特開 2022-144326 鋼管杭の連結構造

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2022144326

(43)【公開日】2022-10-03

(54)【発明の名称】鋼管杭の連結構造

(51)【国際特許分類】

   E02D 5/24 20060101AFI20220926BHJP

【ＦＩ】

E02D5/24 103

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021045269

(22)【出願日】2021-03-18

(71)【出願人】

【識別番号】507225584

【氏名又は名称】ガイアパイル株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100121821

【弁理士】

【氏名又は名称】山田 強

(74)【代理人】

【識別番号】100175134

【弁理士】

【氏名又は名称】北 裕介

(72)【発明者】

【氏名】中山 奉一

(72)【発明者】

【氏名】今枝 正良

(72)【発明者】

【氏名】平野 健一

【テーマコード（参考）】

2D041

【Ｆターム（参考）】

2D041AA02

2D041BA19

2D041BA44

2D041CA01

2D041CB01

2D041CB06

2D041DB02

2D041DB13

(57)【要約】

【課題】スリーブが大きく変形したり、スリーブが破損したりすることを防止できる鋼管杭の連結構造を提供する。
【解決手段】連結構造は、下側鋼管杭の上端部に設けられた内側継手部３０と、上側鋼管杭の下端部に設けられた外側継手部４０と、スリーブ５０とを備えている。外側継手部４０及び内側継手部３０のそれぞれには貫通孔３３，４３が形成されている。貫通孔３３，４３にスリーブ５０が嵌め合わされる。スリーブ５０の横断面において、各継手部３０，４０の周方向の長さ寸法が、各継手部３０，４０の軸方向の長さ寸法よりも大きい。
【選択図】 図３

【特許請求の範囲】

【請求項1】

上下に配置された鋼管杭（１０，２０）の端部同士を連結する鋼管杭の連結構造において、
上下に配置された前記鋼管杭のうち一方（１０）の端部に設けられた円筒状の内側継手部（３０）と、
上下に配置された前記鋼管杭のうち他方（２０）の端部に設けられ、前記内側継手部に外側から嵌め合わされる円筒状の外側継手部（４０）と、
を備え、
前記外側継手部及び前記内側継手部のそれぞれには、前記外側継手部と前記内側継手部とが嵌め合わせられた状態において前記外側継手部の外周面から前記内側継手部の内周面まで貫通する貫通孔（３３，４３）が形成されており、
前記外側継手部と前記内側継手部とを連結するために、前記外側継手部と前記内側継手部とのそれぞれの前記貫通孔に跨るようにして、前記貫通孔に嵌め合わされるスリーブ（５０）を備え、
前記スリーブは、横断面において、前記鋼管杭の周方向の長さ寸法が、前記鋼管杭の軸方向の長さ寸法よりも大きい横長スリーブである、鋼管杭の連結構造。

【請求項2】

前記横長スリーブの横断面は、前記鋼管杭の周方向に長い長方形状をなしている、請求項１に記載の鋼管杭の連結構造。

【請求項3】

前記横長スリーブは、前記鋼管杭の径方向内側にいくほど横断面の面積が小さくなるとともに、前記鋼管杭の径方向を高さ方向とする角錐台状をなしており、
前記貫通孔の開口面積は、前記鋼管杭の径方向内側にいくほど小さくなっており、
前記横長スリーブが前記貫通孔に嵌め合わされた状態において前記横長スリーブの各錐体面に前記貫通孔の内周面が当接している、請求項２に記載の鋼管杭の連結構造。

【請求項4】

前記内側継手部及び前記外側継手部それぞれの前記貫通孔は、前記鋼管杭の周方向に並んで複数形成されており、
前記各貫通孔に嵌め合わされたスリーブ（５０，１００）を備え、
前記各スリーブのうち少なくとも１つのスリーブは、前記横長スリーブである、請求項１～３のいずれか１項に記載の鋼管杭の連結構造。

【請求項5】

前記内側継手部及び前記外側継手部それぞれの前記貫通孔は、前記鋼管杭の軸方向の同一位置において、前記鋼管杭の周方向に並んで複数形成された第１貫通孔であり、
前記横長スリーブは、前記各第１貫通孔に嵌め合わされる第１スリーブであり、
前記外側継手部及び前記内側継手部のそれぞれには、前記外側継手部と前記内側継手部とが嵌め合わせられた状態において前記外側継手部の外周面から前記内側継手部の内周面まで貫通する第２貫通孔（９０）が更に形成されており、
前記第２貫通孔は、前記鋼管杭の軸方向において前記第１貫通孔の位置からずれた位置であって、前記鋼管杭の周方向において前記第１貫通孔の位置からずれた位置に形成されており、
前記外側継手部と前記内側継手部とを連結するために前記第２貫通孔に嵌め合わされる第２スリーブ（１００）を備え、
前記第２スリーブの横断面において、前記鋼管杭の軸方向の長さ寸法が、前記鋼管杭の周方向の長さ寸法よりも大きい、請求項１～４のいずれか１項に記載の鋼管杭の連結構造。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、鋼管杭の連結構造に関する。

【背景技術】

【0002】

構造物を軟弱地盤に築く場合において、構造物を支持するために杭基礎が用いられる。杭基礎では、円筒状の鋼管杭の先端部を軟弱地盤の下にある支持層まで到達させる必要がある。そこで、掘削刃が設けられた鋼管杭を回転させながら地盤に埋設し、埋設した鋼管杭の上端部に新たな鋼管杭の下端部を連結し、連結した鋼管杭を回転させながら埋設する工法が用いられている。

【0003】

先に埋設された鋼管杭と、その鋼管杭の上側に配置される鋼管杭とを連結するために、鋼管杭の埋設が実施される現場において、溶接を用いることなく、上下に配置された鋼管杭の端部同士を連結する技術が特許文献１に開示されている。

【0004】

この技術について説明すると、下側の鋼管杭の上端部には円筒状のインサイドシリンダが接合され、上側の鋼管杭の下端部には、インサイドシリンダに外側から嵌め合わされる円筒状のアウトサイドシリンダが接合されている。インサイドシリンダ及びアウトサイドシリンダそれぞれには、アウトサイドシリンダとインサイドシリンダとが嵌め合わせられた状態においてアウトサイドシリンダの外周面からインサイドシリンダの内周面まで貫通する貫通孔が形成されている。

【0005】

各シリンダの貫通孔には、円錐台形状のテーパロック部が嵌め合わされる。テーパロック部の横断面形状は真円形状とされている。テーパロック部によってインサイドシリンダとアウトサイドシリンダとが連結される。連結された状態において上側の鋼管杭を回転させると、上側の鋼管杭に作用する回転トルクが下側の鋼管杭に伝達され、下側の鋼管杭も回転させられる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0006】

【特許文献1】特許第６２４３８１４号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

下側の鋼管杭に対する上側の鋼管杭の相対回転により、テーパロック部に大きな外力が作用する。その結果、スリーブが大きく変形したり、スリーブが破損したりする懸念がある。

【0008】

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、スリーブが大きく変形したり、スリーブが破損したりすることを防止できる鋼管杭の連結構造を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0009】

本発明は、上下に配置された鋼管杭同士を連結する鋼管杭の連結構造において、
上下に配置された前記鋼管杭のうち一方の端部に設けられた円筒状の内側継手部と、
上下に配置された前記鋼管杭のうち他方の端部に設けられ、前記内側継手部に外側から嵌め合わされる円筒状の外側継手部と、
を備え、
前記外側継手部及び前記内側継手部のそれぞれには、前記外側継手部と前記内側継手部とが嵌め合わせられた状態において前記外側継手部の外周面から前記内側継手部の内周面まで貫通する貫通孔が形成されており、
前記外側継手部と前記内側継手部とを連結するために、前記外側継手部と前記内側継手部とのそれぞれの前記貫通孔に跨るようにして、前記貫通孔に嵌め合わされるスリーブを備え、
前記スリーブは、横断面において、前記鋼管杭の周方向の長さ寸法が、前記鋼管杭の軸方向の長さ寸法よりも大きい横長スリーブである。

【0010】

下側の鋼管杭に対する上側の鋼管杭の相対回転により、貫通孔に嵌め込まれたスリーブには、鋼管杭の周方向の外力が作用する。この点、本発明のスリーブは、横断面において、鋼管杭の周方向の長さ寸法が、鋼管杭の軸方向の長さ寸法よりも大きい横長スリーブである。横長スリーブは、外力が作用する方向の長さ寸法が大きいスリーブである。このため、周方向の外力に対するスリーブの強度を高めることができる。その結果、スリーブが大きく変形したり、スリーブが破損したりすることを防止することができる。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】嵌め合わせられる前における一対の鋼管杭の正面図。

【図2】嵌め合わせられた一対の鋼管杭の縦断面図。

【図3】ナットカバーが内側継手部に設けられるとともに、スリーブが貫通孔に嵌め合わせられた状態における図２の３－３線断面図。

【図4】スリーブを示す図。

【図5】ナットカバー設けられた内側継手部の縦断面図。

【図6】ナットカバー設けられた内側継手部の一部分を示す斜視図。

【図7】鋼管杭の連結方法の手順を示す図。

【図8】その他の実施形態に係る一対の鋼管杭の正面図。

【発明を実施するための形態】

【0012】

以下、本発明に係る鋼管杭の連結構造を具体化した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。連結構造は、先に地盤に埋設される鋼管杭と、その鋼管杭の後に続けて埋設される鋼管杭とを連結するものである。以下では、図１及び図２に示すように、上下に配置される対となる鋼管杭のうち、下側に配置されるものを下側鋼管杭１０と称し、上側に配置されるものを上側鋼管杭２０と称すこととする。

【0013】

下側鋼管杭１０及び上側鋼管杭２０は、円筒状をなしている。下側鋼管杭１０の外径寸法と上側鋼管杭２０の外径寸法とは同じである。また、下側鋼管杭１０の厚さ寸法と上側鋼管杭２０の厚さ寸法とは同じである。

【0014】

下側鋼管杭１０及び上側鋼管杭２０の連結構造は、内側継手部３０及び外側継手部４０を備えている。内側継手部３０は、下側鋼管杭１０の上端部に設けられており、外側継手部４０は、上側鋼管杭２０の下端部に設けられている。

【0015】

内側継手部３０は、鋼製の部材であり、円環状をなす環状部３１と、円筒状をなす円筒部３２とを備えている。環状部３１において径方向内側の端部から上側に向かって円筒部３２が延びている。

【0016】

環状部３１の外径寸法は、下側鋼管杭１０の外径寸法と同じである。環状部３１において径方向外側の端部には、下側鋼管杭１０の上端部が溶接により接合されている。これにより、内側継手部３０は、下側鋼管杭１０と同心となる。内側継手部３０の厚さ寸法は、下側鋼管杭１０の厚さ寸法よりも大きい。

【0017】

外側継手部４０は、鋼製の部材であり、円筒状をなしている。外側継手部４０の外径寸法と上側鋼管杭２０の外径寸法とは同じである。外側継手部４０の厚さ寸法は、上側鋼管杭２０の厚さ寸法よりも大きい。上側鋼管杭２０の下端部には、外側継手部４０の上端部が溶接により接合されている。これにより、外側継手部４０は、上側鋼管杭２０と同心となる。

【0018】

外側継手部４０の内径寸法は、円筒部３２の外径寸法よりもやや大きい。これにより、円筒部３２に対する外側継手部４０のすき間嵌めが可能となる。図２に示すように、外側継手部４０が円筒部３２に嵌め合わされることにより、外側継手部４０の下端部は、環状部３１のうち径方向外側における端部の上面に当接する。なお、上側鋼管杭２０の上端部には、図示しないが、内側継手部３０が接合される。

【0019】

外側継手部４０には、外側貫通孔４３が形成されている。外側貫通孔４３は、外側継手部４０の周方向に等間隔に並んで複数（６つを例示）形成されている。各外側貫通孔４３は、同じ形状であり、外側継手部４０の軸方向において同一位置に形成されている。

【0020】

内側継手部３０には、内側貫通孔３３が形成されている。内側貫通孔３３は、円筒部３２の周方向に等間隔に並んで、外側貫通孔４３の数と同数形成されている。各内側貫通孔３３は、同じ形状であり、内側継手部３０の軸方向において同一位置に形成されている。各外側貫通孔４３のいずれか１つと各内側貫通孔３３のいずれか１つとが合わさるように、外側継手部４０と内側継手部３０とが嵌め合わせられる。これにより、外側継手部４０の径方向の外周面から内側継手部３０の径方向の内周面まで貫通する６つの貫通孔３３，４４が形成される。

【0021】

各貫通孔３３，４３は、各継手部３０，４０の周方向に長い長方形状をなしている。各貫通孔３３，４３の中心軸線は各継手部３０，４０の径方向に延びるとともに、各貫通孔３３，４３は、径方向内側にいくほど開口面積が小さくなるように形成されている。これにより、貫通孔３３，４４の内周面が外側継手部４０の径方向の外周面から内側継手部３０の径方向の内周面まで連続している。

【0022】

図３及び図４に示すように、連結構造は、スリーブ５０を備えている。本実施形態において、スリーブ５０は、鋼製の部材であり、貫通孔３３，４３に嵌め込まれる。スリーブ５０は、各継手部３０，４０の径方向内側にいくほど横断面の面積が小さくなるとともに、各継手部３０，４０の径方向を高さ方向とする角錐台状をなしている。つまり、スリーブ５０において、径方向内側の端面を先端面５２とし、外側継手部４０の径方向外側の端面を後端面５３とする場合、先端面５２と後端面５３とが４つの錐体面５４でつながっている。先端面５２は、径方向外側に凹む円弧面になっている。この円弧面の曲率と、内側継手部３０の内周面の曲率とは同じである。なお、後端面５３は、径方向外側に凸となる円弧面になっている。この円弧面の曲率と、外側継手部４０の外周面の曲率とは同じである。

【0023】

スリーブ５０の横断面は、各継手部３０，４０の周方向に長い長方形状をなしている。スリーブ５０の横断面形状は、各貫通孔３３，４３と合同の形状である。このため、スリーブ５０が貫通孔３３，４３に嵌め込まれると、スリーブ５０の４つの錐体面５４それぞれが貫通孔３３，４３の内周面に密接する。なお、スリーブ５０の横断面において、短手方向の長さ寸法と長手方向の長さ寸法との比率は、例えば、１：１．２にしたり、１：１．５にしたりすることができる。また、錐体面５４の周縁部等、スリーブ５０の角部には、面取り（具体的には例えば、Ｃ面取り、Ｒ面取り、糸面取り）が施されていてもよい。

【0024】

スリーブ５０の中央部には、スリーブ５０の横断面と直交する方向（つまり、各継手部３０，４０の径方向）に貫通するボルト挿通孔５１が形成されている。スリーブ５０において、ボルト挿通孔５１が延びる方向の長さ寸法は、内側継手部３０及び外側継手部４０の合計厚さ寸法と略同じ寸法である。

【0025】

ボルト挿通孔５１には、ボルト６０が挿通されている。ボルト６０は、軸部６１及び頭部６２を有している。軸部６１の外周には、雄ねじが形成されている。ボルト６０は、頭部６２を各継手部３０，４０の径方向外側に向けるとともに軸部６１を径方向内側に向けた状態で、ボルト挿通孔５１に挿通されている。頭部６２は、スリーブ５０の後端面５３に当接している。なお、頭部６２と後端面５３との間にワッシャが介在していてもよい。また、後端面５３には、ボルト６０の頭部６２が収容される凹部が形成されていてもよい。これにより、頭部６２が外側継手部４０の外周面から突出しなくなる。

【0026】

図５及び図６に示すように、円筒部３２の内周面のうち各内側貫通孔３３に対応する位置にはナットカバー７０が設けられている。ナットカバー７０は、鋼製のものであり、ナット８０を内包している。ナットカバー７０は、軸部６１にねじ込まれるナット８０の位置決めとともに、ナット８０の回転を規制する役割を果たす。

【0027】

ナットカバー７０は、ベースプレート７１を備えている。ベースプレート７１の第１面は平坦面であり、ベースプレート７１の第２面は、第１面から第２面へと向かう方向に凸となる円弧面になっている。この円弧面の曲率は、内側継手部３０の内周面の曲率と同じである。

【0028】

ベースプレート７１は、矩形形状をなしており、具体的には内側継手部３０の周方向に長い長方形状をなしている。内側継手部３０の周方向におけるベースプレート７１の長さ寸法は、内側継手部３０の周方向における内側貫通孔３３の長さ寸法よりも大きい。内側貫通孔３３の周方向においてベースプレート７１が内側貫通孔３３を跨いだ状態で、ベースプレート７１の円弧面と内側継手部３０の内周面とが当接している。この当接状態において、ベースプレート７１の長手方向における両端部それぞれが内側継手部３０の内周面に溶接により接合されている。これにより、内側継手部３０のうち内側貫通孔３３の周辺部分の強度を高めている。

【0029】

なお、本実施形態では、内側継手部３０の軸方向におけるベースプレート７１の長さ寸法は、内側継手部３０の軸方向における内側貫通孔３３の長さ寸法よりも大きい。これにより、内側継手部３０のうち内側貫通孔３３の周辺部分の強度をより高めている。

【0030】

ベースプレート７１の中央部には、図３に示すように、内側継手部３０の径方向に貫通するとともに、軸部６１が挿通されるプレート孔７１ａが形成されている。プレート孔７１ａの中心軸線と、内側貫通孔３３の中心軸線とは同じである。プレート孔７１ａの開口面積は、内側貫通孔３３のうち径方向において最も内側の開口面積よりも小さい。このため、内側貫通孔３３を内側継手部３０の径方向から見た場合、ベースプレート７１のうちプレート孔７１ａが形成されていない部分により、内側貫通孔３３が一部覆われている。なお、図３には、ナットカバー７０のうちベースプレート７１のみ図示している。また、図１及び図２では、ナットカバー７０の図示を省略している。

【0031】

ナットカバー７０は、支柱部７２、板部７３及び保持部７４を備えている。本実施形態では、支柱部７２、板部７３及び保持部７４が一体で構成されている。板部７３は、板面をベースプレート７１の平坦面に向けた状態で配置されている。板部７３のうち、内側継手部３０の軸方向における両端部のそれぞれは、内側継手部３０の径方向外側に屈曲した支柱部７２とされている。各支柱部７２の先端部は、ベースプレート７１の平坦面に溶接により接合されている。各支柱部７２のうち、内側継手部３０の周方向における両端部のそれぞれは、内側継手部３０の軸方向に屈曲した保持部７４とされている。ベースプレート７１、支柱部７２、板部７３及び保持部７４により囲まれる空間にナット８０が収容されている。この空間は、ナット８０よりもやや大きくされており、これによりナットカバー７０とナット８０との間に隙間ができるようになっている。この隙間により、軸部６１をナット８０の雌ネジにねじ込みやすくなっている。なお、板部７３には、軸部６１の干渉を防止する孔７５が形成されている。

【0032】

ナット８０は、工場において、以下に説明する方法でナットカバー７０に内包される。詳しくは、支柱部７２をベースプレート７１に溶接する前に、支柱部７２、板部７３及び保持部７４により囲まれる空間にナット８０を収容する。そして、支柱部７２にベースプレート７１を溶接する。これにより、ナット８０がナットカバー７０に内包される。

【0033】

ナット８０が内包されたナットカバー７０は、工場において内側継手部３０の内周面に溶接により接合される。この溶接作業は、内側継手部３０の軸方向端部の開口３４から例えばアーク溶接の溶接棒を差し入れることにより行われる。詳しくは、鋼管杭の端部に内側継手部３０を溶接接合した後、ナット８０を内包したナットカバー７０を内周面に溶接接合する。これは、鋼管杭と内側継手部３０とを内周面側から溶接する場合において、ナットカバー７０が溶接作業の妨げになることを防止するためである。また、ナット８０がナットカバー７０に内包されているため、溶接作業中にナット８０がナットカバー７０から離脱しない。これにより、ナットカバー７０の溶接作業の効率を高めることができる。

【0034】

鋼管杭の端部に内側継手部３０を溶接接合した後、上述したように内側継手部３０の軸方向端部の開口３４から溶接棒を差し入れて、ベースプレート７１の長手方向における両端部を内側継手部３０の内周面に溶接接合する。この場合、ベースプレート７１の短手方向における両端部のうち、内側継手部３０の上記開口３４から遠い方の端部を溶接する場合と比較して、溶接作業を簡易に行うことができ、ひいては溶接作業の効率を高めることができる。

【0035】

ベースプレート７１は、内側継手部３０の周方向に長い。このため、ベースプレート７１の長手方向における端部からナット８０までの距離を長くできる。その結果、ベースプレート７１の端部を溶接する場合において、溶接によって発生した熱がナット８０に及ぼす影響を抑制できる。これにより、ナット８０の材料特性が変化することを防止できる。

【0036】

各継手部３０，４０が溶接接合された鋼管杭１０，２０は、鋼管杭を埋設する現場に運搬される。以下、図７を用いて、埋設現場における下側鋼管杭１０と上側鋼管杭２０との連結方法について説明する。

【0037】

まず、図７（Ａ）に示すように、内側貫通孔３３及び外側貫通孔４３の位置が互いに合わせられた状態となるように、外側継手部４０と内側継手部３０とを嵌め合わせる。

【0038】

続いて、スリーブ５０の先端面５２がベースプレート７１の円弧面に当接するまでスリーブ５０を貫通孔３３，４３に挿入する。これにより、スリーブ５０が貫通孔３３，４３に嵌め合わせられ、スリーブ５０の各錐体面５４が貫通孔３３，４３の内周面に密接する。スリーブ５０の横断面の面積が径方向内側にいくほど小さくなっているため、スリーブ５０を貫通孔３３，４３に挿入しやすい。

【0039】

続いて、図７（Ｂ）に示すように、ボルト６０の頭部６２を各継手部３０，４０の径方向外側に向けるとともに軸部６１を径方向内側に向けた状態で、ボルト６０をボルト挿通孔５１に挿通し、プレート孔７１ａを介して軸部６１の先端をナット８０の雌ネジに挿入する。そして、ボルト６０を時計回りに回転させて軸部６１の雄ネジをナット８０の雌ネジにねじ込む。この際、ナットカバー７０により、ボルト６０の回転に伴うナット８０の供回りは発生しない。

【0040】

ボルト６０を更に回転させて軸部６１の雄ネジをナット８０の雌ネジに更にねじ込む。これにより、図７（Ｃ）に示すように、ボルト６０の頭部６２によりスリーブ５０が径方向内側に押さえ付けられ、下側鋼管杭１０と上側鋼管杭２０とを強固に固定することができる。

【0041】

以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られる。

【0042】

スリーブ５０の横断面において、各継手部３０，４０の周方向の長さ寸法が、各継手部３０，４０の軸方向の長さ寸法よりも大きい。これにより、鋼管杭の埋設時において下側鋼管杭１０に対して上側鋼管杭２０が相対回転する場合、外力が作用する方向におけるスリーブ５０の長さ寸法を大きくでき、その外力に対するスリーブ５０の強度を高めることができる。その結果、スリーブ５０が大きく変形したり、スリーブ５０が破損したりすることを防止することができる。

【0043】

スリーブ５０の横断面が、各継手部３０，４０の周方向に長い長方形状をなしている。これにより、例えばスリーブの横断面が周方向に長い楕円形状の場合と比較して、スリーブ５０の横断面の面積を大きくすることができる。これにより、スリーブ５０の強度をより高めることができる。

【0044】

角錐台状のスリーブ５０が貫通孔３３，４３に嵌め合わされた状態においてスリーブ５０の各錐体面５４に貫通孔３３，４３の内周面が密接している。これにより、上側鋼管杭２０に作用する回転トルクを下側鋼管杭１０に的確に伝達できる。

【0045】

＜その他の実施形態＞
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。

【0046】

・スリーブの横断面及び各継手部の貫通孔の形状としては、長方形状に限らず、例えば、各継手部３０，４０の周方向に長い楕円形状又はオーバル形状といった長円形状であってもよい。

【0047】

・上記実施形態で説明した貫通孔３３，４３を第１貫通孔と称し、上記実施形態で説明したスリーブ５０を第１スリーブと称すこととする。図８に示すように、外側継手部４０及び内側継手部３０のそれぞれに、各継手部３０，４０が嵌め合わせられた状態において外側継手部４０の外周面から内側継手部３０の内周面まで貫通する第２貫通孔９０が更に形成されていてもよい。第２貫通孔９０は、各継手部３０，４０の軸方向において第１貫通孔３３，４３の位置から下側にずれた位置であって、各継手部３０，４０の周方向において第１貫通孔３３，４３の位置からずれた位置に形成されている。つまり、第１貫通孔３３，４３及び第２貫通孔９０の配列は、いわゆる千鳥配列になっている。これにより、各継手部３０，４０の強度低下の抑制を図っている。

【0048】

第２貫通孔９０は、各継手部３０，４０の軸方向を長手方向とし、各継手部３０，４０の周方向を短手方向とする長方形状をなしている。第２貫通孔９０の中心軸線は各継手部３０，４０の径方向に延びるとともに、第２貫通孔９０は、径方向内側にいくほど開口面積が小さくなるように形成されている。これにより、第１貫通孔３３，４３と同様に、第２貫通孔９０の内周面が外側継手部４０の外周面から内側継手部３０の内周面まで連続している。

【0049】

第２貫通孔９０には、第２スリーブ１００が嵌め合わされている。第２スリーブ１００は、第１スリーブ５０と同様に、各継手部３０，４０の径方向内側にいくほど横断面の面積が小さくなるとともに、各継手部３０，４０の径方向を高さ方向とする角錐台状をなしている。第２スリーブ１００が第２貫通孔９０に嵌め込まれることにより、第２スリーブ１００の４つの錐体面それぞれに第２貫通孔９０の内周面が密接する。なお、第２スリーブ１００には、ボルト１１０が挿通されるボルト挿通孔が形成されている。第１スリーブ５０と同様に、第２スリーブ１００に対応して、ナットカバー及びナットが設けられている。

【0050】

鋼管杭を地盤に埋設し、鋼管杭を杭基礎として構造物が築かれる。その後、例えば地震が発生する場合、構造物により鋼管杭が上向きに引っ張られる。この引っ張り外力に対する第２スリーブ１００の強度が大きいため、下側鋼管杭１０及び上側鋼管杭２０を強固に連結できる。

【0051】

ちなみに、図８に示す例では、第２スリーブ１００が第１スリーブ５０と同数設けられる構成としたが、第２スリーブ１００は少なくとも１つ設けられればよい。また、第２スリーブ１００の横断面及び各継手部の第２貫通孔９０の形状としては、長方形状に限らず、例えば、各継手部３０，４０の軸方向に長い楕円形状又はオーバル形状といった長円形状であってもよい。また、第２スリーブ１００の横断面及び各継手部の第２貫通孔９０の形状としては、軸方向に長い形状に限らず、例えば、正方形状又は円形状であってもよい。

【0052】

・周方向に並ぶ各スリーブ５０のうち、一部であってかつ少なくとも１つのスリーブの横断面が、鋼管杭の周方向に長い形状（例えば長方形状）をなしていてもよい。この場合、例えば、長方形状及び正方形状のスリーブが周方向に交互に並んでいてもよい。

【0053】

・ベースプレート７１の両面が平坦面であってもよい。この場合、スリーブ５０の先端面５２が平坦面になっていればよい。

【0054】

・スリーブとしては、各継手部３０，４０の径方向において横断面の面積が一定のものであってもよい。この場合、例えば、横断面が長方形状の場合、スリーブは直方体形状になる。また、この場合、内側貫通孔３３の一部がベースプレート７１により覆われていることにより、スリーブ５０の挿入時において、ベースプレート７１がスリーブの位置決めとなる。これにより、スリーブ５０が挿入されすぎるのを防止できる。

【0055】

・スリーブ５０にボルト挿通孔５１が形成されていなくてもよい。この場合、ボルト６０、ナットカバー７０及びナット８０は不要である。なお、この場合、例えばスリーブ５０の錐体面５４に接着剤を塗布して貫通孔３３，４３に挿入することにより、スリーブ５０の錐体面５４と貫通孔３３，４３の内周面との間に接着層が形成されていてもよい。これにより、スリーブ５０が貫通孔３３，４３から外れにくくなり、下側鋼管杭１０と上側鋼管杭２０とを強固に連結できる。

【0056】

・内側継手部が上側鋼管杭の下端部に設けられ、外側継手部が下側鋼管杭の上端部に設けられていてもよい。

【符号の説明】

【0057】

１０，２０…鋼管杭、３０…内側継手部、４０…外側継手部、５０…スリーブ（横長スリーブ）、６０…ボルト。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】