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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144450
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220926BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045470
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 満孝
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和大
(72)【発明者】
【氏名】谷口 聡
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA22
5H770DA30
5H770DA41
5H770EA01
5H770JA11W
5H770JA17W
5H770JA17Y
(57)【要約】
【課題】昇圧コンバータや降圧コンバータなどの電圧調整装置を別途設けることなく、充電設備の電圧を調整して電源を充電することができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】電源2と、電源2に接続された第1上アーム素子8および第1下アーム素子9を有する第1インバータ4と、第1インバータ4に一端が連結されたコイル3u,3v,3wを有する回転機3と、第2上アーム素子11および第2下アーム素子12を有し、かつコイル3u,3v,3wの他端が連結された第2インバータ5とを備えた電力変換装置1において、電源2の正極および第1上アーム素子8の高電位側と、第2上アーム素子11の高電位側とを選択的に接続しまた遮断することができる開閉器16と、第2インバータ5の正極側および負極側に設けられた充電ポート20とを更に備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、
前記電源の正極側に接続された第1上アーム素子、前記第1上アーム素子および前記電源の負極側に接続された第1下アーム素子を有する第1インバータと、
前記第1インバータにおける前記第1上アーム素子と前記第1下アーム素子との接続部に一端が連結されたコイルを有する回転機と、
高電位側に設けられる第2上アーム素子、高電位側が前記第2上アーム素子の低電位側に接続されるとともに、低電位側が前記電源の負極および前記第1下アーム素子の低電位側に接続された第2下アーム素子を有し、かつ前記第2上アーム素子と前記第2下アーム素子との接続部に前記コイルの他端が連結された第2インバータとを備えた電力変換装置において、
前記電源の正極および前記第1上アーム素子の高電位側と、前記第2上アーム素子の高電位側とを選択的に接続しまた遮断することができる開閉器と、
前記第2インバータの正極側および負極側に設けられた充電ポートと
を更に備えている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記開閉器、前記第1インバータ、および前記第2インバータを制御するコントローラを更に備え、
前記コントローラは、
前記充電ポートに充電用電源が接続され、かつ前記電源の電圧と前記充電用電源の電圧とが同一である場合に、前記開閉器を開放状態とするとともに、前記第1上アーム素子および前記第2上アーム素子を導通状態とすることにより、前記電源と前記充電用電源との間の電力伝達を可能にするように構成されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記開閉器、前記第1インバータ、および前記第2インバータを制御するコントローラを更に備え、
前記コントローラは、
前記充電ポートに充電用電源が接続され、かつ前記電源の電圧と前記充電用電源の電圧とが同一である場合に、前記開閉器を導通状態とすることにより、前記電源と前記充電用電源との間の電力伝達を可能にするように構成されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記開閉器、前記第1インバータ、および前記第2インバータを制御するコントローラを更に備え、
前記コントローラは、
前記充電ポートに充電用電源が接続され、かつ前記電源の電圧が前記充電用電源の電圧よりも高い場合に、前記開閉器を開放状態とするとともに、前記第2上アーム素子を導通状態とし、かつ前記第1下アーム素子をオンオフ動作することにより、前記電源と前記充電用電源との間の電力伝達を可能にするように構成されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記開閉器、前記第1インバータ、および前記第2インバータを制御するコントローラを更に備え、
前記コントローラは、
前記充電ポートに充電用電源が接続され、かつ前記電源の電圧が前記充電用電源の電圧よりも低い場合に、前記開閉器を開放状態とするとともに、前記第1上アーム素子を導通状態とし、かつ前記第2下アーム素子をオンオフ動作することにより、前記電源と前記充電用電源との間の電力伝達を可能にするように構成されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電源から出力された電力を変換する電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気自動車やハイブリッド車両などの駆動力源として設けられたモータに、蓄電装置から出力された電力を変換して供給する電力変換装置が記載されている。このモータは、三相交流型のモータであり、蓄電装置から出力された直流電流を、三相のコイルに通電する交流電流に変換するインバータを備えている。このインバータは、三つのHブリッジ構成によって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-303298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車やプラグインハイブリッド車両などの車両は、車両の外部に設けられた充電設備から充電池に電力を供給して充電することができる。そのような充電設備は、例えば、家庭用の電源や専用の急速充電設備などがあり、充電設備に応じて出力電圧が異なる。そのため、出力電圧が異なる充電設備を用いて充電池を充電するためには、充電設備から車両に供給された電圧を、昇圧しまたは降圧して蓄電池の電圧に一致させる必要がある。特許文献1に記載された電力変換装置は、上記のような充電設備から供給された電圧を変更して充電池に供給する機能は備えていないため、別途昇圧コンバータや降圧コンバータなどの電圧調整装置を設ける必要があり、電圧調整装置を含む電力変換装置が大型化する可能性がある。
【0005】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、昇圧コンバータや降圧コンバータなどの電圧調整装置を別途設けることなく、充電設備の電圧を調整して電源を充電することができる電力変換装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、電源と、前記電源の正極側に接続された第1上アーム素子、前記第1上アーム素子および前記電源の負極側に接続された第1下アーム素子を有する第1インバータと、前記第1インバータにおける前記第1上アーム素子と前記第1下アーム素子との接続部に一端が連結されたコイルを有する回転機と、高電位側に設けられる第2上アーム素子、高電位側が前記第2上アーム素子の低電位側に接続されるとともに、低電位側が前記電源の負極および前記第1下アーム素子の低電位側に接続された第2下アーム素子を有し、かつ前記第2上アーム素子と前記第2下アーム素子との接続部に前記コイルの他端が連結された第2インバータとを備えた電力変換装置において、前記電源の正極および前記第1上アーム素子の高電位側と、前記第2上アーム素子の高電位側とを選択的に接続しまた遮断することができる開閉器と、前記第2インバータの正極側および負極側に設けられた充電ポートとを更に備えていることを特徴とするものである。
【0007】
また、この発明は、前記開閉器、前記第1インバータ、および前記第2インバータを制御するコントローラを更に備え、前記コントローラは、前記充電ポートに充電用電源が接続され、かつ前記電源の電圧と前記充電用電源の電圧とが同一である場合に、前記開閉器を開放状態とするとともに、前記第1上アーム素子および前記第2上アーム素子を導通状態とすることにより、前記電源と前記充電用電源との間の電力伝達を可能にするように構成されていてよい。
【0008】
また、この発明は、前記開閉器、前記第1インバータ、および前記第2インバータを制御するコントローラを更に備え、前記コントローラは、前記充電ポートに充電用電源が接続され、かつ前記電源の電圧と前記充電用電源の電圧とが同一である場合に、前記開閉器を導通状態とすることにより、前記電源と前記充電用電源との間の電力伝達を可能にするように構成されていてよい。
【0009】
また、この発明は、前記開閉器、前記第1インバータ、および前記第2インバータを制御するコントローラを更に備え、前記コントローラは、前記充電ポートに充電用電源が接続され、かつ前記電源の電圧が前記充電用電源の電圧よりも高い場合に、前記開閉器を開放状態とするとともに、前記第2上アーム素子を導通状態とし、かつ前記第1下アーム素子をオンオフ動作することにより、前記電源と前記充電用電源との間の電力伝達を可能にするように構成されていてよい。
【0010】
そして、この発明は、前記開閉器、前記第1インバータ、および前記第2インバータを制御するコントローラを更に備え、前記コントローラは、前記充電ポートに充電用電源が接続され、かつ前記電源の電圧が前記充電用電源の電圧よりも低い場合に、前記開閉器を開放状態とするとともに、前記第1上アーム素子を導通状態とし、かつ前記第2下アーム素子をオンオフ動作することにより、前記電源と前記充電用電源との間の電力伝達を可能にするように構成されていてよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、第1インバータと第2インバータとを制御することにより回転機を制御することができる。また、充電ポートに充電用電源を接続した場合には、第1インバータや第2インバータあるいは開閉器を制御することにより、電力変換装置を昇圧コンバータや降圧コンバータとして機能させることができる。したがって、回転機を制御するための電力変換装置に、充電電圧を変化させるための電圧調整装置などを設ける必要がなく、電気ユニットを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施形態における電力変換装置の一例を説明するための構成図である。
図2】充電池を充電するための制御例を説明するためのフローチャートである。
図3】充電池の電圧が充電用電源の電圧よりも高い場合に形成される回路状態を簡略して示す等価回路図である。
図4】充電池の電圧が充電用電源の電圧未満の場合に形成される回路状態を簡略して示す等価回路図である。
図5】充電池の電圧と充電用電源の電圧とが同一の場合に形成される回路状態を簡略して示す等価回路図である。
図6】充電池の電圧が充電用電源の電圧よりも高い場合に形成される他の回路状態を簡略して示す等価回路図である。
図7】充電池の電圧が充電用電源の電圧よりも高い場合に、充電用電源の電圧を昇圧して充電池に作用させている状態を示すグラフである。
図8】充電池の電圧が充電用電源の電圧よりも高い場合に、充電用電源の電圧を降圧して充電池に作用させている状態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施形態における電力変換装置の一例を説明するための構成図を図1に示してある。図1に示す電力変換装置1は、この発明の実施形態における「電源」に相当する蓄電池2と、この発明の実施形態における「回転機」に相当するモータ3との間で通電する電力を変換するものである。蓄電池2は、従来の電気自動車やハイブリッド車両に設けられた蓄電池と同様に構成されている。すなわち、蓄電池2は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池を直列に接続して構成されている。
【0014】
モータ3は、従来の電気自動車やハイブリッド車両の駆動力源として設けられたモータと同様に構成されている。このモータ3は、オープン巻線の電動機であって、2相以上の複数の相のコイルを備えた交流モータによって構成することができ、図1に示す例では、U相、V相、W相の三相のコイル3u、3v、3wを備えた同期モータや誘導モータなどの交流モータによって構成されている。
【0015】
したがって、蓄電池2の直流電圧を交流電圧に変換してモータ3に負荷するための第1インバータ4と第2インバータ5とを備えている。第1インバータ4の第1端子は、蓄電池の第1正極母線6に接続され、第1インバータ4の第2端子は、蓄電池2の第1負極母線7に接続されている。この第1インバータ4は、第1上アームスイッチ(素子)8と第1下アームスイッチ(素子)9とにより構成されている。
【0016】
第1上アームスイッチ8は、高電位側端子であるコレクタがそれぞれ第1正極母線6に接続された第1スイッチQ1、第3スイッチQ3、第5スイッチQ5によって構成されている。また、第1下アームスイッチ9は、第1上アームスイッチ8のそれぞれのエミッタに、それぞれのコレクタが接続され、かつそれぞれのエミッタが第1負極母線7に接続された第2スイッチQ2、第4スイッチQ4、第6スイッチQ6によって構成されている。すなわち、第1スイッチQ1のエミッタに、第2スイッチQ2のコレクタが接続され、第3スイッチQ3のエミッタに、第4スイッチQ4のコレクタが接続され、第5スイッチQ5のエミッタに、第6スイッチQ6のコレクタが接続されている。
【0017】
これらの各スイッチQ1~Q6は、従来知られた絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)によって構成され、そのIGBTには、それぞれ、逆並列にフライホールダイオードD1~D6が接続されている。また、上記の第1正極母線6と第1負極母線7とは、第1コンデンサ10によって接続されている。なお、各スイッチQ1~Q6は、IGBTに限らず、MOSFETであってもよい。
【0018】
上記の第1スイッチQ1と第2スイッチQ2との接続点(接続部)にU相コイル3uの一端が接続され、第3スイッチQ3と第4スイッチQ4との接続点(接続部)にV相コイル3vの一端が接続され、第5スイッチQ5と第6スイッチQ6との接続点(接続部)にW相コイル3wの一端が接続されている。
【0019】
U相コイル3u、V相コイル3v、およびW相コイル3wの他端には、第2インバータ5が接続されている。この第2インバータ5は、第1インバータ4と同様に第2上アームスイッチ(素子)11と第2下アームスイッチ(素子)12とにより構成されている。
【0020】
すなわち、第2上アームスイッチ11は、第7スイッチQ7、第9スイッチQ9、および第11スイッチQ11によって構成され、それらのスイッチQ7、Q9、Q11のコレクタが第2正極母線13に接続されている。また、第2下アームスイッチ12は、第2上アームスイッチ11のそれぞれのエミッタに、それぞれのコレクタが接続され、かつそれぞれのエミッタが第2負極母線14に接続された第8スイッチQ8、第10スイッチQ10、第12スイッチQ12によって構成されている。すなわち、第7スイッチQ7のエミッタに、第8スイッチQ8のコレクタおよびU相コイル3uの他端が接続され、第9スイッチQ9のエミッタに、第10スイッチQ10のコレクタおよびV相コイル3vの他端が接続され、第11スイッチQ11のエミッタに、第12スイッチQ12のコレクタおよびW相コイル3wの他端が接続されている。
【0021】
これらの各スイッチQ7~Q12も、従来知られた絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)によって構成され、そのIGBTには、それぞれ、逆並列にフライホールダイオードD7~D12が接続されている。また、上記の第2正極母線13と第2負極母線14とは、第1コンデンサ15によって接続され、第1負極母線7と第2負極母線14とが直列に接続され、さらに、第1正極母線6と第2正極母線13とが開閉器16を介して接続されている。この開閉器16は、常開式のリレーである。なお、各スイッチQ7~Q12は、IGBTに限らず、MOSFETであってもよく、また、開閉器16は、半導体素子によって構成されていてもよい。
【0022】
上記の第2正極母線13に正極端子17が形成され、第2負極母線14に負極端子18が形成されている。これらの正極端子17および負極端子18は、外部電源などの充電設備(以下、充電用電源と記す)19が接続される充電ポート20となっている。なお、第2正極母線13と正極端子17との間、および第2負極母線14と負極端子18との間には、図示しないソケットなどに充電用電源19の図示しないコネクタを接続した場合に、第2正極母線13と正極端子17とを接続状態とし、また第2負極母線14と負極端子18とを接続状態とする開閉スイッチ21a,21bが設けられている。
【0023】
なお、各コイル3u,3v,3wに負荷される電圧や電流を検出するための検出器22や、蓄電池2の充電残量を検出するためのSOC管理装置23などの種々のセンサが設けられている。
【0024】
上述した第1インバータ4、第2インバータ5、および開閉器16を制御するための制御部(コントローラ)24が設けられている。この制御部24は、検出器22、SOC管理装置23、および充電ポート20などから入力される信号に基づいて第1インバータ4(具体的には、第1~第6スイッチQ1~Q6)、第2インバータ5(具体的には、第7~第12スイッチQ7~Q12)を制御するためのゲート信号を定め、また開閉器16を接続状態とするか遮断状態とするかを定める演算部25、演算部25により定められた信号を第1インバータ4に出力する第1出力部26、演算部25により定められた信号を第2インバータ5に出力する第2出力部27などによって構成されている。なお、制御部24は、例えば、メモリ装置に記憶されたソフトウェアやそれを実行するコンピュータ、ハードウェアなどによって構成することができる。
【0025】
上述したように構成された電力変換装置1は、第1インバータ4および第2インバータ5のスイッチ信号を制御することにより、モータ3の出力トルクを制御することができる。また、駆動要求に応じて開閉器16の開閉状態を変更し、駆動方法を変更することができる。ここで、これらの駆動状態では、充電用電源19が接続されていないことにより開閉スイッチ21a,21bが開放されている。
【0026】
また、充電用電源19が接続されて開閉スイッチ21a,21bがオンに切り替わった場合には、蓄電池2の電圧と充電用電源19の電圧とに応じて開閉器16や第1インバータ4あるいは第2インバータ5のスイッチ信号を制御することにより、充電用電源19の電圧を昇圧しまたは降圧して蓄電池2を充電するように構成されている。
【0027】
その制御の一例を説明するためのフローチャートを図2に示してある。図2に示す制御例は、充電用電源19が充電ポート20に接続された場合に実行される。充電用電源19が充電ポート20に接続された場合には、まず、開閉器16を開放状態にする(ステップS1)。このステップS1は、例えば、開閉スイッチ21a,21bから制御部24にオン信号が入力された場合に、開閉器16を開放する信号を出力することにより実行される。
【0028】
ついで、蓄電池2の電圧が充電用電源19の電圧よりも高いか否かを判断する(ステップS2)。このステップS2は、例えば、第1正極母線6と第1負極母線7との電位差、および第2正極母線13と第2負極母線14との電位差を計測し、それらの電位差を比較することにより判断することができる。
【0029】
蓄電池2の電圧が充電用電源19の電圧よりも高いことによりステップS2で肯定的に判断された場合は、第2上アームスイッチ11を導通状態にする(ステップS3)。すなわち、第7スイッチQ7、第9スイッチQ9、第11スイッチQ11のオンデューティを100%に設定する。なお、第2下アームスイッチ12は、非導通状態にする。
【0030】
上記のように開閉器16を開放状態とし、第2上アームスイッチ11を導通状態とし、第2下アームスイッチ12を非導通状態とした場合の回路状態を説明するための等価回路図を簡略して図3に示してある。なお、図3では、U相コイル3u、およびU相コイル3uに接続されたスイッチのみを示してある。
【0031】
図3に示すように第1スイッチQ1と第2スイッチQ2との接続点にU相コイル3uの一端が接続され、U相コイル3uの他端が充電用電源19の正極側に接続されている。また、蓄電池2の負極と第2スイッチQ2の低電位側端子であるエミッタとが、充電用電源19の負極側に接続されている。したがって、U相コイル3uをリアクトルとして用いて、第2スイッチQ2をPWM(オンオフ)制御することにより、電力変換装置1は、昇圧コンバータとして機能することができる。具体的には、第2スイッチQ2のオンデューティ比を50%に設定することにより、充電用電源19の電圧を2倍に昇圧することができる。
【0032】
したがって、ステップS3に続いて、第1下アームスイッチ9をPWM制御する(ステップS4)。そのため、蓄電池2と充電用電源19との間の電力の伝達が完了し(ステップS5)、このルーチンを一旦終了する。つまり、蓄電池2を充電する。
【0033】
一方、蓄電池2の電圧が充電用電源19の電圧以下であることによりステップS2で否定的に判断された場合は、蓄電池2の電圧が充電用電源19の電圧未満であるか否かを判断する(ステップS6)。このステップS6は、上述したステップS2と同様に、第1正極母線6と第1負極母線7との電位差と、第2正極母線13と第2負極母線14との電位差とを比較することにより判断することができる。
【0034】
蓄電池2の電圧が充電用電源19の電圧未満であることによりステップS6で肯定的に判断された場合は、第1上アームスイッチ8を導通状態にする(ステップS7)。すなわち、第1スイッチQ1、第3スイッチQ3、第5スイッチQ5のオンデューティを100%に設定する。なお、第1下アームスイッチ9は、非導通状態にする。
【0035】
上記のように開閉器16を開放状態とし、第1上アームスイッチ8を導通状態とし、第1下アームスイッチ9を非導通状態とした場合の回路状態を説明するための等価回路図を簡略して図4に示してある。なお、図4では、U相コイル3u、およびU相コイル3uに接続されたスイッチのみを示してある。
【0036】
図4に示すようにU相コイル3uの一端に蓄電池2の正極側が接続され、U相コイル3uの他端が、第7スイッチQ7と第8スイッチQ8との接続点に接続されている。また、蓄電池2の負極と第8スイッチQ8の低電位側端子であるエミッタとが、充電用電源19の負極側に接続されている。したがって、U相コイル3uをリアクトルとして用いて、第7スイッチQ7をPWM(オンオフ)制御することにより、電力変換装置1は、降圧コンバータとして機能することができる。具体的には、第7スイッチQ7のオンデューティ比を50%に設定することにより、充電用電源19の電圧を1/2倍に降圧することができる。
【0037】
したがって、ステップS7に続いて、第2上アームスイッチ11をPWM制御する(ステップS8)。そのため、蓄電池2と充電用電源19との間の電力の伝達が完了し(ステップS5)、このルーチンを一旦終了する。つまり、蓄電池2を充電する。
【0038】
一方、蓄電池2の電圧が充電用電源19の電圧未満でないことによりステップS6で否定的に判断された場合は、蓄電池2の電圧と充電用電源19の電圧とが同一であることとなる。そのため、ステップS6で否定的に判断された場合は、蓄電池2と充電用電源19とを接続状態とする。具体的には、図5に簡素化して示す等価回路図のように、第1上アームスイッチ8および第2上アームスイッチ11を導通状態にする(ステップS9)。上述したように第1負極母線7と第2負極母線14とが接続されているため、蓄電池2の負極には、充電用電源19が直接接続されていることになる。そのため、ステップS9では、第1下アームスイッチ9および第2下アームスイッチ12を非導通状態とする。
【0039】
このように第1上アームスイッチ8および第2上アームスイッチ11を導通状態にすることにより、蓄電池2と充電用電源19との間の電力の伝達が完了し(ステップS5)、このルーチンを一旦終了する。つまり、蓄電池2を充電する。
【0040】
なお、蓄電池2の電圧と充電用電源19の電圧とが同一である場合には、上記ステップS9のように第1上アームスイッチ8と第2上アームスイッチ11とを導通状態とすることに代えて、図6に簡素化して示す等価回路図のように、開閉器16を通電状態としてもよい。その場合には、第1インバータ4および第2インバータ5の各スイッチQ1~Q12は全て非導通状態とする。
【0041】
図7は、蓄電池2の電圧が充電用電源19の電圧よりも高いことにより、上記ステップS3およびステップS4を実行した場合におけるU相コイル3uを流れる電流値Iu、蓄電池2を流れる電流値IBAT、および蓄電池2の部分で検出された電圧値VBと、充電用電源19の電圧値VBcとを示すタイムチャートであり、図7に示すように充電用電源19の電圧が昇圧されている。
【0042】
また、図8は、蓄電池2の電圧よりも充電用電源19の電圧が高いことにより、上記ステップS7およびステップS8を実行した場合におけるU相コイル3uを流れる電流値Iu、蓄電池2を流れる電流値IBAT、および蓄電池2の部分で検出された電圧値VBと、充電用電源19の電圧値VBcとを示すタイムチャートであり、図8に示すように充電用電源19の電圧が降圧されている。
【0043】
上述したように第1スイッチQ1~第12スイッチQ12を制御することによりモータ3のトルクを制御することに加えて、充電用電源19の電圧を昇圧させまたは降圧される電圧調整装置として機能することができる。言い換えると、モータ3を制御するための電力変換装置1に、充電電圧を変化させるための電圧調整装置などを設ける必要がなく、電気ユニットを小型化することができる。
【0044】
なお、この発明の実施形態における電力変換装置1は、充電用電源19の電圧を昇圧しまたは降圧して蓄電池2を充電するものに限らず、例えば、蓄電池2の電力によって外部電源を充電するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 電力変換装置
2 蓄電池
3 モータ
3u,3v,3w コイル
4,5 インバータ
6,13 正極母線
7,14 負極母線
8,11 上アームスイッチ
9,12 下アームスイッチ
10,15 コンデンサ
16 開閉器
17 正極端子
18 負極端子
19 充電用電源
20 充電ポート
21a,21b 開閉スイッチ
22 検出器
23 管理装置
24 制御部
25 演算部
26,27 出力部
D1~D12 フライホールダイオード
Q1~Q12 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8