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特開2022-14457改良した特性を有するシリコンカーバイド半導体装置の製造方法
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  • 特開-改良した特性を有するシリコンカーバイド半導体装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014457
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】改良した特性を有するシリコンカーバイド半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220112BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20220112BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20220112BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20220112BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220112BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20220112BHJP
   B24B 37/10 20120101ALI20220112BHJP
   B24B 37/015 20120101ALI20220112BHJP
   B24B 37/005 20120101ALI20220112BHJP
【FI】
H01L21/304 622W
H01L21/304 622A
H01L21/205
H01L29/91 F
H01L29/91 B
H01L29/78 658Z
H01L29/78 652T
B24B37/10
B24B37/015
B24B37/005 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112177
(22)【出願日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】102020000016279
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】591002692
【氏名又は名称】エスティーマイクロエレクトロニクス エス.アール.エル.
【氏名又は名称原語表記】STMicroelectronics S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100076185
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 正明
(72)【発明者】
【氏名】ニコロ ピルソ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア セヴェリーノ
(72)【発明者】
【氏名】ステファニア リナルディ
(72)【発明者】
【氏名】アンジェロ アッニバーレ マッツェオ
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド カウド
(72)【発明者】
【氏名】アルフィオ ルッソ
(72)【発明者】
【氏名】ジオバッニ フランコ
(72)【発明者】
【氏名】アンナ バッシ
【テーマコード(参考)】
3C158
5F045
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CA04
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED23
3C158ED26
5F045AA03
5F045AB06
5F045BB12
5F045BB16
5F045GH10
5F057AA03
5F057AA06
5F057AA41
5F057BA16
5F057BB09
5F057BC09
5F057CA12
5F057CA24
5F057CA25
5F057CA36
5F057DA03
5F057DA38
5F057DA40
5F057EA02
5F057EA32
5F057EB27
5F057EC30
5F057FA37
5F057FA39
(57)【要約】
【課題】 改良した特性を有するシリコンカーバイド半導体装置を製造する方法を提供する。
【解決手段】 シリコンカーバイド半導体装置を製造する方法が、基板(22)を有するシリコンカーバイドウエハ(21)を用意するステップ、及び該基板(22)上に上部表面(23a)を有するエピタキシャル層(23)を形成するためのエピタキシャル成長を実施するステップを包含している。該エピタキシャル成長を実施するステップに続いて、本方法は、前のエピタキシャル成長期間中に該基板(22)から転位(24)の伝搬の結果として該上部表面(23a)に存在する表面損傷を除去し且つ実質的に欠陥の無い結果的に得られる上部表面(23a’)を画定させるために該上部表面(23a)から開始して該エピタキシャル層(23)の表面部分を除去するステップを有している。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(22)を有するシリコンカーバイドウエハ(21)を用意し、及び
該基板(22)上に上部表面(23a)を有しているエピタキシャル層(23)を形成するためにエピタキシャル成長を実施し、前記エピタキシャル成長期間中に該基板(22)から該上部表面(23a)へ向けて転位(24)の伝搬が発生してその結果表面損傷を形成するシリコンカーバイド半導体装置を製造する方法において、
エピタキシャル成長を実施する該ステップに続いて、前記上部表面(23a)における該表面損傷を除去し且つ実質的に欠陥の無い結果的に得られる上部表面(23a’)を画定するように前記上部表面(23a)から開始して該エピタキシャル層(23)の表面部分を除去する、ことを包含していることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記表面損傷が、前記エピタキシャル成長期間中に前記基板(22)から開始して前記上部表面(23a)へ向かう転位(24)の伝搬に起因するピット(25)である請求項1記載の方法。
【請求項3】
該エピタキシャル層(23)の該除去された表面部分は100nmと500nmとの間の厚さを有している請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記厚さが300nmに等しい請求項3記載の方法。
【請求項5】
該除去することが、該エピタキシャル層(23)の該上部表面(23a)の化学的機械的研磨(CMP)ステップを実施することを包含している請求項2乃至4の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記CMPステップが粒子が無く且つ5未満のpHを有している研磨化合物(36)を使用して実施される請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記CMPステップ期間中に、1と3psiとの間の圧力(P)で支持ヘッド(34)によって研磨パッド(32)に対して該ウエハ(21)を押圧させる請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記CMPステップが更に次のパラメータ、即ち、
該研磨パッド(32)の回転速度が70rpm未満;
該支持ヘッド(34)の回転速度が60rmp未満;
該研磨パッド(32)上の該支持ヘッド(34)のスラスト力が約3kgf;
該研磨化合物(36)の流量が100ml/min未満;
の内の一つ又はそれ以上で実施される請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記CMPステップが50℃未満の温度(T)において実施される請求項5乃至8の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記CMPステップの前に、該エピタキシャル層(23)の該上部表面(23a)のクリーニング、及び、前記CMPステップの後に、該結果的に得られる上部表面(23a’)の専用洗浄、を更に有しており、前記CMPステップ及び前記専用洗浄に続いて、該結果的に得られる上部表面(23a’)が0.1nm未満の粗度(Rq)を有している請求項5乃至9の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記エピタキシャル成長が化学的気相成長(CVD)で実施される請求項1乃至10の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記エピタキシャル層(23)が4H-SiCからなる請求項1乃至11の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
該エピタキシャル層(23)の表面部分を除去する該ステップに続いて、前記半導体装置を形成するために該結果的に得られる上部表面(23a’)から開始して更なる処理操作を実施することを更に包含している請求項1乃至12の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記半導体装置が電子パワー装置である請求項1乃至13の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記電子パワー装置がダイオード又はMOSFETである請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良した特性を有するシリコンカーバイド半導体装置を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンカーバイドから開始して製造した特に電子的パワー適用例のための例えばダイオード又はMOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)等の電子的半導体装置は既知である。
【0003】
上記装置は、シリコンカーバイドの望ましい化学的・物理的特性のために有益的であることが判明している。例えば、シリコンカーバイドは、通常、電子的パワー装置において一般的に使用されているシリコンよりも一層広いバンドギャップを有している。その結果、比較的小さな厚さでもって、シリコンカーバイドはシリコンよりも一層高いブレークダウン電圧を有しており、従って、高電圧、高パワー、高温適用例において有益的に使用することが可能である。
【0004】
しかしながら、シリコンカーバイド半導体装置の製造には幾つかの問題が存在している。例えば、シリコンカーバイドの結晶学的品質の問題が高い製造歩留まりを達成することの障害となる場合があり、該製造歩留まりはシリコンから開始して得られる同様の装置よりも通常低いことを示しており、その結果製造コストを増加させることとなる。
【0005】
特に、装置製造のために通常使用されるエピタキシャルプロセスは、開始基板内に埋設されている結晶欠陥を成長されるエピタキシャル層の表面へ向けて伝播させる傾向がある。より詳細に説明すると、TSD(貫通らせん転位)の基板からエピタキシャル層への伝播が、同じエピタキシャル層の表面上に、ピット又はナノピット(即ち、例えば30nm未満の数ナノメートルの直径を有するナノメートル寸法を有するピット)を発生させる場合がある。
【0006】
この様な欠陥の存在は、装置の電気的性能を減少させ、特に信頼性を低下させ、その結果電気的テスト後の歩留まりを減少させ、逆バイアス条件下において高いリーク電流を発生させる可能性があることが判明している。
【0007】
前述した問題は、或る適用例に対して特に重要であり、特に、該装置の実効的な使用期間中(例えば、自動車に搭載状態)に極めて低い百分率の障害が許容される(例えば、1%未満)に過ぎない自動車分野においてそうである。
【0008】
図1は、特にホモエピタキシャルプロセスで上部表面3aを有するエピタキシャル層3がその上に成長されている基板2を有する、特にシリコンカーバイド(SiC)である半導体物質のウエハ1を模式的に示している。参照番号4で示した特にTSDである欠陥が基板2から開始して上側のエピタキシャル層3へ向かって伝播し(矢印で示した如くに)、その上部表面3a上に表面ピット5を発生させる。
【0009】
表面ピット5が存在することは、特にそれがエピタキシャル層3内に形成される例えばダイオード又はMOSFET等の対応するパワー装置の活性区域内である場合に、該パワー装置の性能及び信頼性を低下させることとなり、例えば、表面ピット5は、例えば表面酸化を介して成長される誘電体層及び/又はパワー装置の電極の形成のために設計された導電層等のエピタキシャル層3の上部表面3a上のその後の層の適切な成長を阻害する場合があり、従ってパワー装置の信頼性を阻害することとなる。
【0010】
研究及び実験結果-例えば、T.Kimoto、「高電圧パワー装置用のSiC技術における材料科学及び装置物理(Material science and device physics in SiC technology for high-voltage power devices)」、日本応用物理ジャーナル54,040103(2015)参照-が確認したところによれば、基板からの転位の伝播から発生する前述した表面ピット(ナノピット)の存在は実効的に装置性能を阻害する。
【0011】
この点に関して、図2(A)及び(B)は、シリコンカーバイド基板から開始して製造されたパワー装置(この場合には、ショットキーダイオード)に対して逆バイアス電圧Vが増加する場合のリーク電流Ileakのプロットを示しており、基板からの転位の伝播の結果として活性区域内にナノピットが存在する場合(図2(A))及び転位が存在するがこれらの転位は表面ピットの存在を生じない場合(図2(B))である。図2(A)及び(B)を検討すると、基板を介して転位が存在する場合であっても表面ピットが存在しない場合と比較して、活性区域内に表面ピットが存在する場合にはリーク電流がかなり一層高いことが明らかである。
【0012】
上記問題を解決するためにこれまで提案されている解決手段(例えば、N. Piluso、A. Campione,S. Lorenti、A. Severino、G. Arena、S. Coffa、F. La Via、「CVDプロセスのチューニングによる高品質4H-SiCエピタキシャル層(High Quality 4H-SiC Epitaxial Layer by Tuning CVD Process)」、マテリアルズ・サイエンス・フォーラム、ISSN:1662-9752、Vol.963、pp.91-96を参照)は、特に、エピタキシャル層の表面上の欠陥の影響を減少させるために、シリコンカーバイド基板から開始して実施されるエピタキシャル成長を改善することに向けられた適宜のステップを目論むものである。しかしながら、TSDは結晶学的性質の欠陥であるから、エピタキシャル層へのその伝播を阻止することは不可能である。
【0013】
その他の既知の解決手段(例えば、N. Piluso、A. Severino、R. Anzalone、M.A. Di Stefano、E. Fontana、M. Salanitri、S. Lorenti、A. Campione、P. Fiorenza、F. La Via、「バッファ層の最適化を介しての4H-SiCエピタキシャル層の成長(Growth of 4H-SiC Epitaxial Layer through Optimization of Buffer Layer)」、マテリアルズ・サイエンス・フォーラム、ISSN:1662-9752,Vol.924、pp.84-87を参照)は、基板とエピタキシャル層との間にバッファ層を介在させることを目論むものである。しかしながら、該解決手段はたかだか転位密度の制限された減少を可能とするものであるが、エピタキシャル層の表面へ向けての同じ転位の伝播を阻止するものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】N. Piluso、A. Campione,S. Lorenti、A. Severino、G. Arena、S. Coffa、F. La Via、「CVDプロセスのチューニングによる高品質4H-SiCエピタキシャル層(High Quality 4H-SiC Epitaxial Layer by Tuning CVD Process)」、マテリアルズ・サイエンス・フォーラム、ISSN:1662-9752、Vol.963、pp.91-96
【非特許文献2】N. Piluso、A. Severino、R. Anzalone、M.A. Di Stefano、E. Fontana、M. Salanitri、S. Lorenti、A. Campione、P. Fiorenza、F. La Via、「バッファ層の最適化を介しての4H-SiCエピタキシャル層の成長(Growth of 4H-SiC Epitaxial Layer through Optimization of Buffer Layer)」、マテリアルズ・サイエンス・フォーラム、ISSN:1662-9752,Vol.924、pp.84-87
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、シリコンカーバイド基板上に成長されるエピタキシャル層の表面へ向けての結晶欠陥、特にTSD、の伝播にリンクした欠点を減少させることを可能とする解決手段を提供することの必要性がある。
【0016】
本発明の目的とするところは、前述した欠点を解消することを可能とするシリコンカーバイド半導体装置を製造するプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、特許請求の範囲に定義されるような製造プロセスが提供される。本発明をより良く理解するために、その好適実施例について純粋に非制限的例として且つ添付の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】シリコンカーバイド半導体装置の一部の概略断面図。
図2】(A)及び(B)は表面欠陥の存在に関連する半導体装置内のリーク電流のプロット、
図3】本発明に基づくシリコンカーバイド半導体装置を製造するプロセスに基づく幾つかの操作の簡単化したフローチャート、
図4】(A)及び(B)は本発明に基づく製造プロセスの夫々のステップ期間中におけるシリコンカーバイド半導体装置の一部の概略断面図、
図5】本発明に基づいてシリコンカーバイド半導体装置を製造するプロセス期間中に使用されるCMP(化学的機械的研磨)システムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に詳細に説明するように、本発明の一つの側面は、欠陥(特に、TSD)の伝播を停止又は減少させることに関して作用する既知の解決手段のアプローチに追従する代わりに、同じ欠陥の伝播により表面上に発生される形態学的損傷を減少させること、特にエピタキシャル層表面上に発生するピット(ナノピット)を減少させることに関与することを目論むものである。
【0020】
本発明により提案される解決手段は、エピタキシャル層上に本製造プロセスによって目論まれるその後の処理操作、例えばエピタキシャル層上の誘電体層の成長のための酸化ステップが電界集中の影響を防止し且つ一様な酸化を確保することによって、改善することを可能とする。
【0021】
本発明の一つの側面によれば、製造プロセス内に付加的なCMPステップを導入するものであって、即ち、シリコンカーバイド基板上に形成したエピタキシャル層の表面を化学的機械的研磨するステップを導入する。この処理ステップは、関連する表面機械加工(それは化学的エッチングと機械的平坦化との結合)と共に、物質の薄い表面層(エピタキシャル層の表面から開始して数百ナノメートルの程度)の除去を可能とし、その結果エピタキシャル層の表面を実質的にピットが無いものとさせる。TSDの伝播に起因するピットは、前述した物質の表面層の除去で実質的に完全に除去される。
【0022】
図3を参照して、包括的なシリコンカーバイド半導体装置、例えばパワー装置(ダイオード又はMOSFET等)を製造するプロセスについて説明する。
【0023】
ステップ10において示したように、本プロセスは、最初に、基板22(それは図4(A)において模式的に示してある)を有するシリコンカーバイド(特に、4H-SiC)のウエハ21を用意することを目論んでいる。次に(ステップ11)、基板22上に上部表面23aを有するエピタキシャル層(これも4H-SiC)23を形成するために、例えば化学的気相成長(CVD)でエピタキシャル成長を実施する。
【0024】
前述した如く、図4(A)において全体的に参照番号24で示した欠陥、特にTSD、が、エピタキシャル成長期間中に、基板22から開始して上側のエピタキシャル層23へ向けて伝播し、その上部表面23a上に表面ピット25を発生させる場合があり、それは、例えば、数ナノメートル(例えば、30nm未満)の直径を有する場合がある。
【0025】
本発明の一つの側面によれば、その製造プロセスは、エピタキシャル成長の前記ステップに続いて(特に、直後に)、基板22上に形成したエピタキシャル層23の上部表面23aの所謂「ソフト」化を化学的機械的研磨(CMP)による図3に参照番号14で示した付加的なステップを行う。
【0026】
図3に示したように、CMPプロセスの前のステップは、ウエハ表面、特に前述したエピタキシャル層23の上部表面23aのクリーニングのステップ15であり、クリーニングは、例えば、高圧での水ジェットによって行われ且つサンプルを回転させるか、又は、代替的に、HF、NHOH,H、HCl等の化学物質を使用して該表面の乾燥を行わせる。
【0027】
図4(B)に模式的に示した如く、該CMPプロセスは、機械的及び化学的効果の結合を介して、その上部表面23aから開始してエピタキシャル層23の薄い表面層を除去してTSD24の伝播によって発生した表面ピット25を除去し、その結果得られるエピタキシャル層23の上部表面23a’を実質的に平坦状で欠陥の無いものとさせる。
【0028】
詳細に説明すると、除去される表面層の厚さ(前述した上部表面23aに対して直交する方向において)は100nmと500nmとの間で、例えば300nmとすることが可能であり、それは、とにかく、前述したように、表面ピット25を可及的に全てを除去するのに十分なものである。
【0029】
明らかなように、除去する表面層の実際の厚さは、除去する物質を可及的に少なくすることの希望(製造プロセスの時間及びコストを最適化させるため)と、同時に、表面欠陥の完全な除去の確保との間の妥協から決定される。本発明者等が知得したところによれば、100nmの厚さの層の除去がCMPプロセスから得られる上部表面23a’を一様なものとさせるのに通常充分である。しかしながら、所望の結果が得られることを一層確実なものとさせるためには一層大きな厚さ、例えば300nm、を除去することが良い場合がある。
【0030】
いずれの場合にも、CMPプロセスは、エピタキシャル層23の前述した結果的に得られる上部表面23a’の表面凹凸を減少させることの更なる利点を有している。
【0031】
この点に関して、エピタキシャル層の上部表面上で測定される典型的な粗度(通常パラメータRqとして示される)は0.1nmと1nmとの間の変数であることが知られており、更に、「ステップバンチング」、即ち基本的に「軸ずれ(off-axis)」基板上のCVDエピタキシャル成長に起因する表面段差の形成、として知られる現象がしばしば発生する。
【0032】
本発明者等が知得したところでは、前述したCMPプロセスは、結果的に得られる上部表面23a’の粗度値を著しく減少させることが可能であり,0.1nm未満のRqパラメータの値(即ち、同じ厚さを検知するために使用される機器のノイズと同程度の値)とすることが可能であり、更にステップバンチング現象を完全に取り除くことが可能である。
【0033】
基本的に、CMPプロセス後の結果的に得られる上部表面23a’は、電子装置(例えば、ダイオード又はMOSFET等のパワーデバイス)を製造するために使用することが可能なその後の化学的及び/又は機械的処理ステップのために最適化され且つ準備がなされる。
【0034】
この点に関して、再度図3を参照すると、本製造プロセスは、前述したCMPプロセスに続いて、エピタキシャル層の結果的に得られる上部表面23a’のクリーニング、特にC及びHを使用してのクリーニングステップ16を実施し、その後に、エピタキシャル層23上に酸化物層を形成するために同じ結果的に得られる上部表面23a’の酸化を行う標準プロセスを実施する。
【0035】
有益的なことであるが、形成される酸化物層の物理的/化学的特性は、欠陥の不存在のため及び開始表面(前述した結果的に得られる上部表面23a’)の低い粗度のおかげで、最適化されている。
【0036】
ステップ18において概略的に示されているように、本製造プロセスは、次いで、所望のパワーデバイスの形成のために必要な処理操作(既知であるから詳細な説明は割愛する)を行うことが可能であり、それは例えば電極を提供するための導電層の形成及び画定やパッシベーション層の形成等のステップである。
【0037】
付加的なCMPプロセス(標準の予備的クリーニング及び爾後の専用クリーニングと共に)を行うという点において本発明は従来技術とは実質的に異なるものであって、従って製造プロセスのコスト又は時間を実質的に増加させるものではないことを理解すべきである。
【0038】
本発明者等が更に知得したことは、同じCMPプロセスがエピタキシャル層23の結果的に得られる上部表面23a’上にスクラッチ等の欠陥を発生させることが無いように該CMPプロセスを適宜構成(特に、プロセスパラメータに関して及び使用される消耗品に関して)することが可能である。
【0039】
この点に関して、図5は、対応する基板22上にエピタキシャル層23を形成するためのエピタキシャル成長ステップを既に行っているシリコンカーバイドウエハ21に関してCMPプロセスを実施するためのシステム30を示している。
【0040】
特に、システム30は、或る速度で回転させる回転支持体33によって担持されている研磨パッド32を有しており、ウエハ21は支持ヘッド34(それに対して固定層35によって取り付けられている)によって研磨パッド32と接触状態にセットされており、該支持ヘッド34は、その回転軸周りの回転に加えて、ウエハ21を研磨パッド32上に押し付ける力を付与する。
【0041】
研磨化合物(所謂「スラリー」)36が研磨パッド32の表面上を流されて、研磨パッド32の回転のおかげで、ウエハ21と接触されてその表面を研磨し且つその化学的エッチングを起こさせる。
【0042】
更に、研磨パッド32の表面上方に片持ち梁形態に支持されているコンディショナーパッド37が研磨パッド32のクリーニングを実施してその表面上にトラップされることのある残留物を除去し、従ってウエハ21にかすり傷を付けることを防止する。
【0043】
本発明者等が実験的に知得したことであるが、pH<5を有する粒子の無い研磨化合物35を使用してCMPプロセスをした後には一層良好な電気的及び物理的特性を達成することが可能である。更に、研磨パッド32上に支持ヘッド34によって付与される圧力Pが1と3psi(0.07と0.21kgf/cm)の間であるが最適であることが判明しており、同様に、CMPプロセスの温度Tが50度未満であることが最適であることが判明している。
【0044】
本発明者等が更に知得したところでは、CMPプロセスの以下の更なるパラメータの一つ又はそれ以上を使用することが有益的であり、即ち、研磨パッド32の回転速度が70rpm未満であること、支持ヘッド34の回転速度が60rpm未満であること、研磨パッド上のコンディショナーパッド37のスラスト力が約6lbf(即ち、約3kgf)であること、研磨化合物36の流量が100ml/min未満であること、等である。
【0045】
本発明の利点は以下の説明から明らかである。
【0046】
いずれの場合にも強調されるべきことは、本発明プロセスは、エピタキシャル成長に続いてCMPプロセスステップを導入することによって、表面欠陥を除去することを可能とし、従って、半導体装置の製造のための爾後の処理操作のためにウエハの結果的に得られる上部表面の最適な準備する(例えば、エピタキシャル層上にその後に成長される酸化物層の堅牢性を増加させることを可能とする)。
【0047】
特に、前述したCMPプロセスは、エピタキシャル成長のステップ期間中に発生される基板からくる転位の伝搬に起因する表面ピットを除去することを可能とする。更に、該CMPプロセスは、表面粗度、特に所謂ステップバンチング現象、を減少させる更なる利点を有している。前述した如く、CMP後に結果的に得られる上部表面23a’の表面粗度は低い値を有しており、特にRqパラメータの値が0.5nm未満で、好適には0.2nm未満であり、更に好適には0.1nm未満である。
【0048】
更に、有益的なことであるが、前述したCMPプロセスは、前述した如く及び本発明者等によって行われた実験によって示されているように、スクラッチ又は表面欠陥を発生させることが無いように構成することが可能であることである。
【0049】
従って、本発明は、製造プロセスに関連する電気的歩留まりを増加させ、製造コストを節約し、更に、面積を節約することを可能とする。
【0050】
以上、本発明の具体的実施の態様について詳細に説明したが、本発明はこれらの具体的実施の態様のいずれかに制限されるべきものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱すること無しに種々の変形が可能であることは勿論である。特に、強調すべきこととしては、本発明は、装置を製造するための処理ステップ期間中にその上にエピタキシャル成長が行われるシリコンカーバイド(SiC)基板から開始して得られる任意の装置(ダイオード、MOSFET、等)に対して有益的に適用することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5