(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144634
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】動作改善支援装置、プログラムおよび動作改善支援方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20220926BHJP
G06N 5/02 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G05B23/02 X
G06N5/02 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045719
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000153443
【氏名又は名称】株式会社 日立産業制御ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 隆司
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛史
(72)【発明者】
【氏名】柴田 亮二
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223AA11
3C223AA12
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223FF32
3C223GG01
(57)【要約】
【課題】システムの動作内容の改善を可能とする。
【解決手段】動作改善支援装置100は、動作改善の対象となる対象システム900の状態および当該状態における対象システムの動作を示す行動則(行動則データベース151参照)を、変換ルール(変換ルールデータベース152参照)に従って知識表現化された状態および知識表現化された動作を含む知識表現化された行動則に変換する知識表現化部114と、知識表現化された動作に対する変更を受け付ける行動則改善部115と、知識表現化された状態および変更された知識表現化された動作を含む知識表現化された行動則を、変換ルールに従って改善行動則に逆変換する行動則逆変換部116とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作改善の対象となる対象システムの状態および当該状態における前記対象システムの動作を示す行動則を、変換ルールに従って知識表現化された状態および知識表現化された動作を含む知識表現化された行動則に変換する知識表現化部と、
前記知識表現化された動作に対する変更を受け付ける行動則改善部と、
前記知識表現化された状態および変更された前記知識表現化された動作を含む前記知識表現化された行動則を、前記変換ルールに従って改善行動則に逆変換する行動則逆変換部とを備える
ことを特徴とする動作改善支援装置。
【請求項2】
前記状態および前記動作は、数値または数値の組で示され、
前記変換ルールは、前記数値または前記数値の組を、言語、数値範囲、または数値の組の範囲に変換するルールであり、
前記知識表現化された状態および前記知識表現化された動作は、前記言語、前記数値範囲、または前記数値の組の範囲で示され、
前記改善行動則は、前記数値、前記数値の組、前記数値範囲、または前記数値の組の範囲で示される状態と、当該状態における前記対象システムの前記数値、前記数値の組、前記数値範囲、または前記数値の組の範囲で示される動作を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の動作改善支援装置。
【請求項3】
前記変換ルールは、複数の前記動作を1つの前記知識表現化された動作に変換するルールを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の動作改善支援装置。
【請求項4】
前記行動則は、前記対象システムが前記状態における前記動作をする動作確率を含み、
前記知識表現化部は前記行動則を前記知識表現化された行動則に変換する際に、前記状態における前記動作の動作確率を、前記変換ルールに従った変換後の前記知識表現化された状態における前記知識表現化された動作の動作確率とし、
前記行動則改善部は、前記知識表現化された行動則に含まれる動作確率の変更を受け付ける
ことを特徴とする請求項1に記載の動作改善支援装置。
【請求項5】
前記知識表現化部は、知識表現化された変換ルールに従って前記知識表現化された状態および前記知識表現化された動作を、異なる知識表現化された状態および異なる知識表現化された動作を含む異なる知識表現化された行動則に変換し、
前記行動則改善部は、前記異なる知識表現化された動作に対する変更を受け付け、
前記行動則逆変換部は、前記異なる知識表現化された状態および変更された前記異なる知識表現化された動作を含む前記知識表現化された行動則を、前記変換ルールおよび前記知識表現化された変換ルール従って前記改善行動則に逆変換し、
前記知識表現化された変換ルールは、前記言語、前記数値範囲、または前記数値の組の範囲を異なる言語、異なる数値範囲、または異なる数値の組の範囲に変換するルールである
ことを特徴とする請求項2に記載の動作改善支援装置。
【請求項6】
前記知識表現化された変換ルールは、前記複数の知識表現化された動作を1つの前記異なる知識表現化された動作に変換するルールを含む
ことを特徴とする請求項5に記載の動作改善支援装置。
【請求項7】
前記対象システムに備わるセンサおよび動作機器から得られる数値データを前記数値または前記数値の組として取得するデータ収集部と、
取得された前記状態および前記動作から前記行動則を生成する行動則生成部とをさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載の動作改善支援装置。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1~7の何れか1項に記載の動作改善支援装置として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
動作改善支援装置の動作改善支援方法であって、
前記動作改善支援装置は、
動作改善の対象となる対象システムの状態および当該状態における前記対象システムの動作を示す行動則を、変換ルールに従って知識表現化された状態および知識表現化された動作を含む知識表現化された行動則に変換するステップと、
前記知識表現化された動作に対する変更を受け付けるステップと、
前記知識表現化された状態および変更された前記知識表現化された動作を含む前記知識表現化された行動則を、前記変換ルールに従って改善行動則に逆変換するステップとを実行する
動作改善支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象とするシステムの動作や行動、制御を改善する動作改善支援装置、プログラムおよび動作改善支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントや生産ライン、ロボットなどのシステム(対象システム)を制御する一般的な手法の一つとして、システムの状態に応じてシステムの動作内容(行動内容、制御内容)を規定するものがある。例えば特許文献1には、機器の状態または機器が動作する環境の状態を示す状態情報に基づいてルールベースで機器の動作の枠組みを決定し、当該動作の内容を定めるパラメータを算出して動作を実行するよう当該機器に指示する制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
システムの動作や行動の制御を行うためには、システムの状態の定義や、定義した状態における動作内容の記述が必要である。しかしながら、システムの操作者がシステムの状態や行動内容を記述することは、技術的にも時間的にも多大な労力を要する。なお、この行動内容の記述は特許文献1のルールベースに相当し、行動則または動作則と記す。
【0005】
例えば、ロボットが物を運ぶ動作(操作)について、物を自分の身体で運ぶ操作者は自分の身体をどのように動かせばよいかは分かる。しかしながら、ロボットを動作させるための関節にある各種アクチュエータに対する入力信号をどのように制御すればよいかは分からないため、操作者がロボットの動作を記述することは困難である。また仮にシステム(例えばロボット)が稼働しているとしても、操作者がシステムの動作を改善する(行動則/動作則を改善する)のは困難である。
【0006】
本発明は、このような背景を鑑みてなされたものであり、システムの操作者がシステムの動作内容の改善を可能とする動作改善支援装置、プログラムおよび動作改善支援方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するため、本発明に係る動作改善支援装置は、動作改善の対象となる対象システムの状態および当該状態における前記対象システムの動作を示す行動則を、変換ルールに従って知識表現化された状態および知識表現化された動作を含む知識表現化された行動則に変換する知識表現化部と、前記知識表現化された動作に対する変更を受け付ける行動則改善部と、前記知識表現化された状態および変更された前記知識表現化された動作を含む前記知識表現化された行動則を、前記変換ルールに従って改善行動則に逆変換する行動則逆変換部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、システムの操作者がシステムの動作内容の改善を可能とする動作改善支援装置、プログラムおよび動作改善支援方法を提供することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る動作改善支援装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る行動データベースのデータ構成図である。
【
図3】第1の実施形態に係る行動則のデータ構成図である。
【
図4】第1の実施形態に係る遷移確率を含む行動則のデータ構成図である。
【
図5】第1の実施形態に係る品質指標の変換ルールを示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係る品質指標の傾きの変換ルールを示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係る操作量の変換ルールを示す図である。
【
図8】第1の実施形態に係る変換ルール定義画面の画面構成図である。
【
図9】第1の実施形態に係る行動則のデータ構成図である。
【
図10】第1の実施形態に係る行動則のデータ構成図である。
【
図11】第1の実施形態に係る知識表現化処理のフローチャートである。
【
図12】第1の実施形態に係る行動則のデータ構成図である。
【
図13】第1の実施形態に係る行動則表示画面の画面構成図である。
【
図14】第1の実施形態に係る行動則改善画面の画面構成図である。
【
図15】第1の実施形態に係る逆変換されて生成された行動則のデータ構成図である。
【
図16】第1の実施形態に係る行動則改善処理のフローチャートである。
【
図17】第2の実施形態に係る倒立振り子を備える台車を説明するための図である。
【
図18】第2の実施形態に係る行動則生成部が生成した行動則を示す図である。
【
図19】第2の実施形態に係る行動則の角度および操作量を示すグラフである。
【
図20】第2の実施形態に係る第1レベルへの変換ルールを示す図である。
【
図21】第2の実施形態に係る第1レベルの行動則を示す図である。
【
図22】第2の実施形態に行動則の操作量を示すグラフである。
【
図23】第2の実施形態に係る第2レベルへの変換ルールを示す図である。
【
図24】第2の実施形態に係る第2レベルの行動則を示す図である。
【
図25】第2の実施形態に係る行動則の操作量を示すグラフである。
【
図26】第2の実施形態に係る第3レベルへの変換ルールを示す図である。
【
図27】第2の実施形態に係る第3レベルの行動則を示す図である。
【
図28】第2の実施形態に係る変換ルール定義画面の画面構成図である。
【
図29】第2の実施形態に係る知識表現化処理のフローチャートである。
【
図30】第2の実施形態に係る行動則表示画面の画面構成図である。
【
図31】第2の実施形態に係る行動則改善画面の画面構成図である。
【
図32】第2の実施形態に係る行動則改善処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪動作改善支援装置の概要≫
以下に本発明を実施するための形態(実施形態)における動作改善支援装置について説明する。動作改善支援装置は対象システムの動作を取得して行動則を生成する。対象システムは例えば、プラントや生産ライン、ロボットである。行動則は対象システムの状態と当該状態における対象システムの動作とを示す。
状態や動作を含む行動則は、計算機内部で処理可能な記号や数値で表現され、対象システムの操作者にとって理解が容易とは限らない。また、ロボットなどの動作で生成される行動則は各種アクチュエータの力の入れ方などが高速で細かく、人(操作者)の動作とは異なるため、操作者が行動則を改善することができないという問題がある。
【0011】
動作改善支援装置は行動則を操作者が理解しやすいように言語化し知識として表現する(知識表現化する)。対象システムの熟練操作者は、言語化された行動則を理解することが可能となり、対象システムの動作則を改善することが可能となる。動作則つまりは対象システムの動作が改善することで、例えば対象システムの作業効率が上がったり、工作精度が向上したり、消費電力が下がったりする。また、プラントや生産ラインにおけるマニュアル操作において改善された動作則を参照することで、新人の操作者であっても熟練操作者と同様な動作(操作)を行うことができるようになる。
【0012】
≪動作改善支援装置の構成≫
図1は、第1の実施形態に係る動作改善支援装置100の機能構成を示すブロック図である。動作改善支援装置100はコンピュータであって、制御部110、記憶部150、および入出力部170を含んで構成される。
入出力部170には、ディスプレイやキーボード、マウスなどのユーザインタフェース機器(不図示)が接続される。入出力部170は対象システム900との通信データを送受信する。対象システム900はプラントや生産ライン、ロボットなどであり、自身の状態および動作(行動)に係る情報を動作改善支援装置100に送信する。
【0013】
制御部110はCPU(Central Processing Unit)を含んで構成され、データ収集部111、行動則生成部112、変換ルール定義部113、知識表現化部114、行動則改善部115、および行動則逆変換部116を備える。
記憶部150はROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)などから構成される。記憶部150には、行動データベース160、行動則データベース151、変換ルールデータベース152、およびプログラム158などが記憶される。
【0014】
行動則データベース151、および変換ルールデータベース152には、後記する行動則、および変換ルールがそれぞれ格納される。プログラム158は、知識表現化処理(後記する
図11参照)や行動則改善処理(後記する
図16)の処理の記述を含む。以下、動作改善支援装置100の処理順序に沿って制御部110および記憶部150を構成する要素を説明する。
【0015】
≪行動則の取得≫
対象システム900は、例えばプラントや生産ライン、ロボットであって、状態を有する。状態の例としては、プラントにおける原材料の流量や温度などがあり、ロボットにおける関節の角度などがある。対象システムは状態に応じて動作(行動)を行う。動作の例としては、プラントにおける操作者による原材料の温度調整の操作やロボットの関節の動作(制御)などがある。動作は対象システム900が自律的に行うものとは限らず、操作者による操作/調整を含む。対象システム900は、状態や動作を動作改善支援装置100に送信する。
【0016】
なお、第1の実施形態において対象システム900が送信した状態や動作は、数値または数値の組(複数の数値)で示されるとする。状態の数値の例には原材料の流量や温度、関節の角度があり、動作の数値の例にはバルブ開閉の操作量やアクチュエータのトルクがある。以下、第1の実施形態では、動作は対象システムに対する操作であり、操作量の数値で示されるとする。
【0017】
データ収集部111は、対象システム900から受信した状態や動作を行動データベース160(後記する
図2参照)に格納する。
図2は、第1の実施形態に係る行動データベース160のデータ構成図である。行動データベース160は例えば表形式のデータであって、1つの行(レコード)は対象システム900が送信した数値または数値の組のデータを示す。各レコードは取得日時161、遷移元状態162、遷移後状態163、および操作量164の列(属性)を含む。
【0018】
取得日時161は、状態や操作を受信した日時である。遷移元状態162は操作量164の操作を行う前の対象システム900の状態である。遷移後状態163は遷移元状態162において操作量164の操作を行った後の対象システム900の状態である。各レコードは、遷移元状態162において操作量164の操作を行った結果、遷移後状態163に遷移したことを示している。
【0019】
行動則生成部112は、行動データベース160に格納されたデータをもとに対象システム900の行動則210(後記する
図3参照)を生成して行動則データベース151に格納する。
図3は、第1の実施形態に係る行動則210のデータ構成図である。行動則210は例えば表形式のデータであって、1つの行(レコード)は対象システム900のある状態における動作を示す。各レコードは識別番号211(
図3では「#」と記載)、遷移元状態212、遷移後状態213、および操作量214の列(属性)を含む。
【0020】
識別番号211はレコードの識別情報である。遷移元状態212、遷移後状態213、および操作量214は、行動データベース160(
図2参照)の遷移元状態162、遷移後状態163、および操作量164と同様である。
行動則生成部112は、行動データベース160の各レコードを遷移元状態162、遷移後状態163、および操作量164のそれぞれの値が近いレコードのグループに分ける。次に行動則生成部112は、各グループに含まれるレコードの遷移元状態162、遷移後状態163、および操作量164の平均値または中間値を算出し、算出結果を行動則210のレコードとする。
【0021】
行動データベース160の各レコードは、対象システム900が実際に行った遷移元状態162における操作量164の操作(動作)を示している。これに対して、行動則210の各レコードは、遷移元状態212における代表的な操作の操作量214を示しており、対象システムの動作の規則、つまりは行動則/動作則を示していることになる。
【0022】
なお、遷移元状態162が近いにもかかわらず、操作量164が異なる複数のグループが存在した場合には、行動則生成部112はグループに含まれるレコード数の割合に応じた遷移確率をもつ複数のレコードを行動則のレコードとしてもよい。
図4は、第1の実施形態に係る遷移確率215を含む行動則210Aのデータ構成図である。
図3記載の行動則210と比較して遷移確率215の属性が追加される。対象システム900の遷移元状態212における動作は、遷移確率215に応じて複数の操作量214の操作に分かれる。行動則210は遷移確率215が全て1である行動則210Aと見なすこともできる。
【0023】
また、対象システム900の一連の操作で、一連の操作前の同じ状態から一連の操作後に同じ状態に遷移する一連の操作が複数ある場合には、行動則生成部112は有用な一連の操作を残すように行動則210Aを生成してもよい。有用であるとは、例えば一連の操作によるコストが低い、効率が高いなどである。部品を取り付けるロボットの例でいえば、消費電力が少ない、取り付ける時間が短いという一連の操作(動作)が有用である。
【0024】
動作改善支援装置100は、熟練操作者による行動則210,210Aの改善を支援する。行動則210,210Aは、数値で表現されているため、熟練操作者にとって理解しやすいとは限らない。動作改善支援装置100は行動則を熟練操作者が理解しやすいように言語化(知識表現化)し、熟練操作者は言語化された行動則を書き換えて改善する。以下では、状態(遷移元状態212、遷移後状態213)は「品質指標」と「品質指標の傾き」の2つの数値(数値の組)で示され、操作(操作量)は1つの数値で示されるとして説明を続ける。
【0025】
≪行動則の知識表現化≫
行動則を知識表現化するために、状態および操作の数値は離散化され、さらに言語化される。離散化とは、数値を複数の範囲で区切って分けることである。言語化とは、数値を言語(番号を含む自然言語)に変換することである。離散化および言語化には変換ルール(変換表)が用いられる。なお言語化(知識表現化)には、数値を数値範囲に変換することを含めてもよい。
【0026】
図5は、第1の実施形態に係る品質指標の変換ルール310を示す図である。変換ルール310は表形式のデータであって、変換ルールデータベース152(
図1参照)に格納される。変換ルール310の行(レコード)は品質指標の数値がどの番号に変換されるかを示す。例えばレコード319は、-1.25以上で-0.75未満の品質指標は「2」という番号に変換されることを示す。またレコード319は、-1.25以上で-0.75未満の品質指標(数値)を-1.25以上で-0.75未満という数値範囲に変換すると見なしてもよい。
【0027】
図6は、第1の実施形態に係る品質指標の傾きの変換ルール320を示す図である。変換ルール320は表形式のデータであって、変換ルールデータベース152に格納される。変換ルール320の行(レコード)は品質指標の傾きの数値がどの番号および何の言語に変換されるかを示す。例えばレコード329は、-0.6以上で-0.3未満の品質指標の傾きは「2」という番号、または「中程度の減少中」という言語に変換されることを示す。
【0028】
図7は、第1の実施形態に係る操作量の変換ルール330を示す図である。変換ルール330は表形式のデータであって、変換ルールデータベース152に格納される。変換ルール330の行(レコード)は操作量の数値がどの番号および何の言語に変換されるかを示す。例えばレコード339は、-0.1以上で-0.1未満の操作量は「2」という番号、または「維持」という言語に変換されることを示す。
【0029】
変換ルール310,320,330は、動作改善支援装置100の開発者によって定義(設定)される。開発者は例えば対象システムのメーカと相談して定義してもよい。変換ルール定義部113(
図1参照)は、開発者の指示を受け付けて変換ルール310,320,330を生成する。
【0030】
図8は、第1の実施形態に係る変換ルール定義画面410の画面構成図である。変換ルール定義画面410には、定義中の変換ルール320,330(
図6、
図7参照)が表示されている。開発者は品質指標の傾きや操作量、言語の欄を編集することで、変換ルール320,330を定義(設定)することができる。なお、品質指標の変換ルール310(
図5参照)については、畳まれており表示されていない。開発者が「品質指標」のラベル隣にある右向きの三角形をクリックすると下向きの三角形になり畳まれていた変換ルール310が開かれ(表示され)定義できるようになる。
【0031】
開発者は変換ルールの編集を終えると、変換ルール定義画面410の下側にある「完了」ボタンをクリックする。変換ルール定義部113は定義された変換ルールを変換ルールデータベース152(
図1参照)に格納する。変換ルール定義部113は、このような開発者による変換ルールの設定を受け付けて変換ルールを生成する。
【0032】
知識表現化部114(
図1参照)は、行動則210,210Aを番号で表現される行動則220(後記する
図9参照)に変換する。また知識表現化部114は、行動則210,210A,220を、言語を含む行動則230(後記する
図10参照)に変換する。
【0033】
図9は、第1の実施形態に係る行動則220のデータ構成図である。知識表現化部114は変換ルール310,320,330を参照して、行動則210(
図3参照)を行動則220に変換する。知識表現化部114は、行動則210から遷移後状態213を除き、遷移元状態212に含まれる品質指標、品質指標の傾き、および操作量214の数値を番号に変換して、行動則220を生成する。状態番号の欄は遷移元状態の識別番号である。
【0034】
図10は、第1の実施形態に係る行動則230のデータ構成図である。知識表現化部114は変換ルール320,330を参照して、行動則220(
図9参照)を行動則230に変換する。知識表現化部114は、行動則220の品質指標の傾きおよび操作量の番号を言語に変換して、行動則230を生成する。
【0035】
知識表現化部114は行動則220ではなく、行動則210から行動則230に変換してもよい。また、知識表現化部114は、数値を全て番号や言語に変換するのではなく、数値範囲に変換してもよい。数値範囲とは、変換ルール310,320,330にある品質指標、品質指標の傾きおよび操作量の欄(列)にある数値範囲である。行動則240(後記する
図12参照)の品質指標は、番号ではなく数値範囲に変換された例である。
【0036】
図11は、第1の実施形態に係る知識表現化処理のフローチャートである。
図11を参照しながら行動則210の知識表現化(言語化)処理を説明する。
ステップS11において知識表現化部114は、行動則210を知識表現化して番号で表現された行動則220に変換する。
ステップS12において知識表現化部114は、行動則220を表示する(後記する行動則240の表示画面を示す
図13参照)。
【0037】
ステップS13において知識表現化部114は、動作改善支援装置100の利用者である熟練操作者に上位知識表現化するか否かを問い合わせ、上位知識表現化するならば(ステップS13→YES)ステップS14に進み、上位知識表現化しないならば(ステップS13→NO)知識表現化処理を終える。上位知識表現化とは、行動則をより理解しやすい知識表現に変換することである。
ステップS14において知識表現化部114は、行動則220を上位の知識表現化として番号を言語化して行動則230に変換する。
ステップS15において知識表現化部114は、行動則230を表示する。
【0038】
図12は、第1の実施形態に係る行動則240のデータ構成図である。行動則240は、操作確率を含む行動則210Aが知識表現化された行動則である。品質指標は数値範囲に変換されている。
図13は、第1の実施形態に係る行動則表示画面420の画面構成図である。行動則表示画面420には、変換された生成された行動則240が表示されている。
【0039】
熟練操作者は、行動則表示画面420を閲覧して、対象システム900の行動則が適切かを確認する。行動則は状態や操作量の数値ではなく、数値範囲や言語を含む知識表現化されており、熟練操作者にとって理解が容易になっている。
熟練操作者が行動則を修正すべきと判断した場合には、行動則表示画面420(
図13参照)の下側にある「編集」ボタンをクリックして行動則改善画面430(後記する
図14参照)に移って行動則を改善(対象システム900の動作を改善)する。
【0040】
≪行動則の改善≫
行動則改善部115は、熟練操作者の行動則の改善を受け付ける。
図14は、第1の実施形態に係る行動則改善画面430の画面構成図である。行動則表示画面420(
図13参照)の下側にある「編集」ボタンがクリックされると行動則改善画面430に遷移する。
図14では、行動則の1行目と2行目の操作確率を0.6および0.4(
図13参照)から0.0および1.0(
図14では下線を付与)に変更(改善)している。これは熟練操作者が、品質指標が1.25未満で品質指標の傾きが少し減少中の場合には操作量を下げるのが正しく、維持するのは不適切であると判断して、維持する操作をしないように操作確率を0.0とした結果である。
【0041】
行動則改善部115は、このような熟練操作者による知識表現化された動作や操作確率の変更指示を受け付けて行動則を改善(変更)する。行動則改善部115は知識表現化された状態の変更を受け付けてもよい。
熟練操作者は行動則の改善を終えると、行動則改善画面430の下側にある「完了」ボタンをクリックする。行動則改善部115は改善された行動則を行動則データベース151に格納する。
【0042】
行動則逆変換部116は、知識表現化され変更された行動則を数値範囲で表現される行動則に逆変換する。詳しくは、行動則逆変換部116は番号や言語、数値範囲で表現されている品質指標、品質指標の傾きおよび操作量を、変換ルール310,320,330(
図5~
図7参照)を参照して数値範囲に変換する。
【0043】
図15は、第1の実施形態に係る逆変換されて生成された行動則250のデータ構成図である。行動則250は
図14に記載の行動則が逆変換された結果の行動則(改善行動則)である。例えば行動則逆変換部116は、状態番号「1」の品質指標の傾きにある「少し減少中」を変換ルール320(
図6参照)の3つ目のレコードを参照して「≧ 0.3 & < 0」に変換する。行動則逆変換部116はこのようにすることで、知識表現化された状態や動作を数値範囲に変換して数値で表現された行動則に変換(逆変換)する。
【0044】
図16は、第1の実施形態に係る行動則改善処理のフローチャートである。
ステップS21において行動則改善部115は、行動則改善画面430を表示して行動則240(
図12、
図14参照)における操作量や操作確率の改善(変更)を受け付ける。
ステップS22において行動則逆変換部116は、変更された行動則を数値範囲で表現される行動則250に逆変換する。
【0045】
≪第1の実施形態の特徴≫
動作改善支援装置100は行動則を人(熟練操作者)が理解しやすいように言語化し知識として表現する(知識表現化する)。言語化(知識表現化)には語句の他に、1・2・3やA・B・Cなどの番号(ラベル)、数値範囲も含む。対象システムの熟練操作者は、言語化された行動則を理解することが可能となり、対象システムの動作を改善することが可能となる。
【0046】
改善され逆変換された行動則は、対象システム900の操作に用いることができる。一例として対象システム900の制御装置は、行動則を参照して対象システム900を操作する。例えば、品質指標が-1.25未満で品質指標の傾きが-0.3以上で0未満である場合には、制御装置は-0.1未満の操作を行うように制御する(
図15記載の行動則250の2つ目のレコード参照)。
【0047】
操作者が介在するようにしてもよい。例えば、品質指標が-1.25未満で品質指標の傾きが-0.3以上で0未満である場合には、制御装置は-0.1未満の操作を行うように操作者に推奨する。操作者は推奨された操作量を参考にして、実際の操作を行う。
【0048】
≪第2の実施形態≫
第1の実施形態では、数値で表現される行動則を番号や言語、数値範囲で表現される行動則に変換している。言語については複数のレベルの言語化があって、熟練操作者の理解のレベルに応じたレベルの表現に変換してもよい。また、状態や操作量も熟練操作者に応じた粒度で数値範囲の区切るようにしてもよい。以下では、対象システム900がロボットである実施形態を説明する。
【0049】
図17は、第2の実施形態に係る倒立振り子を備える台車601を説明するための図である。台車601は、回転できるように取り付けられた剛体の振り子602を備える。振り子602は初期の位置(角度)にある振り子を示している。
台車601の制御装置は台車601に対して左右の力を入力して、台車601を左右に動かすことができ、振り子602を揺らすことができる。振り子602Aは、真上(頂点)近くまで揺らされた状態の振り子を示している。破線で示す真上を0度として振り子602Aの角度をθとする。制御装置は台車601に左右の力を入力することで台車601を移動する操作(制御)を行い、振り子602を頂点の位置(θ=0)まで動かして倒立させ、倒立状態を保つように操作する。
【0050】
図18は、第2の実施形態に係る行動則生成部112が生成した行動則710を示す図である。状態(遷移前状態)は角度(θ)、角速度、台車の位置(
図18では台車位置と記載)の3つの数値で示され、操作量である台車への入力は1つの数値で示される。台車への入力は10ms単位で行われる。行動則710は340の行(レコード)を含んでおり、操作開始から3400msで振り子が倒立状態になったことになる。なお、行動則710を含め、以下に説明する行動則720,730,740(後記する
図21、
図24、
図27参照)は行動則データベース151(
図1参照)に記憶される。
【0051】
図19は、第2の実施形態に係る行動則710の角度および操作量を示すグラフ611,612である。グラフ611は振り子の角度を示し、縦軸(左)が角度(θ)、横軸が時間を示す。点線のグラフ612は操作量(台車への入力)を示し、縦軸(右)が操作量、横軸が時間を示す。時刻Tは3400msであって、振り子が倒立状態になった時刻である。
【0052】
第1の実施形態と同様にして、行動則710に対して340回の動作(操作)の知識表現化が可能となる。しかしながら10msごとの制御は、人(操作者)が自ら台車を動かして振り子を倒立させる場合の行動知識に比べて高速で細か過ぎるため、自らの行動知識を用いて改善することができない。そこで人の行動知識に近づけて行動則を改善できるようにするための行動則の変換手法を以下に説明する。
【0053】
≪第1レベルの行動則への変換≫
図20は、第2の実施形態に係る第1レベルへの変換ルール810を示す図である。変換ルール810はテキストで表現しているが、第1レベルの行動則への変換処理を示すコマンド列で表現してもよい。例えば#1(No.1または項番1の意味)は「スパイククレンジング、前後連結」としてもよい。「スパイククレンジング」は一般的なデータ分析処理によるコマンドを作成して実行可能であり、「前後連結」はクレンジングで削除したデータの前後のデータを連結するコマンドを作成して実行可能である。なお、変換ルール810を含め、以下に説明する変換ルール820,830(
図23、
図26参照)は変換ルールデータベース152(
図1参照)に記憶される。
【0054】
図21は、第2の実施形態に係る第1レベルの行動則720を示す図である。知識表現化部114が変換ルール810(
図20参照)を参照して、行動則710(
図18参照)を行動則720に変換する。
行動則710と比較して行動則720の状態の表現は、台車の位置がなくなり、振り子の角速度、位置、および角度で表現されている。また、角速度は0、0前、極大値後付近などという言語で表現され、位置は最下点、停留点後付近などという言語で表現される。これは、変換ルール810の#7、#8、#9により変換された結果である。
【0055】
行動則の操作量(台車601への入力)は、入力数値ではなく、大きさ、変化量、変化の増減、および時間で表現されている。大きさは向きと大/中/小/0で、変化量は大/中/小/なしで、変化の増減は増加/減少/一定などの言語で表現される。これは、変換ルール810の#4、#5、#6により変換された結果である。なお、大/中/小や0前、最下点後付近などの範囲を示す言葉の意味(数値範囲)は、変換ルール810と合わせて定義(設定)される。他の変換ルールにおける、例えば強く/普通/弱くなどについても同様である。
【0056】
変換ルール810の#1によりスパイク的な入力は除かれて連結され、#2、#3により符号が変わる時点や入れ方の不連続点を別の操作と見なす点と見なされることで、行動則710の複数の行(操作)がまとめられる。換言すれば、操作時間が長くなる(操作の粒度が大きくなる)ように行動則710は変換される。行動則710では340回の操作であったが、行動則720は22回の操作に削減されており、人(操作者)に理解できる量の行動則となっている。
【0057】
図22は、第2の実施形態に行動則720の操作量を示すグラフ622である。点線で示され行動則710の操作量を示すグラフ612と比較して、太線で示され行動則720を示すグラフ622は細かい変化がなく人が理解しやすくなっている。
操作者が第1レベルの行動則720を理解でき行動改善可能であれば、行動則の知識表現化はレベル1で終わる。操作者が第1レベルの行動則720を理解できず行動改善が不可能であれば、知識表現化部114は行動則720を第2レベルに変換する。
【0058】
≪第2レベルの行動則への変換≫
図23は、第2の実施形態に係る第2レベルへの変換ルール820を示す図である。変換ルール820の#1では、停留点と最下点の間でかつ短い時間間隔で相反する動作を平均の動作で置き換えている。また#2では、短い時間間隔かつ力の大きさが小の操作は除かれている。このようにすることで、操作の粒度が大きく(操作時間が長く)なり、行動則の量(行数)を削減でき、操作者が理解しやすい行動則に変換することができるようになる。
【0059】
図24は、第2の実施形態に係る第2レベルの行動則730を示す図である。知識表現化部114が変換ルール820を参照して、行動則720を行動則730に変換する。
図25は、第2の実施形態に係る行動則730の操作量を示すグラフ632である。以下、変換の例をいくつか説明する。
変換ルール820の#2により、行動則720の#5は除かれる。
変換ルール820の#3により、行動則720の#9と#10は、行動則730の#6に併合される。操作量のグラフにおいては、グラフ622(
図12参照)の部分グラフP9,P10がグラフ632(
図25参照)の部分グラフQ6に併合される。
【0060】
変換ルール820の#4により、行動則720の#3は、行動則730の#2に変換される。操作量のグラフにおいては、グラフ622の部分グラフP3とグラフ632の部分グラフQ2とが対応する。
変換ルール820の#5により、行動則720の#9と#10は、行動則730の#6に併合される。操作量のグラフにおいては、グラフ622(
図12参照)の部分グラフP9,P10がグラフ632(
図25参照)の部分グラフQ6に併合される。
【0061】
変換ルール820により操作の粒度が大きくなっている。行動則720では22回の操作であったが、行動則730は12回の操作に削減されており、操作者による理解がしやすくなっている。なお変換ルール820は、知識表現化された行動則720をさらに上位の(理解しやすい)行動則730に変換するルールなので、知識表現化された変換ルールとも記す。
操作者が第2レベルの行動則730を理解でき行動改善可能であれば、行動則の知識表現化はレベル2で終わる。操作者が第2レベルの行動則730を理解できず行動改善が不可能であれば、知識表現化部114は行動則730を第3レベルに変換する。
【0062】
≪第3レベルの行動則への変換≫
図26は、第2の実施形態に係る第3レベルへの変換ルール830を示す図である。
図27は、第2の実施形態に係る第3レベルの行動則740を示す図である。変換ルールで830では操作の粒度は変えず、一般的な表現に置き換えている。例えば、操作の順番を明示したり(変換ルール830の#1参照)、言葉の表現を変換(変換ルールの830の#2、#3、#4参照)したりしている。これにより、操作者がさらに理解しやすい行動則に変換している。なお変換ルール830は、知識表現化された変換ルールである。
【0063】
≪変換ルールの設定≫
図28は、第2の実施形態に係る変換ルール定義画面440の画面構成図である。変換ルール定義画面440には、定義中の第1レベルへの変換ルールが表示されている。なお
図20記載の第1レベルの変換ルール810と比較すると、
図28では#4の「+中」、「-中」および#5の「中」がない。変換ルール定義画面440を用いて開発者は変換ルール810を変更/設定することができる。他のレベルの変換ルール820,830についても同様である。
【0064】
≪知識表現化処理≫
図29は、第2の実施形態に係る知識表現化処理のフローチャートである。
図29を参照しながら行動則710の知識表現化(言語化)処理を説明する。なお以下で変数iは知識表現のレベルを示す変数であり、変数Nは熟練操作者が選択した行動側のレベルを示す変数である。
ステップS41において知識表現化部114は、変数iを1とする。
【0065】
ステップS42において知識表現化部114は、レベルiへの変換ルールを参照してレベルi-1の行動則をレベルiの行動則に変換する。なおレベル0の行動則とは行動則710(
図18参照)のことである。例えばiが1ならば、知識表現化部114は変換ルール810(
図20参照)を用いてレベル0の行動則710をレベル1の行動則720(
図21参照)に変換する。
【0066】
ステップS43において知識表現化部114は、レベルiの行動則を表示する。
図30は、第2の実施形態に係る行動則表示画面450の画面構成図である。行動則表示画面450には、変換された生成されたレベル3(i=3)の行動則740が表示されている。
【0067】
図29に戻って、ステップS44において知識表現化部114は、操作者に上位知識表現化するか否かを問い合わせる。知識表現化部114は、iが3より小さく上位知識表現化するならば(ステップS44→YES)ステップS45に進み、iが3以上または上位知識表現化しないならば(ステップS44→NO)ステップS46に進む。
ステップS45において知識表現化部114は、iに1を加えて、ステップS42に戻る。
ステップS46において知識表現化部114は、Nをiとする。
【0068】
知識表現化処理により、行動則710は操作者が望むレベル(N)まで知識表現化される。操作者は、行動則表示画面450(
図30参照)を閲覧して、対象システム900の行動則が適切か否かを確認する。行動則は状態や操作量の数値ではなく、一般的な言語を含む知識表現化されており、理解が容易になっている。操作者が行動則を修正すべきと判断した場合には、行動則表示画面450の下側にある「編集」ボタンをクリックして行動則改善画面460(後記する
図31参照)に移って行動則を改善(動作改善)する。
【0069】
≪行動則の改善≫
行動則改善部115は、操作者の行動則の改善を受け付ける。
図31は、第2の実施形態に係る行動則改善画面460の画面構成図である。行動則表示画面450(
図30参照)の下側にある「編集」ボタンがクリックされると行動則改善画面460に遷移する。
図31では、行動則の#1の最後を「長く弱く押す」(
図30参照)から「長く普通に押す」(
図31では下線を付与)に変更(改善)している。行動則改善部115は、このような操作者の指示を受け付けて行動則を改善(変更)する。
操作者は行動則の改善を終えると、行動則改善画面460の下側にある「完了」ボタンをクリックする。行動則改善部115は改善された行動則を行動則データベース151に格納する。行動則改善部115は、このような操作者による知識表現化された行動則の変更指示を受け付けて行動則を改善(変更)する。
【0070】
行動則逆変換部116は、知識表現化され変更された行動則を数値範囲で表現される行動則に逆変換する。例えば、大/中/小など範囲を含む表現については、定義済みである言葉の意味(数値範囲)を参照することで数値に逆変換される。また、操作の時間については、行動則にある時間の値や操作量にある長/短や、定義済みである言葉の意味(数値範囲)を参照することで数値に逆変換される。
【0071】
図32は、第2の実施形態に係る行動則改善処理のフローチャートである。
ステップS51において行動則改善部115は、iをNとする。
ステップS52において行動則改善部115は、レベルiの行動則を表示する行動則改善画面460を表示して行動則の改善(変更)を受け付ける。
ステップS53において行動則逆変換部116は、レベルiの行動則をレベルi-1の行動則に逆変換する。
【0072】
ステップS54において行動則改善部115は、iが1以下ならば(ステップS54→YES)行動則改善処理を終え、iが1超ならば(ステップS54→NO)ステップS55に進む。
ステップS55において行動則改善部115は、iを1減じて、ステップS53に戻る。
【0073】
≪第2の実施形態の特徴≫
動作改善支援装置100は行動則を操作者が理解しやすいように言語化し知識として表現する(知識表現化する)。知識表現化には複数のレベルがあり、操作者が理解レベルまで上位知識表現化される。対象システムの操作者は、知識表現化された行動則を理解することが可能となり、対象システムの動作を改善することが可能となる。
【0074】
≪変形例:数値範囲を含む行動則≫
行動則生成部112は、行動データベース160のレコードをグループに分け、各グループに含まれるレコードの遷移元状態162、遷移後状態163、および操作量164の平均値または中間値を算出して、行動則210を生成している。平均値または中間値の替わりに、各グループに含まれるレコードの遷移元状態162、遷移後状態163、および操作量164の数値を含む数値範囲としてもよい。また全ての数値ではなく、数値の一部、例えば平均±標準偏差×2などの一部の数値を含む範囲であってもよい。
行動則210に含まれる状態や操作量が数値範囲を含む場合、知識表現化部114は、当該数値範囲を含む変換ルール310,320,330にある数値範囲の番号や言語に変換する。
【0075】
≪その他変形例≫
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。例えば、複数レベルの知識表現を含む場合に、複数の数値範囲や数値の組の範囲を1つの数値範囲や数値の組の範囲に併合して操作や状態の粒度を大きくする変換ルールを含んでもよい。なお数値の組の範囲とは、複数の数値が示す多次元空間での領域のことである。
【0076】
本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
100 動作改善支援装置
111 データ収集部
112 行動則生成部
113 変換ルール定義部
114 知識表現化部
115 行動則改善部
116 行動則逆変換部
210,210A,710 行動則
220,230,240,720,730,740 行動則(知識表現化された行動則)
250 行動則(改善行動則)
310,320,330,810 変換ルール
820,830 変換ルール(知識表現化された変換ルール)
900 対象システム