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特開2022-144549無人搬送車の制御システム及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144549
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】無人搬送車の制御システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220926BHJP
【FI】
G05D1/02 W
G05D1/02 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045603
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宍道 洋
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG12
5H301HH15
5H301LL06
(57)【要約】
【課題】付加的なセンサ等を用いることなく、牽引される牽引台車の姿勢を推定可能とする無人搬送車の制御システム及び制御方法を提供する。
【解決手段】牽引台車を牽引する無人搬送車の制御システム1であって、前記無人搬送車の位置と姿勢を推定する自己位置姿勢推定部9と、前記無人搬送車に対する前記牽引台車の角度である姿勢角度を、予め定められた左右の最大姿勢角度を初期値とし、前記牽引台車の2つの姿勢角度を推定する牽引台車姿勢推定部11と、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引台車を牽引する無人搬送車の制御システムであって、
前記無人搬送車の位置と姿勢を推定する自己位置姿勢推定部と、
前記無人搬送車に対する前記牽引台車の角度である姿勢角度を、予め定められた左右の最大姿勢角度を初期値とし、推定された前記無人搬送車の位置と姿勢に基づいて、前記牽引台車の2つの姿勢角度を推定する牽引台車姿勢推定部と、を備える無人搬送車の制御システム。
【請求項2】
前記2つの姿勢角度を含む、前記自己位置姿勢推定部と、前記牽引台車姿勢推定部と、の推定結果に基づいて走行経路を計画する経路計画部と、を備える請求項1に記載の無人搬送車の制御システム。
【請求項3】
前記牽引台車姿勢推定部は、前記無人搬送車と前記牽引台車とのサイズや形状、及びこれらの接続に関する情報を含む車両情報に基づいて前記2つの姿勢角度を推定する、請求項1または2に記載の無人搬送車の制御システム。
【請求項4】
牽引台車を牽引する無人搬送車の制御方法であって、
前記無人搬送車の位置と姿勢を推定すること、
前記無人搬送車に対する前記牽引台車の角度である姿勢角度を、予め定められた左右の最大姿勢角度を初期値とし、推定された前記無人搬送車の位置と姿勢に基づいて、前記牽引台車の2つの姿勢角度を推定すること、を含む無人搬送車の制御方法。
【請求項5】
前記2つの姿勢角度と、前記無人搬送車の位置と姿勢と、を含む推定結果に基づいて走行経路を計画すること、を含む請求項4に記載の無人搬送車の制御方法。
【請求項6】
前記2つの姿勢角度を推定することは、前記無人搬送車と前記牽引台車とのサイズや形状、及びこれらの接続に関する情報を含む車両情報に基づいて行われる、請求項4または5に記載の無人搬送車の制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車の制御システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、周りの環境を探索しながら目標や障害物等を検知して移動経路を決定し、これに従って移動し物品を搬送する無人搬送車が知られている。無人搬送車には、牽引台車が接続されて物品の搬送を行う場合がある。この場合、牽引台車の内輪差の影響により障害物回避が困難になる場合が生じる。その際、無人搬送車と牽引台車の軌道計算と障害物との干渉を求め、経路計画を実施する必要がある。しかし無人搬送車の動きに対する牽引台車の軌道計算を行うためには無人搬送車に対する牽引台車の姿勢を知る必要がある。牽引台車の姿勢を検出するためには、無人搬送車後部に距離センサを設置してセンシングした結果から角度を求める方法や、牽引台車の接続点にポテンショメータを設置して出力値から角度を算出する方法など、何らかのセンサを設置する必要がある。
【0003】
特許文献1には、牽引台車とこれを牽引するロボットとの連結部を固定し、全体の重心位置を基準として動作する自立移動ロボットが開示されている。特許文献2には、自動搬送車の後方に測域センサを設置して、牽引台車の位置と向きを検出して搬送する自動搬送車が開示されている。特許文献3には、自己位置推定等で使用するメインのセンサで大きく旋回する際に牽引台車をセンシングし、牽引台車の有無を検出し、それに応じて障害物への接触を防止するように走行する自律走行ロボットシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-117431号公報
【特許文献2】特開2014-186680号公報
【特許文献3】国際公開第WO2019/053798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の自立移動ロボットでは、搬送システム全体の重心位置に基づいて制御が行われるが、連結部が固定されているため搬送に柔軟性がない恐れがある。特許文献2に記載の自動搬送車では、通常走行に使用するセンサに加えて牽引台車を検知するために付加的なセンサが必要となり、実施するためのコストが増大する恐れがある。特許文献3に記載の自律走行ロボットシステムでは、既存のセンサではセンシングできない小さな旋回時や、センサの取り付け位置や高さによっては牽引台車を検出できず、牽引台車の状態を知って障害物回避をすることができない恐れがある。
【0006】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、付加的なセンサ等を用いることなく、牽引される牽引台車の姿勢を推定可能とする無人搬送車の制御システム及び制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の牽引台車を牽引する無人搬送車の制御システムは、前記無人搬送車の位置と姿勢を推定する自己位置姿勢推定部と、前記無人搬送車に対する前記牽引台車の角度である姿勢角度を、予め定められた左右の最大姿勢角度を初期値とし、推定された前記無人搬送車の位置と姿勢に基づいて、前記牽引台車の2つの姿勢角度を推定する牽引台車姿勢推定部と、を備える。
本発明によれば、予め定められた左右の最大姿勢角度を初期値とし、牽引台車の2つの姿勢角度を推定するので、付加的なセンサを用いることなく牽引台車の姿勢を推定することができる。
【0008】
本発明の一態様においては、前記2つの姿勢角度を含む、前記自己位置姿勢推定部と、前記牽引台車姿勢推定部と、の推定結果に基づいて走行経路を計画する経路計画部と、を備える。
この一態様によれば、2つの姿勢角度を含む推定結果に基づいて走行経路を計画するので、障害物を確実に避けることができる走行経路を選択することができる。
【0009】
本発明の一態様においては、前記牽引台車姿勢推定部は、前記無人搬送車と前記牽引台車とのサイズや形状、及びこれらの接続に関する情報を含む車両情報に基づいて前記2つの姿勢角度を推定する。
この一態様によれば、無人搬送車と牽引台車の車両情報に基づいて2つの姿勢角度を推定するので、確度の高い姿勢確度の推定を行うことができる。
【0010】
本発明の牽引台車を牽引する無人搬送車の制御方法は、前記無人搬送車の位置と姿勢を推定すること、前記無人搬送車に対する前記牽引台車の角度である姿勢角度を、予め定められた左右の最大姿勢角度を初期値とし、推定された前記無人搬送車の位置と姿勢に基づいて、前記牽引台車の2つの姿勢角度を推定すること、を含む。
本発明によれば、予め定められた左右の最大姿勢角度を初期値とし、牽引台車の2つの姿勢角度を推定するので、付加的なセンサを用いることなく牽引台車の姿勢を推定することができる。
【0011】
本発明の一態様においては、前記2つの姿勢角度と、前記無人搬送車の位置と姿勢と、を含む推定結果に基づいて走行経路を計画すること、を含む。
この一態様によれば、2つの姿勢角度を含む推定結果に基づいて走行経路を計画するので、障害物を確実に避けることができる走行経路を選択することができる。
【0012】
本発明の一態様においては、前記2つの姿勢角度を推定することは、前記無人搬送車と前記牽引台車とのサイズや形状、及びこれらの接続に関する情報を含む車両情報に基づいて行われる。
この一態様によれば、無人搬送車と牽引台車の車両情報に基づいて2つの姿勢角度を推定するので、確度の高い姿勢確度の推定を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、付加的なセンサ等を用いることなく、牽引される牽引台車の姿勢を推定可能とする無人搬送車の制御システム及び制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る無人搬送車の制御システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る無人搬送車と牽引台車の位置関係を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る無人搬送車と牽引台車の位置関係を示す平面図である。
図4】本発明の実施形態に係る無人搬送車と牽引台車の姿勢角度の変化を示すグラフである。
図5】本発明の実施形態に係る無人搬送車と牽引台車の姿勢角度幅の変化を示すグラフである。
図6】本発明の実施形態に係る経路計画におけるグリッド状のコストマップを示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る経路計画におけるコストマップ上の障害物の評価(重み)を示すグラフである。
図8】本発明の実施形態に係る経路計画における局所領域内のコストマップの設定を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る経路計画におけるコストマップ上の経路候補の生成を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る経路計画における経路候補の累積コストの計算を説明する図である。
図11】本発明の実施形態に係る経路計画における牽引台車の位置姿勢範囲による累積コストの計算を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本発明において、無人搬送車、牽引台車の“位置”というときは、これらの車両が移動する地図上のx、yの座標位置のことをいう。無人搬送車、牽引台車の“姿勢”というときは、これらの車両の進行方向の地図上の角度のことをいう。
【0016】
図1に、本発明の実施形態に係る無人搬送車の制御システムの構成を示すブロック図を示す。図2は、本発明の実施形態に係る無人搬送車3と牽引台車5の位置関係を示す平面図である。本実施形態に係る無人搬送車の制御システム1は、外界センサ7、自己位置姿勢推定部9、牽引台車姿勢推定部11、障害物検出部13、経路計画部15、および走行制御部17を備えている。本実施形態に係る無人搬送車の制御システム1は、データ参照のためにさらに地図情報19、車両情報21を備えている。
【0017】
制御システム1の自己位置姿勢推定部9、牽引台車姿勢推定部11、障害物検出部13、経路計画部15、および走行制御部17の各機能ブロックは、ハードウェアにより構成しても良いし、各機能についてそれぞれソフトウェアにより実現しても良い。これらの機能ブロックは、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置上に実装される。それぞれの機能ブロックは、上記情報処理装置内のCPUやGPUによって実行されるソフトウェア、プログラムであってよい。または、これらの機能ブロックは、クラウドサービス上で提供されるソフトウェア、プログラムであってよい。地図情報19、車両情報21は、半導体メモリ等によって構成されるデータベースであり、制御システム1の各機能ブロックからの要請にしたがって情報を送信する。
【0018】
上記各構成要素において、外界センサ7は、LRF(Laser Range Finder)やLiDAR(Light Detection and Ranging)、単眼またはステレオのカメラなど、周辺の構造物・障害物までの距離・角度などを計測するセンサである。障害物検出部13は、上記外界センサ7で取得した測距データから、周辺の構造物・障害物を検出する。自己位置姿勢推定部9は、あらかじめ作成した地図情報と、上記外界センサ7で取得した測距データ、および走行制御部17からの無人搬送車3のオドメトリを用いて地図上での無人搬送車3の位置および姿勢を推定する。
【0019】
牽引台車姿勢推定部11は、自己位置姿勢推定部9による無人搬送車3の位置姿勢推定結果、走行制御部17からの無人搬送車3のオドメトリ、車両情報21、および過去の牽引台車姿勢推定結果を基に、現在の牽引台車5の姿勢を推定する。経路計画部15は、地図情報19、障害物検出部13による障害物検出結果、無人搬送車3の位置・姿勢推定結果、車両情報21、および牽引台車5の姿勢推定結果を用いて、走行経路を計画する。
【0020】
走行制御部17は、経路計画部15で計画した走行経路に従い、無人搬送車3に速度、角速度などを送って走行指示を行う。また無人搬送車3のオドメトリを受け取り、自己位置姿勢推定部9および牽引台車姿勢推定部11へその情報を送る。地図情報19は、走行予定範囲内を含む領域内の地図であり、自己位置姿勢推定部9および経路計画部15で使用する。車両情報21は、無人搬送車3や牽引台車5のサイズや形状、接続に関する情報を含む。
【0021】
<牽引台車の姿勢推定>
次に、上記構成において牽引台車の姿勢推定について説明する。図2に示すとおり、牽引台車5が無人搬送車3に対して取りうる姿勢角度ζは、牽引台車5が無人搬送車3に接触しない範囲に限られるため、姿勢角度ζは無人搬送車3および牽引台車5の形状等に合わせて範囲が限定される。図2では、右側最大姿勢角度の位置にある牽引台車Rと左側最大姿勢角度の位置にある牽引台車Lとが2点鎖線で示されている。これらの2つの姿勢角度の範囲が姿勢角度として想定されうる姿勢角度範囲tとなる。本実施形態では、姿勢角度ζを推定する初期値としてこの左右の最大姿勢角度を用いる。
【0022】
図3は、本実施形態に係る無人搬送車3と牽引台車5の位置関係の各パラメータをさらに詳細に示す平面図であって、図3において時刻tにおける無人搬送車3と牽引台車5の状態および無人搬送車3への入力を以下のように示す。
【0023】
【数1】
【0024】
ここでx、yは、無人搬送車3の基準点Mの地図上の位置、θは、無人搬送車3の地図上の向きの角度、ψは、牽引台車の地図上の向きの角度を表す。図3には、時間成分tを含まない記号として各パラメータが示されており、牽引台車の基準点は、N(x,y)で表されている。vとωは、無人搬送車3の速度と角速度を表す。図3における無人搬送車3は、旋回中心P、旋回半径rで移動しているところが示されている。このとき時刻tにおける旋回半径rは、r=v/ωで表される。ただし左旋回を+、右旋回を-とする。無人搬送車3と牽引台車5の連結点Qにおける旋回半径をrc,tとしたとき、連結点Qにおける速度vc,tと各速度ωc,tは、以下の式で表される。
【0025】
【数2】
【0026】
したがって、旋回中心Pからみた無人搬送車3の対する連結点Qの時刻tにおける角度φは、以下のように表される。
【0027】
【数3】
【0028】
上記式で、dは、無人搬送車の基準点Mと連結点Qの距離を表す。よって無人搬送車3の位置姿勢の変化量は、以下のようになる。
【0029】
【数4】
【0030】
牽引台車5の角度ψの変化量は、以下の式となる。
【0031】
【数5】
【0032】
上式でlは、牽引台車5の基準点Nと連結点Qの距離を表す。したがって、最終的には無人搬送車3と牽引台車5の状態変化のモデル式は、以下のようになる。
【0033】
【数6】
【0034】
これを基に、無人搬送車3に対する牽引台車5の姿勢角度ζは、ζ=ψ-θと表されるので、姿勢角度ζの状態変化の式は、以下のようになり、Δt秒後の姿勢角度ζt+1を求めることができる。
【0035】
【数7】
【0036】
牽引台車5の姿勢角度推定を行う場合、初期値は姿勢角度範囲の最大・最小角度の2つを用いて2通りの推定を行う。その2つの状態の間に牽引台車があると想定される。図4は、左右の最大角度を90度として初期値に設定し、lが2mの場合の姿勢角度ζを計算した結果を示すグラフである。図4は、横軸に走行距離、縦軸に姿勢角度を表している。図4からわかるとおり、走行距離が増加するに伴って最大姿勢角度90度と最小姿勢角度-90度を初期値としたそれぞれの姿勢角度は、0度に向かって収束していく。この場合は、無人搬送車3が直進した場合を計算しているが(ω=0)、時間ごとに角速度ωが入力された場合も、走行距離の増加に伴って最大値と最小値を初期値とする推定姿勢角度の差は減少していく。図5は、最大値と最小値の差である推定範囲幅を走行距離に対して対数軸で表したグラフである。図5に示す通り、最大値と最小値の差は、走行距離の増加にともなって減少していく。図5から、初期値で180度の幅だったものが6.5mで約10度、11mでは約1度まで減少して収束していくことがわかる。
【0037】
<牽引台車5の2つの姿勢角度を使用した経路計画>
上述の推定によって、無人搬送車3の位置姿勢と、牽引台車5の2種類の位置姿勢範囲(最大・最小角度の範囲の位置姿勢)の2通りの位置姿勢データを得ることができる。経路計画部15では、これら2種類のデータに基づいて走行経路の計画をおこなう。すなわち経路計画アルゴリズムにこれら2種類のデータを入力し、外界センサ7で計測した障害物の位置との接触が2種類のデータのすべてで生じない経路の選択を行う。
【0038】
以下に局所経路計画アルゴリズムにDynamic Window Approach (DWA)を用いる場合の例を示す。事前に見つかっている地図上の障害物を回避する経路を探索する大域的経路計画に対し、局所経路計画は無人搬送車3が事後に見つけた障害物を回避するよう動的に経路を探索するものである。DWAの場合、Dynamic Windowつまり無人搬送車が現時点で取りうる制御範囲、例えば速度と旋回速度の組み合わせの範囲の中でランダムにいくつかの経路候補を生成し、その中から事前に定めた評価関数が最大になる経路を選択する。評価関数には大域経路との距離や移動距離、障害物との距離やそれらの組み合わせを用いることができるが、ここでは障害物との距離を基にしたコストマップを用いて経路候補の積算コストを用いる場合を示す。
【0039】
コストマップは障害物Sからの距離に応じてコストを定めた2次元空間上のグリッド状のマップである(図6)。図6のコストマップでは、障害物Sの領域を斜線で表している。矢印Aに沿って障害物Sのコスト(重み)が図7のグラフで示すように評価される。まず障害物Sが見つかると、局所領域内においてコストマップを設定し(図8)、次にDynamic Window内でランダムに経路候補を生成し(図9)、さらに経路候補ごとに経路移動時に無人搬送車3および牽引台車5が逐次占有する領域の累積コストを計算し(図10)、最後にコストが最小となる経路を選択する手順をとる。この占有領域を求める際に前述の無人搬送車3については姿勢位置を用いるが、牽引台車5については位置姿勢範囲を用いる(図11)。
経路計画アルゴリズムには、DWAの他に、Trajectory Rolloutアルゴリズム、およびRapidly exploring Random Tree star (RRT*)アルゴリズムなどを使用することもできる。
【0040】
以上述べたように、本実施形態によれば、無人搬送車3と牽引台車5の車両情報に基づいて、予め定められた左右の最大姿勢角度を初期値とし、牽引台車5の2つの姿勢角度ζを推定する。したがって、付加的なセンサを用いることなく確度の高い牽引台車の姿勢角度を推定することができる。最大・最小の姿勢角度を初期値として推定した姿勢角度範囲を含む推定結果に基づいて走行経路を計画するので、障害物を確実に避けることができる走行経路を選択することができる。
【0041】
上述の実施形態では、牽引台車5の2種類の位置姿勢データを利用して走行経路を計画したが、推定範囲幅が予め定められた幅以下になった場合には、1種類のデータで牽引台車7の姿勢推定を行ってよい。例えば、推定範囲幅が1度より小さくなった場合は、次の位置姿勢の推定は、最大・最小を初期値とする位置姿勢のどちらかのみの推定で無人搬送車3の制御を継続してよい。上記に加え、例えば、5度から1度の間に推定範囲幅があるばあいは、走行経路の計画には、最大・最小を初期値とする推定姿勢角度の平均値を利用して走行経路を計画してよい。
【符号の説明】
【0042】
1 無人搬送車の制御システム
3 無人搬送車
5 牽引台車
9 自己位置姿勢推定部
11 牽引台車姿勢推定部
15 経路計画部
21 車両情報
ζ 姿勢角度

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11