(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144523
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】炭酸飲料、炭酸飲料の製造方法、および炭酸飲料の塩味抑制方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20220926BHJP
A23L 2/54 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
A23L2/00 T
A23L2/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045575
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】林 龍之介
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LC14
4B117LE10
4B117LK01
4B117LK04
4B117LK08
4B117LK12
4B117LL02
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】炭酸飲料の塩味を抑制できる技術を提供する。
【解決手段】炭酸飲料は、ナトリウム濃度が30mg/100ml以上であり、炭酸ガス圧が3.5ガスボリューム以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウム濃度が30mg/100ml以上であり、炭酸ガス圧が3.5ガスボリューム以上である、炭酸飲料。
【請求項2】
糖度が6°以下である、請求項1に記載の炭酸飲料。
【請求項3】
クエン酸酸度が0.2g/100ml以下である、請求項1又は2に記載の炭酸飲料。
【請求項4】
塩化ナトリウムを含有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の炭酸飲料。
【請求項5】
容器詰めされた、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の炭酸飲料。
【請求項6】
ナトリウム濃度が30mg/100ml以上となるように調製する工程と、
炭酸ガス圧が3.5ガスボリューム以上となるように調製する工程と、
を含む、炭酸飲料の製造方法。
【請求項7】
ナトリウム濃度が30mg/100ml以上となるように調製する工程と、
炭酸ガス圧が3.5ガスボリューム以上となるように調製する工程と、
を含む、炭酸飲料の塩味抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸飲料、炭酸飲料の製造方法、および炭酸飲料の塩味抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料は、一般的に、喫飲した際に飲料中の炭酸ガスによる独特の炭酸感を味わうことができる嗜好性飲料として知られている。
【0003】
一方、暑熱環境下やスポーツ時において体内から失われた水分や塩分を補給するための、熱中症予防に適した清涼飲料水(スポーツドリンク等)が種々上市されている。このような清涼飲料水として、「『熱中症対策』表示ガイドライン」(一般社団法人全国清涼飲料連合会)には、ナトリウム濃度として、少なくとも、飲料100mlあたり40~80mg含有することが規定されている。
【0004】
しかしながら、上記のようなナトリウム濃度を有する飲料は、喫飲時に感じられる塩味が強過ぎる傾向にある。そのため、かかる飲料を飲みやすくするために、糖類などをさらに配合する等の手法がとられている。しかし、糖類を用いることで塩味をマスキングできる一方で、甘味が強くなり過ぎてしまう問題がある。そのため、十分なナトリウム濃度を有しながらも、塩味を抑えることが求められている。
【0005】
特許文献1には、飲料100mlあたりナトリウムを20~70mg含有する容器詰炭酸飲料が開示され、炭酸ガス圧については、20℃において好ましくは1.0~3.5kgf/cm2、より好ましくは1.2~3.3kgf/cm2、さらに好ましくは1.5~2.5kgf/cm2の炭酸ガス圧を有することが開示されている。
また、特許文献2には、クエン酸と、リン酸及び/又は乳酸とを含み、ナトリウム濃度が20mg/100ml以上120mg/100ml以下であり、ブリックス値が3.0以下である、飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-201647号公報
【特許文献2】特開2020-110052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示される炭酸飲料のガス圧は、ガスボリュームに換算すると約2~3ガスボリュームであり、ガス圧が比較的低いものに特定されていた。また、特許文献2には、ナトリウム濃度に着目しているものの、ナトリウムによる塩味と炭酸ガス圧との関係に着目するものではなかった。
本発明者は、ナトリウムによる塩味と炭酸ガス圧との関係に新たに着目し、ナトリウム濃度が30mg/100ml以上を前提としたとき、炭酸ガス圧を3.5ボリューム以上にすることによって、塩味を抑制でき、良好な風味の飲料が得られることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
ナトリウム濃度が30mg/100ml以上であり、炭酸ガス圧が3.5ガスボリューム以上である、炭酸飲料が提供される。
【0009】
本発明によれば、
ナトリウム濃度が30mg/100ml以上となるように調製する工程と、
炭酸ガス圧が3.5ガスボリューム以上となるように調製する工程と、
を含む、炭酸飲料の製造方法が提供される。
【0010】
本発明によれば、
ナトリウム濃度が30mg/100ml以上となるように調製する工程と、
炭酸ガス圧が3.5ガスボリューム以上となるように調製する工程と、
を含む、炭酸飲料の塩味抑制方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、十分な塩分補給をしつつ、塩味による飲料の風味低下を抑制できる炭酸飲料に関する技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
また本明細書中、「炭酸飲料」を単に「飲料」と称する場合もある。
【0013】
<炭酸飲料>
本実施形態の炭酸飲料は、ナトリウム濃度が30mg/100ml以上であり、炭酸ガス圧が3.5ガスボリューム以上である。これにより、十分な塩分補給をしつつ、塩味による飲料の風味低下を抑制できる。より詳細には、ナトリウムに由来する味のもたつき、すなわち塩味を伴う後引き感、後味のボディ感を抑止できることによって、塩味が強すぎることによる飲料の風味の低下を抑制できる。
かかるメカニズムの詳細は明らかではないが、炭酸ガスによる物理的な刺激により塩味を感じさせにくくするとともに、炭酸ガスの爽やかな香味が飲料のおいしさを保持すると推測される。
また、本件発明者は、糖度、酸度が比較的高い場合は塩味のマスキング効果が得られやすくなるものの、糖度、酸度を低くすると、かかるマスキング効果が低下する傾向があることを実証した。これに対し、本実施形態の炭酸飲料は、糖度、酸度が比較的低い場合であっても、炭酸ガス圧を3.5ガスボリューム以上とすることにより、十分な塩分補給を可能にしつつも、塩味による風味低下を効果的に抑制できる。
【0014】
[ナトリウム]
本実施形態の飲料は、ナトリウム濃度が30mg/100ml以上、好ましくは40mg/100ml以上である。これにより、効果的な塩味抑制効果を保持できるとともに、ミネラルを供給源できる飲料として有用になる。一方、本実施形態の飲料のナトリウム濃度の上限値は、ミネラルを供給できる飲料としては特に限定されないが、飲料としての飲みやすさを保持する観点から、好ましくは80mg/100ml以下、より好ましくは70mg/100ml以下としてもよい。
【0015】
ナトリウムの供給源としては、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム及び塩化ナトリウムなどが挙げられる。なかでも、効果的に塩味を抑制できる点から、塩化ナトリウムが好ましい。
【0016】
ナトリウム濃度は、ナトリウムが塩の形態にある場合は、塩が遊離しているとして換算した上で算出することができる。飲料中のナトリウムの含有量は、ICP発光分光分析装置や原子吸光法を用いて測定することができる。
【0017】
[炭酸ガス圧]
本実施形態の炭酸飲料は、炭酸ガス圧が3.5ガスボリューム以上であり、3.8ガスボリューム以上であることが好ましく、4.0ガスボリューム以上であることがより好ましく、4.2ガスボリューム以上であることがさらに好ましい。
一方、炭酸飲料の嗜好性を保持し、ガス抜けを抑制する観点から、炭酸ガス圧が6.5ガスボリューム以下であることが好ましく、5.5ガスボリューム以下であることがより好ましい。
【0018】
炭酸ガスの圧入方法は、公知の方法を用いることができる。また、炭酸飲料中のガスボリュームは公知の方法で測定できる。例えば、市販の測定器(京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA-700)等を用いて測定できる。より具体的には、試料(測定対象とする炭酸飲料)を20℃とした後、ガス内圧力計を取り付け、一度活栓を開いてガス抜き(スニフト)操作を行い、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、圧力が一定になった時の値から算出することで得ることができる。
なお、本実施形態のガスボリューム(炭酸ガス圧力)は、1気圧、20℃において、炭酸飲料全体の体積に対して、炭酸飲料に溶けている炭酸ガスの体積を表したものである。
【0019】
[糖度(Brix値)]
本実施形態の飲料(20℃)の糖度(Brix値)は、飲料の嗜好性に応じて適宜設定できるが、炭酸ガスによる塩味抑制効果をより顕著に得る点から、6°以下が好ましく、5°以下がより好ましい。すなわち、本実施形態の飲料は、糖度が6°以下であっても十分な塩分補給をしつつ、塩味による風味低下を効果的に抑制できる。
糖度(Brix値)は、たとえば、デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を用いて、20℃における糖用屈折計の示度を測定することができる。
糖度は、例えば、後述の甘味料、果汁、その他の各種成分の含有量により調整することができる。
【0020】
[酸度]
本実施形態の飲料の酸度の上限値は、炭酸ガスによる塩味抑制効果をより顕著に得る点、飲料の嗜好性を向上させる観点から、好ましくは0.2g/100ml以下、より好ましくは0.15g/100ml以下である。すなわち、本実施形態の飲料は、酸度が0.2g/100ml以下であっても十分な塩分補給をしつつ、塩味による風味低下を効果的に抑制できる。
一方、飲料の酸度の下限値は、特に限定されず、0.0g/100mlであってもよいが、適度な酸味による良好な風味を得る観点から、0.01g/100ml以上であることが好ましい。
酸度は、100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)で表すことができる。
【0021】
ここで、クエン酸酸度は、具体的には、フェノールフタレイン指示薬と水酸化ナトリウムとを用いて、以下の手順で滴定することにより求められるものである。
(1)スターラーを用いて、飲料中の炭酸ガスを常法により、除去する。
(2)200mL三角フラスコに対して5~15gの飲料を正確に秤量し、水を用いて50mL程度まで希釈する。
(3)希釈した前記飲料に対して1%フェノールフタレイン指示薬を数滴加えて撹拌する。
(4)三角フラスコ内の希釈飲料溶液をマグネティックスターラーで撹拌しながら、25mL容ビューレットに入れた0.1Mの水酸化ナトリウムを前記飲料溶液に滴下し、滴定試験を実施する。この滴定試験は、三角フラスコ内の飲料溶液の色が、30秒間赤色を持続した点を終点とする。
(5)クエン酸酸度(%)の値を、滴定試験の結果に基づき、次式によって算出する。
クエン酸酸度(%)=A×f×(100/W)×0.0064 式(1)
[(式1)において、Aは、0.1M 水酸化ナトリウム溶液の滴定量(mL)を、fは、0.1M 水酸化ナトリウム溶液の力価を、Wは、飲料試料の質量(g)を示す。また、式(1)において乗算している「0.0064」という値は、1mLの0.1M 水酸化ナトリウム溶液に相当する無水クエン酸の質量(g)を指す。]
なお、前記滴定試験においては、フェノールフタレイン指示薬に代えて、水素イオン濃度計を用いて実施してもよい。この場合、滴定試験の終点は、三角フラスコ内の飲料溶液のpHが8.1になった時とする。
【0022】
[甘味度]
本実施形態の飲料の甘味度は、飲料の嗜好性に応じて適宜設定できるが、炭酸ガスによる塩味抑制効果をより顕著に得る点から、2~20が好ましく、5~12がより好ましい。
なお、「甘味度」とは、ショ糖と比較した時の各甘味料の甘味の強さを示すパラメータであり、例えば「甘味料の総覧」(精糖工業会1990年5月発行)、「高甘味度甘味料スクラロースのすべて」(株式会社光琳2003年5月発行)、「飲料用語事典」(株式会社ビバリッジジャパン平成11年6月25日発行)等に記載されている値を採用することができる。
また、飲料の甘味度は、容器詰め飲料の容器に成分表示されている甘味成分の甘味度と、分析等により特定した甘味成分の含有量をもとに算出することができる。上記方法で算出できない場合は、訓練された味覚官能パネリストが甘味標準水溶液を用いた官能評価を行って、当該飲料と同等の甘味を持つショ糖溶液の濃度を特定し、その濃度を甘味度とすることもできる。
【0023】
[pH]
本実施形態の飲料の20℃におけるpHは、2.8~4.5であることが好ましく、3.1~4.2であることがより好ましく、3.3~4.0であることがさらに好ましい。これにより、おいしさを良好に保持できる。
なお、pHの測定は、市販のpH測定器を用いるなどして行うことができる。pHの調整は、例えば、特定酸の量を変えることや、pH調整剤を用いることなどにより行うことができる。
【0024】
[外観]
本実施形態の飲料は、透明な飲料であることが好ましい。本実施形態において、透明とは、飲料中に浮遊物、沈殿物といった不溶物が観察されないことを意味する。
【0025】
[各種成分]
本実施形態の炭酸飲料は、通常の飲料に用いられる甘味料、酸味料、香料(フレーバー)、果汁、酸化防止剤、ナトリウム以外のミネラル、苦味料、消泡剤、栄養強化剤、pH調整剤などを含んでもよい。
【0026】
甘味料は、甘みを付与し嗜好性を向上させるために用いられる。
甘味料としては、例えば、果糖、ショ糖、ブドウ糖、果糖ぶどう糖液糖、高果糖液糖、グラニュー糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類;キシリトール、およびD-ソルビトール等の低甘味度甘味料;オリゴ糖、はちみつ、水飴(麦芽糖)、糖アルコール、ならびに高甘味度甘味料等が挙げられる。
高甘味度甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、キシリトール、グリチルリチン酸二ナトリウム、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、スクラロース、ネオテーム、アラビノース、カンゾウ抽出物、キシロース、ステビア、タウマチン、ラカンカ抽出物、ラムノース及びリボースが挙げられる。
これら甘味料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
【0027】
酸味料は、酸味を付与し嗜好性を向上させるために用いられる。
酸味料としては、例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、コハク酸、氷酢酸、フマル酸、フィチン酸、リン酸及びそれらの塩等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0028】
[飲料の種類]
本実施形態の飲料は、たとえば、サイダー飲料等の非着色飲料、ラムネ飲料、果汁入り炭酸飲料、着色炭酸飲料(たとえば、コーラ飲料やメロンソーダ等)、ノンアルコールビール飲料等の各種炭酸ガスを含む飲料、または、ビール、発泡酒、チューハイ、カクテル等のアルコール含有炭酸飲料であってもよい。
なお、熱中症対策を目的とする点からは、本実施形態の飲料は、非アルコール飲料であることが好ましい。非アルコール飲料とは、アルコールを実質的に含有しない飲料をいい、具体的にはエタノールなどのアルコールの含有量が1.0体積/体積%未満である飲料を意味する。
【0029】
[容器]
本実施形態の飲料に用いられる容器は、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。飲料を外観から視認できる観点からは、ペットボトルが好ましい。
飲料の容量としては、特に限定されないが、100~2000gが好ましく、飲み切りやすい点からは、100~700gがより好ましい。
【0030】
容器詰めされた飲料の加熱滅菌処理の方法は、特に限定されないが、日本国内においては食品衛生法の規定に従って、加熱滅菌処理される。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法が挙げられる。
【0031】
<炭酸飲料の製造方法>
本実施形態の炭酸飲料の製造方法は、ナトリウム濃度が30mg/100ml以上となるように調製する工程と、炭酸ガス圧が3.5ガスボリューム以上となるように調製する工程と、を含む。これにより、十分な塩分補給をしつつ、塩味による飲料の風味低下を抑制できる炭酸飲料が得られる。炭酸飲料としては、上記で説明したのと同様の成分、物性を有するものが挙げられる。
【0032】
<炭酸飲料の塩味抑制方法>
本実施形態の炭酸飲料の炭酸飲料の塩味抑制方法は、ナトリウム濃度が30mg/100ml以上となるように調製する工程と、炭酸ガス圧が3.5ガスボリューム以上となるように調製する工程と、を含む。これにより、十分な塩分補給をしつつ、塩味による飲料の風味低下を抑制できる炭酸飲料が得られる。炭酸飲料としては、上記で説明したのと同様の成分、物性を有するものが挙げられる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0034】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」は「質量%」を表す。
【0035】
(1)炭酸ガス圧の測定
京都電子工業株式会社製「GVA-700」を用いた。操作は20℃の室温で行った。
【0036】
(2)実験1:ナトリウム濃度の変動
糖度、酸度を固定し、表1に示す原料を混合して、ナトリウム濃度が異なる各飲料を得た。各飲料の物性を表1に示す。
次に、得られた飲料について訓練された6名のパネリストにより、以下の官能試験-1を実施した。
【0037】
[官能評価-1]
各パネリストが飲料(20℃)を試飲し、試飲した際に感じられる「塩味」、「もたつき」について、以下の評価基準に従い、対照を1点とした6段階評価を行い、その平均値を算出した。対照は、食塩を含まない飲料(試験例1)とした。また、塩味が気になる(飲料としてのおいしさが損なわれる)か否かについても評価した。結果を表1に示す。
なお、「もたつき」とは塩味を伴う後味の後引き、ボディ感とした。
・評価基準
評点6:かなりある感じた
評点5:あると感じた
評点4:ややあると感じた
評点3:ほぼないと感じた
評点2:ないと感じた
評点1:全くないと感じた
【0038】
【0039】
実験1より、飲料のナトリウム濃度が27.5mg/100mlの試験例4、ナトリウム濃度が39.3mg/100mlの試験例5では、塩味およびもたつきが感じられ、ナトリウム濃度が高くなると塩味およびもたつきが生じる傾向が把握された。
【0040】
(3)実験2:炭酸ガス圧の変動
表2に示す原料を混合してベース液を調製した。次に得られたベース液と、炭酸水(炭酸ガスを含有する純水)とを用いて、表2に示す炭酸ガス圧になるように調製して500mlの各炭酸飲料を得た。得られた炭酸飲料を、直ちにペットボトルに容器詰めした。各炭酸飲料の物性を表2に示す。
次に、得られた飲料を用いて、以下の官能評価-2を行った。対照は、炭酸ガスなしの飲料(試験例6)とした。結果を表2に示す。
【0041】
[官能評価-2]
飲料について訓練された7名のパネリストによる官能試験を実施した。具体的には、各パネリストが飲料(20℃)を試飲し、試飲した際に感じられる「塩味」、「もたつき」の強さ(有無)について、「最も強い(対照と同等)」から「全くないと感じた」までを7点から1点までの7段階で評価し、その平均値を算出した。なお、「もたつき」とは塩味を伴う後味の後引き、ボディ感とした。
【0042】
【0043】
実験2より、炭酸ガス圧が3.64ガスボリュームの試験例10,炭酸ガス圧が4.37ガスボリュームの試験例11では、炭酸ガス圧が低い試験例6~9よりも、塩味、もたつき感が抑制されていた。
【0044】
(4)実験3:糖度の変動
酸度、甘味度を固定し、表3に示す原料を混合して、果糖ぶどう糖液糖とアセスルファムカリウムの配合比率が異なる各飲料を得た。各飲料の物性を表3に示す。
次に、得られた飲料を用いて、上記の官能評価-2を行った。対照は、最も糖度が低い飲料(試験例12)とした。結果を表3に示す。
【0045】
【0046】
実験3より、糖度が高くなると塩味、もたつき感が感じにくくなる傾向が把握された。
また、炭酸ガスを含んだ飲料においても同様の傾向が見られた。
【0047】
(5)実験4:酸度の変動
糖度を固定し、表4に示す原料を混合して、酸度が異なる各飲料を得た。各飲料の物性を表4に示す。
次に、得られた飲料を用いて、上記の官能評価-2を行った。対照は、最も酸度が低い飲料(試験例16)とした。結果を表4に示す。
【0048】
【0049】
実験4より、酸度が高くなると塩味、もたつき感が感じにくくなる傾向が把握された。
また、炭酸ガスを含んだ飲料においても同様の傾向が見られた。
【0050】
(6)実験5:糖度、酸度の影響
実験3で得られた飲料について、糖度が低いもの(試験例12~15)から順に試飲し、塩味が気になる(飲料としてのおいしさが損なわれる)か否かについて、訓練された6名のパネリストによる官能試験を実施した。
その結果、試験例13から塩味が気にならないと答えた人数は1名、試験例14から塩味が気にならないと答えた人数は4名、試験例15から塩味が気にならないと答えた人数は1名であった。
同様に、実験4で得られた飲料について、酸度が低いもの(試験例16~19)から順に試飲し、塩味が気になる(飲料としてのおいしさが損なわれる)か否かについて、訓練された6名のパネリストによる官能試験を実施した。
その結果、試験例17から塩味が気にならないと答えた人数は1名、試験例18から塩味が気にならないと答えた人数は5名であった。