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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144410
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ショーツ
(51)【国際特許分類】
   A41B 9/04 20060101AFI20220926BHJP
   A61F 13/74 20060101ALI20220926BHJP
   A61F 13/72 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
A41B9/04 C
A61F13/74
A61F13/72 100
A41B9/04 E
A41B9/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045407
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】倉田 承江
(72)【発明者】
【氏名】柏原 佑美
【テーマコード(参考)】
3B128
3B200
【Fターム(参考)】
3B128EA02
3B128EB15
3B128EB16
3B128EC12
3B200AA01
3B200AA03
3B200CB03
3B200CB11
(57)【要約】
【課題】少なからぬ尿漏れが生じた場合でも、ショーツ本体の外側に漏れ難く、着用時の美観を損なうことなく、良好な着用感が得られるショーツを提供する。
【解決手段】ショーツ本体2と、前記ショーツ本体2のクロッチ部5に配した当て布8と、を備え、前記当て布8により吸水パッドを支持可能なショーツであって、前記当て布8の前後長手方向に沿う中間領域8Mが前記ショーツ本体2から遊離可能な状態で、前記当て布8の前端縁部8Fと後端縁部8Bが前記ショーツ本体2に接合されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショーツ本体と、前記ショーツ本体のクロッチ部に配した当て布と、を備え、前記当て布により吸水パッドを支持可能なショーツであって、
前記当て布の前後長手方向に沿う中間領域が前記ショーツ本体から遊離可能な状態で、前記当て布の前端縁部と後端縁部が前記ショーツ本体に接合されているショーツ。
【請求項2】
前記当て布は、前記中間領域の少なくとも一部が前記ショーツ本体から浮いた状態となるように前記ショーツ本体に接合されている請求項1記載のショーツ。
【請求項3】
前記中間領域のうち、前記当て布の左右幅方向の中央部に開孔が形成されている請求項1または2記載のショーツ。
【請求項4】
前記当て布は長手方向の中心線Cに対して線対称に形成され、前記中心線C上において、前記前端縁部と前記後端縁部との間の長さをL1、前記ショーツ本体における前記前端縁部の接合部と前記後端縁部の接合部との間の長さをL2としたときに、0.90≦(L1/L2)≦0.96の範囲に設定されている請求項1から3の何れかに記載のショーツ。
【請求項5】
前記当て布の前記前端縁部と前記後端縁部の左右何れか一方の測端部間の長さをL3、前記ショーツ本体における前記前端縁部と前記後端縁部の各接合部の左右何れか一方の測端部間の長さをL4としたときに、(L3/L4)<(L1/L2)に設定されている請求項4記載のショーツ。
【請求項6】
前記当て布は、裁断部のヘム処理または縁かがりが不要な解れ止め加工された伸縮性生地で構成されている請求項1から5の何れかに記載のショーツ。
【請求項7】
前記ショーツ本体は、裁断部のヘム処理または縁かがりが不要な解れ止め加工された伸縮性生地で構成されている請求項1から6の何れかに記載のショーツ。
【請求項8】
前記伸縮性生地は、綿を20%以上含む綿混生地で構成されている請求項6または7記載のショーツ。
【請求項9】
前記ショーツ本体の反肌側面に撥水層が形成されている請求項1から8の何れかに記載のショーツ。
【請求項10】
前記当て布は、肌側に位置する第1の当て布と反肌側に位置する第2の当て布の2枚で構成され、前後長手方向に長さを異ならせている請求項1から9の何れかに記載のショーツ。
【請求項11】
前記第1の当て布の反肌側面に撥水層が形成され、前記第2の当て布の反肌側面に撥水層が形成されている請求項10記載のショーツ。
【請求項12】
前記第1の当て布のコース方向と前記第2の当て布のコース方向とが交差するように配置されている請求項10または請求項11記載のショーツ。
【請求項13】
前記第1の当て布は前記第2の当て布よりも前後長手方向の長さが長く、前記第2の当て布は前記第1の当て布に接着剤で接合され、前記第1の当て布は前記ショーツ本体に接合されている請求項10から12の何れかに記載のショーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショーツ本体と、前記ショーツ本体のクロッチ部に配した当て布と、を備え、前記当て布により吸水パッドを支持可能なショーツに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、着用者の体液が外部に漏れるのを抑えるパッドが縫着又は装着可能なクロッチ部を備えた下着で、パッドからの漏れが生じた場合であっても、着用時の不快感を抑えることができる下着が提案されている。
【0003】
当該下着のクロッチ部は、パッドの縫着面又は装着面を有する吸収性の肌側布と、肌側布に対して縫着面又は装着面の反対側に配置された撥水性及び防水性の少なくとも一方を有する裏当布と、肌側布の脇縁部及び裏当布の脇縁部に沿って配置された撥水性及び防水性の少なくとも一方を有する第1の脇布と、を備え、裏当布の脇縁部は、肌側布の脇縁部から張り出す張出部分を有し、第1の脇布は、張出部分よりも広い幅を有し、第1の脇布の脇縁部が折り返された状態で肌側布の脇縁部に縫着されることにより、縫着面又は装着面に対して隆起する隆起部が形成されている。
【0004】
当該下着では、パッドからの伝い漏れや飛び跳ねが発生した場合であっても、漏れたり飛び跳ねたりした体液が隆起部によって堰き止められて吸水性の肌側布側に戻されるので、外衣が汚れることを防止でき、着用者の不快感を抑えることが可能となる。また、第1の脇布の隆起部が着用時の姿勢によって横倒れした場合には、隆起部が潰れる分だけ幅方向に広がり、肌側布の脇縁部の防水・撥水領域が広がるので、漏れた体液の堰き止め効果が担保される旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-261135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されたような従来のショーツは、クロッチ部に配した裏当て布や肌側布の全周が縫製によりショーツ本体に接合されているため、縫製の針穴と縫製糸を伝ってパッドから漏れる尿が染み出し、ショーツの外まで漏れることがあった。
【0007】
また、ショーツ本体の脚刳り部は解れ止めのために生地を折り返して縫製しているため、裏当て布や肌側布と同様に縫製箇所から尿が染み出す虞があった。
【0008】
さらに、脚刳り部では重なった生地の厚みによって脚部の締め付けが大きく、ショーツの通気性、透湿性が悪くなるため、ムレによる不快感を生起するという問題もあった。
【0009】
本発明の目的は、上述した問題に鑑み、少なからぬ尿漏れが生じた場合でも、ショーツ本体の外側に漏れ難く、着用時の美観を損なうことなく、良好な着用感が得られるショーツを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明によるショーツの第一の特徴構成は、ショーツ本体と、前記ショーツ本体のクロッチ部に配した当て布と、を備え、前記当て布により吸水パッドを支持可能なショーツであって、前記当て布の前後長手方向に沿う中間領域が前記ショーツ本体から遊離可能な状態で、前記当て布の前端縁部と後端縁部が前記ショーツ本体に接合されている点にある。
【0011】
当て布の前端縁部と後端縁部がショーツ本体に接合された状態で、吸水パッドを支持する当て布の前後長手方向に沿う中間領域がショーツ本体から遊離可能になるため、当て布の左右縁部が吸水パッドの左右縁部を覆うような状態となり、吸水パッドから尿が伝い漏れし、或いは飛び跳ねても、当て布の前後長手方向に沿う中間領域がショーツ本体に縫着されていないので、当て布で受け止められた尿が縫い目を介して直ちにショーツ本体に伝わるようなことが無く、ショーツ本体への浸潤が効果的に抑制される。また脚刳り部の伸びが抑制されないため、脚部にフィットしやすく、着用感に優れる。
【0012】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記当て布は、前記中間領域の少なくとも一部が前記ショーツ本体から浮いた状態となるように前記ショーツ本体に接合されている点にある。
【0013】
非着用状態では、クロッチ部で当て布がショーツ本体からハンモックのように浮いた状態となって、吸水パッドが専ら当て布によって支持される。その結果、着用状態では、ショーツ本体よりも大きく伸長することで大きな収縮力を持つ当て布によって、ショーツ本体よりも大きな押圧力で吸水パッドが肌側に押圧されるようになる。このような押圧力に対して当て布の中間領域で吸水パッドを介して作用する肌側からの反力が受け止められるようになり、その際に左右幅方向の中央部よりも左右縁部に作用する反力が相対的に弱くなるため、当て布の左右縁部が肌側に向けて持ち上がり、吸水パッドが位置ずれしないように姿勢保持される。
【0014】
同第三の特徴構成は、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記中間領域のうち、前記当て布の左右幅方向の中央部に開孔が形成されている点にある。
【0015】
当て布の中間部で左右方向の中央部に開孔が形成されていると、着用状態で当て布により受け止められる吸水パッドが当て布に形成された開孔に沈み込み、開孔を形成する当て布の端縁が吸水パッドの位置ずれを抑止するように作用する。
【0016】
同第四の特徴構成は、上述した第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記当て布は長手方向の中心線Cに対して線対称に形成され、前記中心線C上において、前記前端縁部と前記後端縁部との間の長さをL1、前記ショーツ本体における前記前端縁部の接合部と前記後端縁部の接合部との間の長さをL2としたときに、0.90≦(L1/L2)≦0.96の範囲に設定されている点にある。
【0017】
このような数値範囲に設定されることにより、当て布の中間部がショーツ本体から遊離しやすく、良好に吸水パッドが保持され、ショーツ本体への尿の漏洩が良好に回避される。*36条の対策として下限を入れています。
【0018】
同第五の特徴構成は、上述した第四の特徴構成に加えて、前記当て布の前記前端縁部と前記後端縁部の左右何れか一方の測端部の長さをL3、前記ショーツ本体における前記前端縁部と前記後端縁部の各接合部の左右何れか一方の測端部間の長さをL4としたときに、(L3/L4)<(L1/L2)に設定されている点にある。
【0019】
このような数値範囲に設定されることにより、当て布の中心線Cの近傍領域より左右幅方向の端縁の張力が大きくなり、吸水パッドの位置ずれや尿漏れ防止効果が大きくなる。
【0020】
同第六の特徴構成は、上述した第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記当て布は、裁断部のヘム処理または縁かがりが不要な解れ止め加工された伸縮性生地で構成されている点にある。
【0021】
当て布に解れ止め加工された伸縮性生地を用いることで、裁断部にヘム処理などの解れ止め処理が不要になり、吸水パッドを保持してもアウターに響くことなく、またごわつくこともなく、一層の良好な着心地が得られる。
【0022】
同第七の特徴構成は、上述した第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記ショーツ本体は、裁断部のヘム処理または縁かがりが不要な解れ止め加工された伸縮性生地で構成されている点にある。
【0023】
ショーツ本体が解れ止め加工された伸縮性生地で構成されることで、脚刳り部に特段の解れ止め処理が不要になり、脚部が大きく締め付けられることもなく、しかも適度な通気性を確保することができる。
【0024】
同第八の特徴構成は、上述した第六または第七の特徴構成に加えて、前記伸縮性生地は、綿を20%以上含む綿混生地で構成されている点にある。
【0025】
綿を20%以上含む綿混生地で伸縮性生地を構成することにより、肌に優しく良好な着用感を得ることができ、また生地による吸水性を増すことができる。
【0026】
同第九の特徴構成は、上述した第一から第八の何れかの特徴構成に加えて、前記ショーツ本体の反肌側面に撥水層が形成されている点にある。
【0027】
尿がショーツ本体に浸潤した場合でも外衣への浸透が回避できる。
【0028】
同第十の特徴構成は、上述した第一から第九の何れかの特徴構成に加えて、前記当て布は、肌側に位置する第1の当て布と反肌側に位置する第2の当て布の2枚で構成され、前後長手方向に長さを異ならせている点にある。
【0029】
クロッチ部に2枚の当て布を配して、其々の前後長手方向に長さを異ならせることにより、各当て布の重複部分では生地厚みが増す一方で非重複部分では生地厚みを薄くすることができる。ショーツ本体への接合領域では生地厚みが薄くなるので、当て布の輪郭形状が外衣を通して視認できるような状況(アウターにひびく状況)を回避することができる。また、各当て布の重複部分では生地厚みが増すため、仮に吸水パッドから尿が漏洩するようなことがあっても保水力を向上させることができる。
【0030】
同第十一の特徴構成は、上述した第十の特徴構成に加えて、前記第1の当て布の反肌側面に撥水層が形成され、前記第2の当て布の反肌側面に撥水層が形成されている点にある。
【0031】
二枚の当て布の反肌側面に撥水層が形成されるため、仮に吸水パッドから尿が漏洩するようなことがあっても外衣まで浸透するような事態を極力回避することができる。
【0032】
同第十二の特徴構成は、上述した第十または第十一の特徴構成に加えて、前記第1の当て布のコース方向と前記第2の当て布のコース方向とが交差するように配置されている点にある。
【0033】
各当て布のコース方向が交差するように配されていると、吸水パッドから肌側に配された第1の当て布に漏れた尿が主に糸の走り方向となるコース方向に沿って浸潤するが、第2の当て布のコース方向が第1の当て布のコース方向と交差しているため、第1の当て布と第2の当て布の浸潤方向が異なり、容易に外衣まで浸透するようなことを回避することができる。
【0034】
同第十三の特徴構成は、上述した第十から第十二の何れかの特徴構成に加えて、前記第1の当て布は前記第2の当て布よりも前後長手方向の長さが長く、前記第2の当て布は前記第1の当て布に接着剤で接合され、前記第1の当て布は前記ショーツ本体に接合されている点にある。
【0035】
肌側に位置する第1の当て布がショーツ本体に接合されることで、当て布とショーツ本体の位置関係が定まり、第1の当て布の前後長手方向の長さより短く、反肌側に位置する第2の当て布が第1の当て布に接着剤で接合されることで、縫着による着用感の阻害を来すことがない。
【発明の効果】
【0036】
以上説明した通り、本発明によれば、少なからぬ尿漏れが生じた場合でも、ショーツ本体の外側に漏れ難く、着用時の美観を損なうことなく、良好な着用感が得られるショーツを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】(a)は本発明によるショーツの表側を正面から視た説明図、(b)は本発明によるショーツの表側を背面から視た説明図
図2】(a)は本発明によるショーツの裏側を正面から視た説明図、(b)は本発明によるショーツの裏側を背面から視た説明図
図3】(a)はショーツ本体を構成する身生地の裁断図、(b)は当て布を構成する生地の裁断図
図4】ショーツ本体のクロッチ部に当て布を配した状態の説明図
図5】(a)はクロッチ部の要部の説明図、(b)は(a)のA-A断面の説明図
図6】(a),(b)はショーツ本体に対する当て布の配置に関する説明図
図7】別実施形態を示し、(a)は当て布を構成する第1の当て布と第2の当て布の生地の説明図、(b)はショーツ本体に対する当て布の配置に関する説明図
図8】別実施形態を示し、(a)はクロッチ部の要部の説明図、(b)は(a)のA-A断面の説明図
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明によるショーツの一例を図面に基づいて説明する。
図1(a)にはショーツの表側を正面から視た説明図,図1(b)にはショーツの表側を背面から視た説明図が示され、図2(a)にはショーツの裏側を正面から視た説明図が示され、図2(b)にはショーツの裏側を背面から視た説明図が示されている。
【0039】
図1(a),(b)及び図2(a),(b)に示すように、ショーツ1は、ショーツ本体2と、ショーツ本体2のクロッチ部5に配した当て布8を備えている。
【0040】
ショーツ本体2は、前身頃3と後身頃4とクロッチ部5を備え、前身頃3の左右の脇部3A,3Bと後身頃4の左右脇部4A,4Bが縫製によりで接合されている。そして、身頃3,4の上部に胴部開口6が形成され、身頃3,4の下部に脚刳り部7A,7Bが形成されている。なお、左右脇部4A,4Bは縫製に代えて接着剤を用いて接合されていてもよい。
【0041】
図3(a)に示すように、ショーツ本体2は、裁断部のヘム処理または縁かがりが不要な解れ止め加工された伸縮性生地であるヨコ編地が身生地に採用され、ヨコ編地のコース方向が胴囲に沿う姿勢で、前身頃3と後身頃4とクロッチ部5が一体となる一枚ものに裁断され、裁断された身生地のうち、前身頃3及び後身頃4の左右の脇部3A,4Aと3B,4B同士が縫製により接合されている。図1及び図2でハッチングしている領域はオーバーロック縫いによる縫着領域を示している。
【0042】
図3(b)に示すように、クロッチ部5に配される当て布8は、ショーツ本体2と同様に、裁断部のヘム処理または縁かがりが不要な解れ止め加工された伸縮性生地であるヨコ編地が用いられ、ヨコ編地のコース方向がショーツ本体2のコース方向と同じ方向になるように配されている。そのため、クロッチ部5で当て布8はコース方向に沿う左右の幅方向への伸縮性がウェール方向に沿う前後方向(前身頃から後身頃への方向)への伸縮性よりも大きくなる。従って、着用者の動きに応じて良好に吸水パッドを保持できるようになる。
【0043】
当て布8は前身頃3から後身頃4に向かう長手方向の中心線Cに対して線対称に形成され、前端縁部8Fと後端縁部8Bが外方に突出する弧状に形成され、前端縁部8Fと後端縁部8Rの間の中間領域8Mの左右縁部8L,8Rが内方に凹む弧状に形成されている。また、中間領域8Mには中心線C上に長孔形状の開孔8Hが形成されている。
【0044】
図4に示すように、当て布8はショーツ本体2のクロッチ部8の肌側つまり肌に接する内側面に配置され、弧状に形成された前端縁部8Fと後端縁部8Bがショーツ本体2に千鳥縫いを用いた縫製により接合されている。なお、前端縁部8Fと後端縁部8Bは縫製に代えて接着剤を用いてショーツ本体2に接合されていてもよい。
【0045】
即ち、ショーツ1は、肌と当て布8の間で当て布8により吸水パッドPが支持可能に構成され、当て布8の前後長手方向に沿う中間領域8Mがショーツ本体1から遊離可能な状態でショーツ本体2に接合されている。
【0046】
吸水パッドPを支持する当て布8の前後長手方向に沿う中間領域8Mがショーツ本体2から遊離可能になるため、当て布8の左右縁部8L,8Rが吸水パッドPの左右縁部を覆うような状態となり、吸水パッドPから尿が伝い漏れし、或いは飛び跳ねても、当て布8の前後長手方向に沿う中間領域8Mがショーツ本体2に縫着されていないので、当て布8で受け止められた尿が縫い目を介して直ちにショーツ本体に伝わるようなことが無く、ショーツ本体2への浸潤が効果的に抑制される。
【0047】
図5(a),(b)に示すように、当て布8は、中間領域8Mの少なくとも一部がショーツ本体2から浮いた状態となるようにショーツ本体2に接合されている。つまり、当て布8の前端縁部8Fと後端縁部8Bの間の長さに対して、当て布8が接合されるショーツ本体2の対応する長さが長くなるように前端縁部8Fと後端縁部8Bの接合位置が設定されている。
【0048】
このように接合すると、非着用状態では、クロッチ部5で当て布8がショーツ本体2からハンモックのように浮いた状態となって、吸水パッドPが専ら当て布8によって支持される。その結果、着用状態では、ショーツ本体2よりも大きく伸長することで大きな収縮力を持つ当て布8によって、ショーツ本体2よりも大きな押圧力で吸水パッドPが肌側に押圧されるようになる。このような押圧力に対して当て布8の中間領域8Mで吸水パッドPを介して作用する肌側からの反力が受け止められるようになり、その際に左右幅方向の中央部よりも左右縁部に作用する反力が相対的に弱くなるため、当て布8の左右縁部8L,8Rが肌側に向けて持ち上がり、吸水パッドPが位置ずれしないように姿勢保持される。
【0049】
具体的に、図6(a)に示すように、当て布8は長手方向の中心線Cに対して線対称に形成され、中心線C上において、前端縁部8Fと後端縁部8Bとの間の長さをL1、ショーツ本体2における前端縁部8Fの接合部2Fと後端縁部8Bの接合部2Bとの間の長さをL2としたときに、0.90≦(L1/L2)≦0.96の範囲に設定されている。このような数値範囲に設定されることにより、当て布8の中間部8Mがショーツ本体2から遊離しやすく、良好に吸水パッドPが保持され、ショーツ本体2への尿の漏洩が良好に回避される。
【0050】
(L1/L2)の数値範囲は、0.90≦(L1/L2)≦0.95の範囲がより好ましく、0.90≦(L1/L2)≦0.93の範囲がさらに好ましい。本実施形態では、L1=280mm、L2=300mmに設定されている。
【0051】
中心線C上でクロッチ部5の中心Oから前端縁部8Fまでの長さL5は100mm以上であることが好ましく120mm以上であることがさらに好ましい。中心線C上でクロッチ部5の中心Oから後端縁部8Bまでの長さL6は160mm以上であることが好ましく、180mm以上であることがさらに好ましい。前端縁部8F及び後端縁部8Bの縫着位置がクロッチ部5の中心Oから離れているほど縫着部からの漏れの可能性が低くなるからである。接着剤による接合の場合は、更に漏れの可能性は低くなる。
【0052】
また、図6(b)に示すように、当て布8の前端縁部8Fと後端縁部8Rの左右何れか一方の測端部8Fe,8Beの長さをL3、ショーツ本体2における前端縁部8Fと後端縁部8Bの各接合部の左右何れか一方の測端部2Fe,2Be間の長さをL4としたときに、(L3/L4)の数値範囲は、0.85≦(L3/L4)≦0.90の範囲がより好ましく、0.85≦(L3/L4)≦0.87の範囲がさらに好ましい。前端縁部8Fと後端縁部8Rの中心線Cとの交点における曲率よりも、前端縁部8Fと後端縁部8Rの左右の端縁部における曲率を大きくすることにより実現できる。
【0053】
中心線C上における(L1/L2)の比よりも(L3/L4)のを小さく設定、つまり、(L3/L4)<(L1/L2)に設定することが好ましく、このような数値範囲に設定することにより、当て布8の中心線Cの近傍領域より左右幅方向の端縁8L,8Rの張力が大きくなり、吸水パッドPの位置ずれや尿漏れ防止効果が大きくなる。
【0054】
当て布8に形成した開孔8Hの左右方向の開口幅は10~30mmの範囲が好ましく、10~20mmの範囲がさらに好ましい。中心線Cに沿う長さは特に制限されるものではないが、80~160mmの範囲が好ましい。
【0055】
当て布8の中間領域8Mで左右方向の中央部に開孔が形成されていると、着用状態で当て布8により受け止められる吸水パッドPが当て布8に形成された開孔8Hに沈み込み、開孔8Hを形成する当て布8の端縁が吸水パッドPの位置ずれを抑止するように作用する。
【0056】
ショーツ本体2を構成するヨコ編地を編成する原糸には、綿糸以外にキュプラ、ビスコースレーヨンなどの再生セルロース繊維、さらには吸水性加工されたポリエステルやナイロンなどの合成繊維糸を含む吸水性を有する極細繊維を用いることができ、また編地としてフライス編みやスムース編み、更には天竺編みなどを好適に用いることができる。当て布8を構成するヨコ編地の場合には、肌に対する優しさと吸水性を考慮して、少なくとも綿糸が20%以上含まれていることが好ましい。綿を20%以上含む綿混生地で伸縮性生地を構成することにより、肌に優しく良好な着用感を得ることができ、また生地による吸水性を増すことができる。
【0057】
当該ヨコ編地は、熱変形性弾性糸と綿糸を含むその他の糸がプレーティング編みで編成され、その後にヒートセット加工が施されることによって熱変形した熱変形性弾性糸がその他の糸の周りで互いに融着することにより解れ止め機能が発現する編地であり、裁断部のヘム処理または縁かがりが不要な解れ止め加工された伸縮性生地である。
【0058】
例えば、熱変形性弾性糸として22~110dtex(デシテックス)で、軟化温度140℃から185℃のポリウレタン弾性糸を用い、その他の糸12として単糸繊度80/1~30/1番手の綿糸または綿とレイヨンの混紡糸を用いることができる。ポリウレタン弾性糸のフィラメント数は特に限定されず、モノフィラメントでもマルチフィラメントでもよい。
【0059】
それぞれ異なる給糸口から編み針に給糸して編み立てられたプレーティング編地は、各編成ループにおける低融点ポリウレタン弾性糸と綿糸との配置が安定しているため、全てのループに低融点ポリウレタン弾性糸を隣接させることができ、編立後のヒートセット加工により低融点ポリウレタン弾性糸を溶融すれば、編地の全てのループで確実にほつれ止め機能が発現するようになる。
【0060】
当該ヨコ編地はヨコ編機を用いて編成された編地をその後にセット機にセットして150~190℃でヒートセットし、必要に応じて染色工程を経た後に再度セット機にセットして、張力をかけた状態で100~120℃の温度で最終的なヒートセットを行なうことにより得られる。
【0061】
このような解れ止め加工を施した編地を採用すれば、ヘム処理やパイピング処理などの特段の解れ止め処理をしなくても、裁断端部から繊維が解れることが無い。このような端部を切りっ放し処理された端部といい、洗濯を繰り返しても切りっ放し処理された端部から繊維が解れるような見栄えの悪化を招くことが無い。
【0062】
例えば端部を折り返して縫着するような解れ止め加工が不要になるので、脚刳り部などで端部の厚みなどに起因する締付や肌触りの悪化による不快感を招くことがなく、肌に優しい衣類が提供できるようになる。
【0063】
熱変形性弾性糸として低融点ポリウレタン弾性糸のような熱融着性弾性糸を用いる以外に、ポリウレタンウレア弾性繊維を用いることも可能である。ヒートセット加工等の加熱加工によりポリウレタンウレア弾性繊維同士またはポリウレタンウレア弾性繊維と相手糸との接触点でポリウレタンウレア弾性繊維の圧縮変形が発生し、ポリウレタンウレア弾性繊維同士またはポリウレタンウレア弾性繊維への相手糸の固着が生じるため、編地からポリウレタンウレア弾性繊維や相手糸が抜けにくくなり、カールや解れが抑制された編地を得ることができる。
【0064】
ショーツ本体の反肌側面に撥水層が形成されていることが好ましく、尿がショーツ本体2に浸潤した場合でも外衣への浸透が回避できる。また、同様の理由で当て布8の反肌側面にも撥水層が形成されていることが好ましい。このような撥水層は、公知の撥水剤を生地面に塗布することにより容易に実現できる。
【0065】
当て布8とショーツ本体2を接着剤で接合する場合には、接着剤としてホットメルト接着剤、例えば湿気硬化性の反応型ホットメルト接着剤が好適に用いられる。
【0066】
例えば、120℃に加熱した液状の接着剤を、ギアポンプを備えたノズルから生地片(例えば前身頃3の脇部)の帯状領域に供給塗布した後、その上に接合対象となる生地片(例えば後身頃4の脇部)を位置決めして重畳することで仮止めし、仮止め後、例えば両生地片の重畳部を約70℃の温度で加熱及び押圧することにより、接着剤が溶融して両生地片を構成する繊維に浸潤する。接着後に架橋反応が進むことにより耐熱性が現れ、その後の加熱処理で溶融することは無い。
【0067】
接着剤を用いたショーツ本体2に対する当て布8の接着層は、生地の伸縮性を損なうことなく、肌触りを良好に保つために、全面に接着剤を塗布するのではなく、ドットパターンや格子パターンまたは生地の伸縮方向と繰り返し交差するジグザグパターンなどで接着剤を塗布することが好ましい。生地の伸縮方向と交差するように接着すると生地の伸縮性を阻害するようなことがない。
【0068】
このような接着剤を生地片の接着部位に塗布して加熱処理すると、接着剤が軟化または溶融して生地を構成する繊維間に浸潤して両生地が接着されるようになる。このとき、生地片に編み込まれた解れ止めの熱変形弾性糸に熱による影響を及ぼすことなく、解れ止め機能の劣化を来すことが無い。
【0069】
接着剤の120℃溶融粘度が8000mPa・sから22000mPa・sであることが好ましく、13000mPa・sから19000mPa・sであることがさらに好ましい。
【0070】
接着剤の120℃溶融粘度がこれらの範囲であれば熱処理時に大きな加圧力を与えなくても、生地を構成する繊維間つまり生地の厚み方向及び面方向に良好に接着剤が浸潤し、十分な接着強度が得られるようになる。また、その際に接着剤が生地の反対側表面に浸潤することも無いので、見栄えの劣化が生じることも無い。その結果、熱変形弾性糸に熱的影響を与えたり、生地片にテカリや当たり等のダメージを与えたりすることなく良好に接着できるようになる。
【0071】
接着剤に用いられる熱可塑性樹脂としては、上述の加熱処理条件を満たす限りにおいて、例えば、ポリウレタン系ホットメルト樹脂、ポリエステル系ホットメルト樹脂、ポリアミド系ホットメルト樹脂、EVA系ホットメルト樹脂、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂、スチレン系エラストマー樹脂、湿気硬化型ホットメルト樹脂、反応型ホットメルト樹脂等が挙げられる。中でも湿気硬化型ホットメルト樹脂は、接着強度が高く、しかも短時間での接着が可能な点で特に好ましい。
【0072】
上述した実施形態では、ショーツ本体2及び当て布8がヨコ編地で構成された例を説明したが、ショーツ本体2及び当て布8は裁断部のヘム処理または縁かがりが不要な解れ止め加工された伸縮性生地であればよくタテ編地で構成されていてもよい。接着剤についてはホットメルト接着剤を用いた例で説明したが、エマルジョン系接着剤や溶剤系接着剤でもよく、特に限定されない。
【0073】
以下に、本発明によるショーツの他の態様を説明する。
上述した実施形態では、当て布8を一枚で構成する態様を説明したが、当て布8を2枚以上の複数枚で構成することも可能である。以下の例では、先の実施形態と異なる点を中心に説明し、先の実施形態と同一の構成については極力説明を省略する。
【0074】
図7(a),(b)及び図8(a),(b)には、当て布8を2枚で構成した例が示されている。当該当て布8は、着用者の肌側に位置する第1の当て布81と反肌側に位置する第2の当て布82の2枚で構成され、前身頃3から後身頃4に向かう前後長手方向に沿う長さを異ならせている。当該当て布8は、ショーツ本体2と同様に、裁断部のヘム処理または縁かがりが不要な解れ止め加工された伸縮性生地であるヨコ編地が用いられる。
【0075】
この例では、第1の当て布81は第2の当て布82よりも前後長手方向の長さが長くなるように構成され、第2の当て布82はクロッチ部5の中心付近に配置されている。そして、第1の当て布81は前端縁部81F及び後端縁部81Bがショーツ本体2に縫着により接合され、第2の当て布82は前端縁部82F及び後端縁部82Bが第1の当て布81に接着剤で接合されている。
【0076】
肌側に位置する第1の当て布81がショーツ本体2に接合されることで、当て布81とショーツ本体2の位置関係が定まり、第1の当て布81の前後長手方向の長さより短く、反肌側に位置する第2の当て布82が第1の当て布81に接着剤で接合されることで、縫着による着用感の阻害を来すことがない。なお、第1の当て布81とショーツ本体2との接合は、縫製に代えて接着してもよいことは言うまでもない。
【0077】
この例でも、ショーツ1は、肌と当て布8(81,82)の間で当て布8により吸水パッドPが支持可能に構成され、当て布8(81,82)の前後長手方向に沿う中間領域8Mがショーツ本体1から遊離可能な状態でショーツ本体2に接合されている。
【0078】
このように、クロッチ部5に2枚の当て布81,82を配して、其々の前後長手方向に長さを異ならせることにより、各当て布81,82の重複部分では生地厚みが増す一方で非重複部分では生地厚みを薄くすることができる。ショーツ本体2への接合領域では生地厚みが薄くなるので、当て布81の輪郭形状が外衣を通して視認できるような状況(アウターにひびく状況)を回避することができる。また、各当て布81,82の重複部分では生地厚みが増すため、仮に吸水パッドから尿が漏洩するようなことがあっても保水力を向上させることができる。
【0079】
また、第1の当て布81の反肌側面に撥水層が形成され、第2の当て布82の反肌側面に撥水層が形成されていることが好ましく、二枚の当て布81,82の反肌側面に撥水層が形成されることで、仮に吸水パッドPから尿が漏洩するようなことがあっても外衣まで浸透するような事態を極力回避することができる。
【0080】
さらに、第1の当て布81のコース方向と第2の当て布82のコース方向とが交差するように配置されていることが好ましい。各当て布81,82のコース方向が交差するように配されていると、吸水パッドPから肌側に配された第1の当て布81に漏れた尿が主に糸の走り方向となるコース方向に沿って浸潤するが、第2の当て布82のコース方向が第1の当て布81のコース方向と交差しているため、第1の当て布81と第2の当て布82の浸潤方向が異なり、容易く外衣まで浸透するような事態の発生を抑制することができる。
【0081】
この例では、第1の当て布81のコース方向がショーツ本体2のコース方向と同じ方向になるように配され、第2の当て布82のコース方向が第1の当て布81のコース方向と交差する方向、好ましくは直交する方向に配されている。しかし、第1の当て布81のコース方向と第2の当て布82のコース方向が其々入れ替わっていてもよい。
【0082】
図7(a),(b)及び図8(a),(b)の例でも、第1の当て布81と第2の当て布82の中間領域8Mの左右縁部がショーツ本体2または第1の当て布81から遊離するように構成されているので、脚刳り部の伸びが抑制されることなく脚部にフィットするようになり優れた着用感が得られる。また、第1の当て布81の左右幅は第2の当て布82の左右幅より幅広に構成されている。
【0083】
第1の当て布81及び第2の当て布82のうち、少なくとも第1の当て布81に開孔8Hを形成してもよい。
【0084】
上述した実施形態では、ショーツにより吸水パッドを保持する態様を説明したが、生理用のナプキンを保持する態様で使用することも可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によるショーツは、吸水パッドを用いた場合でも身生地への漏れを回避でき、しかも蒸れにくく着用感に優れたショーツとして、幅の広い世代に利用される。
【符号の説明】
【0086】
1:ショーツ
2:ショーツ本体
3:前身頃
4:後身頃
5:クロッチ部
6:胴部開口
7A,7B:脚刳り部
8(81,82):当て布
8F(81F,82F):前端縁部
8M:中間領域
8B(81B,82B):後端縁部
8H:開孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8