すように、基板Wの遠心力の作用によって、基板W上のエッチング液に接する空間SP1には、基板Wの上面の中心側から周縁側に向かう気流Fが形成される。この気流Fにより、基板W上のエッチング液に接するガス状態の溶媒が基板W上から排除される。そのため、エッチング液中の溶媒成分の蒸発が促進される(第1回転蒸発工程)。
【0044】
エッチング液除去工程では、
図6Bに示すように、対向部材6が離間位置よりも基板Wの上面に近接する減圧位置に配置される。対向部材6が減圧位置に位置する状態で、基板Wを高速回転させて気流Fを形成することで、対向部材6と基板Wとの間の空間SP1を減圧することができる。これにより、エッチング液中の溶媒成分の蒸発を促進することができる(第1減圧蒸発工程)。
【0045】
エッチング液の吐出が停止された後、エッチング液ノズル10は、第1ノズル移動機構35によって退避位置に移動される。エッチング液ノズル10の退避位置は、基板Wの上面に対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する位置である。
エッチング液除去工程の後、基板Wの上面に液状酸化剤を供給する液状酸化剤供給工程(ステップS4)が実行される。
【0046】
具体的には、対向部材昇降機構34が対向部材6を離間位置に配置する。対向部材6が離間位置に位置する状態で、第2ノズル移動機構36が、液状酸化剤ノズル11を処理位置に移動させる。そして、液状酸化剤ノズル11が処理位置に位置する状態で、液状酸化剤バルブ51Aが開かれる。これにより、
図6Cに示すように、基板Wの上面に向けて、液状酸化剤ノズル11から液状酸化剤が吐出される(液状酸化剤吐出工程)。液状酸化剤ノズル11から吐出された液状酸化剤は、基板Wの上面に着液する。液状酸化剤は、遠心力の作用によって、基板Wの上面上の全体に広がり、基板Wの上面の全体に供給される(液状酸化剤供給工程)。
【0047】
この基板処理では、液状酸化剤ノズル11の処理位置は、吐出口が基板Wの上面の中央領域に対向する中央位置である。そのため、液状酸化剤は、基板Wの上面の中央領域に着液する。この基板処理とは異なり、液状酸化剤ノズル11は、基板Wの上面に沿って水平に移動しながら液状酸化剤を吐出してもよい。
液状酸化剤の吐出は、所定の吐出流量で、所定の液状酸化剤吐出期間の間継続される。液状酸化剤吐出期間は、たとえば、5秒以上180秒以下である。液状酸化剤の吐出流量は、たとえば、500mL/min以上2000mL/min以下である。液状酸化剤の吐出中、基板Wは、たとえば、300rpm以上1200rpm以下の回転速度で回転される。
【0048】
液状酸化剤供給工程の後、基板Wの上面上から液状酸化剤を除去する酸化剤除去工程(ステップS5)が実行される。
具体的には、液状酸化剤バルブ51Aを閉じて液状酸化剤の吐出を停止し、かつ、回転駆動部材23が基板Wの回転を加速させて基板Wを高速回転させる。酸化剤除去工程において、基板Wは、1500rpm以上2500rpm以下の回転速度で、たとえば、60秒以上180秒以下の期間の間、回転する。基板Wが高速回転することによって、基板Wの上面から液状酸化剤が振り切られて基板W外に液状酸化剤の大部分が排出されるとともに、液状酸化剤を基板Wの上面から蒸発させることができる(第2回転排出工程、第2回転蒸発工程)。これにより、基板Wの上面から液状酸化剤が除去されて、基板Wの上面が乾燥される(第2乾燥工程)。
【0049】
液状酸化剤除去工程においても、液状酸化剤除去工程と同様に、基板Wの高速回転時の遠心力の作用によって形成された気流Fによって、液状酸化剤の蒸発が促進される。また、液状酸化剤除去工程においても、
図6Bに示すように、対向部材6を減圧位置に配置してもよい(第2減圧蒸発工程)。
液状酸化剤の供給が停止された後、液状酸化剤ノズル11は、第2ノズル移動機構36によって退避位置に移動される。液状酸化剤ノズル11の退避位置は、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する位置である。
【0050】
基板Wの上面上から液状酸化剤が除去された後、基板Wの上面にリンス液を供給するリンス液供給工程(ステップS6)が実行される。
具体的には、対向部材昇降機構34が対向部材6を離間位置に配置する。対向部材6が離間位置に位置する状態で、リンス液バルブ52Aが開かれる。これにより、
図6Dに示すように、基板Wの上面に向けて、リンス液ノズル12からリンス液が吐出される(リンス液吐出工程)。リンス液ノズル12から吐出されたリンス液は、基板Wの上面に着液する。リンス液は、遠心力の作用によって、基板Wの上面上の全体に広がり、基板Wの上面の全体に供給される(リンス液供給工程)。
【0051】
リンス液の吐出は、所定の吐出流量で、所定のリンス液吐出期間の間継続される。液状酸化剤吐出期間は、たとえば、10秒以上180秒以下である。リンス液の吐出流量は、たとえば、500mL/min以上2000mL/min以下である。リンス液の吐出中、基板Wは、たとえば、300rpm以上1200rpm以下の回転速度で回転される。
リンス液供給工程の後、基板Wの上面からリンス液を除去するリンス液除去工程(ステップS7)が実行される。
【0052】
具体的には、リンス液バルブ52Aを閉じてリンス液の吐出を停止し、かつ、回転駆動部材23が基板Wの回転を加速させて基板Wを高速回転させる。リンス液除去工程において、基板Wは、1500rpm以上2500rpm以下の回転速度で、たとえば、60秒以上180秒以下の期間の間、回転する。基板Wが高速回転することによって、基板Wの上面からリンス液が振り切られて基板W外にリンス液の大部分が排出されるとともに、リンス液中の溶媒成分が基板Wの上面から蒸発される(第3回転排出工程、第3回転蒸発工程)。これにより、基板Wの上面からリンス液が除去されて、基板Wの上面が乾燥される(第3乾燥工程)。
【0053】
リンス液除去工程においても、エッチング液除去工程と同様に、基板Wの高速回転時の遠心力の作用によって形成された気流Fによって、リンス液の蒸発が促進される。また、リンス液除去工程においても、
図6Bに示すように、対向部材6を減圧位置に配置してもよい(第3減圧蒸発工程)。
リンス液除去工程(ステップS7)の後、対向部材昇降機構34が対向部材6を離間位置へ移動させ、かつ、回転駆動部材23が基板Wの回転を停止させる。その後、搬送ロボットCRが、ウェット処理ユニット2Wに進入して、スピンチャック5から処理済みの基板Wを受け取って、ウェット処理ユニット2W外へと搬出する(基板搬出工程:ステップS8)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリアCAに収納される。
【0054】
図7は、基板処理中の基板Wの上面付近の様子を説明するための模式図である。
エッチング液供給工程(ステップS2)において基板Wの上面にエッチング液を供給することによって、
図7(a)に示すように、凹部100内の金属層103が除去される(エッチング工程)。エッチング液供給工程の終了時には、
図7(b)に示すように、凹部100内の金属層103が完全に除去されていることが好ましい。
【0055】
その後、エッチング液除去工程(ステップS3)では、エッチング液110が基板W外に排出され、かつ、エッチング液110中の溶媒成分が蒸発される。そのため、エッチング液が濃縮され、
図7(c)に示すように、濃縮されたエッチング液110が凹部100内に残留する(濃縮工程)。
基板Wの主面に設けられている凹部100の幅W1が5nm以下であれば、凹部100が非常に狭い。そのため、溶媒成分の蒸発によってエッチング液110のエッチングイオン111の濃度が上昇することによって、溶媒の蒸気圧が低下する。さらに、凹部100のような狭所では、溶媒の蒸気圧が低下する。そのため、エッチング液除去工程後においても、エッチング液110は完全に除去されずに、凹部100の底部に残存しやすい。
【0056】
溶媒成分の蒸発によって、エッチング液110が凹部100内に残存する一方で、凹部形成面104の側面104bが露出する。なお、
図7(c)とは異なり、凹部形成面104の底面104aの一部が露出している場合もあり得る。
図7(d)に示すように、エッチング液110が濃縮された後、液状酸化剤供給工程(ステップS4)が実行されて、基板Wの上面に液状酸化剤112が供給される。エッチング液除去工程によって凹部形成面104が露出されているため、液状酸化剤112を凹部100内に進入させることで、凹部形成面104(特に、側面104b)を良好に親水化することができる(親水化工程)。液状酸化剤ノズル11(
図3を参照)は、エッチング液110の濃縮によって露出した凹部形成面104を親水化する親水化部材として機能する。
【0057】
その後、
図7(e)に示すように、酸化剤除去工程(ステップS5)において液状酸化剤112が除去される。酸化剤除去工程の後においても、エッチングイオン111は、凹部100内に残留している。
さらにその後、リンス液供給工程(ステップS6)において、リンス液113が基板Wの上面に供給される。これにより、
図7(f)に示すように、凹部100内にリンス液113が進入する。
【0058】
エッチング液110の濃縮によって凹部100内に気液界面が形成されているため、凹部100の開口から気液界面までのリンス液113の導入経路は気相状態である。そのため、リンス液113は、凹部100全体が液体で満たされている場合と比較して、凹部100内に進入しやすい。ただし、凹部100の幅W1が5nm以下であれば、凹部100内へのリンス液113の移動が制限されやすい。しかしながら、凹部形成面104の側面104bは液状酸化剤112によって親水化されている。そのため、リンス液113を凹部100内にスムーズに進入させることができる。
【0059】
幅W1が5nm以下である凹部100は、流体移動ではなくイオン拡散が支配的な拡散層を構成する。凹部100内に進入したリンス液113はエッチング液110と接触するため、凹部100内において、リンス液113とエッチング液110とのイオン濃度の差(濃度勾配)が発生する。詳しくは、エッチングイオン111の濃度が高いエッチング液110と、エッチングイオン111を含有しないリンス液113とが接触する。そのため、エッチングイオン111の濃度を均一化するために、
図7(g)に示すように、エッチングイオン111がリンス液113中に拡散する(イオン拡散工程)。このように、親水化工程の後、基板Wの上面にリンス液113を供給することによって、エッチングイオン111をリンス液113中に拡散させるイオン拡散工程が実行される。やがて、大部分のエッチングイオン111が凹部100外へ移動し、凹部100内に残留するエッチングイオン111の量が低減される。
【0060】
その後、リンス液除去工程(ステップS7)において基板Wの上面からリンス液が除去される。リンス液供給工程においてエッチングイオン111がリンス液113中に拡散しており、大部分のエッチングイオン111がリンス液113とともに基板W外へ排出されている。そのため、
図7(h)に示すように、凹部100からリンス液113を除去することができる。さらに、リンス液除去工程においてリンス液113が濃縮されてエッチングイオン111が凹部100内に残留することを抑制できる。このように、リンス液113は、エッチングイオン111の濃度勾配を発生させることによって、エッチングイオン111を液中に拡散させる液体として機能する。
【0061】
上述の基板処理では、エッチング液110の供給、および、リンス液113の供給の間に実行される凹部形成面104の親水化が液状酸化剤112、すなわち液体の供給によって達成される。そのため、凹部形成面104の親水化をガス状酸化剤の供給または光の照射によって実行する場合(たとえば、後述する第2実施形態)とは異なり、親水化のために基板Wを別のチャンバに移動させる必要がない。そのため、基板処理を速やかに実行することができる。
【0062】
また、上述の基板処理では、基板Wの上面にリンス液113を供給する前に、基板Wの上面から液状酸化剤112が蒸発によって除去される。そのため、基板Wの上面に供給されたリンス液113に液状酸化剤112中の酸化剤(オゾンや過酸化水素)が混入してリンス液113中のイオン濃度が上昇することを抑制できる。したがって、濃縮されたエッチング液110とリンス液113との間のイオン濃度勾配の減少を抑制できる。その結果、凹部100内におけるエッチング液110の残存を抑制できる。
【0063】
さらに、上述の基板処理では、基板Wの上面へのエッチング液110の供給と、基板Wの上面からのエッチング液110の溶媒成分の蒸発とが、いずれも、スピンチャック5に基板Wを保持させた状態で実行される。そのため、エッチングの終了後、速やかにエッチング液110を濃縮することができる。また、対向部材6を減圧位置に配置しながらスピンチャック5を高速回転させることで、基板Wの上面に接する空間SP1の減圧によってエッチング液110を速やかに濃縮できる。
【0064】
エッチング液110の濃縮は、スピンチャック5による基板Wの回転によって主に行われる。したがって、スピンチャック5は、エッチング液濃縮部材として機能する。さらに、リンス液の除去についても、スピンチャック5による基板Wの回転によって主に行われる。したがって、スピンチャック5は、リンス液除去部材としても機能する。
リンス液113によるエッチングイオン111の拡散は、エッチング液110の無限希釈と捉えることができる。そして、拡散による希釈速度Rは、ネルンストの式「R=D・S・(C0-C)/δ」に基づくと、濃度勾配が大きいほど大きくなる。ここで、「D」は、拡散係数を表し、「S」は、固体表面積を表す。「C0」は、濃縮されたエッチング液110中のイオン濃度を表し、「C」は、リンス液113中のイオン濃度を表す。「(C0-C)/δ」は、拡散層の濃度勾配を表す。
【0065】
濃縮されたエッチング液110中のイオン濃度とリンス液113中のイオン濃度との差を大きいほど、エッチング液110の置換効率が向上する。そのため、基板Wへのリンス液113の供給によって、エッチング液110を凹部100から効率的に除去することができる。また、置換効率をより向上させるためには、リンス液113として、イオンを極力含有しない水を用いることが好ましく、DIWを用いることが特に好ましい。
【0066】
図8は、第1実施形態に係る基板処理の別の例を説明するための流れ図である。
図8に示す基板処理では、リンス液除去工程(ステップS6)の後、リンス液供給工程(ステップS6)およびリンス液供給工程(ステップS7)がさらに少なくとも1回ずつ繰り返される。言い換えると、リンス液供給工程(イオン拡散工程)およびリンス液除去工程が交互に複数回ずつ実行される。詳しくは、リンス液除去工程において、リンス液が基板W外へ排出された後に、リンス液ノズル12から基板Wの上面に向けてリンス液が再度供給される。なお、
図8における「N」は、1以上の自然数を意味している。
【0067】
この変形例の基板処理によれば、リンス液113による拡散を複数回実行できる。そのため、一度のリンス液113による拡散だけで凹部100内に残存するエッチングイオン111が充分に除去できない場合であっても、凹部100内に残存するエッチングイオン111を充分に除去することができる。
<第2実施形態に係る基板処理装置の構成>
図9は、第2実施形態に係る基板処理装置1Pの構成を説明するための平面図である。
【0068】
第2実施形態に係る基板処理装置1Pが第1実施形態に係る基板処理装置1(
図3を参照)と主に異なる点は、処理ユニット2が、ウェット処理ユニット2Wおよびドライ処理ユニット2Dを含む点である。
図9において、前述の
図1~
図8に示された構成と同等の構成については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。後述する
図10~
図14についても同様である。
【0069】
図9に示す例では、搬送ロボットIR側の2つの処理タワーが、複数のウェット処理ユニット2Wによって構成されており、搬送ロボットIRとは反対側の2つの処理タワーが、複数のドライ処理ユニット2Dによって構成されている。第2実施形態に係るウェット処理ユニット2Wの構成は、第1実施形態に係るウェット処理ユニット2Wの構成(
図3に示す構成)と同じである。なお、第2実施形態に係るウェット処理ユニット2Wでは、液状酸化剤ノズル11(
図3等を参照)を省略することが可能である。ドライ処理ユニット2Dは、チャンバ4内に配置され、ガス状酸化剤によって基板Wを酸化するガス酸化処理ユニット80を含む。
【0070】
図10は、ガス酸化処理ユニット80の構成例を説明するための模式的な断面図である。ガス酸化処理ユニット80は、基板Wが載置される加熱面82aを有するヒータユニット82と、ヒータユニット82を収容する熱処理チャンバ81とを備えている。
ヒータユニット82は、円板状のホットプレートの形態を有している。ヒータユニット82は、プレート本体82Aおよびヒータ85を含む。ヒータユニット82は、加熱部材ともいう。
【0071】
プレート本体82Aの上面が加熱面82aを構成している。ヒータ85は、プレート本体82A内蔵されている抵抗体であってもよい。ヒータ85は、ヒータ85の温度とほぼ等しい温度に基板Wを加熱できる。ヒータ85は、たとえば、加熱面82aに載置された基板Wを常温以上400℃以下の温度範囲で加熱できるように構成されている。具体的には、ヒータ85には、電源等の通電機構86が接続されており、通電機構86から供給される電流が調整されることによって、ヒータ85の温度が温度範囲内の温度に変化する。
【0072】
熱処理チャンバ81は、上方に開口するチャンバ本体87と、チャンバ本体87の上方で上下動しチャンバ本体87の開口を塞ぐ蓋88とを備えている。ガス酸化処理ユニット80は、蓋88を昇降(上下方向に移動)させる蓋昇降駆動機構89を備えている。チャンバ本体87と蓋88との間は、Oリング等の弾性部材90によって密閉される。
蓋88は、蓋昇降駆動機構89によって、チャンバ本体87の開口を塞いで内部に密閉処理空間SP2を形成する下位置(
図10に実線で示す位置)と、開口を開放するように上方に退避した上位置(
図10に二点鎖線で示す位置)との間で上下動される。密閉処理空間SP2は、基板Wの上面に接する空間である。蓋88が上位置に位置するとき、搬送ロボットCRのハンドHが熱処理チャンバ81内にアクセスできる。
【0073】
基板Wは、ヒータユニット82上に載置されることによって、所定の第2保持位置に水平に保持される。第2保持位置は、
図10に示す基板Wの位置であり、基板Wが水平な姿勢で保持される位置である。
蓋昇降駆動機構89は、電動モータまたはエアシリンダを有していてもよいし、これら以外のアクチュエータを有していてもよい。
【0074】
ガス酸化処理ユニット80は、プレート本体82Aを貫通して上下動する複数のリフトピン83と、複数のリフトピン83を上下方向に移動させるピン昇降駆動機構84とをさらに備えている。複数のリフトピン83は、連結プレート91によって連結されている。複数のリフトピン83は、ピン昇降駆動機構84が連結プレート91を昇降させることによって、加熱面82aよりも上方で基板Wを支持する上位置(
図10に二点鎖線で示す位置)と、先端部(上端部)が加熱面82aよりも下方に没入する下位置(
図10に実線で示す位置)との間で上下動される。ピン昇降駆動機構84は、電動モータまたはエアシリンダを有していてもよいし、これら以外のアクチュエータを有していてもよい。
【0075】
複数のリフトピン83は、ヒータユニット82およびチャンバ本体87を貫通する複数の貫通孔92にそれぞれ挿入されている。熱処理チャンバ81の外から貫通孔92への流体の進入が、リフトピン83を取り囲むベローズ(図示せず)等によって防止されてもよい。
ガス酸化処理ユニット80は、熱処理チャンバ81内の密閉処理空間SP2にガス状酸化剤を導入する複数のガス導入ポート94を備えている。各ガス導入ポート94は、蓋88を貫通する貫通孔である。
【0076】
ガス状酸化剤は、基板Wの主面を親水化する親水化ガスの一例である。ガス状酸化剤は、たとえば、オゾン(O3)ガスである。ガス状酸化剤は、オゾンガスに限られず、たとえば、酸化性水蒸気、過熱水蒸気等であってもよい。
複数のガス導入ポート94には、ガス状酸化剤をガス導入ポート94に供給するガス状酸化剤配管95が接続されている。ガス状酸化剤配管95は、ガス状酸化剤供給源(図示せず)から複数のガス導入ポート94に向かう途中で分岐している。ガス状酸化剤配管95には、その流路を開閉するガス状酸化剤バルブ96Aと、ガス状酸化剤配管95内のガス状酸化剤の流量を調整するガス状酸化剤流量調整バルブ96Bとが介装されている。
【0077】
ガス状酸化剤バルブ96Aが開かれると、複数のガス導入ポート94から密閉処理空間SP2にガス状酸化剤が導入され、基板Wの上面に向けてガス状酸化剤が供給される。複数のガス導入ポート94は、ガス状酸化剤供給部材の一例である。
複数のガス導入ポート94は、ガス状酸化剤に加えて不活性ガスを供給できるように構成されていてもよい(
図10の二点鎖線を参照)。また、密閉処理空間SP2に導入されるガス状酸化剤に不活性ガスを混入させることもでき、不活性ガスの混入度合いによって酸化剤の濃度(分圧)を調整できる。
【0078】
ガス酸化処理ユニット80は、チャンバ本体87に形成され、熱処理チャンバ81の内部雰囲気を排気する複数の排出ポート97を備えている。各排出ポート97には、排出配管98が接続されており、排出配管98には、その流路を開閉する排出バルブ99が介装されている。
<第2実施形態に係る基板処理の一例>
図11は、第2実施形態に係る基板処理装置1Pによって基板処理の一例が行われているときの基板Wの様子を説明するための模式図である。第2実施形態に係る基板処理が、第1実施形態に係る基板処理(
図5を参照)と主に異なる点は、ドライ処理ユニット2Dによって基板Wの親水化が行われる点である。
【0079】
以下では、主に
図10および
図11を参照して、第2実施形態に係る基板処理が第1実施形態に係る基板処理(
図5を参照)と異なる点について詳しく説明する。
まず、未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CR(
図9も参照)によってキャリアCAからウェット処理ユニット2Wに搬入され、スピンチャック5に渡される(第1搬入工程:ステップS10)。これにより、基板Wは、スピンチャック5によって水平に保持される(第1基板保持工程)。そして、
図6Aおよび
図6Bに示すように、エッチング液供給工程(ステップS2)およびエッチング液除去工程(ステップS3)が実行される。
【0080】
エッチング液除去工程の後、搬送ロボットCRがウェット処理ユニット2Wに進入し、スピンチャック5から基板Wを受け取り、ウェット処理ユニット2W外へと搬出する(第1搬出工程:ステップS11)。ウェット処理ユニット2Wから搬出された基板Wは、搬送ロボットCRによってドライ処理ユニット2Dに搬入され、上位置に位置する複数のリフトピン83に渡される(第2搬入工程:ステップS12)。ピン昇降駆動機構84が複数のリフトピン83を下位置に移動させることによって、基板Wが加熱面82aに載置される。これにより、基板Wは、水平に保持される(第2基板保持工程)。
【0081】
その後、蓋88を下降させることによって、チャンバ本体87と蓋88とによって形成される密閉処理空間SP2内で、ヒータユニット82の加熱面82a上に基板Wが載置された状態となる。加熱面82a上に載置された基板Wは、ヒータユニット82によって、所定の酸化温度に加熱される(基板加熱工程、ヒータ加熱工程)。所定の酸化温度は、たとえば、100℃以上で、かつ、400℃以下の温度である。
【0082】
密閉処理空間SP2が形成されている状態で、ガス状酸化剤バルブ96Aが開かれる。これにより、ガス酸化処理が実行される。詳しくは、複数のガス導入ポート94から密閉処理空間SP2にオゾンガス等のガス状酸化剤が導入され、基板Wの上面に向けてガス状酸化剤が供給される(ガス状酸化剤供給工程:ステップS13)。これにより、詳しくは後述するが、凹部形成面104(特に、側面104b)が酸化される(ガス酸化工程、ドライ酸化工程)。すなわち、凹部形成面104(特に、側面104b)が親水化される(親水化工程)。複数のガス導入ポート94は、エッチング液110の濃縮によって露出した凹部形成面104を親水化する親水化部材として機能する。
【0083】
基板Wは、ヒータユニット82上で酸化温度にまで加熱されている。そのため、ガス状酸化剤供給工程では、基板Wを酸化温度に加熱しながら基板Wの上面に向けてガス状酸化剤を供給する加熱酸化工程が実行される。
ガス状酸化剤の供給中には、排出バルブ99が開かれている。そのため、密閉処理空間SP2内のガス状酸化剤は排出配管98から排気される。
【0084】
ガス状酸化剤で基板Wの上面を処理した後、ガス状酸化剤バルブ96Aが閉じられる。これにより、密閉処理空間SP2へのガス状酸化剤の供給が停止される。その後、蓋88が上位置に移動する。
一定時間のガス酸化処理の後、搬送ロボットCRがドライ処理ユニット2Dに進入し、酸化された基板Wをベース72から受け取り、ドライ処理ユニット2D外へと搬出する(第2搬出工程:ステップS14)。具体的には、ピン昇降駆動機構84が複数のリフトピン83が上位置に移動させて、複数のリフトピン83が基板Wをヒータユニット82から持ち上げる。搬送ロボットCRは、複数のリフトピン83から基板Wを受け取る。
【0085】
ドライ処理ユニット2Dから搬出された基板Wは、搬送ロボットCRによってウェット処理ユニット2Wに搬入され、スピンチャック5に渡される(第3搬入工程:ステップS15)。これにより、基板Wは、スピンチャック5によって水平に保持される(第3基板保持工程)。スピンチャック5に基板Wが保持されている状態で、回転駆動部材23が基板Wの回転を開始する(基板回転工程)。
【0086】
その後、
図6Cおよび
図6Dに示すように、リンス液供給工程(ステップS6)およびリンス液除去工程(ステップS7)が実行される。
そして、回転駆動部材23が基板Wの回転を停止させる。搬送ロボットCRが、ウェット処理ユニット2Wに進入して、複数のチャックピン20から基板Wを受け取って、ウェット処理ユニット2W外へと搬出する(第3搬出工程:ステップS17)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリアCAに収納される。
【0087】
図12は、第2実施形態に係る基板処理中の基板Wの上面付近の様子を説明するための模式図である。第2実施形態に係る基板処理では、第1実施形態に係る基板処理とは異なり、基板Wの主面の酸化にガス状酸化剤が用いられる。
エッチング液供給工程(ステップS2)において基板Wの上面にエッチング液を供給することによって、
図12(a)に示すように、凹部100内の金属層103が除去される(エッチング工程)。エッチング液供給工程の終了時には、
図12(b)に示すように、凹部100内の金属層103が完全に除去されていることが好ましい。
【0088】
その後、エッチング液除去工程(ステップS3)では、エッチング液110が基板W外に排出され、かつ、エッチング液110中の溶媒成分が蒸発される。そのため、エッチング液が濃縮され、
図12(c)に示すように、濃縮されたエッチング液110が凹部100内に残留する(濃縮工程)。
第1実施形態においても説明したように、基板Wの主面に設けられている凹部100の幅W1が5nm以下であれば、凹部100が非常に狭く、凹部100の底部にエッチング液110が残留しやすい。
【0089】
溶媒成分の蒸発によって、エッチング液110が凹部100内に残存する一方で、凹部形成面104の側面104bが露出する。
図12(c)とは異なり、凹部形成面104の底面104aの一部が露出している場合もあり得る。エッチング液110が濃縮された後、基板Wがウェット処理ユニット2Wからドライ処理ユニット2Dに搬送される。
図12(d)に示すように、ドライ処理ユニット2Dによって、ガス状酸化剤供給工程(ステップS13)が実行されて、基板Wの上面にガス状酸化剤114が供給される。エッチング液除去工程によって凹部形成面104が露出されているため、ガス状酸化剤114を凹部100内に進入させることで、凹部形成面104(特に、側面104b)を良好に親水化することができる(親水化工程)。
【0090】
その後、基板Wがドライ処理ユニット2Dからウェット処理ユニット2Wに搬送される。そして、リンス液供給工程(ステップS6)において、リンス液113が基板Wの上面に供給される。これにより、
図12(e)に示すように、凹部100内にリンス液113が進入する。
エッチング液110の濃縮によって凹部100内に気液界面が形成されているため、凹部100の開口から気液界面までのリンス液の導入経路は気相状態である。そのため、リンス液113は、凹部100全体が液体で満たされている場合と比較して、凹部100内に進入しやすい。ただし、凹部100の幅W1は5nm以下であれば、凹部100内へのリンス液113の移動が制限されやすい。しかしながら、凹部形成面104の側面104bはガス状酸化剤114によって親水化されている。そのため、リンス液113を凹部100内にスムーズに進入させることができる。
【0091】
幅W1が5nm以下である凹部100は、流体移動ではなくイオン拡散が支配的な拡散層である。凹部100内に進入したリンス液113はエッチング液110と接触するため、リンス液113とエッチング液110とのイオン濃度の差(濃度勾配)が発生する。詳しくは、エッチングイオン111の濃度が高いエッチング液110と、エッチングイオン111を含有しないリンス液113とが接触する。そのため、エッチングイオン111の濃度を均一化するために、
図12(f)に示すように、エッチングイオン111がリンス液113中に拡散する(イオン拡散工程)。このように、親水化工程の後、基板Wの上面にリンス液113を供給することによって、エッチングイオン111をリンス液113中に拡散させるイオン拡散工程が実行される。やがて、大部分のエッチングイオン111が凹部100外へ移動し、凹部100内に残留するエッチングイオン111の量が低減される。
【0092】
その後、リンス液除去工程(ステップS7)において基板Wの上面からリンス液が除去される。そのため、
図12(g)に示すように、凹部100からリンス液113を除去することができる。リンス液供給工程においてエッチングイオン111がリンス液113中に拡散しており、大部分のエッチングイオン111がリンス液113とともに基板W外へ排出されている。したがって、リンス液113が濃縮されてエッチングイオン111が凹部100内に残留することを抑制できる。
【0093】
このように、第2実施形態に係る基板処理では、液体を用いることなく凹部形成面104を親水化することができる。そのため、基板Wの親水化に用いられる液体(第1実施形態の液状酸化剤)がリンス液113に混入することによるリンス液113中のイオン濃度の上昇を防止できる。
さらに、上述の基板処理では、基板Wの上面へのエッチング液110の供給と、基板Wの上面からのエッチング液110の溶媒成分の蒸発とが、いずれも、スピンチャック5に基板Wを保持させた状態で実行される。そのため、エッチングの終了後、速やかにエッチング液110を濃縮することができる。また、対向部材6を減圧位置に配置しながらスピンチャック5を高速回転させることで、基板Wの上面に接する空間SP1の減圧によってエッチング液を速やかに濃縮できる。
【0094】
<ドライ処理ユニットの変形例>
ドライ処理ユニット2Dは、ガス酸化処理ユニット80の代わりに、光照射によって酸化剤を発生させて基板Wを酸化する光照射処理ユニット70を備えていてもよい。
図13は、光照射処理ユニット70の構成例を説明するための模式的な断面図である。
光照射処理ユニット70は、基板Wが載置される載置面72aを有するベース72と、ベース72を収容する光処理チャンバ71と、載置面72aに載置された基板Wの上面に向けて紫外線等の光を照射する光照射部材73と、ベース72を貫通して上下動する複数のリフトピン75と、複数のリフトピン75を上下方向に移動させるピン昇降駆動機構76とを備えている。
【0095】
光処理チャンバ71の側壁には、基板Wの搬入出口71aが設けられており、光処理チャンバ71は、搬入出口71aを開閉させるゲートバルブ71bを有する。搬入出口71aが開かれているとき、搬送ロボットCRのハンドHが光処理チャンバ71にアクセスできる。この変形例では、基板Wは、ベース72上に載置されることによって、所定の第2保持位置に水平に保持される。第2保持位置は、
図13に示す基板Wの位置であり、基板Wが水平な姿勢で保持される位置である。
【0096】
光照射部材73は、たとえば、複数の光照射ランプを含んでいる。光照射ランプは、たとえば、キセノンランプ、水銀ランプ、重水素ランプ等である。光照射部材73は、たとえば、1nm以上400nm以下、好ましくは、1nm以上300nm以下の紫外線を照射するように構成されている。具体的には、光照射部材73には、電源等の通電機構74が接続されており、通電機構74から電力が供給されることによって、光照射部材73(の光照射ランプ)が光を照射する。光照射によって、基板Wの主面に接する雰囲気中にオゾンが発生し、そのオゾンによって基板Wの上面が酸化される。
【0097】
複数のリフトピン75は、ベース72および光処理チャンバ71を貫通する複数の貫通孔78にそれぞれ挿入されている。複数のリフトピン75は、連結プレート77によって連結されている。複数のリフトピン75は、ピン昇降駆動機構76が連結プレート77を昇降させることによって、載置面72aよりも上方で基板Wを支持する上位置(
図13に二点鎖線で示す位置)と、先端部(上端部)が載置面72aよりも下方に没入する下位置(
図13に実線で示す位置)との間で上下動される。ピン昇降駆動機構76は、電動モータまたはエアシリンダを有していてもよいし、これら以外のアクチュエータを有していてもよい。
【0098】
<第2実施形態に係る基板処理の別の例>
図14は、第2実施形態に係る基板処理の別の例を説明するための流れ図である。
図14に示す基板処理が
図11に示す基板処理と異なる点は、ドライ酸化工程として、ガス状酸化剤供給工程(ステップS13)の代わりに、光照射工程(ステップS20)が実行される点である。
【0099】
以下では、主に
図13および
図14を参照して、
図14に示す基板処理について、
図11に示す基板処理との差異点を中心に説明する。
第1搬入工程(ステップS10)~第1搬出工程(ステップS12)までの各工程は、
図11に示す基板処理と同様である。
ウェット処理ユニット2Wから搬出された基板Wは、搬送ロボットCRによってドライ処理ユニット2Dに搬入され、上位置に位置する複数のリフトピン75に渡される(第2搬入工程:ステップS12)。ピン昇降駆動機構76が複数のリフトピン75を下位置に移動させることによって、基板Wが載置面72aに載置される。これにより、基板Wは、水平に保持される(第2基板保持工程)。
【0100】
搬送ロボットCRがドライ処理ユニット2D外に退避した後、基板Wの上面に光を照射する光照射工程(ステップS20)が実行される。具体的には、通電機構74が光照射部材73に電力を供給することによって、基板Wに対する光照射が開始される。これにより、凹部形成面104(特に、側面104b)が酸化される(光照射工程、ドライ酸化工程)。すなわち、凹部形成面104(特に、側面104b)が親水化される(親水化工程)。光照射部材73は、エッチング液110の濃縮によって露出した凹部形成面104を親水化する親水化部材として機能する。
【0101】
図14に示す変形例の基板処理においても、紫外線等の光の照射によって凹部形成面104を親水化することを除いて、基板処理中の基板Wの上面付近の様子は
図12と同様である。詳しくは、
図12(d)ではガス状酸化剤114が供給されているが、
図14に示す基板処理では、ガス状酸化剤114の供給の代わりに、紫外線等の光の照射が行われる。
【0102】
以上のように、液状酸化剤によるウェット酸化(第1実施形態に係る基板処理)と、光照射またはガス状酸化剤によるドライ酸化(第2実施形態に係る基板処理)とを必要に応じて選択できる。
図11および
図14に二点鎖線で示すように、第2実施形態に係る基板処理においても、第1実施形態に係る基板処理と同様に、リンス液除去工程(ステップS6)の後、リンス液供給工程(ステップS6)およびリンス液供給工程(ステップS7)がさらに少なくとも1回ずつ繰り返されてもよい。
図11および
図14における「N」も、
図8と同様に1以上の自然数を意味している。
【0103】
<その他の実施形態>
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
たとえば、凹部100の短辺(幅W1)は、5nmよりも大きい場合であっても、上述の各実施形態に係る基板処理を実行することは可能である。しかしながら、凹部100の短辺(幅W1)は、5nm以下の場合には、エッチング液除去工程において凹部100内にエッチング液が残留しやすいため、上述の各実施形態に係る基板処理を用いてエッチングイオンをリンス液に拡散させることは特に有用である。
【0104】
また、エッチング液除去工程(ステップS3)では、必ずしも基板Wの回転によるエッチング液の振り切りが実行される必要はない。たとえば、ウェット処理ユニット2Wのチャンバ4内を減圧してエッチング液内の溶媒成分を蒸発させてもよい(減圧蒸発工程)。あるいは、エッチング液供給工程の後、ドライ処理ユニット2Dの熱処理チャンバ81へ基板Wを搬送し、熱処理チャンバ81内でエッチング液の溶媒成分を蒸発させてもよい(減圧蒸発工程)。この場合、熱処理チャンバ81内の空間を減圧する真空ポンプ等の減圧装置(図示せず)を設ける必要がある。
【0105】
エッチング液除去工程(ステップS3)では、熱処理チャンバ81を減圧しながら基板Wを加熱してもよいし、熱処理チャンバ81内を減圧することなく基板Wを加熱してもよい(加熱蒸発工程)。
また、上述の各実施形態における基板処理は、基板Wの上面に対して実行されている。しかしながら、各基板処理は、基板Wの下面に対して実行されてもよい。
【0106】
また、処理ユニット2は、ウェット処理ユニット2Wおよびドライ処理ユニット2Dの代わりに、エッチング液、液状酸化剤、リンス液をそれぞれ貯留する複数の処理液貯留槽を有していてもよい。すなわち、基板処理装置1がバッチ式の基板処理装置であってもよい。その場合、基板Wを各処理液貯留槽内の処理液に順次に浸漬させることで基板処理を実行することができる。
【0107】
なお、上述の実施形態では、「水平」、「鉛直」といった表現を用いたが、厳密に「水平」、「鉛直」であることを要しない。すなわち、これらの各表現は、製造精度、設置精度等のずれを許容するものである。
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0108】
1 :基板処理装置
1P :基板処理装置
5 :スピンチャック(基板保持部材、エッチング液濃縮部材、リンス液除去部材)
10 :エッチング液ノズル(エッチング液供給部材)
11 :液状酸化剤ノズル(親水化部材)
12 :リンス液ノズル(リンス液供給部材)
73 :光照射部材(親水化部材)
94 :ガス導入ポート(親水化部材)
100 :凹部
103 :金属層(被除去層)
104 :凹部形成面
110 :エッチング液
111 :エッチングイオン
112 :液状酸化剤
113 :リンス液
114 :ガス状酸化剤
A1 :回転軸線
W :基板