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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144505
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】線形可変差動変圧器
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/22 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
G01D5/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045550
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000232357
【氏名又は名称】株式会社YDKテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】杉目 道史
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA21
2F077FF04
2F077FF12
2F077UU26
2F077VV02
(57)【要約】
【課題】プローブの可動方向への外乱磁界の混入を抑制することが可能な線形可変差動変圧器を提供する。
【解決手段】直管状の一次コイルと、当該一次コイルと同軸状に設けられる一対の二次コイルと、一次コイル及び二次コイルの内側に設けられ、一次コイル及び二次コイルの中心軸方向に可動自在かつ磁気コアが装着されるプローブと、プローブの一部、一次コイル、二次コイル及び磁気コアを収容し、プローブの一端あるいは両端が貫通するああるいは一対の貫通孔が設けられた筐体とを備え、筐体の内部を電磁気的に遮蔽するシールド部材が設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管状の一次コイルと、
当該一次コイルと同軸状に設けられる一対の二次コイルと、
前記一次コイル及び前記二次コイルの内側に設けられ、前記一次コイル及び前記二次コイルの中心軸方向に可動自在かつ磁気コアが装着されるプローブと、
前記プローブの一部、前記一次コイル、前記二次コイル及び前記磁気コアを収容し、前記プローブの一端が貫通する貫通孔が設けられた筐体とを備え、
前記筐体の内部を電磁気的に遮蔽するシールド部材が設けられることを特徴とする線形可変差動変圧器。
【請求項2】
前記シールド部材は、前記筐体における前記中心軸方向に直交する側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の線形可変差動変圧器。
【請求項3】
前記シールド部材は、前記筐体を構成していることを特徴とする請求項2に記載の線形可変差動変圧器。
【請求項4】
前記シールド部材は、磁性部材及び導電性部材を備え、前記磁性部材が内側、前記導電性部材が外側に配置されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の線形可変差動変圧器。
【請求項5】
前記磁性部材及び前記導電性部材は、各々に板材であり、重ね合うように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の線形可変差動変圧器。
【請求項6】
回転電機のロータ内において回転軸と同軸状に配置されることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の線形可変差動変圧器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線形可変差動変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、航空機エンジンの測定に使用される線形可変作動変圧器(LVDT)が記載されている。この線形可変作動変圧器は、可変ステータベーン等の対象物の直線変位を検出するための誘導型電気センサであり、1次コイルと一対の2次コイルとプローブに設けられた中央コアとを備え、中央コアの直線変位に依存する一対の2次コイルの差動電圧の変化に基づいてプローブの先端に係合する対象物の直線方向の位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2015-521747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した線形可変差動変圧器は、中央コアの可動方向を中心軸方向とし、かつ構造的に有限な長さを有する直線状コイルを1次コイルとして備える。この1次コイルの端部では、当該1次コイルの中心軸方向に貫通する磁束の磁束密度が急激に低下する。この中心軸方向に貫通する磁束は、差動電圧を支配する磁束である。したがって、線形可変差動変圧器は、1次コイルの中心軸方向に貫通する磁束に外乱磁界が混入した場合に直線変位の検出精度が悪化し易いという基本的な問題点を有する。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、プローブの可動方向への外乱磁界の混入を抑制することが可能な線形可変差動変圧器の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、線形可変差動変圧器に係る第1の解決手段として、直管状の一次コイルと、当該一次コイルと同軸状に設けられる一対の二次コイルと、前記一次コイル及び前記二次コイルの内側に設けられ、前記一次コイル及び前記二次コイルの中心軸方向に可動自在かつ磁気コアが装着されるプローブと、前記プローブの一部、前記一次コイル、前記二次コイル及び前記磁気コアを収容し、前記プローブの一端が貫通する貫通孔が設けられた筐体とを備え、前記筐体の内部を電磁気的に遮蔽するシールド部材が設けられる、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、線形可変差動変圧器に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記シールド部材は、前記筐体における前記中心軸方向に直交する側に設けられる、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、線形可変差動変圧器に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記シールド部材は、前記筐体を構成している、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、線形可変差動変圧器に係る第4の解決手段として、上記第1~第3のいずれかの解決手段において、前記シールド部材は、磁性部材及び導電性部材を備え、前記磁性部材が内側、前記導電性部材が外側に配置される、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、線形可変差動変圧器に係る第5の解決手段として、上記第4の解決手段において、前記磁性部材及び前記導電性部材は、各々に板材であり、重ね合うように配置されている、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、線形可変差動変圧器に係る第6の解決手段として、上記第1~第5のいずれかの解決手段において、回転電機のロータ内において回転軸と同軸状に配置される、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1次コイルの中心軸方向への外乱磁界の混入を抑制することが可能な線形可変差動変圧器を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る線形可変差動変圧器の全体構成を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る線形可変差動変圧器の内部構成を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る線形可変差動変圧器の内部構成を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る線形可変差動変圧器の位置検出精度を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る線形可変差動変圧器Aは、図1に示すように電動機Bに装着され、端部に係合する対象物の位置を検出する略円筒状の変位センサである。
【0015】
なお、この電動機Bは、本発明の回転電機に相当する。また、図1及び図2では、X軸、Y軸及びZ軸からなる直交三軸を付記している。この線形可変差動変圧器Aにおいて、中心軸方向はZ軸に平行な方向である。
【0016】
電動機Bから先に説明すると、この電動機Bは、周知の構成のものであり、ステータb1、ロータb2及び回転軸b3を備えている。ステータb1は、円環状に配置された所定数のスロットを備えている。各スロットは、ステータコア及びステータ巻線を備えており、回転磁界を発生する複数の電磁石として機能する。
【0017】
ロータb2は、回転軸b3に固定された円環状の部材であり、上記ステータb1の内側に配置されている。このロータb2は、外周部が上記スロットの先端部と微小ギャップを隔てて対向しており、外周部には所定の電気角毎に磁極を構成する永久磁石が配置されている。このようなロータb2には、上記ステータb1との電磁気的な結合によって回転力が作用する。
【0018】
回転軸b3は、棒状金属部材であり、電動機Bの出力軸である。すなわち、この回転軸b3は、上記ロータb2に作用する回転力によって回転する棒状金属部材であり、中心軸方向に貫通孔b4が形成されている。本実施形態に係る線形可変差動変圧器Aは、図示するように、この貫通孔b4内に一定の間隔を空けた状態で挿通される略棒状の部材である。
【0019】
この線形可変差動変圧器Aは、図1並びに図2及び図3に示すように、電動機B(回転電機)のロータ内において回転軸b3と同軸状に配置されおり、筐体1、ブラケット2、プローブ3、ボビン4、一次コイル5、一対の二次コイル6A、6B、磁気コア7及び案内部材8を備えている。なお、このような線形可変差動変圧器Aの構成要素のうち、筐体1は、本発明のシールド部材に相当する。
【0020】
筐体1は、本実施形態において最も特徴的な構成要素であり、図示するように有底円筒状部材である。この筐体1は、円筒形状の側部1aと円板形状の底部1b、1cを備えており、プローブ3の一部、一次コイル5、一対の二次コイル6A、6B、磁気コア7及び案内部材8を収容する。上記側部1aは、円筒状磁性部材1d、円筒状導電性部材1e及び円筒状薄肉磁性部材1fから構成されている。
【0021】
すなわち、この側部1aは、外側に円筒状磁性部材1dが配置され、中間に円筒状導電性部材1eが配置され、内側に円筒状薄肉磁性部材1fが配置された三層構造を備える。円筒状磁性部材1d、円筒状導電性部材1e及び円筒状薄肉磁性部材1fは、各々に円筒形状かつ所定厚の板状部材(板材)であり、お互いが接した状態つまり重ね合うように隣接配置されている。
【0022】
ここで、円筒状磁性部材1d及び円筒状薄肉磁性部材1fは、同一の磁性材料によって形成されているが、円筒状薄肉磁性部材1fは、厚さが円筒状磁性部材1dよりも小さく設定されている。円筒状薄肉磁性部材1fと円筒状磁性部材1dとの厚さ比率は、例えば1:8.76である。なお、円筒状磁性部材1d及び円筒状薄肉磁性部材1fは、磁性材料として周知の材料から形成されており、例えばパーマロイである。
【0023】
一方、円筒状導電性部材1eは、導電性及び加工性に優れた金属材料から形成されている。この円筒状導電性部材1eは、上述した円筒状磁性部材1dと円筒状薄肉磁性部材1fとの間に挟まれた状態で側部1aを構成する。また、この円筒状導電性部材1eは、上述した円筒状磁性部材1dと円筒状薄肉磁性部材1fのうち、厚さが比較的大きい円筒状磁性部材1dの内側に配置されている。このような円筒状導電性部材1eを形成する金属材料は、例えば純銅である。
【0024】
一方の底部1bは、図1に示すように、中心を貫く貫通孔hが形成されている。すなわち、本実施形態における筐体1は、上述したようにプローブ3の一部、一次コイル5、一対の二次コイル6A、6B、磁気コア7及び案内部材8を収容することに加え、プローブ3の一端が貫通する貫通孔hが設けられている。
【0025】
また、この底部1bは、図2に示すように、円板状磁性部材1g及び円板状導電性部材1hから構成されている。これら円板状磁性部材1g及び円板状導電性部材1hは、各々に所定厚の板状部材(板材)であり、お互いが接した状態つまり重ね合うように隣接配置されている。
【0026】
すなわち、この側部1aは、外側に円板状磁性部材1gが配置され、内側に円板状導電性部材1hが配置された二層構造を備える。円板状磁性部材1gは、上述した円筒状磁性部材1d及び円筒状薄肉磁性部材1fと同一の磁性材料によって形成されているが、厚さが円筒状磁性部材1dよりも大きく設定されている。このような円板状磁性部材1gと円筒状磁性部材1dとの厚さ比率は、例えば1:0.8である。
【0027】
円板状導電性部材1hは、上述した円筒状導電性部材1eと同一の導電性材料によって形成されているが、厚さあるいは/及び導電率が円筒状導電性部材1eよりも大きく設定されている。円板状導電性部材1hと円筒状導電性部材1eとの厚さあるいは/及び導電率の比率は、例えば1:0.89である。
【0028】
他方の底部1cは、図2に示すように、円板状磁性部材1i及び円板状導電性部材1jから構成されている。これら円板状磁性部材1i及び円板状導電性部材1jは、各々に所定厚の板材であり、お互いが接した状態つまり重ね合うように配置されている。
【0029】
すなわち、この側部1aは、外側に円板状磁性部材1iが配置され、内側に円板状導電性部材1jが配置された二層構造を備える。円板状磁性部材1iは、上述した円筒状磁性部材1d及び円筒状薄肉磁性部材1fと同一の磁性材料によって形成されているが、厚さが円筒状磁性部材1dよりも小さく設定されている。このような円板状磁性部材1iと円筒状磁性部材1dとの厚さ比率は、例えば1:1.23である。
【0030】
円板状導電性部材1jは、上述した円筒状導電性部材1eと同一の導電性材料によって形成されているが、厚さあるいは/及び導電率が円筒状導電性部材1eよりも大きく設定されている。円板状導電性部材1jと円筒状導電性部材1eとの厚さあるいは/及び導電率の比率は、例えば1:0.89である。
【0031】
ブラケット2は、このような筐体1の側部1aに外接する金属部材であり、図2に示すように筒部2aとフランジ部2bとを備える。筒部2aは、内周面が筐体1の側部1aに当接する円筒状部位である。フランジ部2bは、筒部2aの外側に設けられた所定厚さの板部であり、複数の取付孔が形成されている。これら複数の取付孔は、線形可変差動変圧器Aを固定するためのネジ穴である。
【0032】
プローブ3は、図示するように有底円筒状の筐体1と同軸に設けられた棒状部材である。すなわち、このプローブ3は、筐体1の中心を貫く貫通孔hに挿通された状態で設けられており、筐体1の中心軸方向(Z軸方向)つまり自身の中心軸方向に可動自在である。このようなプローブ3には、中心軸方向つまり可動方向(Z軸方向)の片端(先端部)に対象物と係合する係合部材2aが設けられている。また、このプローブ3は、可動方向(Z軸方向)の途中部位に円筒形状の磁気コア7が固定されている。
【0033】
ボビン4は、筐体1内に当該筐体1及びプローブ3と同軸に設けられた円筒状部材である。このボビン4は、非磁性材料から形成された所定長さの円筒状部材である。すなわち、このボビン4は、内面(円筒面)がプローブ3に固定された磁気コア7の周面(円筒面)に対して一定のギャップを形成するように筐体1内に収容されている。
【0034】
一次コイル5は、所定長さを有するボビン4の外周部において、上記中心軸方向に所定の長さで巻回された直管状の巻線である。この一次コイル5には、一対の二次コイル6A、6Bを励磁するための交流電流(励磁電流)が外部電源(図示略)から供給される。この一次コイル5には、上記励磁電流に基づいて周囲に励磁磁界を発生する。
【0035】
一対の二次コイル6A、6Bは、上述した一次コイル5と同軸状かつ所定長さでテーパ巻きされた直管状の巻線である。すなわち、一対の二次コイル6A、6Bのうち、一方の二次コイル6Aは、上記中心軸方向において一次コイル5の表面に所定長さでテーパ状に巻回され、他方の二次コイル6Bは、上記中心軸方向において一次コイル5の表面に所定長さでテーパ状に巻回されている。
【0036】
このような一対の二次コイル6A、6Bは、各々に一次コイル5が発生する励磁磁界に基づく誘起電圧を出力する。すなわち、一次コイル5と一方の二次コイル6Aとは、また一次コイル5と他方の二次コイル6Aとは、各々にトランスを構成する。一次コイル5と一方の二次コイル6Aとは第1トランスを構成し、一次コイル5と他方の二次コイル6Aとは第2トランスを構成する。
【0037】
磁気コア7は、プローブ3の途中部位にプローブ3と同軸状に固定された円筒状の磁性部材である。この磁気コア7は、プローブ3及び筐体1の中心軸方向における長さつまり自身の中心軸方向における長さが所定長さに設定されている。このような磁気コア7は、第1トランス及び第2トランスの各結合係数を中心軸方向の位置に応じて可変する。
【0038】
ここで、上述した第1、第2トランスは、ボビン4内を中心軸方向に可動自在な磁気コア7の位置に応じて結合係数が変化する。この結果として、一方の二次コイル6Aが出力する誘起電圧(第1誘起電圧)の磁気コア7の位置に応じた変化特性は、他方の二次コイル6Bが出力する誘起電圧(第2誘起電圧)の磁気コア7の位置に応じた変化特性に対して逆特性となる。
【0039】
案内部材8は、図2に示すように、筐体1内において他方の底部1cの近傍部位に設けられている。この案内部材8は、同軸状に設けられた複数の円板状部材の集合体であり、一次コイル5のリード線及び一対の二次コイル6A、6Bのリード線を案内する。図示していないが、一次コイル5のリード線及び一対の二次コイル6A、6Bのリード線は、案内部材8を経由して筐体1内から筐体1外に引き出される。
【0040】
次に、本実施形態に係る線形可変差動変圧器Aの作用効果について、図4をも参照して詳しく説明する。
【0041】
この線形可変差動変圧器Aでは、一次コイル5が発生する励磁磁界が磁気コア7を介して一対の二次コイル6A、6Bに作用することによって、一方の二次コイル6Aに第1の誘起電圧を発生させ、また他方の二次コイル6Bに第2の誘起電圧を発生させる。上記励磁磁界は、一次コイル5、一対の二次コイル6A、6B及び磁気コア7を主に中心軸方向に通過する。
【0042】
一対の二次コイル6A、6Bは、主に可動方向(Z軸方向)に通過する励磁磁界に基づいて第1の誘起電圧及び第2の誘起電圧を発生させる。すなわち、一方の二次コイル6Aは、可動方向に通過する励磁磁界に基づいて第1の誘起電圧を発生させ、他方の二次コイル6Bは、可動方向に通過する励磁磁界に基づいて第2の誘起電圧を発生させる。
【0043】
線形可変差動変圧器Aは、可動方向に通過する励磁磁界が作用することによって、検出対象物の中心軸方向の位置を検出する変位センサである。磁気コア7はプローブ3に固定されており、また当該プローブ3は検出対象物に係合しているので、磁気コア7の可動方向(Z軸方向)の位置は、検出対象物の中心軸方向の位置に応じて変化する。すなわち、第1の誘起電圧及び第2の誘起電圧は、磁気コア7の可動方向の位置に応じて変化する。
【0044】
このような線形可変差動変圧器Aは、対象物の中心軸方向における位置に応じて変化する第1の誘起電圧と第2の誘起電圧との差分つまり差動電圧を対象物の可動方向における位置を示す検出信号として出力する。
【0045】
一方、電動機Bは、作動を開始すると、ステータb1の各スロットとロータb2の各磁極とを通過するループ状の磁束が発生する。この磁束は、回転軸b3内をZ軸方向通過する。すなわち、電動機Bが発生する磁界は、線形可変差動変圧器Aを中心軸方向に通過する磁束であり、線形可変差動変圧器Aに対して外乱磁界として作用する。
【0046】
このような電動機Bの外乱磁界に対して、線形可変差動変圧器Aの内部は、筐体1によって磁気的及び電気的に遮蔽されている。すなわち、筐体1は、上述したように磁性材料と導電性材料から形成された側部1a及び底部1b、1cを備えており、電動機Bの外乱磁界の筐体1の内部への影響を防止あるいは大幅に抑制する。
【0047】
電動機Bの外乱磁界のうち、周波数が比較的低い低周波磁界は、線形可変差動変圧器Aの内部が最外装の円筒状磁性部材1d及び円板状磁性部材1g、1iで覆われているため、プローブ3の可動方向に通過する励磁磁界に対して外乱として作用することがない。
【0048】
また、電動機Bの外乱磁界のうち、周波数が比較的高い高周波磁界は、線形可変差動変圧器Aの内部が円筒状導電性部材1e及び円板状導電性部材1h、1jで覆われているため、当該円筒状導電性部材1e及び円板状導電性部材1h、1jに渦電流を発生させる。この渦電流は、高周波磁界を打ち消す方向の磁界を発生させるため、プローブ3の可動方向(Z軸方向)に通過する励磁磁界に対して外乱として作用することがない。
【0049】
このような本実施形態によれば、シールド部材として機能する筐体1によって筐体1の内部が磁気的及び電気的に遮蔽されているので、プローブ3の可動方向への外乱磁界の混入を十分に抑制することが可能な線形可変差動変圧器Aを提供することが可能である。
【0050】
図4は、本実施形態に係る線形可変差動変圧器Aの位置検出精度の一例を示す特性図である。この図4に示すように、本実施形態に係る線形可変差動変圧器Aでは、電動機Bの外乱磁界が外乱として作用することを大幅に抑制するので、プローブ3の可動方向における検出対象物の位置を従来(シールド部材を備えない場合)よりも高精度に検出することが可能である。
【0051】
また、本実施形態では、筐体1をシールド部材として構成しているので、シールド部材を別途設ける場合に比較して、線形可変差動変圧器Aのサイズを小型したり、あるいは筐体1内に収容する一次コイル5、一対の二次コイル6A、6B及び磁気コア7等を大型化することが可能である。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、筐体1をシールド部材として構成したが、本発明はこれに限定されない。筐体1とは別に筐体1の内部を電磁気的に遮蔽するシールド部材を設けてもよい。
【0053】
(2)上記実施形態では、筐体1の内部を全方位的にシールド部材で覆ったが、本発明はこれに限定れない。外乱磁界が侵入して来る方向のみをシールド部材で覆ってもよい。例えば、図1に示す線形可変差動変圧器Aと電動機Bとの配置状態では、筐体1の側部1aから電動機Bの外乱磁界が筐体1の内部に侵入し易いので、筐体1における中心軸方向に直交する側つまり筐体1の側部1aのみにシールド部材を設けてもよい。
【0054】
(3)上記実施形態では、電動機B(回転電機)のロータb2内において回転軸b3と同軸状に線形可変差動変圧器Aを配置したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明の回転電機は、電動機Bに限定されず、例えば発電機であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
A 線形可変差動変圧器
B 電動機
b1 ステータ
b2 ロータ
b3 回転軸
b4 貫通孔
1 筐体(シールド部材)
2 ブラケット
3 プローブ
4 ボビン
5 一次コイル
6A、6B 二次コイル
7 磁気コア
8 案内部材
図1
図2
図3
図4