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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144455
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20220926BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220926BHJP
【FI】
F04B39/00 106
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045478
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】岡田 仁
(72)【発明者】
【氏名】多田 佳史
【テーマコード(参考)】
3H003
5H770
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB07
3H003AC03
3H003CD01
3H003CF01
5H770AA21
5H770BA05
5H770CA06
5H770DA03
5H770KA01W
5H770QA01
5H770QA12
5H770QA14
5H770QA27
5H770QA31
5H770QA33
(57)【要約】
【課題】回路基板におけるハウジングおよびバスバーへの締結による歪を抑制するとともに、回路基板におけるノイズ成分を効果的に低減できる電動圧縮機の提供にある。
【解決手段】インバータ部は、回路基板33と、インバータハウジング18に固定され、回路基板33と電気的に接続する給電バスバー57と、回路基板33上に実装されるノイズ低減回路と、回路基板33を締結する第1締結部材と、回路基板33を締結する第2締結部材と、を備え、回路基板33は、第1締結部材が挿通される第1締結孔と、第2締結部材が挿通される第2締結孔と、第1締結孔と第2締結孔とを結ぶ線分上に沿って延在し、回路基板33に固定される回路バスバー85と、を有し、回路バスバー85は、回路基板33上における回路の一部をなし、第1締結孔における締結によって、回路基板33はノイズ低減回路のグランドとしてインバータハウジング18に電気的に接続されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入された冷媒を圧縮して吐出する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する電動モータと、
前記電動モータの駆動を制御するインバータ部と、
前記インバータ部を収容するインバータハウジングと、を備えた電動圧縮機において、
前記インバータ部は、
回路基板と、
前記インバータハウジングに固定され、外部電源と前記回路基板とを電気的に接続する給電バスバーと、
前記回路基板上に実装され、前記給電バスバーを通じて流れる電流に含まれるノイズ成分を低減するノイズ低減回路と、
前記回路基板を前記インバータハウジングに締結する第1締結部材と、
前記回路基板を前記給電バスバーに締結する第2締結部材と、を備え、
前記回路基板は、
前記第1締結部材が挿通される第1締結孔と、
前記第1締結孔に隣り合って設けられ、前記第2締結部材が挿通される第2締結孔と、
前記第1締結孔と前記第2締結孔とを結ぶ線分上に沿って延在し、前記回路基板に固定される回路バスバーと、を有し、
前記回路バスバーは、前記回路基板上における回路の一部をなし、
前記第1締結孔における締結によって、前記回路基板は前記ノイズ低減回路のグランドとして前記インバータハウジングに電気的に接続されていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記回路バスバーは、前記第2締結部材を挿通するバスバー締結孔を有し、
前記第2締結部材により前記給電バスバーとともに前記回路基板に締結されていることを特徴とする請求項1記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動圧縮機として、例えば、特許文献1に開示された電動圧縮機が知られている。特許文献1に開示された電動圧縮機は、モータと、インバータ装置と、仕切り壁を有するハウジングと、接続部材と、を備える。インバータ装置は、基板を有する。接続部材は、モータ収容室内に配置されたモータ側端部と、インバータ収容室内に配置されたインバータ側端部と、を有する貫通端子と、基板とインバータ側端部とを電気的に接続するバスバーと、を有する。基板は、基板の厚さ方向における一方側の表面を含む第1金属層と、基板の厚さ方向における他方側の表面を含む第2金属層と、を有する。バスバーは、第1金属層および第2金属層の双方に接触した状態で基板に電気的に接続されている。
【0003】
特許文献1の電動圧縮機では、第1金属層からバスバーを介してモータ側端部(冷媒により冷却される部位)に至る放熱経路と、第2金属層からバスバーを介してモータ側端部に至る放熱経路とが形成されるため、基板の放熱性が高まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-122426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動圧縮機では、回路基板がハウジングに固定されるとともに、回路基板への給電用のバスバー(以下、「給電バスバー」と表記する)と回路基板が接続される。給電側のバスバーに締結するための複数の締結孔(以下、「バスバー用締結孔」と表記する)およびハウジングに締結するための複数の締結孔(以下、「ハウジング用締結孔」と表記する)が回路基板に設けられる。これらの締結孔はボルトが挿通される。回路基板においてこれらのボルトにより締結される締結箇所は回路基板の厚さ方向に対する設計上の公差を含む。このため、互いに隣り合うボルト締結箇所の公差が相違すると、ボルトにより締結された基板に歪が生じるという問題がある。特に、バスバー用締結孔とハウジング用締結孔とが互いに隣り合うと、互いに公差が相違し、回路基板におけるバスバー用締結孔とハウジング用締結孔との間に歪が生じる。回路基板にボルト締結による歪が生じると回路基板の損傷や実装された電子部品のはんだ破損による導通不良が生じるおそれがある。特に、回路基板におけるバスバー用締結孔とハウジング用締結孔とが互いに近いほど基板における歪は大きくなる。
【0006】
一方、回路基板におけるバスバー用締結孔とハウジング用締結孔とが十分に離れるように設ければ、回路基板における歪は抑制できるが、回路基板の電子部品の配置条件や回路基板のスペースの制約が厳しいと、両締結孔を十分に離して設けることができない。また、バスバーを通る電流からノイズ成分を除去するノイズフィルタを基板に実装し、ハウジング用締結孔に挿通されたボルトを通じて基板のグランドラインとハウジングとを電気的に接続する場合がある。この場合、基板においてノイズフィルタをバスバー用締結孔およびハウジング用締結孔の近くに実装することがノイズ除去の観点から好ましい。その結果、基板においてバスバー用締結孔とハウジング用締結孔とが接近して設けられるという実情がある。また、電動圧縮機の小型化を図る点でも、両締結孔を互いに接近して設けることが好ましい。また、回路基板において給電バスバーの近傍は大電流の通電により高熱となり易く回路基板の発熱の抑制が望まれている。なお、特許文献1の電動圧縮機では、バスバーにより回路基板の放熱性を高めるに過ぎない。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、回路基板におけるハウジングおよびバスバーへの締結による歪を抑制するとともに、回路基板におけるノイズ成分を効果的に低減できる電動圧縮機の提供にある。また、本発明の更なる目的は、回路基板における発熱を抑制できる電動圧縮機の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、吸入された冷媒を圧縮して吐出する圧縮部と、前記圧縮部を駆動する電動モータと、前記電動モータの駆動を制御するインバータ部と、前記インバータ部を収容するインバータハウジングと、を備えた電動圧縮機において、前記インバータ部は、回路基板と、前記インバータハウジングに固定され、外部電源と前記回路基板とを電気的に接続する給電バスバーと、前記回路基板上に実装され、前記給電バスバーを通じて流れる電流に含まれるノイズ成分を低減するノイズ低減回路と、前記回路基板を前記インバータハウジングに締結する第1締結部材と、前記回路基板を前記給電バスバーに締結する第2締結部材と、を備え、前記回路基板は、前記第1締結部材が挿通される第1締結孔と、前記第1締結孔に隣り合って設けられ、前記第2締結部材が挿通される第2締結孔と、前記第1締結孔と前記第2締結孔とを結ぶ線分上に沿って延在し、前記回路基板に固定される回路バスバーと、を有し、前記回路バスバーは、前記回路基板上における回路の一部をなし、前記第1締結孔における締結によって、前記回路基板は前記ノイズ低減回路のグランドとして前記インバータハウジングに電気的に接続されていることを特徴とする。
【0009】
本発明では、回路バスバーは、第1締結孔と第2締結孔とを結ぶ仮想の線分上に沿って延在し、回路基板に固定されている。第1締結孔と第2締結孔とが互いに近くても、回路基板における第1締結孔と第2締結孔との間の剛性が回路バスバーによって向上する。また、回路バスバーを設けることで、第1締結孔と第2締結孔とは互いに近くなるため、ノイズ低減回路により抑制される回路基板におけるノイズ成分を回路基板から第1締結部材を通じてハウジングに効果的に吸収させることができる。つまり、回路バスバーを設けることにより、回路基板における歪の抑制とのノイズ成分の効果的な低減が実現できる。また、回路基板において高熱となり易い給電バスバーに近くに回路バスバーが固定されているので、回路基板のパターンと比較して導電部としての電気抵抗値を低減でき、回路基板における発熱を抑制できる。
【0010】
また、上記の電動圧縮機において、前記回路バスバーは、前記第2締結部材を挿通するバスバー締結孔を有し、前記第2締結部材により前記給電バスバーとともに前記回路基板に締結されている構成としてもよい。
この場合、回路バスバーが回路基板に固定されるとともに、第2締結部材によって回路基板に締結されるので、回路バスバーの回路基板に対する固定がより強固となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回路基板におけるハウジングおよびバスバーへの締結による歪を抑制するとともに、回路基板におけるノイズ成分を効果的に低減できる電動圧縮機を提供できる。また、回路基板における発熱を抑制できる電動圧縮機も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る電動圧縮機の概略縦断面図である。
図2】第1の実施形態に係る電動圧縮機の要部の分解斜視図である。
図3】第1の実施形態に係る電動圧縮機の回路基板の正面図である。
図4】第1の実施形態に係る電動圧縮機の電気的構成を説明する説明図である。
図5】(a)は回路基板の要部を示す正面図であり、(b)は回路バスバーの斜視図である。
図6】(a)は第2の実施形態に係る電動圧縮機の回路基板の要部を示す正面図であり、(b)は第2の実施形態に係る回路バスバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る電動圧縮機について図面を参照して説明する。本実施形態の電動圧縮機は車両用空調装置の一部として車両に搭載される車載用電動圧縮機である。
【0014】
図1に示すように、電動圧縮機10は、ハウジング11と、圧縮部12と、電動モータ13と、インバータ部14と、を備えている。ハウジング11は、圧縮部12および電動モータ13を収容するモータハウジング15と、モータハウジング15と接合され、吐出口17を備えた吐出ハウジング16と、インバータ部14を収容するインバータハウジング18と、を有している。モータハウジング15、吐出ハウジング16、インバータハウジング18はアルミニウム合金製である。
【0015】
モータハウジング15は、円筒状の周壁部19と、周壁部19の一方の端部を塞ぐ隔壁部20を有している。周壁部19および隔壁部20は圧縮部12および電動モータ13を収容する空間を形成する。隔壁部20はインバータハウジング18と接合される。周壁部19において隔壁部20の近傍には冷媒を吸入する吸入口21が設けられている。吐出ハウジング16は、周壁部19の他方の端部に接合されている。吸入口21から吸入された冷媒は、圧縮部12に吸引され、圧縮部12により圧縮される。圧縮された冷媒は、吐出口17から吐出される。
【0016】
インバータハウジング18は、モータハウジング15の隔壁部20と接合される底壁部22と、底壁部22の外周縁にわたって一方へ向けて突出する外壁部23と、を有している。インバータハウジング18の底壁部22および外壁部23は、インバータ部14を収容する空間を形成する。インバータハウジング18の開口を塞ぐようにインバータカバー24が外壁部23の端面に接合される。図2に示すように、外壁部23の端面には複数のねじ孔25が設けられている。ねじ孔25は、外壁部23の端面にはインバータカバー24を接合するための締結ボルト(図示せず)が螺入される。
【0017】
底壁部22には、インバータ部14から電動モータ13へ三相交流電力を供給する三相端子部26が備えられている。三相端子部26は、棒状のU相端子26U、V相端子26VおよびW相端子26Wを有し、三相端子部26は、隔壁部20および底壁部22を貫通して電動モータ13と対向する。また、図2に示すように、底壁部22には、外壁部23の内側には、後述する回路基板33を取り付けるための複数の台座部27が形成されている。台座部27の端面には、ねじ孔28が設けられている。
【0018】
圧縮部12は、吸入口21から吸入した冷媒を圧縮する。吸入口21から吸入された冷媒は、圧縮部12に吸引され、圧縮部12により圧縮される。圧縮された冷媒は、吐出口17から吐出される。圧縮部12は、例えば、スクロール式の圧縮部であり、スクロール式以外のピストン式やベーン式の圧縮部であってもよい。圧縮部12は、モータハウジング15に回転可能に支持される回転軸29と接続されており、電動モータ13の回転により駆動される。回転軸29の一方の端部は、隔壁部20に回転可能に支持され、回転軸29の他方の端部は圧縮部12と接続されている。
【0019】
電動モータ13は、圧縮部12を駆動する。電動モータ13は、モータハウジング15の周壁部19の内周面に固定されたステータ31と、回転軸29に固定されるロータ32と、を備える。電動モータ13は、回転軸29を回転させることにより圧縮部12を駆動する。電動モータ13は、インバータ部14から三相交流電力の供給を受け、インバータ部14により制御されて駆動される。
【0020】
インバータ部14は、インバータハウジング18に収容される。図2に示すように、インバータ部14は、回路基板33と、給電アッセンブリ34と、第1フィルタ回路35と、第2フィルタ回路36と、を備える。さらに、図3に示すように、インバータ部14は、駆動回路37と、制御回路38と、を備えている。回路基板33は、多層の配線パターンを有する多層基板であり、インバータハウジング18の外壁部23にほぼ倣う外周縁を有している。第1フィルタ回路35や第2フィルタ回路36をはじめとした各電子部品は、回路基板33にはんだ付けで実装されている。
【0021】
回路基板33の外縁は、給電アッセンブリ34に近い位置となる第1外縁部41と、第2フィルタ回路36と近い位置となる第2外縁部42と、第2外縁部42の延長線上にあり、三相端子部26と近い位置となる第3外縁部43と、を有する。また、回路基板33の外縁部は、第1外縁部41の反対側に位置する第4外縁部44と、第2外縁部42の反対側に位置する第5外縁部45と、第3外縁部43の反対側に位置する第6外縁部46と、を有する。第1外縁部41~第6外縁部46は略直線状の外縁部である。回路基板33の外縁において第1外縁部41~第6外縁部46を除く外縁部は、曲線状にそれぞれ形成されている。回路基板33は、インバータカバー24と対向する第1面47と、第1面47の反対側の面であって底壁部22と対向する第2面48と、を備える。
【0022】
回路基板33の外縁付近には、第1締結孔としての複数の第1通孔51が設けられている。第1通孔51は、回路基板33において台座部27の位置に対応するように配設されている。第1通孔51は、ボルト50が挿通される貫通孔である。第1通孔51に挿通されたボルト50がインバータハウジング18のねじ孔28に螺入されることにより、回路基板33がインバータハウジング18に固定される。ボルト50は、回路基板33をインバータハウジング18に固定するための第1締結部材に相当する。ボルト50の締結は平座金やスプリングワッシャを用いてもよい。複数の第1通孔51を区別する場合、第1外縁部41と第5外縁部45との間の外縁部に接近した位置の第1通孔51Aとし、第2外縁部42と接近した位置の第1通孔51Bとする。さらに、第4外縁部44と接近した位置の第1通孔51Cとし、第5外縁部45と第6外縁部46との間の外縁部に接近した位置の第1通孔51Dとする。ボルト50についても区別する場合、第1通孔51A~51Dに対応するボルト50A~50Dとする。
【0023】
回路基板33には、給電アッセンブリ34と接続するための一対の第2通孔52が設けられている。一対の第2通孔52は、第2締結孔に相当し、給電アッセンブリ34の位置に合わせて第1外縁部41に接近した位置に設けられている。一対の第2通孔52には、回路基板33と給電アッセンブリ34とを接続するボルト53が挿通される。一対の第2通孔52を区別する場合、第1通孔51Aに近い第2通孔52Aとし、第1通孔51Bに近い第2通孔52Bとする。同様に、ボルト53を区別する場合、第2通孔52Aに挿通されるボルト53Aとし、第2通孔52Bに挿通されるボルト53Bとする。ボルト53は、後述する給電バスバー57を回路基板33に固定するための第2締結部材に相当する。
【0024】
回路基板33には、三相端子部26が有するU相端子26U、V相端子26VおよびW相端子26Wを挿通する3個の通孔54が形成されている。3個の通孔54は、三相端子部26の位置に合わせて第2外縁部42と接近した位置に配設されている。通孔54に挿通されたU相端子26U、V相端子26VおよびW相端子26Wがボルト55により締結されることで、三相端子部26と回路基板33が電気的に接続される。
【0025】
次に、給電アッセンブリ34について説明すると、給電アッセンブリ34は、インバータハウジング18によって保持される(図1を参照)。給電アッセンブリ34は、一対の給電バスバー57と、樹脂部58と、グロメット部59と、を有する。給電バスバー57は、電源コネクタ部を通じて回路基板33に電力を供給する板状の導電部材であり、大電流の通電を可能とする。給電バスバー57は、外部電源であるバッテリ(図示せず)と回路基板33とを電気的に接続する。一対の給電バスバー57は樹脂部58により保持され、樹脂部58は隔壁部20および底壁部22を貫通する。給電バスバー57とハウジング11との絶縁は、樹脂部58および樹脂部58の周囲を覆うゴム系材料により形成されているグロメット部59によって保たれている。つまり、給電バスバー57とインバータハウジング18との間に樹脂部58およびグロメット部59が介在されている。樹脂部58およびグロメット部59は絶縁部材に相当する。給電バスバー57を区別する場合、第2通孔52Aに対応する給電バスバー57Aとし、第2通孔52Bに対応する給電バスバー57Bとする。
【0026】
樹脂部58から突出する給電バスバー57の回路基板33側の端部は、回路基板33のパターンと面接触し、かつ、回路基板33の厚さ方向に対して弾性変形し易いように屈曲されている。給電バスバー57の回路基板33側の端部と反対側の端部は、樹脂部58から突出しており、外部電源であるバッテリ(図示せず)と接続される棒端子60と接続されている(図1を参照)。図2に示すように給電バスバー57における回路基板33のパターンと面接触する端部には、ボルト53を挿通する通孔61が形成されている。回路基板33の第2通孔52および給電バスバー57の通孔61に挿通されたボルト53と、ボルト53が螺入されるナット62と、が締結されることにより、給電バスバー57が回路基板33に締結され、電気的に接続される(図1を参照)。通孔61を区別する場合、ボルト53Aが挿通される通孔61Aとし、ボルト53Bが挿通される通孔61Bとする。ナット62はボルト53とともに第2締結部材に相当する。なお、ボルト53およびナット62の締結は平座金やスプリングワッシャを用いてもよい。
【0027】
次に、第1フィルタ回路35および第2フィルタ回路36について説明する。図3に示すように、第1フィルタ回路35および第2フィルタ回路36は回路基板33の第1面47に設けられている。第1フィルタ回路35は、第1面47における第1通孔51Aおよび第2通孔52Aに近い位置に設けられている。第2フィルタ回路36は、第2外縁部42および第1通孔51Bに近い位置に設けられている。第1フィルタ回路35および第2フィルタ回路36は、図4に示すノイズ低減回路63の一部を構成する。説明の便宜上、図3では、第1フィルタ回路35および第2フィルタ回路36を矩形で示す。
【0028】
次に、駆動回路37および制御回路38について説明する。駆動回路37および制御回路38は、回路基板33の第2面48に設けられている。駆動回路37は直流電力を交流電力に変換し、電動モータ13に交流電力を供給するための回路である。駆動回路37は直流電力を交流電力に変換するように複数のスイッチング素子(図示せず)を備えている。制御回路38は駆動回路37を制御するための回路である。制御回路38は、プログラムにより動作するマイクロプロセッサ(図示せず)を有し、マイクロプロセッサは演算処理を行うCPUおよびプログラムを記憶するメモリ(図示せず)を備える。制御回路38は空調ECU(図示せず)からの指令に基づいて駆動回路37を制御する。説明の便宜上、図3では、駆動回路37および制御回路38を矩形で示す。
【0029】
次に、インバータ部14の電気的構成について説明する。図4に示すように、インバータ部14は、駆動回路37および制御回路38を備えるほか、回路基板33上に実装され、給電バスバー57を通じて流れる直流電力に含まれるノイズ成分を低減するノイズ低減回路63を有している。ノイズ低減回路63の正極側の入力端子66には、正極側の入力ライン67が接続されている。正極側の入力ライン67の出力側は、コモンコイル69を介して、正極側の出力ライン68に接続されている。正極側の出力ライン68の出力側は、駆動回路37の正極側の入力端子と接続されている。コモンコイル69は、高周波ノイズが駆動回路37に伝わるのを抑制するためのものである。なお、電動圧縮機10の駆動時は、入力ライン67の入力端子66付近および入力ライン72の入力端子71付近が発熱し易い。
【0030】
ノイズ低減回路63の負極側の入力端子71には、負極側の入力ライン72が接続されている。負極側の入力ライン72の出力側は、コモンコイル69を介して負極側の出力ライン73に接続されている。そして、負極側の出力ライン73の出力側は、駆動回路37の負極側の入力端子と接続されている。
【0031】
正極側の入力ライン67と負極側の入力ライン72とは、直列に接続された2つのYコンデンサ群74、75を介して接続されている。Yコンデンサ群74、75にはそれぞれ2個のYコンデンサCY1が直列接続されている。Yコンデンサ群74、75は、第1フィルタ回路35を構成する。直列接続された2つのYコンデンサ群74、75の間の部分には、グランドライン76が接続されている。グランドライン76は、回路基板33において第1フィルタ回路35と最も近いボルト50Aを介してハウジング11と電気的に接続されている。正極側の入力ライン67と負極側の入力ライン72とは、平滑コンデンサ77を介して接続されている。
【0032】
正極側の出力ライン68と負極側の出力ライン73とは、直列に接続された2つのYコンデンサ群78、79を介して接続されている。Yコンデンサ群78、79にはそれぞれ2個のYコンデンサCY2が直列接続されている。Yコンデンサ群78、79は、第2フィルタ回路36を構成する。直列接続された2つのYコンデンサ群78、79の間の部分には、グランドライン80が接続されている。グランドライン80は、回路基板33において第2フィルタ回路36と最も近いボルト50Bを介してハウジング11と電気的に接続されている。正極側の出力ライン68と負極側の出力ライン73とは、Xコンデンサ群81が接続されている。Xコンデンサ群81は、並列接続されたn個のXコンデンサCX1~CXnにより構成される。
【0033】
ところで、図5(a)に示すように、回路基板33の第1面47には、2個の回路バスバー85(85A、85B)が固定されている。回路バスバー85Aは、第1通孔51Aおよび第2通孔52Aの中心を結ぶ仮想の線分L1上に沿って延在し、回路基板33のパターン(図示)に半田によって固定されている。回路バスバー85Bは、第1通孔51Bおよび第2通孔52Bの中心を結ぶ仮想の線分L2上に沿って延在し、回路基板33のパターン(図示)に半田によって固定されている。図5(b)に示すように、回路バスバー85は導電性に優れた略長方形の金属板(例えば、銅板)である。回路バスバー85(85A、85B)の長手方向の端部にはバスバー締結孔としての通孔86(86A、86B)が形成されている。
【0034】
回路バスバー85A(85B)の通孔86A(86B)は、第2通孔52A(52B)と重なる位置にあり、ボルト53A(53B)が挿通される。したがって、回路バスバー85A(85B)は、半田により回路基板33に固定されるが、ボルト53A(53B)の締結により、給電バスバー57A(57B)とともに回路基板33に締結される。回路バスバー85A(85B)の長手方向の長さは、固定されている状態では、回路バスバー85A(85B)が第1通孔51A(51B)および第2通孔52A(52B)の中心を結ぶ仮想の線分L1(L2)の中心を超える長さに設定されている。回路バスバー85A(85B)は半田により回路基板33の第1面47に固定されるが、半田は固定先であるパターン(図示せず)と回路バスバー85A(85B)の外縁部に形成される。固定先であるパターンは給電バスバー57A(57B)と電気的に接続され、回路バスバー85A(85B)が導電体として機能できるパターンである。
【0035】
回路基板33がインバータハウジング18に固定され、給電バスバー57が回路基板33に接続された状態では、回路基板33における第1通孔51A、51Bおよび第2通孔52A、52Bとでは厚さ方向の公差の相違が生じる。特に、給電アッセンブリ34の給電バスバー57は、樹脂部58、グロメット部59を介してインバータハウジング18に保持される。このため、第2通孔52A、52Bにおける公差は、各部材の公差の加算により第1通孔51の公差よりも大きく相違し易い。その結果、回路基板33におけるボルト53A、53B付近は、回路基板33の厚さ方向においてボルト50A、50B付近よりも高くなったり、あるいは低くなったりする。回路基板33の厚さ方向において回路基板33に生じる高低差は、回路基板33における第1通孔51と第2通孔52との間に歪を生じるが、回路バスバー85A、85Bは、回路基板33における公差の相違による歪に対する回路基板33の剛性を高める。
【0036】
次に、本実施形態の電動圧縮機10の作用について説明する。電動圧縮機10を駆動する場合、バッテリ等の電源からの直流電力が給電アッセンブリ34を通じてインバータ部14の回路基板33へ供給される。回路基板33において直流電流に含まれるノイズ成分は、第1フィルタ回路35および第2フィルタ回路36を含むノイズ低減回路63によって低減される。ノイズ成分は、例えば、グランドライン76、80を通じてハウジング11へ有効に吸収される。ノイズ成分が低減された直流電力は駆動回路37により交流電力に変換され、電動モータ13へ供給される。駆動回路37は制御回路38の指令に基づいて電動モータ13へ供給する交流電力を制御する。
【0037】
本実施形態に係る電動圧縮機10は以下の効果を奏する。
(1)回路バスバー85A(85B)は、第1通孔51A(51B)と第2通孔52A(52B)とを結ぶ仮想の線分L1(L2)上に沿って延在し、回路基板33に固定されている。第1通孔51A(51B)と第2通孔52A(52B)とが互いに近くても、回路基板33における第1通孔51A(51B)と第2通孔52A(52B)との間の剛性が回路バスバー85A(85A)によって向上する。また、回路基板33において高熱となり易い給電バスバー57A(57B)に近くに回路バスバー85A(85B)が固定されているので、回路基板33のパターンと比較して導電部としての電気抵抗値を低減でき、回路基板33における発熱を抑制できる。
【0038】
(2)回路バスバー85A(85B)が回路基板33に半田で固定されるとともに、ボルト53によって回路基板33に締結される。このため、回路バスバー85A(85B)の回路基板33に対する固定がより強固となるほか、導電部としての電気抵抗値をより低減できる。
【0039】
(3)回路基板33のノイズ成分は、第1通孔51に挿通されたボルト50を通じてハウジング11に吸収させる。このため、回路基板33においてノイズ低減回路63の第2フィルタ回路36は、第2通孔52A(52B)およびノイズ成分を通すボルト50A(50B)が挿通される第1通孔51A(51B)の近くに実装することが好ましい。その結果、第1通孔51A(51B)と第2通孔52A(52B)とを互いに近くする必然性が生じるが、より効果的に回路基板33におけるボルト50A(50B)、53A(53B)の締結による歪を抑制するとともに、回路基板33における発熱を抑制できる。その結果、歪による回路基板33の損傷や回路基板33における電子部品のはんだ破損に伴う導通不良脱落を防止することができる。
【0040】
(4)回路基板33における第1通孔51と第2通孔52との間の剛性が回路バスバー85A(85B)によって向上するので、第1通孔51A(51B)と第2通孔52A(52B)を近くすることができる。その結果、ノイズ低減回路63の第2フィルタ回路36により低減されるノイズ成分をグランドライン76(80)からボルト50A(50)を通じてハウジング11に効果的に吸収させることができる。
【0041】
(5)回路基板33に回路バスバー85A(85B)を設けることで、第1通孔51A(51B)と第2通孔52A(52B)とは互いに近くなる。このため、第1通孔51A(51B)と第2通孔52A(52B)とが離れている場合と比較して電動圧縮機10の耐振性が向上するほか、電動圧縮機10の小型化を図ることができる。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、回路バスバーの構成が第1の実施形態の回路バスバーと相違する。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成については第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0043】
図6(a)に示すように、本実施形態の回路バスバー91(91A、91B)は、第1通孔51A(51B)と第2通孔52A(52B)とを結ぶ仮想の線分L1(L2)上に沿って延在し、回路基板33に固定されているが、ボルト53A、53Bにより締結されない。回路バスバー91A(91B)は、略長方形であって、通孔を有さない。回路バスバー91A(92B)は、回路基板33の第1面47において給電バスバー57A(57B)と電気的に接続されているパターン(図示せず)に対して半田付けされている。
【0044】
本実施形態では、第1の実施形態の効果(1)、(4)、(5)と同等の効果を奏する。また、本実施形態の回路バスバー91(91A、91B)は通孔を有さないので、通孔を有する回路バスバー85(85A、85B)と比較すると、製作コストを低減できる。
【0045】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0046】
○ 上記の実施形態では、ノイズ低減回路としてコモンコイル、XコンデンサおよびYコンデンサを有したがこれに限らない。ノイズ低減回路は、例えば、コモンコイルのほかノーマルコイルを有してもよく、Yコンデンサの数も特に限定されない。
○ 上記の実施形態では、半田を用いて回路基板のパターンに回路バスバーを固定するようにしたが、これに限らない。回路基板への回路バスバーは半田に代えて接着剤を用いてもよい。この場合、回路バスバーの一部が回路基板のパターン以外の部位に固定することが可能となる。
○ 上記の実施形態では、略長方形の基板バスバーを例示したが、回路バスバーの形状については特に限定されない。回路バスバーの形状、例えば、半田による固定先であるパターンの形状に合わせた形状としてもよい。また、回路バスバーの締結孔は、円形としたがこれに限らない。回路バスバーの締結孔は、円形以外であってもよく、例えば、長孔であってもよい。
〇 上記の実施形態では、モータハウジング15とインバータハウジング18が別体であったが、一体形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 電動圧縮機
11 ハウジング
12 圧縮部
13 電動モータ
14 インバータ部
18 インバータハウジング
33 回路基板
35 第1フィルタ回路
36 第2フィルタ回路
37 駆動回路
50 ボルト(第1締結部材)
51 第1通孔(第1締結孔)
52 第2通孔(第2締結孔)
53 ボルト(第2締結部材)
57(57A、57B) 給電バスバー
61 ナット(第2締結部材)
63 ノイズ低減回路
74、75、78、79 Yコンデンサ群
76、80 グランドライン
85(81A、81B)、91(91A、91B) 回路バスバー
86(86A、86B) 通孔(バスバー締結孔)
CY1、CY2 Yコンデンサ
L1、L2 仮想の線分
図1
図2
図3
図4
図5
図6