(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144494
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】マスクおよびマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220926BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 D
A62B18/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045535
(22)【出願日】2021-03-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000138554
【氏名又は名称】株式会社ユタックス
(74)【代理人】
【識別番号】100123021
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 元幸
(72)【発明者】
【氏名】宇高 大介
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CC32
2E185CC73
(57)【要約】
【課題】 飛沫飛散防止効果に優れたマスクを提供する。
【解決手段】 着用者の口及び鼻孔を覆うマスク本体部2と、マスク本体部2の左右にそれぞれ着用者の耳を掛けるための耳掛け部3とを備えたマスクであって、マスク本体部2の中心部にマスクの通気を遮断する遮蔽部5を備え、遮蔽部5は、マスク本体部2に樹脂を塗布して形成され、マスクを着用したときに着用者の鼻孔と口が遮蔽部5により覆われることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の口及び鼻孔を覆うマスク本体部と、マスク本体部の左右にそれぞれ着用者の耳を掛けるための耳掛け部とを備えたマスクであって、
マスク本体部の中心部にマスクの通気を遮断する遮蔽部を備え、
前記マスクを着用したときに着用者の鼻孔と口が前記遮蔽部により覆われる
ことを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記遮蔽部は、マスク本体部に樹脂を塗布して形成される
ことを特徴とする請求項1記載のマスク。
【請求項3】
前記マスク本体部の上辺は、着用者の眼窩下部および頬骨部の中央付近に位置し、前記マスク本体部の左右端は、着用者の咬筋部に位置し、前記マスク本体部の下辺は、着用者のオトガイ下部および下顎後部付近に位置する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
前記マスク本体部は、織物、編み物または発泡ウレタンにより構成されている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項5】
前記マスク本体部は、マスク本体部の幅方向中心部に可撓性を有する棒状又は平板状の芯材が配置されている
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項6】
口及び鼻孔を覆うマスク本体部と、マスク本体部の左右に設けられた耳掛け部分とを備えるマスクの製造方法であって、
マスク本体部を構成する生地を裁断する生地裁断工程と、
裁断された生地の、マスク本体部の中心部となる位置に樹脂を塗布してマスクの通気を遮断する遮蔽部を形成する遮蔽部形成工程とを含む
ことを特徴とするマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、くしゃみや咳の飛沫拡散を抑制するマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、花粉やウイルスの侵入を防ぐため、また、くしゃみや咳による飛沫拡散を防ぐため、鼻や口を覆うマスクが使用されている。マスクは、鼻と口を覆う本体部分と耳掛け部分とを有している。衛生的な観点から使い捨てマスクが一般的に認知されているが、洗濯することで繰り返し使用が可能なマスクも提案されている。
【0003】
一般的に知られているマスクは、1枚の布地からなる鼻と口を覆う部分と左右の耳掛け部分とから構成されているが、他にも鼻と口を覆うマスク本体部分を、鼻と口のラインに合うように2枚の布地を縫製や接着でつなぎ合わせて構成したものもある。この2枚の布地をつなぎ合わせたマスクでは、着用時に口部分が立体的になり口元の空間が広くなる特徴を有している。
【0004】
マスクの材料としては、不織布が使用されている。そのほかにも織物や編物からなる布地が使用されることもある。いずれの素材のマスクであっても、マスクを着用した状態で呼吸が可能となるように構成されており、不織布や布地では隙間が存在する構造として通気性が確保されている。しかし、この隙間部分を通じて、花粉やウイルスが通過してしまうため、隙間の大きさや数によっては、着用時のこれらの侵入防止の効果が低くなってしまうこともある。
【0005】
そのため、マスク本体に花粉対策やウイルス対策を施したマスクが提案されている。不織布のマスクであれば、複数枚を重ねて使用し、表から裏へ貫通するような穴を無くすようにし、布地のマスクであれば、編み密度を高くして、隙間を小さくすることが行われている。もちろん、布地を重ねて2重や3重にすることも考えられている。
【0006】
このほか、例えば、特許文献1では、花粉対策として、花粉が静電気に吸着する性質を利用し、マスク本体に帯電したシートを貼り付け、静電気による吸着作用により花粉の体内への侵入を防ぐ方法が開示されている。
【0007】
また、ウイルス対策としては、抗菌や除菌作用がある物質を繊維や布地に付着するなどの方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3051129号公報
【特許文献2】特開2005-177320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
不織布のマスクは、素材自体が持つフィルター性能効果が高いとされている。しかしながら、着用時に顔の立体形状にしっかり沿わせないと、顔とマスクの隙間から、花粉などが侵入してきて、不織布の持つフィルター性能の効果が得られないという問題がある。また、不織布のマスクは肌触りが悪く、長時間の着用には適さないという問題もある。
【0010】
ガーゼマスクは、使用されている生地やガーゼの目が粗く、フィルター効果に劣るという問題がある。また、布マスクでは、高密度な布地を使用している場合、ガーゼマスクよりもフィルター効果は高くなるが、1枚での使用では、そのフィルター効果は不織布マスクよりも劣る。複数枚重ねると布地自体のフィルター効果は高くなるが、柔軟性が悪化し、顔への密着性が悪くなってしまう。
【0011】
ウレタンマスクは、通気性確保のため発泡させているため、厚みの割に高密度布地の1枚の布マスクと同程度かそれ以下のフィルター効果しかなく、やはり不織布マスクには及ばないという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、飛沫飛散防止効果に優れたマスクを提供することを目的とし、布マスクの密着性や、肌触りの快適性、また繰り返し使用できる経済性を保有しながら、不織布のマスクに勝るとも劣らない飛沫飛散防止効果を有するマスクを提供することをも目的とする。さらに、そのようなマスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係るマスクは、着用者の口及び鼻孔を覆うマスク本体部と、マスク本体部の左右にそれぞれ着用者の耳を掛けるための耳掛け部とを備えたマスクであって、マスク本体部の中心部にマスクの通気を遮断する遮蔽部を備え、前記マスクを着用したときに着用者の鼻孔と口が前記遮蔽部により覆われることを特徴とする。
【0014】
ここで、前記遮蔽部は、マスク本体部に樹脂を塗布して形成されることを特徴とする。
また、前記マスク本体部の上辺は、着用者の眼窩下部および頬骨部の中央付近に位置し、前記マスク本体部の左右端は、着用者の咬筋部に位置し、前記マスク本体部の下辺は、着用者のオトガイ下部および下顎後部付近に位置するのが好ましい。
【0015】
ここで、前記マスク本体部は、織物、編み物または発泡ウレタンにより構成されているとしてもよい。
【0016】
さらに、前記マスク本体部は、マスク本体部の幅方向中心部に可撓性を有する棒状又は平板状の芯材が配置されているのが好ましい。
【0017】
また、本発明は、マスクの製造方法として、口及び鼻孔を覆うマスク本体部と、マスク本体部の左右に設けられた耳掛け部分とを備えるマスクの製造方法であって、マスク本体部を構成する生地を裁断する生地裁断工程と、裁断された生地の、マスク本体部の中心部となる位置に樹脂を塗布してマスクの通気を遮断する遮蔽部を形成する遮蔽部形成工程とを含むことを特徴とする、と構成することもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るマスクによれば、飛沫飛散防止効果に優れたマスクが実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】本発明に係るマスクを着用した状態を示す正面図である。
【
図4】本発明に係るマスクを着用した状態を示す側面図である。
【
図5】本発明に係るマスクの遮蔽部の拡大写真である。
【
図6】本発明に係るマスクの遮蔽部の別の拡大写真である。
【
図7】マスク非着用時の飛沫飛散試験の試験結果を示す画像である。
【
図8】ウレタンマスクを着用した時の飛沫飛散試験の試験結果を示す画像である。
【
図9】布マスクを着用した時の飛沫飛散試験の試験結果を示す画像である。
【
図10】不織布マスクを着用した時の飛沫飛散試験の試験結果を示す画像である。
【
図11】本発明に係るマスクを着用した時の飛沫飛散試験の試験結果を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るマスクについて、実施の形態に基づいて説明する。
【0021】
図1から
図4は本発明に係るマスクを示す図であり、
図1は側面図、
図2は斜視図、
図3は着用した状態を示す正面図であり、
図4は着用した状態を示す側面図である。
【0022】
本実施形態のマスク1は、2枚の布地がつなぎ合わされて構成されたマスク本体部2と、耳掛け部3とを備えている。マスク本体部2となる2枚の生地は左右対称の形状となるように裁断されており、左右の2枚の生地の左右端には着用時に着用者の耳に引っ掛けるための耳掛け部3がそれぞれ形成されている。この左右の2枚の生地はマスク1の幅方向(左右)の中心部においてつなぎ合わされている。
【0023】
マスク本体部2は、鼻と口を覆うマスク1の本体部分であり、左右2枚の布地が接着剤による接着や縫着等によってつなぎ合わされており、このつなぎ合わされる接合部分である幅方向(左右)中心部に、棒状又は平板状の芯材4が配置されている。
【0024】
芯材4は、可撓性を有する材質で構成されており、屈曲しにくいものを用いるのが好ましい。撓むものであれば合成樹脂(例えば、ポリアミドなど)で構成してもよく、反応型ホットメルトなどの接着剤を硬化させたものであってもよい。また、金属であってもよく鉄線などを撚り合わせたものを使用することも可能である。芯材4が可撓性を有することで、マスク1はマスク本体部2の伸びに合わせて芯材4が曲がって密着性を高く維持することができ、また屈曲しにくいため、きれいな曲線の外観を維持することができる。
【0025】
また、マスク本体部2の中央部分には、樹脂が塗布されて遮蔽部5が形成されている。この遮蔽部5はマスク本体部2の隙間を塞いで通気を遮断する。これにより、本実施形態のマスク1は、マスク1を着用したときに着用者の鼻孔と口が遮蔽部5により覆われるので、優れた飛沫飛散防止効果を発揮することができる。
【0026】
遮蔽部5は、
図1乃至
図4において網掛けを施した部分であり、マスク本体部2の中央部分において縦方向に細長い領域に形成されている。遮蔽部5は、鼻孔と口全体を覆うとしてもよいが、口を閉じている状態で口の幅の80%以上を遮蔽部5が覆うようにすれば足り、樹脂を塗布して遮蔽部5が形成される領域を、唇の端が少しはみ出る程度で構成してもよい。くしゃみや咳をするときの口の形状は「イ」の音を発声するときのものではなく、「オ」の音を発声するときのものに近いからである。遮蔽部5が狭いほど呼吸がしやすく、また樹脂の未塗布領域が広いほど呼吸がしやすくなる。
【0027】
遮蔽部5を構成する樹脂は、例えば、アクリル樹脂であり、そのほかポリウレタンやポリアミドなどの樹脂も使用可能である。樹脂は柔軟性があり、編み目の隙間や、不織布等の隙間を塞げればよい。なお、後でも遮蔽部5については詳述する。
【0028】
マスク本体部2を構成する布地は、合成繊維を材料とした生地が用いられており、マスク1ではナイロンとポリウレタンを含む編地を使用することで、マスク本体部2に伸縮性を持たせている。
【0029】
ここで使用する布地の生地は、伸長性が25mm幅で1.5kgf時に100%伸びる生地を使用しており、マスク本体部2が左右方向へ上記の伸長性を持つ構造となっている。
【0030】
花粉の侵入を抑制するには、コース×ウェルが5000以上であることが好ましく、8000以上であるとさらに好ましい。織物の場合は、スレッドカウントが500以上であることが好ましい。
【0031】
本実施形態のマスク1では、ナイロンとポリウレタンを使用しているが、合成繊維としてはナイロン以外にも、ポリエステルやアクリルなどを使用することも可能である。
【0032】
本実施形態のマスク1を構成する生地の編み組織は、ナイロンがプレーンコード、ポリウレタンが二目編みとしている。
【0033】
上記の編み組織では、一つの編み目から糸が多方向に出ており、編み目間の隙間が他の編み組織よりも小さい。
【0034】
ヨコ編みの場合では、インターロックなどのダブルニットが好ましい。
【0035】
本実施形態のマスク1の作成の手順は、次のとおりである。
まず、マスク本体部2となる2枚の布地を左右対称の形状となるよう裁断し、同時に耳掛け部3のための穴を裁断により作成する(本体生地裁断工程)。
【0036】
次に、裁断された2枚の布地のそれぞれにスクリーン塗布による方法で樹脂を塗布して遮蔽部5を形成する(遮蔽部形成工程)。
【0037】
図5および
図6に、マスク本体部2に樹脂を塗布して形成した遮蔽部5の拡大写真を示す。
【0038】
図5は布地表面にピントがあっており、
図6は布地の奥にピントが合っている。
【0039】
図5で布地表面の隙間を樹脂が覆っている部分と、覆っていない部分がみられるが、覆っていない部分でも、
図6でわかるように、布地の奥で樹脂が隙間を覆っている。このため、咳やくしゃみをした時でも遮蔽部5が飛沫を通過させることがない。
【0040】
なお、ここでは、アクリル樹脂の塗布時の粘度は60000cpsで行った例を示している。粘度は被膜ができる程度であればよく、30000cpsから100000cpsぐらいの範囲で樹脂塗布膜を作成し、遮蔽部5を形成することができる。
【0041】
その後、上記のマスク本体部2を構成する2枚の生地のうち一方の生地に接着剤を塗布する。マスク1の幅方向の中心部で生地同士がつなぎ合わされ、この中心部が接合部分となるように接着剤を塗布する。そして、接着剤が塗布された生地と棒状の芯材4とを接着する(芯材接着工程)。生地と棒状の芯材4とを接着する際には、マスク1の中心部の外縁の形状に沿うように芯材4を撓ませて接着する。中心部の外縁の形状とは、
図1や
図4に示す左側の湾曲した形状であり、マスク1の着用者の鼻先から顎にかけて外側(顔と反対側)に湾曲した形状である。
【0042】
その後、残りの一方の生地にも同様に中心部が接合部分となるよう接着剤を塗布し、2枚の生地を重ね合わせ、熱プレスを行いマスク本体部2を作成する(マスク本体部作成工程)。
【0043】
このようにして本実施形態のマスク1が完成する。
【0044】
ここでは、接着剤にはポリウレタン系ホットメルト接着剤を使用したが、他にもポリアミド系ホットメルト接着剤などの熱溶融型ホットメルト接着剤や反応型ホットメルト接着剤などを使用することも可能である。
【0045】
また、今回は接着のみを用いて作成を行ったが、2枚の生地同士を接合するときに縫製を組み入れて接合するようにしてもよい。
【0046】
完成したマスク1は、二枚の布を中心で貼り合わせた構造となっており、貼り合わせた領域の中央は凸状になっているため、着用時にマスク本体部が左右に引っ張られることで口元に空間が構成される。
【0047】
また、芯材4が柔軟性を有しているため着用時は、マスク本体の伸びに合わせて芯材4が曲がるため密着性が高い。
【0048】
このマスクに使用されている布地は、柔らかい布地を使用しているため、顔の凹凸になじみやすく、また伸縮性のある布地を使用しているため、不織布マスクやガーゼマスクのように、顔にフィットさせるために、耳掛け部3のみに張力をかける必要がないため、耳に負担がかからず、適切なサイズを使用すれば、長時間使用しても耳が痛くなりにくくなっている。
【0049】
本実施形態のマスク1は、マスク本体部2に樹脂が塗布されており、樹脂が塗布されて遮蔽部5が形成されている部分では布地の隙間が無く、咳やくしゃみをした時の飛沫拡散を防ぐことが可能であり、樹脂が塗布されていない部分では布地の隙間を通して呼吸が可能であるため、着用時にも息苦しくない構造となっている。
【0050】
飛沫が拡散する方向は、顔の正面から真っすぐの方向に勢いよく進み、横方向には広がりにくい。また、マスク1で飛散が防がれた飛沫は、横方向へ広がろうとするが、勢いが弱まっているため、樹脂が塗られていなくても、密度の高い布地であれば、ほぼ通過することがない。そのため、着用時に樹脂が塗布されて形成されている遮蔽部5により鼻と口が覆われている本実施形態のマスク1では、外部に飛沫が拡散しない効果が高くなっている。
【0051】
ここで、マスク本体部2の上辺は、着用者の眼窩下部および頬骨部の中央付近に位置し、マスク本体部2の左右端は着用者の咬筋部に位置し、下辺は着用者のオトガイ下部および下顎後部付近に位置しているものが良い。このように、マスク本体部2の上辺が、着用者の眼窩下部および頬骨部の中央付近までを被覆し、マスク本体部2の左右方向は着用者の咬筋部にかかる程度の位置までを覆い、下辺は着用者のオトガイ下部と下顎後部にかかる程度までを被覆する範囲を有するマスク本体部2の中央部分に遮蔽部5を形成することで、咳やくしゃみをした時の飛沫が前方へ飛ぶことを防ぐことができるとともに、左右方向への飛沫の漏れも少なくすることができる。裏を返せば、マスク1のサイズが小さいと、咳やくしゃみをした時の飛沫が前方へ飛ぶことは防ぐことができても、左右方向への漏れが多くなってしまうことになる。もっとも、マスク本体部2の中央部分に遮蔽部5を形成することで、咳やくしゃみをした時の飛沫の抑制としては、ある程度の効果は得られることにはなる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態のマスクは、本体部分に樹脂が塗布されており、樹脂が塗布された部分では不織布や生地の隙間がないため、マスク着用者のくしゃみや咳による飛沫の拡散の防止効果が高い。また、塗布が行われていない布地部分の隙間部から呼吸が可能であるため、息苦しくない構造となっている。また、このようにして得られたマスク本体は、ナイロンとポリウレタンの布地で構成されているため、肌触りがよく、不織布マスクよりも、着用感が優れている。また、洗濯して繰り返し使用しできるため、経済的にも有利である。
【0053】
図7~11に飛沫飛散試験の試験結果を示す画像、より具体的にいえば、くしゃみをした時の飛沫の飛散状況を撮影した画像を示す。
【0054】
図7はマスク非着用時、
図8はウレタンマスク着用時、
図9は布マスク着用時、
図10は不織布マスク着用時、そして、
図11は本実施形態のマスク1着用時である。
【0055】
試験方法は、マネキンの口より、0.04±0.001gの模擬唾液を0.4MPaの圧縮空気で噴射して人工飛沫を飛ばした時の様子をハイスピードカメラで撮影することにより行った。
図11から読み取れるように、本実施形態のマスク1では、フィルター効果が高いとされる不織布マスクと同等の飛沫飛散抑制効果を示している。
【0056】
以上、本発明に係るマスクについて実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
【0057】
例えば、上記実施形態では、遮蔽部を樹脂塗布により形成する例を説明したが、樹脂塗布により形成するほか、通気性のないシートやフィルムなどを貼り付けて遮蔽部を形成するとしてもよい。
【0058】
また、2枚の布地の貼り合わせでマスク本体部を構成する例を説明したが、1枚の布地で構成してもよく、1枚の布地で構成された場合でも咳やくしゃみ時の飛沫の飛散を抑制する効果が得られる。
【0059】
さらに、使用した布地以外でも、ウレタンマスクのような発泡ウレタンでマスク本体部を構成し、該当部分に樹脂塗布を行って遮蔽部を構成するとしてもよい。
【0060】
また、マスク本体部のうち、着用時に着用者の頬付近に位置する箇所から耳掛け部までを伸縮性のある布地で構成し、着用者の鼻や口回りに位置する箇所は織物などの伸びない布地で構成するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係るマスクは、衛生用マスクとして有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 マスク
2 マスク本体
3 耳掛け部
4 芯材
5 遮蔽部
【手続補正書】
【提出日】2021-07-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の口及び鼻孔を覆うマスク本体部と、マスク本体部の左右にそれぞれ着用者の耳を掛けるための耳掛け部とを備えたマスクであって、
マスク本体部の中心部にマスクの通気を遮断する遮蔽部を備え、
前記マスクを着用したときに着用者の鼻孔と口が前記遮蔽部により覆われ、
前記マスク本体部の左右端は着用者の咬筋部に位置し、
前記マスク本体部の上辺は、側面視において着用者の鼻の先端から下方へ湾曲した後、前記マスク本体部の端部に向かって水平方向に伸び、着用者の眼窩下部および頬骨部の中央付近の位置において水平方向への伸びを維持したまま前記マスク本体部の左右端に至り、
前記マスク本体部の下辺は、側面視において着用者のオトガイ下部から下顎後部付近までの位置において直線状に傾斜して前記マスク本体部の左右端に至る
ことを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記遮蔽部は、マスク本体部に樹脂を塗布して形成される
ことを特徴とする請求項1記載のマスク。
【請求項3】
前記マスク本体部は、織物、編み物または発泡ウレタンにより構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
前記マスク本体部は、マスク本体部の幅方向中心部に可撓性を有する棒状又は平板状の芯材が配置されている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項5】
口及び鼻孔を覆うマスク本体部と、マスク本体部の左右に設けられた耳掛け部分とを備えるマスクの製造方法であって、
マスク本体部を構成する生地を裁断する生地裁断工程と、
裁断された生地の、マスク本体部の中心部となる位置に樹脂を塗布してマスクの通気を遮断する遮蔽部を形成する遮蔽部形成工程とを含み、
前記生地裁断工程において、
前記マスク本体部の左右端が着用者の咬筋部に位置し、
前記マスク本体部の上辺が、側面視において着用者の鼻の先端から下方へ湾曲した後、前記マスク本体部の端部に向かって水平方向に伸び、着用者の眼窩下部および頬骨部の中央付近の位置において水平方向への伸びを維持したまま前記マスク本体部の左右端に至り、
前記マスク本体部の下辺が、側面視において着用者のオトガイ下部から下顎後部付近までの位置において直線状に傾斜して前記マスク本体部の左右端に至るように生地を裁断する
ことを特徴とするマスクの製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の口及び鼻孔を覆うマスク本体部と、マスク本体部の左右にそれぞれ着用者の耳を掛けるための耳掛け部とを備えたマスクであって、
前記マスク本体部は、プレーンコードと二目編みとを組み合わせたコース×ウエルが5000以上の編み組織で構成され、
マスク本体部の中心部に樹脂を塗布して形成され、マスクの通気を遮断する遮蔽部を備え、
前記マスクを着用したときに着用者の鼻孔と口が前記遮蔽部により覆われ、
前記マスク本体部の左右端は着用者の咬筋部に位置し、
前記マスク本体部の上辺は、側面視において着用者の鼻の先端から下方へ湾曲した後、前記マスク本体部の端部に向かって水平方向に伸び、着用者の眼窩下部および頬骨部の中央付近の位置において水平方向への伸びを維持したまま前記マスク本体部の左右端に至り、
前記マスク本体部の下辺は、側面視において着用者のオトガイ下部から下顎後部付近までの位置において直線状に傾斜して前記マスク本体部の左右端に至る
ことを特徴とするマスク。
【請求項2】
着用者の口及び鼻孔を覆うマスク本体部と、マスク本体部の左右にそれぞれ着用者の耳を掛けるための耳掛け部とを備えたマスクであって、
前記マスク本体部は、コース×ウエルが5000以上のダブルニットのヨコ編み組織で構成され、
マスク本体部の中心部に樹脂を塗布して形成され、マスクの通気を遮断する遮蔽部を備え、
前記マスクを着用したときに着用者の鼻孔と口が前記遮蔽部により覆われ、
前記マスク本体部の左右端は着用者の咬筋部に位置し、
前記マスク本体部の上辺は、側面視において着用者の鼻の先端から下方へ湾曲した後、前記マスク本体部の端部に向かって水平方向に伸び、着用者の眼窩下部および頬骨部の中央付近の位置において水平方向への伸びを維持したまま前記マスク本体部の左右端に至り、
前記マスク本体部の下辺は、側面視において着用者のオトガイ下部から下顎後部付近までの位置において直線状に傾斜して前記マスク本体部の左右端に至る
ことを特徴とするマスク。
【請求項3】
前記マスク本体部は、マスク本体部の幅方向中心部に可撓性を有する棒状又は平板状の芯材が配置されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
口及び鼻孔を覆うマスク本体部と、マスク本体部の左右に設けられた耳掛け部分とを備えるマスクの製造方法であって、
プレーンコードと二目編みとを組み合わせたコース×ウエルが5000以上の編み組織で、又は、コース×ウエルが5000以上のダブルニットのヨコ編み組織でマスク本体部を構成する生地を形成する工程と、
マスク本体部を構成する生地を裁断する生地裁断工程と、
裁断された生地の、マスク本体部の中心部となる位置に樹脂を塗布してマスクの通気を遮断する遮蔽部を形成する遮蔽部形成工程とを含み、
前記生地裁断工程において、
前記マスク本体部の左右端が着用者の咬筋部に位置し、
前記マスク本体部の上辺が、側面視において着用者の鼻の先端から下方へ湾曲した後、前記マスク本体部の端部に向かって水平方向に伸び、着用者の眼窩下部および頬骨部の中央付近の位置において水平方向への伸びを維持したまま前記マスク本体部の左右端に至り、
前記マスク本体部の下辺が、側面視において着用者のオトガイ下部から下顎後部付近までの位置において直線状に傾斜して前記マスク本体部の左右端に至るように生地を裁断する
ことを特徴とするマスクの製造方法。