(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144360
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】排泄物性状推定モデル学習装置、排泄物性状推定装置、排泄物性状推定モデル学習方法、排泄物性状推定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20220926BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220926BHJP
【FI】
A01K29/00 C
G06T7/00 350B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045324
(22)【出願日】2021-03-19
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TENSORFLOW
(71)【出願人】
【識別番号】390016470
【氏名又は名称】公益財団法人実験動物中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】圦本 晃海
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 えりか
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴史
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA02
5L096AA06
5L096BA02
5L096BA08
5L096CA04
5L096DA02
5L096FA06
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】より高い精度で動物の排泄物の性状を推定すること。
【解決手段】予め定められた空間であって飼育の対象の動物の排泄物が存在する空間である排泄物空間、前記排泄物空間を撮影した撮影結果画像の画像データである学習用画像データを含む入力側学習データと、前記学習用画像データが示す画像に異常な排泄物である異常排泄物が写っているか否か示す正解ラベルとを含む学習データを取得する学習データ取得部と、前記学習用画像データに異常排泄物が写っている確率を推定する機械学習モデルである排泄物性状推定学習モデルを用いて前記学習用画像データが示す画像に異常排泄物が写っている確率を推定する排泄物性状推定学習モデル実行部と、前記排泄物性状推定学習モデル実行部の推定結果と前記正解ラベルとの違いに基づき、前記違いを小さくするように前記排泄物性状推定学習モデルを更新する更新部と、を備える排泄物性状推定モデル学習装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた空間であって飼育の対象の動物の排泄物が存在する空間である排泄物空間、前記排泄物空間を撮影した撮影結果画像の画像データである学習用画像データを含む入力側学習データと、前記学習用画像データが示す画像に異常な排泄物である異常排泄物が写っているか否か示す正解ラベルとを含む学習データを取得する学習データ取得部と、
前記学習用画像データに異常排泄物が写っている確率を推定する機械学習モデルである排泄物性状推定学習モデルを用いて、前記学習用画像データが示す画像に異常排泄物が写っている確率を推定する排泄物性状推定学習モデル実行部と、
前記排泄物性状推定学習モデル実行部の推定結果と前記正解ラベルとの違いに基づき、前記違いを小さくするように前記排泄物性状推定学習モデルを更新する更新部と、
を備える排泄物性状推定モデル学習装置。
【請求項2】
前記学習用画像データは、予め撮影結果画像から抽出された画像であって、水平投影面積が所定の面積以上である排泄物の画像である被抽出排泄物画像の画像データである、
請求項1に記載の排泄物性状推定モデル学習装置。
【請求項3】
前記学習用画像データは、排泄物以外のものであって排泄物との色及び形状の近さが所定の基準値以内のものである障害要因物の色を通過させないフィルタによる画像処理が予め撮影結果画像に対して行われた後の画像の画像データである、
請求項1又は2に記載の排泄物性状推定モデル学習装置。
【請求項4】
前記入力側学習データは、前記学習用画像データが撮影された日時を示す情報を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の排泄物性状推定モデル学習装置。
【請求項5】
前記入力側学習データは、排泄物空間に存在する排泄物が最大何匹の動物の排泄物かを示す情報を含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の排泄物性状推定モデル学習装置。
【請求項6】
前記入力側学習データは、撮影結果画像を得る撮影装置による撮影が行われる時刻より前の所定のタイミングに前記飼育の対象の動物に与えられた餌を示す情報を含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の排泄物性状推定モデル学習装置。
【請求項7】
予め定められた空間であって飼育の対象の動物の排泄物が存在する空間である排泄物空間、前記排泄物空間を撮影した撮影結果画像の画像データを含む解析対象データを取得する解析対象データ取得部と、
撮影結果画像の画像データである学習用画像データを含む入力側学習データと、前記学習用画像データが示す画像に異常な排泄物である異常排泄物が写っているか否か示す正解ラベルとを含む学習データを取得する学習データ取得部と、前記学習用画像データに異常排泄物が写っている確率を推定する機械学習モデルである排泄物性状推定学習モデルを用いて、前記学習用画像データが示す画像に異常排泄物が写っている確率を推定する排泄物性状推定学習モデル実行部と、前記排泄物性状推定学習モデル実行部の推定結果と前記正解ラベルとの違いに基づき、前記違いを小さくするように前記排泄物性状推定学習モデルを更新する更新部と、を備える排泄物性状推定モデル学習装置によって得られた学習済みの排泄物性状推定学習モデルを用いて、前記解析対象データ取得部が取得した画像データに異常排泄物が写っている確率を推定する推定部と、
を備える、排泄物性状推定装置。
【請求項8】
予め定められた空間であって飼育の対象の動物の排泄物が存在する空間である排泄物空間、前記排泄物空間を撮影した撮影結果画像の画像データである学習用画像データを含む入力側学習データと、前記学習用画像データが示す画像に異常な排泄物である異常排泄物が写っているか否か示す正解ラベルとを含む学習データを取得する学習データ取得ステップと、
前記学習用画像データに異常排泄物が写っている確率を推定する機械学習モデルである排泄物性状推定学習モデルを用いて、前記学習用画像データが示す画像に異常排泄物が写っている確率を推定する排泄物性状推定学習モデル実行ステップと、
前記排泄物性状推定学習モデル実行ステップの推定結果と前記正解ラベルとの違いに基づき、前記違いを小さくするように前記排泄物性状推定学習モデルを更新する更新ステップと、
を有する排泄物性状推定モデル学習方法。
【請求項9】
予め定められた空間であって飼育の対象の動物の排泄物が存在する空間である排泄物空間、前記排泄物空間を撮影した撮影結果画像の画像データを含む解析対象データを取得する解析対象データ取得ステップと、
撮影結果画像の画像データである学習用画像データを含む入力側学習データと、前記学習用画像データが示す画像に異常な排泄物である異常排泄物が写っているか否か示す正解ラベルとを含む学習データを取得する学習データ取得部と、前記学習用画像データに異常排泄物が写っている確率を推定する機械学習モデルである排泄物性状推定学習モデルを用いて、前記学習用画像データが示す画像に異常排泄物が写っている確率を推定する排泄物性状推定学習モデル実行部と、前記排泄物性状推定学習モデル実行部の推定結果と前記正解ラベルとの違いに基づき、前記違いを小さくするように前記排泄物性状推定学習モデルを更新する更新部と、を備える排泄物性状推定モデル学習装置によって得られた学習済みの排泄物性状推定学習モデルを用いて、前記解析対象データ取得ステップで得られた画像データに異常排泄物が写っている確率を推定する推定ステップと、
を有する、排泄物性状推定方法。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか一項に記載の排泄物性状推定モデル学習装置をコンピュータに機能させるためのプログラム。
【請求項11】
請求項7に記載の排泄物性状推定装置をコンピュータに機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄物性状推定モデル学習装置、排泄物性状推定装置、排泄物性状推定モデル学習方法、排泄物性状推定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
マーモセット等の実験動物を飼育する場合、糞便の性状によって動物の健康状態や心理的ストレスが把握されることがある。このような場合、糞便の色や形状に基づいて飼育者が糞便の性状を判別し、また嘔吐物の有無を確認する。しかしながら飼育者による糞便の性状の判別には飼育者の技術が大きく影響し、飼育者の習熟度によって判別の結果が異なる場合がある。そこで、画像解析のコンピュータプログラムを用いて糞便の性状を判別することが試みられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、動物の飼育ケージには糞や嘔吐物だけでなく餌もあることが多い。そして、餌の色や形状は糞便の色や形状と似ていることが多い。そのため、プログラマーやユーザにより予め設定された基準との比較のみで糞便の性状を判別しようとする従来の画像解析のプログラムでは、餌と糞便とを分別することができない場合があった。例えば、従来の画像解析のプログラムは、糞便の面積を推定して閾値以上の面積が観測された場合に異常便と判定するプログラムであった。その結果、健康状態が悪い場合や心理的ストレスが強い等の動物の状態に異常が生じている場合の糞便と餌との区別が行われず、糞便の性状を適切に推定できない場合があった。また、異常が生じている場合の糞便と餌との区別だけに限らず、動物の状態が正常である場合であっても、糞便と餌とは区別が行われず、糞便の性状を適切に推定できない場合があった。また、このようなことは糞便に限らず嘔吐された嘔吐物等の排泄物について共通の課題であった。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、より高い精度で動物の排泄物の性状を推定する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、予め定められた空間であって飼育の対象の動物の排泄物が存在する空間である排泄物空間、前記排泄物空間を撮影した撮影結果画像の画像データである学習用画像データを含む入力側学習データと、前記学習用画像データが示す画像に異常な排泄物である異常排泄物が写っているか否か示す正解ラベルとを含む学習データを取得する学習データ取得部と、前記学習用画像データに異常排泄物が写っている確率を推定する機械学習モデルである排泄物性状推定学習モデルを用いて、前記学習用画像データが示す画像に異常排泄物が写っている確率を推定する排泄物性状推定学習モデル実行部と、前記排泄物性状推定学習モデル実行部の推定結果と前記正解ラベルとの違いに基づき、前記違いを小さくするように前記排泄物性状推定学習モデルを更新する更新部と、を備える排泄物性状推定モデル学習装置である。
【0007】
本発明の一態様は、上記の排泄物性状推定モデル学習装置であって、前記学習用画像データは、予め撮影結果画像から抽出された画像であって、水平投影面積が所定の面積以上である排泄物の画像である被抽出排泄物画像の画像データである。
【0008】
本発明の一態様は、上記の排泄物性状推定モデル学習装置であって、前記学習用画像データは、排泄物以外のものであって排泄物との色及び形状の近さが所定の基準値以内のものである障害要因物の色を通過させないフィルタによる画像処理が予め撮影結果画像に対して行われた後の画像の画像データである。
【0009】
本発明の一態様は、上記の排泄物性状推定モデル学習装置であって、前記入力側学習データは、前記学習用画像データが撮影された日時を示す情報を含む。
【0010】
本発明の一態様は、上記の排泄物性状推定モデル学習装置であって、前記入力側学習データは、排泄物空間に存在する排泄物が最大何匹の動物の排泄物かを示す情報を含む。
【0011】
本発明の一態様は、上記の排泄物性状推定モデル学習装置であって、前記入力側学習データは、撮影結果画像を得る撮影装置による撮影が行われる時刻より前の所定のタイミングに前記飼育の対象の動物に与えられた餌を示す情報を含む。
【0012】
本発明の一態様は、予め定められた空間であって飼育の対象の動物の排泄物が存在する空間である排泄物空間、前記排泄物空間を撮影した撮影結果画像の画像データを含む解析対象データを取得する解析対象データ取得部と、撮影結果画像の画像データである学習用画像データを含む入力側学習データと、前記学習用画像データが示す画像に異常な排泄物である異常排泄物が写っているか否か示す正解ラベルとを含む学習データを取得する学習データ取得部と、前記学習用画像データに異常排泄物が写っている確率を推定する機械学習モデルである排泄物性状推定学習モデルを用いて、前記学習用画像データが示す画像に異常排泄物が写っている確率を推定する排泄物性状推定学習モデル実行部と、前記排泄物性状推定学習モデル実行部の推定結果と前記正解ラベルとの違いに基づき、前記違いを小さくするように前記排泄物性状推定学習モデルを更新する更新部と、を備える排泄物性状推定モデル学習装置によって得られた学習済みの排泄物性状推定学習モデルを用いて、前記解析対象データ取得部が取得した画像データに異常排泄物が写っている確率を推定する推定部と、を備える、排泄物性状推定装置である。
【0013】
本発明の一態様は、予め定められた空間であって飼育の対象の動物の排泄物が存在する空間である排泄物空間、前記排泄物空間を撮影した撮影結果画像の画像データである学習用画像データを含む入力側学習データと、前記学習用画像データが示す画像に異常な排泄物である異常排泄物が写っているか否か示す正解ラベルとを含む学習データを取得する学習データ取得ステップと、前記学習用画像データに異常排泄物が写っている確率を推定する機械学習モデルである排泄物性状推定学習モデルを用いて、前記学習用画像データが示す画像に異常排泄物が写っている確率を推定する排泄物性状推定学習モデル実行ステップと、前記排泄物性状推定学習モデル実行ステップの推定結果と前記正解ラベルとの違いに基づき、前記違いを小さくするように前記排泄物性状推定学習モデルを更新する更新ステップと、を有する排泄物性状推定モデル学習方法である。
【0014】
本発明の一態様は、予め定められた空間であって飼育の対象の動物の排泄物が存在する空間である排泄物空間、前記排泄物空間を撮影した撮影結果画像の画像データを含む解析対象データを取得する解析対象データ取得ステップと、撮影結果画像の画像データである学習用画像データを含む入力側学習データと、前記学習用画像データが示す画像に異常な排泄物である異常排泄物が写っているか否か示す正解ラベルとを含む学習データを取得する学習データ取得部と、前記学習用画像データに異常排泄物が写っている確率を推定する機械学習モデルである排泄物性状推定学習モデルを用いて、前記学習用画像データが示す画像に異常排泄物が写っている確率を推定する排泄物性状推定学習モデル実行部と、前記排泄物性状推定学習モデル実行部の推定結果と前記正解ラベルとの違いに基づき、前記違いを小さくするように前記排泄物性状推定学習モデルを更新する更新部と、を備える排泄物性状推定モデル学習装置によって得られた学習済みの排泄物性状推定学習モデルを用いて、前記解析対象データ取得ステップで得られた画像データに異常排泄物が写っている確率を推定する推定ステップと、を有する、排泄物性状推定方法である。
【0015】
本発明の一態様は、上記の排泄物性状推定モデル学習装置をコンピュータに機能させるためのプログラムである。
【0016】
本発明の一態様は、上記の排泄物性状推定装置をコンピュータに機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、より高い精度で動物の排泄物の性状を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態の排泄物性状推定システム100の概要を説明する説明図。
【
図2】実施形態における糞便空間の撮影結果画像の第1の例を示す図。
【
図3】実施形態における糞便空間の撮影結果画像の第2の例を示す図。
【
図4】実施形態における糞便空間の撮影結果画像の第3の例を示す図。
【
図5】実施形態における糞便空間の撮影結果画像の第4の例を示す図。
【
図6】実施形態における糞便空間の撮影結果画像の第5の例を示す図。
【
図7】実施形態における糞便空間の撮影結果画像の第6の例を示す図。
【
図8】実施形態における糞便空間の撮影結果画像の第7の例を示す図。
【
図9】実施形態における糞便空間の撮影結果画像の第8の例を示す図。
【
図10】実施形態における糞便空間の撮影結果画像の第9の例を示す図。
【
図11】実施形態における糞便性状推定モデル学習装置1のハードウェア構成の一例を示す図。
【
図12】実施形態における制御部11の機能構成の一例を示す図。
【
図13】実施形態の糞便性状推定モデル学習装置1が実行する処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図14】実施形態における糞便性状推定装置2のハードウェア構成の一例を示す図。
【
図15】実施形態における制御部21の機能構成の一例を示す図。
【
図16】実施形態における糞便性状推定装置2が実行する処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図17】実施形態の排泄物性状推定システム100を用いた異常便の推定の実験結果の一例を示す図。
【
図18】変形例における糞便性状推定装置2aのハードウェア構成の一例を示す図。
【
図19】変形例における制御部21aの機能構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態)
図1は、実施形態の排泄物性状推定システム100の概要を説明する説明図である。本明細書で用いられる「排泄物」との用語は、糞便及び嘔吐物を包含する。なお、以下説明の簡単のため排泄物が飼育動物900の糞便である場合を例に、排泄物性状推定システム100を説明するが、排泄物は糞便に限らない。すなわち、下記の説明において糞便に対して実行される処理は、嘔吐物等の他の排泄物であってもよい。排泄物は飼育動物900の嘔吐物であってもよい。
【0020】
排泄物性状推定システム100は、糞便空間を撮影した結果の画像(以下「撮影結果画像」という。)と、その画像に異常便が写っている確率との関係を示す情報(以下「関係情報」という。)を機械学習の方法により得る。糞便空間は、予め定められた空間であって少なくとも飼育の対象の動物が排泄した場合に飼育の対象の動物の糞便が存在する空間である。
図1におけるフロアーメッシュ902と床敷903との間の空間が糞便空間の一例である。異常便は、状態が異常な糞便である。以下、飼育の対象の動物を飼育動物900という。飼育動物900は、例えば実験動物であり、例えばマーモセットである。飼育動物900は、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ウサギ、アカゲサル等の実験動物であってもよい。
【0021】
排泄物性状推定システム100は、糞便性状推定学習モデルを機械学習の方法により更新することで関係情報を得る。糞便性状推定学習モデルは、糞便空間を撮影した結果に基づき、撮影結果画像に異常便が写っている確率を推定する機械学習のモデルである。
【0022】
なお、機械学習のモデル(以下「機械学習モデル」という。)は、実行される条件と順番と(以下「実行規則」という。)が予め定められた1又は複数の処理を有する数理モデルである。以下説明の簡単のため、機械学習の方法による機械学習モデルの更新を学習という。また、機械学習モデルの更新とは、機械学習モデルにおけるパラメータの値を好適に調整することを意味する。また、機械学習モデルの実行とは、機械学習モデルが含む各処理を実行規則にしたがって実行すること意味する。
【0023】
機械学習モデルは、例えばニューラルネットワークで表現される。ニューラルネットワークとは、電子回路、電気回路、光回路、集積回路等の回路であって機械学習モデルを表現する回路である。ニューラルネットワークのパラメータは、目的関数の値(すなわち損失)に基づいて好適に調整される。またネットワークのパラメータは、ネットワークを構成する回路のパラメータである。そのようなニューラルネットワークモデルを多層化したものを深層学習モデルという。機械学習モデルの学習の方法は、例えば深層学習である。
【0024】
飼育動物900は例えば飼育ケージ9の中で生活を行う。飼育ケージ9は、飼育動物900を収容可能な金属やプラスチックで構成される。飼育ケージ9の床面はフロアーメッシュ902を接続するために、飼育動物900が便をする領域の床面は開放されていてもよい。飼育ケージ9の中には例えばフロアーメッシュ902が設置されている。フロアーメッシュ902は金属やプラスチックで構成される。フロアーメッシュ902は、飼育動物900の糞便が通過可能な大きさの孔であって飼育動物900自体は通過できない大きさの孔がメッシュ状に開けられた板である。このような場合、飼育動物900はフロアーメッシュ902の上で生活を行う。
【0025】
フロアーメッシュ902は飼育ケージ9と開放された床面に接続される。動物は人間と異なり、糞便をいじることや食べることがある。フロアーメッシュ902は動物から床敷903を遠ざけるために設置される。糞便性状推定モデルの学習には、糞便の輪郭の特徴を用いた学習が行われる場合がある。そのため、便の形状を動物に崩されることのない飼育ケージ9にはフロアーメッシュ902を備えていることが望ましい。このように飼育動物900が便をいじらないようにフロアーメッシュ902は設置される。しかしながら、便を飼育動物900から隔離する工夫がされている場合、フロアーメッシュ902の設置は必須ではない。以下、説明の簡単のためフロアーメッシュ902が設置される場合を例に排泄物性状推定システム100を説明する。
【0026】
フロアーメッシュ902の下に床敷903は設置される。床敷903は下痢便と尿を明確に区別するために、水分を吸収可能な紙製のものが望ましい。
【0027】
飼育動物900がフロアーメッシュ902の上で生活を行う場合、飼育動物900の糞便はフロアーメッシュ902の孔を通って、床敷903まで落下する。したがって、飼育動物900が排泄した後であって清掃により糞便が取り除かれる前には、床敷903上には糞便が存在する。したがって、フロアーメッシュ902と床敷903との間の空間は、糞便空間の一例である。
【0028】
撮影装置901は、糞便空間を撮影可能な位置に設置される。そのため、飼育動物900が排泄した後であって清掃により糞便が取り除かれる前の撮影結果画像には飼育動物900の糞便が写っている。撮影装置901は例えばカメラである。撮影装置901は、例えば床敷903全体が映るように正面から撮影可能な場所に設置される。撮影装置901は、たとえば上からの撮影であっても飼育動物900が便の上に来ないような環境で飼育動物900が飼育されている場合には、床敷903の上方向に設置されてもよい。撮影装置901の出力は例えば静止画像である。撮影装置901の出力する静止画像の画質は例えばSD画質(標準画質)以上の画質である。以下、説明の簡単のため撮影装置901がSD画質のカメラである場合を例に排泄物性状推定システム100を説明する。
【0029】
排泄物性状推定システム100は、学習済みの糞便性状推定学習モデル(以下「糞便性状推定モデル」という。)を用いて、解析対象の糞便空間の撮影結果画像に異常な糞便(以下「異常便」という。)が写っているか否かを推定する。解析対象の糞便空間は、糞便性状の推定対象の飼育動物が排泄した場合にその推定対象の飼育動物の糞便が存在する糞便空間である。糞便性状推定モデルは関係情報の一例である。
【0030】
学習済みとは、所定の終了条件(以下「学習終了条件」という。)が満たされた、ということを意味する。学習終了条件は、例えば所定の回数の学習データを用いた学習が終了した、という条件である。学習終了条件は、例えば糞便性状推定学習モデルの更新による変化が所定の変化よりも小さい、という条件であってもよい。
【0031】
排泄物性状推定システム100は、糞便性状推定モデル学習装置1及び糞便性状推定装置2を備える。糞便性状推定モデル学習装置1は、一又は複数の学習データを用いて糞便性状推定学習モデルを機械学習の方法により更新する。
【0032】
学習データは、入力側学習データと正解ラベルとの対のデータを含む。入力側学習データは、学習用画像データを含む。学習用画像データは、糞便空間を撮影した撮影結果画像の画像データである。すなわち学習用画像データは、糞便空間の撮影結果画像の画像データである。学習に際して学習データが複数用いられる場合、学習用画像データが示す画像には糞便が存在しない画像が学習に用いられてもよい。すなわち、学習に際して学習データが複数用いられる場合、複数の学習用画像データの全てが糞便の存在する糞便空間が写っている画像の画像データである必要は無い。学習に際して学習データが複数用いられる場合、一部の学習用画像データは糞便の存在しない糞便空間が写っている画像の画像データであってもよい。
【0033】
正解ラベルは、対応する学習用画像データの画像に異常便が写っているか否かを示す情報である。正解ラベルは、糞便性状の判別に習熟した専門家910等の異常便を判定する人又はコンピュータによって学習用画像データの画像に異常便が写っているか否かが予め判定された結果である。
【0034】
糞便性状推定装置2は、糞便性状推定モデル学習装置1が得た糞便性状推定モデルを用いて、解析対象の糞便空間の撮影結果画像(以下「解析対象画像」という。)に異常便が写っているか否かを推定する。より具体的には、糞便性状推定装置2は、解析対象画像の画像データ(以下「解析対象画像データ」という。)を含む解析対象データを取得し、糞便性状推定モデル学習装置1が得た糞便性状推定モデルを用いて、解析対象画像に異常便が写っている確率を推定する。
【0035】
図2は、実施形態における糞便空間の撮影結果画像の第1の例を示す図である。
図2が示す画像にはフロアーメッシュ902と床敷903とが写っている。
図2が示す画像における領域D1には複数の糞便が写っている。
図2が示す画像における領域D2には複数の餌が写っている。
図2の画像が示すように、糞便と餌とは色と形状が近しい。
図2におけるフロアーメッシュ902と床敷903との間の空間が糞便空間の一例である。
【0036】
図3は、実施形態における糞便空間の撮影結果画像の第2の例を示す図である。
図3の撮影結果画像には異常便が写っていない。
【0037】
図4は、実施形態における糞便空間の撮影結果画像の第3の例を示す図である。
図4の撮影結果画像には異常便が写っていない。
【0038】
図5は、実施形態における糞便空間の撮影結果画像の第4の例を示す図である。
図5の撮影結果画像には、領域D3に異常便が写っている。
【0039】
図6は、実施形態における糞便空間の撮影結果画像の第5の例を示す図である。
図6の撮影結果画像には異常便が写っていない。
【0040】
図7は、実施形態における糞便空間の撮影結果画像の第6の例を示す図である。
図7の撮影結果画像には、領域D4及び領域D5に異常便が写っている。
【0041】
図8は、実施形態における糞便空間の撮影結果画像の第7の例を示す図である。
図8の撮影結果画像には、領域D6に異常便が写っている。
【0042】
図9は、実施形態における糞便空間の撮影結果画像の第8の例を示す図である。
図9の撮影結果画像には異常便が写っていない。
【0043】
図10は、実施形態における糞便空間の撮影結果画像の第9の例を示す図である。
図10の撮影結果画像には、領域D7に異常便が写っている。
【0044】
図11は、実施形態における糞便性状推定モデル学習装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。糞便性状推定モデル学習装置1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ91とメモリ92とを備える制御部11を備え、プログラムを実行する。糞便性状推定モデル学習装置1は、プログラムの実行によって制御部11、通信部12、入力部13、記憶部14及び出力部15を備える装置として機能する。
【0045】
より具体的には、糞便性状推定モデル学習装置1は、プロセッサ91が記憶部14に記憶されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムをメモリ92に記憶させる。プロセッサ91が、メモリ92に記憶させたプログラムを実行することによって、糞便性状推定モデル学習装置1は、制御部11、通信部12、入力部13、記憶部14及び出力部15を備える装置として機能する。
【0046】
制御部11は、糞便性状推定モデル学習装置1が備える各機能部の動作を制御する。制御部11は、例えば糞便性状推定学習モデルの学習を行う。制御部11は、例えば学習の結果を記憶部14に記録する。制御部11は、例えば通信部12の動作を制御する。
【0047】
通信部12は、糞便性状推定モデル学習装置1を外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部12は、有線又は無線を介して外部装置と通信する。通信部12の通信先の外部装置は、例えば糞便性状推定装置2である。通信部12は、例えば糞便性状推定装置2に、糞便性状推定モデルを送信する。外部装置は、例えば学習データの送信元の装置であってもよい。このような場合、通信部12は、学習データの送信元の装置との間の通信によって、学習データを受信する。
【0048】
入力部13は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成される。入力部13は、これらの入力装置を糞便性状推定モデル学習装置1に接続するインタフェースとして構成されてもよい。入力部13は、糞便性状推定モデル学習装置1に対する各種情報の入力を受け付ける。入力部13には、例えば学習データが入力されてもよい。入力部13には、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の外部記憶装置が接続されてもよい。
【0049】
記憶部14は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの非一時的コンピュータ読み出し可能な記憶媒体装置を用いて構成される。記憶部14は糞便性状推定モデル学習装置1に関する各種情報を記憶する。記憶部14は、例えば糞便性状推定モデル学習装置1が備える各機能部の動作を制御するプログラムを予め記憶する。記憶部14は、例えば予め糞便性状推定学習モデルを記憶する。記憶部14は、例えば更新後の糞便性状推定学習モデルを記憶する。
【0050】
なお、学習データは、必ずしも通信部12だけに入力される必要もないし、入力部13だけに入力される必要もない。学習データが含む各情報は、通信部12と入力部13とのどちらから入力されてもよい。例えば入力側学習データは通信部12に入力され、通信部12に入力された入力側学習データに対応する正解ラベルは入力部13に入力されてもよい。また、学習データは必ずしも通信部12又は入力部13から取得される必要はなく、予め記憶部14が記憶済みであってもよい。
【0051】
出力部15は、各種情報を出力する。出力部15は、例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。出力部15は、これらの表示装置を糞便性状推定モデル学習装置1に接続するインタフェースとして構成されてもよい。出力部15は、例えば入力部13に入力された情報を出力する。出力部15は、例えば通信部12又は入力部13に入力された学習データを表示してもよい。出力部15は、例えば糞便性状推定学習モデルの実行結果を表示してもよい。
【0052】
図12は、実施形態における制御部11の機能構成の一例を示す図である。制御部11は、通信制御部101、入力制御部102、出力制御部103、学習データ取得部104、糞便性状推定学習モデル実行部105、更新部106、終了判定部107及び記録部108を備える。
【0053】
通信制御部101は、通信部12の動作を制御する。通信制御部101の制御により通信部12は、学習済みの糞便性状推定学習モデルを、糞便性状推定装置2に送信する。入力制御部102は、入力部13の動作を制御する。出力制御部103は、出力部15の動作を制御する。
【0054】
学習データ取得部104は、通信部12又は入力部13に入力された学習データを取得する。学習データ取得部104は、予め記憶部14に学習データが記録済みの場合には、記憶部14から学習データを読み出してもよい。
【0055】
糞便性状推定学習モデル実行部105は、学習データ取得部104が取得した学習データに含まれる入力側学習データに対して糞便性状推定学習モデルの学習を実行する。糞便性状推定学習モデルの実行により、糞便性状推定学習モデル実行部105は、学習用画像データが示す画像に異常便が写っている確率を推定する。
【0056】
更新部106は、糞便性状推定学習モデル実行部105の推定結果と学習データ取得部104が取得した学習データに含まれる正解ラベルとの違いである推定損失に基づき、糞便性状推定学習モデルを更新する。糞便性状推定学習モデル実行部105の推定結果は、例えば学習用画像データが示す画像に異常便が写っている確率を示す成分と学習用画像データが示す画像に異常便が写っていない確率を示す成分との2成分で表現される。正解ラベルは、例えば2成分で表現される。正解ラベルを表現する2成分の一方の成分は、学習用画像データが示す画像に異常便が写っている場合に1であり学習用画像データが示す画像に異常便が写っていない場合に0である。正解ラベルを表現する2成分の他方の成分は、学習用画像データが示す画像に異常便が写っている場合に0であり学習用画像データが示す画像に異常便が写っていない場合に1である。
【0057】
このような2成分で糞便性状推定学習モデル実行部105の推定結果と正解ラベルとが表現される場合、推定損失は例えば、糞便性状推定学習モデル実行部105の推定結果を示す2成分のテンソルと正解ラベルを示す2成分からなるテンソルとの内積で表現される。このように、糞便性状推定学習モデル実行部105の推定結果と正解ラベルとは例えばテンソルで表現される。糞便性状推定学習モデル実行部105の推定結果を示すテンソルと正解ラベルを示すテンソルとはそれぞれ、1階のテンソル(すなわちベクトル)であってもよいし、2階のテンソル(すなわち行列)であってもよいし、3階以上のテンソルであってもよい。
【0058】
終了判定部107は、学習終了条件が満たされたか否かを判定する。記録部108は、各種情報を記憶部14に記録する。
【0059】
図13は、実施形態の糞便性状推定モデル学習装置1が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。通信部12又は入力部13に学習データが入力され、入力された学習データを学習データ取得部104が取得する(ステップS101)。
【0060】
次に糞便性状推定学習モデル実行部105がステップS101で取得された学習データが含む入力側学習データに対して糞便性状推定学習モデルを実行する(ステップS102)。糞便性状推定学習モデルの実行により糞便性状推定学習モデル実行部105は、ステップS101で取得された学習用画像データが示す画像に異常便がある確率を推定する。
【0061】
次に更新部106が、ステップS102で得られた推定結果とステップS101で得られた学習データに含まれる正解ラベルとの違いに基づき、違いを小さくするように糞便性状推定学習モデルを更新する(ステップS103)。
【0062】
次に終了判定部107が、学習終了条件が満たされたか否かを判定する(ステップS104)。学習終了条件が満たされた場合(ステップS104:YES)、処理が終了する。一方、学習終了条件が満たされない場合(ステップS104:NO)、ステップS101の処理に戻る。
【0063】
図14は、実施形態における糞便性状推定装置2のハードウェア構成の一例を示す図である。糞便性状推定装置2は、バスで接続されたCPU等のプロセッサ93とメモリ94とを備える制御部21を備え、プログラムを実行する。糞便性状推定装置2は、プログラムの実行によって制御部21、通信部22、入力部23、記憶部24及び出力部25を備える装置として機能する。
【0064】
より具体的には、糞便性状推定装置2は、プロセッサ93が記憶部24に記憶されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムをメモリ94に記憶させる。プロセッサ93が、メモリ94に記憶させたプログラムを実行することによって、糞便性状推定装置2は、制御部21、通信部22、入力部23、記憶部24及び出力部25を備える装置として機能する。
【0065】
制御部21は、糞便性状推定装置2が備える各機能部の動作を制御する。制御部21は、例えば糞便性状推定モデルを実行する。制御部21は、例えば糞便性状推定モデルの実行結果を記憶部24に記録する。制御部21は、例えば通信部22の動作を制御する。
【0066】
通信部22は、糞便性状推定装置2を外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部22は、有線又は無線を介して外部装置と通信する。通信部22の通信先の外部装置は、例えば糞便性状推定モデル学習装置1である。通信部22は、例えば糞便性状推定モデル学習装置1から、糞便性状推定モデルを受信する。
【0067】
外部装置は、例えば解析対象データの送信元の装置であってもよい。このような場合、通信部22は、解析対象データの送信元の装置との間の通信によって、解析対象データを受信する。
【0068】
入力部23は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成される。入力部23は、これらの入力装置を糞便性状推定装置2に接続するインタフェースとして構成されてもよい。入力部23は、糞便性状推定装置2に対する各種情報の入力を受け付ける。入力部23には、例えば解析対象データが入力されてもよい。入力部23には、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の外部記憶装置が接続されてもよい。
【0069】
記憶部24は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの非一時的コンピュータ読み出し可能な記憶媒体装置を用いて構成される。記憶部24は糞便性状推定装置2に関する各種情報を記憶する。記憶部24は、例えば糞便性状推定装置2が備える各機能部の動作を制御するプログラムを予め記憶する。記憶部24は、例えば予め糞便性状推定モデル学習装置1が得た糞便性状推定モデルを記憶する。記憶部24は、例えば糞便性状推定モデルによる推定結果を記憶する。
【0070】
なお、解析対象データは、必ずしも通信部22だけに入力される必要もないし、入力部23だけに入力される必要もない。解析対象データは、通信部22と入力部23とのどちらから入力されてもよい。また、解析対象データは必ずしも通信部22又は入力部23から取得される必要はなく、予め記憶部24が記憶済みであってもよい。
【0071】
出力部25は、各種情報を出力する。出力部25は、例えばCRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。出力部25は、これらの表示装置を糞便性状推定装置2に接続するインタフェースとして構成されてもよい。出力部25は、例えば入力部23に入力された情報を出力する。出力部25は、例えば通信部22又は入力部23に入力された解析対象データを表示してもよい。出力部25は、例えば糞便性状推定モデルの実行結果を表示してもよい。出力部25は、例えば糞便の状態の推定結果と個体情報とを出力する。
【0072】
図15は、実施形態における制御部21の機能構成の一例を示す図である。制御部21は、通信制御部201、入力制御部202、出力制御部203、解析対象データ取得部204、推定部205、記録部206及び異常判定部207を備える。
【0073】
通信制御部201は、通信部22の動作を制御する。入力制御部202は、入力部23の動作を制御する。出力制御部203は、出力部25の動作を制御する。
【0074】
解析対象データ取得部204は、通信部22又は入力部23に入力された解析対象データを取得する。解析対象データ取得部204は、予め記憶部24に解析対象データが記録済みの場合には、記憶部24から解析対象データを読み出してもよい。
【0075】
推定部205は、解析対象データ取得部204が取得した解析対象データに対して糞便性状推定モデルを実行する。糞便性状推定モデルの実行により、推定部205は、解析対象データが含む解析対象画像に異常便が写っている確率を推定する。
【0076】
記録部206は、各種情報を記憶部24に記録する。
【0077】
異常判定部207は、推定部205の推定した確率が所定の確率以上か否かを判定する。異常判定部207は、推定部205の推定した確率が所定の確率以上である場合に、通信部22又は出力部25の動作を制御して、所定の通知先に警告を通知する。所定の通知先は、例えば出力部25自体であってもよい。所定の通知先は、例えば通信部22の通信先の所定の外部装置であってもよい。
【0078】
図16は、実施形態における糞便性状推定装置2が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。解析対象データ取得部204が解析対象データを取得する(ステップS201)。なお、ステップS201の処理は、例えば撮影装置901がタイマーで起動されたタイミングに実行される。ステップS201の処理で得られる解析対象画像データの画質は学習用画像データと同等であることが好ましい。次に、推定部205が、糞便性状推定モデルの実行により、ステップS201で取得された解析対象画像データに異常便が写っている確率を推定する(ステップS202)。なお推定結果は、例えば出力部25に表示される。推定結果は、例えば通信部22を介して所定の外部装置に通知されてもよい。例えば推定の結果、異常便である確率と推定された場合に、出力部25が異常便である確率が高いことを表示してもよいし、異常便である確率が高いことが通信部22を介して所定の外部装置に通知されてもよい。
【0079】
(実験結果)
図17は、実施形態の排泄物性状推定システム100を用いた異常便の推定の実験結果の一例を示す図である。実験において、飼育動物900はコモンマーモセットであった。実験において、学習データは、撮影装置901により得られた画像と、その画像に対して専門家が正常便と異常便との2つのいずれであるかを判定した結果と、を含むデータが用いられた。実験における学習データは、異常便のデータが1000個、正常便のデータが10000個用いられた。実験では、学習データの画像が取得された日とは異なる3日間において得られた画像を正常便と異常便の2つに大別するテストが行われた。テストデータの1日目のデータは正常便の画像が132枚であった。テストデータの1日目のデータは異常便の画像が15枚であった。テストデータの2日目のデータは、正常便の画像が252枚であった。テストデータの2日目のデータは、異常便の画像が29枚であった。テストデータの3日目のデータは、正常便の画像が165枚であった。テストデータの3日目のデータは、異常便の画像が13枚であった。実験ではこれらのデータついて正解率が算出された。3日間は、具体的には10月22日、10月30日及び11月4日であった。
【0080】
図17は、モデルA、モデルB及びモデルCの複数の機械学習モデルを用いて、10月22日、10月30日及び11月4日の解析対象画像データに対して異常便が写っているか否かを推定した結果を示す。モデルAは、オープンソースライブラリのTensorflowとKerasとを用いKeras内のVGG16に全結合層を追加し、転移学習したモデルである。モデルBは、オープンソースライブラリのTensorflowとKerasとを用いKeras内のXceptionに全結合層を追加し、転移学習したモデルである。モデルCは、オープンソースライブラリのTensorflowとKerasとを用いKeras内のVGG19に全結合層を追加し、転移学習したモデルである。
図17は、モデルA~モデルCのいずれのモデルであっても、排泄物性状推定システム100が高い確率で異常便の推定に成功していることを示す。具体的には、
図17は、3つの深層学習モデル全てにおいて、累計の正解率が85%以上であることを示す。
図17は、モデルBでは、10月22日のデータについて正解率が90%以上であることを示す。
図17は、モデルCでは、10月30日のデータについて正解率が90%以上であることを示す。
【0081】
このように、糞便性状推定モデル学習装置1は、入力側学習データと正解ラベルとを含む学習データを用いて糞便空間を撮影した結果の画像とその画像に異常便が写っている確率との関係を示す関係情報を取得する。そして、糞便性状推定装置2は糞便性状推定モデル学習装置1が得た関係情報を用いて、解析対象画像データに異常便が写っている確率を推定する。
【0082】
このように構成された実施形態の糞便性状推定モデル学習装置1は、学習により糞便性状推定モデルを得る。そのため、糞便性状推定モデル学習装置1は、より高い精度で動物の糞便の性状を推定することを可能とする。
【0083】
また、このように構成された実施形態の排泄物性状推定システム100は、糞便性状推定モデル学習装置1が得た糞便性状推定モデルを実行する糞便性状推定装置2を備える。そのため、排泄物性状推定システム100はより高い精度で動物の糞便の性状を推定することが可能である。
【0084】
また、このように構成された実施形態の排泄物性状推定システム100は、フロアーメッシュ902を備える飼育ケージ9で飼育された飼育動物900の糞便について推定を行う。上述したようにフロアーメッシュ902が存在するため、糞便を飼育動物900にいじられる確率が低く、糞便の形状がくずれにくい。したがって、高い推定精度の糞便性状推定モデルを得ることができる。そのため、排泄物性状推定システム100はより高い精度で動物の糞便の性状を推定することが可能である。
【0085】
また飼育ケージ9の床敷903には、糞便や尿以外にも餌やおがくず、エサ箱のかけら等様々なものが落下する。特に餌は面積や形状が正常便によく似ている。また、糞便の落下位置自体も画一性がなくランダムに落下する。さらに、異常便の形状も有機的に様々に変化する。糞便性状推定モデル学習装置1は、撮影装置901によって撮影された画像であって例えば床敷903全体の画像等の、糞便の映像のみでなく糞便の周辺の情報も含む画像を学習に用いる。したがって、糞便性状推定モデル学習装置1は、推定に際して糞便以外の情報の影響が低く糞便の情報の影響が高い糞便性状推定モデルを得ることができる。そのため、糞便性状推定モデル学習装置1は、より高い精度で動物の糞便の性状を推定することを可能とする。
【0086】
また、上述したように撮影装置901は特殊なカメラや高価なカメラではなくSD標準画質のカメラである。そのため、排泄物性状推定システム100は特殊なカメラや高価なカメラを使用することなく、SD標準画質の一般的なカメラで撮影した画像を用いて糞便の状態の推定を行うことができる。なお、排泄物性状推定システム100は、モノクロ画像を用いても糞便の状態を推定するが可能である。
【0087】
排泄物性状推定システム100は、動物の健康指標の1つである異常便の発見を人力では無くコンピュータを用いて自動で行うことを可能とする。そのため、排泄物性状推定システム100は、動物飼育施設における動物の健康管理の省力化を可能とする。
【0088】
(変形例)
排泄物性状推定システム100は、糞便性状推定装置2に代えて糞便性状推定装置2aを備えてもよい。糞便性状推定装置2aは、複数の飼育ケージ9それぞれについて、排泄物の性状を判定する。
【0089】
図18は、変形例における糞便性状推定装置2aのハードウェア構成の一例を示す図である。以下、糞便性状推定装置2と同様の機能を有するものについては
図14と同じ符号を付すことで説明を省略する。糞便性状推定装置2aは、バスで接続されたCPU等のプロセッサ95とメモリ96とを備える制御部21aを備え、プログラムを実行する。糞便性状推定装置2aは、プログラムの実行によって制御部21a、通信部22a、入力部23、記憶部24及び出力部25を備える装置として機能する。
【0090】
より具体的には、糞便性状推定装置2aは、プロセッサ95が記憶部24に記憶されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムをメモリ96に記憶させる。プロセッサ95が、メモリ96に記憶させたプログラムを実行することによって、糞便性状推定装置2aは、制御部21a、通信部22a、入力部23、記憶部24及び出力部25を備える装置として機能する。
【0091】
制御部21aは、糞便性状推定装置2aが備える各機能部の動作を制御する。制御部21aは、例えば複数の飼育ケージ9それぞれについて、糞便性状推定モデルを実行する。制御部21aは、例えば糞便性状推定モデルの実行結果を記憶部24に記録する。制御部21aは、例えば通信部22aの動作を制御する。
【0092】
通信部22aは、糞便性状推定装置2aを外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部22aは、有線又は無線を介して外部装置と通信する。通信部22aの通信先の外部装置は、例えば糞便性状推定モデル学習装置1である。通信部22aは、例えば糞便性状推定モデル学習装置1から、糞便性状推定モデルを取得する。
【0093】
外部装置は、例えば複数の飼育ケージ9それぞれに設置された撮影装置901である。通信部22aは、各撮影装置901との通信によって、各飼育ケージ9についての解析対象データを受信する。
【0094】
図19は、変形例における制御部21aの機能構成の一例を示す図である。以下、制御部21と同様の機能を有するものについては
図15と同じ符号を付すことで説明を省略する。制御部21aは、通信制御部201a、入力制御部202、出力制御部203、解析対象データ取得部204a、推定部205a、記録部206及び異常判定部207aを備える。
【0095】
通信制御部201aは、通信部22aの動作を制御する。
【0096】
解析対象データ取得部204aは、通信部22aに入力された各飼育ケージ9の解析対象データを取得する。
【0097】
推定部205aは、解析対象データ取得部204aが取得した各飼育ケージ9の解析対象データに対して、飼育ケージ9ごとに糞便性状推定モデルを実行する。糞便性状推定モデルの実行により、推定部205aは、飼育ケージ9ごとに解析対象データが含む解析対象画像に異常便が写っている確率を推定する。
【0098】
異常判定部207aは、推定部205aの推定した確率が所定の確率以上か否かを飼育ケージ9ごとに判定する。異常判定部207aは、異常飼育ケージが存在する場合に、通信部22又は出力部25の動作を制御して、所定の通知先に、異常飼育ケージを示す情報を通知する。異常飼育ケージは、推定部205aの推定した確率が所定の確率以上の飼育ケージ9である。所定の通知先は、例えば出力部25自体であってもよい。所定の通知先は、例えば通信部22の通信先の所定の外部装置であってもよい。
【0099】
このように、糞便性状推定装置2に代えて糞便性状推定装置2aを備える排泄物性状推定システム100は複数の飼育ケージ9のうちの異常飼育ケージを通知する。そのため、飼育管理者が異常飼育ケージにより早いタイミングで到着することができ、異常状態にある飼育動物はより早い段階でケアを受けることができる。これにより、飼育動物の重症化が抑制される。その結果、複数の飼育ケージ9を有する飼育場所において、飼育管理者による飼育ケージ9の確認に要する労力を軽減することができる。
【0100】
なお、排泄物性状推定システム100は、必ずしも異常便と非異常便との2つのいずれであるかを推定する必要は無い。糞便性状推定モデル学習装置1による学習時に、無便、軟便、泥状便、水様便等のより詳細にアノテーションした学習データが用いられることで、入力された画像の糞便の状態をより詳細に分類して各分類の確率を推定する糞便性状推定モデルが得られる、そのため、このようにして得られた糞便性状推定モデルを用いることで、排泄物性状推定システム100は、入力された画像をより詳細に分類し、各確率を推定することが可能である。
【0101】
なお、学習に際しては、撮影結果画像から予め糞便部分を抽出された被抽出糞便画像の画像データを学習用画像データとして用いてもよい。なお糞便部分とは画面上にある糞便の領域を、糞便の領域を囲うことが可能という条件を満たす矩形のうち最小の面積の矩形で囲った部分である。被抽出糞便画像は、被抽出糞便の画像である。被抽出糞便は、水平投影面積が所定の面積以上である糞便である。すなわち、学習用画像データは、予め撮影結果画像から抽出された画像であって水平投影面積が所定の面積以上である糞便の画像である被抽出糞便画像の画像データであってもよい。このような場合、糞便性状推定モデル学習装置1は障害要因物が写っていない画像の画像データを用いて糞便性状推定学習モデルの学習を行う。そのため、より糞便と障害要因物との区別の精度が高い数理モデルが糞便性状推定モデルとして得られる。障害要因物は、糞便以外のものであって糞便との色及び形状の近さが所定の基準値以内のものである。なお、排泄物性状推定システム100による性状の推定の対象が糞便である場合には障害要因物は糞便以外のものであるが、排泄物性状推定システム100による性状の推定の対象が排泄物である場合には障害要因物は排泄物以外のものである。すなわち障害要因物は、排泄物性状推定システム100による性状の推定の対象の排泄物以外のものである。
【0102】
なお、学習に際しては、餌等の障害要因物の色を通過させないフィルタによる画像処理が予め撮影結果画像に対して行われた後の画像の画像データが学習用画像データとして用いられてもよい。このような場合、糞便性状推定モデル学習装置1は障害要因物が写っていない画像の画像データを用いて糞便性状推定学習モデルの学習を行う。そのため、より糞便と障害要因物との区別の精度が高い数理モデルが糞便性状推定モデルとして得られる。
【0103】
なお、入力側学習データは、学習用画像データに加えてさらに学習用画像データが撮影された日時(以下「撮影日時」という。)を示す情報(以下「撮影日時情報」という。)を含んでもよい。このような場合、糞便性状推定学習モデルの学習(すなわち更新)は、学習用画像データだけでなく撮影日時にも基づいて行われる。すなわち糞便性状推定学習モデルの学習に際して、学習用画像データが示す画像に異常便が写っている確率の推定が学習用画像データと撮影日時とに基づいて行われ、推定結果に基づいて糞便性状推定学習モデルの学習が更新される。
【0104】
そのためこのような場合、糞便性状推定モデル学習装置1の得る糞便性状推定モデルは、解析対象画像データと解析対象画像データが撮影された撮影日時とに基づいて解析対象画像データに異常便が写っている確率を推定する数理モデルである。したがって、このような場合、解析対象データは解析対象画像データにくわえてさらに、解析対象画像データが撮影された撮影日時を示す撮影日時情報を含む。
【0105】
撮影日時情報を含むことによる効果について説明する。動物は、夜行性等の日時に応じた動作を行う習性を有する場合がある。そのため、撮影結果画像に写る糞便の状態は日時と相関を有する場合がある。したがって、糞便性状推定学習モデルの学習が学習用画像データだけでなく撮影日時にも基づいて行われることで、異常便の有無の確率の推定に際して動物の日時に応じた習性の情報も用いた推定を行う数理モデルが糞便性状推定モデルとして得られる。このため、撮影日時情報も用いて学習が行われることで、糞便性状推定装置2による推定の精度がより向上する。
【0106】
特にマーモセット等の昼行性(夜に寝る)の動物の場合、早朝に便をする特徴を有するものが多い。早朝に便をする特徴を有する動物の場合、朝一番の床敷の様子を撮影し、新鮮な状態の便の画像を取得することが望ましい。なぜなら、新鮮な状態の便が、最も便の状態を判別しやすい状態だからである。このように、撮影日時情報は、糞便の状態と関連がある。なお、他の動物の多くも、便をする時間に習慣性がある。そのため、新鮮な便をするタイミングでの画像データを取得することで、推定精度が向上する。また、逆に習慣から外れた時間に便が多量にあった場合は飼育動物が異常状態である確率が高く、異常便をする可能性が高い。そのため、撮影日時情報は糞便の状態と関連がある。連日判定を行う場合には、前日の情報を用いることで、より推定の精度が高まる。
【0107】
なお、飼育ケージ9には必ずしも1匹の動物のみが飼育されている必要は無い。飼育ケージ9に複数の動物が飼育されている場合、床敷903には複数の動物の糞便が存在する。
【0108】
学習に際しては、糞便空間に存在する糞便が最大何匹の動物の糞便かを示す情報(以下「数情報」という。)が用いられてもよい。具体的には、入力側学習データが数情報を含んでもよい。
【0109】
なお軟便と嘔吐物とは見た目が似ており区別が難しい。しかしながら、どちらも飼育動物の異常を示すものである。そのため、排泄物性状推定システム100は、嘔吐物についても異常便として判別してもよい。
【0110】
糞便の量は飼育ケージ9で飼育されている動物の数に略比例する。そして、必ずしも飼育ケージ9で飼育されている動物の全てが同じタイミングに異常便を出すわけでは無い。そのため、飼育ケージ9で飼育する動物の数が増えるほど、異常便の割合が正常な糞便である正常便よりも少なくなる頻度が高い。このことは、飼育ケージ9で飼育する動物の数が増えるほど異常便が存在するか否かの推定が困難になることを意味する。そこで数情報も用いた学習を行うことで、糞便性状推定モデル学習装置1は、動物の数と異常便との関係も学習した数理モデルを糞便性状推定モデルとして得ることができる。そのため、数情報も用いた学習を行うことで、糞便性状推定装置2及び糞便性状推定装置2aによる推定の精度がより向上する。なお、学習に際して数情報も用いる場合、解析対象データにも数情報が含まれる。解析対象データに含まれる数情報は、推定対象の動物の数を示す。
【0111】
学習に際しては、撮影の時刻の直前等の撮影の時刻より前の所定のタイミングに飼育動物に与えられた餌の種類を示す情報(以下「餌情報」という。)が用いられてもよい。具体的には、入力側学習データが餌情報を含んでもよい。なお、撮影の時刻とは、撮影結果画像を得る撮影装置901による撮影が行われる時刻である。
【0112】
糞便は餌が消化されて形成されるものであるため、餌と糞便とは相関を有する。そこで餌情報も用いた学習を行うことで、糞便性状推定モデル学習装置1は、餌と異常便との関係も学習した数理モデルを糞便性状推定モデルとして得ることができる。そのため、餌情報も用いた学習を行うことで、糞便性状推定装置2及び糞便性状推定装置2aによる推定の精度がより向上する。なお、学習に際して餌情報も用いる場合、解析対象データにも餌情報が含まれる。
【0113】
上述したように餌は便と相関を有する。そのため、餌の情報を入れることでより推定の精度が上がる。正常な便は餌に依らず類似の形状である場合が多い。しかしながら、異常な便の場合は未消化物が含まれる場合があり、餌の影響が便の状態に現れやすい。そのため、与える餌の種類(餌の色、原料、製造者等)の情報を用いることで、推定の精度が上がる。さらに、餌の情報には、餌の状態を加えてもよい。
【0114】
また、嘔吐物は、床敷の上に落ちると糞便との見分けが困難である。しかしながら、嘔吐物には餌の影響が糞便よりも強く現れるため、餌の情報を用いることで、糞便と嘔吐物との区別の精度があがる。その結果、排泄物性状推定システム100による嘔吐物の推定の精度は向上する。また、上述したように嘔吐物も飼育動物の異常を示すものである。そのため排泄物性状推定システム100は嘔吐物の存在が推定された場合にも、飼育動物に異常があると判定してもよい。
【0115】
学習に際しては、飼育動物に関する情報(以下「飼育動物情報という」)が用いられてもよい。具体的には、入力側学習データが飼育動物情報を含んでもよい。飼育動物情報は、飼育動物の分類学上の種、遺伝系統、性別、及び成熟度(日齢、週齢、月齢、又は年齢)等に関する情報を含んでいてもよい。
【0116】
糞便の性状は、種、遺伝系統、性別、及び成熟度等の飼育動物の特性により変化する。そこで飼育動物情報も用いた学習を行うことで、糞便性状推定モデル学習装置1は、飼育動物の特性と異常便との関係も学習した数理モデルを糞便性状推定モデルとして得ることができる。そのため、飼育動物情報も用いた学習を行うことで、糞便性状推定装置2及び糞便性状推定装置2aによる推定の精度がより向上する。なお、学習に際して飼育動物情報も用いる場合、解析対象データにも餌情報が含まれる。
【0117】
なお撮影装置901は、可視光で撮影するカメラであってもよいし、赤外線カメラであってもよい。撮影装置901の出力する撮影結果画像は、モノクロであってもよいしカラーであってもよい。
【0118】
なお、通信部12、通信部22及び通信部22aは、各種情報を記憶するUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の外部記憶装置に接続するためのインタフェースを含んで構成されてもよい。このような場合、通信部12、通信部22及び通信部22aは情報を接続先の外部記憶装置に出力してもよい。
【0119】
なお、糞便性状推定モデル学習装置1と糞便性状推定装置2とは、必ずしも異なる装置として実装される必要は無い。糞便性状推定モデル学習装置1と糞便性状推定装置2とは、例えば両者の機能を併せ持つ1つの装置として実装されてもよい。
【0120】
なお、糞便性状推定モデル学習装置1と糞便性状推定装置2aとは、必ずしも異なる装置として実装される必要は無い。糞便性状推定モデル学習装置1と糞便性状推定装置2aとは、例えば両者の機能を併せ持つ1つの装置として実装されてもよい。
【0121】
なお、排泄物性状推定システム100は、ネットワークを介して通信可能に接続された複数台の情報処理装置を用いたシステムとして実装されてもよい。この場合、糞便性状推定モデル学習装置1と糞便性状推定装置2とが備える各機能部は、複数の情報処理装置に分散して実装されてもよい。また、糞便性状推定モデル学習装置1と糞便性状推定装置2aとが備える各機能部は、複数の情報処理装置に分散して実装されてもよい。
【0122】
なお、糞便性状推定モデル学習装置1と糞便性状推定装置2と糞便性状推定装置2aとの各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0123】
なお糞便空間は排泄物空間の一例である。異常便は異常排泄物の一例である。糞便性状推定学習モデルは排泄物性状推定学習モデルの一例である。糞便性状推定学習モデル実行部105は、排泄物性状推定学習モデル実行部の一例である。糞便性状推定モデル学習装置1は排泄物性状推定モデル学習装置の一例である。糞便性状推定装置2及び2aは、排泄物性状推定装置の一例である。被抽出糞便画像は被抽出排泄物画像の一例である。
【0124】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0125】
100…排泄物性状推定システム、 1…糞便性状推定モデル学習装置、 2、2a…糞便性状推定装置、 11…制御部、 12…通信部、 13…入力部、 14…記憶部、 15…出力部、 101…通信制御部、 102…入力制御部、 103…出力制御部、 104…学習データ取得部、 105…糞便性状推定学習モデル実行部、 106…更新部、 107…終了判定部、 108…記録部、 21、21a…制御部、 22、22a…通信部、 23…入力部、 24…記憶部、 25…出力部、 201、201a…通信制御部、 202…入力制御部、 203…出力制御部、 204、204a…解析対象データ取得部、 205、205a…推定部、 206…記録部、 207、207a…異常判定部、 91…プロセッサ、 92…メモリ、 93…プロセッサ、 94…メモリ、 95…プロセッサ、 96…メモリ、 900…飼育動物、 901…撮影装置、 902…フロアーメッシュ、 903…床敷、 910…専門家