(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144569
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】電池制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20220926BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220926BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220926BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02J7/00 P
H02J7/00 B
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M10/42 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045632
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 勉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 治雄
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA08
5G503CB11
5G503EA08
5G503FA06
5H030AA01
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】 (修正有)
【課題】組電池中のSOH(State of Health)が小さい電池の劣化の進行を抑制できる電池制御システムを提供する。
【解決手段】電池制御システム1は、車両に搭載され、直列に配置された複数の電池3a~3nを含む組電池2と、複数の電池3a~3nの充電及び放電を制御する充放電制御部36と、複数の電池3a~3nの各々のSOHを求めるSOH算出部34とを備える。充放電制御部36は、複数の電池3a~3nのうちのSOHが最も小さい電池を特定して、複数の電池3a~3nの充電及び放電を制限する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、直列に配置された複数の電池を含む組電池と、
前記複数の電池の充電及び放電を制御する充放電制御部と、
前記複数の電池の各々のSOH(State Of Health)を求めるSOH算出部と、
を備え、
前記充放電制御部は、前記複数の電池のうちの前記SOHが最も小さい電池を特定して、前記複数の電池の充電及び放電を制限する、
電池制御システム。
【請求項2】
前記充放電制御部は、前記複数の電池のうちの前記SOHが最も小さい電池の劣化を抑制するように、前記複数の電池の充電及び放電を制限する、
請求項1に記載の電池制御システム。
【請求項3】
前記充放電制御部は、前記車両のアイドリング時の発電によって前記複数の電池を充電する際に、前記複数の電池のうちの前記SOHが最も小さい電池に基づいて、前記複数の電池の充電を制限する、
請求項1又は2に記載の電池制御システム。
【請求項4】
前記SOH算出部は、システム起動時に、前記複数の電池を所定値の電流で充電している状態で各電池の前記SOHを求める、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電池制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された電池の充放電を制御する電池制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、複数の電池が配置された組電池を含む電池制御システムが搭載されている。組電池の充電及び放電を制御する観点等から、組電池のSOH(State Of Health)が求められている。電池の劣化を抑制するために、求めた組電池のSOHに基づいて、充電及び放電が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、組電池のSOHは、各電池のSOHを平均したものであるため、各電池のSOHのバラツキが考慮されていない。このため、組電池のSOHに基づいて充電及び放電の制限を行うと、SOHが小さい電池の劣化を抑制できないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、組電池中のSOHが小さい電池の劣化の進行を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様においては、車両に搭載され、直列に配置された複数の電池を含む組電池と、前記複数の電池の充電及び放電を制御する充放電制御部と、前記複数の電池の各々のSOH(State Of Health)を求めるSOH算出部と、を備え、前記充放電制御部は、前記複数の電池のうちの前記SOHが最も小さい電池を特定して、前記複数の電池の充電及び放電を制限する、電池制御システムを提供する。
【0007】
また、前記充放電制御部は、前記複数の電池のうちの前記SOHが最も小さい電池の劣化を抑制するように、前記複数の電池の充電及び放電を制限することとしてもよい。
【0008】
また、前記充放電制御部は、前記車両のアイドリング時の発電によって前記複数の電池を充電する際に、前記複数の電池のうちの前記SOHが最も小さい電池に基づいて、前記複数の電池の充電を制限することとしてもよい。
【0009】
また、前記SOH算出部は、システム起動時に、前記複数の電池を所定値の電流で充電している状態で各電池の前記SOHを求めることとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、組電池中のSOHが小さい電池の劣化の進行を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一の実施形態に係る電池制御システム1の構成を説明するための模式図である。
【
図2】複数の電池のSOHのバラツキを説明するための模式図である。
【
図3】電池制御装置10の動作例の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<電池制御システムの構成>
一の実施形態に係る電池制御システムの構成について、
図1を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、一の実施形態に係る電池制御システム1の構成を説明するための模式図である。電池制御システム1は、例えば、動力源としてエンジン及びモータを有するハイブリッド車に搭載されている。電池制御システム1は、
図1に示すように、組電池2と、センサ群5と、電池制御装置10とを有する。
【0014】
組電池2は、複数の単電池である電池3a~3nを含むバッテリーパックであり、車両に搭載されている。電池3a~3nは、同じ電池であり、直列に配置されている。電池3a~3nは、モータが発電した電力の供給を受けて充電される。また、電池3a~3nは、車両の各部に電力を供給するために放電を行う。
【0015】
センサ群5は、車両の状態を検出する。センサ群5は、例えば、電池3a~3nの温度を検出する温度センサや、車両の走行距離を検出するセンサを含む。センサ群5は、検出した結果を電池制御装置10に出力する。
【0016】
電池制御装置10は、組電池2の電池3a~3nの充電及び放電を制御する。例えば、電池制御装置10は、電池3a~3nの劣化が進行しないように、充電及び放電を制御する。電池制御装置10は、詳細は後述するが、電流値を一定にして組電池2の各電池のSOH(State Of Health)を求め、求めた各電池のSOHに基づいて電池3a~3nの充電及び放電を制御する。これにより、直列に配列された電池3a~3nの一部の電池のSOHが低い場合に、SOHが低い電池に合わせて充電及び放電を制御することにより、組電池2の全体の劣化を抑制できる。
【0017】
電池制御装置10は、
図1に示すように、記憶部20と、制御部30とを有する。
記憶部20は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。記憶部20は、制御部30が実行するためのプログラムや各種データを記憶する。
【0018】
制御部30は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部30は、記憶部20に記憶されたプログラムを実行することにより、参照情報取得部32、SOH算出部34、充放電制御部36及び交換判定部38として機能する。
【0019】
参照情報取得部32は、電池3a~3nのSOHを算出する際の参照情報を取得する。例えば、参照情報取得部32は、センサ群5の検出結果から、参照情報を取得する。例えば、参照情報取得部32は、参照情報として、車両の走行距離や電池3a~3nの温度を取得する。
【0020】
SOH算出部34は、組電池2の電池3a~3nのSOHを算出する。本実施形態では、SOH算出部34は、組電池2のSOHではなく、電池3a~3nの各々のSOHを求める。SOH算出部34は、例えば、各電池の電流値と電圧値から、各電池の劣化度合いとしてのSOHを求める。
【0021】
SOH算出部34は、システム起動時に、複数の電池3a~3nを所定値の電流で充電している状態で各電池のSOHを求める。電池3a~3nを所定値の電流で充電している場合には、電池3a~3nを流れる実電流の変化が小さく安定しているため、各電池のSOHを精度良く求めることができる。より詳しく説明すると、電池3a~3nを流れる実電流が大きく変化する場合には、各電池の温度上昇率にバラツキが生じやすくなるため、温度の影響を受けるSOHを精度良く求められない。これに対して、本実施形態のように実電流の変化が小さい場合には、温度上昇率のバラツキを排除できるため、各電池のSOHを精度良く求められる。
【0022】
SOH算出部34は、システム起動時に発電を行い、電池3a~3nを充電している状態で、各電池のSOHを求めてもよい。例えば、SOH算出部34は、車両のアイドリング時に、モータが発電した電力で電池3a~3nを充電している際に、各電池のSOHを求める。
【0023】
SOH算出部34は、参照情報取得部32が取得した参照情報を参照して、電池の劣化が進行しているタイミングで、各電池のSOHを求めてもよい。SOH算出部34は、参照情報からSOHの算出条件を満たすと判定した場合に、各電池のSOHを求める。例えば、SOH算出部34は、車両の走行距離が所定距離(一例として10000km)に達した後のシステム起動時に、各電池SOHを求める。これにより、システム起動の度に各電池のSOHを求める必要がなくなり、電池が劣化している蓋然性がある場合にSOHを求めることになる。
【0024】
なお、上記では、SOH算出部34は、電池3a~3nに流れる電流値を一定にして、各電池のSOHを求めることとしたが、これに限定されず、他の方法で各電池のSOHを求めてもよい。
【0025】
充放電制御部36は、複数の電池3a~3nの充電及び放電を制御する。例えば、充放電制御部36は、SOH算出部34が求めた各電池のSOHに基づいて、電池3a~3nの充電及び放電を制御する。これにより、高精度に求めた各電池のSOHに基づいて、電池3a~3nの充電及び放電を精度良く制御可能となる。
【0026】
充放電制御部36は、直列に配置された複数の電池3a~3dの劣化が進行しないように、充電及び放電を制限する。複数の電池3a~3nが直列に配置されている場合には、一つの電池でも劣化が進行すると、他の電池も劣化することになってしまい、組電池2を使用できなくなるためである。
【0027】
ところで、複数の電池3a~3nのSOHは、同じではなく、バラツキが発生する。これは、電池3a~3nが直列に配置された組電池2における電池の位置に応じて、SOHに影響を与える温度が変化するためである。
【0028】
図2は、複数の電池3a~3dのSOHのバラツキを説明するための模式図である。
図2では、説明の便宜上、複数の電池3a~3nのうちの4つの電池3a~3dのSOHが示されている。電池3a~3dのSOHの大きさは、それぞれ異なる。具体的には、電池3cのSOHが最も大きく、電池3bのSOHが最も小さい。別言すれば、電池3bが最も劣化している。
【0029】
充放電制御部36は、SOH算出部34が求めた各電池3a~3nのSOHの大きさに基づいて、充電及び放電を制限する。本実施形態では、充放電制御部36は、複数の電池3a~3nのうちのSOHが最も小さい電池を特定して、複数の電池3a~3nの充電及び放電を制限する。具体的には、充放電制御部36は、複数の電池3a~3nのうちのSOHが最も小さい電池(例えば、
図2の電池3b)の劣化を抑制するように、特定した電池に合わせて複数の電池3a~3nの充電及び放電を制限する。これにより、SOHが最も小さい電池の劣化進行を抑制できるので、組電池2の劣化進行を抑制できる。
【0030】
充放電制御部36は、車両のアイドリング時の発電によって複数の電池3a~3nを充電する際に、複数の電池3a~3nのうちのSOHが最も小さい電池に基づいて、複数の電池3a~3nの充電を制限してもよい。これにより、アイドリング時の電池3a~3nの充電時の電池の劣化進行を抑制できる。
【0031】
交換判定部38は、SOH算出部34が求めた各電池のSOHに基づいて、電池の交換時期を判定する。例えば、交換判定部38は、SOHの大きさが閾値よりも低い電池については、交換が必要であると判定する。交換判定部38は、交換が必要である電池に関する情報を出力してもよい。これにより、劣化が進んだ電池のみを適切に交換することができるので、組電池2全体の交換を防止できる。すなわち、劣化が進んでいない電池が交換されることを防止できる。
【0032】
<電池制御装置の動作例>
電池制御装置10の動作例について、
図3を参照しながら説明する。
【0033】
図3は、電池制御装置10の動作例の一例を説明するためのフローチャートである。
まず、電池制御装置10は、組電池2の複数の電池3a~3nの充電又は放電が行われるか否かを判定する(ステップS102)。
【0034】
ステップS102で電池3a~3nの充電及び放電が行われないと判定した場合には(No)、電池制御装置10は、充電又は放電が行われるまで待機する。一方で、ステップS102で電池3a~3nの充電又は放電が行われると判定した場合には(Yes)、電池制御装置10のSOH算出部34は、電池3a~3nの各々のSOHを求める(ステップS104)。
【0035】
次に、充放電制御部36は、複数の電池3a~3nの中で最もSOHが小さい電池を特定する(ステップS106)。例えば、電池制御装置10は、
図2に示すような場合には、電池3bが最もSOHが小さい電池であると特定する。
【0036】
次に、充放電制御部36は、ステップS106で特定した電池に合わせて、電池3a~3nの充電及び放電を制限する(ステップS108)。すなわち、充放電制御部36は、最も劣化している電池に合わせて、充電及び放電を制限することで、最も劣化している電池の劣化進行を抑制できる。
【0037】
<本実施形態における効果>
上述した実施形態の電池制御システム1は、直列に配置された複数の電池3a~3nの各々のSOHを求める。また、電池制御システム1は、複数の電池3a~3nのうちのSOHが最も小さい電池を特定し、複数の電池3a~3nの充電及び放電を制限する。
特定した電池に合わせて複数の電池3a~3nの充電及び放電を制限することによって、最も劣化している電池の更なる劣化進行を抑制できる。これにより、当該電池を含め複数の電池が直列に配置された組電池2全体の劣化進行を抑制できる。この結果、SOHが大きい電池が使用できなくなることを防止できる。
【0038】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0039】
1 電池制御システム
2 組電池
3a~3n 電池
34 SOH算出部
36 充放電制御部