(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144361
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
G11C 16/08 20060101AFI20220926BHJP
G11C 16/04 20060101ALI20220926BHJP
G11C 16/14 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G11C16/08 140
G11C16/04 170
G11C16/14 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045328
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 高志
【テーマコード(参考)】
5B225
【Fターム(参考)】
5B225BA19
5B225DC03
5B225DC11
5B225EB10
5B225FA01
5B225FA02
(57)【要約】
【課題】データを選択消去することが可能な半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】半導体記憶装置2は、データを記憶するメモリセルアレイ110と、メモリセルアレイ110の動作を制御するシーケンサ41と、を備える。シーケンサ41は、選択メモリセルトランジスタのゲートに繋がる選択ワード線sWLの電位をVm1とし、隣接メモリセルトランジスタのゲートに繋がる隣接ワード線nWLの電位を、Vm1よりも高いVm2とし、非選択メモリセルトランジスタのゲートに繋がる非選択ワード線uWLの電位を、Vm2よりも高いVm3とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを記憶するメモリセルアレイと、
前記メモリセルアレイの動作を制御する制御回路と、を備え、
前記メモリセルアレイは、複数のメモリセルトランジスタが互いに直列に接続されているメモリストリングと、
それぞれの前記メモリセルトランジスタのゲートに対し個別に接続された複数のワード線と、を有し、
一部の前記メモリセルトランジスタからデータを消去する消去動作において、
データの消去対象となる前記メモリセルトランジスタのことを選択メモリセルトランジスタとし、
前記選択メモリセルトランジスタと同じ前記メモリストリングに属し、且つ、前記選択メモリセルトランジスタと隣り合う位置に配置された一対の前記メモリセルトランジスタのことを隣接メモリセルトランジスタとし、
前記選択メモリセルトランジスタ及び前記隣接メモリセルトランジスタと同じ前記メモリストリングに属するその他の前記メモリセルトランジスタのことを非選択メモリセルトランジスタとしたときに、
前記制御回路は、
前記選択メモリセルトランジスタのゲートに繋がる前記ワード線の電位を第1電位とし、
前記隣接メモリセルトランジスタのゲートに繋がる前記ワード線の電位を、前記第1電位よりも高い第2電位とし、
前記非選択メモリセルトランジスタのゲートに繋がる前記ワード線の電位を、前記第2電位よりも高い第3電位とする、半導体記憶装置。
【請求項2】
前記消去動作において、前記制御回路は、
前記選択メモリセルトランジスタからデータを消去した後に、前記隣接メモリセルトランジスタに対し、データを書き込みなおす事後書き込み処理を行う、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記選択メモリセルトランジスタからデータを消去する前に、前記隣接メモリセルトランジスタに記憶されていたデータを読み出す事前読み出し処理を行い、
前記事後書き込み処理においては、事前読み出し処理で読み出されたデータを前記隣接メモリセルトランジスタに書き込みなおす、請求項2に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記事前読み出し処理において読み出されたデータを、外部の記憶装置に記憶させる、請求項3に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記消去動作において、前記制御回路は、
前記選択メモリセルトランジスタからデータを消去する前に、前記隣接メモリセルトランジスタに対し、データを書き込みなおす事前書き込み処理を行う、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記制御回路は、
特定の前記ワード線に繋がっている全ての前記メモリセルトランジスタが、前記選択メモリセルトランジスタとなるように前記消去動作を行う、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記制御回路は、
特定の前記ワード線に繋がっている複数の前記メモリセルトランジスタのうち、特定のページに対応するもののみが前記選択メモリセルトランジスタとなるように前記消去動作を行う、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばNAND型フラッシュメモリのような半導体記憶装置は、データを記憶するためのメモリセルトランジスタを複数有している。メモリセルトランジスタに対するデータの書き込みや読み出しは、各メモリセルトランジスタのそれぞれについて個別に行うことが可能である。一方、データの消去は、例えばブロックと称される単位ごとに、複数のメモリセルトランジスタについて一括して行うのが一般的となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開示された実施形態によれば、データを選択消去することが可能な半導体記憶装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体記憶装置は、データを記憶するメモリセルアレイと、メモリセルアレイの動作を制御する制御回路と、を備える。メモリセルアレイは、複数のメモリセルトランジスタが互いに直列に接続されているメモリストリングと、それぞれのメモリセルトランジスタのゲートに対し個別に接続された複数のワード線と、を有する。一部のメモリセルトランジスタからデータを消去する消去動作において、データの消去対象となるメモリセルトランジスタのことを選択メモリセルトランジスタとし、選択メモリセルトランジスタと同じメモリストリングに属し、且つ、選択メモリセルトランジスタと隣り合う位置に配置された一対のメモリセルトランジスタのことを隣接メモリセルトランジスタとし、選択メモリセルトランジスタ及び隣接メモリセルトランジスタと同じメモリストリングに属するその他のメモリセルトランジスタのことを非選択メモリセルトランジスタとしたときに、制御回路は、選択メモリセルトランジスタのゲートに繋がるワード線の電位を第1電位とし、隣接メモリセルトランジスタのゲートに繋がるワード線の電位を、第1電位よりも高い第2電位とし、非選択メモリセルトランジスタのゲートに繋がるワード線の電位を、第2電位よりも高い第3電位とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るメモリシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る半導体記憶装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、メモリセルアレイの構成を示す等価回路図である。
【
図4】
図4は、メモリセルアレイの構成を示す断面図である。
【
図5】
図5は、メモリセルトランジスタの閾値電圧分布の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の消去動作時における、各部の電位を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の消去動作時における、各部の電位変化を示すタイムチャートである。
【
図8】
図8は、比較例の消去動作時における、各部の電位を示す図である。
【
図9】
図9は、閾値電圧分布の変化について説明するための図である。
【
図10】
図10は、閾値電圧の変化について説明するための図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態のシーケンサにより実行される、処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第2実施形態のシーケンサにより実行される、処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、第3実施形態で実行される処理の概要について説明するための図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態のシーケンサにより実行される、処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、第4実施形態の消去動作時における、各部の電位を示す図である。
【
図16】
図16は、第4実施形態の消去動作時における、各部の電位変化を示すタイムチャートである。
【
図17】
図17は、第5実施形態の消去動作時における、各部の電位を示す図である。
【
図18】
図18は、第6実施形態に係るメモリセルアレイの構成を模式的に示す図である。
【
図19】
図19は、第6実施形態に係るメモリピラーの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0008】
第1実施形態について説明する。本実施形態に係る半導体記憶装置2は、NAND型フラッシュメモリとして構成された不揮発性の記憶装置である。
図1には、半導体記憶装置2を含むメモリシステムの構成例がブロック図として示されている。このメモリシステムは、メモリコントローラ1と、半導体記憶装置2とを備える。尚、半導体記憶装置2は、
図1のメモリシステムにおいて実際には複数設けられているのであるが、
図1においてはそのうちの1つのみが図示されている。半導体記憶装置2の具体的な構成については後に説明する。このメモリシステムは、不図示のホストと接続可能である。ホストは、例えば、パーソナルコンピュータや携帯端末等の電子機器である。
【0009】
メモリコントローラ1は、ホストからの書き込みリクエストに従って半導体記憶装置2へのデータの書き込みを制御する。また、メモリコントローラ1は、ホストからの読み出しリクエストに従って半導体記憶装置2からのデータの読み出しを制御する。
【0010】
メモリコントローラ1と半導体記憶装置2との間では、チップイネーブル信号/CE、レディービジー信号/RB、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号/WE、リードイネーブル信号/RE、RE、ライトプロテクト信号/WP、データである信号DQ<7:0>、データストローブ信号DQS、/DQS、の各信号が送受信される。
【0011】
チップイネーブル信号/CEは、半導体記憶装置2をイネーブルにするための信号である。レディービジー信号/RBは、半導体記憶装置2がレディ状態であるか、ビジー状態であるかを示すための信号である。「レディ状態」とは、外部からの命令を受け付ける状態である。「ビジー状態」とは、外部からの命令を受け付けない状態である。コマンドラッチイネーブル信号CLEは、信号DQ<7:0>がコマンドであることを示す信号である。アドレスラッチイネーブル信号ALEは、信号DQ<7:0>がアドレスであることを示す信号である。ライトイネーブル信号/WEは、受信した信号を半導体記憶装置2に取り込むための信号である。シングルデータレート(Single Data Rate、SDR)モードにおいて、信号/WEの立ち上がりエッジ(rising edge)半導体記憶装置2に送信されるコマンド、アドレス又はデータとしての信号DQ<7:0>を取り込むことを指示する。また、ダブルデータレート(Double Data Rate、DDR)モードにおいて、信号/WEの立ち上がりエッジで不揮発性メモリ2に送信されるコマンド又はアドレスとしての信号DQ<7:0>を取り込むことを指示する。メモリコントローラ1によりコマンド、アドレス、及びデータを受信する都度アサートされる。
【0012】
リードイネーブル信号/REは、メモリコントローラ1が、半導体記憶装置2からデータを読み出すための信号である。信号REは信号/REの相補信号である。これらは例えば、信号DQ<7:0>を出力する際の半導体記憶装置2の動作タイミングを制御するために使用される。より具体的には、シングルデータレートモードにおいて、信号/REの立ち下がりエッジ(falling edge)で不揮発性メモリ2にデータとしての信号DQ<7:0>を出力すること指示する。また、ダブルデータレートモードにおいて、信号/REの立ち下がりエッジ及び立ち上がりエッジで不揮発性メモリ2にデータとしての信号DQ<7:0>を出力すること指示する。ライトプロテクト信号/WPは、データ書き込み及び消去の禁止を半導体記憶装置2に指示するための信号である。信号DQ<7:0>は、半導体記憶装置2とメモリコントローラ1との間で送受信されるデータの実体であり、コマンド、アドレス、及びデータを含む。データストローブ信号DQSは、信号DQ<7:0>の入出力のタイミングを制御するための信号である。信号/DQSは信号DQSの相補信号である。より具体的には、ダブルデータレートモードにおいて、信号DQSの立ち下がりエッジ及び立ち上がりエッジで不揮発性メモリ2にデータとしての信号DQ<7:0>を取り込むことを指示する。また、信号DQSは、ダブルデータレートモードにおいて、信号/REの立ち下がりエッジ及び立ち上がりエッジに基づいて生成され、不揮発性メモリ2からデータとしての信号DQ<7:0>とともに出力される。
【0013】
メモリコントローラ1は、RAM11と、プロセッサ12と、ホストインターフェイス13と、ECC回路14と、メモリインターフェイス15と、を備える。RAM11、プロセッサ12、ホストインターフェイス13、ECC回路14、及びメモリインターフェイス15は、互いに内部バス16で接続されている。
【0014】
ホストインターフェイス13は、ホストから受信したリクエスト、ユーザデータ(書き込みデータ)等を内部バス16に出力する。また、ホストインターフェイス13は、半導体記憶装置2から読み出されたユーザデータ、プロセッサ12からの応答等をホストへ送信する。
【0015】
メモリインターフェイス15は、プロセッサ12の指示に基づいて、ユーザデータ等を半導体記憶装置2へ書き込む処理、及び、半導体記憶装置2から読み出す処理を制御する。
【0016】
プロセッサ12は、メモリコントローラ1を統括的に制御する。プロセッサ12は、例えばCPUやMPU等である。プロセッサ12は、ホストからホストインターフェイス13経由でリクエストを受けた場合に、そのリクエストに従った制御を行う。例えば、プロセッサ12は、ホストからのリクエストに従って、半導体記憶装置2へのユーザデータ及びパリティの書き込みをメモリインターフェイス15へ指示する。また、プロセッサ12は、ホストからのリクエストに従って、半導体記憶装置2からのユーザデータ及びパリティの読み出しをメモリインターフェイス15へ指示する。
【0017】
プロセッサ12は、RAM11に蓄積されるユーザデータに対して、半導体記憶装置2上の格納領域(メモリ領域)を決定する。ユーザデータは、内部バス16経由でRAM11に格納される。プロセッサ12は、メモリ領域の決定を、書き込み単位であるページ単位のデータ(ページデータ)に対して実施する。半導体記憶装置2の1ページに格納されるユーザデータのことを、以下では「ユニットデータ」とも称する。ユニットデータは、一般的には符号化されて、符号語として半導体記憶装置2に格納される。本実施形態では、符号化は必須ではない。メモリコントローラ1は、符号化せずにユニットデータを半導体記憶装置2に格納してもよいが、
図1では、一構成例として符号化を行う構成を示している。メモリコントローラ1が符号化を行わない場合には、ページデータはユニットデータと一致する。また、1つのユニットデータに基づいて1つの符号語が生成されてもよいし、ユニットデータが分割された分割データに基づいて1つの符号語が生成されてもよい。また、複数のユニットデータを用いて1つの符号語が生成されてもよい。
【0018】
プロセッサ12は、ユニットデータごとに書き込み先の半導体記憶装置2のメモリ領域を決定する。半導体記憶装置2のメモリ領域には物理アドレスが割当てられている。プロセッサ12は、ユニットデータの書き込み先のメモリ領域を、物理アドレスを用いて管理する。プロセッサ12は、決定したメモリ領域(物理アドレス)を指定してユーザデータを半導体記憶装置2へ書き込むようメモリインターフェイス15へ指示する。プロセッサ12は、ユーザデータの論理アドレス(ホストが管理する論理アドレス)と物理アドレスとの対応を管理する。プロセッサ12は、ホストからの論理アドレスを含む読み出しリクエストを受信した場合は、論理アドレスに対応する物理アドレスを特定し、物理アドレスを指定してユーザデータの読み出しをメモリインターフェイス15へ指示する。
【0019】
ECC回路14は、RAM11に格納されたユーザデータを符号化して、符号語を生成する。また、ECC回路14は、半導体記憶装置2から読み出された符号語を復号する。ECC回路14は、例えばユーザデータに付与されたチェックサム等を利用することで、データにおけるエラーの検出、及び当該エラーの訂正を行う。
【0020】
RAM11は、ホストから受信したユーザデータを半導体記憶装置2へ記憶するまでに一時格納したり、半導体記憶装置2から読み出したデータをホストへ送信するまでに一時格納したりする。RAM11は、例えば、SRAMやDRAM等の汎用メモリである。
【0021】
図1では、メモリコントローラ1が、ECC回路14とメモリインターフェイス15をそれぞれ備える構成例が示されている。しかしながら、ECC回路14がメモリインターフェイス15に内蔵されていてもよい。また、ECC回路14が、半導体記憶装置2に内蔵されていてもよい。
図1に示される各要素の具体的な構成や配置は、特に限定されない。
【0022】
ホストから書き込みリクエストを受信した場合、
図1のメモリシステムは次のように動作する。プロセッサ12は、書き込み対象となるデータをRAM11に一時記憶させる。プロセッサ12は、RAM11にストアされたデータを読み出し、ECC回路14に入力する。ECC回路14は、入力されたデータを符号化し、符号語をメモリインターフェイス15に入力する。メモリインターフェイス15は、入力された符号語を半導体記憶装置2に書き込む。
【0023】
ホストから読み出しリクエストを受信した場合、
図1のメモリシステムは次のように動作する。メモリインターフェイス15は、半導体記憶装置2から読み出した符号語をECC回路14に入力する。ECC回路14は、入力された符号語を復号し、復号されたデータをRAM11にストアする。プロセッサ12は、RAM11にストアされたデータを、ホストインターフェイス13を介してホストに送信する。
【0024】
半導体記憶装置2の構成について説明する。
図2に示されるように、半導体記憶装置2は、メモリセルアレイ110と、センスアンプ120と、ロウデコーダ130と、入出力回路21と、ロジック制御回路22と、シーケンサ41と、レジスタ42と、電圧生成回路43と、入出力用パッド群31と、ロジック制御用パッド群32と、電源入力用端子群33と、を備えている。
【0025】
メモリセルアレイ110は、データを記憶する部分である。
図3には、メモリセルアレイ110の構成が等価回路図として示されている。メモリセルアレイ110は複数のブロックBLKにより構成されているのであるが、
図3においては、これらのうちの1つのブロックBLKのみが図示されている。メモリセルアレイ110が有する他のブロックBLKの構成も、
図3に示されるものと同じである。
【0026】
図3に示されるように、ブロックBLKは、例えば4つのストリングユニットSU(SU0~SU3)を含む。また各々のストリングユニットSUは、複数のメモリストリングMSを含む。メモリストリングMSの各々は、例えば8個のメモリセルトランジスタMT(MT0~MT7)と、選択トランジスタST1、ST2とを含んでおり、これらが互いに直列に接続された構成となっている。
【0027】
尚、メモリセルトランジスタMTの個数は8個に限られず、例えば、32個、48個、64個、96個でもよい。例えばカットオフ特性を高めるために、選択トランジスタST1、ST2のそれぞれが、単一ではなく複数のトランジスタにより構成されていてもよい。さらに、メモリセルトランジスタMTと選択トランジスタST1、ST2との間には、ダミーセルトランジスタが設けられていてもよい。
【0028】
それぞれのメモリストリングMSに含まれるメモリセルトランジスタMTは、選択トランジスタST1と選択トランジスタST2との間において、互いに直列に接続されている。一端側のメモリセルトランジスタMT7が、選択トランジスタST1のソースに接続され、他端側のメモリセルトランジスタMT0が、選択トランジスタST2のドレインに接続されている。
【0029】
ストリングユニットSU0~SU3の各々の選択トランジスタST1のゲートは、それぞれセレクトゲート線SGD0~SGD3に共通接続されている。選択トランジスタST2のゲートは、同一のブロックBLK内にある複数のストリングユニットSU間で同一のセレクトゲート線SGSに共通接続されている。
【0030】
メモリセルアレイ110には、メモリセルトランジスタMT0~MT7のゲートに対し個別に接続される複数のワード線WL(WL0~WL7)が設けられている。同一のブロックBLK内にあるメモリセルトランジスタMT0~MT7のゲートは、それぞれワード線WL0~WL7に共通接続される。すなわち、ワード線WL0~WL7及びセレクトゲート線SGSは、同一ブロックBLK内の複数のストリングユニットSU0~SU3間で共通となっているのに対し、セレクトゲート線SGDは、同一ブロックBLK内であってもストリングユニットSU0~SU3毎に個別に設けられている。
【0031】
メモリセルアレイ110には、m本のビット線BL(BL0、BL1、・・・、BL(m-1))が設けられている。上記の「m」は、1つのストリングユニットSUに含まれるメモリストリングMSの本数を表す整数である。それぞれのメモリストリングMSのうち、選択トランジスタST1のドレインは、対応するビット線BLに接続されている。選択トランジスタST2のソースは、ソース線SLに接続されている。ソース線SLは、ブロックBLKが有する複数の選択トランジスタST2のソースに対し、共通接続されている。
【0032】
データの読み出し及び書き込みは、1つのワード線WLに接続され、かつ1つのストリングユニットSUに属する複数のメモリセルトランジスタMTに対して一括して行われる。
【0033】
本実施形態では、消去動作において、同一のブロックBLK内にある複数のメモリセルトランジスタMTに記憶されているデータを、一括して消去するのではなく、一部のデータについてのみ選択消去することが可能となっている。具体的には、特定のワード線WLに繋がっている全てのメモリセルトランジスタMTに記憶されているデータを消去しながら、それ以外のメモリセルトランジスタMTに記憶されているデータを残すことが可能となっている。
【0034】
それぞれのメモリセルトランジスタMTは、上位ビット、中位ビット、及び下位ビットからなる3ビットのデータを保持することができる。つまり、本実施形態に係る半導体記憶装置2は、メモリセルトランジスタMTへのデータの書き込み方式として、1つのメモリセルトランジスタMTに3ビットデータを記憶させるTLC方式を採用している。このような態様に替えて、メモリセルトランジスタMTへのデータの書き込み方式としては、1つのメモリセルトランジスタMTに2ビットデータを記憶させるMLC方式や、1つのメモリセルトランジスタMTに1ビットデータを記憶させるSLC方式等を採用してもよい。
【0035】
尚、以下の説明では、1つのワード線WLに接続され、かつ1つのストリングユニットSUに属する複数のメモリセルトランジスタMTが記憶する1ビットデータの集合のことを「ページ」と称する。
図3では、上記のような複数のメモリセルトランジスタMTからなる集合の一つに、符号「MG」が付してある。
【0036】
本実施形態のように、1つのメモリセルトランジスタMTに3ビットのデータが記憶される場合、1つのストリングユニットSU内で共通のワード線WLに接続された複数のメモリセルトランジスタMTの集合は、3ページ分のデータを記憶することができる。
【0037】
図4には、メモリセルアレイ110の構成が、模式的な断面図として示されている。同図に示されるように、メモリセルアレイ110では、半導体基板300のp型ウェル領域(P-well)上に複数のメモリストリングMSが形成されている。
【0038】
p型ウェル領域の上方には、セレクトゲート線SGSとして機能する複数の配線層333、ワード線WLとして機能する複数の配線層332、及びセレクトゲート線SGDとして機能する複数の配線層331が積層されている。積層された配線層333、332、331のそれぞれの間には、不図示の絶縁層が配置されている。
【0039】
メモリセルアレイ110には複数のメモリホール334が形成されている。メモリホール334は、上記の配線層333,332,331、及びこれらの間にある不図示の絶縁層を上下方向に貫通しており、且つ、p型ウェル領域に達するように形成された穴である。メモリホール334の側面には、ブロック絶縁膜335、電荷蓄積層336、及びゲート絶縁膜337が順次形成され、更にその内側に半導体柱338が埋め込まれている。半導体柱338は、例えばポリシリコンからなり、メモリストリングMSに含まれるメモリセルトランジスタMT並びに選択トランジスタST1及びST2の動作時にチャネルが形成される領域として機能する。このように、メモリホール334の内側には、ブロック絶縁膜335、電荷蓄積層336、ゲート絶縁膜337、及び半導体柱338からなる柱状体が形成されている。この柱状体のことを、以下では「メモリピラーMP」とも称する。
【0040】
メモリホール334の内側に形成されたメモリピラーMPのうち、積層された配線層333、332、331のそれぞれと交差している各部分は、トランジスタとして機能する。これら複数のトランジスタのうち、配線層331と交差している部分にあるものは、選択トランジスタST1として機能する。複数のトランジスタのうち、配線層332と交差している部分にあるものは、メモリセルトランジスタMT(MT0~MT7)として機能する。複数のトランジスタのうち、配線層333と交差している部分にあるものは、選択トランジスタST2として機能する。このような構成により、各メモリホール334の内側に形成されたメモリピラーMPのそれぞれは、
図3を参照しながら説明したメモリストリングMSとして機能する。メモリピラーMPの内側にある半導体柱338は、メモリセルトランジスタMTや選択トランジスタST1、ST2のチャンネルとして機能する部分である。
【0041】
半導体柱338よりも上側には、ビット線BLとして機能する配線層が形成される。半導体柱338の上端には、半導体柱338とビット線BLとを接続するコンタクトプラグ339が形成されている。
【0042】
更に、p型ウェル領域の表面内には、n+型不純物拡散層及び不図示のp+型不純物拡散層が形成されている。n+型不純物拡散層上にはコンタクトプラグ340が形成され、コンタクトプラグ340上には、配線層341が形成されている。配線層341は、ソース線SLの電位を調整するための配線であり、読み出し時にセレクトゲート線SGS直下のp型ウェル領域に形成される反転層を通してメモリストリングMSに接続される。不図示のp+型不純物拡散層はp型ウェル領域の電位を調整するための配線である。
【0043】
図4に示される構成と同様の構成が、
図4の紙面の奥行き方向に沿って複数配列されている。
図4の紙面の奥行き方向に沿って一列に並ぶ複数のメモリストリングMSの集合によって、1つのストリングユニットSUが形成されている。
【0044】
尚、本実施形態では、上記のように、半導体基板300のp型ウェル領域がソース線SLとして用いられる。このような態様に替えて、半導体基板300よりも上方側となる位置に形成された導体層が、ソース線SLとして用いられる構成としてもよい。この場合、半導体基板300と上記導体層との間の部分に、センスアンプ120等の周辺回路を配置した構成としてもよい。
【0045】
図2に戻って説明を続ける。センスアンプ120は、ビット線BLに印加される電圧を調整したり、ビット線BLを流れるセル電流を読み出してデータに変換したりするための回路である。センスアンプ120は、データの読み出し時には、メモリセルトランジスタMTからビット線BLに読み出された読み出しデータを取得し、取得した読み出しデータを入出力回路21に転送する。センスアンプ120は、データの書き込み時には、ビット線BLを介して書き込まれる書き込みデータをメモリセルトランジスタMTに転送する。センスアンプ120の動作は、後述のシーケンサ41により制御される。
【0046】
ロウデコーダ130は、ワード線WLのそれぞれに電圧を印加するための、不図示のスイッチ群として構成された回路である。ロウデコーダ130は、レジスタ42からブロックアドレス及びロウアドレスを受け取り、当該ブロックアドレスに基づいて対応するブロックBLKを選択するとともに、当該ロウアドレスに基づいて対応するワード線WLを選択する。ロウデコーダ130は、選択されたワード線WLに対して電圧生成回路43からの電圧が印加されるよう、上記のスイッチ群の開閉を切り換える。ロウデコーダ130の動作はシーケンサ41により制御される。
【0047】
入出力回路21は、メモリコントローラ1との間で、信号DQ<7:0>、及び、データストローブ信号DQS、/DQSを送受信する。入出力回路21は、信号DQ<7:0>内のコマンド及びアドレスをレジスタ42に転送する。また、入出力回路21は、書き込みデータ及び読み出しデータを、センスアンプ120との間で送受信する。
【0048】
ロジック制御回路22は、メモリコントローラ1からチップイネーブル信号/CE、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号/WE、リードイネーブル信号/RE、RE、及びライトプロテクト信号/WPを受信する。また、ロジック制御回路22は、レディービジー信号/RBをメモリコントローラ1に転送して、半導体記憶装置2の状態を外部に通知する。
【0049】
シーケンサ41は、メモリコントローラ1から入出力回路21やロジック制御回路22へと入力された制御信号に基づいて、メモリセルアレイ110を含む各部の動作を制御する。シーケンサ41は、本実施形態における「制御回路」に該当する。シーケンサ41とロジック制御回路22の両方を、本実施形態における「制御回路」と見なすこともできる。
【0050】
レジスタ42は、コマンドやアドレスを一時的に保持する部分である。レジスタ42には、書き込み動作や読み出し動作、及び消去動作等を指示するコマンドが保持される。当該コマンドは、メモリコントローラ1から入出力回路21に入力された後、入出力回路21からレジスタ42に転送され保持される。
【0051】
また、レジスタ42は、上記のコマンドに対応するアドレスも保持される。当該アドレスは、メモリコントローラ1から入出力回路21に入力された後、入出力回路21からレジスタ42に転送され保持される。
【0052】
更に、レジスタ42は、半導体記憶装置2の動作状態を示すステータス情報も保持される。ステータス情報は、メモリセルアレイ110等の動作状態に応じて、シーケンサ41によって都度更新される。ステータス情報は、メモリコントローラ1からの要求に応じて、状態信号として入出力回路21からメモリコントローラ1へと出力される。
【0053】
電圧生成回路43は、メモリセルアレイ110におけるデータの書き込み動作、読み出し動作、及び、消去動作のそれぞれに必要な電圧を生成する部分である。このような電圧には、例えば、それぞれのワード線WLに印加される電圧や、それぞれのビット線BLに印加される電圧等が含まれる。電圧生成回路43の動作はシーケンサ41によって制御される。
【0054】
入出力用パッド群31は、メモリコントローラ1と入出力回路21との間で各信号の送受信を行うための、複数の端子(パッド)が設けられた部分である。それぞれの端子は、信号DQ<7:0>、及び、データストローブ信号DQS、/DQSのそれぞれに対応して個別に設けられている。
【0055】
ロジック制御用パッド群32は、メモリコントローラ1とロジック制御回路22との間で各信号の送受信を行うための、複数の端子(パッド)が設けられた部分である。それぞれの端子は、チップイネーブル信号/CE、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号/WE、リードイネーブル信号/RE、RE、ライトプロテクト信号/WP、及び、レディービジー信号/RBのそれぞれに対応して個別に設けられている。
【0056】
電源入力用端子群33は、半導体記憶装置2の動作に必要な各電圧の印加を受けるための、複数の端子が設けられた部分である。それぞれの端子に印加される電圧には、電源電圧Vcc、VccQ、Vpp、及び接地電圧Vssが含まれる。
【0057】
電源電圧Vccは、動作電源として外部から与えられる回路電源電圧であり、例えば3.3V程度の電圧である。電源電圧VccQは、例えば1.2Vの電圧である。電源電圧VccQは、メモリコントローラ1と半導体記憶装置2との間で信号を送受信する際に用いられる電圧である。電源電圧Vppは、電源電圧Vccよりも高圧の電源電圧であり、例えば12Vの電圧である。
【0058】
図5は、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布等を模式的に示す図である。
図5の中段にある図は、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧(横軸)と、メモリセルトランジスタMTの個数(縦軸)との対応関係を表している。
【0059】
本実施形態のようにTLC方式を採用した場合においては、複数のメモリセルトランジスタMTは、
図5の中段に示されるように、8つの閾値電圧分布を形成する。この8個の閾値電圧分布(書き込みレベル)のことを、閾値電圧の低い方から順に“ER”レベル、“A”レベル、“B”レベル、“C”レベル、“D”レベル、“E”レベル、“F”レベル、“G”レベルと称する。
【0060】
図5の上段にある表は、閾値電圧の上記各レベルのそれぞれに対応して、割り当てられるデータの例を表している。同表に示されるように、“ER”レベル、“A”レベル、“B”レベル、“C”レベル、“D”レベル、“E”レベル、“F”レベル、及び“G”レベルには、例えば以下に示すような、それぞれ異なる3ビットデータが割り当てられる。
“ER”レベル:“111”(“下位ビット/中位ビット/上位ビット”)
“A”レベル:“011”
“B”レベル:“001”
“C”レベル:“000”
“D”レベル:“010”
“E”レベル:“110”
“F”レベル:“100”
“G”レベル:“101”
【0061】
互いに隣り合う一対の閾値電圧分布の間には、それぞれ書き込み動作で使用されるベリファイ電圧が設定される。具体的には、“A”レベル、“B”レベル、“C”レベル、“D”レベル、“E”レベル、“F”レベル、及び“G”レベルにそれぞれ対応して、ベリファイ電圧VfyA、VfyB、VfyC、VfyD、VfyE、VfyF、及びVfyGが設定される。
【0062】
ベリファイ電圧VfyAは、“ER”レベルにおける最大の閾値電圧と“A”レベルにおける最小の閾値電圧との間に設定される。メモリセルトランジスタMTにベリファイ電圧VfyAが印加されると、閾値電圧が“ER”レベルに含まれるメモリセルトランジスタMTがオン状態になり、閾値電圧が“A”レベル以上の閾値電圧分布に含まれるメモリセルトランジスタMTがオフ状態になる。
【0063】
その他のベリファイ電圧VfyB、VfyC、VfyD、VfyE、VfyF、及びVfyGも、上記のベリファイ電圧VfyAと同様に設定される。ベリファイ電圧VfyBは、“A”レベルと“B”レベルとの間に設定され、ベリファイ電圧VfyCは、“B”レベルと“C”レベルとの間に設定され、ベリファイ電圧VfyDは、“C”レベルと“D”レベルとの間に設定され、ベリファイ電圧VfyEは、“D”レベルと“E”レベルとの間に設定され、ベリファイ電圧VfyFは、“E”レベルと“F”レベルとの間に設定され、ベリファイ電圧VfyGは、“F”レベルと“G”レベルとの間に設定される。
【0064】
例えば、ベリファイ電圧VfyAは0.8Vに、ベリファイ電圧VfyBは1.6Vに、ベリファイ電圧VfyCは2.4Vに、ベリファイ電圧VfyDは3.1Vに、ベリファイ電圧VfyEは3.8Vに、ベリファイ電圧VfyFは4.6Vに、ベリファイ電圧VfyGは5.6Vに、それぞれ設定してもよい。しかし、これに限定されることなく、ベリファイ電圧VfyA、VfyB、VfyC、VfyD、VfyE、VfyF、及びVfyGは、例えば、0V~7.0Vの範囲で、適宜、段階的に設定してもよい。
【0065】
また、隣り合う閾値電圧分布の間には、それぞれ読み出し動作で使用される読み出し電圧が設定される。「読み出し電圧」とは、読み出し動作時において、読み出し対象となるメモリセルトランジスタMTに繋がるワード線WLに対し印加される電圧である。読み出し動作では、読み出し対象となるメモリセルトランジスタMTの閾値電圧が、印加された読み出し電圧よりも高いか否かの判定結果に基づいてデータが決定される。
【0066】
図5の下段の図において模式的に示されるように、具体的には、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧が“ER”レベルに含まれるのか“A”レベル以上に含まれるのかを判定する読み出し電圧VrAは、“ER”レベルにおける最大の閾値電圧と“A”レベルにおける最小の閾値電圧との間に設定される。
【0067】
その他の読み出し電圧VrB、VrC、VrD、VrE、VrF、及びVrGも、上記の読み出し電圧VrAと同様に設定される。読み出し電圧VrBは、“A”レベルと“B”レベルとの間に設定され、読み出し電圧VrCは、“B”レベルと“C”レベルとの間に設定され、読み出し電圧VrDは、“C”レベルと“D”レベルとの間に設定され、読み出し電圧VrEは、“D”レベルと“E”レベルとの間に設定され、読み出し電圧VrFは、“E”レベルと“F”レベルとの間に設定され、読み出し電圧VrGは、“F”レベルと“G”レベルとの間に設定される。
【0068】
そして、最も高い閾値電圧分布(例えば“G”レベル)の最大の閾値電圧よりも高い電圧に、読み出しパス電圧VPASS_READが設定される。読み出しパス電圧VPASS_READがゲートに印加されたメモリセルトランジスタMTは、記憶するデータに依らずにオン状態になる。
【0069】
尚、ベリファイ電圧VfyA、VfyB、VfyC、VfyD、VfyE、VfyF、及びVfyGは、例えば、読み出し電圧VrA、VrB、VrC、VrD、VrE、VrF、及びVrGよりもそれぞれ高い電圧に設定される。つまり、ベリファイ電圧VfyA、VfyB、VfyC、VfyD、VfyE、VfyF、及びVfyGは、それぞれ“A”レベル、“B”レベル、“C”レベル、“D”レベル、“E”レベル、“F”レベル、及び“G”レベルの閾値電圧分布の下裾近傍に設定される。
【0070】
以上に説明したようなデータの割り付けが適用された場合、読み出し動作において下位ビットの1ページデータ(下位ページデータ)は、読み出し電圧VrA及びVrEを用いた読み出し結果によって確定させることができる。中位ビットの1ページデータ(中位ページデータ)は、読み出し電圧VrB、VrD、及びVrFを用いた読み出し結果によって確定させることができる。上位ビットの1ページデータ(上位ページデータ)は、読み出し電圧VrC及びVrGを用いた読み出し結果によって確定させることができる。
【0071】
尚、以上で説明したようなデータの割り付けはあくまで一例であり、実際のデータの割り付けはこれに限定されない。例えば、2ビット又は4ビット以上のデータが1つのメモリセルトランジスタMTに記憶されてもよい。また、データが割り付けられる閾値電圧分布の数は7以下であってもよく、9以上であってもよい。
【0072】
メモリセルトランジスタMTにデータを書き込む書き込み動作では、プログラム動作及びベリファイ動作が行われる。「プログラム動作」とは、一部のメモリセルトランジスタMTの電荷蓄積層336に電子を注入することにより、当該メモリセルトランジスタMTの閾値電圧を変化させる動作のことである。「ベリファイ動作」とは、上記のプログラム動作の後、データを読み出すことで、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧がターゲットレベルまで達したか否かを検証する動作である。閾値電圧がターゲットレベルまで達したメモリセルトランジスタMTは、その後、書き込み禁止とされる。
【0073】
プログラム動作では、書き込み対象のメモリセルトランジスタMTにおいて、チャンネルの電位が例えば0Vとされ、ゲートに繋がるワード線の電位が例えば20Vとされる。このように、ゲートの方が高電位となるように電圧が印加されると、メモリセルトランジスタMTの電荷蓄積層336に電子が注入され、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧が上昇する。プログラム動作においてワード線に印加される電圧は20Vに限られず、メモリセルトランジスタMTの電荷蓄積層336に電子が注入させてその閾値電圧を上昇させることができれば、異なる電圧を印加してもよい。尚、このようなプログラム動作の具体的な態様としては、公知となっている様々な方法を用いることができるので、その具体的な説明については省略する。
【0074】
ベリファイ動作及び読み出し動作では、読み出し対称のメモリセルトランジスタMTのゲートに、所定の読み出し電圧(上記のVrA等)又はベリファイ電圧(上記のVfyA等)が印加される。当該メモリセルトランジスタMTと同じメモリストリングMSに属する他のメモリセルトランジスタMTのゲートには、読み出しパス電圧VPASS_READが印加される。この状態で、当該メモリストリングMSとビット線との間で流れる電流の大きさに基づいて、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧が判定される。尚、このようなベリファイ動作及び読み出し動作の具体的な態様としては、公知となっている様々な方法を用いることができるので、その具体的な説明については省略する。
【0075】
本実施形態に係る半導体記憶装置2で実行される、消去動作について説明する。先に述べたように、本実施形態の消去動作では、特定のワード線WLに繋がっている全てのメモリセルトランジスタMTに記憶されているデータを消去しながら、それ以外のメモリセルトランジスタMTに記憶されているデータを残すように、選択消去が行われる。つまり、特定のワード線WLに繋がっているレイヤー全体に対してデータの消去が行われる。このため、本実施形態の消去動作は「レイヤー消去」ともいうことができる。尚、上記における「特定のワード線WL」とは、1本のワード線WLでもよいが、複数のワード線WLでもよい。
【0076】
ブロックBLKに含まれる複数のメモリセルトランジスタMTのうち、上記のように一部のメモリセルトランジスタMTからデータを消去する消去動作において、データの消去対象となるメモリセルトランジスタMTのことを、以下では「選択メモリセルトランジスタ」とも称する。また、選択メモリセルトランジスタと同じメモリストリングMSに属し、且つ、選択メモリセルトランジスタと隣り合う位置に配置された一対のメモリセルトランジスタMTのことを、以下では「隣接メモリセルトランジスタ」とも称する。更に、選択メモリセルトランジスタ及び隣接メモリセルトランジスタと同じメモリストリングMSに属するその他のメモリセルトランジスタMTのことを、以下では「非選択メモリセルトランジスタ」とも称する。
【0077】
本実施形態では、上記のようにレイヤー消去が行われる。このため、制御回路であるシーケンサ41は、特定のワード線WLに繋がっている全てのメモリセルトランジスタMTが、上記の選択メモリセルトランジスタとなるように消去動作を行うこととなる。
【0078】
図6の等価回路図には、同一のビット線BLに接続された一対のメモリストリングMS(MS0、MS1)が描かれている。メモリストリングMS0はストリングユニットSU0に属しており、メモリストリングMS1はストリングユニットSU1に属している。以下では、
図6を参照しながら、消去動作時における各部の電位分布等について説明する。
【0079】
図6の例では、ワード線WL3に繋がっている全てのメモリセルトランジスタMTが消去対象とされている。
図6では、消去対象のメモリセルトランジスタMTが一点鎖線で囲まれている。消去対象のメモリセルトランジスタMTには、図示されていないストリングユニットSU2、SU3に属するものや、
図6において紙面奥行き方向に並んでいるその他のメモリセルトランジスタMT3も含まれる。
【0080】
図6の例では、各メモリストリングMSのメモリセルトランジスタMT3が、先に述べた「選択メモリセルトランジスタ」に該当する。各メモリストリングMSのメモリセルトランジスタMT2及びメモリセルトランジスタMT4が、先に述べた「隣接メモリセルトランジスタ」に該当する。その他のメモリセルトランジスタMT0~MT1、MT5~MT7が、先に述べた「非選択メモリセルトランジスタ」に該当する。
【0081】
図6において矩形の枠で囲まれている「Vera」や「Vsg」等の文字列は、各部における電位を表している。尚、消去動作の実行時において、各部における電位を
図6のように調整する処理は、シーケンサ41が行う制御に基づいて、センスアンプ120やロウデコーダ130、及び電圧生成回路43等の動作により実現される。
【0082】
図6に示されるように、レイヤー消去が行われる際においては、ビット線BL及びソース線SLの電位が、いずれもVeraとされる。「Vera」は、メモリセルトランジスタMTのデータを消去するために必要な電位であって、例えば20Vである。
【0083】
セレクトゲート線SGD0、SGD1、SGDのそれぞれの電位は、いずれもVsgとされる。「Vsg」は、上記のVeraよりも低い電位であって、例えば13Vである。選択トランジスタST1、ST2のそれぞれにおいては、VeraとVsgとの電位差に基づいてGIDLが生じ、生成されたホールによって各メモリストリングMSのチャンネルが充電される。その結果、メモリストリングMS0、MS1においては、チャンネルの電位がVeraまで上昇している。
【0084】
消去動作(レイヤー消去)において、ビット線BL及びソース線SLに印加される電圧は20Vに限られず、セレクトゲート線SGD0、SGD1、SGDに印加される電圧は13Vに限られない。選択トランジスタST1、ST2においてGIDLによってホールを生成させることができれば、ビット線BL、ソース線SL及びセレクトゲート線SGD0、SGD1、SGDに、それぞれ、上記の電圧とは異なる電圧を印加してもよい。このように、本実施形態で示される各部の電位の数値はあくまで一例であって、その具体的な数値は、本実施形態で示される数値に限定されない。
【0085】
尚、本実施形態では、半導体基板300のp型ウェル領域がソース線SLとして用いられるので、選択トランジスタST2におけるGIDLの発生は必須ではない。選択トランジスタST2では、上記のような電位分布とすることで、p型ウェル領域に存在するホールが通過しやすくなる。これにより、上記のようなチャンネルの電位上昇が促進される。選択トランジスタST2におけるGIDLの発生は、上記の現象に加えて付加的に生じるものである。
【0086】
メモリストリングMS0、MS1等における各チャンネルの電位が、上記のようにVeraとされる一方で、選択メモリセルトランジスタ(MT3)のゲートに繋がるワード線WL(WL3)の電位はVm1とされる。「Vm1」は、例えば接地電位(0V)である。
【0087】
また、隣接メモリセルトランジスタ(MT2、MT4)のゲートに繋がるワード線WL(WL2、WL4)の電位はVm2とされる。「Vm2」は、Vm1よりも高い電位であって、例えば10Vである。
【0088】
更に、非選択メモリセルトランジスタ(MT0~MT1、MT5~MT7)のゲートに繋がるワード線WL(WL0~WL1、WL5~WL7)の電位はVm3とされる。「Vm3」は、Vm2よりも更に高い電位であって、例えば16Vである。
【0089】
本実施形態のレイヤー消去において、選択メモリセルトランジスタ(MT3)のゲートに繋がるワード線WL(WL3)に印加される電圧は接地電位(0V)に限られず、隣接メモリセルトランジスタ(MT2、MT4)のゲートに繋がるワード線WL(WL2、WL4)に印加される電圧Vm2は10Vに限られず、非選択メモリセルトランジスタ(MT0~MT1、MT5~MT7)のゲートに繋がるワード線WL(WL0~WL1、WL5~WL7)に印加される電圧Vm3は16Vに限られない。本実施形態において例示されるレイヤー消去と同様の効果を得ることができれば、ワード線WL3、ワード線WL2、WL4及びワード線WL0~WL1、WL5~WL7に、それぞれ、上記の電圧とは異なる電圧を印加してもよい。
【0090】
消去対象である選択メモリセルトランジスタ(MT3)においては、チャンネルとゲートとの間に高い電圧(0V-Vera)が印加された状態となる。当該電圧により、選択メモリセルトランジスタでは閾値電圧が“ER”レベルまで低下し、データが消去される。
【0091】
隣接メモリセルトランジスタ(MT2、MT4)においても、チャンネルとゲートとの間に電圧(Vm2-Vera)が印加された状態となる。しかしながら、当該電圧は、隣接メモリセルトランジスタにおける閾値電圧のレベルを変化させない程度の小さい電圧となっている。このため、隣接メモリセルトランジスタでは、閾値電圧が当初のレベルのままに維持され、データは消去されない。
【0092】
非選択メモリセルトランジスタ(MT0~MT1、MT5~MT7)においても、チャンネルとゲートとの間に電圧(Vm3-Vera)が印加された状態となる。当該電圧は、非選択メモリセルトランジスタにおける閾値電圧を変化させない程度の小さい電圧となっている。このため、非選択メモリセルトランジスタでも、閾値電圧が当初のレベルのままに維持され、データは消去されない。
【0093】
このように、
図6に示される電位分布においては、選択メモリセルトランジスタのデータのみが消去され、隣接メモリセルトランジスタ及び非選択メモリセルトランジスタにおいてはデータが消去されない。
【0094】
図7には、各部の電位を
図6に示される状態とするための、タイムチャートの一例が示されている。
図7の「sWL」は、選択メモリセルトランジスタに繋がるワード線WL(この例ではワード線WL3)の電位の時間変化の例である。当該ワード線WLのことを、以下では「選択ワード線sWL」とも称する。
【0095】
図7の「nWL」は、隣接メモリセルトランジスタに繋がるワード線WL(この例ではワード線WL2、WL4)の電位の時間変化の例である。当該ワード線WLのことを、以下では「隣接ワード線nWL」とも称する。
【0096】
図7の「uWL」は、非選択メモリセルトランジスタに繋がるワード線WL(この例ではWL0~WL1、WL5~WL7)の電位の時間変化の例である。当該ワード線WLのことを、以下では「非選択ワード線uWL」とも称する。
【0097】
図7の「SGD0」は、セレクトゲート線SGD0の電位の時間変化の例であり、「SGD1」は、セレクトゲート線SGD1の電位の時間変化の例である。「SGS」は、セレクトゲート線SGSの電位の時間変化の例である。「BL,SL」は、ビット線BL及びソース線SLの電位の時間変化の例である。
【0098】
図7の「ch_MS0」は、メモリストリングMS0のチャンネル(半導体膜330)における電位の時間変化の例である。同様に、「ch_MS1」は、メモリストリングMS1のチャンネルにおける電位の時間変化の例である。
【0099】
消去動作が開始される時刻t1よりも前の期間において、シーケンサ41は、各ビット線BLや各ワード線WL、及びソース線SLの電位をそれぞれ例えば0Vとしておく。
【0100】
時刻t1において、シーケンサ41は、ビット線BL及びソース線SLの電位を、いずれもVp1まで上昇させる。Vp1は、Vera-Vsg程度の電位であり、例えば7Vである。これに伴い、選択トランジスタST1、ST2ではホールが生成され、当該ホールによってチャンネルが充電される。
図7に示されるように、時刻t1以降においては、ch_MS0及びch_MS1の電位が、ビット線BL等の電位と同じVp1まで上昇する。このように、時刻t1以降においては、各メモリストリングMSのチャンネルが事前充電される。
【0101】
時刻t1において、シーケンサ41は、隣接ワード線nWL及び非選択ワード線uWLの電位を、いずれもVm0まで上昇させる。「Vm0」は例えば3Vである。これにより、選択メモリセルトランジスタ以外のメモリセルトランジスタMTにおいては、事前充電されたチャンネルと、ゲートとの間の電位差が小さくなる。これにより、当該メモリセルトランジスタMTのデータが誤消去されてしまうことが防止される。選択ワード線sWLの電位は、時刻t1以降も0Vのままである。
【0102】
時刻t1の後の時刻t2において、シーケンサ41は、ビット線BL及びソース線SLの電位を、いずれもVeraまで上昇させる。また、シーケンサ41は、セレクトゲート線SGD0、SGD1、SGSの電位を、いずれもVsgまで上昇させる。ch_MS0及びch_MS1の電位は、選択トランジスタST1、ST2で生じたホールにより、Veraまで上昇する。メモリストリングMS0、MS1と同じブロックBLKに属する、その他のメモリストリングのチャンネルの電位も同様である。
【0103】
時刻t2において、シーケンサ41は、隣接ワード線nWLの電位をVm2まで上昇させると共に、非選択ワード線uWLの電位をVm3まで上昇させる。これにより、
図6に示される電位分布が実現され、選択メモリセルトランジスタのデータが選択消去される。選択消去が完了すると、時刻t3において、各部の電位が例えば0Vに戻される。
【0104】
ところで、上記のようなデータの選択消去を行うにあたっては、全ての非選択メモリセルトランジスタに繋がるワード線WLの電位を、隣接メモリセルトランジスタに繋がるワード線WLの電位と同じ電位(Vm2)としてもよいように思われる。
【0105】
図8には、上記のように、選択メモリセルトランジスタ以外のメモリセルトランジスタMTに繋がるワード線WLの電位を、全てVm2として消去動作を行う場合の例が、本実施形態の比較例として示されている。この比較例においても、各メモリストリングMSのメモリセルトランジスタMT3が、データの消去対象となっており、それ以外のメモリセルトランジスタMTは、データの消去対象外となっている。
【0106】
図8に示されるような電位分布とされた場合にも、消去対象であるメモリセルトランジスタMT3においては、本実施形態の選択メモリセルトランジスタと同様に、チャンネルとゲートとの間に高い電圧(0V-Vera)が印加された状態となる。当該電圧により、選択メモリセルトランジスタではデータが消去される。
【0107】
それ以外のメモリセルトランジスタMTにおいては、本実施形態の隣接メモリセルトランジスタと同様に、チャンネルとゲートとの間に電圧(Vm2-Vera)が印加された状態となる。当該電圧は、メモリセルトランジスタMTにおける閾値電圧のレベルを変化させない程度の小さい電圧であるから、メモリセルトランジスタMTのデータは消去されない。このように、
図8の比較例のような電位分布とした場合であっても、本実施形態と同様のレイヤー消去が可能ではある。
【0108】
ところで、この比較例において、消去対象外のメモリセルトランジスタMTでは、チャンネルとゲートとの間に印加される電圧(Vm2-Vera)が、絶対値において概ね10V程度の電圧となる。当該電圧は、上記のように、メモリセルトランジスタMTにおける閾値電圧のレベルを変化させない程度の小さい電圧である。しかしながら、消去動作が複数回行われ、一部のメモリセルトランジスタMTにおいてこのような電圧の印加が複数回繰り返されると、閾値電圧が低下してしまう場合がある。つまり、消去対象外のメモリセルトランジスタMTにおける閾値電圧が、消去動作の影響を受けて、当初の値よりも低下してしまう場合がある。このような現象は、「消去ディスターブ」とも称される。
【0109】
図9(A)は、
図5の中段にある図と同様に、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧(横軸)と、メモリセルトランジスタMTの個数(縦軸)との対応関係を表している。
【0110】
図9(A)においては、互いに隣り合う閾値電圧分布が僅かに重なり合っている。これは、データの書き込みが行われてから一定の時間が経過し、閾値電圧の分布範囲が変動したことを表している。本出願においては、データの書き込みが行われた後の時間経過にともなう閾値電圧の分布範囲の変動のことを「データリテンション(data retention)」と呼ぶ。つまり、
図5の中段は、データが書き込まれた直後における閾値電圧分布を表しているのに対し、
図9(A)は、データが書き込まれてから一定時間が経過した後における閾値電圧分布を表している。両者を対比すると明らかなように、データリテンションが生じた
図9(A)の状態においては、各レベルにおける閾値電圧の分布幅が、当初の分布幅よりも広がっている。尚、このような閾値電圧分布の変動が生じても、その変動量が僅かであれば、先に述べたECC回路14のエラー訂正が可能であるため、読み出されるデータが変化してしまうことは無い。
【0111】
図9(B)は、消去動作において上記のように10V程度の電圧が繰り返し印加された後における、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布の例である。同図においては、上段の閾値電圧分布が点線で示されている。同図に示されるように、10V程度の電圧が繰り返し印加されると、各レベルの分布する範囲は、いずれも、当初よりも低くなる側へと変化する。上記のデータリテンションに加えて、
図9(A)から
図9(B)に移行するような閾値電圧の変化が生じると、その大きさによっては、ECC回路14のエラー訂正ができなくなってしまう可能性がある。
【0112】
図10には、メモリセルトランジスタMTにおける差分電圧(横軸)と、閾値電圧(縦軸)との関係が示されている。「差分電圧」とは、上記の「Vm2-Vera」のようにメモリセルトランジスタMTのチャンネルとゲートとの間に印加される電圧のことである。
【0113】
図10の線L1は、差分電圧の印加が一定数繰り返された場合における閾値電圧の変化を表している。また、線L2は、差分電圧の印加が、線L1から更に一定数繰り返された場合における閾値電圧の変化を表している。
【0114】
図10に示されるように、差分電圧が比較的小さなV1程度であるときには、差分電圧の印加が繰り返されても、閾値電圧は殆ど低下せず、当初の値であるVtに維持される。一方、差分電圧が比較的大きなV2程度であるときには、閾値電圧はVtから低下する。また、その低下量は、差分電圧の印加が繰り返されるほど大きくなる。
【0115】
このように、消去対象外のメモリセルトランジスタMTに対し、消去動作の度に電圧(Vm2-Vera)が繰り返し印加されると、
図9に示されるような消去ディスターブの影響が大きくなり、各メモリセルトランジスタMTの閾値電圧が変化してしまう。
図8の例においては、ワード線WLの電位がVm2とされる多数のメモリセルトランジスタMTにおいて、消去ディスターブが生じてしまうこととなる。
【0116】
消去ディスターブを防止するためには、消去対象外のメモリセルトランジスタMTにおけるゲートの電位、すなわち、
図8の例におけるVm2を高めの値に設定し、チャンネルとゲートとの間の電位差(つまり、上記の差分電圧)を低減することも考えられる。しかしながら、Vm2を高めの値に設定すると、例えば
図8の例においては、互いに隣り合うワード線WL3とワード線WL2との間における電位差が大きくなり過ぎてしまう。近年では、ワード線WLの間隔が非常に狭くなっているので、一部において耐圧破壊が生じることが懸念される。このため、
図8の例におけるVm2を高めの値に設定することは好ましくない。
【0117】
このように、
図8に示される比較例のような電位分布とする場合には、消去ディスターブの抑制と、ワード線WL間における耐圧破壊の防止と、を両立させることが難しい。
【0118】
そこで、本実施形態においては、消去対象外のメモリセルトランジスタMTにおけるゲートの電位を、
図8のように全て一律にVm2とするのではなく、Vm2及びVm3からなる2種類の電位としている。具体的には、
図6に示されるように、隣接メモリセルトランジスタのゲートの電位をVm2とし、非選択メモリセルトランジスタのゲートの電位をVm3としている。
【0119】
本実施形態では、選択ワード線sWL(WL3)の電位はVm1であり、隣接ワード線nWL(WL2、WL4)の電位はVm2である。従って、これらのワード線WL間の電位差(Vm2-Vm1)は、耐圧破壊しない程度の低い電位差となっている。
【0120】
また、隣接ワード線nWL(WL2、WL4)の電位は上記のようにVm2であり、これと隣り合う非選択ワード線uWL(WL1、WL5)の電位はVm3である。従って、これらのワード線WL間の電位差(Vm3-Vm2)も、6V程度の低い電位差となっている。このため、
図8の比較例における、ワード線WL3とワード線WL2との間のように、一部のワード線WL間の電圧が大きくなり過ぎてしまうことがない。
【0121】
また、
図6の電位分布においては、消去対象外のメモリセルトランジスタMTのうち、多数を占める非選択メモリセルトランジスタにおいて、チャンネルとゲートとの間に印加される電圧(Vm3-Vera)が、絶対値において概ね4V程度の低い電圧となる。当該電圧は、
図10に示される差分電圧V1のように、メモリセルトランジスタMTに複数回繰り返し印加されたとしても、閾値電圧を変化させない程度の低い電圧である。このため、非選択メモリセルトランジスタにおいては、先に述べた消去ディスターブは生じない。
【0122】
一方、隣接メモリセルトランジスタにおいては、チャンネルとゲートとの間に印加される電圧(Vm2-Vera)が、絶対値において概ね10V程度の電圧となるので、消去ディスターブが生じる可能性がある。本実施形態では、消去ディスターブが生じ得る範囲を、比較例よりも少数となる隣接メモリセルトランジスタに絞ることとした上で、次に述べる方法によって消去ディスターブを解消することとしている。
【0123】
図11に示されるフローチャートは、消去動作の実行時において、制御回路であるシーケンサによって実行される一連の処理の流れを示すものである。
【0124】
当該処理の最初のステップであるS01では、選択メモリセルトランジスタ(
図6の例ではメモリセルトランジスタMT3)からデータを消去する処理が行われる。その具体的な方法は、
図6及び
図7を参照しながら先に説明した通りである。S01の処理が完了した時点においては、隣接メモリセルトランジスタの閾値電圧が、消去ディスターブの影響により僅かに低下した状態となっている。
【0125】
S01に続くS02では、データが消去された選択メモリセルトランジスタに対し、新たなデータを書き込む処理が行われる。尚、消去後における新たなデータの書き込みが不要な場合には、S02の処理は省略されてもよい。
【0126】
S02に続くS03では、一方の隣接メモリセルトランジスタ(
図6の例ではメモリセルトランジスタMT2)からデータを読み出す処理が行われる。ここでは、隣接ワード線nWL(
図6の例ではワード線WL2)に繋がる全てのメモリセルトランジスタMTを対象として、記憶されているデータが例えばページ毎に読み出される。
【0127】
尚、隣接メモリセルトランジスタの閾値電圧は、上記のように消去ディスターブの影響により僅かに低下している。このため、隣接メモリセルトランジスタの中には、閾値電圧のレベルが、当初のレベルよりも低いレベルまで低下しているものが存在する可能性がある。しかしながら、消去ディスターブの影響が小さく、そのような隣接メモリセルトランジスタの数が少ない場合には、ECC回路14のエラー訂正によりデータの修正が可能であるから、誤ったデータが読み出されてしまうことは無い。
【0128】
S03に続くS04では、上記の「一方の隣接メモリセルトランジスタ」に対し、S03で読み出されたデータを書き戻す処理が行われる。ここで行われるデータの書き込みは、隣接メモリセルトランジスタからデータを消去することなく、隣接メモリセルトランジスタに繋がる隣接ワード線nWLに電圧を印加することにより行われる。このため、隣接メモリセルトランジスタにおいては、その閾値電圧が僅かに上昇する。これにより、S01において隣接メモリセルトランジスタが受けた消去ディスターブの影響を、キャンセルすることができる。
【0129】
S04で上記のようなデータの書き込みを行うにあたっては、プログラム動作とベリファイ動作とが繰り返されることとしてもよい。これにより、隣接メモリセルトランジスタの閾値電圧を、確実に当初のレベルまで戻すことができる。例えば、隣接メモリセルトランジスタにおける当初の閾値電圧が“A”レベルであった場合には、S04では、当該閾値電圧がベリファイ電圧VfyAを超えたことが確認されるまで、プログラム動作とベリファイ動作とが繰り返されることとすればよい。
【0130】
S04に続くS05では、他方の隣接メモリセルトランジスタ(
図6の例ではメモリセルトランジスタMT4)からデータを読み出す処理が行われる。S03と同様に、隣接ワード線nWL(
図6の例ではワード線WL4)に繋がる全てのメモリセルトランジスタMTを対象として、記憶されているデータが例えばページ毎に読み出される。
【0131】
S05に続くS06では、上記の「他方の隣接メモリセルトランジスタ」に対し、S05で読み出されたデータを書き戻す処理が行われる。ここで行われるデータの書き込みは、S04と同様の方法により行われる。このため、他方の隣接メモリセルトランジスタにおいても、その閾値電圧が僅かに上昇する。これにより、S01において隣接メモリセルトランジスタが受けた消去ディスターブの影響を、キャンセルすることができる。S06においても、S04と同様に、プログラム動作とベリファイ動作とが繰り返されることとしてもよい。
【0132】
以上のように、本実施形態における制御回路であるシーケンサ41は、選択メモリセルトランジスタ(MT3)のゲートに繋がるワード線(WL3)の電位をVm1とし、隣接メモリセルトランジスタ(MT2、MT4)のゲートに繋がるワード線(WL2、WL4)の電位を、Vm1よりも高いVm2とし、非選択メモリセルトランジスタ(MT0~MT1、MT5~MT7)のゲートに繋がるワード線(WL0~WL1、WL5~WL7)の電位を、Vm2よりも高いVm3とする。Vm1は、本実施形態における「第1電位」に該当する。Vm2は、本実施形態における「第2電位」に該当する。Vm3は、本実施形態における「第3電位」に該当する。このような電位分布とすることで、特定のレイヤーにあるメモリセルトランジスタMTのみを対象として、データの選択消去を行うことができる。
【0133】
上記の電位分布においては、消去対象外のメモリセルトランジスタMTにおけるゲートの電位が、全て一律の電位となるのではなく、第2電位及び第3電位からなる2種類の電位となる。これにより、消去ディスターブの解消と、ワード線WL間における耐圧破壊の防止と、を両立させることができる。
【0134】
消去動作において、シーケンサ41は、S01において選択メモリセルトランジスタからデータを消去した後に、S04、S06において、隣接メモリセルトランジスタに対しデータを書き込みなおす処理を行う。S04、S06において行われる当該処理は、本実施形態における「事後書き込み処理」に該当する。
【0135】
本実施形態では、事後書き込み処理が行われることで、S01において隣接メモリセルトランジスタが受けた消去ディスターブの影響を、キャンセルすることができる。尚、仮に、
図8の比較例のように、消去対象外のメモリセルトランジスタMTにおけるゲートの電位を、全て一律にVm2とした場合には、当該メモリセルトランジスタMTの全てに対して事後書き込み処理を行う必要がある。しかしながら、その場合には、対象となるメモリセルトランジスタMTの数が膨大となるため、事後書き込み処理に長時間を要してしまうこととなる。これに対し、本実施形態では、消去ディスターブの生じ得る範囲が隣接メモリセルトランジスタのみとなるよう限定されるので、事後書き込み処理の対象を絞ることができ、事後書き込み処理に要する時間を短くすることができる。
【0136】
第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0137】
図12に示される一連の処理は、本実施形態のシーケンサ41により、
図11の処理に替えて実行されるものである。
【0138】
当該処理の最初のステップであるS11では、データの消去に先立って、一方の隣接メモリセルトランジスタ(
図6の例ではメモリセルトランジスタMT2)からデータを読み出す処理が行われる。ここでは、隣接ワード線nWL(
図6の例ではワード線WL2)に繋がる全てのメモリセルトランジスタMTを対象として、記憶されているデータが例えばページ毎に読み出される。
【0139】
S11に続くS12では、他方の隣接メモリセルトランジスタ(
図6の例ではメモリセルトランジスタMT4)からデータを読み出す処理が行われる。ここでもS11と同様に、隣接ワード線nWL(
図6の例ではワード線WL4)に繋がる全てのメモリセルトランジスタMTを対象として、記憶されているデータが例えばページ毎に読み出される。
【0140】
S12に続くS13では、S11、S12で読み出されたそれぞれのデータを、外部のメモリコントローラ1に送信して記憶させる処理が行われる。メモリコントローラ1は、半導体記憶装置2から送信された上記データを、RAM11に記憶する。尚、S13の処理は、S11の処理が実行された後、及び、S12の処理が実行された後のタイミングにおいて、都度実行されることとしてもよい。
【0141】
このように、本実施形態のシーケンサ41は、選択メモリセルトランジスタからデータを消去する前に、S11、S12において、隣接メモリセルトランジスタに記憶されていたデータを読み出す処理を行う。S11、S12において行われる当該処理は、本実施形態における「事前読み出し処理」に該当する。
【0142】
また、シーケンサ41は、外部のメモリコントローラ1が有するRAM11を、事前読み出し処理により得られたデータを一時的に保管するための記憶装置として利用する。尚、例えばメモリセルアレイ110の一部に、データの一時的な保管領域を確保し得る場合には、当該領域に、事前読み出し処理により得られたデータを一時的に保管することとしてもよい。
【0143】
S13に続くS14では、
図11のS01と同様に、選択メモリセルトランジスタ(
図6の例ではメモリセルトランジスタMT3)からデータを消去する処理が行われる。また、S14に続くS15では、
図11のS02と同様に、データが消去された選択メモリセルトランジスタに対し、新たなデータを書き込む処理が行われる。S14、S15の処理が完了した時点では、隣接メモリセルトランジスタの閾値電圧が、消去ディスターブの影響により僅かに低下した状態となっている。
【0144】
S15に続くS16では、S13においてメモリコントローラ1のRAM11に記憶させていたデータを、メモリコントローラ1から受信する処理が行われる。これにより、S11、S12の事前読み出し処理により得られていたデータが取得される。
【0145】
S16に続くS17では、上記の「一方の隣接メモリセルトランジスタ」に対し、S11の事前読み出し処理で得られていたデータを書き戻す処理が行われる。ここで行われるデータの書き込みは、隣接メモリセルトランジスタからデータを消去することなく、隣接メモリセルトランジスタに繋がる隣接ワード線nWLに電圧を印加することにより行われる。S17においては、プログラム動作とベリファイ動作とが繰り返される。これにより、上記の隣接メモリセルトランジスタの閾値電圧は、当初のデータ(つまり、事前読み出し処理で得られていたデータ)に対応したレベルの閾値電圧とされる。
【0146】
S17に続くS18では、上記の「他方の隣接メモリセルトランジスタ」に対し、S12の事前読み出し処理で得られていたデータを書き戻す処理が行われる。ここで行われるデータの書き込みは、S17と同様の方法により行われる。これにより、上記の隣接メモリセルトランジスタの閾値電圧も、当初のデータ(つまり、事前読み出し処理で得られていたデータ)に対応したレベルの閾値電圧とされる。
【0147】
S17、S18で行われる処理は、
図11のS04、S06で行われる処理と同様の処理であり、本実施形態における「事後書き込み処理」に該当する。ただし、本実施形態の事後書き込み処理において、一方の隣接メモリセルトランジスタに書き込まれるデータは、消去ディスターブの影響を受ける前において、S11の事前読み出し処理であらかじめ読み出されていたデータである。また、他方の隣接メモリセルトランジスタに書き込まれるデータは、消去ディスターブの影響を受ける前において、S12の事前読み出し処理であらかじめ読み出されていたデータである。
【0148】
このように、本実施形態のシーケンサ41は、事後書き込み処理において、事前読み出し処理で読み出されたデータを隣接メモリセルトランジスタに書き込みなおす処理を行う。従って、消去ディスターブの影響が比較的大きくなるような特性をメモリセルトランジスタMTが有していた場合であっても、本実施形態の方法によれば、隣接メモリセルトランジスタのデータが変化してしまうことがない。
【0149】
第1実施形態の方法(
図11)、及び本実施形態の方法(
図12)は、メモリセルトランジスタMTの特性に応じて、いずれか一方の方法を採用すればよい。例えば、メモリセルトランジスタMTが、消去ディスターブの影響を受けにくい特性を有している場合には、第1実施形態の方法を採用すればよい。メモリセルトランジスタMTが、消去ディスターブの影響を受けやすい特性を有している場合には、本実施形態の方法を採用すればよい。
【0150】
ところで、事後書き込み処理は、例えば本実施形態におけるS15の前のように、選択メモリセルトランジスタに対し新たなデータが書き込まれるよりも前のタイミング、に実行されることとしてもよいように思われる。
【0151】
しかしながら、選択メモリセルトランジスタに対し新たなデータが書き込まれる際には、選択メモリセルトランジスタの閾値電圧は大きく変化する。このため、隣接メモリセルトランジスタが隣接セル間干渉の影響を受けてしまい、隣接メモリセルトランジスタの閾値電圧も変化してしまう可能性がある。つまり、事後書き込み処理が行われ適切となったはずの閾値電圧が、選択メモリセルトランジスタへのデータの書き込みに伴って、再度変動してしまう可能性がある。
【0152】
一方、本実施形態や第1実施形態のように、事後書き込み処理が、選択メモリセルトランジスタに対し新たなデータが書き込まれた後のタイミング、に実行された場合には、隣接メモリセルトランジスタの閾値電圧が、上記のような隣接セル間干渉の影響を受けることがない。このため、隣接メモリセルトランジスタの閾値電圧は変動しない。
【0153】
ただし、選択メモリセルトランジスタの閾値電圧が、事後書き込み処理に伴う隣接セル間干渉の影響を受ける可能性はある。しかしながら、事後書き込み処理においては、消去ディスターブで変動した分を元に戻す程度、にしか閾値電圧が変動しないので、選択メモリセルトランジスタに対する隣接セル間干渉の影響は無視できるほど小さくなる。
【0154】
以上のようであるから、事後書き込み処理は、本実施形態や第1実施形態のように、選択メモリセルトランジスタに対し新たなデータが書き込まれた後のタイミング、に実行されることが好ましい。
【0155】
第3実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0156】
図13(A)は、データの書き込みが行われてから一定の時間が経過した後における、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧(横軸)と、メモリセルトランジスタMTの個数(縦軸)との対応関係を表している。
図9(A)を参照しながら説明したように、データの書き込みが行われてから一定の時間が経過すると、所謂データリテンションにより、各レベルにおける閾値電圧の分布幅が、当初の分布幅よりも広がった状態となる。このため、例えば“A”レベルの分布幅と、“B”レベルの分布幅とが、一部において互いに重なった状態となることがある。
【0157】
この状態で、選択メモリセルトランジスタからのデータの選択消去が行われ、隣接メモリセルトランジスタの閾値電圧が消去ディスターブの影響で更に変動すると、その変動幅によっては、ECC回路14のエラー訂正が可能な範囲を超えてしまう可能性がある。その結果、例えば
図11のS04やS06における事後書き込み処理が、正しく行われない場合も生じ得る。
【0158】
そこで、本実施形態におけるシーケンサ41は、選択メモリセルトランジスタからデータを消去する前に、隣接メモリセルトランジスタに対し、データを書き込みなおす処理を行うように構成されている。このようにデータが書き込みなおされた直後においては、閾値電圧の分布は、
図9(A)に示される分布から、
図9(B)に示される分布となるように変化する。
図9(B)に示される閾値電圧の分布は、
図5の中段に示される分布と同じものである。当該分布においては、例えば“A”レベルに属するメモリセルトランジスタMTの閾値電圧は、全て、ベリファイ電圧VfyAよりも高くなる。その他のレベルについても同様である。
【0159】
その後、選択メモリセルトランジスタからのデータの選択消去が行われると、隣接メモリセルトランジスタの閾値電圧が消去ディスターブの影響で変動する。その結果、各レベルにおける閾値電圧の分布幅は、
図13(B)の状態から再び広がって、
図13(C)に示されるような分布幅となる。
【0160】
しかしながら、
図13(A)の状態から、そのまま選択メモリセルトランジスタからデータを消去した場合に比べると、
図13(C)に示される各レベルの分布幅を小さく抑えることができる。その結果、閾値電圧の変動が、ECC回路14のエラー訂正が可能な範囲に収められる。これにより、例えば
図11のS04やS06における事後書き込み処理を、正確に実行することが可能となる。
【0161】
本実施形態において実行される処理の流れについて、
図14を参照しながら説明する。
図14に示される一連の処理は、本実施形態のシーケンサ41により、
図11の処理に替えて実行されるものである。
【0162】
当該処理の最初のステップであるS21では、データの消去に先立って、一方の隣接メモリセルトランジスタ(
図6の例ではメモリセルトランジスタMT2)からデータを読み出す処理が行われる。当該処理は、
図12のS11における事前読み出し処理と同様に行われる。
【0163】
S21に続くS22では、上記の「一方の隣接メモリセルトランジスタ」に対し、S21で読み出されたデータを書き戻す処理が行われる。当該処理は、
図12のS17における事後書き込み処理と同様に行われる。ただし、S22の処理は、後のデータ消去(S14)よりも前に行われる処理であるから、当該処理のことを以下では「事前書き込み処理」とも称する。事前書き込み処理が行われることで、上記の隣接メモリセルトランジスタの閾値電圧は、当初のデータに対応したレベルの閾値電圧とされる。具体的には、当初のデータに対応したレベルのベリファイ電圧よりも高い値とされる。その結果、当該レベルにおける閾値電圧の分布幅は小さくなり、例えば
図13(A)から
図13(B)へと変化する。このように、事前書き込み処理は、先に述べた「選択メモリセルトランジスタからデータを消去する前に、隣接メモリセルトランジスタに対し、データを書き込みなおす処理」に該当する。
【0164】
S22に続くS23では、他方の隣接メモリセルトランジスタ(
図6の例ではメモリセルトランジスタMT4)からデータを読み出す処理が行われる。当該処理は、
図12のS12における事前読み出し処理と同様に行われる。
【0165】
S23に続くS24では、上記の「他方の隣接メモリセルトランジスタ」に対し、S23で読み出されたデータを書き戻す処理が行われる。つまり、他方の隣接メモリセルトランジスタに対しても、S22と同様の事前書き込み処理が行われる。これにより、消去ディスターブの影響を受ける一対の隣接メモリセルトランジスタのそれぞれについて、事前書き込み処理が行われ、その結果として閾値電圧の分布幅が
図13(B)のように小さくされる。
【0166】
S24に続き、S25~S30において実行される各処理は、それぞれ、
図11のS01~S06において実行される各処理と同じである。本実施形態では、S25における選択メモリセルトランジスタからのデータの消去に先立って、S22,S24において隣接メモリセルトランジスタへの事前書き込み処理が行われ、これにより、閾値電圧の分布幅が予め小さくされる。このため、後のS28やS30における事後書き込み処理を、正確に実行することが可能となる。
【0167】
第4実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0168】
本実施形態では、データの消去が、特定のワード線WLに繋がっているレイヤー全体に対して行われるのではなく、特定のワード線WLに繋がっているレイヤーのうち、特定のストリングユニットSUに属するものに対してのみ行われる。換言すれば、本実施形態におけるシーケンサ41は、特定のワード線WLに繋がっている複数のメモリセルトランジスタMTのうち、特定のページに対応するもののみが選択メモリセルトランジスタとなるように消去動作を行う。このため、本実施形態の消去動作は「ページ消去」ともいうことができる。尚、上記における「特定のワード線WL」とは、1本のワード線WLでもよいが、複数のワード線WLでもよい。
【0169】
図15には、ページ消去が行われる際における各部の電位分布が、
図6と同様の方法で示されている。
【0170】
図15の例では、ワード線WL3に繋がっているメモリセルトランジスタMTのうち、ストリングユニットSU0に属するものが消去対象とされている。
図15では、消去対象のメモリセルトランジスタMTが一点鎖線で囲まれている。消去対象のメモリセルトランジスタMTには、
図15において紙面奥行き方向に並んでいるその他の(1ページ分の)メモリセルトランジスタMTも含まれる。
【0171】
図15の例では、ストリングユニットSU0に属する複数のメモリセルトランジスタMTのうち、各メモリストリングMSのメモリセルトランジスタMT3が、「選択メモリセルトランジスタ」に該当する。また、各メモリストリングMSのメモリセルトランジスタMT2及びメモリセルトランジスタMT4が、「隣接メモリセルトランジスタ」に該当し、各メモリストリングMSのメモリセルトランジスタMT0~MT1、MT5~MT7が、「非選択メモリセルトランジスタ」に該当する。
【0172】
図15に示されるように、ページ消去が行われる際においても、
図6のレイヤー消去の場合と同様に、ビット線BL及びソース線SLの電位が、いずれもVeraとされる。
【0173】
本実施形態では、セレクトゲート線SGDの電位が、VsgではなくVeraとされる。その結果、各メモリストリングMSの選択トランジスタST2では、ソース線SLとゲートとが同電位となるので、GIDLが発生せず、ソース線SLからのホールが通過することもない。つまり、各メモリストリングMSの選択トランジスタST2では、ホールの移動についてカットオフされた状態となる。
【0174】
消去対象のメモリセルトランジスタMTを含むストリングユニットSU0では、セレクトゲート線SGD0の電位が、第1実施形態と同様にVsgとされる。一方、消去対象のメモリセルトランジスタMTを含まないストリングユニットSU1では、セレクトゲート線SGD1の電位がVeraとされる。
図15においては不図示のその他のストリングユニットSUについても同様である。
【0175】
メモリストリングMS0の選択トランジスタST1においては、VeraとVsgとの電位差に基づいてGIDLが生じ、生成されたホールによってメモリストリングMS0のチャンネルが充電される。その結果、メモリストリングMS0においては、チャンネルの電位がVeraまで上昇している。ストリングユニットSU0に含まれるその他のメモリストリングMSについても同様である。
【0176】
一方、メモリストリングMS1の選択トランジスタST1においては、ビット線BLとゲートとが同電位となるので、GIDLが発生しない。つまり、メモリストリングMS1の選択トランジスタST1では、ホールの移動についてカットオフされた状態となる。メモリストリングMS1のチャンネルは、選択トランジスタST1、ST2の両方がカットオフされた状態となるので、その電位がVeraとはならない。後に説明する方法により、当該チャンネルの電位は、Veraよりも低いVm2とされる。ストリングユニットSU1に含まれるその他のメモリストリングMSについても同様である。更に、
図15においては不図示のその他のストリングユニットSUについても同様である。
【0177】
本実施形態でも、選択メモリセルトランジスタ(MT3)のゲートに繋がるワード線WL(WL3)の電位はVm1とされる。また、隣接メモリセルトランジスタ(MT2、MT4)のゲートに繋がるワード線WL(WL2、WL4)の電位はVm2とされ、非選択メモリセルトランジスタ(MT0~MT1、MT5~MT7)のゲートに繋がるワード線WL(WL0~WL1、WL5~WL7)の電位はVm3とされる。
【0178】
消去対象のメモリセルトランジスタMTを含むメモリストリングMS0では、各メモリセルトランジスタMTにおけるゲート-チャンネル間の電位差が、第1実施形態(
図6)の場合と同じになる。このため、選択メモリセルトランジスタ(MT3)のデータは消去される一方で、隣接メモリセルトランジスタ(MT2、MT4)及び非選択メモリセルトランジスタ(MT0~MT1、MT5~MT7)のデータは消去されない。ストリングユニットSU0に含まれる、その他のメモリストリングMSにおいても同様である。
【0179】
消去対象のメモリセルトランジスタMTを含まないメモリストリングMS1では、上記のように、チャンネルの電位がVm2となる。メモリストリングMS1のメモリセルトランジスタMT3においては、チャンネルとゲートとの間に電圧(Vm2-Vera)が印加された状態となる。当該電圧は、閾値電圧のレベルを変化させない程度の小さい電圧であるから、このメモリストリングMS3のデータは消去されない。
【0180】
また、メモリストリングMS1のメモリセルトランジスタMT2、MT4においては、チャンネルとゲートとの間の電圧は0V(Vm2-Vm2)となる。このため、これらのメモリセルトランジスタMT2、MT4のデータは消去されない。
【0181】
更に、メモリストリングMS1のメモリセルトランジスタMT0~MT1、MT5~MT7においては、チャンネルとゲートとの間に電圧(Vm3-Vera)が印加された状態となる。当該電圧は、閾値電圧のレベルを変化させない程度の小さい電圧であるから、これらのメモリセルトランジスタMT0~MT1、MT5~MT7のデータは消去されない。
【0182】
以上のように、消去対象のメモリセルトランジスタMTを含まないメモリストリングMS1では、いずれのメモリセルトランジスタMTのデータも消去されない。ストリングユニットSU1に含まれるその他のメモリストリングMSについても同様である。更に、
図15においては不図示のその他のストリングユニットSUについても同様である。
【0183】
このように、
図15に示される電位分布においては、ストリングユニットSU0に含まれる選択メモリセルトランジスタを対象として、1ページ分のデータが消去される。一方、それ以外のメモリセルトランジスタMTのデータは消去されない。
【0184】
図16には、各部の電位を
図15に示される状態とするための、タイムチャートの一例が、
図7と同様の方法で示されている。以下においても、
図7の説明と同様に、「選択ワード線sWL」、「隣接ワード線nWL」、「非選択ワード線uWL」、「ch_MS0」、及び「ch_MS1」等の語を用いる。
【0185】
消去動作が開始される時刻t1よりも前の期間において、シーケンサ41は、各ビット線BLや各ワード線WL、及びソース線SLの電位をそれぞれ例えば0Vとしておく。
【0186】
時刻t1において、シーケンサ41は、隣接ワード線nWL、非選択ワード線uWL、セレクトゲート線SGD0、SGD1、SGSの電位を、いずれもVonまで上昇させる。Vonは、各トランジスタをオン状態とする電位であって、例えば6Vである。Vonは、Vm3-Vm2(この例では、16V-10V)の大きさとしておくことが好ましい。
【0187】
時刻t1以降は、選択トランジスタST1、ST2がいずれもオン状態となる。このため、全てのメモリストリングMSにおいて、ch_MS0やch_MS1の電位は、ビット線BLやソース線SLと同じ電位、すなわち0Vに固定される。
【0188】
時刻t1の後の時刻t2において、シーケンサ41は、セレクトゲート線SGD0、SGD1、SGSの電位を、いずれも例えば0Vとする。これにより、選択トランジスタST1、ST2がいずれもオフ状態となり、ch_MS0やch_MS1はフローティングの状態となる。
【0189】
時刻t2の後の時刻t3において、シーケンサ41は、ビット線BL、ソース線SL、セレクトゲート線SGD0、SGD1、SGSの電位を、いずれもVsgまで上昇させる。このとき、全てのメモリストリングMSにおいて、選択トランジスタST1、ST2はいずれもオフ状態のままとなっており、ch_MS0やch_MS1はフローティングの状態のままとなっている。
【0190】
シーケンサ41は、隣接ワード線nWLの電位をVm2まで上昇させ、非選択ワード線uWLの電位をVm3まで上昇させる。その際、多数を占める非選択ワード線uWLの電位は、VonからVm3まで上昇する。その変化量は(Vm3-V0n)、すなわちVm2である。これに伴い、ch_MS0やch_MS1の電位は、容量カップリングによってVm2まで上昇する。
【0191】
この時点において、選択トランジスタST1では、ビット線BLとゲートとが同電位となっているので、GIDLが発生しない。また、選択トランジスタST2でも、ソース線SLとゲートとが同電位となっているので、GIDLが発生しない。また、ソース線SLからのホールが通過することもない。
【0192】
時刻t3の後の時刻t4において、シーケンサ41は、セレクトゲート線SGD1、SGS、ビット線BL、及びソース線SLの電位を、いずれもVeraまで上昇させる。
【0193】
メモリストリングMS0の選択トランジスタST1においては、VeraとVsgとの電位差に基づいてGIDLが生じ、生成されたホールによってメモリストリングMS0のチャンネルが充電される。その結果、メモリストリングMS0においては、ch_MS0の電位がVeraまで上昇する。ストリングユニットSU0に含まれるその他のメモリストリングMSについても同様である。
【0194】
一方、メモリストリングMS1の選択トランジスタST1においては、ビット線BLとゲートとが同電位となるので、GIDLが発生しない。このため、ch_MS1の電位はVm2のままで維持される。ストリングユニットSU1に含まれるその他のメモリストリングMSについても同様である。更に、
図15においては不図示のその他のストリングユニットSUについても同様である。
【0195】
以上のような方法により、
図15に示される電位分布が実現され、選択メモリセルトランジスタのデータが選択消去される。選択消去が完了すると、時刻t4の後の時刻t5において、各部の電位が例えば0Vに戻される。
【0196】
本実施形態のようにページ消去が行われる場合にも、隣接メモリセルトランジスタでは、消去ディスターブの影響により閾値電圧が僅かに低下する。このため、本実施形態でも、第1実施形態(
図11)と同様の方法で、隣接メモリセルトランジスタに対する事後書き込み処理が行われる。これにより、隣接メモリセルトランジスタの閾値電圧が、概ね元の値に戻される。ページ消去の前に、第2実施形態(
図12)と同様の方法で事前読み出し処理が行われてもよい。また、ページ消去の前に、第3実施形態(
図14)と同様の方法で事前書き込み処理が行われてもよい。
【0197】
本実施形態では、選択ワード線sWLであるワード線WL3に繋がっているメモリセルトランジスタMTのうち、ストリングユニットSU0に属しないもの(例えば、メモリストリングMS1のメモリセルトランジスタMT3)は、データ消去の対象外とされる。しかしながら、そのようなメモリセルトランジスタMTに対しても、本実施形態では(Vm2-Vm1)程度の電圧が印加されることとなるので、隣接メモリセルトランジスタと同様に消去ディスターブの影響を受けて、その閾値電圧が変化してしまう可能性がある。そこで、本実施形態のようにページ消去が行われた後は、選択ワード線sWLに繋がっているメモリセルトランジスタMTのうち、消去対象ではないもの(ストリングユニットSU0に属しないもの)のそれぞれに対しても、隣接メモリセルトランジスタと同様に事後書き込み処理が行われることが好ましい。
【0198】
第5実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0199】
本実施形態の消去動作では、第1実施形態と同様に、特定のワード線WLに繋がっているレイヤー全体に対してデータの消去が行われる。ただし、本実施形態におけるレイヤー消去では、上記の「特定のワード線WL」が1本ではなく複数本となっている。
図17には、本実施形態の消去動作時における各部の電位分布が示されている。
【0200】
図17の例では、ワード線WL3、WL4に繋がっている全てのメモリセルトランジスタMTが消去対象とされている。
図17では、消去対象のメモリセルトランジスタMTが一点鎖線で囲まれている。消去対象のメモリセルトランジスタMTには、図示されていないストリングユニットSU2、SU3に属するものや、
図17において紙面奥行き方向に並んでいるその他のメモリセルトランジスタMT3、MT4も含まれる。
【0201】
ワード線WL3、WL4が、本実施形態における選択ワード線sWLに該当する。この場合、これらと隣り合うワード線WL2、WL5が隣接ワード線nWLに該当し、ワード線WL0~WL1、WL6~WL7が非選択ワード線uWLに該当する。本実施形態でも、これまでの各実施形態と同様に、消去動作時においては選択ワード線sWLの電位がVm1とされ、隣接ワード線nWLの電位がVm2とされ、非選択ワード線uWLの電位がVm3とされる。
【0202】
尚、第4実施形態のようなページ消去が行われる場合にも、本実施形態と同様に、複数のワード線WLを選択ワード線sWLとすることができる。
【0203】
複数のワード線WLを選択ワード線sWLとしてデータの消去が行われる場合にも、これまでの各実施形態と同様に、隣接メモリセルトランジスタでは、消去ディスターブの影響により閾値電圧が僅かに低下する。このため、第1実施形態(
図11)と同様の方法で、隣接メモリセルトランジスタに対する事後書き込み処理を行うこととすればよい。これにより、隣接メモリセルトランジスタの閾値電圧が、概ね元の値に戻される。データ消去の前に、第2実施形態(
図12)と同様の方法で事前読み出し処理が行われてもよい。また、データ消去の前に、第3実施形態(
図14)と同様の方法で事前書き込み処理が行われてもよい。
【0204】
第6実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0205】
本実施形態では、メモリセルアレイ110の構成において第1実施形態と異なっている。本実施形態におけるメモリセルアレイ110の構成について、
図18及び
図19を参照しながら説明する。
図18には、メモリセルアレイ110のうち、2本のメモリピラーMPと、それぞれのメモリピラーMPの周囲に配置されたワード線WLとが、模式的な斜視図として示されている。メモリピラーMPやワード線WLの周囲には絶縁層が配置されているのであるが、
図18においては図示が省略されている。
【0206】
図19には、メモリピラーMPをその長手方向に沿って切断した場合の断面が示されている。同図に示されるように、メモリピラーMPは、絶縁層430と、半導体層431と、複数の絶縁層432乃至434を含んでいる。絶縁層430は、例えばシリコン酸化膜である。半導体層431は、絶縁層430の周囲を取り囲むようにして設けられ、メモリセルトランジスタMTのチャネルが形成される領域として機能する。半導体層431は、例えば多結晶シリコン層である。絶縁層432は、半導体層431の周囲を取り囲むようにして設けられ、メモリセルトランジスタMTのゲート絶縁膜として機能する。絶縁層432は、例えばシリコン酸化膜とシリコン窒化膜の積層構造を有している。絶縁層433は、絶縁層432の周囲を取り囲むようにして設けられ、メモリセルトランジスタMTの電荷蓄積層として機能する。絶縁層433は、例えばシリコン窒化膜である。絶縁層434は、絶縁層433の周囲を取り囲むようにして設けられ、メモリセルトランジスタMTのブロック絶縁膜として機能する。絶縁層434は、例えばシリコン酸化膜である。
【0207】
上記構成のメモリピラーMPの周囲には、例えばAlO層435が設けられる。AlO層435の周囲に、例えばTiN膜等からなるバリアメタル層436が形成される。バリアメタル層436の周囲に、ワード線WLとして機能する導電層が設けられる。
【0208】
図18及び
図19に示されるように、それぞれのワード線WLには、メモリピラーMPと交差する部分にスリットSLTが形成されている。ワード線WLは、当該スリットSLTによって分割されている。スリットSLTの内側には絶縁層437が設けられている。
【0209】
本実施形態でも、メモリピラーMPのうちワード線WLと交差する部分が、メモリセルトランジスタMTとして機能する。ただし、本実施形態では、上記のようにメモリセルトランジスタMTが、スリットSLTによって分割されている。このため、
図19に示されるように、メモリピラーMPのうちワード線WLと交差する部分には、スリットSLTを挟んで2つのメモリセルトランジスタMTが形成されている。これにより、本実施形態では、第1実施形態の2倍の密度でメモリセルトランジスタMTが配置されている。
【0210】
このような構成においても、以上の各実施形態と同様の消去動作を行うことで、これまでに説明した各実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0211】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0212】
2:半導体記憶装置、110:メモリセルアレイ、41:シーケンサ、MT:メモリセルトランジスタ、MS:メモリストリング、WL:ワード線。