(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144464
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】キャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/33 20060101AFI20220926BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20220926BHJP
H01G 4/228 20060101ALI20220926BHJP
H01G 4/40 20060101ALI20220926BHJP
H01G 17/00 20060101ALI20220926BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H01G4/33 102
H01G4/30 541
H01G4/228 K
H01G4/40 A
H01G17/00
H01L27/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045496
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 武司
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
5F038
【Fターム(参考)】
5E001AB01
5E001AC01
5E001AC04
5E001AF03
5E001AJ03
5E082AB01
5E082BC35
5E082BC36
5E082BC38
5E082DD11
5E082EE05
5E082EE23
5E082EE37
5E082FF05
5E082FG03
5E082FG22
5E082FG42
5E082GG10
5E082KK08
5E082MM35
5F038AC04
5F038AC05
5F038AC07
5F038AC15
5F038BH20
5F038CA01
5F038CA16
5F038CA18
(57)【要約】
【課題】キャパシタの破壊を抑制することが可能なキャパシタを提供する。
【解決手段】キャパシタは、下部電極14と、前記下部電極上に設けられた誘電体膜16と、前記誘電体膜上に設けられた上部電極18と、を備えるMIMキャパシタ20と、前記上部電極上に前記MIMキャパシタを覆うように設けられた絶縁膜24と、前記絶縁膜内において前記上部電極の外周50から離間して上方に設けられ、外周52が前記上部電極の外周より外側に位置し、前記上部電極と接続された付加電極22と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極と、前記下部電極上に設けられた誘電体膜と、前記誘電体膜上に設けられた上部電極と、を備えるMIMキャパシタと、
前記上部電極上に前記MIMキャパシタを覆うように設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜内において前記上部電極の外周から離間して上方に設けられ、外周が前記上部電極の外周より外側に位置し、前記上部電極と接続された付加電極と、
を備えるキャパシタ。
【請求項2】
前記上部電極の外周の全てにおいて、前記付加電極の外周は前記上部電極の外周より外側に位置する請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項3】
前記付加電極の外周は前記上部電極の外周より前記付加電極の下面と前記上部電極の下面との距離以上外側に位置する請求項1または請求項2に記載のキャパシタ。
【請求項4】
前記下部電極の外周は前記上部電極の外周より外側に位置する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項5】
前記付加電極の下面は前記下部電極の上面から前記誘電体膜の厚さの2倍以上上方に位置する請求項4に記載のキャパシタ。
【請求項6】
前記誘電体膜は無機絶縁体膜であり、前記絶縁膜は有機絶縁体膜である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項7】
前記付加電極は中央部において前記上部電極と接合する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項8】
前記付加電極は、前記上部電極の上面との間に前記絶縁膜が設けられている領域に開口を有する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項9】
前記MIMキャパシタは半導体層上に設けられている請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタに関し、例えばMIMキャパシタを有するキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に下部電極、誘電体膜および上部電極を積層したMIM(Metal Insulator Metal)キャパシタが知られている。MIMキャパシタは、例えば半導体層上に設けられたトランジスタ等の能動素子と集積し、MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、MIMキャパシタを通電試験すると上部電極の外周付近においてキャパシタが破壊されることがある。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みなされたものであり、キャパシタの破壊を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態は、下部電極と、前記下部電極上に設けられた誘電体膜と、前記誘電体膜上に設けられた上部電極と、を備えるMIMキャパシタと、前記上部電極上に前記MIMキャパシタを覆うように設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜内において前記上部電極の外周から離間して上方に設けられ、外周が前記上部電極の外周より外側に位置し、前記上部電極と接続された付加電極と、を備えるキャパシタである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、キャパシタの破壊を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1に係るキャパシタの平面図および断面図である。
【
図2A】
図2Aは、キャパシタC1の構造を示す断面図である。
【
図2B】
図2Bは、キャパシタC2の構造を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施例2に係るキャパシタの平面図および断面図である。
【
図5A】
図5Aは、実施例2に係るキャパシタの製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図5B】
図5Bは、実施例2に係るキャパシタの製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図5C】
図5Cは、実施例2に係るキャパシタの製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図6A】
図6Aは、実施例2に係るキャパシタの製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図6B】
図6Bは、実施例2に係るキャパシタの製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図7】
図7は、実施例3に係るキャパシタの平面図および断面図である。
【
図8A】
図8Aは、実施例3に係るキャパシタの製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図8B】
図8Bは、実施例3に係るキャパシタの製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図8C】
図8Cは、実施例3に係るキャパシタの製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図9】
図9は、実施例3の変形例1に係るキャパシタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の一実施形態は、下部電極と、前記下部電極上に設けられた誘電体膜と、前記誘電体膜上に設けられた上部電極と、を備えるMIMキャパシタと、前記上部電極上に前記MIMキャパシタを覆うように設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜内において前記上部電極の外周から離間して上方に設けられ、外周が前記上部電極の外周より外側に位置し、前記上部電極と接続された付加電極と、を備えるキャパシタである。これにより、付加電極が電界を遮蔽するため、通電試験等におけるキャパシタの破壊を抑制することができる。
(2)前記上部電極の外周の全てにおいて、前記付加電極の外周は前記上部電極の外周より外側に位置することが好ましい。
(3)前記付加電極の外周は前記上部電極の外周より前記付加電極の下面と前記上部電極の下面との距離以上外側に位置することが好ましい。
(4)前記下部電極の外周は前記上部電極の外周より外側に位置することが好ましい。
(5)前記付加電極の下面は前記下部電極の上面から前記誘電体膜の厚さの2倍以上上方に位置することが好ましい。
(6)前記誘電体膜は無機絶縁体膜であり、前記絶縁膜は有機絶縁体膜であることが好ましい。
(7)前記付加電極は中央部において前記上部電極と接合することが好ましい。
(8)前記付加電極は、前記上部電極の上面との間に前記絶縁膜が設けられている領域に開口を有することが好ましい。
(9)前記MIMキャパシタは半導体層上に設けられていることが好ましい。
【0010】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態にかかるキャパシタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
[実施例1]
図1は、実施例1に係るキャパシタの平面図および断面図である。
図1の上図は平面図であり、下図は上図のA-A断面図である。基板10の上面に法線方向をZ方向、基板10の上面に平行な方向をX方向およびY方向とする。
図1に示すように、基板10上に半導体層11が設けられている。半導体層11は例えばGaN系半導体層またはGaAs系半導体層である。半導体層11がGaN系半導体層の場合、基板10は例えばSiC基板、サファイア基板、シリコン基板またはGaN基板であり、半導体層11は、GaN、AlN、InNおよびこれらの混晶からなる層を含む。半導体層11がGaAs系半導体層の場合、基板10は例えばGaAs基板であり、半導体層11は、GaAs、AlAs、InAsおよびこれらの混晶からなる層を含む。基板10上に半導体層11を用いたトランジスタが設けられて、MIMキャパシタ20とトランジスタとは同じ基板10上に集積化され、MMICを形成していてもよい。
【0012】
半導体層11上に絶縁膜12が設けられている。絶縁膜12は、例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜等の無機絶縁膜である。絶縁膜12の厚さは例えば100nm~1200nmである。絶縁膜12上にMIMキャパシタ20が設けられている。MIMキャパシタ20は、絶縁膜12上に設けられた下部電極14、下部電極14上に設けられた誘電体膜16および誘電体膜16上に設けられた上部電極18を備えている。平行平板型MIMキャパシタでは、誘電体膜16を介した下部電極14と上部電極18との距離が製造誤差程度にほぼ均一である。下部電極14の外周54は上部電極18の外周50より外側に位置する。下部電極14および上部電極18は、例えば密着膜と密着膜上に設けられた低抵抗膜を含む金属膜である。密着膜は例えばTi膜、WSi膜、TiW膜、TiWN膜またはTiN膜である。低抵抗膜は、密着膜より抵抗率が低い材料からなり例えばAu膜である。密着膜の厚さは例えば3nm~300nmである。密着膜は設けられていなくてもよい。低抵抗膜の厚さは例えば50nm~400nmである。誘電体膜16は例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜等の無機絶縁膜である。誘電体膜16の厚さは例えば50nm~400nmである。
【0013】
半導体層11上にMIMキャパシタ20を覆うように絶縁膜24が設けられている。絶縁膜24は、例えばポリイミド膜等の有機絶縁体膜である。絶縁膜24の厚さは例えば1μm~5μmである。絶縁膜24内に付加電極22が設けられている。付加電極22は、上部電極18の外周50の上方に絶縁膜24を介し設けられ、上部電極18の外周は付加電極22に重なる。すなわち、付加電極22の外周52は上部電極18の外周50より外側に位置する。付加電極22は接続部29を介し上部電極18と電気的に接続されている。これにより、付加電極22と上部電極18はほぼ同電位となる。付加電極22は、例えばTi膜、WSi膜、TiW膜、TiWN膜またはTiN膜等の密着膜と、密着膜上に設けられたAu膜等の低抵抗膜を備えている。密着膜の厚さは例えば3nm~300nmである。密着膜は設けられていなくてもよい。低抵抗膜の厚さは例えば100nm~1.5μmである。
【0014】
付加電極22の外周52と上部電極18の外周50との距離をD1、下部電極14の外周54と上部電極18の外周50との距離をD2、下部電極14の上面と付加電極22の下面との距離をD3、上部電極18の上面と付加電極22の下面との距離をD4、付加電極22の幅をD5、付加電極22の下面と上部電極18の下面の距離をD6とする。上部電極18、付加電極22および下部電極14の端面が傾斜または湾曲している場合、外周50、52および54は、端面のうち最も外側に位置する。
【0015】
付加電極22を設けていないMIMキャパシタに通電試験を行うと、キャパシタの破壊は主に上部電極18の外周部近傍において生じる。キャパシタによっては寿命の短いものが存在する。寿命の短いキャパシタにおける破壊の原因として、上部電極18の外周50において上部電極18と絶縁膜24との間に微細な剥がれが生じていることが考えられる。例えば上部電極18の上面はAuであり、絶縁膜24がポリイミド等の有機絶縁膜の場合、上部電極18と絶縁膜24との密着が悪い。このため、上部電極18と絶縁膜24との界面において剥がれが生じやすくなる。誘電体膜16が無機絶縁膜のように硬い絶縁膜であり、絶縁膜24が有機絶縁膜のように柔らかい絶縁膜の場合、上部電極18の外周50に応力が集中すると、柔らかい絶縁膜24と上部電極18との界面において剥がれが生じやすくなる。付加電極22は柔らかい絶縁膜24内に設けられているため、付加電極22と絶縁膜24との間に応力が生じにくく剥がれは生じにくい。
【0016】
上部電極18と絶縁膜24との間における剥がれの箇所が空隙となると空隙の誘電率は絶縁膜24の誘電率より小さいため空隙の容量が絶縁膜24の容量より小さくなる。このため、空隙に電界が集中する。電界の集中が大きくなると上部電極18と下部電極14との間で部分的に放電しキャパシタの寿命が極端に短くなると考えられる。そこで、実施例1では、付加電極22を設けることで上部電極18の外周に電界が集中することを抑制する。
【0017】
[シミュレーション]
付加電極22が設けられていないキャパシタC1と付加電極22が設けられたキャパシタC2について、絶縁膜24と上部電極18との間に空隙が形成されていないケースB1と空隙が形成されたケースB2について電界の大きさをシミュレーションした。
図2Aおよび
図2Bは、それぞれキャパシタC1およびC2の構造を示す断面図である。
図2Aおよび
図2Bに示すように、キャパシタC1およびC2では、下部電極14上に誘電体膜16、上部電極18および絶縁膜24が設けられている。下部電極14、誘電体膜16および絶縁膜24はX方向に、上部電極18および付加電極22周辺の電界に影響を与えない程度に十分大きく設けられている。キャパシタC2では、絶縁膜24内に付加電極22が設けられている。下部電極14がグランドに接続され、上部電極18および付加電極22には電圧Vが印加される。Z方向の無限遠は0Vという境界条件を用いた。キャパシタC1は比較例に相当し、キャパシタC2は実施例1に相当する。
【0018】
誘電体膜16、上部電極18、付加電極22および絶縁膜24の厚さをそれぞれT1、T2、T3およびT4とする。シミュレーション条件は以下である。
下部電極14:完全導体
誘電体膜16:窒化シリコン膜、T1=400nm
上部電極18:完全導体、T2=80nm
付加電極22:完全導体、T3=400nm、D1=1000nm、D5=2000nm、D6=800nm
絶縁膜24:ポリイミド、T4=2000nm、D3=1200nm
【0019】
図3Aおよび
図3Bは、それぞれケースB1およびB2の構造を示す断面図である。
図3Aおよび
図3Bは上部電極18の外周50の拡大図である。付加電極22は図の外に位置する。
図3Aに示すように、ケースB1では、誘電体膜16、上部電極18および絶縁膜24は互いに接触している。
図3Bに示すように、ケースB2では誘電体膜16および上部電極18と絶縁膜24との間に空隙30が設けられている。空隙30の厚さT5を20nmとし、厚さT5は均一とした。箇所A~Dにおける電界をシミュレーションした。箇所Aは、上部電極18下の誘電体膜16内の箇所である。箇所Bは上部電極18の外周50下における誘電体膜16内の箇所である。箇所Cは上部電極18の下端の-X側の箇所である。箇所Dは上部電極18上端の-X側の箇所である、ケースB1では箇所CおよびDは絶縁膜24内に位置し、ケースB2では箇所CおよびDは空隙30内に位置する。箇所B~Dの電界強度を箇所Aの電界強度で規格化した。
【0020】
表1は、各箇所における規格化された電界強度を示す表である。
【表1】
【0021】
表1に示すように、付加電極22を設けないキャパシタC1では、膜剥がれ有のケースB2の箇所CおよびDにおける電界強度は、膜剥がれなしのケースB1の箇所CおよびDにおける電界強度のそれぞれ3倍および7倍である。このように付加電極22を設けないと空隙30内の電界強度が高くなる。特に上部電極18の上端付近の電界強度が高くなる。
【0022】
付加電極22を設けたキャパシタC2では、ケースB1の電界強度は、いずれの箇所A~DにおいてもキャパシタC1の電界強度と同じである。ケースB2の箇所CおよびDにおける電界強度はキャパシタC1のケースB1における電界強度より低くなる。特に箇所Dの電界強度は箇所Cと同程度となる。このように、付加電極22を設けたキャパシタC2では、絶縁膜24と上部電極18との間に空隙30が形成されても電界集中が抑制される。これにより、通電試験における破壊が抑制される。箇所Dにおける電界集中が抑制されるのは、付加電極22の外周52が上部電極18の外周50より外側に位置するため、無限遠の0Vから上部電極18に加わる電界を上部電極18と同電位の付加電極22が遮蔽するためと考えられる。
【0023】
実施例1によれば、付加電極22は、絶縁膜24内において上部電極18の外周50から離間して上方に設けられ、上部電極18と電気的に接続されている。付加電極22の外周52は上部電極18の外周50より外側に位置している。これにより、付加電極22が電界を遮蔽するため、通電試験等におけるキャパシタの破壊が抑制される。
【0024】
上部電極18の外周の一部において、付加電極22の外周52は上部電極18の外周50より外側に位置すればよいが、上部電極18の外周の全てにおいて、付加電極22の外周52は上部電極18の外周50より外側に位置することが好ましい。これにより、キャパシタの破壊を抑制できる。
【0025】
電界を遮蔽する場合、上部電極18の外周50と付加電極22の外周52を結ぶ直線と上部電極18の下面のなす角度が45°以下であれば、電界の遮蔽効果が十分得られる。この観点から、付加電極22の外周52と上部電極18の外周50との距離D1は付加電極22の下面と上部電極18の下面との距離D6以上が好ましい。すなわち、付加電極22の外周52は上部電極18の外周50より距離D6以上外側に位置することが好ましい。距離D1は、距離D6の1.5倍以上がより好ましく、距離D6の2倍以上がさらに好ましい。距離D1が大きすぎると、MIMキャパシタ20本体の容量値に対し、付加電極22と下部電極14との間の容量値が無視できなくなる。よって、距離D1は距離D6の10倍以下が好ましい。
【0026】
付加電極22と上部電極18との距離D4が大きすぎると、電界を遮蔽する効果が小さくなる。よって、距離D4は、誘電体膜16の厚さT1の10倍以下が好ましく、厚さT1の5倍以下がより好ましい。
【0027】
下部電極14の外周54は上部電極18の外周50より外側に位置している。これにより、基板10側からの電界を遮蔽することができる。よって、キャパシタの破壊を抑制できる。上部電極18の外周の一部において、下部電極14の外周54は上部電極18の外周50より外側に位置すればよいが、上部電極18の外周の全てにおいて、下部電極14の外周54は上部電極18の外周50より外側に位置することが好ましい。これにより、キャパシタの破壊を抑制できる。
【0028】
下部電極14の外周54と上部電極18の外周50との距離D2は、誘電体膜16の厚さT1の1/2以上が好ましく、厚さT1以上がより好ましく、厚さT1の2倍以上がさらに好ましい。これにより、電界をより遮蔽することができる。距離D2が大きすぎると、MIMキャパシタ20本体の容量値に対し、付加電極22と下部電極14との間の容量値が無視できなくなる。よって、距離D2は厚さT1の10倍以下が好ましい。
【0029】
付加電極22と下部電極14との距離D3が小さすぎると、MIMキャパシタ20本体の容量値に対し、付加電極22と下部電極14との間の容量値が無視できなくなる。よって、距離D3は厚さT1の2倍以上が好ましい。すなわち、付加電極22の下面は下部電極14の上面から誘電体膜16の厚さT1の2倍以上上方に位置することが好ましい。距離D3は厚さT1の3倍以上がより好ましく、厚さT1の4倍以上がさらに好ましい。電界を遮蔽するため、距離D3は、厚さT1の10倍以下が好ましい。
【0030】
誘電体膜16が無機絶縁体膜であり、絶縁膜24が有機絶縁体膜のとき、絶縁膜24は誘電体膜16より柔らかいため、上部電極18の外周50の上部において、絶縁膜24が上部電極18から剥がれやすくなる。よって、付加電極22を設けることが好ましい。
【0031】
MIMキャパシタ20は半導体層11上に設けられている。これにより、半導体層11に形成したトランジスタ等の能動素子とMIMキャパシタ20を同じ基板10上に集積化することができる。
【0032】
[実施例2]
図4は、実施例2に係るキャパシタの平面図および断面図である。
図4の上図は平面図であり、下図は上図のA-A断面図である。
図4に示すように、半導体層11上に絶縁膜13が設けられ、絶縁膜13上に絶縁膜12が設けられている。付加電極22は、外周部22aと接続部22bを備えている。外周部22aは上部電極18の外周50と重なるように設けられている。接続部22bは外周部22aを上部電極18に接続する。接続部22bのうち中央部22cは上部電極18に接触する。これにより、外周部22aは上部電極18に電気的に接続され、外周部22aと上部電極18はほぼ同電位となる。絶縁膜24を貫通する貫通孔25aが設けられ、配線26aは貫通孔25aを介し上部電極18に電気的に接続される。絶縁膜24および誘電体膜16を貫通する貫通孔25bが設けられ、配線26bは貫通孔25bを介し下部電極14に電気的に接続される。配線26aおよび26bはMIMキャパシタ20を他の素子またはパッド等に電気的に接続する。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0033】
基板10は、例えばSiC基板である。半導体層11は、例えばGaNチャネル層およびAlGaNバリア層を含む。絶縁膜13および12はそれぞれ例えば窒化シリコン膜および酸化シリコン膜である。下部電極14は例えばTi膜およびTi膜上のAu膜である。誘電体膜16は例えば窒化シリコン膜である。上部電極18は例えばTi膜およびTi膜上のAu膜である。付加電極22は例えばTi膜およびTi膜上のAu膜である。絶縁膜24は例えばポリイミド膜である。配線26aおよび26bは例えばTiW膜およびTiW膜上のAu膜である。
【0034】
図5Aから
図6Bは、実施例2に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図5Aに示すように、上面に半導体層11が形成された基板10上に絶縁膜13および12を形成する。絶縁膜13および12の形成は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いる。絶縁膜13が窒化シリコン膜のとき絶縁膜13の形成にはプラズマCVD法を用い、絶縁膜12が酸化シリコン膜のとき絶縁膜12の形成には常圧CVD法を用いる。絶縁膜12上に下部電極14を形成する。下部電極14の形成には例えばスパッタリング法およびエッチング法を用いる。下部電極14の形成に真空蒸着法およびリフトオフ法を用いてもよい。絶縁膜12および下部電極14上に誘電体膜16を例えばCVD法を用い形成する。誘電体膜16が窒化シリコン膜のとき誘電体膜16の形成にはプラズマCVD法を用いる。誘電体膜16上に上部電極18を形成する。上部電極18の形成には例えば真空蒸着法およびリフトオフ法を用いる。上部電極18の形成にスパッタリング法およびエッチング法を用いてもよい。エッチング法を用い誘電体膜16および絶縁膜12を所望の形状にパターニングする。
【0035】
図5Bに示すように、基板10上にMIMキャパシタ20を覆うように絶縁膜24aを形成する。絶縁膜24aがポリイミド等の有機絶縁体の場合、絶縁膜24aの形成には例えば塗布法を用いる。例えばエッチング法を用い絶縁膜24aを貫通する貫通孔25cおよび25dを形成する。貫通孔25cは上部電極18上に形成され、貫通孔25dはMIMキャパシタ20の外側の下部電極14上に形成される。
【0036】
図5Cに示すように、絶縁膜24a上および貫通孔25cおよび25d内にそれぞれ付加電極22および配線層23を形成する。付加電極22および配線層23は、例えばスパッタリング法およびエッチング法、真空蒸着法およびリフトオフ法、またはメッキ法を用い形成する。付加電極22をメッキ法を用い形成する場合、例えばスパッタリング法または真空蒸着法を用いシード層を形成し、シード層上にマスク層を形成する。マスク層をマスクにシード層上にメッキ層を形成する。メッキ層をマスクにシード層をエッチングする。
【0037】
図6Aに示すように、絶縁膜24a上に付加電極22および配線層23を覆うように絶縁膜24bを形成する。絶縁膜24bがポリイミド等の有機絶縁体の場合、絶縁膜24bの形成には例えば塗布法を用いる。例えばエッチング法を用い絶縁膜24bを貫通する貫通孔25aおよび25eを形成する。貫通孔25aは付加電極22上に形成され、貫通孔25eは配線層23上に形成される。
【0038】
図6Bに示すように、絶縁膜24a上および貫通孔25cおよび25d内に配線26aおよび26bを形成する。配線26aおよび26bは、例えばスパッタリング法、真空蒸着法またはメッキ法を用い形成する。例えばスパッタリング法または真空蒸着法を用いシード層を形成し、シード層上にメッキ法を用い配線26aおよび26bを形成してもよい。
図4のように、配線26bは直接下部電極14に接触してもよいし、
図6Bのように、配線26bは配線層23を介し下部電極14に接続されてもよい。以上により実施例2に係るキャパシタが製造される。
【0039】
実施例2では、付加電極22は中央部22cにおいて上部電極18と接合する。これにより、外周部22aは上部電極18から上方に離間し、電界を遮蔽でき、接続部22bにより外周部22aと上部電極18とを電気的に接続させることができる。
【0040】
[実施例3]
図7は、実施例3に係るキャパシタの平面図および断面図である。
図7の上図は平面図であり、下図は上図のA-A断面図である。
図7に示すように、付加電極22の接続部22bに開口27が設けられている。その他の構成は実施例2と同じであり説明を省略する。
【0041】
図8Aから
図8Cは、実施例3に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図8Aに示すように、実施例2の
図5Aの後、MIMキャパシタ20を覆うように開口35を有するマスク層34を形成する。開口35は上部電極18上に形成される。マスク層34は例えばフォトレジストであり、塗布、露光および現像を行うことにより形成される。マスク層34上に開口27を有する付加電極22を形成する。付加電極22の形成方法は実施例2の
図5Cと同じである。
【0042】
図8Bに示すように、マスク層34を除去する。マスク層34がフォトレジストの場合、例えば有機溶剤を用いマスク層34を除去する。このとき、開口27を介し付加電極22と上部電極18との間のマスク層34に有機溶剤が供給される。これにより、付加電極22と上部電極18との間のマスク層34が残存することなく、マスク層34を除去できる。
【0043】
図8Cに示すように、MIMキャパシタ20および付加電極22を覆うように絶縁膜24を形成する。絶縁膜24として有機絶縁体を含む溶液を塗布するとき、開口27を介し付加電極22と上部電極18との間に有機絶縁体を含む溶液が供給される。これにより、付加電極22と上部電極18との間に絶縁膜24を形成することができる。開口27内は絶縁膜24により充填される。絶縁膜24に貫通孔25aおよび25bを形成する。その後、実施例2の
図6Bと同様に配線26aおよび26bを形成する。以上により実施例3に係るキャパシタが製造される。
【0044】
実施例3によれば、付加電極22は、上部電極18の上面との間に絶縁膜24が設けられている領域に開口27を有する。これにより、付加電極22と上部電極18との間のマスク層34の除去および絶縁膜24の形成を行うことができる。開口27は上部電極18の外周50と重ならないことが好ましく、上部電極18の外周50と開口27との距離は付加電極22の下面と上部電極18の下面との距離以上であることが好ましい。これにより、開口27を介し、上部電極18の外周50に電界が伸びることを抑制できる。
【0045】
[実施例3の変形例1]
図9は、実施例3の変形例1に係るキャパシタの断面図である。
図9に示すように、付加電極22は、中央部22cに向かうにしたがい、付加電極22の下面と上部電極18の上面との距離が短くなるように、湾曲している。その他の構成は実施例3と同じであり説明を省略する。実施例3では、
図8Aにおいて、マスク層34の開口35の側面が垂直なため、付加電極22の被覆性が悪く、開口35の側面近傍において付加電極22が薄くなることがありうる。実施例3の変形例1では、開口35の側面を滑らかな曲線とすることで、付加電極22の厚さをより均一にすることができる。
【0046】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0047】
10 基板
11 半導体層
12、13、24、24a,24b 絶縁膜
14 下部電極
16 誘電体膜
18 上部電極
20 MIMキャパシタ
22 付加電極
22a 外周部
22b、29 接続部
22c 中央部
23 配線層
25a~25e 貫通孔
26a、26b 配線
27、35 開口
30 空隙
34 マスク層
50、52、54 外周
【手続補正書】
【提出日】2022-08-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
図3Aおよび
図3Bは、それぞれケースB1およびB2の構造を示す断面図である。
図3Aおよび
図3Bは上部電極18の外周50の拡大図である。付加電極22は図の外に位置する。
図3Aに示すように、ケースB1では、誘電体膜16、上部電極18および絶縁膜24は互いに接触している。
図3Bに示すように、ケースB2では誘電体膜16および上部電極18と絶縁膜24との間に空隙30が設けられている。空隙30の厚さT5を20nmとし、厚さT5は均一とした。箇所A~Dにおける電界をシミュレーションした。箇所Aは、上部電極18下の誘電体膜16内の箇所である。箇所Bは上部電極18の外周50下における誘電体膜16内の箇所である。箇所Cは上部電極18の下端の-X側の箇所である。箇所Dは上部電極18上端の-X側の箇所である
。ケースB1では箇所CおよびDは絶縁膜24内に位置し、ケースB2では箇所CおよびDは空隙30内に位置する。箇所B~Dの電界強度を箇所Aの電界強度で規格化した。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
付加電極22を設けたキャパシタC2では、ケースB1の電界強度は、いずれの箇所A~DにおいてもキャパシタC1の電界強度と同じである。ケースB2の箇所CおよびDにおける電界強度はキャパシタC1のケースB2における電界強度より低くなる。特に箇所Dの電界強度は箇所Cと同程度となる。このように、付加電極22を設けたキャパシタC2では、絶縁膜24と上部電極18との間に空隙30が形成されても電界集中が抑制される。これにより、通電試験における破壊が抑制される。箇所Dにおける電界集中が抑制されるのは、付加電極22の外周52が上部電極18の外周50より外側に位置するため、無限遠の0Vから上部電極18に加わる電界を上部電極18と同電位の付加電極22が遮蔽するためと考えられる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
下部電極14の外周54は上部電極18の外周50より外側に位置している。これにより、基板10側からの電界を遮蔽することができる。よって、キャパシタの破壊を抑制できる。上部電極18の外周の一部において、下部電極14の外周54は上部電極18の外周50より外側に位置すればよいが、上部電極18の外周50の全てにおいて、下部電極14の外周54は上部電極18の外周50より外側に位置することが好ましい。これにより、キャパシタの破壊を抑制できる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
図6Bに示すように、絶縁膜
24b上および貫通孔
25aおよび
25e内に配線26aおよび26bを形成する。配線26aおよび26bは、例えばスパッタリング法、真空蒸着法またはメッキ法を用い形成する。例えばスパッタリング法または真空蒸着法を用いシード層を形成し、シード層上にメッキ法を用い配線26aおよび26bを形成してもよい。
図4のように、配線26bは直接下部電極14に接触してもよいし、
図6Bのように、配線26bは配線層23を介し下部電極14に接続されてもよい。以上により実施例2に係るキャパシタが製造される。