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特開2022-144276硬化性樹脂組成物及びこれを用いた積層フィルム
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  • 特開-硬化性樹脂組成物及びこれを用いた積層フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144276
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物及びこれを用いた積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/06 20060101AFI20220926BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20220926BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20220926BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220926BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220926BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220926BHJP
   C09D 175/14 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C08F299/06
C08G18/67
C08G18/32 003
C08G18/32 071
C08F290/06
B32B27/30 A
B32B27/40
C09D175/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045200
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000135265
【氏名又は名称】株式会社ネオス
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】小野 真司
(72)【発明者】
【氏名】内貴 英人
【テーマコード(参考)】
4F100
4J034
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4F100AG00B
4F100AK25A
4F100AK51A
4F100AL01A
4F100AL05A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA30A
4F100EJ08A
4F100GB31
4F100GB48
4F100JK12A
4F100JK20A
4F100YY00A
4J034BA06
4J034CA02
4J034CA04
4J034CA13
4J034CA17
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB07
4J034CB08
4J034CC03
4J034FA02
4J034FA04
4J034FB01
4J034FC01
4J034FD01
4J034FE02
4J034FE03
4J034FE05
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB05
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB12
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC53
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA21
4J034JA30
4J034LA23
4J034MA18
4J034QA02
4J034QA05
4J034QB14
4J034QC03
4J034QC05
4J034QC08
4J034RA05
4J034RA07
4J034RA12
4J034RA14
4J038DG051
4J038DG201
4J038DG261
4J038FA112
4J038FA281
4J038KA06
4J038NA11
4J038PA17
4J038PC03
4J127BB041
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BD421
4J127BE281
4J127BE28Y
4J127BF141
4J127BF14X
4J127BF621
4J127BF62X
4J127BG041
4J127BG04X
4J127BG04Y
4J127BG04Z
4J127BG271
4J127BG27Z
4J127BG30Y
4J127BG30Z
4J127CB371
4J127CC091
4J127CC161
4J127EA13
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】延伸性と耐擦傷性とを兼ね備えたフィルムを形成できる硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ラジカル重合性基と、炭素数6~10の分岐アルキレン基とを有するウレタンウレア化合物を含有する、硬化性樹脂組成物に係る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性基と、炭素数6~10の分岐アルキレン基とを有するウレタンウレア化合物を含有する、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
ウレタンウレア化合物の一部又は全部が、アルキル基が置換しても良い二価の脂肪族環式基をさらに有する、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(メタ)アクリレート化合物及び光重合開始剤をさらに含有する、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに有機溶剤を含有する、請求項1~3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
ウレタンウレア化合物が、以下の特性:
ウレタンウレア化合物に250nm~350nmの波長の紫外線を積算光量500mJ/cmで照射して生成した厚さ3μm以上のウレタンウレア硬化膜において、
(1)バーコビッチ圧子を0.08μm/秒の速度で前記厚さの1/10だけ押し込んだ際の弾性率が3.5GPa~5.4GPaであること、及び
(2)バーコビッチ圧子を0.08μm/秒の速度で荷重100mNになるまで押し込んだ際の「接触剛性-変位グラフ」に屈曲点が存在しないこと、
を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
基材に請求項1~5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の硬化膜を積層させてなる積層フィルム。
【請求項7】
成形するために用いられる、請求項6に記載の積層フィルム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の積層フィルムの当該硬化膜を最表面に有する成形品。
【請求項9】
ウレタンウレア化合物を製造する方法であって、
(a)ポリイソシアネート化合物
(b)炭素数6~10であって、2級水酸基及び3級水酸基の少なくとも一方の水酸基を有するジオール化合物
(c)第1級アルカノールアミン及び/又は第2級アルカノールアミン
(d)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物
を含む出発材料を反応させる工程を含むことを特徴とするウレタンウレア化合物の製造方法。
【請求項10】
ウレタンウレア化合物であって、以下の特性:
ウレタンウレア化合物に250nm~350nmの波長の紫外線を積算光量500mJ/cmで照射して生成した厚さ3μm以上のウレタンウレア硬化膜において、
(1)バーコビッチ圧子を0.08μm/秒の速度で前記厚さの1/10だけ押し込んだ際の弾性率が3.5GPa~5.4GPaであること、及び
(2)バーコビッチ圧子を0.08μm/秒の速度で荷重100mNになるまで押し込んだ際の「接触剛性-変位グラフ」に屈曲点が存在しないこと、
を有することを特徴とする、ウレタンウレア化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な硬化性樹脂組成及びこれを用いた積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、家電製品等の工業製品の内装又は外装には、その耐擦傷性(耐スクラッチ性)、意匠性等を高めるために表面コーティング技術が適用されている。従来より、射出成形等により予め成形された成形品に対して別途に表面コート層を形成する方法が採用されている。この場合の表面コート層を形成する方法としては、塗装方法のほか、予め印刷を施した水溶性フィルムを水面上に展開することでその印刷層を製品に転写する水圧転写工法等がある。
【0003】
コート剤としては、種々の樹脂組成物が知られているが、近年では優れた耐擦傷性等を有するハードコート層が形成できることからポリウレタンウレア樹脂を用いたコート剤が提案されている。
【0004】
例えば、ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、ジアミン(C)、及びモノアミン(M)から得られるポリウレタンウレア樹脂組成物であって、ポリオール(A)が、数平均分子量2200~6000のポリカーボネートジオール(a1)を含み、ポリイソシアネート(B)が、脂環族ジイソシアネート(b1)を含み、該ポリウレタンウレア樹脂組成物の数平均分子量が30000~90000であることを特徴とするポリウレタンウレア樹脂組成物がある(特許文献1)
【0005】
また例えば、水酸基変性ポリオレフィン(A)、ポリイソシアネート(B)及び数平均分子量又は化学式量が500未満の鎖伸長剤(C)を必須構成単量体とするポリウレタンウレア樹脂(U)と溶剤(S)とを含有するポリウレタンウレア樹脂溶液であって、前記水酸基変性ポリオレフィン(A)の構成単量体であるエチレンと炭素数3~8のα-オレフィンの重量比(エチレン:α-オレフィン)が5:95~95:5であり、前記水酸基変性ポリオレフィン(A)のα-オレフィン単位連鎖部のアイソタクティシティーが1~50%であり、前記水酸基変性ポリオレフィン(A)の数平均分子量が1,000~6,000であるポリウレタンウレア樹脂溶液が知られている(特許文献2)。
【0006】
近年では、予め作製された硬化フィルム(プレキュアタイプ)をハードコート材として用い、これを別途に用意された樹脂組成物とともに一体的に成形するインサート成形等が主流となりつつある。例えば、図1に示すように、基材フィルム11上に硬化フィルム12(ハードコート)が積層された積層フィルム10を金型として雄型21a及び雌型21bの間に配置した後(図1(a))、溶融した樹脂13aを金型内に流し込んで射出成形する(図1(b))。樹脂が硬化した後、基材フィルム11の不要部分を切除(トリミング)し、樹脂層13/基材フィルム11/硬化フィルム12からなる成形体30(製品)を金型から取り出す(図1(c))。このようにして、最表面が硬化フィルムによるハードコートが付与された成形品を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-157055
【特許文献2】特開2021-21059
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
プレキュアタイプのフィルムは、上記のように硬化フィルムを作製した後、さらに熱成形(インサート成形等)に供されるため、その熱成形に耐えられるだけの延伸性(成形性)を有することが必要である。すなわち、折り曲げ等に加工がなされても、表面に割れ等が生じることなく加工に追従できる性質が求められる。例えば、前記の図1(b)のA部分に示すように、特に成形体30がその厚み方向に曲がる部位を有する場合、当該部位では機能層12が基材フィルム11に追従することが必要である。追従できない場合は、機能層12が経時的に基材フィルム11から剥離したり、機能層12にクラックが生じる等の問題が起こる。このため、機能層12は、基材フィルムに対する密着性に優れるとともに、高い延伸性等を有することが必要とされる。
【0009】
しかしながら、一般に、フィルムの延伸性を高めようとすると、フィルムの硬度が低下し、所望の耐擦傷性が得られなくなる。他方、耐擦傷性を向上させると、延伸性が低下してプレキュアタイプのフィルムとして使用しづらくなる。このように、プレキュアタイプのフィルムでは、特に延伸性と耐擦傷性とを兼ね備えたフィルムが要望されているものの、両者は互いに相反する物性であることから、そのようなフィルムは未だ開発されるに至っていないのが現状である。
【0010】
従って、本発明の主な目的は、延伸性と耐擦傷性とを兼ね備えたフィルムを形成できる硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の組成からなる組成物を採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記の硬化性樹脂組成物及びこれを用いた積層フィルムに係る。
1. ラジカル重合性基と、炭素数6~10の分岐アルキレン基とを有するウレタンウレア化合物を含有する、硬化性樹脂組成物。
2. ウレタンウレア化合物の一部又は全部が、アルキル基が置換しても良い二価の脂肪族環式基をさらに有する、前記項1に記載の硬化性樹脂組成物。
3. (メタ)アクリレート化合物及び光重合開始剤をさらに含有する、前記項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
4. さらに有機溶剤を含有する、前記項1~3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
5. ウレタンウレア化合物が、以下の特性:
ウレタンウレア化合物に250nm~350nmの波長の紫外線を積算光量500mJ/cmで照射して生成した厚さ3μm以上のウレタンウレア硬化膜において、
(1)バーコビッチ圧子を0.08μm/秒の速度で前記厚さの1/10だけ押し込んだ際の弾性率が3.5GPa~5.4GPaであること、及び
(2)バーコビッチ圧子を0.08μm/秒の速度で荷重100mNになるまで押し込んだ際の「接触剛性-変位グラフ」に屈曲点が存在しないこと、
を有することを特徴とする、前記項1~4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
6. 基材に前記項1~5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の硬化膜を積層させてなる積層フィルム。
7. 成形するために用いられる、前記項6に記載の積層フィルム。
8. 前記項6又は7に記載の積層フィルムの当該硬化膜を最表面に有する成形品。
9. ウレタンウレア化合物を製造する方法であって、
(a)ポリイソシアネート化合物
(b)炭素数6~10であって、2級水酸基及び3級水酸基の少なくとも一方の水酸基を有するジオール化合物
(c)第1級アルカノールアミン及び/又は第2級アルカノールアミン
(d)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物
を含む出発材料を反応させる工程を含むことを特徴とするウレタンウレア化合物の製造方法。
10.ウレタンウレア化合物であって、以下の特性:
ウレタンウレア化合物に250nm~350nmの波長の紫外線を積算光量500mJ/cmで照射して生成した厚さ3μm以上のウレタンウレア硬化膜において、
(1)バーコビッチ圧子を0.08μm/秒の速度で前記厚さの1/10だけ押し込んだ際の弾性率が3.5GPa~5.4GPaであること、及び
(2)バーコビッチ圧子を0.08μm/秒の速度で荷重100mNになるまで押し込んだ際の「接触剛性-変位グラフ」に屈曲点が存在しないこと、
を有することを特徴とする、ウレタンウレア化合物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、延伸性と耐擦傷性とを兼ね備えたフィルムを形成できる硬化性樹脂組成物を提供することができる。かかる構成樹脂組成物から得られる硬化膜は、いわば硬さと軟らかさとを併せ持つ特異な物性を発現することができる。
【0014】
すなわち、本発明のウレタンウレア化合物は、ウレタンウレア構造中に特定の分岐アルキレン基とラジカル重合性基を結合させた構成を有するので、硬化後であっても、所望の延伸性を示すので、支障なく成形工程に供することができる。また、成形後の硬化膜においては、高い耐擦傷性を示し、ハードコートとして優れた性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】インサート成形により積層体(成形体)を製造する工程例を示す。
図2】実施例1及び比較例2の各硬化膜における接触剛性/押し込み深さの関係を示すグラフ(接触剛性-変位グラフ)である。
図3】実施例1及び比較例2の各硬化膜において、押し込み部分の外観を観察した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0016】
10 積層フィルム
11 基材フィルム
12 硬化フィルム(硬化膜)
13a 溶融した樹脂
13 硬化後の樹脂層
21a 雄型
21b 雌型
30 成形体(製品)
A 折り曲げ部分
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.硬化性樹脂組成物
(1)ウレタンウレア化合物及びその製造方法
(1-1)ウレタンウレア化合物
本発明の硬化性樹脂組成物(本発明組成物)は、ラジカル重合性基と、炭素数6~10の分岐アルキレン基(以下、単に「分岐アルキレン基」ともいう。)とを有するウレタンウレア化合物(本発明化合物)を含有することを特徴とする。
【0018】
なお、本発明では、以下において、特にことわりのない限り、アクリロイル基又はメタクリロイル基を「(メタ)アクリロイル基」と総称する。また、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を「(メタ)アクリロイルオキシ基」と総称する。さらに、アクリレート又はメタクリレートを「(メタ)アクリレート」と総称し、アクリル酸又はメタクリル酸を「(メタ)アクリル酸」と総称する。
【0019】
本発明化合物は、ウレタン結合(-NHCOO-)及びウレア結合(尿素結合)(-NHCONH-又は-NHCON<)を含む化合物である。ウレタン結合及びウレア結合は、それぞれ独立して1個又は2個以上有していても良い。
【0020】
また、ウレタン結合(以下「A」と表記することもある。)及びウレア結合(以下「B」と表記することもある。)は、例えばa)有機基Rを介して交互に結合されている場合、b)同じ結合の複数が有機基Rを介してセグメントを形成し、そのセグメントどうし(すなわち、ポリウレタン構造及びポリウレア構造)が結合されている場合、c)両結合がランダムに有機基Rを介して結合されている場合、あるいはd)これらa)~c)の組み合わせを含む場合のいずれであっても良い。本発明は、上記a)~d)で構成されているウレタンウレア構造のいずれも包含する。
【0021】
特に、上記a)の場合としては、例えば
-R-A-R-B-
を繰り返し単位として、これが1個又は2個以上結合した構造が挙げられる。
【0022】
特に、上記b)の場合としては、例えば
-R-A-R-A-R-A-R-B-R-B-
-R-A-R-A-R-B-R-B-R-B-
-R-A-R-A-R-A-R-B-R-B-
-R-A-R-A-R-A-R-B-R-B-R-B-
-R-A-R-A-R-A-R-B-R-B-R-B-R-B-
を繰り返し単位として、これが1個又は2個以上結合した構造(上記R~Rは、互いに異なっていても良い有機基である。)が挙げられる。
【0023】
ウレタン結合又はウレア結合に結合している有機基Rは、少なくとも1つがラジカル重合性基を含み、少なくとも1つが分岐アルキレン基を含んでいれば良い。従って、有機基R自体が、ラジカル重合性基又は分岐アルキレン基であっても良い。
【0024】
ラジカル重合性基としては、限定的でなく、例えば(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0025】
本発明化合物の1分子当たりのラジカル重合性基の個数は、限定的ではないが、通常は2~10個程度とすれば良く、特に6~10個とすることが好ましい。これにより、より良好な硬化性を発揮することができる。
【0026】
ラジカル重合性基は、ウレタンウレア構造の末端に結合されていても良いが、当該末端以外の場所に結合されていても良い。なお、ウレタンウレア構造の末端は、本発明の効果を妨げない限り、例えばイソシアネート基等のような未反応基であっても良い。
【0027】
分岐アルキレン基の炭素数は6~10である。炭素数が5以下であると、メチルエチルケトン(MEK)等の汎用溶剤に溶けにくくなる。また、炭素数が11以上であると、耐擦傷性が低くなる。また、分岐している部分のみの炭素鎖の炭素数は、通常は4~8であることが好ましい。さらに、分岐数は、特に1個である分岐アルキレン基が好ましい。
【0028】
従って、好ましい分岐アルキレン基の具体例としては、下記のようなものが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
-CHCH(C)-
-CHCH(C11)-
-CHCH(C13)-
-CHCH(C15)-
-CHCH(C17)-
【0029】
本発明化合物の1分子当たりの分岐アルキレン基の個数は、限定的ではないが、通常は4~23個程度とすれば良く、特に7~18個とすることが好ましい。これにより、本発明化合物の汎用溶剤(MEK等)に対する溶解性等をより高めることができる。
【0030】
ラジカル重合性基及び分岐アルキレン基以外の有機基Rとしては、特に限定されず、例えばシクロアルキレン基、-NH-アルキレン基、-O-アルキレン基、-NH-シクロアルキレン基、-O-シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基等のほか、前記分岐アルキレン基と結合していない直鎖アルキレン基等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の組み合わせであっても良い。
【0031】
これら有機基Rは、置換基を有していても良いし、置換基を有しなくても良い。置換基としては、前記のラジカル重合性基及び分岐アルキレン基のほか、例えばアルキル基等が挙げられる。従って、例えば、本発明では、有機基Rとして、アルキル基が置換しても良い二価の脂肪族環式基等を挙げることができる。
【0032】
なお、これら有機基Rの炭素数は、特に限定されないが、通常は2~15程度であることが好ましい。有機基Rが置換基を有する場合は、置換基の炭素数も含めた値である。
【0033】
有機基Rの具体例としては、出発材料となるポリイソシアネート化合物由来の有機基を挙げることができる。例えば、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネートから由来する下記の有機基R
【化1】
が挙げられる。
【0034】
また、イソホロンジイソシアネートから由来する下記の有機基R
【化2】
が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0035】
本発明化合物の分子量については、特に限定されないが、延伸性という観点から、通常は数平均分子量が3000~10000程度であることが好ましく、特に5000~8000であることがより好ましい。従って、本発明化合物は、オリゴマーないしはポリマーの形態であっても良い。また、本発明化合物は、例えば、アクリル当量1000~1500g/eq程度、ウレタン当量200~400g/eq程度、ウレア当量1000~2000g/eq程度とすることができるが、これに限定されない。
【0036】
本発明化合物が、以下の特性:
ウレタンウレア化合物に250nm~350nmの波長の紫外線を積算光量500mJ/cmで照射して生成した厚さ3μm以上のウレタンウレア硬化膜において、
(1)バーコビッチ圧子を0.08μm/秒の速度で前記厚さの1/10だけ押し込んだ際の弾性率が3.5GPa~5.4GPaであること(特性A)、及び
(2)バーコビッチ圧子を0.08μm/秒の速度で荷重100mNになるまで押し込んだ際の「接触剛性-変位グラフ」に屈曲点が存在しないこと(特性B)、
を有することが望ましい。
【0037】
上記の物性A及びBは、本発明化合物の硬化膜の延伸性(あるいは成形性)に関する物性の一つであり、本発明化合物において延伸性に優れた硬化膜の形成能の指標となるものである。主として、物性Aは硬化膜の硬さの指標、物性Bは脆さの指標である。評価対象となる硬化膜は、本発明化合物を含むものであるが、より具体的には本発明化合物40.0重量%、光重合開始剤0.8重量%及びプロピレングリコールモノメチルエーテル59.2重量%の液体組成物を基準とした物性である。
【0038】
特性Aは、成形しやすさ(又は成形しにくさ)を示すものでもあり、上記の数値範囲であれば良好な成形性を維持することができる。
【0039】
特性Bは、上記特定の圧子が硬化膜に押し込まれた際に、当該部分又はその周辺にクラックが生じないことを示すものである。屈曲点が存在するということは、押し込み部分周辺にクラックが発生したことを示す。本発明化合物による硬化膜は、外部から局部的な力かかった場合でもクラックが生じにくいという性質を有する。従って、例えば、成形時において、硬化膜に折り曲げ等の負荷がかかっても、硬化膜表面にクラック等が生じにくい成形体を得ることができる。
【0040】
本発明化合物は、上記特性A及びBの両方を満たすので、外部から特定の応力を受けた場合でも一定の耐久性を示すがゆえに、成形用の硬化フィルム(すなわちプレキュアタイプのフィルム)の製造に適したものである。
【0041】
このような本発明化合物は、後記「(1-2)ウレタンウレア化合物の製造方法」で製造される化合物も好適に採用することができる。すなわち、少なくとも後記(a)~(d)成分を反応させることによって得られる反応生成物を本発明化合物として好適に用いることができる。
【0042】
(1-2)ウレタンウレア化合物の製造方法
本発明化合物の製造方法は、特に限定されないが、以下の方法を好適に採用することができる。すなわち、例えば(a)ポリイソシアネート化合物、(b)炭素数6~10であって、2級水酸基及び3級水酸基の少なくとも一方の水酸基を有するジオール化合物、(c)第1級アルカノールアミン及び/又は第2級アルカノールアミン及び(d)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を含む出発材料を反応させる工程を含む方法によって本発明化合物を好適に製造することができる。
【0043】
(a)ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物としては、分子内にイソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式系ポリイソシアネートのほか、イソシアネートの3量体又は多量体(アダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体、アロファネート体)が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。本発明では、特にジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネートが好ましい。
【0044】
(b)炭素数6~10であって、2級水酸基及び3級水酸基の少なくとも一方の水酸基を有するジオール化合物
炭素数6~10であって2、級水酸基及び3級水酸基の少なくとも一方の水酸基を有するジオール化合物とは、ジオール化合物全体の炭素数が6~10であり、かつ、ジオール化合物の有する2個の水酸基のうち少なくとも1個は2級水酸基(第二級炭素原子に結合している水酸基)又は3級水酸基(第三級炭素原子に結合している水酸基)であるものを指し示す。
【0045】
炭素数6~10であって、2級水酸基及び3級水酸基の少なくとも一方の水酸基を有するジオール化合物としては、限定的ではなく、例えば1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を併用して用いることができる。特に、本発明では、下記式:
【化3】
(但し、Rは、炭素数4~8の直鎖アルキル基を示す。)
で示されるジオール化合物を好適に用いることができる。
【0046】
上記ジオール化合物の配合量は、特に制限されないが、通常は上記ポリイソシアネート化合物1モルに対して0.5~0.9モル程度とすることが好ましく、特に0.6~0.8モルとすることがより好ましい。
【0047】
(c)第1級アルカノールアミン及び/又は第2級アルカノールアミン
第1級アルカノールアミン及び/又は第2級アルカノールアミンとしては、第1級アミノ基又は第2級アミノ基と水酸基とを有する化合物であれば特に限定されず、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、1,1,2,2-テトラメチルモノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-アミノメチル-1-プロパノール等が挙げられる。れらは、1種を単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。本発明では、特にモノエタノールアミンが好ましい。
【0048】
上記アルカノールアミンの配合量は、特に制限されないが、通常は上記ポリイソシアネート化合物1モルに対して0.05~0.45モル程度とすることが好ましく、特に0.15~0.35モルとすることがより好ましい。
【0049】
また、分岐構造を有するジオールとアルカノールアミンの混合モル比は、限定的ではないが、通常は1.5:1~9:1程度とすることが好ましい。この範囲内に設定することによって、より優れた耐薬品性と良好な溶剤溶解性を得ることができる。
【0050】
(d)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物
水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物としては、水酸基を1個以上有するものであれば特に限定されない。例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1~16(好ましくは1~12)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、脂肪酸変性-グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を1個有する化合物、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイル-オキシプロピル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を2個有する化合物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を3個以上有する化合物を挙げることができる。
【0051】
上記酸基含有(メタ)アクリレート化合物の配合量は、特に制限されないが、通常は上記ポリイソシアネート化合物1モルに対して0.02~0.2モル程度とすることが好ましく、特に0.05~0.15モルとすることがより好ましい。
【0052】
本発明の製造方法における反応は、通常は有機溶剤中での液相反応とすることが好ましい。有機溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等の各種の有機溶剤を用いることができる。特に、本発明では、密着性等の見地より、ケトン系溶媒を用いることが好ましい。
【0053】
本発明では、各成分が有機溶剤に溶解することにより溶液を形成していることが好ましい。各成分が全て溶解した溶液とすることによって、コーティングによる良好な塗膜を形成することができる。
【0054】
有機溶剤を用いる場合、有機溶剤の使用量は限定的ではなく、例えば固形分含有量が10~90重量%の範囲内において、用いる成分の種類、所望の粘度等に応じて適宜設定すれば良い。
【0055】
本発明の製造方法では、これらの各成分を有機溶剤に溶解させた後、所定の反応工程を実施すれば良い。
【0056】
反応条件は、限定されないが、次のような条件とすることが好ましい。まず、各成分を反応させる順序として、特に(A)(a)ポリイソシアネート化合物、(b)炭素数6~10であって2級水酸基及び3級水酸基の少なくとも一方の水酸基を有するジオール化合物を反応させる工程、(B)得られた反応溶液に(c)第1級アルカノールアミン及び/又は第2級アルカノールアミンを添加して反応させる工程、(C)得られた反応溶液に(d)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を添加して反応させる工程を含む方法を好適に採用することができる。これにより、より確実にウレタンウレア構造を形成するとともに、所望の有機基(すなわち、分岐アルキレン基及びラジカル重合性基及び)をウレタンウレア構造に付与することができる。
【0057】
反応温度は、特に限定されないが、通常は20~110℃程度とすれば良く、特に60~90℃とすることが好ましい。
【0058】
最終的に得られた本発明化合物は、通常は液状の形態で得ることができ、そのまま本発明組成物として使用できるほか、a)必要に応じて固形分濃度を調節することにより、又はb)必要に応じて他の成分をさらに混合することにより、本発明組成物を調製することもできる。
【0059】
(2)本発明の硬化性樹脂組成物
本発明組成物は、本発明化合物を必須成分とするものであり、通常は本発明化合物が有機溶剤に溶解した溶液の形態をとることができる。
【0060】
本発明組成物では、必要に応じて、本発明化合物以外の添加剤が含まれていても良いが、特に(メタ)アクリレート化合物及び光重合開始剤をさらに含有することが好ましい。これにより、より高い耐擦傷性等を得ることができる。
【0061】
(メタ)アクリレート化合物
(メタ)アクリレート化合物は、硬化に寄与できるものであれば限定されず、例えばアルキル基含有(メタ)アクリレート化合物、芳香環含有(メタ)アクリレート化合物、エーテル鎖含有(メタ)アクリレート化合物、窒素含有(メタ)アクリレート化合物等の各種の化合物を用いることができる。これら(メタ)アクリレート化合物は、水酸基を含む化合物又は水酸基を含まない化合物のいずれでも良い。これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0062】
上記アルキル基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖型又は分枝型アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが挙げられる。
【0063】
上記芳香環含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えばフェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0064】
上記脂環式構造含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、シクロヘキサンスピロ-2-(1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、3-エチル-3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0065】
上記エーテル鎖含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2‐イソプロポキシエチルメタクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0066】
上記窒素含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えばt-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物、ジメチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
【0067】
水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他にも、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の複数の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーも挙げられる。
【0068】
光重合開始剤
光重合開始剤としては、電子線(EB)、紫外線(UV)、赤外線(IR)等の活性エネルギー線により重合を開始させるものであれば特に限定されない。例えば、ジメチル-2,2′-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4-フェニルベンゾフェノン、t-ブチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、メチルベンゾイルホルメート、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-4-モルホリノブチロフェノン、2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。これらの光重合開始剤は、公知又は市販のものを用いることもできる。
【0069】
光重合開始剤の含有量は、用いる光重合開始剤の種類等に応じて適宜設定することができるが、通常は本発明組成物(固形分含量)100重量%中1~10重量%程度の範囲とすれば良く、硬化性の観点より特に1~5重量%とすることが好ましい。
【0070】
さらに、本発明組成物では、本発明の効果を妨げない範囲内で、任意成分として公知のハードコートに含まれている添加剤を適宜配合することができる。例えば、架橋剤、無機微粒子(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の酸化物微粒子)、防汚剤(スリップ剤)、表面調整剤(シリコーン系化合物、フッ素系化合物)、紫外線吸収剤、光安定剤、分散剤(界面活性剤)、湿潤剤、増粘剤、酸化防止剤、重合禁止剤、重合調整剤、着色剤等が挙げられる。
【0071】
本発明の硬化性組成物は各成分を有機溶剤に溶解させ、溶液を形成していることが好ましい。有機溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等の各種の有機溶剤を用いることができる。有機溶剤の使用量は限定的ではなく、例えば固形分含有量が1~50重量%となるような範囲で適宜調整できる。
【0072】
本発明組成物は、上記のような各成分を均一になるように混合することによって調製することができる。また、各成分の混合順序も限定されない。混合する際の温度等も限定されず、例えば常温・常圧下で実施することができる。混合は、例えばミキサー、ニーダー等の公知又は市販の装置を用いて実施することができる。
【0073】
2.積層フィルム
本発明は、基材に本発明組成物の硬化膜を積層させてなる積層フィルムを包含する。すなわち、本発明は、基材と、その上に形成された本発明組成物の硬化膜とを含む積層フィルムを含む。
【0074】
積層フィルムは、透明、半透明又は不透明のいずれでも良いが、本発明の積層フィルムは透明であることが好ましい。透明である場合のヘイズ値は、限定的ではないが、通常は0.1~5%程度であることが望ましい。
【0075】
また、硬化膜についても、透明、半透明又は不透明のいずれでも良いが、本発明の積層フィルムは透明であることが好ましい。透明である場合のヘイズ値は、限定的ではないが、通常は0.1~5%程度であることが望ましい。
【0076】
本発明の積層フィルムは、使用時に硬化膜が最表面となる限りは、必要に応じて他の層を積層させても良い。例えば、帯電防止層、水分遮蔽層、接着剤層、アンカーコート層、プライマー層、印刷層、反射防止層等の各種の層が挙げられる。
【0077】
積層フィルムの厚みは、用いる基材の種類、積層フィルムの用途等に応じて適宜設定することができ、例えば30~1000μm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0078】
本発明の積層フィルムは、特に硬化膜の延伸性が優れていることから、硬化膜を成形することにより所望の成形体を製造するための材料として好適に用いることができる。従って、成形するために用いられるフィルムとして最適である。より具体的には、優れた耐擦傷性を有する硬化膜であるにもかかわらず、高い延伸性を有しているので、硬化膜を含む積層フィルムを成形しても、所望の形状に変形することができる結果、表面クラック等が実質的に存在しない成形品を製造することができる。これにより、各種の成形品表面に優れたハードコートを有する製品を提供することが可能となる。
【0079】
本発明の積層フィルムの製造方法は、特に限定されないが、例えば1)基材上に本発明組成物の塗膜を形成する工程(塗膜形成工程)及び2)前記塗膜に活性エネルギー線を照射することにより硬化膜を形成する工程(硬化工程)を含む方法によって好適に積層フィルムを製造することができる。
【0080】
塗膜形成工程
塗膜形成工程では、基材上に本発明組成物の塗膜を形成する。塗膜を形成する方法は、特に限定されないが、例えば液状の本発明組成物を基材上に塗布することによって形成することができる。塗布方法は、特に限定されず、例えば刷毛塗り、スプレー、浸漬、ドクターブレード、バーコーター等による方法のほか、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷法等の印刷方法も採用することができる。
【0081】
塗膜に対しては、必要に応じて乾燥工程を実施することもできる。乾燥方法は、限定的でなく、例えば自然乾燥のほか、加熱による乾燥も採用することができる。加熱温度は、基材に悪影響を及ぼさない範囲内とすれば良く、例えば70~120℃程度で加熱することができるが、これに限定されない。
【0082】
基材としては、例えば合成樹脂、ゴム、金属等の各種の素材からなるフィルムを好適に用いることができる。特に、合成樹脂としては、例えばポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、セルロース系(セロハン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、フッ素樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。特に、基材として、2層以上が積層された積層体を基材として用いることもできる。例えば、ポリカーボネート層/アクリル樹脂層からなる積層体を基材フィルムとして、前記基材フィルムのアクリル樹脂層上に硬化膜を形成した積層フィルムが挙げられる。
【0083】
基材の厚みは、例えば用いる合成樹脂の種類、積層フィルムの用途等に応じて適宜設定することができ、例えば30~1000μm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0084】
硬化工程
硬化工程では、前記塗膜に活性エネルギー線を照射することにより硬化膜を得る。活性エネルギー線としては、特に限定されず、例えば例えば電子線(EB)、紫外線(UV)、赤外線(IR)等が挙げられる。本発明では、特に比較的簡易に硬化を実施できるという点で紫外線を好適に用いることができる。紫外線を利用する場合、その光源も限定的でなく、例えば高圧水銀ランプ、鉄ドープのメタルハライドランプ、ガリウムランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザ、LED等が挙げられる。従って、これらを備えた公知又は市販の装置を用いて硬化させることができる。
【0085】
紫外線の照射条件は、例えば100~400nm程度の波長領域であって、照度80~1000mW/cm程度、積算光量100~5000mJ/cm程度のエネルギーを有する紫外線を照射することができるが、これに限定されない。紫外線照射は、公知又は市販のUV照射装置を用いて実施することができる。
【0086】
なお、紫外線照射する場合の温度条件は、特に限定されないが、通常は100℃以下の範囲内とすれば良い。従って、例えば室温付近(10~40℃程度)でも好適に実施すること
【0087】
硬化膜の厚みは、積層フィルムの用途、使用部位等によって異なり、一般的には0.1~20μm程度とすることができるが、これに限定されない。
【0088】
本発明の積層フィルムは、プレキュアタイプのフィルムとして使用することができる。従って、本発明の積層フィルムと樹脂含有成形物とを一体化できる方法に適しており、少なくとも樹脂含有成形物の成形と同時に一体化できる方法を好適に採用することができる。ここで、「一体化」とは、本発明組成物の塗膜又はその硬化膜と樹脂含有成形物とを(好ましくは直接的に)接合して固定化することをいう。従って、例えばインサート成形、インモールド成形、貼り合わせ法(TOM(Three dimension Overlay Method)工法)等の公知の成形方法を好適に採用することができる。
【0089】
例えば、代表例としてインサート成形により本発明の硬化膜と樹脂含有成形物とを一体化する場合は、図1に示す方法に従って実施することができる。すなわち、基材フィルム11上に硬化膜12(ハードコート層)が積層された積層フィルム10(すなわち、本発明の積層フィルム)を金型の雄型21a及び雌型21bの間に配置する第1工程(図1(a))、溶融した樹脂13aを金型内に流し込んで射出成形する第2工程(図1(b))、及び樹脂が硬化した後、樹脂層13(樹脂含有成形物)/基材フィルム11/機能層12からなる成形体30(製品)を得る第3工程(図1(c))を含む方法を好適に採用することができる。
【0090】
この場合、公知のインサート成形と同様、上記工程のほかにも、第1工程に先立って上記の積層フィルム又は硬化膜を予め加熱して軟化させる工程、第2工程に先立って予め積層フィルムを予備成形する工程、不要な部分を切除する(トリミング)する工程等が追加的に含まれていても良い。
【0091】
また、上記の方法では硬化膜が使用されているが、これを(硬化前の)本発明組成物の塗膜に代えることもできる。この場合は、例えば、成形体を金型から取り出す前又は取り出した後に、成形体に紫外線等を照射することにより当該塗膜を硬化させることにより硬化膜としても良い。
【0092】
このようにして得られた成形体は、自動車、家電製品等の内装又は外装をはじめとする各種の製品として用いることができる。より具体的には、自動車、鉄道、航空機等の各種の車両の外装材(ドアハンドル、バンパー、フロントグリル、サイドモール、ホイールキャップ、ミラーハウジングフロントアンダーカバー等)又は内装材(メーターパネル、シフトノブ、スイッチ類、センターコンソール、ドアオーナメント等)が挙げられる。また、家電製品としては、例えば冷蔵庫、洗濯機、掃除機、パソコン、タブレット、プリンター、複合機、携帯電話、オーディオ製品等が挙げられる。
【実施例0093】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。実施例中の「%」は、特にことわりがなければ「重量%」を示す。
【0094】
(1)使用材料について
・デスモジュールW:住化コベストロウレタン(株)製、商品名、固形分濃度100%、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート
・デスモジュールI:住化コベストロウレタン(株)製品、商品名、固形分濃度100%、イソホロンジイソシアネート
・1,2-ヘキサンジオール(1,2-HD):東京化成工業(株)製、固形分濃度100%
・1,2-オクタンジオール(1,2-OD):東京化成工業(株)製、固形分濃度100%
・1,2-デカンジオール(1,2-DD):東京化成工業(株)製、固形分濃度100%
・1,10-デカンジオール(1,10-DD):東京化成工業(株)、固形分濃度100%
・1,2-ヘキサデカンジオール(1,2-HDD):東京化成工業(株)、固形分濃度100%
・モノエタノールアミン:東京化成工業(株)製、固形分濃度100%
・4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン):東京化成工業(株)製、固形分濃度100%
・HEAA:KJケミカルズ(株)製、商品名、ヒドロキシエチルアクリルアミド、固形分濃度100%
・ACMO:KJケミカルズ(株)製、 商品名、アクリロイルモルホリン、固形分濃度100%
・アロニックスM-306:東亜合成(株)製、商品名、固形分濃度100%、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(ペンタエリスリトールトリアクリレートの含有量65~70%)
・MEK:メチルエチルケトン
・IC-184:BASF(株)製、商品名、固形分濃度100%、イルガキュア184(光重合開始剤)
・PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル(有機溶剤)
・BYK-UV3500:BYK(株)、商品名、固形分濃度100%、アクリル変性ジメチルシリコーン
【0095】
(2)実施例・比較例について
(2-1)ウレタンウレア化合物の合成
ウレタンウレア化合物の製造例1
容量1LのナスフラスコにデスモジュールW(100重量部)と1,2-HD(29重量部)、MEK(162重量部)を加え、80℃で4時間撹拌した。その後、撹拌したままの溶液にモノエタノールアミン 7重量部を加え、80℃で4時間撹拌した。その後、撹拌したままの溶液にアロニックスM-306(25重量部)を加え、80℃で4時間撹拌し、ラジカル重合性基を持つウレタンウレア化合物1を得た。(理論分子量:6500、アクリル当量:1083g/eq、ウレタン当量:244g/eq、ウレア当量:1383g/eq)
【0096】
ウレタンウレア化合物の製造例2
容量1LのナスフラスコにデスモジュールW(100重量部)と1,2-OD(37重量部)、MEK(169重量部)を加え、80℃で4時間撹拌した。その後、撹拌したままの溶液にモノエタノールアミン(7重量部)を加え、80℃で4時間撹拌した。その後、撹拌したままの溶液にアロニックスM-306(25重量部)を加え、80℃で4時間撹拌し、ラジカル重合性基を持つウレタンウレア化合物2を得た。(理論分子量:6900、アクリル当量:1150g/eq、ウレタン当量:257g/eq、ウレア当量:1459g/eq)
【0097】
ウレタンウレア化合物の製造例3
容量1LのナスフラスコにデスモジュールW(100重量部)と1,2-DD(44重量部)、MEK(176重量部)を加え、80℃で4時間撹拌した。その後、撹拌したままの溶液にモノエタノールアミン(7重量部)を加え、80℃で4時間撹拌した。その後、撹拌したままの溶液にアロニックスM-306(25重量部)を加え、80℃で4時間撹拌し、ラジカル重合性基を持つウレタンウレア化合物3を得た。(理論分子量:7200、アクリル当量:1200g/eq、ウレタン当量:269g/eq、ウレア当量:1525g/eq)
【0098】
ウレタンウレア化合物の製造例4
容量1LのナスフラスコにデスモジュールW(100重量部)と1,2-HDD(65重量部)、MEK(197重量部)を加え、80℃で4時間撹拌した。その後、撹拌したままの溶液にモノエタノールアミン(7重量部)を加え、80℃で4時間撹拌した。その後、撹拌したままの溶液にアロニックスM-306(25重量部)を加え、80℃で4時間撹拌し、ラジカル重合性基を持つウレタンウレア化合物4を得た。(理論分子量:8100、アクリル当量:1350g/eq、ウレタン当量:304g/eq、ウレア当量:1721g/eq)
【0099】
ウレタンウレア化合物の製造例5
ウレタンウレア化合物3の合成工程において、1,2-DDを1,10-DDに変えたほかは、製造例3と同様の操作を行ったところ、不溶物が析出した。このため、以下の試験を中止した。
【0100】
ウレタンウレア化合物の製造例6
容量1Lのナス型フラスコに、デスモジュールW(59重量部)と、デスモジュールI(50重量部)と、ACMO(90重量部)と、HEAA(26重量部)を加え、室温で2時間撹拌した。その後、撹拌したままの溶液にモノエタノールアミン(7重量部)を滴下し、室温で3時間撹拌した。その後、撹拌したままの溶液にイソプロピルアルコール(116重量部)と4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(37重量部)の混合液を加え、室温で3時間撹拌し、ラジカル重合性基を有するが、分岐アルキレン基を有しないウレタンウレア化合物6を得た。(理論分子量:1300、アクリル当量:750g/eq、ウレタン当量:519g/eq、ウレア当量:481g/eq)
【0101】
(2-2)硬化性樹脂組成物の製造(その1)
実施例1~3及び比較例1~2
表1に示すようにウレタンウレア化合物(固形分50%のMEK調整液)、光重合開始剤(IC-184)及び溶剤(PGM)を所定の比率(質量部)で配合し、均一に混合することによって固形分濃度20.8重量%の液状硬化性組成物を得た。
【0102】
試験例1
各実施例及び比較例で得られた液状硬化性組成物を用い、硬化後の膜厚が3μmとなるようにバーコート法によってガラス基材上に塗布した。そして、硬化性樹脂組成物が塗布された基材を80℃のオーブンで1分間乾燥した後、活性エネルギー線として紫外線を照射することにより、硬化性樹脂組成物からなる塗膜を硬化させた。得られた硬化膜について、下記の物性を調べた。その結果も表1に併せて示す。
【0103】
(1)弾性率
ガラス基材上の硬化膜をナノインデンテーション試験機で0.3μm押し込み、弾性率を測定した。
(2)押し込み時のクラックの有無
ガラス基材上の硬化膜をナノインデンテーション試験機で100mNになるまで押し込み、算出した接触剛性と押し込み深さのグラフ(接触剛性-変位グラフ)に屈拠点が有るかどうかを確認した。そして、屈曲点が認められる場合はクラックが発生しており、屈曲点が認められない場合はクラックが発生していないと認定した。
参考のため、クラックが発生していない場合の接触剛性-変位グラフ(実施例1)及びクラックが発生した場合の接触剛性-変位グラフ(比較例2)を図2に示す。また、クラックが発生していない場合(実施例1)及びクラックが発生した場合(比較例2)における押し込み部分の外観を光学顕微鏡で観察した結果を図3に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に示すように、分岐アルキレン基を有しないウレタンウレア化合物6は、押し込み試験でクラックが発生したため、硬化膜が脆くなっていることがわかった(比較例2)。
これに対し、分岐アルキレン基等を有するウレタンウレア化合物1~4は、クラックが発生せず、靭性(延伸性)に富むことが確認されたが、ウレタンウレア化合物1~3とウレタンウレア化合物4とを比較すると、弾性率は分岐鎖長が長いほど低くなることが確認された。その理由は定かではないが、比較的柔らかい部位である側鎖(アルキル鎖)が長くなると、立体障害が大きくなるため、分子間相互作用(水素結合)を阻害し、弾性率が低くなると考えられる。
【0106】
(2-3)硬化性樹脂組成物の製造(その2)
実施例4~6及び比較例3~4
表2に示すように、前記で合成したウレタンウレア化合物1~4及び6(固形分50%のMEK調整液)と、アクリルモノマー(アロニックスM-306)と、表面調整剤(BYK-UV-500)と、光重合開始剤(IC-184)と、溶剤(PGM)とを所定の割合(質量部)で配合し、固形分濃度21重量%の液状硬化性組成物を得た。
次いで、液状硬化性樹脂組成物の塗膜を基材上に形成した。基材として、ポリカーボネート表面がアクリル樹脂で覆われた積層体を用いた。最終的に得られる硬化後の膜厚が約3μmとなるようにバーコート法によって各硬化性樹脂組成物を基材のアクリル樹脂面に塗布した。そして、形成された塗膜を80℃のオーブンで1分間乾燥した後、活性エネルギー線として紫外線を塗膜に照射することにより、硬化性樹脂組成物を硬化させた。このようにして、積層フィルムを作製した。
【0107】
試験例2
前記で得られた積層フィルムについて、下記の特性について評価を行った。その結果を表2にそれぞれ示す。
【0108】
(1)塗膜外観評価
JIS K7136に対応したヘーズメーターを使用し、測定したヘーズ値により、積層フィルムの透明性を評価した。ヘーズ値が1%以下であれば、透明と判断した。
(2)耐擦傷性
積層フィルムの硬化膜の面に置かれたスチールウール#0000上に荷重1000g/cmをかけたうえでスチールウールを硬化面上で15往復させた後、前記(1)と同様のヘーズメーターを用いてヘーズ値を測定した。測定されたヘーズ値から試験前のヘーズ値を差し引いた値(Δ値)を求めた。
(3)延伸性
引張試験(雰囲気温度190℃、サンプル寸法:100mm×10mm,チャック間距離;50mm、引張速度:500mm/分)を行い、目視により塗膜にクラックが発生した時点を破断点伸度として、成形フィルムの延伸性を評価した。
(4)耐薬品性
市販の日焼け止めクリーム(ウルトラシアードライタッチサンスクリーンSPF100、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製)0.2gを1cmの面積に塗布し、80℃で1時間静置した。その後、塗布した日焼け止めクリームを大量の水で洗浄し、硬化膜の外観の変化を目視により観察した。
高:外観に変化が一切認められない
中:外観の一部に白化等の変化が認められる
低:外観に白化等の変化が認められる
【0109】
【表2】
【0110】
表2の結果からも明らかなように、実施例4~6と比較例3とを対比すると、弾性率の高いウレタンウレア化合物を使用した方が、耐擦傷性が高いことがわかる。
また、ウレタンウレア化合物1とウレタンウレア化合物6を比較すると、弾性率が高くても、脆いウレタンウレア化合物6を使用すると耐擦傷性が低くなることがわかる。この理由は、擦り傷時に塗膜が割れて、余計に傷がつくためと考えられる。
さらに、ウレタンウレア化合物1~4を比較すると、分岐鎖長が短い方が、水素結合性が高くなることで耐薬品性が高くなることがわかる。
図1
図2
図3