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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144614
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】積層鉄心、および回転機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
H02K1/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045691
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝史
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601BB11
5H601CC01
5H601CC13
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601EE20
5H601EE30
5H601GA02
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB33
5H601GB48
5H601GC02
5H601GC12
5H601KK12
(57)【要約】
【課題】金属板同士の密着度を高める積層鉄心、回転機を提供する。
【解決手段】積層鉄心は、複数の金属板が積層される。複数の金属板は、V字状の折曲部が形成される第1金属板と、折曲部が挿入される貫通孔が形成される第2金属板と、を含む。第1金属板、および第2金属板は、交互に積層され、折曲部が貫通孔に嵌め込まれることで形成されたカシメ部によって相互に結合している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属板が積層された積層鉄心であって、
前記複数の金属板は、
V字状の折曲部が形成される第1金属板と、
前記折曲部が挿入される貫通孔が形成される第2金属板と、を含み、
前記第1金属板、および前記第2金属板は、交互に積層され、前記折曲部が前記貫通孔に嵌め込まれることで形成されたカシメ部によって相互に結合している、積層鉄心。
【請求項2】
前記第1金属板は、積層方向で前記カシメ部と対応する位置には、前記折曲部が形成される一方、前記貫通孔が形成されず、
前記第2金属板は、積層方向で前記カシメ部と対応する位置には、前記貫通孔が形成される一方、前記折曲部が形成されない、
請求項1に記載の積層鉄心。
【請求項3】
前記第1金属板の前記折曲部における折り曲げ深さdは、当該第1金属板の厚さtよりも大きい、
請求項1または2に記載の積層鉄心。
【請求項4】
前記第1金属板は、前記折曲部の形成によって窪んだ溝部を備え、
前記第1金属板の前記折曲部は、第2金属板を挟んで積層方向に並ぶ他の第1金属板の前記溝部に入り込んでいる、
請求項3に記載の積層鉄心。
【請求項5】
前記折曲部の始点となる辺間の距離L1は、前記貫通孔を形成する4つの側面のうち、前記折曲部の始点となる前記辺と平行な2つの側面間の距離L2よりも短い、
請求項1~4のいずれか1つに記載の積層鉄心。
【請求項6】
前記第1金属板には、複数の前記折曲部が形成され、
前記第2金属板には、複数の前記貫通孔が形成され、
複数の前記折曲部、および複数の前記貫通孔は、周方向に沿って等間隔に形成される、 請求項1~5のいずれか1つに記載の積層鉄心。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の積層鉄心を備える、回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層鉄心、および回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
薄板状の金属板を積層し、金属板同士をカシメによって結合させて形成する積層鉄心が知られている。例えば、金属板のカシメ方法としては、金属板がV字状の折曲部によって結合されるVカシメが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-198518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、Vカシメによって金属板同士が結合される場合には、積層された金属板のV字状の折曲部同士が当接し、金属板が連結されるため、金属板間に隙間が生じ、金属板同士の密着度が低くなるおそれがある。
【0005】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、金属板同士の密着度を高める積層鉄心、および回転機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の開示する積層鉄心の一態様は、複数の金属板が積層される。複数の金属板は、V字状の折曲部が形成される第1金属板と、折曲部が挿入される貫通孔が形成される第2金属板と、を含む。第1金属板、および第2金属板は、交互に積層され、折曲部が貫通孔に嵌め込まれることで形成されたカシメ部によって相互に結合している。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示する積層鉄心の一態様によれば、金属板同士の密着度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1の3相モータが設けられた圧縮機を示す縦断面図である。
図2図2は、ステータコアを示す上面図である。
図3図3は、図2におけるIII-III断面である。
図4図4は、折曲部を示す下面図である。
図5図5は、貫通孔を示す下面図である。
図6図6は、比較例におけるステータコアの積層状態を説明する断面図である。
図7図7は、実施例2におけるステータコアの積層状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示する積層鉄心、および回転機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する積層鉄心、および回転機が限定されるものではない。
【実施例0010】
以下に、本願が開示する実施例にかかる積層鉄心、および回転機について、図面を参照して説明する。なお、以下の記載により本開示の技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0011】
図1は、実施例1の3相モータ(以下、「モータ」と称する。)6が設けられた圧縮機1を示す縦断面図である。圧縮機1は、図1に示されているように、容器2とシャフト3と圧縮機部5とモータ6とを備えている。容器2は、密閉された内部空間7を形成している。内部空間7は、概ね円柱状に形成されている。容器2は、水平面に縦置きされたときに、内部空間7の円柱の中心軸が鉛直方向に平行になるように、形成されている。容器2には、内部空間7の下部に油溜め8が形成されている。油溜め8には、圧縮機部5を潤滑させる冷凍機油が貯留される。容器2には、冷媒を吸入する吸入管11と圧縮された冷媒を吐出する吐出管12とが接続されている。シャフト3は、棒状に形成され、一端が油溜め8に配置されるように、容器2の内部空間7に配置されている。シャフト3は、内部空間7が形成する円柱の中心軸に平行である回転軸P(図2参照)を中心に回転可能に容器2に支持されている。シャフト3は、回転することにより、油溜め8に貯留される冷凍機油を圧縮機部5に供給する。
【0012】
圧縮機部5は、内部空間7の下部に配置され、油溜め8の上方に配置されている。圧縮機1は、さらに、上マフラーカバー14と下マフラーカバー15とを備えている。上マフラーカバー14は、内部空間7のうちの圧縮機部5の上部に配置されている。上マフラーカバー14は、内部に上マフラー室16を形成している。下マフラーカバー15は、内部空間7のうちの圧縮機部5の下部に配置され、油溜め8の上部に配置されている。下マフラーカバー15は、内部に下マフラー室17を形成している。下マフラー室17は、圧縮機部5に形成されている連通路(図示されていない)を介して上マフラー室16に連通している。上マフラーカバー14とシャフト3との間には、圧縮冷媒吐出孔18が形成され、上マフラー室16は、圧縮冷媒吐出孔18を介して内部空間7に連通している。
【0013】
圧縮機部5は、いわゆるロータリー型の圧縮機であり、シャフト3が回転することにより吸入管11から供給される冷媒を圧縮し、その圧縮された冷媒を上マフラー室16と下マフラー室17とに供給する。その冷媒は、冷凍機油と相溶性を有している。モータ6は、内部空間7のうちの圧縮機部5の上部に配置されている。モータ6は、ロータ21とステータ22とを備えている。ロータ21は、シャフト3に固定されている。ステータ22は、概ね円筒形に形成され、ロータ21を囲むように配置され、容器2に溶接により固定されている。ステータ22は、ステータコア23と上インシュレータ24と下インシュレータ25と複数の巻き線26を備えている。上インシュレータ24は、ステータコア23の上部に配置されている。下インシュレータ25は、ステータコア23の下部に配置されている。上インシュレータ24と下インシュレータ25とは、ステータコア23と巻き線26とを絶縁する絶縁部の一例である。
【0014】
図2は、ステータコア23を示す上面図である。ステータコア23は、図2に示されているように、ヨーク部31と複数のステータコアティース部32-1~32-9とを備えている。ヨーク部31は、概ね円筒形に形成されている。複数のステータコアティース部32-1~32-9のうちの第1ステータコアティース部32-1は、概ね柱体状に形成されている。第1ステータコアティース部32-1は、一端がヨーク部31の内周面に連続して形成され、すなわち、ヨーク部31の内周面から突出するように、形成されている。複数のステータコアティース部32-1~32-9のうちの第1ステータコアティース部32-1と異なるステータコアティース部も、第1ステータコアティース部32-1と同様に、概ね柱体状に形成され、ヨーク部31の内周面から突出している。複数のステータコアティース部32-1~32-9は、さらに、ヨーク部31の内周面に40度ごとの等間隔に配置されるように、形成されている。
【0015】
ヨーク部31には、外周面に複数の位置決め用切欠33-1~33-3が形成される。ヨーク部31には、3つの位置決め用切欠33-1~33-3が形成される。3つの位置決め用切欠33-1~33-3は、ヨーク部31の外周面に120度ごとの等間隔に配置されるように、形成されている。
【0016】
ステータコア23は、たとえば、ケイ素鋼板に例示される軟磁性体で形成された複数の金属板が積層されて形成される積層鉄心である。ステータコア23は、積層された複数の金属板が、ヨーク部31に設けられた複数のカシメ部34によって相互に結合される。複数のカシメ部34は、モータ6の回転軸Pを中心に周方向に等間隔に配置される。実施例では、ステータコア23には、3つのカシメ部34が設けられる。3つのカシメ部34は、120度ごとの等間隔に配置される。3つのカシメ部34のそれぞれは、周方向に隣り合うステータコアティース部32の間に配置される。なお、カシメ部34が配置される場所は特に限定されず、例えば回転軸Pから各ステータコアティース部32へと延ばした半直線上に設けられてもよい。
【0017】
ヨーク部31には、さらに、ステータコア23を容器2に溶接して固定する際に、ステータコア23の外周面から内径側へ伝わる溶接熱を遮断する、複数の断熱部35が形成される。実施例では、ステータコア23には、6つの断熱部35が設けられる。6つの断熱部35は、ヨーク部31において、周方向に隣り合うステータコアティース部32の間の領域のうち、カシメ部34が配置される3箇所を除いた6箇所に配置されている。
【0018】
ステータコア23は、図3に示すように、複数の金属板として、第1金属板40と第2金属板50とを含む。ステータコア23は、第1金属板40と第2金属板50とが1枚ずつ交互に積層されて形成される。ここで、複数の金属板の積層方向は、モータ6の回転軸P方向に一致する。図3は、図2におけるIII-III断面である。第1金属板40の厚さ、および第2金属板50の厚さは、等しい。
【0019】
第1金属板40には、カシメ部34として折曲部41と溝部43とが形成される。折曲部41は、第1金属板40の一部がV字状に折り曲げられて形成される。第1金属板40は、カシメ部34の周辺で折り曲げられていない平板部42と、折曲部41の形成によって平板部42よりも第1金属板40の厚さ方向に窪んだ溝部43とを備える。本実施例における溝部43は、平板部42の表面に沿った仮想面と、折曲部41のV字状の表面とで囲まれる、三角形状の空間として形成されている。
【0020】
第2金属板50には、カシメ部34として貫通孔51が形成される。第2金属板50は、カシメ部34の周辺で折り曲げられていない平板部52を備える。
【0021】
折曲部41が貫通孔51および溝部43に挿入され、折曲部41が貫通孔51および溝部43の縁に密着することで、カシメ部34が形成される。カシメ部34が形成されることで、第1金属板40と第2金属板50とが相互に結合されるとともに、第2金属板50を間に挟んだ2枚の第1金属板40同士が相互に結合される。
【0022】
また、折曲部41は、折り曲げ深さdが、第1金属板40の厚さt(または第2金属板50の厚さt)よりも大きくなるように形成される。すなわち、折曲部41の折り曲げ深さdは、第1金属板40、または第2金属板50の厚さtよりも大きい。ここで、折り曲げ深さdとは、金属板の積層方向(回転軸P方向)において、折曲部41の形成によって第1金属板40の平板部42から窪んだ溝部43の深さを指す。すなわち、折り曲げ深さdは、図3に示されるように、第1金属板40の平板部42における上側の表面と、第1金属板40の折曲部41により形成された溝部43の底部43aが、回転軸P方向においてなす高さを指す。好ましくは、第1金属板40の厚さtと折り曲げ深さdとが、1.5t≦d≦2.0tの関係を満たすとよい。本実施例では、折曲部41の折り曲げ深さdを、第1金属板40の厚さtの約1.8倍とした場合を例示している。
【0023】
折曲部41の折り曲げ深さdが第1金属板40の厚さtよりも大きいため、第1金属板40の折曲部41において同第1金属板40の平板部42よりも下方に突出する領域A1が、この第1金属板40に隣接する第2金属板50の貫通孔51に挿入される。この際、第1金属板40の折曲部41における長手方向に沿う側部(41b、41d、図4参照)が、第2金属板50の貫通孔51における長手方向に沿う側面(51b、51d、図5参照)と密着する。これにより、第1金属板40とこれに隣り合う第2金属板50が相互に結合される。
【0024】
さらに、折曲部41の折り曲げ深さdが、第1金属板40の厚さtの1.5倍~2倍としていることで、第1金属板40の折曲部41において、同第1金属板40に隣接する第2金属板50の平板部52よりも更に下方に突出する領域A2が、第2金属板50を挟んで回転軸P方向に並ぶ他の第1金属板40の溝部43に入り込んでいる。そして、第1金属板40の折曲部41における長手方向に沿う側部(41b、41d)が、第2金属板50を挟んで回転軸P方向に並ぶ他の第1金属板40の、折曲部41における長手方向に沿う側部(41b、41d)と密着する。これにより、第1金属板40と、第2金属板50を挟んで回転軸P方向に並ぶ他の第1金属板40同士が相互に結合される。
【0025】
なお、ステータコア23は、第1金属板40、および第2金属板50の積層方向の一方の端側(図1における下端側)には、2枚の第2金属板50が連続して積層される。積層方向の一方の端は、第1金属板40の折曲部41が突出する側の端である。また、ステータコア23は、積層方向の他方の端には、第1金属板40が配置される。積層方向の他方の端は、第1金属板40の折曲部41が突出する側とは反対側の端である。
【0026】
ステータコア23では、積層方向の一方の端側において、第1金属板40の折曲部41が、2枚の第2金属板50の貫通孔51に挿入されることで、折曲部41が2枚の第2金属板50の貫通孔51に嵌め込まれる。これにより、第1金属板40と、2枚の第2金属板50とが相互に結合される。また、折曲部41の折り曲げ深さdが第2金属板50の厚さtの2倍以下となることで、折曲部41の先端がステータコア23の下端から突出しない。
【0027】
このように、ステータコア23では、Vカシメによって、第1金属板40、および第2金属板50がカシメられ、結合される。
【0028】
第1金属板40の折曲部41は、図4に示すように、平面視において概ね矩形状に形成される。図4は、折曲部41を示す下面図である。折曲部41は、同折曲部41の始点となる辺41a、41c間の距離(折曲部41の長手方向の長さ)が「L1」となるように形成される。また、折曲部41は、短手方向の長さ(折曲部41の側部41b、41d間の距離)が、「W1」となるように形成される。ここで、折曲部41の始点となる辺41a、41cは、折曲部41が第2金属板50側の貫通孔51側へ突出する基点となる位置である。換言すると、折曲部41の始点となる辺41a、41cは、折曲部41の突出面41eの始点となる位置である。突出面41eは、積層方向における折曲部41の面のうち、積層方向の一方の端側となる面である。折曲部41の始点となる辺41a、41c間の距離、すなわち、平面視で折り曲げ線41fに対して垂直な方向(折曲部41の側部41b、41dと平行な方向)における折曲部41の長さは、「L1」である。また、折曲部41には、V字状に折り曲げられることで形成された折り曲げ線41fが形成されている。なお、第1金属板40には、回転軸P方向においてカシメ部34と対応する位置(第2金属板50に形成されている貫通孔51に対応する位置)には、貫通孔が形成されない。
【0029】
第2金属板50の貫通孔51は、図5に示すように、平面視において概ね矩形状に形成される。図5は、貫通孔51を示す下面図である。貫通孔51は、長手方向の長さ(第1金属板40における折曲部41の始点となる辺41a、41cと垂直な方向の長さ)が「L2」となるように形成される。また、貫通孔51は、短手方向の幅(折曲部41の側部41b、41d間の距離)が「W2」となるように形成される。ここで、貫通孔51の長手方向の長さL2(以下「貫通孔51の長さ」と称する。)は、貫通孔51を形成する側面51a~51dのうち、折曲部41の折り曲げ線41fと平行な側面51a、51c間の距離である。なお、第2金属板50には、回転軸P方向においてカシメ部34と対応する位置(第1金属板40に形成されている折曲部41に対応する位置)には、折曲部が形成されない。
【0030】
第1金属板40、および第2金属板50において、折曲部41の始点となる辺41a、41c間の距離(長さ)L1は、貫通孔51の長手方向の長さL2よりも短い。言い換えれば、L2はL1よりも大きい(L2>L1)。これにより、折曲部41、および貫通孔51は、第1金属板40と第2金属板50とが積層されて結合された場合に、突出面41eが第2金属板50に接触しないように設けられる。従って、第1金属板40と第2金属板50が積層方向に隙間なく密着することができる。
【0031】
第1金属板40、および第2金属板50において、折曲部41の側部41b、41d間の距離W1は、貫通孔51の短手方向の幅W2とほぼ等しい(W1≒W2)、または、距離W1が幅W2よりも僅かに大きい(W1>W2)。これにより、第1金属板40の側部41bと第2金属板50の貫通孔51の側面51bとが密着し、第1金属板40の側部41dと第2金属板50の貫通孔51の側面51dとが密着する。従って、第1金属板40と第2金属板50とを密着する強度を高めることができる。
【0032】
ステータコア23の製造方法について説明する。第1金属板40は、第1金属板40の形状に対応する複数の金型を用いたプレス加工によって成型される。第2金属板50は、第2金属板50の形状に対応する複数の金型を用いたプレス加工によって成型される。
【0033】
第1金属板40、および第2金属板50は、ステータコア23を形成する順に積層されて、積層方向にプレス処理が行われて、結合される。第1金属板40、および第2金属板50は、位置決め用切欠33-1~33-3に挿入される位置決め部材(不図示)によって位置決めされて積層されて、積層方向にプレス処理が行われる。
【0034】
具体的には、2枚の第2金属板50が積層された後に、第1金属板40が積層されて、第1金属板40の折曲部41が2枚の第2金属板50の貫通孔51に嵌め込まれるように、プレス処理が行われる。これによって、2枚の第2金属板50と、第1金属板40とが、結合する。
【0035】
さらに、第2金属板50、および第1金属板40が積層されて、第1金属板40の折曲部41が、第2金属板50の貫通孔51、および第2金属板50を挟んで積層方向に並ぶ第1金属板40の溝部43に嵌め込まれるように、プレス処理が行われる。これによって、既に結合された第1金属板40と第2金属板50との積層体に、第2金属板50、および第1金属板40が結合する。さらに、第2金属板50、および第1金属板40が積層され、プレス処理が繰り返されることによって、ステータコア23が製造される。
【0036】
ここで、比較例におけるステータコア100について説明する。比較例のステータコア100は、図6に示すように、V字状の折曲部41を有する第1金属板40が連続して積層される。図6は、比較例におけるステータコア100の積層状態を説明する断面図である。図6の断面図は、実施例1の図3の断面に対応する箇所における断面図である。
【0037】
比較例に係るステータコア100では、折曲部41が形成された第1金属板40が積層されて、プレス処理が行われ、第1金属板40同士が結合する。具体的には、第1金属板40の折曲部41が隣接する第1金属板40の溝部43に嵌め込まれるように、プレス処理が行われる。なお、積層方向の一方の端には、実施例1と同様に、折曲部41が入り込む貫通孔51が形成された2枚の第2金属板50が連続して積層される。
【0038】
比較例に係るステータコア100では、隣接する第1金属板40の折曲部41同士が積層方向に接触する。そのため、第1金属板40間で隙間が生じる。例えば、第1金属板40の厚さを「T」とし、積層方向(回転軸P方向)における折曲部41の高さを「H」とし、第1金属板40間に生じる積層方向の隙間の大きさを「C」とすると、高さHは、式(1)となる。
【0039】
H=T+C・・・(1)
【0040】
また、折曲部41の折り曲げ角度(平板部42の表面と、折曲部41の表面とがなす角度)を「θ」とすると、高さH、第1金属板40の厚さTと、折り曲げ角度θとの関係は、式(2)となる。
【0041】
Hcosθ=T・・・(2)
【0042】
式(1)、および式(2)より、隙間Cは、式(3)となる。
【0043】
C=H-T=T((1/cosθ)-1)・・・(3)
【0044】
このように、第1金属板40を積層してステータコア100を形成した場合、隣接する第1金属板40間で隙間Cが生じる。例えば、折曲部41の折り曲げ角度θを30度とした場合は、第1金属板40の厚さTの約0.15倍の隙間Cが生じる。そのため、比較例に係るステータコア100は、第1金属板40同士の密着度が低下する。また、比較例に係るステータコア100は、第1金属板40の積層枚数に応じた隙間Cの分、厚さが厚くなる。
【0045】
これに対し、第1金属板40が積層されたステータコア100を、積層方向にプレスすることで、第1金属板40間の隙間Cを無くすことも考えられる。
【0046】
しかしながら、この場合、隙間Cを小さくするためのプレス工程が生じるため、工程が増加する。また、隙間Cを小さくするためのプレス工程を実行する装置が必要となり、製造コストが高くなる。
【0047】
これに対し、本実施例のステータコア23は、複数の金属板が積層された積層鉄心である。複数の金属板は、第1金属板40と、第2金属板50とを含む。第1金属板40には、V字状の折曲部41が形成される。第2金属板50には、折曲部41が挿入される貫通孔51が形成される。ステータコア23の積層方向の一端側を除き、第1金属板40、および第2金属板50は、1枚ずつ交互に積層され、折曲部41が貫通孔51に嵌め込まれることによって結合する。
【0048】
これにより、ステータコア23は、第1金属板40と第2金属板50との間に隙間が生じることを抑制し、第1金属板40、および第2金属板50の密着度を高めることができる。また、ステータコア23は、モータ6の回転軸P方向における厚さの増加を抑制することができる。また、ステータコア23は、金属板間の隙間を無くすためのプレス工程を実行せずに、ステータコア23の厚さを薄くすることができる。そのため、ステータコア23は、製造工程を少なくすることができる。また、ステータコア23は、ステータコア23を製造するための製造コストの増加を抑制することができる。
【0049】
第1金属板40は、カシメ部34として、折曲部41が形成される一方、貫通孔が形成されない。また、第2金属板50のカシメ部34には、貫通孔は形成されない。たとえば、1枚の金属板において、複数のカシメ部34のそれぞれに、折曲部と貫通孔のいずれかを形成し、ステータコアを形成することも考えられる。しかし、このようなステータコアは、たとえば、モータの回転軸を中心に周方向に奇数個のカシメ部が設けられる場合、一枚の金属板における折曲部と貫通孔との数が異なることになる。そのため、ステータコアは、周方向におけるカシメ強度にばらつきが生じるおそれがある。
【0050】
これに対し、本実施例のステータコア23では、同ステータコア23を形成する複数の金属板(第1金属板40、第2金属板50)の各々に着目したときに、周方向に複数設けられたカシメ部34には折曲部41または貫通孔51のいずれか一方しか存在しない。すなわち、本実施例のステータコア23は、カシメ部34において折曲部41が形成される一方で貫通孔が形成されない第1金属板40と、カシメ部34において貫通孔51が形成される一方で折曲部形成されない第2金属板50とが積層され、第1金属板40と第2金属板50とが相互に結合される。これにより、モータ6の回転軸Pを中心に周方向に沿って奇数個のカシメ部34が均等に設けられた場合であっても、ステータコア23は、周方向におけるカシメ強度のばらつきを抑制することができる。
【0051】
折曲部41における折り曲げ深さdは、各金属板の厚さtよりも大きい。
【0052】
これにより、第1金属板40の折曲部41において同第1金属板40の平板部42よりも下方に突出する領域A1が存在するため、ステータコア23は、積層方向に隣り合う第1金属板40と第2金属板50を結合することができる。また、第1金属板40の折曲部41において、同第1金属板40に隣接する第2金属板50の平板部52よりも更に下方に突出する領域A2が存在するため、第1金属板40の折曲部41の領域A2が、第2金属板50を挟んで積層方向に並ぶ他の第1金属板40の溝部43に入り込むことにより、第2金属板50を挟んで並ぶ第1金属板40同士を結合することができる。これにより、ステータコア23を形成する全ての複数の金属板をカシメ部34によって一体化することができる。
【0053】
より好適には、折曲部41における折り曲げ深さdは、各金属板の厚さtの1.5~2倍の範囲に形成される。これにより、上述の領域A2の広さを十分に確保することができ、第2金属板50を間に挟んだ第1金属板40、40同士を十分に密着させることができる。
【0054】
第1金属板40の折曲部41における始点となる辺41a、41c間の距離(長さ)L1は、第2金属板50の貫通孔51を形成する側面51a~51dのうち、折曲部41の折り曲げ線41fと平行な側面51a、51c間の距離(長さ)L2よりも短い。
【0055】
これにより、ステータコア23は、積層方向において、第1金属板40の折曲部41の突出面41eと、第2金属板50の貫通孔51の側面51a、51cとが、接触することを防止できる。そのため、第1金属板40と第2金属板50との間に隙間が生じることを抑制し、第1金属板40、および第2金属板50の密着度を高めることができる。これにより、ステータコア23は、モータ6の回転軸P方向における厚さの増加を抑制することができる。また、ステータコア23は、製造工程を少なくすることができる。また、ステータコア23は、ステータコア23を製造するための製造コストの増加を抑制することができる。
【0056】
第1金属板40には、カシメ部34として複数の折曲部41が形成される。第2金属板50には、カシメ部34として複数の貫通孔51が形成される。複数の折曲部41、および複数の貫通孔51は、モータ6の回転軸Pを中心に周方向に沿って等間隔に形成される。
【0057】
これにより、ステータコア23は、周方向におけるカシメ強度のばらつきを抑制することができる。
【実施例0058】
次に、実施例2に係る圧縮機1について説明する。実施例2に係る圧縮機1は、ステータコア60の構成が、実施例1と異なる。実施例1に係る圧縮機1と同じ構成についての説明は省略する。
【0059】
ステータコア60は、図7に示すように、第1金属板70の折曲部71の始点となる辺71a、71c間の距離L3が、第2金属板80の貫通孔81の長さ(貫通孔81の側面81a、81c間の距離)L4よりも長い。そのため、第1金属板70の折曲部71の突出面71eが第2金属板80の貫通孔81の縁(側面81b、81d)に接触する。図7は、実施例2におけるステータコア60の積層状態を説明する断面図である。図7の断面図は、実施例1の図3の断面に対応する箇所における断面図である。
【0060】
図7に示す断面図において、折曲部71の突出面71eと第2金属板80との接触箇所(貫通孔81の側面81aの上端)と、第1金属板70の折曲部71の始点となる辺71aとの距離を「K」とし、折曲部41の折り曲げ角度を「θ1」とする。またステータコア60における、第1金属板70と第2金属板80との積層方向の隙間の大きさを「C1」とする。この場合、距離Kと、折り曲げ角度θ1と、隙間C1は、式(4)、および式(5)となる。
【0061】
C1=Ksinθ1・・・(4)
【0062】
Kcos=(L3-L4)/2・・・(5)
【0063】
式(4)、および式(5)を用いると、隙間C1は、式(6)となる。
【0064】
C1=sinθ1(L3-L4)/(2cosθ1)=tanθ1(L3-L4)/2・・・(6)
【0065】
このように、折曲部71が突出する側の第1金属板70の面と、第2金属板80との間に隙間C1が生じる。しかしながら、ステータコア60では、折曲部71が突出する側とは反対側の第1金属板70の面と、第2金属板80とは当接する。そのため、ステータコア60は、比較例に比べ、隣接する第1金属板70と第2金属板80の片側に隙間が生じないため、積層方向における厚さを薄くすることができる。
【0066】
上記実施例では、積層鉄心の一例としてステータコア23、60を用いて説明したが、これに限られることない。上記したカシメ部34を有する積層鉄心は、ロータ21のロータコアに用いられてもよい。すなわち、複数の金属板が積層されて形成されるロータコアは、上記するカシメ方法によって複数の金属板が結合されてもよい。また、上記実施例では、回転機の一例としてモータ6を用いて説明したが、積層鉄心が用いられる回転機は、発電機であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 圧縮機
6 3相モータ(モータ、回転機)
23、60、100 ステータコア
34 カシメ部
40、70 第1金属板
41、71 折曲部
41a、41c 折曲部の始点となる辺
41b、41d 側部
41e 突出面
41f 折り曲げ線
42 平板部
43 溝部
43a 底部
50、80 第2金属板
51、81 貫通孔
52 平板部
L1 41a、41c間の距離
L2 貫通孔の長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7