(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144460
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】化粧板
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20220926BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B32B15/08 H
B60R13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045492
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】荒井 航介
【テーマコード(参考)】
3D023
4F100
【Fターム(参考)】
3D023BE06
4F100AB01A
4F100AB01C
4F100AB10A
4F100AK01C
4F100AK15E
4F100AK36D
4F100AK42C
4F100AK51B
4F100AR00E
4F100BA04
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4F100BA10D
4F100CA23D
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4F100EA02
4F100EH46
4F100EH66
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4F100EJ42
4F100GB07
4F100GB08
4F100GB31
4F100GB33
4F100HB00C
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4F100JB01
4F100JK07A
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4F100JL01
4F100JN01E
4F100JN26D
4F100YY00A
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】化粧シートを曲面部分へ施行する際の品位を改善できる技術を提供する。
【解決手段】化粧シート1A(化粧板)は、金属層10と、金属層10に積層された接着層(A)20と、接着層(A)20に積層されたフィルム層30と、フィルム層30に積層されたメラミン樹脂を含有するコート層40と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層と、
前記金属層に積層された接着層(A)と、
前記接着層(A)に積層されたフィルム層と、
前記フィルム層に積層されたメラミン樹脂を含有するコート層と、
を有する化粧板。
【請求項2】
前記コート層の厚みTが1μm以上20μm以下である、請求項1に記載の化粧板。
【請求項3】
前記金属層を構成する金属の弾性率αと前記金属層の厚みtとの積α・tが30mm・GPa以上400mm・GPa以下である、請求項1または2に記載の化粧板。
【請求項4】
90度屈曲させたときに、前記コート層にシワまたはクラックが発生しない、請求項1から3までのいずれか1項に記載の化粧板。
【請求項5】
前記フィルム層は、有色層と、接着層(B)と、受領層と、透明層と、を前記接着層(A)側からこの順で備える、請求項1から4までのいずれか1項に記載の化粧板。
【請求項6】
前記受領層と前記有色層の間に印刷層を備える、請求項5に記載の化粧板。
【請求項7】
前記フィルム層は、基材層と、金属蒸着層と、接着層(B)と、印刷層と、受領層と、透明層と、を前記接着層(A)側からこの順で備える、請求項1から4までのいずれか1項に記載の化粧板。
【請求項8】
前記フィルム層は、基材層と、接着層(C)と、金属箔と、接着層(B)と、印刷層と、受領層と、透明層と、を前記接着層(A)側からこの順で備える、請求項1から4までのいずれか1項に記載の化粧板。
【請求項9】
前記フィルム層は、受領層と、透明層と、を前記接着層(A)側からこの順で備え、
前記接着層(A)は透明接着剤である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の化粧板。
【請求項10】
前記受領層と前記接着層(A)との間に印刷層を備える、請求項9に記載の化粧板。
【請求項11】
前記コート層の表面はエンボス加工が施されている、請求項1から10までのいずれか1項に記載の化粧板。
【請求項12】
前記コート層は、艶消しフィラーを含み、
前記コート層の表面に前記艶消しフィラーの形状に追従した凸部を備える、
請求項1から11までのいずれか1項に記載の化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道列車・バスの内装や、住宅やビル等の内壁・外装の施工において、壁の意匠性を高めるために化粧シート(「化粧板」ともいう)を施す場合がある。化粧シートの表面には、耐擦傷性や防汚性を付与することが行われている。
【0003】
化粧シートは、従来からプレス機により成型されて生産されている。プレス機の特性上、化粧シートの長さは最大10尺(3m)までの制限があり、さらに施工面が平面に限られ、曲面部分に施行(曲面貼り)することが難しかった。近年、曲面部分に施行することができる化粧シートも開発されているが、施行可能な曲率半径が大きく、施工面が限定されていた。
特許文献1には、鉄道列車・バス等の車両用内装材として、メラミン樹脂含浸紙からなる表面層と、化粧板構成内の最下層及び中間層に複数の金属薄板を配した金属ベースメラミン樹脂化粧板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、化粧シートを曲面部分へ施行することについて改善の余地があった。特に、鉄道列車の内装では、客車構造の特性上、曲面部分が多く、施工時に要求される曲率半径が小さい等の課題があり、そのような厳しい要望に応えられる技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、金属層と、
前記金属層に積層された接着層(A)と、
前記接着層(A)に積層されたフィルム層と、
前記フィルム層に積層されたメラミン樹脂を含有するコート層と、
を有する化粧板、が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、化粧シートを曲面部分へ施行する際の品位を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る化粧シートの概略断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る、従来の化粧シートの施工方法と、新たな化粧シートの施工方法を比較説明する図である。
【
図3】第1の実施形態に係る化粧シートの製造方法を示す概略工程フロー図である。
【
図4】第2の実施形態に係る化粧シートの概略断面図である。
【
図5】第2の実施形態に係る化粧シートの製造方法を示す概略工程フロー図である。
【
図6】第3の実施形態に係る化粧シートの概略断面図である。
【
図7】第4の実施形態に係る化粧シートの概略断面図である。
【
図8】第5の実施形態に係る化粧シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「~」は特に断りがなければ「以上」から「以下」を表す。
以下の実施形態では、まず第1の実施形態で、化粧シートの基本的な構成を説明する。第2~第5の実施形態で、化粧シートのより具体的な構成(特にフィルム層の構成のバリエーション)を説明する。
【0010】
≪第1の実施形態≫
<化粧シートの概要>
図1に、本実施形態の化粧材シートの概略断面図を示す。化粧シート1Aは、鉄道列車の内装や、住宅やビル等の内壁・外装に用いられる。化粧シート1Aには必要に応じて意匠が付されて用いられる。長尺帯状の化粧シートを製造し、最終工程で所定長に切断することで、化粧シート1Aが得られる。なお、切断せずに長尺帯状の化粧シートを巻回体として市場に提供されてもよい。
【0011】
図示のように、化粧シート1Aは、金属層10と、接着層20と、フィルム層30と、コート層40とをこの順で備える。
以下、化粧シート1Aを構成する各層について説明する。
【0012】
(金属層10)
金属層10は、例えば金属化合物などの金属材料からなり、いわゆる芯材として機能するとともに隠蔽層として機能する。金属層10として、より具体的には、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)やステンレス、鋼板を好適に用いることができる。金属層10により表面側から裏面側に位置する施工面を隠蔽することができる。
【0013】
金属層10は、コート層40側から見る場合において、後述するフィルム層30との組み合わせにより、金属層10自体の模様等を視認させたり、所望の色彩とさせたりすることができる。
【0014】
このようなに金属層10が、金属材料成分を含むことにより、耐熱性・耐火性を実現できる。
【0015】
金属層10の厚さは、要求させる柔軟性(可撓性)により適宜設定できるが、例えばアルミニウムの場合であれば、厚さ1~3mm程度であり、ステンレスや鋼板の場合は0.5~1mm(0.8mm)程度である。
【0016】
金属層10を構成する金属の弾性率α(ヤング率)と金属層10の厚みtとの積α・t(mm・GPa)が30mm・GPa以上400mm・GPa以下である。積α・tの下限値は、好ましくは40mm・GPa以上であり、より好ましくは50mm・GPa以上である。上限値は、このましくは270mm・GPa以下であり、より好ましくは250mm・GPa以下である。積α・t(mm・GPa)が上記範囲とすることで、化粧シート1Aの強度と可撓性のバランスを確保でき、施工性および施工品位を良好に実現できる。
【0017】
例えば、アルミニウムの弾性率αは70.3GPaであり、厚さtが1~3mmであれば、上記積α・tは70.3~210.9mm・GPaとなる。また、ステンレス(SUS430)の弾性率αは200であり、厚さt=0.5~1mmであれば、上記積α・tは100~200mm・GPaとなる。いずれの場合も、積α・t(mm・GPa)の好適な範囲(30mm・GPa以上300mm・GPa以下)を満たす。
【0018】
(接着層(A)20)
接着層(A)20としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド系接着剤、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)、ポリ酢酸ビニル(VA)、ポリエチレンビニルアセテート(EVA)系接着剤等が挙げられる。
【0019】
(フィルム層30)
フィルム層30は、透明または不透明の熱可塑性樹脂や硬化性樹脂材料等の樹脂材料からなる。具体的には、樹脂材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン(COP)、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6-12、ナイロン6-66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリパラキシリレン(poly-para-xylylene)、ポリモノクロロパラキシリレン(poly-monochloro-para-xylylene)、ポリジクロロパラキシリレン(poly-dichloro-para-xylylene)、ポリモノフルオロパラキシリレン(poly-monofluoro-para-xylylene)、ポリモノエチルパラキシリレン(poly-monoethyl-para-xylylene)等のポリパラキシリレン樹脂等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等を挙げることができ、これらから選択される少なくとも1種を含むことができる。本実施形態においては、ポリ塩化ビニルフィルムまたはポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0020】
フィルム層30の厚みは、10μm~300μm程度である。これにより、化粧シート1Aの薄型化を図りつつ、加工性、耐久性、信頼性等を良好に確保できる。例えば、フィルム層30の厚みが小さすぎると、衝撃を受けた際に内側の層(例えばアルミニウム等の金属層10)が露出しやすくなるが、厚みを上記範囲とすることで衝撃時に内側の層が露出することを大幅に抑制できる。また、フィルム層30より金属層10が硬いことから、フィルム層30が薄い方が耐傷性の点で有利となる。また、金属層10は不燃であることから、良好な不燃性を実現する点でもフィルム層30が薄い方が好ましい。
また、フィルム層30の厚さが大きすぎると、化粧シート1Aの薄型化を図ることが困難となり、また、化粧シート1の加工性が低下する。
フィルム層30の厚みを上記範囲とすることで、上記の特徴をバランスよく実現できる。
【0021】
なお、フィルム層30は、抗菌剤または抗ウィルス剤として、銀、銅、チタンまたはそれら金属の金属イオンからなる一群から選択された一又は複数を含んでもよい。
【0022】
(コート層40)
コート層40は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を含む硬質樹脂材料からなり、良好な耐擦傷性、防汚性(耐汚染性)等の機能を有する。また、コート層40を構成する硬質樹脂材料は、一般に、高い透明性を有する。したがって、フィルム層30や金属層10で反射した光を好適に透過する。これにより、透過光を観察者に視認させることができ、優れた審美性を有する化粧シート1Aを実現できる。
【0023】
コート層40の層厚は20μm以下、好ましくは10μm以下とすることができる。コート層40の層厚の下限値は、例えば1μm以上であり、好ましくは5μm以上である。
【0024】
コート層40を構成する樹脂としては、フィルム層30で例示した樹脂を挙げることができ、メラミン樹脂が好ましい。
【0025】
メラミン樹脂は、構成成分としてメラミン化合物とアルデヒド化合物とを含む樹脂である。メラミン化合物は、1,3,5-トリアジン骨格を有する化合物で、トリアジン環に3つのアミノ基が導入された化合物である。アルデヒド化合物としては、特に、ホルムアルデヒドが好ましい。化粧シート1Aの硬度をより向上させることができ、また、化粧板1Aを構成するメラミン系樹脂の合成をより効率よく行うことができる。
【0026】
メラミン樹脂は、各種硬質樹脂材料の中でも、特に高い表面硬度を有し、耐擦傷性、防汚性(汚れの付着のしにくさ)に特に優れ、化粧シート1の審美性、耐久性のさらなる向上に寄与する。
【0027】
コート層40は、フィルム層30と同様に、抗菌剤または抗ウィルス剤として、銀、銅、チタンまたはそれら金属の金属イオンからなる一群から選択された一又は複数を含んでもよい。
【0028】
コート層40は、その表面にエンボス加工が施されてもよい。エンボスを有することで、指紋等が付き難く防汚効果を向上できる。
【0029】
また、コート層40は、艶消しフィラーを含み、その表面に艶消しフィラーの形状に追随した凸部を備えることもできる。凸部を有するコート層40を備えることにより、艶が抑制され審美性に優れるとともに指紋等が付き難く防汚効果にも優れる。
【0030】
艶消しフィラーの平均粒子径は、コート層40の平均膜厚(12μm以下)よりも大きいことが好ましい。艶消しフィラーの平均粒子径は3μm~100μm、好ましくは5~70μm、さらに好ましくは5~50μmである。
【0031】
また、コート層40表面の表面粗さ(算術平均高さ(μm)Sa)は、0.1~10μm、好ましくは0.2~7μm、より好ましくは0.5~5μmである。コート層40表面の表面粗さが上記範囲であれば、表面の艶の抑制効果や防汚効果により優れた化粧シートを提供することができる。
【0032】
さらに、本実施形態の化粧シート10は、コート層40の凸部を備える面の上面視において、コート層40表面の面積(100%)における艶消しフィラーの面積の比(艶消しフィラーの面積占有率)が、5~60%、好ましくは10~50%、さらに好ましくは15~40%である。艶消しフィラーの面積比が上記範囲であれば、表面の艶の抑制効果や防汚効果により優れた化粧シートを提供することができる。
【0033】
艶消しフィラーの面積比は、レーザ顕微鏡によるコート層40表面の画像を2値化処理し、コート層40(100%)における艶消しフィラーの面積比を算出することで得ることができる。
【0034】
艶消しフィラーは、アクリル樹脂、メラミン系樹脂およびシリカから選択される少なくとも1種を含む。艶消しフィラーとしては、アクリル樹脂粒子、メラミン系樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、シリカ粒子、これらの樹脂とシリカとの複合粒子等を挙げることができる。印刷層の視認性を考慮した場合、アクリル樹脂またはメラミン系樹脂を含むことが好ましい。
【0035】
艶消しフィラーとしては、メタブレン(アクリル樹脂粒子、三菱ケミカル社製)、タフチック(アクリル樹脂粒子、東洋紡社製)、テクポリマー(アクリル樹脂粒子、積水化成品工業社製)、テクポリマー(ポリスチレン樹脂粒子、積水化成品工業社製)、シリカ粒子(デンカ社製)、オプトビーズ(日産化学社製、メラミン系樹脂・シリカ複合粒子)、エポスター(メラミン系樹脂粒子、日本触媒社製)等を挙げることができる。
【0036】
艶消しフィラーの屈折率が、コート層40を構成する樹脂層(コート層40の艶消しフィラー以外の部分)の屈折率と著しく相違していると、コート層40の透明度が低下することから、コート層40の艶消し効果が十分に発揮されず、外観の意匠性が低下する。従って、外観の意匠性を改善する観点から、艶消しフィラーは、コート層40を構成する樹脂との屈折率差が0.2以下の透明な材質からなるものを使用することが好ましい。
【0037】
コート層40を構成する樹脂の屈折率は、1.4~1.7程度であり、好ましく用いられるメラミン樹脂は1.6程度であるので、艶消しフィラーの屈折率の範囲は、1.4~1.8程度となる。
【0038】
コート層40を構成する樹脂の線膨張係数と艶消しフィラーの線膨張係数との差は5×10-5/℃以下である。当該範囲であれば、温度変化に対する艶消しフィラーとコート層40を構成する樹脂との伸縮度合いの差が小さく、コート層40の複数の凸部を維持することができ、ひいては艶の抑制効果や防汚効果を安定して得ることができる。
【0039】
本実施形態において、コート層40は、ベース樹脂がメラミン系樹脂であり、艶消しフィラーに含まれる樹脂がアクリル樹脂である組み合わせ、またはベース樹脂が熱可塑性樹脂であり、艶消しフィラーに含まれる樹脂がメラミン系樹脂である組み合わせであることが好ましい。
【0040】
<化粧シート1Aの施工方法>
化粧シート1の施工法を簡単に説明する。
ここでは鉄道車両やバス車両の内装(床・天井・壁面)の施工について、
図2を参照して、従来の化粧シートを用いる場合の施工方法(従来施工)と、本実施形態の化粧シート1を用いることで可能となる施工方法(新施工)を比較して説明する。
図2(a)が従来の施工方法を説明する図であり、
図2(b)が本実施形態の施工方法を説明する図である。
【0041】
図2(a)に示すように、従来の化粧シートを用いた施工では、折り曲げ不可な形状となっている部分に対応させるために、化粧シートを複数に分割して、さらにそれぞれを押させる部材(押面部材)が必要になり、別部材が多数になっていた。また、外曲げ不可によるデザイン性の制約があり、また、車両側のデザイン設計の際にも化粧シートの上も外曲げ不可の特性を考慮する必要があった。さらに、化粧シートの端部の施工において巻込み施工ができず、この部分で反りが発生しやすく押面部材等の他部材が必要となっていた。
【0042】
一方、本実施形態の化粧シート1では、強度と可撓性がバランスが取れた特性を有し、外曲げが可能となっている。したがって、例えば、照明装置を取り付けるための構造として凹状形状があっても、適宜屈曲さえて凹状形状の内部まで化粧シート1を施工することが容易に行える。また、端部において反り等の発生が抑えられているので、押面部材等の他部材が不要である。また、壁面が外曲げ形状を有しても、シワやヒビを発生させることなく、化粧シート1を施工できる。また、押面部材の取り付けに伴いビス等の部材が必要となり、それへの乗客の接触を考慮して設置位置が限定されることがあったが、本実施形態ではそのような懸念がなく、この観点においてもデザイン性の自由度が向上する。
【0043】
<化粧シート1Aの製造方法>
(工程概要)
以下の製造方法では、金属層10としアルミニウムを用いた例を
図3を参照して説明する。
【0044】
化粧シート1の製造工程は、フィルム層30とコート層40とを積層させ表面フィルムを製造する表面フィルム製造工程S10と、金属層10に接着層(A)20を設けるAL接着工程S20と、表面フィルム製造工程S10で製造された表面フィルとAL接着工程S20で接着層(A)20が設けられた金属層10とを接合する表面フィルム接合工程S30とを有する。これら工程(S10、S20、S30)は連続工程で行われ、さらに下流工程では、マスキング工程S40、切断工程S50が、上記工程(S10、S20、S30)と連続して行うことができる。
【0045】
(表面フィルム製造工程S10)
表面フィルム製造工程S10では、まず、長尺状の透明フィルムの巻回体から、透明フィルム(フィルム層30の材料)を供給し、必要に応じて印刷層や隠蔽層(有色層)を形成する。印刷層や隠蔽層(有色層)を有する化粧シートの構成については、第2~第5の実施形態で説明する。また、印刷層を有する化粧シートの製造方法については第2の実施形態で説明する。
【0046】
透明フィルム(フィルム層30の材料)の一方の面に、コート層40を所定の厚みで形成する。具体的には、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を含有する塗布液を準備し(塗布液準備工程)、この塗布液を透明フィルム(フィルム層30の材料)の一方の面に所定の膜厚となるように連続的に塗工し(コート層付与工程)、次いで乾燥処理により硬化させる(乾燥処理工程)。
【0047】
塗工方法としては、各種の方法を用いることができるが、具体的には、ダイコート法、リップコート法、グラビアコート法、インクジェット法、スピンコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法などが挙げられる。長尺状の巻回体からフィルム層30を連続的に供給し、塗布液の塗工および硬化工程を連続的に行い、第1積層体(コート層40が積層されたフィルム層30)が得られる。
【0048】
(AL接着工程S20)
AL接着工程S20では、アルミニウムからなる金属層10の巻回体から金属層10(AL基材)を供給し前処理S21を行い、金属層10の一方の面に接着層(A)20を付与する接着剤付与処理S22を行って、接着層(A)20が付与された金属層10を加熱処理S23する。
【0049】
(表面フィルム接合工程S30、マスキング工程S40及び切断工程S50)
表面フィルム接合工程S30では、表面フィルム製造工程S10で製造された第1積層体(コート層40が積層されたフィルム層30)に、AL接着工程S20で製造された接着層(A)20が付与された金属層10を接合する。このとき、フィルム層30に接着層(A)20を接合させる。
【0050】
これによって、長尺状の化粧シート1Aが製造され、その後、マスキング工程S40において、化粧シート1のコート層40にマスキングを施し、切断工程S50として化粧シート1を所定長に切断する。
【0051】
<化粧シート1Aの特長のまとめ>
以上、本実施形態の特長(効果)を纏めると次の通りである。
(1)化粧シート1A(化粧板)は、
金属層10と、
金属層10に積層された接着層(A)20と、
接着層(A)20に積層されたフィルム層30と、
フィルム層30に積層されたメラミン樹脂を含有するコート層40と、
を有する。
化粧シート1Aによると、強度と可撓性のバランスを確保でき、施工性および施工品位を良好に実現できる。また、芯材としての機能を金属層10が果たすことから、良好の不燃性(耐火性)を確保できる。特に、列車車両の内装のように、曲面等が多く、施工条件が厳しい場合でも、対応が可能となる。具体的に、従来の化粧シートであれば、折り曲げ不可の場合が多く、特に外曲げ不可であったり、巻き込み施工ができないとう課題があった。また、反りが発生しやすく、反りを押させるための押工面部材等が別途必要という課題もあった。しかし、本実施形態によれば、上述のような課題が解消され、外曲げが可能であり、施工上の制限が大きく緩和され、デザイン性の自由度が高まる。また、押工面が不要の施工を実現でき、部品点数の削減・メンテナンス性の向上、デザイン性の向上を実現できる。
【0052】
(2)コート層40の厚みTが1μm以上20μm以下である。
コート層40の厚みTを上記範囲とすることで、化粧シート1の強度と可撓性のバランスを好適に図ることができる。
【0053】
(3)金属層10を構成する金属の弾性率αと金属層10の厚みtとの積α・tが30mm・GPa以上400mm・GPa以下である。
金属層100の厚みTを上記範囲とすることで、化粧シート1の強度と可撓性のバランスを好適に図ることができる。
【0054】
(4)化粧シート1は、90度屈曲させたときに、コート層40にシワまたはクラックが発生しない。施工の自由度、デザインの制約を大幅に緩和できる。
【0055】
≪第2の実施形態≫
<化粧シート1Bの概要>
図4の断面構造を参照して化粧シート1Bの構成を説明する。本実施形態の化粧シート1Bは、第1の実施形態の化粧シート1Aのフィルム層30を複数層として示したものであり、以下では第1の実施形態と異なる点(即ちフィルム層30B)に着目して説明し、同一の構成については適宜説明を省略する。
【0056】
図4に示すように、化粧シート1Bは、金属層10と、接着層20と、フィルム層30Bと、コート層40とをこの順で備える。
以下、化粧シート1Bのフィルム層30Bを構成する各層について説明する。
【0057】
<フィルム層30B>
フィルム層30Bは、金属層10(接着層(A)20)側から、有色層31と、接着層(C)34と、印刷層35と、受領層36と、透明層37とを有する。
【0058】
(有色層31)
有色層31は、接着層(A)20に接合される層であって、金属層10の面を隠蔽することができ、金属層10が樹脂コート層18側から視認されることがない。また、有色層31は、コート層40側から見る場合において、後述する印刷層35との組み合わせにより、印刷層35の模様の視認性を向上させたり、色彩を変化させることができる。
有色層31の構成材料としては、第1の実施形態のフィルム層30で例示した材料、具体的には、樹脂材料、金属材料、金属酸化物等の金属化合物等が挙げられる。
【0059】
(接着層(C)34)
接着層(C)34は、有色層31と印刷層35とを密着接合させる層であって、接着層(A)20と同様の材料をもちいることができる。
【0060】
(印刷層35)
印刷層35は、木目調模様、石材調模様、幾何学模様等の各種模様を備え、ユーザーがコート層40側から見る場合において、当該模様が視認される。
【0061】
印刷層35は、樹脂と、顔料、染料等の着色剤とを含むことができ、当該着色剤により各種模様が形成される。印刷層35に含まれる樹脂としては、フィルム層30で例示した樹脂を挙げることができる。印刷層35の層厚は、全体として1μm~10μm程度である。
【0062】
(受領層36)
受領層36(インク受容層)は、印刷層35の下地としての機能を有する。受領層36は、印刷層35の形成に用いるインクを内部に好適に浸透させ、印刷層35と透明層37との密着性を向上させる。
【0063】
受領層36の材料は、特に限定されないが、例えば、各種熱可塑性樹脂、硬化性樹脂材料の硬化物等の各種樹脂材料が好適に用いることができる。受領層36を構成する樹脂材料の具体例としては、上述のフィルム層30と同様の材料を用いることができる。
【0064】
受領層36の厚さは、特に限定されないが、20nm以上50μm以下とすることで、化粧シート1の薄型化とインク浸透性のバランスを好適にとることができる。
【0065】
(透明層37)
透明層37は、ポリエチレンテレフタレートを含む材料で構成される。曲げ外力等に対する安定性、取り扱いのし易さをより向上させる。
【0066】
このような構成の化粧シート1Bによると、第1の実施形態と同様の施工が可能となる。また、印刷層35を有することから、化粧シート1Bの施工において、デザイン性の向上を一層図ることができる。
【0067】
<化粧シート1Bの製造方法>
図5を参照して化粧シート1Bの製造方法について説明する。化粧シート1Bの製造方法は、第1の実施形態の化粧シート1Aの製造方法において、表面フィルム製造工程S10を複数層からなる上記フィルム層30Bを製造する方法(表面フィルム製造工程S10B)に置き換えたものである。
【0068】
(表面フィルム製造工程S10B)
表面フィルム製造工程S10Bでは、まず、長尺状の透明フィルムの巻回体から、透明フィルム(透明層37)を供給し、受領層36及び印刷層35を形成する。印刷層35の形成方法として、例えばグラビア印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷等を用いることができる。
【0069】
つづいて、印刷層35側に接着層(C)34を付与する(接着剤付与処理S11)。また、透明層37の印刷層35側とは反対面にコート層40を所定の厚みで形成する(コート層付与処理S12)。次いで乾燥処理により硬化させる(乾燥処理工程S13)。
これによって、接着層(C)34、印刷層35、受領層36及び透明層37が積層された第1積層体が得られる。
【0070】
つぎに、別途、有色層31(隠蔽基剤)を準備し、前工程で得られた第1積層体の印刷層35(接着層(C)34)の表面にラミネートし(ラミネート処理S40)、得られた第2積層体を表面フィルム接合工程S30に供給する。
【0071】
表面フィルム接合工程S30では、第1の実施形態のAL接着工程S20と同様の処理により供給された接着層(A)20が付与された金属層10と、表面フィルム製造工程(S10B)で得られた第2積層体を接合する。このとき、フィルム層30Bの有色層31に接着層(A)20を接合させる。
【0072】
これによって、長尺状の化粧シート1Bが製造され、その後、マスキング工程S40において、化粧シート1のコート層40にマスキングを施し、切断工程S50として化粧シート1を所定長に切断する。
【0073】
化粧シート1Bの製造方法においても、第1の実施形態と同様に、全ての工程を連続した工程により実現できる。
【0074】
≪第3の実施形態≫
<化粧シートの概要>
図6の断面構造を参照して化粧シート1Cの構成を説明する。本実施形態の化粧シート1Cは、第2の実施形態の化粧シート1Bのフィルム層30Bで示した有色層31と接着層(C)34の間に金属蒸着層33Cを設けたフィルム層30Cを有する構成としている。以下では第1、第2の実施形態と異なる点(即ちフィルム層30Cの金属蒸着層33C)に着目して説明し、同一の構成については適宜説明を省略する。
【0075】
図6に示すように、化粧シート1Cは、金属層10と、接着層20と、フィルム層30Cと、コート層40とをこの順で備える。
以下、化粧シート1Cのフィルム層30Cを構成する各層について説明する。
【0076】
<フィルム層30C>
フィルム層30Cは、金属層10(接着層(A)20)側から、有色層31と、金属蒸着層33Cと、接着層(C)34と、印刷層35と、受領層36と、透明層37とを有する。
【0077】
金属蒸着層33Cは、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、または酸化窒化ケイ素が有色層31に蒸着した層である。金属蒸着層33Cを有することで、化粧シート1Cは、メタリック調の意匠が得られる。その他の特長は、第1、第2の実施形態と同様である。なお、金属蒸着層33Cが有色層31の全面に設けられるような場合には、有色層31の呈する色調が不要であるので、有色層31の代わりに単に基材として機能する層とされてもよい。
【0078】
製造方法においては、第2の実施形態の製造法(
図5)において、金属蒸着層33Cが蒸着された有色層31として表面フィルム製造工程に供給される。
【0079】
≪第4の実施形態≫
<化粧シート1Dの概要>
図7の断面構造を参照して化粧シート1Dの構成を説明する。本実施形態の化粧シート1Dは、第3の実施形態の化粧シート1Cのフィルム層30Cで示した金属蒸着層33Cの代わりに、接着層(B)32を介して金属箔層33Dを有色層31に設けた構成としている。以下では第3の実施形態と異なる点(即ちフィルム層30Dの金属箔層33D)に着目して説明し、同一の構成については適宜説明を省略する。
【0080】
図7に示すように、化粧シート1Dは、金属層10と、接着層20と、フィルム層30Dと、コート層40とをこの順で備える。
以下、化粧シート1Dのフィルム層30Dを構成する各層について説明する。
【0081】
<フィルム層30D>
フィルム層30Dは、金属層10(接着層(A)20)側から、有色層31と、接着層(B)32と、金属箔層33Dと、接着層(C)34と、印刷層35と、受領層36と、透明層37とを有する。
【0082】
金属箔層33Dは、アルミニウムや銅などの金属箔であって、有色層31に接着層(B)32によって貼りつけられている。金属箔層33Dを有することで、化粧シート1Dは、メタリック調の意匠が得られる。その他の特長は、第1~第3の実施形態と同様である。
【0083】
製造方法においては、第2の実施形態の製造法(
図5)において、金属箔層33が接着された有色層31として表面フィルム製造工程S20に供給される。
【0084】
≪第5の実施形態≫
<化粧シート1Eの概要>
図8の断面構造を参照して化粧シート1Eの構成を説明する。本実施形態の化粧シート1Dは、第2~第4の実施形態で有していた有色層31が省かれた構成となっている。以下では第1~第4の実施形態と異なる点に着目して説明し、同一の構成については適宜説明を省略する。
【0085】
図8に示すように、化粧シート1Cは、金属層10と、接着層20Eと、フィルム層30Eと、コート層40とをこの順で備える。本実施形態では、接着層20Eは透明接着剤からなる。
以下、化粧シート1Eのフィルム層30Cを構成する各層について説明する。
【0086】
<フィルム層30E>
フィルム層30Cは、金属層10(接着層(A)20)側から、印刷層35と、受領層36と、透明層37とを有する。
【0087】
本実施形態では、有色層31が無く、接着層(A)20Eが透明接着剤からなることから、コート層40側から見たユーザは、金属層10の色調(メタリック調)を視認できる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例0089】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
[実施例1]
実施例1の化粧板の試料を
図5で説明した製造方法により製造した。具体的には次の通りである。
厚み38μmの長尺状のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材層)が巻かれた巻回体から、PETフィルムを連続的に供給しながら、その一方の面に、グラビア印刷により、厚み3μmの印刷層を連続的に形成した。それと同時に、メラミン系樹脂を含有する塗布液(樹脂:住友ベークライト社製、溶剤:水)を準備し、PETフィルム(基材層)の印刷層を備える面とは反対側の面に、塗布液をダイコート法で連続的に塗工し、次いで硬化させて膜厚6μmの樹脂コート層を積層した。以上により、印刷層と、PETフィルム(基材層)と、樹脂コート層とが順に積層された長尺状の第1積層体を得た。
一方、別途、膜厚25μmの長尺状のポリ塩化ビニル(PVC)フィルム(基材層)が巻かれた巻回体から、当該PVCを連続的に供給し、その一方の面に、ウレタン樹脂からなる接着層を形成し、当該接着層を介して第1積層体の印刷層に連続的にラミネートし、長尺状の第2積層体を得た。
次いで、アルミニウム(JIS H 4000に規定されるA3003PH16、厚み1.0mm)からなる金属層の巻回体から金属層を供給し前処理を行い、金属層の一方の面に接着層(A)を付与し、接着層(A)が付与された金属層を加熱処理した。
第2積層体に、接着層(A)が付与された金属層を接合することで、長尺状の化粧シートが製造され、その後、化粧シートのコート層にマスキングを施し、定長に切断することで、実施例1の試料を得た。
【0091】
[比較例1]
比較例1として以下のメラミン化粧板アルミ板付きを製造した。具体的には次の通りである。まず、基材として80g/m2の未晒クラフト紙を使用し、この未晒クラフト紙に、フェノール樹脂50g/m2を含浸させて、厚みが0.10mmのコア層を形成した。このコア層を金属製のベース板として厚み1.0mmのアルミ板(JIS H 4000に規定されるA3003PH16)に積層した。この場合において、このコア層に、酸化チタン含有化粧紙にメラミン樹脂20g/m2を含浸させた厚み0.10mmの化粧紙を積層して、全体の厚みが1.20mmの比較例1の試料を得た。
【0092】
[比較例2]
厚さ1mmアルミ板(JISH4000に規定されるA3003PH16)の一方の面に、塗料(アクリル系樹脂焼付塗装)を膜厚30μmとなるように塗工し、比較例2の試料を得た。
【0093】
[比較例3]
表面層材料に厚さ125μmのポリ塩化ビニル(PVC)フィルム(基材層)を用い、裏面にアクリル系粘着層を付与し、アルミニウム(JIS H 4000に規定されるA3003PH16、厚み1.0mm)からなる金属層片面にスキージで貼り合せた比較例3の試料を得た。
【0094】
<評価>
実施例1及び比較例1-3について、(1)スクラッチ性、(2)耐摩耗性、(3)鉛筆硬さ、(4)払拭性、(5)耐薬品性、(6)平滑性、(7)加工性の7項目について試験を行い評価した。評価結果を表1に示す。
【0095】
[1.スクラッチ性]
トライボステーションにスチールウールを取り付け250gの荷重で50往復スクラッチ後、傷の程度を目視で外観を確認し、「目立つ」または「目立たない」で評価した。
実施例1及び比較例1では、傷の程度が目立たず、高いスクラッチ性を示した。
【0096】
[2.耐摩耗性]
JIS K 6902に規定する「熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法」にもとづいて行った。
評価基準は次の通りである。
◎:500回以上
○:100回以上500回未満
×:100回未満
実施例1、比較例1及び比較例3では高い耐摩耗性を示した。特に実施例1では非常に高い耐摩耗性を示した。
【0097】
[3.鉛筆硬さ]
JIS K 5600に規定する「鉛筆硬度試験」にもとづいて行った。
評価基準は次の通りである。
◎:6H~
○:3H~5H
×:~2H
実施例1、比較例1及び比較例2では高い耐摩耗性を示した。
【0098】
[4.払拭性]
3kgの荷重でゴム(黒天然ゴム)およびクレヨンで跡をつけ、3kgの荷重でウエス拭き後の外観を「目立たない」「ほぼ目立たない」「目立つ」の3段階で評価した。
ゴム跡については、実施例1及び比較例2では高い払拭性を示した。
クレヨン跡については実施例1が高い払拭性を示した。
【0099】
[5.耐薬品性]
3種類の薬品(「アセトン」「メチルエチルケトン」「ガソリン」)で拭き取ったときの状態を確認して評価した。
実施例1、比較例1及び比較例2では、十分な耐薬品性を示した。比較例3では表面に溶解が見られた。
【0100】
[6.平滑性]
50℃オーブンで2時間乾燥させた後の反り状態を確認して評価した。
実施例1、比較例2及び比較例3では反りが発生せず高い平滑性を示した。
【0101】
[7.加工性]
3Rで外曲げした際の状態を目視観察し割れの有無を「割れなし」「割れあり」の評価した。
実施例1、比較例2及び比較例3では、外曲げ時に割れが発生せず高い加工性を示した。
[評価まとめ]
実施例1は上記7項目について、満足のいく結果を示した。このような特徴を有する化粧シート(化粧板)によると、鉄道列車の内装のように、客車構造の特性上、曲面部分が多く、施工時に要求される曲率半径が小さい場合であっても、高い品質で施工することができることが確認できた。また、強度(耐摩耗性など)や耐薬品性が高いことから、清掃による補修頻度を低減し、また良好は利用環境(清潔な車内環境)を実現することができることを確認できた。
【0102】