(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144275
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】還元剤の製造方法及び還元性水素水溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20220926BHJP
G21F 9/06 20060101ALI20220926BHJP
C02F 1/68 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C09K3/00 109
C09K3/00 ZAB
G21F9/06 551
C02F1/68 510A
C02F1/68 520B
C02F1/68 530G
C02F1/68 540A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045199
(22)【出願日】2021-03-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】502178953
【氏名又は名称】木村 光夫
(71)【出願人】
【識別番号】502179754
【氏名又は名称】石山 禎子
(71)【出願人】
【識別番号】596121253
【氏名又は名称】會田 光子
(74)【代理人】
【識別番号】100167483
【弁理士】
【氏名又は名称】林 裕己
(72)【発明者】
【氏名】木村 光夫
(57)【要約】
【課題】弱酸性、溶存酸素ゼロの強還元水の水素イオン(プロトン)を発生させる還元剤の製造方法、及び還元性水素水溶液の製造方法を提供する。。
【解決手段】 還元剤の製造方法は、活性炭、骨炭及び活性白土のうち少なくともいずれか1つを含む吸着剤と、ホウ酸カリウム、金属マグネシウム、酸化カルシウムよりなる群から選ばれた1の材料と、ポリスチレンと、流動パラフィンとを反応させて化合物Aを生成する第1の処理と、フタル酸、ポリスチレン及び流動パラフィンを反応させて化合物Bを生成する第2の処理と、亜硫酸ナトリウムとポリスチレンとを反応させて化合物Cを生成する第3の処理と、化合物Aと化合物Bと化合物Cと金属マグネシウムを混合する第4の処理と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭、骨炭及び活性白土のうち少なくともいずれか1つを含む吸着剤と、ホウ酸カリウム、金属マグネシウム、酸化カルシウムよりなる群から選ばれた1の材料と、ポリスチレンと、流動パラフィンとを反応させて化合物Aを生成する第1の処理と、
フタル酸、ポリスチレン及び流動パラフィンを反応させて化合物Bを生成する第2の処理と、
亜硫酸ナトリウムとポリスチレンとを反応させて化合物Cを生成する第3の処理と、
化合物Aと化合物Bと化合物Cと金属マグネシウムを混合する第4の処理と、
を備えることを特徴とする還元剤の製造方法。
【請求項2】
酸化チタンとポリスチレンとを反応させて化合物Aを生成する第1の処理と、
フタル酸、ポリスチレン及び流動パラフィンを反応させて化合物Bを生成する第2の処理と、
亜硫酸ナトリウムとポリスチレンとを反応させて化合物Cを生成する第3の処理と、
化合物Aと化合物Bと化合物Cと金属マグネシウムを混合する第4の処理と、
を備えることを特徴とする還元剤の製造方法。
【請求項3】
フタル酸、ポリスチレン及び流動パラフィンを反応させて化合物Bを生成する第1の処理と、
亜硫酸ナトリウムとポリスチレンとを反応させて化合物Cを生成する第2の処理と、
酸性白土、酸化アルミニウム、またはゼオライトからよりなる群から選ばれた1の物質と化合物Bと化合物Cと金属マグネシウムを混合する第3の処理と、
を備えることを特徴とする還元剤の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか1項に記載の還元剤の製造方法により製造された還元剤を、水に加えて還元性水素水溶液を生成する
ことを特徴とする還元性水素水溶液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素イオン(プロトン)を生成する還元剤の製造方法及び還元性水素水溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラント等において、プラント機器を構成する部材に放射性物質が付着した場合、部材から放射性物質を除去するために化学除染が行われることがある。これに関連する技術として、例えば、放射性物質を含む酸化被膜が付着した除染対象物から、酸化剤等を用いて放射性物質を溶出させて除去する技術が開示されている(例えば、特許文献1。)。この方法では、酸化剤として過マンガン酸を添加した処理水に除染対象物を浸漬させて、酸化被膜に含まれる成分とともに放射性物質を溶出させた後、該処理水をイオン交換樹脂に接触させて、処理水に含まれる放射性物質をイオン交換樹脂に吸着させて除去する。また、当該技術では、処理水から酸化剤を除去するため、上述のように放射性物質を溶出させた後の処理水に還元剤を添加して、酸化剤と還元剤との反応により沈殿物を生成させた後、処理水から該沈殿物を除去することが開示されている。
【0003】
ところで、中性子の速度を核分裂に適したスピードに減速させる減速材がある。核分裂によって放出された中性子は高スピードで動き回っているため効率良く核分裂を起こすことができない。そこで中性子のスピードを落とすための「減速材」が必要となる。減速材としては、水(軽水)、重水、または黒鉛が使われていることが多い。軽水炉の場合、原子炉内が大量の水で満たされており、これにより核分裂反応の速度を一定レベル以下に落とすことができる。
【0004】
なお、還元剤に関して、高還元性を有する水を生成して、その還元性を利用して尿石分解及び脱消臭を行う技術が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-92442号公報
【特許文献2】特許第3715254号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】小川俊雄著、「強電解水の原理と応用」、SLI出版、1995年
【非特許文献2】小川俊雄著、「強電解水の電子活動度とその殺菌作用」、Journalof Atmospheric Electricity, Vol. 18, No. 1, pp. 67-94, 1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように処理水から酸化剤を除去するため、放射性物質を溶出させた後の処理水に還元剤を添加する場合、還元剤は、環境に配慮されたものであって、かつ扱いやすいものが望ましく、例えば、弱酸性で強還元性を有するものが望ましい。
【0008】
また、還元剤を減速材として採用する場合、酸素は放射線の効果を増強する放射線増感剤となり得るため、水中の減速材に対して、溶存酸素をゼロにすることが求められる。
【0009】
そこで、本発明では、弱酸性、溶存酸素ゼロの強還元水の水素イオン(プロトン)を発生させる還元剤の製造方法、及び還元性水素水溶液の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る還元剤の製造方法は、活性炭、骨炭及び活性白土のうち少なくともいずれか1つを含む吸着剤と、ホウ酸カリウム、金属マグネシウム、酸化カルシウムよりなる群から選ばれた1の材料と、ポリスチレンと、流動パラフィンとを反応させて化合物Aを生成する第1の処理と、フタル酸、ポリスチレン及び流動パラフィンを反応させて化合物Bを生成する第2の処理と、亜硫酸ナトリウムとポリスチレンとを反応させて化合物Cを生成する第3の処理と、化合物Aと化合物Bと化合物Cと金属マグネシウムを混合する第4の処理と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の一実施形態に係る還元剤の製造方法は、酸化チタンとポリスチレンとを反応させて化合物Aを生成する第1の処理と、フタル酸、ポリスチレン及び流動パラフィンを反応させて化合物Bを生成する第2の処理と、亜硫酸ナトリウムとポリスチレンとを反応させて化合物Cを生成する第3の処理と、化合物Aと化合物Bと化合物Cと金属マグネシウムを混合する第4の処理と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の一実施形態に係る還元剤の製造方法は、フタル酸、ポリスチレン及び流動パラフィンを反応させて化合物Bを生成する第1の処理と、亜硫酸ナトリウムとポリスチレンとを反応させて化合物Cを生成する第2の処理と、酸性白土、酸化アルミニウム、またはゼオライトからよりなる群から選ばれた1の物質と化合物Bと化合物Cと金属マグネシウムを混合する第3の処理と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施形態に係る還元性水素水溶液の製造方法は、上記のうちいずれかの還元剤の製造方法により製造された還元剤を水に加えて還元性水素水溶液を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、弱酸性、溶存酸素ゼロの強還元水の水素イオン(プロトン)を発生させる還元剤の製造方法、及び還元性水素水溶液の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】強電解水の電子活動度(pe)-pHダイアグラムである。
【
図2】実施例1-1~実施例8の5日間のORPの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態では、まずは、特殊ペレットによる水分子及び流動パラフィン(食品加工用)の水素のイオン化(電子を放出させて陽イオンにする)を行い、pH5~6後半、酸化還元電位(ORP)-500mV~-600後半mVまでの弱酸性、溶存酸素ゼロの強還元水の水素イオン(プロトン)の製造方法を説明する。
【0017】
本実施形態に係る特殊ペレットによる水分子の水素のイオン化と流動パラフィン(食品用)の水素のイオン化反応により、常温常圧の弱酸性溶存酸素ゼロのプロトン水が生成する。このプロトン水は、強力な放射性中性子(トリチウム等)の減速材となり得るものであり、散乱衝突を繰り返して放射性中性子のエネルギーを減速することができる。酸素は放射線の効果を増強する放射線増感剤となり得るため、水中の減速材に対して、溶存酸素をゼロにする必要がある。溶存酸素O2は常磁性を示し、放射性中性子は磁気モーメントを持つ。
【0018】
中性子は電荷を持たない粒子なので、物質中の電子との相互作用で直接電離を起こすことはほとんどない。したがって原子核との弾性衝突による散乱と原子核反応が中性子と物質の主な作用である。
【0019】
エネルギーの大きい(速い)中性子は、物質中で原子核と弾性衝突を繰り返してエネルギーを失い、減速される。弾性衝突(散乱)では、エネルギーE0の中性子が質量数Aの原子核に衝突するとき、1回の衝突で失う最大のエネルギーが4AE0/(A+1)2である。したがって、中性子は軽い原子からなる物質中(水、パラフィン等)ほど効果的にエネルギーを失って減速され、例えば、プロトンとの衝突では最高100%、1回平均40%のエネルギーが中性子から失われることになる。一方、物質中のプロトンは中性子から大きなエネルギーを受け取るため、それ自身が高エネルギーの荷電粒となって、2次的な電離を引き起こす。
【0020】
ところで、中性子過剰の放射性核種(トリチウム)では、中性子が電子と反電子ニュートリノを放出して陽子になる現象、すなわちβ-崩壊が起こる。β-壊変では、質量数が変化しないで、核種が一つ増加する。β-壊変において、原子核から高速の電子が放出されるが、この電子のことをβ-線という。β-壊変の際には電子の他に、反電子ニュートリノが放出されるので、エネルギーはその両者に分配される。
【0021】
β-線の物質との相互作用は、電離作用と制動放射である。β-線もα線と同様に荷電粒であるから、物質中の軌道電子との静電相互作用(クーロン散乱)によってエネルギーを失う。
【0022】
高エネルギーのβ-線が原子核の近くを通過するとき、核の強い電場のために制動(ブレーキ)を受けて進路や速度が変化するが、これによって失ったエネルギーは電磁波として放出される。これを制動放射と呼ぶ。
【0023】
β壊変(崩壊)では、原子核内にある中性子の中に含まれるダウンクォーク(d)(-1/3eの電荷を持つ)2個のうち1個が、ウィークボソン(W-)粒子(中間子)を放出して、アップクォーク(u)(+2/3eの電荷を持つ)に変わり、ウィークボソンW-は、瞬時に電子と反電子ニュートリノに変わってしまう。こうして発生した電子がβ線の放射線として観測される。電子は周囲の物質に衝突し、熱に変わる。反電子ニュートリノは物質とほとんど反応せず、どこかに飛んで行ってしまう。
【0024】
中性子は、減速材の原子核(水素の陽子プロトン)との弾性散乱や非弾性散乱によって減速する。中性子の散乱は、原子核との核力相互作用によって起こされる核散乱である。電磁波や高速粒子(高速な陰極線やα線など)が散乱される場合に、散乱体の内部エネルギーが不変のものを、弾性散乱と呼ぶ。弾性散乱としては、例えば、陽子やα粒子と原子核間のクーロン相互作用によるラザフォード散乱等がある。
【0025】
一方、非弾性散乱では、運動エネルギーの一部が標的物質に与えられる。これにより、標的物質内の原子や分子の内部状態が励起される。標的物質のエネルギーが電子の運動エネルギーに移る散乱前後で散乱体のエネルギー状態が異なる。
【0026】
水中の水素イオンのプロトン化は、上述の通り、中性子から大きなエネルギーを受け取るため、それ自体が高エネルギーの荷電粒子(電荷のある粒子)となって、2次的な電離(イオン化)を引き起こす。このようなプロトンを反跳陽子と呼ぶ。
【0027】
次に、水と反応することで、上述の弱酸性、溶存酸素ゼロの強還元水の水素イオン(プロトン)を生成する特殊ペレットについて説明する。本実施形態に係る特殊ペレットは、吸着能等を有する材料または所定の金属酸化物を含む化合物Aと、フタル酸、ポリスチレン及び流動パラフィンを用いて合成された化合物Bと、高分子電解質を含む化合物Cと、金属マグネシウムと、を含む混合試薬(混合物)である。
【0028】
化合物Aは、吸着能等を有する材料として、例えば、活性炭、骨炭、活性白土、酸性白土、及びゼオライト(モルデナイト、A型等)等のうち少なくとも1つを含む。または化合物Aは、所定の金属酸化物として、酸化チタン、酸化アルミニウム等を含む。化合物Aは、その合成の材料として、ポリスチレンや流動パラフィンを含んでもよい。
【0029】
活性炭は、大きな比表面積と吸着能を持つ多孔質の炭素質物質であり、吸着剤(脱臭)、触媒担体等として用いられる。活性炭の組成は炭素を主成分とし、他に少量の水素、酸素無機成分を含む。活性炭の化学構造はグラファイト(黒鉛)を基本とし、無定形で表面に水酸基-OH、キノン基などの官能基を持っている。官能基は弱酸性であり、吸着サイトは塩基性化合物を吸着する。
【0030】
炭素-炭素結合は、sp起動のsp3混成軌道(正四面体、配位数4)であり、4個の原子結合の鎖状構造によって互いに架橋された構造をとっており、この非晶質部分や結晶子間の表面が吸着サイトになる。活性炭は大部分が炭素で構成されているため、表面の化学的な性質は疎水性である。酸素原子は数%含まれており、主に結晶子と結晶子の連結部の非晶質領域に有機官能基の構成原子として存在している。
【0031】
活性炭の疎水性吸着については、溶質(H+プロトン)が共有結合、水素結合、イオン結合のような強い力ではなく、ファンデルワールス力のような弱い力だけで吸着剤表面に引き付けられ、疎水性分子が水溶液中で不安定なために水からはじき出されるようにして吸着する。溶質と吸着剤の間に疎水結合という特別な結合力があり、これにより吸着する。
【0032】
一方、高分子吸着に関しては、ポリスチレン樹脂などの高分子は界面に対する親和力が非常に高いことが多いため、一般に吸着等温線の形状は低濃度で急に立ち上がり、高濃度で飽和するので、条件によっては極低濃度で既に飽和に達することがある。
【0033】
ゼオライトは、沸石類と呼ばれる結晶性アルミノ珪酸塩の総称であり、結晶構造に応じて、モルデナイト(Na8[(AlO2)3(SiO2)48]24・H20)、A型ゼオライト(Na12[(AlO2)12(S2O2)12]27・H2O)、等が存在する。
【0034】
ゼオライトは、水分子を連続的に脱水、復水したり(ゼオライト水)、陽イオン交換能や分子ふるい作用(多孔性固体物質の分子スケールのふるい効果分離)を有する固体酸性触媒である。ゼオライトは、吸着剤、廃水処理剤などの作用がある。
【0035】
固体酸とは、塩基を化学的に吸着する固体であって、反応物質にプロトンを与えるか、反応物質から電子対を受取る固体である。ゼオライトにプロトンあるいは多価のカチオンを導入すると、ゼオライトの陽イオン交換能及び分子ふるい作用等の機能による、固体酸性が発現する(例えば、個体酸Al2O3など)。
【0036】
固相-液相の界面にて互いに接触する物質相が界面で化学変化を起こさない場合において、いずれかの相の物質またはその相の中に溶解している溶質(H+プロトンなど)の界面における濃度がバルク(容積化学成分)のそれよりも大きい場合に、吸着が起こる。吸着は、二相の界面で分子やイオンが濃縮される現象で、一般に有機化合物は水溶性の表面に濃縮され正の吸着を起こす。このような液体の表面では溶質の吸着に伴って表面張力の変化が現れる。物理的吸着相互作用としては、表面と分子との間の静電的な力、誘起的相互作用、分散力が考えられる。その上、吸着分子相互の凝集力が加わる。
【0037】
骨炭とは、動物の骨を800℃以上の温度で蒸し焼きにして、完全に有機物を炭化させて作った多孔質の黒い粒状の炭である。骨炭の組成は、例えば、リン酸カリウム(70~75%)、炭酸カリウム(7~8%)、炭素(8~10%)、硫化カルシウム(少量)、炭酸マグネシウム(少量)、鉄(少量)である。骨炭の表面は、吸着力の強い炭素によって被覆されている。
【0038】
また、骨炭は、イオン交換能が大きく、電気化学的性質を有し、さらに、触媒作用、触媒作用、イオンふるい効果作用を有する。イオン交換能は、固体または液体中のイオンが、それと接する外部溶液中にある同符号のイオンと交換する現象及び応用を目的とするものである。電気化学的性質とは、全ての化学変化において、電子は主要な役割を担っているが、電気化学はそれらのうち電荷や電極電位が明白に関与している化学現象である。吸着作用とは、二相の界面で分子やイオンが濃縮される現象である。触媒作用とは、反応式に現れない物質が反応速度を増大させる働きである。イオンふるい効果とは、水溶液中に存在する小さなイオンはよく吸着(イオン交換)されるが、大きなイオンは吸着されない現象である。
【0039】
ポリスチレン等の芳香族求核置換種主成物は多数のイオン性解離基をもつ巨大分子であり、水溶性中では巨大な電荷を持つマクロイオンあるいは高電荷イオンと反対符号の小さな電荷をもち、多数の対イオンに解離する高分子電解質である。高分子電解質については、マクロイオンの鎖に沿う電荷の線密度は極めて高い。対イオンが獲得する静電気エネルギーは大きく、熱エネルギーの数倍にも達する。
【0040】
例えば、ポリスチレンと亜硫酸ナトリウムの合成で生成されるポリスチレンスルホン酸は水溶液中で対イオンになって、H+、Na+に完全に解離する。高分子鎖中の解離基が高分子イオン(ポリイオン)と対イオン(低分子イオン)に解離するので、この際、液は電流を通過させる。
【0041】
流動パラフィン等の炭化水素は、適当な塩基で処理されると、H-C結合を開裂(結合開裂のヘテロリシスで一方の原子(炭素)だけに2つの電子が偏って開裂するイオン開裂)して、塩基は水素イオンを与え、自らはカルボアニオンとなる性質がある。このように炭化水素は酸性の水素を持っているので、炭化水素酸である(C-カルボアニオン)。
【0042】
炭化水素酸の酸性度は、水素イオンを脱離した炭素上に残った非共有電子対(孤立電子対)が共役塩基であるカルボアニオンにおいて安定化されている度合いが大きいほど大きい。炭化水素中アセチレンが最も強い酸であるが、これは共役塩基であるアセチリドイオンにおいて非共有電子対がS軌道の影響により炭素核に固く保持されて安定化されているためである。
【0043】
カルボアニオンに関して、sp3混成軌道のC原子は負電荷を分散できる基が置換しているC-H結合をもつ化合物が塩基と反応するときに生じ、多くの有機反応、特に塩基性条件下の反応中間体として考えられる。反応中間体は、1つの化学反応過程において単離することができず、その中間に生じる不安定な分子種でイオン種、ラジカル、カルベン(反応中に生じる不安定な中間体)であって電荷のない2価のC原子である。メチレン(CH2)の結合に関与していない電子2個は対を作っている一重項の方がより不安定であり、三重項の方が安定である。
【0044】
次に水分子に関して言及する。大きさの等しい正負の電荷が無限小の間隔で対となって存在する状態のことを電気双極子といい、電場がかかっていない状態でも分子がもつ電気双極子を永久双極子という。例えば水分子では、酸素原子が電子を引き付けており、分子形状も曲がっているため、酸素原子が負、水素原子が正に偏った電気双極子とみなすことができる。電荷の大きさが電子の電荷に等しく、間隔が0.1[mm]のときの双極子モーメントの大きさは、4.8デバイ(debye:電気双極子モーメントを表す単位の一つ。)で分子の双極子モーメントの大きさは、一般にほぼこの程度である。
【0045】
ファンデルワールス分子は、希ガス原子や化学的に飽和した分子の間にファンデルワールス力によって相互作用が働いた結果,きわめて弱い結合ながら集合体を形作る分子である。常温、常圧下で安定に存在する分子や希ガス原子は、低温や高圧常態で弱いファンデルワールス引力による結合または水素結合を作ることができる水分子などの分子や他の分子との衝突によって解離しやすい。
【0046】
求核剤(ルイス塩基)は、電子不足反応中心に対して高い親和性をもつ試剤である。一般に非共有電子対(孤立電子対)を持ち、負電荷をものであり、他の分子を攻撃し、結合を形成する場合、結合電子2個を供与する。例えば、Oには、2個の電子対がある。また、求核剤は、塩基で反応する相手分子が酸性の大きな水素原子を有する場合、求核反応より先にH+プロトン引き抜き反応が起こる。
【0047】
次の水素の還元性について説明する。水素は、優れた還元剤であることが知られている。還元剤は、対象物質を還元する作用を有するものであり、一般的に、対象物質から酸素を奪うもの、対象物質に水素を与えるもの、または対象物質に電子を与えるものである。
【0048】
図1は、強電解水の電子活動度(pe)-pHダイアグラム(非特許文献1及び非特許文献2のFig. 2.2参照)である。
図1では、水1[l(リットル)]について食塩1.0[g]を添加した0.1%食塩水をpe-pHダイアグラムが実践で示されている。水はその電気伝導度が小さすぎて、電解電流をある大きさ以上にすることができないため、電解物質として少量の食塩を添加している。
【0049】
図1のpe-pHダイアグラムは、無限希釈食塩水の中に存在する電子、水素イオン、水素、酸素、塩素の各成分の濃度の関係を示すものである。実際に生成される電解水のpe、pHの値を測定して、このダイアグラムの面上のどの位置にあるかを見ることによって、その電解水の性質を知ることができる。電子活動度(有効電子濃度)pe、水素イオン活動度(濃度)pHと、塩素成分の濃度の関係がpe-pHダイアグラムから確認できる。
【0050】
また、電子活動度(pe)と酸化還元電位(ORP)EHとは、25℃、1気圧の標準状態で、pe=16.90EH[V]で表すことができ、これより、EH[V]=0.05917peとなる。
【0051】
よって、
図1のpe-pHダイアグラムにおいて、pH5~6後半、かつ酸化還元電位(ORP)-500mV~-600後半mVの領域の測定値をプロットすると、その範囲は、水素濃度が高く、かつpe=-8~-12であるので、強力な電子供与能力があることが分かる。
【0052】
そして、例えば、pe=10(ORP:0.6V)の水からpe=-11の強還元水がえら得たとする。pe=-11の強還元水には1011[mol/l]の有効電子濃度があり、強力な電子供与能力がある。これがpe=10に戻るまでの差Δpe=21によって強い還元力が発揮されることになる。
【0053】
上記のことに鑑みて、本実施形態では、pH5~6後半、酸化還元電位(ORP)-500mV~-600後半mVまでの弱酸性、溶存酸素ゼロの強還元水を生成する還元剤を製造する。また、その還元剤を水に加えて、還元性水素水溶液(水素イオン(プロトン)含有水溶液)を製造する。
【0054】
本実施形態に係る混合物(化合物A、化合物B、化合物C、金属マグネシウム)である特殊ペレットを水と接触させると、これらの混合物との相互作用により、水の分解が行なわれる。以下では、当該混合物の生成及びその混合物を用いた測定に関する実施例を説明する。
【実施例0055】
[実施例1-1]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物Aa1の合成
活性炭:20g、ホウ酸カルシウム:10g、ポリスチレン樹脂:70g、及び流動パラフィン:20mlを混合して攪拌した後、その混合したものを金属製の容器に入れ、加熱器を用いてその容器を200℃で1時間加熱する。加熱処理後、加熱器から容器を取り出し、自然冷却させる。これにより、化合物Aa1が生成される。
(2)化合物Bの合成
フタル酸:50g、ポリスチレン樹脂:50g、及び流動パラフィン:20mlを混合して攪拌した後、その混合したものを金属製の容器に入れ、その容器を反応器に入れ、加熱器を用いてその容器を170℃で1時間加熱する。加熱処理後、加熱器から容器を取り出し、自然冷却させる。これにより、化合物Bが生成される。
(3)化合物Cの合成
亜硫酸ナトリウム:70g、ポリスチレン樹脂:30gを混合して攪拌した後、その混合したものを金属製の容器に入れ、加熱器を用いてその容器を200℃で1時間加熱する。加熱処理後、加熱器から容器を取り出し、自然冷却させる。これにより、化合物Cが生成される。
(4)化合物Aa1:40g、化合物B:80g、化合物C:10g、及び金属マグネシウム(リボン状切粉):7gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
1日目は、常温常圧下で、上記で作製したティーバッグを水道水1[l]を入れた容器に入れ、24時間そのまま放置する。24時間経過後、ORP,pH、溶存酸素量(DO)を測定する。
2日目は、同じ容器に新たに水道水1[l]を入れ、それに前日使用した特殊ペレットを入れる。前日と同様に24時間そのまま放置し、ORP、pH、DOを測定する。上記の工程を5日間行う。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表1】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):6.55、ORP(平均):-640.2[mV]であり、特にORPに関しては右肩下がりで下降している。これより、実施例1-1の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱酸性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0056】
[実施例1-2]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物Aa2の合成
活性炭:20g、金属マグネシウム(80メッシュ):10g、ポリスチレン樹脂:70g、及び流動パラフィン:20mlを混合して攪拌した後、その混合したものを金属製の容器に入れ、加熱器を用いてその容器を200℃で1時間加熱する。加熱処理後、加熱器から容器を取り出し、自然冷却させる。これにより、化合物Aa2が生成される。
(2)化合物Bの合成
フタル酸:60g、ポリスチレン樹脂:40g、及び流動パラフィン:20mlを混合して攪拌した後、その混合したものを金属製の容器に入れ、その容器を反応器に入れ、加熱器を用いてその容器を170℃で1時間加熱する。加熱処理後、加熱器から容器を取り出し、自然冷却させる。これにより、化合物Bが生成される。
(3)化合物Cの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Cを生成する。
(4)化合物Aa2:40g、化合物B:60g、化合物C:10g、及び金属マグネシウム(リボン状切粉):7gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1-1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表2】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):6.53、ORP(平均):-595.4[mV]である。これより、実施例1-2の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱酸性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0057】
[実施例1-3]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物Aa3の合成
活性炭:30g、酸化カルシウム:10g、ポリスチレン樹脂:70g、及び流動パラフィン:20mlを混合して攪拌した後、その混合したものを金属製の容器に入れ、加熱器を用いてその容器を200℃で1時間加熱する。加熱処理後、加熱器から容器を取り出し、自然冷却させる。これにより、化合物Aa3が生成される。
(2)化合物Bの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Bを生成する。
(3)化合物Cの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Cを生成する。
(4)化合物Aa3:40g、化合物B:60g、化合物C:10g、及び金属マグネシウム(リボン状切粉):8gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1-1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表3】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):6.652、ORP(平均):-552[mV]である。これより、実施例1-3の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱酸性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0058】
[実施例1-4]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物Aa4の合成
活性炭:10g、骨炭:10g、金属マグネシウム粉末(80メッシュ):10g、ポリスチレン樹脂:70g、及び流動パラフィン:20mlを混合して攪拌した後、その混合したものを金属製の容器に入れ、加熱器を用いてその容器を200℃で1時間加熱する。加熱処理後、加熱器から容器を取り出し、自然冷却させる。これにより、化合物Aa4が生成される。
(2)化合物Bの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Bを生成する。
(3)化合物Cの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Cを生成する。
(4)化合物Aa4:40g、化合物B:65g、化合物C:15g、及び金属マグネシウム(リボン状切粉):10gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1-1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表4】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):6.84、ORP(平均):-554.6[mV]である。これより、実施例1-4の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱酸性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0059】
[実施例1-5]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物Aa5の合成
活性炭:10g、活性白土:10g、金属マグネシウム粉末(80メッシュ):10g、ポリスチレン樹脂:70g、及び流動パラフィン:20mlを混合して攪拌した後、その混合したものを金属製の容器に入れ、加熱器を用いてその容器を200℃で1時間加熱する。加熱処理後、加熱器から容器を取り出し、自然冷却させる。これにより、化合物Aa5が生成される。
(2)化合物Bの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Bを生成する。
(3)化合物Cの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Cを生成する。
(4)化合物Aa5:40g、化合物B:65g、化合物C:15g、及び金属マグネシウム(リボン状切粉):10gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1-1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表5】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):6.61、ORP(平均):-568.6[mV]である。これより、実施例1-5の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱酸性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0060】
[実施例1-6]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物Aa5の合成
活性炭:10g、活性白土:10g、骨炭:10g、金属マグネシウム粉末(80メッシュ):10g、ポリスチレン樹脂:70g、及び流動パラフィン:20mlを混合して攪拌した後、その混合したものを金属製の容器に入れ、加熱器を用いてその容器を200℃で1時間加熱する。加熱処理後、加熱器から容器を取り出し、自然冷却させる。これにより、化合物Aa6が生成される。
(2)化合物Bの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Bを生成する。
(3)化合物Cの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Cを生成する。
(4)化合物Aa6:40g、化合物B:65g、化合物C:15g、及び金属マグネシウム(リボン状切粉):10gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1-1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表6】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):6.622、ORP(平均):-553.2[mV]である。これより、実施例1-6の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱酸性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0061】
[実施例2]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物Abの合成
活性白土:10g、骨炭:10g、金属マグネシウム粉末(80メッシュ):10g、ポリスチレン樹脂:70g、及び流動パラフィン:20mlを混合して攪拌した後、その混合したものを金属製の容器に入れ、加熱器を用いてその容器を200℃で1時間加熱する。加熱処理後、加熱器から容器を取り出し、自然冷却させる。これにより、化合物Abが生成される。
(2)化合物Bの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Bを生成する。
(3)化合物Cの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Cを生成する。
(4)化合物Ab:40g、化合物B:65g、化合物C:15g、及び金属マグネシウム(リボン状切粉):10gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1-1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表7】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):6.578、ORP(平均):-568[mV]である。これより、実施例2の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱酸性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0062】
[実施例3]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物Acの用意
酸性白土:30gを、化合物Acとして用意する。
(2)化合物Bの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Bを生成する。
(3)化合物Cの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Cを生成する。
(4)化合物Ac:30g、化合物B:50g、化合物C:30g、及び金属マグネシウム(リボン状切粉):20gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1-1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表8】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):6.588、ORP(平均):-611.6[mV]である。これより、実施例3の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱酸性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0063】
[実施例4]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物Adの合成
骨炭:30g、酸化カルシウム:15g、ポリスチレン樹脂:55g、及び流動パラフィン:20mlを混合して攪拌した後、その混合したものを金属製の容器に入れ、加熱器を用いてその容器を200℃で1時間加熱する。加熱処理後、加熱器から容器を取り出し、自然冷却させる。これにより、化合物Adが生成される。
(2)化合物Bの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Bを生成する。
(3)化合物Cの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Cを生成する。
(4)化合物Ad:40g、化合物B:80g、化合物C:10g、及び金属マグネシウム(リボン状切粉):7gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1-1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表9】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):6.642、ORP(平均):-634[mV]であり、特にORPに関してはほぼ右肩下がりで下降している。これより、実施例4の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱酸性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0064】
[実施例5]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物Aeの合成
酸化チタン:30g、及びポリスチレン樹脂:70gを混合して攪拌した後、その混合したものを金属製の容器に入れ、加熱器を用いてその容器を180℃で2時間加熱する。加熱処理後、加熱器から容器を取り出し、自然冷却させる。これにより、化合物Aeが生成される。
(2)化合物Bの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Bを生成する。
(3)化合物Cの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Cを生成する。
(4)化合物Ae:20g、化合物B:40g、化合物C:5g、及び金属マグネシウム(リボン状切粉):4gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1-1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表10】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):6.658、ORP(平均):-606[mV]であり、特にORPに関しては緩やかな右肩下がりで下降している。これより、実施例5の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱酸性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0065】
[実施例6]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物Afの用意
酸化アルミニウム:20gを、化合物Afとして用意する。
(2)化合物Bの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Bを生成する。
(3)化合物Cの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Cを生成する。
(4)化合物Af:20g、化合物B:40g、化合物C:15g、及び金属マグネシウム(リボン状切粉):5gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1-1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表11】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):6.518、ORP(平均):-637.6[mV]である。これより、実施例6の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱酸性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0066】
[実施例7]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物Agの用意
ゼオライト(モルデナイト)(Na
8[(AlO
2)
3(SiO
2)
48]
24・H
2O):5gを、化合物Agとして用意する。
(2)化合物Bの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Bを生成する。
(3)化合物Cの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Cを生成する。
(4)化合物Ag:5g、化合物B:25g、化合物C:10g、及び金属マグネシウム(リボン状切粉):10gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1-1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表12】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):6.198、ORP(平均):-527.2[mV]である。これより、実施例6の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱酸性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0067】
[実施例8]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物Ahの用意
ゼオライトA型(Na
12[(AlO
2)
12(S
2O
2)
12]
27・H
2O):20gを、化合物Ahとして用意する。
(2)化合物Bの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Bを生成する。
(3)化合物Cの合成
実施例1-1と同様の方法で、化合物Cを生成する。
(4)化合物Ah:20g、化合物B:43g、化合物C:10g、及び金属マグネシウム(リボン状切粉):8gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1-1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表13】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):6.65、ORP(平均):-636[mV]である。これより、実施例8の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱酸性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0068】
[総合評価]
実施例1-1~実施例8の5日間の測定結果からいずれの実施例においても、弱酸性であって、溶存酸素量がゼロであることが確認できる。また、いずれの実施例においても、ORPが-500[mV]より低い値であって還元性を示しており、水素イオン(プロトン)を生成することが可能と考えられる。
【0069】
図2は、実施例1-1~実施例8の5日間のORPの変化を示すグラフである。実施例1-1,4,6,8で用いた特殊ペレットは、他の実施例で用いた特殊ペレットと比べて、還元力がより強いことが分かる。その中でも、実施例1-1及び実施例4については、特に還元性が強い。これは化合物Aa1、Adにおいて、吸着剤として用いた材料に起因するものと考えられる。
【0070】
本実施形態によれば、還元剤の製造方法(実施例1-1~1-6、実施例2,実施例4)は、活性炭、骨炭及び活性白土のうち少なくともいずれか1つを含む吸着剤と、ホウ酸カリウム、金属マグネシウム、酸化カルシウムよりなる群から選ばれた1の材料と、ポリスチレンと、流動パラフィンとを反応させて化合物Aを生成する第1の処理と、フタル酸、ポリスチレン及び流動パラフィンを反応させて化合物Bを生成する第2の処理と、亜硫酸ナトリウムとポリスチレンとを反応させて化合物Cを生成する第3の処理と、化合物Aと化合物Bと化合物Cと金属マグネシウムを混合する第4の処理と、を備える。
【0071】
このように構成することにより、弱酸性、溶存酸素ゼロの強還元水の水素イオン(プロトン)を発生させる還元剤としての特殊ペレットを生成することができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、還元剤の製造方法(実施例5)は、酸化チタンとポリスチレンとを反応させて化合物Aを生成する第1の処理と、フタル酸、ポリスチレン及び流動パラフィンを反応させて化合物Bを生成する第2の処理と、亜硫酸ナトリウムとポリスチレンとを反応させて化合物Cを生成する第3の処理と、化合物Aと化合物Bと化合物Cと金属マグネシウムを混合する第4の処理と、を備える。
【0073】
このように構成することにより、弱酸性、溶存酸素ゼロの強還元水の水素イオン(プロトン)を発生させる還元剤としての特殊ペレットを生成することができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、還元剤の製造方法(実施例3,6~8)は、フタル酸、ポリスチレン及び流動パラフィンを反応させて化合物Bを生成する第1の処理と、亜硫酸ナトリウムとポリスチレンとを反応させて化合物Cを生成する第2の処理と、酸性白土、酸化アルミニウム、またはゼオライトからよりなる群から選ばれた1の物質と化合物Bと化合物Cと金属マグネシウムを混合する第3の処理と、を備える。
【0075】
このように構成することにより、弱酸性、溶存酸素ゼロの強還元水の水素イオン(プロトン)を発生させる還元剤としての特殊ペレットを生成することができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、還元性水素水溶液の製造方法は、上記のいずれかに記載の還元剤の製造方法により製造された還元剤を、水に加えて還元性水素水溶液を生成する。
【0077】
このように構成することにより、特殊ペレットを水に加えて金属マグネシウムと他の混合物と水とを反応させることで、水素イオン(プロトン)を発生させることができる。その結果、上述したように、強力な放射性中性子(トリチウム等)の減速材としての機能も期待できる。
【0078】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。