(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144619
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0258 20160101AFI20220926BHJP
H01M 8/1004 20160101ALI20220926BHJP
H01M 8/0263 20160101ALI20220926BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20220926BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/1004
H01M8/0263
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045698
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正人
(72)【発明者】
【氏名】木村 将之
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126AA08
5H126BB06
5H126EE03
5H126EE22
5H126EE24
5H126EE31
(57)【要約】
【課題】拡散層の電気抵抗を減少させることができる燃料電池を提供する。
【解決手段】電解質膜の両面に触媒層を接合した膜電極接合体と、ガス透過性を有する導電性部材からなり、一方の前記触媒層に当接する第1ガス拡散層と、他方の前記触媒層に当接する第2ガス拡散層と、前記第1ガス拡散層に当接する燃料ガスセパレータと、前記第2ガス拡散層に当接する酸化剤ガスセパレータと、前記燃料ガスセパレータの前記第1ガス拡散層側の面上に設けられた波状構造の燃料ガス流路リブ部と、前記酸化剤ガスセパレータの前記第2ガス拡散層側の面上に設けられた直線状構造の酸化剤ガス流路リブ部と、を備え、隣り合う前記燃料ガスリブ部の中心の中間に、前記酸化剤ガス流路リブ部の中心が重なるように、前記燃料ガスセパレータと前記酸化剤ガスセパレータとが積層されることを特徴とする、燃料電池。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両面に触媒層を接合した膜電極接合体と、
ガス透過性を有する導電性部材からなり、一方の前記触媒層に当接する第1ガス拡散層と、他方の前記触媒層に当接する第2ガス拡散層と、
前記第1ガス拡散層に当接する燃料ガスセパレータと、
前記第2ガス拡散層に当接する酸化剤ガスセパレータと、
前記燃料ガスセパレータの前記第1ガス拡散層側の面上に設けられた波状構造の燃料ガス流路リブ部と、
前記酸化剤ガスセパレータの前記第2ガス拡散層側の面上に設けられた直線状構造の酸化剤ガス流路リブ部と、を備え、
隣り合う前記燃料ガスリブ部の中心の中間に、前記酸化剤ガス流路リブ部の中心が重なるように、前記燃料ガスセパレータと前記酸化剤ガスセパレータとが積層されることを特徴とする、燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池に関して様々な技術が提案されている。
例えば特許文献1では、ガス拡散路の圧力損失を少なくすることによって十分なガス供給機能を確保し、高出力化も図り得る固体高分子形燃料電池が開示されている。
特許文献2では、コンパクトで出力密度の大きな固体高分子型燃料電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-048936号公報
【特許文献2】特開2000-315507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池のセパレータおよびガス拡散層には、ガス流路の圧力損失を少なくすることによって十分なガス供給機能を確保し、高出力化も図り得る積層方法が求められる。
特許文献1のアノード側およびカソード側の溝の組み合わせの場合、両極の流路のリブ部の中心が重なるか、もしくは距離が近い構成となった場合、どちらのリブとも重ならない領域において面圧が低下する。これによってガス拡散層の電気抵抗が増大するほか、面内の発電分布にムラが生じるため、濃度過電圧も増大する。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、拡散層の電気抵抗を減少させることができる燃料電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示においては、電解質膜の両面に触媒層を接合した膜電極接合体と、
ガス透過性を有する導電性部材からなり、一方の前記触媒層に当接する第1ガス拡散層と、他方の前記触媒層に当接する第2ガス拡散層と、
前記第1ガス拡散層に当接する燃料ガスセパレータと、
前記第2ガス拡散層に当接する酸化剤ガスセパレータと、
前記燃料ガスセパレータの前記第1ガス拡散層側の面上に設けられた波状構造の燃料ガス流路リブ部と、
前記酸化剤ガスセパレータの前記第2ガス拡散層側の面上に設けられた直線状構造の酸化剤ガス流路リブ部と、を備え、
隣り合う前記燃料ガスリブ部の中心の中間に、前記酸化剤ガス流路リブ部の中心が重なるように、前記燃料ガスセパレータと前記酸化剤ガスセパレータとが積層されることを特徴とする、燃料電池を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の燃料電池は、拡散層の電気抵抗を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の燃料電池の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、従来技術の燃料電池と本開示の燃料電池に1MPaの面圧を印加し、拡散層に印加される面圧分布を計測した結果を示す図である。
【
図3】
図3は、従来技術の燃料電池の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、拡散層の面積抵抗と面圧の関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示においては、電解質膜の両面に触媒層を接合した膜電極接合体と、
ガス透過性を有する導電性部材からなり、一方の前記触媒層に当接する第1ガス拡散層と、他方の前記触媒層に当接する第2ガス拡散層と、
前記第1ガス拡散層に当接する燃料ガスセパレータと、
前記第2ガス拡散層に当接する酸化剤ガスセパレータと、
前記燃料ガスセパレータの前記第1ガス拡散層側の面上に設けられた波状構造の燃料ガス流路リブ部と、
前記酸化剤ガスセパレータの前記第2ガス拡散層側の面上に設けられた直線状構造の酸化剤ガス流路リブ部と、を備え、
隣り合う前記燃料ガスリブ部の中心の中間に、前記酸化剤ガス流路リブ部の中心が重なるように、前記燃料ガスセパレータと前記酸化剤ガスセパレータとが積層されることを特徴とする、燃料電池を提供する。
【0010】
本開示によれば、一方のセパレータの溝が波状、対向するもう一方のセパレータの溝が直線状にそれぞれ形成される流路において、波状リブと直線状リブとがより多く当接するよう配置する。すなわち、本開示は、一方の極の隣り合うウェーブ流路リブの中心の中間に、対抗するもう一方の極の直線流路リブの中心が重なるようにセパレータを積層する構成を特徴とする。
本開示によれば、どちらのリブにも接しない拡散層の面積が最小限となり、局所的な低面圧領域の発生を抑制できる。面圧の低い領域が減少することで、拡散層の電気抵抗を減少させることができる。拡散層の電気抵抗が減少することで、抵抗過電圧が低下する。また、面内の発電分布のムラが緩和されることで、濃度過電圧も低減することができる。
【0011】
図3は、従来技術の燃料電池の構成の一例を示す図である。
図3の上図は従来技術の燃料電池の断面模式図の一例であり、
図3の下図は、上図の燃料電池をA方向からみた図である。
図1は、本開示の燃料電池の構成の一例を示す図である。
図1の上図は本開示の燃料電池の断面模式図の一例であり、
図1の下図は、上図の燃料電池をA方向からみた図である。
図2は、従来技術の燃料電池と本開示の燃料電池に1MPaの面圧を印加し、拡散層に印加される面圧分布を計測した結果を示す図である。
図4は、拡散層の面積抵抗と面圧の関係の一例を示す図である。
【0012】
図3に示す従来技術の燃料電池は、両極の流路のリブ部の中心が重なっているため、どちらのリブにも接しない拡散層の面積(白の領域)が増加し、
図2に示すように低面圧領域が増加する。
すなわち、従来技術では、両極の流路のリブ部の中心が近くなるようにセパレータを積層する構成となっている。従来では片側の極のみのリブ部により面圧が印加される(ギロチン状態と呼ばれる)領域が生じないように、両極の流路のリブ部の中心が重なるようにセパレータを積層する構成となっているが、こうした構造ではどちらのリブとも重ならない領域において、面圧が低下する。
【0013】
一方、
図1に示す本開示の燃料電池は、両極の流路のリブ部の中心がずれているため、どちらのリブにも接しない面積(白の領域)が最小限になる。これにより、
図2に示すように低面圧領域が減少する。
したがって、
図1に示すように片側のリブ部のみによって面圧がかかる領域を増やすことで、
図2に示すように従来技術と比較して局所的な低面圧領域の発生を抑制できることが分かった。
これにより
図4に示すように、拡散層の電気抵抗を減少させることができる。また、拡散層の電気抵抗を減少させることにより、抵抗過電圧の低減につながるほか、面内の発電分布のムラが緩和されることで、濃度過電圧も低減できる。
【0014】
本開示の燃料電池は、膜電極接合体と、第1ガス拡散層と、第2ガス拡散層と、燃料ガスセパレータと、酸化剤ガスセパレータと、燃料ガス流路リブ部と、酸化剤ガス流路リブ部と、を備える
【0015】
膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)は、電解質膜の両面に触媒層を接合してなる。
【0016】
電解質膜は、例えば、固体高分子電解質膜であってもよい。固体高分子電解質膜としては、例えば、水分が含まれたパーフルオロスルホン酸の薄膜等のフッ素系電解質膜、及び、炭化水素系電解質膜等が挙げられる。電解質膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)等であってもよい。
【0017】
電解質膜の両面に接合される触媒層は、一方がカソード触媒層であり、もう一方がアノード触媒層である。カソード触媒層及びアノード触媒層をまとめて触媒層と称する。
電極は、一方がカソードであり、もう一方がアノードである。
カソード(酸化剤極)は、カソード触媒層を含む。
アノード(燃料極)は、アノード触媒層を含む。
触媒層は、電気化学反応を促進する金属等の触媒、電解質、及び、電子伝導性を有するカーボン粒子等の担体を備えていてもよい。
触媒(触媒金属)としては、例えば、白金(Pt)、及び、Ptと他の金属とから成る合金(例えばコバルト、及び、ニッケル等を混合したPt合金)等を用いることができる。
上記触媒はカーボン粒子等の担体上に担持されており、各触媒層では、触媒金属を担持した担体(触媒担持担体)と電解質とが混在していてもよい。
【0018】
第1ガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材からなり、一方の触媒層に当接する。
第2ガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材からなり、他方の触媒層に当接する。
第1ガス拡散層は、アノード側拡散層であり、アノード触媒層に当接する。第2ガス拡散層は、カソード側拡散層であり、カソード触媒層に当接する。
第1ガス拡散層と第2ガス拡散層をまとめてガス拡散層又は拡散層と称する。カソード側拡散層及びアノード側拡散層をまとめてガス拡散層又は拡散層と称する。
ガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材であればよく、例えば、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、並びに、金属メッシュ、金属発泡体等の金属多孔質体等であってもよい。
【0019】
燃料ガスセパレータと酸化剤ガスセパレータとをまとめてセパレータと称する。
セパレータは、複数のリブ部と当該リブ部で隔てられた複数の反応ガス流路溝とを有する。
燃料ガスセパレータは、第1ガス拡散層に当接する。燃料ガスセパレータには、少なくとも第1ガス拡散層側の面上に波状構造の燃料ガス流路リブ部が設けられていればよく、両面上に波状構造の燃料ガス流路リブ部が設けられていてもよい。燃料ガスセパレータは、その燃料ガス流路リブ部と第1ガス拡散層とが当接していてもよい。
酸化剤ガスセパレータは、第2ガス拡散層に当接する。酸化剤ガスセパレータは、少なくとも第2ガス拡散層側の面上に直線状構造の酸化剤ガス流路リブ部が設けられていればよく、両面上に直線状構造の酸化剤ガス流路リブ部が設けられていてもよい。酸化剤ガスセパレータは、その酸化剤ガス流路リブ部と第2ガス拡散層とが当接していてもよい。
本開示においては、隣り合う燃料ガスリブ部の中心の中間に、酸化剤ガス流路リブ部の中心が重なるように、燃料ガスセパレータと酸化剤ガスセパレータとが積層されていればよい。
【0020】
本開示においては、燃料ガス、及び、酸化剤ガスをまとめて反応ガスと称する。アノードに供給される反応ガスは、燃料ガスであり、カソードに供給される反応ガスは酸化剤ガスである。燃料ガスは水素等であってもよい。酸化剤ガスは酸素、空気、乾燥空気等であってもよい。