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特開2022-144327鋼管杭の連結構造、鋼管杭の連結方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144327
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】鋼管杭の連結構造、鋼管杭の連結方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/24 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
E02D5/24 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045270
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】507225584
【氏名又は名称】ガイアパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中山 奉一
(72)【発明者】
【氏名】今枝 正良
(72)【発明者】
【氏名】平野 健一
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA05
2D041BA19
2D041BA44
2D041CA01
2D041CB01
2D041CB06
2D041DB02
2D041DB13
(57)【要約】
【課題】鋼管杭を強固に連結できる鋼管杭の連結構造、及びその連結構造を用いる鋼管杭の連結方法を提供する。
【解決手段】連結構造は、下側鋼管杭の上端部に設けられた内側継手部30と、上側鋼管杭の下端部に設けられた外側継手部40と、スリーブ50とを備えている。外側継手部40及び内側継手部30のそれぞれには貫通孔33,43が形成されている。貫通孔33,43にスリーブ50が嵌め合わされる。スリーブ50に形成されたボルト挿通孔51には、ボルト60が挿通されている。ボルト60の頭部62は、スリーブ50の後端面53に当接している。ボルト60の軸部61に形成された雄ネジは、引っ掛け部材70に形成された雌ネジ孔71にねじ込まれている。スリーブ50の先端面52には、引っ掛け部材70の回転を規制する回転規制部80が設けられている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に配置された鋼管杭(10,20)の端部同士を連結する鋼管杭の連結構造において、
上下に配置された前記鋼管杭のうち一方(10)の端部に設けられた円筒状の内側継手部(30)と、
上下に配置された前記鋼管杭のうち他方(20)の端部に設けられ、前記内側継手部に外側から嵌め合わされる円筒状の外側継手部(40)と、
を備え、
前記外側継手部及び前記内側継手部のそれぞれには、前記外側継手部と前記内側継手部とが嵌め合わせられた状態において前記外側継手部の外周面から前記内側継手部の内周面まで貫通する貫通孔(33,43)が形成されており、
前記外側継手部と前記内側継手部とを連結するために、前記外側継手部と前記内側継手部とのそれぞれの前記貫通孔に跨るようにして、前記貫通孔に嵌め合わされるスリーブ(50,150)を備え、
前記スリーブには、前記スリーブの横断面と直交する方向に貫通する挿通孔(51)が形成されており、
前記挿通孔に挿通される挿通軸部(61,101,161)と、
前記挿通軸部のうち前記内側継手部に対して径方向内側の部分に設けられた内側挟み込み部(70,102,170)と、
前記挿通軸部のうち前記外側継手部に対して径方向外側の部分に設けられた外側挟み込み部(62,110)と、
を備え、
前記内側挟み込み部及び前記外側挟み込み部のいずれかに形成された雌ネジ孔(71,171)に前記挿通軸部の外周に形成された雄ネジがねじ込まれ、
前記内側挟み込み部は、前記挿通軸部が延びる方向と直交する方向に延びる長尺状をなしており、
前記外側挟み込み部を前記挿通軸部が延びる方向まわりに回転させることにより、前記内側挟み込み部が供回り可能になっており、
前記内側挟み込み部の回転位置に応じて、前記挿通孔が延びる方向から前記スリーブを見た場合に前記内側挟み込み部が前記スリーブの先端部からはみ出していない状態、又は前記内側挟み込み部の長手方向の端部が前記スリーブの先端部からはみ出した状態となり、
前記スリーブの先端部から前記鋼管杭の径方向中心側に向かって突出するように設けられ、前記内側挟み込み部の前記供回り中に前記内側挟み込み部に当接して、前記内側挟み込み部の回転を規制する回転規制部(80,180)を備え、
前記内側挟み込み部の前記供回りが前記回転規制部により規制されるとともに前記内側挟み込み部が前記内側継手部の内周面に当接した状態で、前記内側挟み込み部及び前記外側挟み込み部により前記スリーブが挟み込まれる、鋼管杭の連結構造。
【請求項2】
前記内側挟み込み部の前記供回りが前記回転規制部により規制された状態において、前記内側挟み込み部の長手方向が前記鋼管杭の軸方向を向く、請求項1に記載の鋼管杭の連結構造。
【請求項3】
前記スリーブ(50)の横断面において、前記鋼管杭の周方向の長さ寸法が、前記鋼管杭の軸方向の長さ寸法よりも大きくされており、
前記内側挟み込み部(70,102)の長手方向の長さ寸法が、前記スリーブの先端部における短手方向の長さ寸法よりも大きくされており、
前記内側挟み込み部の前記供回りが前記回転規制部により規制された状態において、前記内側挟み込み部の長手方向の両端部それぞれが前記スリーブの先端部からはみ出した状態となる、請求項2に記載の鋼管杭の連結構造。
【請求項4】
前記挿通軸部は、ボルト(60)の軸部(61)であり、
前記外側挟み込み部は、前記ボルトの頭部(62)であり、
前記内側挟み込み部は、前記雌ネジ孔が形成された引っ掛け部材(70,170)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の鋼管杭の連結構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の鋼管杭の連結構造を用いる鋼管杭の連結方法において、
前記外側継手部及び前記内側継手部それぞれに形成された前記貫通孔の位置が互いに合わせられた状態となるように、前記外側継手部と前記内側継手部とを嵌め合わせる工程と、
前記外側挟み込み部を前記スリーブの後端部に当接させた場合に、前記挿通軸部が延びる方向における前記スリーブの先端部と前記内側挟み込み部との隙間寸法(E1)が、前記挿通軸部が延びる方向における前記回転規制部の長さ寸法(E2)よりも小さくなるように、前記挿通軸部、前記内側挟み込み部及び前記外側挟み込み部と一体化された前記スリーブであるスリーブアッシー(90)を準備する工程と、
前記挿通孔が延びる方向から前記スリーブを見た場合に前記内側挟み込み部が前記スリーブの先端部からはみ出さない状態にした前記スリーブアッシーを前記貫通孔に嵌め合わせる工程と、
前記外側挟み込み部を回転させることにより前記挿通軸部を介して前記内側挟み込み部を供回りさせ、前記内側挟み込み部を前記回転規制部に当接させることにより、前記内側挟み込み部の端部が前記スリーブの先端部からはみ出した状態となる回転位置で規制し、その規制状態において前記雄ネジを前記雌ネジ孔に更にねじ込むことにより、前記内側挟み込み部及び前記外側挟み込み部によって前記スリーブを挟み込む工程と、
を備える鋼管杭の連結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭の連結構造、及びその連結構造を用いる連結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物を軟弱地盤に築く場合において、構造物を支持するために杭基礎が用いられる。杭基礎では、円筒状の鋼管杭の先端部を軟弱地盤の下にある支持層まで到達させる必要がある。そこで、掘削刃が設けられた鋼管杭を回転させながら地盤に埋設し、埋設した鋼管杭の上端部に新たな鋼管杭の下端部を連結し、連結した鋼管杭を回転させながら埋設する工法が用いられている。
【0003】
先に埋設された鋼管杭と、その鋼管杭の上側に配置される鋼管杭とを連結するために、鋼管杭の埋設が実施される現場において、溶接を用いることなく、上下に配置された鋼管杭の端部同士を連結する構造が特許文献1に開示されている。
【0004】
詳しくは、この連結構造は、円筒状のインサイドシリンダと、円筒状のアウトサイドシリンダとを備えている。インサイドシリンダは、下側の鋼管杭の上端部に接合され、アウトサイドシリンダは、上側の鋼管杭の下端部に接合され、インサイドシリンダに外側から嵌め合わされる。インサイドシリンダ及びアウトサイドシリンダそれぞれには、アウトサイドシリンダとインサイドシリンダとが嵌め合わせられた状態においてアウトサイドシリンダの外周面からインサイドシリンダの内周面まで貫通する貫通孔が形成されている。
【0005】
連結構造は、円錐台形状のテーパロック部を備えている。テーパロック部には、テーパロック部の横断面と直交する方向に貫通するボルト挿通孔が形成されている。ボルト挿通孔には、ボルトの頭部を鋼管杭の径方向内側に向けるとともにボルトの軸部を鋼管杭の径方向外側に向けた状態でボルトが挿通されている。
【0006】
ボルトの軸部のうちテーパロック部よりも鋼管杭の径方向中心側には、ボルトの頭部側から順に、締め込みワッシャ部及び固定ワッシャ部が挿通されている。固定ワッシャ部の中央部には、締め込みワッシャ部が当接する環状のテーパ面が形成されている。
【0007】
ボルトの軸部の先端側からナットをねじ込む。これにより、ボルト、締め込みワッシャ部、固定ワッシャ部及びナットがテーパロック部と一体化される。一体化されたテーパロック部を貫通孔に嵌め合わせ、ナットを増し締めする。これにより、ボルトの頭部が締め込みワッシャ部に押し当てられ、その押し当てにより締め込みワッシャ部が固定ワッシャ部のテーパ面に押し当てられる。その結果、固定ワッシャ部が塑性変形し、固定ワッシャ部の外径寸法が大きくなる。これにより、固定ワッシャ部が貫通孔の内周面に押し当てられ、テーパロック部が貫通孔から外れてしまうことを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6243814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された連結構造では、貫通孔の内周面に対する固定ワッシャ部の押し当て力が不足する場合、テーパロック部が貫通孔から外れてしまい、鋼管杭を強固に連結できなくなる懸念がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、鋼管杭を強固に連結できる鋼管杭の連結構造、及びその連結構造を用いる鋼管杭の連結方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上下に配置された鋼管杭の端部同士を連結する鋼管杭の連結構造において、
上下に配置された前記鋼管杭のうち一方の端部に設けられた円筒状の内側継手部と、
上下に配置された前記鋼管杭のうち他方の端部に設けられ、前記内側継手部に外側から嵌め合わされる円筒状の外側継手部と、
を備え、
前記外側継手部及び前記内側継手部のそれぞれには、前記外側継手部と前記内側継手部とが嵌め合わせられた状態において前記外側継手部の外周面から前記内側継手部の内周面まで貫通する貫通孔が形成されており、
前記外側継手部と前記内側継手部とを連結するために、前記外側継手部と前記内側継手部とのそれぞれの前記貫通孔に跨るようにして、前記貫通孔に嵌め合わされるスリーブを備え、
前記スリーブには、前記スリーブの横断面と直交する方向に貫通する挿通孔が形成されており、
前記挿通孔に挿通される挿通軸部と、
前記挿通軸部のうち前記内側継手部に対して径方向内側の部分に設けられた内側挟み込み部と、
前記挿通軸部のうち前記外側継手部に対して径方向外側の部分に設けられた外側挟み込み部と、
を備え、
前記内側挟み込み部及び前記外側挟み込み部のいずれかに形成された雌ネジ孔に前記挿通軸部の外周に形成された雄ネジがねじ込まれ、
前記内側挟み込み部は、前記挿通軸部が延びる方向と直交する方向に延びる長尺状をなしており、
前記外側挟み込み部を前記挿通軸部が延びる方向まわりに回転させることにより、前記内側挟み込み部が供回り可能になっており、
前記内側挟み込み部の回転位置に応じて、前記挿通孔が延びる方向から前記スリーブを見た場合に前記内側挟み込み部が前記スリーブの先端部からはみ出していない状態、又は前記内側挟み込み部の長手方向の端部が前記スリーブの先端部からはみ出した状態となり、
前記スリーブの先端部から前記鋼管杭の径方向中心側に向かって突出するように設けられ、前記内側挟み込み部の前記供回り中に前記内側挟み込み部に当接して、前記内側挟み込み部の回転を規制する回転規制部を備え、
前記内側挟み込み部の前記供回りが前記回転規制部により規制されるとともに前記内側挟み込み部が前記内側継手部の内周面に当接した状態で、前記内側挟み込み部及び前記外側挟み込み部により前記スリーブが挟み込まれる。
【0012】
本発明では、内側挟み込み部の回転位置を、内側挟み込み部がスリーブの先端部からはみ出していない状態となる回転位置にしながら、スリーブを貫通孔に嵌め合わせることができる。ここで、内側挟み込み部は、挿通軸部が延びる方向と直交する方向に延びる長尺状をなしている。このため、スリーブを嵌め合わせた後、内側挟み込み部を供回りさせて回転規制部に当接させることにより、内側挟み込み部の長手方向の端部がスリーブの先端部からはみ出す。このはみ出し部分が内側継手部の内周面に当接する。
【0013】
その後、内側挟み込み部の供回りが回転規制部により規制されるとともに内側挟み込み部が内側継手部の内周面に当接した状態で、内側挟み込み部及び外側挟み込み部のいずれかに形成された雌ネジ孔に挿通軸部の雄ネジがねじ込まれることにより、内側挟み込み部及び外側挟み込み部によってスリーブが挟み込まれる。これにより、内側継手部の内周面に内側挟み込み部を引っ掛けた状態でスリーブを貫通孔に嵌め合わせることができる。その結果、貫通孔からスリーブが外れてしまうことを的確に防止でき、ひいては鋼管杭を強固に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】嵌め合わせられる前における一対の鋼管杭の正面図。
図2】嵌め合わせられた一対の鋼管杭の縦断面図。
図3】スリーブが貫通孔に嵌め合わせられた状態における図2の3-3線断面図。
図4】スリーブアッシーの分解斜視図。
図5】スリーブアッシーの縦断面図。
図6】引っ掛け部材の回転前後を示す図。
図7】鋼管杭の連結方法の手順を示す図。
図8】第2実施形態に係るスリーブアッシーの分解斜視図。
図9】引っ掛け部材の回転前後を示す図。
図10】第3実施形態に係るスリーブアッシーの分解斜視図。
図11】その他の実施形態に係るスリーブアッシーを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る鋼管杭の連結構造を具体化した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。連結構造は、先に地盤に埋設される鋼管杭と、その鋼管杭の後に続けて埋設される鋼管杭とを連結するものである。以下では、図1及び図2に示すように、上下に配置される対となる鋼管杭のうち、下側に配置されるものを下側鋼管杭10と称し、上側に配置されるものを上側鋼管杭20と称すこととする。各鋼管杭10,20が連結された状態において、上側鋼管杭20を回転させると、上側鋼管杭20に作用する回転トルクが下側鋼管杭10に伝達され、下側鋼管杭10も回転させられる。
【0016】
下側鋼管杭10及び上側鋼管杭20は、円筒状をなしている。下側鋼管杭10の外径寸法と上側鋼管杭20の外径寸法とは同じである。また、下側鋼管杭10の厚さ寸法と上側鋼管杭20の厚さ寸法とは同じである。
【0017】
下側鋼管杭10及び上側鋼管杭20の連結構造は、内側継手部30及び外側継手部40を備えている。内側継手部30は、下側鋼管杭10の上端部に設けられており、外側継手部40は、上側鋼管杭20の下端部に設けられている。
【0018】
内側継手部30は、鋼製の部材であり、円環状をなす環状部31と、円筒状をなす円筒部32とを備えている。環状部31において径方向内側の端部から上側に向かって円筒部32が延びている。
【0019】
環状部31の外径寸法は、下側鋼管杭10の外径寸法と同じである。環状部31において径方向外側の端部には、下側鋼管杭10の上端部が溶接により接合されている。これにより、内側継手部30は、下側鋼管杭10と同心となる。内側継手部30の厚さ寸法は、下側鋼管杭10の厚さ寸法よりも大きい。
【0020】
外側継手部40は、鋼製の部材であり、円筒状をなしている。外側継手部40の外径寸法と上側鋼管杭20の外径寸法とは同じである。外側継手部40の厚さ寸法は、上側鋼管杭20の厚さ寸法よりも大きい。上側鋼管杭20の下端部には、外側継手部40の上端部が溶接により接合されている。これにより、外側継手部40は、上側鋼管杭20と同心となる。
【0021】
外側継手部40の内径寸法は、円筒部32の外径寸法よりもやや大きい。これにより、円筒部32に対する外側継手部40のすき間嵌めが可能となる。図2に示すように、外側継手部40が円筒部32に嵌め合わされることにより、外側継手部40の下端部は、環状部31のうち径方向外側における端部の上面に当接する。なお、上側鋼管杭20の上端部には、図示しないが、内側継手部30が接合される。
【0022】
外側継手部40には、外側貫通孔43が形成されている。外側貫通孔43は、外側継手部40の周方向に等間隔に並んで複数(6つを例示)形成されている。各外側貫通孔43は、同じ形状であり、外側継手部40の軸方向において同一位置に形成されている。
【0023】
内側継手部30には、内側貫通孔33が形成されている。内側貫通孔33は、円筒部32の周方向に等間隔に並んで、外側貫通孔43の数と同数形成されている。各内側貫通孔33は、同じ形状であり、内側継手部30の軸方向において同一位置に形成されている。各外側貫通孔43のいずれか1つと各内側貫通孔33のいずれか1つとが合わさるように、外側継手部40と内側継手部30とが嵌め合わせられる。これにより、外側継手部40の径方向の外周面から内側継手部30の径方向の内周面まで貫通する6つの貫通孔33,44が形成される。
【0024】
各貫通孔33,43は、各継手部30,40の周方向に長い長方形状をなしている。各貫通孔33,43の中心軸線は各継手部30,40の径方向に延びるとともに、各貫通孔33,43は、径方向内側にいくほど開口面積が小さくなるように形成されている。これにより、貫通孔33,44の内周面が外側継手部40の径方向の外周面から内側継手部30の径方向の内周面まで連続している。
【0025】
図3図5に示すように、連結構造は、スリーブ50、ボルト60及び引っ掛け部材70を備えている。スリーブ50は、鋼製の部材であり、貫通孔33,43に嵌め込まれる。スリーブ50は、各継手部30,40の径方向内側にいくほど横断面の面積が小さくなるとともに、各継手部30,40の径方向を高さ方向とする角錐台状をなしている。つまり、スリーブ50において、径方向内側の端面を先端面52とし、外側継手部40の径方向外側の端面を後端面53とする場合、先端面52と後端面53とが4つの錐体面54でつながっている。先端面52及び後端面53は、平坦面になっている。
【0026】
スリーブ50の横断面は、各継手部30,40の周方向に長い長方形状をなしている。これにより、下側鋼管杭10に対して上側鋼管杭20が相対回転する場合におけるスリーブ50のねじり強度を高めている。その結果、スリーブ50が大きく変形したり、スリーブ50が破損したりすることを防止できる。
【0027】
スリーブ50の横断面形状は、各貫通孔33,43と合同の形状である。このため、スリーブ50が貫通孔33,43に嵌め込まれると、スリーブ50の4つの錐体面54それぞれが貫通孔33,43の内周面に密接する。4つの錐体面54それぞれが貫通孔33,43の内周面に密接した状態において、先端面52は、内側継手部30の内周面よりも径方向中心側に突出しないようになっている。なお、スリーブ50の横断面において、短手方向の長さ寸法と長手方向の長さ寸法との比率は、例えば、1:1.2にしたり、1:1.5にしたりすることができる。また、錐体面54の周縁部等、スリーブ50の角部には、面取り(具体的には例えば、C面取り、R面取り、糸面取り)が施されていてもよい。
【0028】
スリーブ50の中央部には、スリーブ50の横断面と直交する方向(つまり、各継手部30,40の径方向)に貫通するボルト挿通孔51が形成されている。
【0029】
ボルト挿通孔51には、ボルト60が挿通されている。ボルト60は、軸部61及び頭部62を有している。軸部61の外周には、雄ねじが形成されている。ボルト60は、頭部62を各継手部30,40の径方向外側に向けるとともに軸部61を径方向内側に向けた状態で、ボルト挿通孔51に挿通されている。頭部62は、スリーブ50の後端面53に当接する。なお、頭部62と後端面53との間にワッシャが介在していてもよい。また、後端面53には、ボルト60の頭部62が収容される凹部が形成されていてもよい。これにより、頭部62が外側継手部40の外周面から突出しなくなる。
【0030】
引っ掛け部材70は、鋼製の部材であり、直方体形状をなしている。引っ掛け部材70において長手方向の中央部には、軸部61の雄ネジが時計回りにねじ込まれる雌ネジ孔71が形成されている。雌ネジ孔71に軸部61の雄ネジがねじ込まれることにより、スリーブ50、ボルト60及び引っ掛け部材70が一体化されたスリーブアッシー90が構成される。ボルト60が延びる方向まわりにスリーブ50に対して引っ掛け部材70が回転可能になっている。なお、ボルト60の軸部61が「挿通軸部」に相当し、頭部62が「外側挟み込み部」に相当し、引っ掛け部材70が「内側挟み込み部」に相当する。
【0031】
先端面52には、回転規制部80が設けられている。回転規制部80は、内側継手部30の径方向中心側に向かう方向に先端面52から突出している。
【0032】
図5にスリーブアッシー90の縦断面図を示し、図6にスリーブアッシー90を引っ掛け部材70側から見た図を示す。図6では、引っ掛け部材70の回転前の状態を実線にて示し、引っ掛け部材70の回転後の状態を二点鎖線にて示す。
【0033】
引っ掛け部材70の短手方向の長さ寸法L1は、スリーブ50の先端面52における短手方向の長さ寸法L2から、先端面52の短手方向における回転規制部80の長さ寸法L3を差し引いた寸法以下の値にされている。本実施形態では、引っ掛け部材70の短手方向の中心位置と、先端面52の短手方向の中心位置とが一致しており、「L1=L2-2×L3」とされている。引っ掛け部材70の長手方向の長さ寸法は、先端面52の長手方向の長さ寸法L4以下の値にされている。本実施形態では、引っ掛け部材70の長手方向の中心位置と、先端面52の長手方向の中心位置とが一致しており、引っ掛け部材70の長手方向の長さ寸法は、先端面52の長手方向の長さ寸法L4と同じ寸法である。このため、各貫通孔33,43にスリーブ50が挿入される場合、スリーブアッシー90は、図5及び図6に実線にて示すように、ボルト挿通孔51が延びる方向からスリーブ50を見た場合に引っ掛け部材70が先端面52からはみ出していない状態になる。図5及び図6に示す例では、引っ掛け部材の長手方向と先端面52の長手方向とが一致している。
【0034】
ボルト60の頭部62を後端面53に当接させた図5に示す状態では、ボルト60が延びる方向における先端面52と引っ掛け部材70との隙間寸法E1が、ボルト60が延びる方向における回転規制部80の長さ寸法E2よりも小さくなるように、引っ掛け部材70の雌ネジ孔71に軸部61の雄ネジが途中までねじ込まれている。換言すれば、引っ掛け部材70を先端面52に当接させた状態では、ボルト60が延びる方向における後端面53と頭部62との隙間寸法が回転規制部80の長さ寸法E2よりも小さい。これにより、スリーブアッシー90を貫通孔33,43に嵌め合わせた後、引っ掛け部材70が回転規制部80に当接しなくなる事態の発生を防止できる。
【0035】
各貫通孔33,43にスリーブ50が嵌め合わされた状態において、ボルト60を時計回りに回転させると、図6に二点鎖線にて示すように、ボルト60が延びる方向まわりに引っ掛け部材70が90°回転し、引っ掛け部材70が回転規制部80に当接する。これにより、引っ掛け部材70の長手方向が内側継手部30の軸方向を向く。引っ掛け部材70の長手方向の長さ寸法L4が、先端面52における短手方向の長さ寸法L2よりも大きい。このため、ボルト挿通孔51が延びる方向からスリーブ50を見た場合に引っ掛け部材70の長手方向の両端部それぞれが先端面52からはみ出した状態になる。
【0036】
鋼管杭10,20には、工場において各継手部30,40が溶接により接合される。各継手部30,40が溶接接合された鋼管杭10,20は、鋼管杭を埋設する現場に運搬される。以下、図7を用いて、埋設現場における下側鋼管杭10と上側鋼管杭20との連結方法について説明する。
【0037】
まず、図7(A)に示すように、内側貫通孔33及び外側貫通孔43の位置が互いに合わせられた状態となるように、外側継手部40と内側継手部30とを嵌め合わせる。
【0038】
続いて、引っ掛け部材70が先端面52からはみ出していない状態のスリーブアッシー90を準備する。スリーブアッシー90は、現場においてスリーブ50、ボルト60及び引っ掛け部材70が一体化されて作製されたものであってもよいし、工場において予め作製されたものであってもよい。
【0039】
そして、図7(B)に示すように、スリーブアッシー90を貫通孔33,43に挿入する。これにより、貫通孔33,43に跨るようにしてスリーブ50が貫通孔33,43に嵌め合わせられ、スリーブ50の各錐体面54が貫通孔33,43の内周面に密接する。スリーブ50の横断面の面積が径方向内側にいくほど小さくなっているため、スリーブ50を貫通孔33,43に挿入しやすい。
【0040】
続いて、ボルト60の頭部62をスリーブ50の後端面53に押し付けた状態で、工具TL(例えば電動インパクトレンチ)によってボルト60を時計回りに回転させる。その回転によって最初は引っ掛け部材70が供回りするものの、その後、引っ掛け部材70は回転規制部80に当接する。その結果、先の図6に二点鎖線にて示したように、引っ掛け部材70の長手方向の両端部それぞれが先端面52からはみ出した状態で、スリーブ50に対する引っ掛け部材70の回転が規制される。このため、ボルト60を更に回転させたとしても、引っ掛け部材70は供回りせず、引っ掛け部材70の長手方向の両端部それぞれが先端面52からはみ出した状態を維持できる。つまり、回転規制部80によれば、ボルト60の回転による引っ掛け部材70の供回りを防止しつつ、軸部61の雄ネジを雌ネジ孔71にねじ込むことができる。
【0041】
ボルト60を更に回転させて軸部61の雄ネジを引っ掛け部材70の雌ネジ孔71に更にねじ込む。これにより、図7(C)に示すように、引っ掛け部材70の長手方向の両端部それぞれが、円筒部32の内周面に当接する。その結果、ボルト60の頭部62によりスリーブ50が径方向内側に押さえ付けられ、下側鋼管杭10と上側鋼管杭20とを強固に固定することができる。
【0042】
以上説明した本実施形態によれば、円筒部32の内周面に引っ掛け部材70を引っ掛けた状態とすることにより、貫通孔33,43からスリーブ50が外れてしまうことを的確に防止できる。その結果、下側鋼管杭10及び上側鋼管杭20を強固に連結することができる。
【0043】
スリーブアッシー90を貫通孔33,43に嵌め合わせた状態において、ボルト60を時計回りに回転させるといった簡易な作業により、円筒部32の内周面に引っ掛け部材70を引っ掛けつつ、軸部61の雄ネジを雌ネジ孔71にねじ込むことができる。このため、下側鋼管杭10と上側鋼管杭20との連結作業の作業性を高めることができる。
【0044】
本実施形態とは異なり、引っ掛け部材70の回転が回転規制部80により規制された状態において、引っ掛け部材70の長手方向がスリーブ50の先端面52の短手方向を向く場合、引っ掛け部材70の長手方向の先端部のみ円筒部32の内周面に当接することとなる。これに対し、本実施形態では、引っ掛け部材70の回転が回転規制部80により規制された状態において、引っ掛け部材70の長手方向が内側継手部30の軸方向を向く。この場合、引っ掛け部材70のうち円筒部32の内周面に当接させることができる部分が増え、円筒部32の内周面に引っ掛け部材70を安定して引っ掛けることができる。その結果、下側鋼管杭10及び上側鋼管杭20をより強固に連結することができる。
【0045】
また、引っ掛け部材70の長手方向が内側継手部30の軸方向を向いていることにより、例えば各鋼管杭10,20の内径寸法が小さい場合において、周方向に隣接する引っ掛け部材70同士が干渉することを好適に防止することができる。
【0046】
スリーブ50の横断面において、各継手部30,40の周方向の長さ寸法が、各継手部30,40の軸方向の長さ寸法よりも大きく、引っ掛け部材70の長手方向の長さ寸法が、スリーブ50の先端面52における短手方向の長さ寸法よりも大きい。このため、先端面52に対する引っ掛け部材70のはみ出し部分を好適に増やすことができる。これにより、引っ掛け部材70の長手方向が内側継手部30の軸方向を向いた状態において、引っ掛け部材70のうち円筒部32の内周面に当接させる部分を増やすことができる。その結果、スリーブ50のねじり強度を高めつつ、円筒部32の内周面に引っ掛け部材70をいっそう安定して引っ掛けることができる。
【0047】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図8及び図9に示すように、回転規制部80の先端部が引っ掛け部材70の短手方向及び長手方向に延びて変位規制部81とされている。これにより、引っ掛け部材70の供回り中において、引っ掛け部材70が変位規制部81によりガイドされるようになる。その結果、回転規制部80の先端よりも径方向中心側に引っ掛け部材70が変位することを防止できる。
【0048】
以上説明した本実施形態によれば、スリーブアッシー90を準備する場合において、先の図5に示した「E1<E2」の関係を満たすように軸部61の雄ネジを雌ネジ孔71にねじ込んでおく必要がない。このため、スリーブアッシー90の準備作業の作業負荷を軽減できる。
【0049】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図10に示すように、スリーブアッシー90の構成が変更されている。図10において、先の図4等に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0050】
スリーブアッシー90は、スリーブ50、引っ掛けボルト100及びナット110を備えている。引っ掛けボルト100は、軸部101及び頭部102を有している。頭部102は、例えば鋼製のものであり、直方体形状をなしている。頭部102の長手方向の長さ寸法は、スリーブ50の先端面52における短手方向の長さ寸法よりも大きい。頭部102において長手方向の中央部から軸部101が延びている。軸部101の外周には、雄ねじが形成されている。
【0051】
引っ掛けボルト100は、頭部102を各継手部30,40の径方向内側に向けるとともに軸部101を径方向外側に向けた状態で、ボルト挿通孔51に挿通されている。軸部101の雄ネジには、ナット110の雌ネジ孔がねじ込まれる。これにより、スリーブ50、引っ掛けボルト100及びナット110が一体化されたスリーブアッシー90が構成される。軸部101が延びる方向まわりにスリーブ50に対して頭部102が回転可能になっている。なお、本実施形態において、軸部101が「挿通軸部」に相当し、頭部102が「内側挟み込み部」に相当し、ナット110が「外側挟み込み部」に相当する。
【0052】
各貫通孔33,43にスリーブ50が挿入される場合、スリーブアッシー90は、ボルト挿通孔51が延びる方向からスリーブ50を見た場合に頭部102が先端面52からはみ出していない状態とされる。また、第1実施形態と同様に、軸部101が延びる方向における先端面52と頭部102との隙間寸法が回転規制部80の長さ寸法E2よりも小さくなるように、軸部101がナット110の雌ネジ孔に途中までねじ込まれている。これにより、スリーブアッシー90を貫通孔33,43に嵌め合わせた後、頭部102が回転規制部80に当接しなくなる事態の発生を防止できる。
【0053】
各貫通孔33,43にスリーブ50が嵌め合わされた状態において、軸部101を時計回りに回転させると、軸部101が延びる方向まわりに頭部102が90°供回りし、頭部102が回転規制部80に当接する。これにより、頭部102の長手方向が内側継手部30の軸方向を向き、ボルト挿通孔51が延びる方向からスリーブ50を見た場合に頭部102の長手方向の両端部それぞれが先端面52からはみ出した状態にされる。
【0054】
その後、軸部101を手前側に引いた状態でナット110を回転させることにより、軸部101の雄ネジをナット110の雌ネジ孔に更にねじ込む。これにより、頭部102の長手方向の両端部それぞれが、円筒部32の内周面に当接する。その結果、下側鋼管杭10と上側鋼管杭20とを強固に固定することができる。
【0055】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0056】
・スリーブの横断面及び各継手部の貫通孔の形状としては、長方形状に限らず、例えば、各継手部30,40の周方向に長い楕円形状又はオーバル形状といった長円形状であってもよい。
【0057】
また、スリーブとしては、各継手部30,40の軸方向に長手方向が延びる横断面(例えば、縦長の長方形状の横断面)を有するものであってもよい。
【0058】
また、スリーブとしては、図11(A)に示すように、横断面が正方形状のスリーブ150であってもよい。図11(A)に示す先端面152、錐体面154、引っ掛け部材170、雌ネジ孔171及び回転規制部180は、先の図4に示した先端面52、錐体面54、引っ掛け部材70、雌ネジ孔71及び回転規制部80に対応している。この場合であっても、引っ掛け部材170の回転位置に応じて、引っ掛け部材170の長手方向の両端部それぞれが先端面152からはみ出していない状態、又は図11(B)に示すように、引っ掛け部材170の長手方向の両端部それぞれが先端面152からはみ出している状態にすることができる。
【0059】
・スリーブとしては、各継手部30,40の径方向において横断面の面積が一定のものであってもよい。この場合、例えば、横断面が長方形状の場合、スリーブは直方体形状になる。
【0060】
図4に示す引っ掛け部材70のうち、長手方向において雌ネジ孔71に対して一方の部分の長さが短くされていてもよい。この場合、引っ掛け部材70の回転が回転規制部80により規制された状態において、引っ掛け部材70の長手方向の両端部のうち一方のみが先端面52からはみ出し、一方の端部のみを円筒部32の内周面に引っ掛けることはできる。
【0061】
・引っ掛け部材70の回転が回転規制部80により規制された状態において、引っ掛け部材70の長手方向がスリーブ50の先端面52の短手方向を向いていてもよい。
【0062】
・第1実施形態において、雌ネジ孔71に軸部61の雄ネジが途中までねじ込まれてかつ引っ掛け部材70が先端面52に当接した状態で、先の図5に示した構成とは異なり、E2<E1とされていてもよい。この場合、スリーブアッシー90を貫通孔33,43に嵌め合わす作業、及びボルト60を回転させる作業を、例えば、ボルト60を手前側に引きながら実施すればよい。
【0063】
・内側継手部が上側鋼管杭の下端部に設けられ、外側継手部が下側鋼管杭の上端部に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10,20…鋼管杭、30…内側継手部、40…外側継手部、50…スリーブ、60…ボルト、70…引っ掛け部材、80…回転規制部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11