(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144488
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】スイッチング電源
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
H02M3/28 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045529
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100199864
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 良成
(72)【発明者】
【氏名】楠木 健一
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730BB43
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE03
5H730EE07
5H730EE59
5H730EE73
5H730FD01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電圧制御型出力回路が無負荷または軽負荷のとき、非電圧制御型出力回路が重負荷となっても、電圧制御型出力回路から電力供給を受けることなく、非電圧制御型出力回路の電圧低下を抑え、損失を低減できるスイッチング電源を提供する。
【解決手段】スイッチング電源1は、1次巻線と複数の2次巻線を有するトランスTと、トランスの1次巻線N1に接続されたスイッチング素子Q1と、複数の2次巻線N2、N3の少なくとも1つに接続された11電圧制御型出力回路と、他の2次巻線に接続された非電圧制御型出力回路10と、を備える。非電圧制御型出力回路に接続されるトランスの2次巻線は、互いに発生電圧の異なる複数の巻線出力端子を有する。非電圧制御型出力回路は、複数の巻線出力端子に誘起された電圧を入力可能とされ、負荷の大小に応じて複数の巻線出力端子に誘起された電圧のいずれかに基づいて直流化した電圧を選択的に負荷に供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次巻線と複数の2次巻線を有するトランスと、前記トランスの1次巻線に接続されたスイッチング素子と、前記複数の2次巻線の少なくとも1つに接続された電圧制御型出力回路と、他の2次巻線に接続された非電圧制御型出力回路とを備え、直流電圧をスイッチング素子でオン/オフして得られたスイッチング電圧が前記トランスの1次巻線に印加され、前記複数の2次巻線に誘起された電圧を前記電圧制御型出力回路に繋がる第1の負荷と前記非電圧制御型出力回路に繋がる第2の負荷に出力する多出力のスイッチング電源において、
前記非電圧制御型出力回路に接続される前記トランスの2次巻線は、互いに発生電圧の異なる複数の巻線出力端子を有し、
前記電圧制御型出力回路は、前記トランスの2次巻線に誘起された電圧を直流化して所定の制御回路により安定化して前記第1の負荷に供給し、
前記非電圧制御型出力回路は前記複数の巻線出力端子に誘起された電圧を入力可能とされ、前記第2の負荷の大小に応じて前記複数の巻線出力端子に誘起された電圧のいずれかに基づいて直流化した電圧を選択的に前記第2の負荷に供給することを特徴とするスイッチング電源。
【請求項2】
前記非電圧制御型出力回路は、前記第2の負荷に出力する出力電圧が所定値より高いとき、前記複数の巻線出力端子のうち、該誘起電圧の低い端子に接続して第2の負荷に供給し、前記第2の負荷の電圧が所定値より低下したとき、前記誘起電圧の高い端子に接続して、第2の負荷の電圧低下を抑制することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源。
【請求項3】
前記非電圧制御型出力回路は、前記第2の負荷に対する出力電圧が抵抗で分圧されて電圧検出素子に入力され、該電圧検出素子の一端は電圧切替素子の制御端子に接続され、前記電圧切替素子の電流路の一方端子と前記複数の巻線出力端子のうち誘起電圧の高い巻線出力端子が接続され、前記電圧切替素子の電流路の他方端子と前記複数の巻線出力端子のうち誘起電圧の低い端子が接続される回路であって、
前記第2の負荷に対する出力電圧が所定値より高いときは、前記電圧検出素子に電流が流れて前記電圧切替素子がオフし、前記誘起電圧の低い巻線出力端子からの電圧に基づいて前記第2の負荷に電圧が出力され、前記第2の負荷に対する出力電圧が所定値より低下したときは、前記電圧検出素子を流れる電流が遮断されて前記電圧切替素子がオンし、前記誘起電圧の高い巻線出力端子からの電圧に基づいて前記第2の負荷に電圧が出力されることを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチング電源。
【請求項4】
前記電圧検出素子は、シャントレギュレータであり、
前記電圧切替素子が、NPNトランジスタであることを特徴とする請求項3に記載のスイッチング電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力を複数備える多出力のスイッチング電源に関し、詳しくは出力電圧を制御する電圧制御型出力回路と、出力電圧を制御しない非電圧制御型出力回路とを備えたスイッチング電源に関する。
【背景技術】
【0002】
多出力のスイッチング電源で、1の出力は電圧制御型出力回路で構成され、他の出力は非電圧制御型出力回路で構成され、その非電圧制御型出力回路の出力電圧を安定化させるために、電圧制御型出力回路から非電圧制御型出力回路に電力を供給する発明が特許文献1に記載されている。
【0003】
図6は、その特許文献1に記載された従来のスイッチング電源の回路図である。このスイッチング電源は、トランスの2次側の巻線P2から出力される電圧を整流・平滑化し、電圧V1を制御する制御回路を備えた電圧制御型出力回路と、もう一つの2次側の巻線P3から出力される電圧を整流・平滑し、定電圧回路IC1により出力電圧V3とする非電圧制御型出力回路とを備えている。
このスイッチング電源では、電圧制御型出力回路と非電圧制御型出力回路との間に定電圧調整回路を接続し、非電圧制御型出力回路の出力が重負荷となって出力電圧が低下するとき、電圧制御型出力回路からトランジスタQ2を介して非電圧制御型出力回路に電流を流し、非電圧制御型出力回路の電圧V2を上昇させて定電圧回路IC1の入力電圧を安定化させている。
【0004】
すなわち、電圧制御型出力回路に接続された負荷が無負荷あるいは軽負荷で変動がないとき、制御回路により制御されるスイッチング素子Q1のオンする期間が変わらないため、非電圧制御型出力回路の出力が重負荷となると、2次巻線の電圧が低下して非電圧制御回路の出力電圧V3が低下する。
そこで、非電圧制御型出力回路の電圧V2が所定の関係を満たす値より低下すると、定電圧調整回路が動作して、電圧制御型出力回路から非電圧制御型出力回路へ電流が流れ、非電圧制御型出力回路の出力電圧が低下するのを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、
図6に示す定電圧調整回路により電圧制御型出力回路から非電圧制御型出力回路に電力が供給されるとき、電圧制御型出力回路の電圧V1と非電圧制御型出力回路の電圧V2の差が大きいほど損失が大きくなるという課題がある。
例えば、このスイッチング電源がプリンタの電源として使用される場合、電圧制御型出力回路の電圧V1はプリンタが動作する電圧の65V程度、非電圧制御型出力回路の出力電圧V3は5V程度である。ここで、電圧制御型出力回路から供給される電流が0.6Aとすると、定電圧調整回路の損失は、電圧V1および電圧V2との電圧差と供給される電流との積となり、約36Wと非常に大きくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するもので、電圧制御型出力回路から非電圧制御型出力回路に電力を供給するのではなく、トランスの2次巻線に複数の巻線出力端子を設け、当該複数の巻線出力端子を入力とする非電圧制御型出力回路を構成し、非電圧制御型出力回路は当該回路の負荷が小さい(軽負荷)のとき、複数の巻線出力端子のうち、相対的に誘起電圧の低い巻線出力端子を入力として負荷に電力供給し、負荷が大きい(重負荷)のときは、相対的に誘起電圧の高い巻線出力端子を入力として負荷に電力供給するスイッチング電源を提供する。
【0008】
すなわち、1次巻線と複数の2次巻線を有するトランスと、トランスの1次巻線に接続されたスイッチング素子と、複数の2次巻線の少なくとも1つに接続された電圧制御型出力回路と、他の2次巻線に接続された非電圧制御型出力回路とを備え、直流電圧をスイッチング素子でオン/オフして得られたスイッチング電圧がトランスの1次巻線に印加され、複数の2次巻線に誘起された電圧を電圧制御型出力回路に繋がる第1の負荷と非電圧制御型出力回路に繋がる第2の負荷に出力する多出力のスイッチング電源において、非電圧制御型出力回路に接続されるトランスの2次巻線は、互いに発生電圧の異なる複数の巻線出力端子を有し、電圧制御型出力回路は、トランスの2次巻線に誘起された電圧を直流化して所定の制御回路により安定化して第1の負荷に供給し、非電圧制御型出力回路は複数の巻線出力端子に誘起された電圧を入力可能とされ、第2の負荷の大小に応じて複数の巻線出力端子に誘起された電圧のいずれかに基づいて直流化した電圧を選択的に第2の負荷に供給することを特徴とするスイッチング電源である。
【0009】
この構成により、非電圧制御型出力回路の負荷が増加しても、電圧制御型出力回路から電力供給を受けることなく、巻線出力端子に誘起された電圧を選択することで電圧低下を抑制し、併せて回路の損失を低減することができる。
【0010】
また、非電圧制御型出力回路は、第2の負荷に出力する出力電圧が所定値より高いとき、複数の巻線出力端子のうち、該誘起電圧の低い端子に接続して第2の負荷に供給し、第2の負荷の電圧が所定値より低下したとき、誘起電圧の高い端子に接続して、第2の負荷の電圧低下を抑制することを特徴とする。
この構成により、非電圧制御型出力回路の電圧が低下しても、2次巻線の巻線出力端子の電圧を切り替えて出力電圧低下を抑制することができる。
【0011】
さらに、非電圧制御型出力回路は、第2の負荷に対する出力電圧が抵抗で分圧されて電圧検出素子に入力され、該電圧検出素子の一端は電圧切替素子の制御端子に接続され、電圧切替素子の電流路の一方端子と複数の巻線出力端子のうち誘起電圧の高い巻線出力端子が接続され、電圧切替素子の電流路の他方端子と複数の巻線出力端子のうち誘起電圧の低い端子が接続される回路であって、第2の負荷に対する出力電圧が所定値より高いときは、電圧検出素子に電流が流れて電圧切替素子がオフし、誘起電圧の低い巻線出力端子からの電圧に基づいて第2の負荷に電圧が出力され、第2の負荷に対する出力電圧が所定値より低下したときは、電圧検出素子を流れる電流が遮断されて電圧切替素子がオンし、誘起電圧の高い巻線出力端子からの電圧に基づいて第2の負荷に電圧が出力されることを特徴とする。
これにより、複数の巻線出力端子の電圧を、電圧切替素子を使用して切り替えることで、非電圧制御型出力回路は損失の少ない回路で構成することができる。
【0012】
また、電圧検出素子は、シャントレギュレータであり、電圧切替素子が、NPNトランジスタであることを特徴とする。
これにより、負荷の電圧低下に対応して2次巻線の誘起電圧を切り替えることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように構成することにより、本発明に係るスイッチング電源は、非電圧制御型出力回路の負荷が増加して出力電圧が低下すると自動的に2次巻線の巻線出力端子の電圧を切り替えて出力電圧の低下を抑制すると共に電力損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るスイッチング電源の回路図である。
【
図3】非電圧制御型出力回路の動作を説明する図である。
【
図4】従来技術の出力電圧の切り替え動作を比較のために説明する図である。
【
図5】非電圧制御型出力回路の他の実施例の回路図である。
【
図6】特許文献1に記載された従来のスイッチング電源の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係るスイッチング電源について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るスイッチング電源の回路図である。
このスイッチング電源1は、直流電圧Vinをスイッチングして電圧変換するスイッチング素子Q1と、変換されたスイッチング電圧が供給される1次巻線N1および2つの2次巻線である第1の2次巻線N2、第2の2次巻線N3とを有するトランスTと、第1の2次巻線N2に誘起されたスイッチング電圧をダイオードD1と平滑コンデンサC1からなる直流化回路(整流・平滑回路)で直流化する電圧制御型出力回路11と、電圧制御型出力回路11の出力電圧が所定の電圧となるように、スイッチング素子Q1を制御する制御IC等の制御回路12と、第2の2次巻線N3に誘起された複数の電圧が入力される非電圧制御型出力回路10とを備える。
【0016】
第2の2次巻線N3は互いに発生電圧の異なる複数の巻線出力端子を有し、複数の巻線出力端子が非電圧制御型出力回路10の入力に接続される。電圧制御型出力回路11の出力に第1の負荷が接続され、非電圧制御型出力回路10の出力に第2の負荷が接続される。
制御回路12は、電圧制御型出力回路11の出力電圧V1が所定の電圧値となるように、スイッチング素子Q1のオン/オフ周期を制御する周知の回路である。
なお、直流電圧Vinは、商用交流電源電圧を整流・平滑化した直流電圧であってもよいし、太陽電池等の発電手段により発電された発電電力に基づく直流電圧であってもよい。
【0017】
図2は、非電圧制御型出力回路10の回路図である。
トランスTの2次巻線N3の巻き終わりの巻線出力端子(以下「巻き終わり端子」という)がダイオードD2のアノードに接続され、2次巻線N3の途中からの巻線出力端子(以下「センタータップ」という)がダイオードD3のアノードに接続され、2次巻線の巻き始めはGNDに接続される。すなわち、巻き終わり端子の電圧V2はセンタータップの電圧V3より高い電圧である。
【0018】
ダイオードD2のカソードは、トランジスタQ1(本願の「電圧切替素子」に相当)のコレクタ(電流路の一方端子)と抵抗R1の一端に接続される。なお、ダイオードD2のカソード側の電圧(トランジスタQ1のコレクタ電圧)はV2である。ダイオードD3のカソードは、トランジスタQ1のエミッタ(電流路の他方端子)に接続されるとともに、第2の負荷に出力される。この場合にはダイオードD3のカソード側の電圧(トランジスタQ1のエミッタ電圧)V3と非電圧制御型出力回路10の出力電圧(第2の負荷に出力する出力電圧)Voは同じである。
【0019】
トランジスタQ1のベース(制御端子)は、抵抗R1の他端と抵抗R2の一端に接続される。抵抗R2の他端は、シャントレギュレータU1(本願の「電圧検出素子」に相当)のカソードに接続される。シャントレギュレータU1のレファレンス端子は、非電圧制御型出力回路10の出力端子とGND間に直列に接続された抵抗R3と抵抗R4の接続点に接続される。シャントレギュレータU1のアノードはGNDに接続される。
ダイオードD2のカソード側の電圧V2およびダイオードD3のカソード側の電圧V3はそれぞれ、巻き終わり端子およびセンタータップに出力される誘起電圧からダイオードD2およびD3の電圧低下分を差し引いた電圧となる。また、ダイオードD3のカソード側とGND間にはコンデンサC2が接続される。
【0020】
以上のように構成された非電圧制御型出力回路10の動作を説明する。
シャントレギュレータU1は、抵抗R3と抵抗R4の接続点の電圧(出力電圧Voを抵抗R3と抵抗R4とにより分圧した電圧)がシャントレギュレータU1のレファレンス端子に入力され、レファレンス端子の入力電圧とシャントレギュレータU1内部の基準電圧とが比較され、レファレンス端子の入力電圧が高いときに、シャントレギュレータU1に電流が流れ、スイッチとしての機能がオン(シャントレギュレータU1が導通)する。
【0021】
第2の負荷に出力する出力電圧Voが所定値より高いとき、シャントレギュレータU1がオンし、トランスTの2次巻線N3の誘起電圧が相対的に高い巻線出力端子からダイオードD2、抵抗R1および抵抗R2を介して電流が流れる。電流が流れると、トランジスタQ1のベース電圧は抵抗R1による電圧降下のためエミッタ電圧V3を下回り、トランジスタQ1はオフする。このとき、ダイオードD2のカソード(電圧V2)側からダイオードD3のカソード(電圧V3)側には電流が流れないため、電圧V3がそのまま出力電圧Voとなって負荷(第2の負荷)に出力される。
【0022】
一方、第2の負荷が大きくなり出力電圧Voが所定値より低下すると、抵抗R3と抵抗R4により分圧された電圧も低下し、シャントレギュレータU1のレファレンス端子の入力電圧が、基準電圧より低下する。すると、シャントレギュレータU1のスイッチ機能はオフする(シャントレギュレータU1が非導通になる)。その結果、抵抗R1のシャントレギュレータU1による電圧降下は発生しないので、トランジスタQ1のエミッタ電圧V3よりベース電圧が高くなり、トランジスタQ1はオンする。トランジスタQ1を介してダイオードD2のカソード(電圧V2)側からダイオードD3のカソード(電圧V3)側に電流が流れる。その結果、電圧V3の低下が抑制され、電圧V2が出力電圧Voとして負荷に出力される。
この場合、出力電圧Voは、厳密には電圧V2ではなく、電圧V2からトランジスタQ1のコレクタ・エミッタ間電圧を差し引いた電圧となる。
【0023】
すなわち、非電圧制御型出力回路10の負荷が小さい状態(軽負荷)では、2次巻線N3の誘起電圧が相対的に低い巻線出力端子の電圧が負荷に出力され、非電圧制御型出力回路の負荷が大きい状態(重負荷)になると、2次巻線N3の誘起電圧が相対的に高い巻線出力端子の電圧が負荷に出力される。
ここで、出力電圧Voの所定値とは、シャントレギュレータU1内部の基準電圧値と抵抗R3および抵抗R4の抵抗値により決定される電圧値である。すなわち、所定値=(R3+R4)/R4×基準電圧値である。
【0024】
図3はその非電圧制御型出力回路10の動作を説明する図である。
横軸は第2の負荷の出力電流であり、縦軸は電圧である。破線で示す電圧V1は、
図1に示す電圧制御型出力回路11の出力電圧V1である。出力電流が増加するにつれてなだらかに電圧が減少する連続曲線(点線で示すが出力電流大の領域では実線で示されている)は電圧V2であり、同様に出力電流が増加するにつれてなだらかに電圧が減少する連続曲線であり、電圧値がV2より小さい曲線(点線で示すが出力電流小の領域では実線で示されている)は電圧V3である。電圧V3の実線部からA点を境にして電圧は一定となり、その後電圧V2の実線部に切り替わる曲線、すなわち実線のみからなる途中に直線が挿入された曲線は第2の負荷への出力電圧Voを示す。
【0025】
なお、A点で出力電圧Voは電圧V2に直に切り替わらないで一定(所定値)となるのは、シャントレギュレータU1が出力電圧Voを一定とするよう動作するためである。出力電流がさらに増加して電圧V2が低下すると、シャントレギュレータU1は完全にオフし、それによりトランジスタQ1はオンして電圧V2がそのまま第2の負荷に出力される。
いずれの曲線も、出力電流が増加するについて電圧は低下している。電圧V2は、電圧V3の10~15%程度高い電圧になるように、2次巻線N3の巻数比が設定される。
【0026】
図3に示すA点は、出力電圧Voが一定値となったときの出力電流となる時点(例えば0.1A)である。ここで、出力電圧Voは電圧V3から一定値に維持された後電圧V2に切り替わる。A点までの出力電流ではトランジスタQ1は動作していないため、出力電流値にかかわらず電力の損失はない。出力電流が増加してA点を超えるとトランジスタQ1が動作し、一定値を維持した後、電圧V2に切り替わり出力電圧Voも低下していく。
例えば、出力電流が0.6Aの場合(
図3の電圧VoのB点に相当)の非電圧制御型出力回路10の損失は、トランジスタQ1のコレクタ・エミッタ間に印加される電圧である電圧V2と電圧V3の差を0.5Vとすると、0.30Wとなる。
【0027】
この実施例の非電圧制御型出力回路10の損失を、
図6に示す従来回路の損失と比較する。
図4は、
図6に示す従来技術の出力電圧の切り替え動作を比較のために説明する図である。横軸は出力電流であり、縦軸は電圧で、
図3と同じである。また、
図4に示す破線および一点鎖線は
図6に示す電圧V1および電圧V3であり、出力電流の増加とともに電圧が低下した後、A点で一定値となる実線は電圧V2である。
例えば、
図4に示すA点およびB点の出力電流を
図3と同じ0.1Aと0.6Aとし、電圧V1を65V、電圧V3を5Vとすると、A点では定電圧調整回路の損失はないが、B点では電圧V1と電圧V3の差の60Vと出力電流0.6Aから、損失はその積の36Wとなる。
従来技術の定電圧調整回路の損失と比較して、本発明に係る非電圧制御型出力回路10の損失は極めて少なくなっている。
【0028】
なお、
図2に示す非電圧制御型出力回路10には、
図6に示す定電圧回路IC1は備えていないが、定電圧回路を備えていてもよい。
また、電圧切替素子はNPNトランジスタで構成されているが、MOSFETを用いてもよい。
【0029】
図5は、非電圧制御型出力回路の他の実施例の回路図である。
図2と比較して、出力電圧の低下を検出してトランジスタQ1に出力する素子U2(電圧検出素子)が異なっているが、他の構成は同じであるため非電圧制御型出力回路20の抵抗等の素子の諸元は同じとした。
この素子U2は、出力電圧Voの低下を検出する端子と基準電圧を比較するコンパレータが使用でき、電圧が低下したときコンパレータの出力によりトランジスタQ1を動作させるように構成される。
【0030】
また、本実施形態では2次巻線を第1の2次巻線N2と第2の2次巻線N3の2つとしているが、2次巻線を3つ以上としてもよい。この場合、2次巻線の1つに電圧制御型出力回路を接続し、他の2次巻線に非電圧制御型出力回路を接続し、他の2次巻線に接続された非電圧制御型出力回路の少なくとも1つに本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1・・・スイッチング電源、10・・・非電圧制御型出力回路、11・・・電圧制御型出力回路、12・・・制御回路、20・・・非電圧制御型出力回路。