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  • 特開-針状ころ軸受 図1
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  • 特開-針状ころ軸受 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144638
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】針状ころ軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/46 20060101AFI20220926BHJP
   F16C 19/46 20060101ALI20220926BHJP
   F16C 33/62 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
F16C33/46
F16C19/46
F16C33/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045726
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】木村 友謹
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA14
3J701AA24
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA21
3J701BA34
3J701BA44
3J701BA49
3J701BA53
3J701BA70
3J701DA09
3J701EA02
3J701EA31
3J701FA46
3J701GA01
3J701GA32
3J701XB03
3J701XB50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】組み立て時の針状ころのばらけを防止すると共に、総ころと同等のころ充填率を得ることができ、運転中のころスキュー時に、針状ころと保持治具とが干渉しない構造にする。
【解決手段】複数の針状ころ2と、針状ころ2の脱落を防止するための保持治具3とを備え、保持治具3は、軸方向両側に配置された一対のリム部と、一対のリム部の径方向外側部同士を、周方向に所定間隔で連結する複数の柱部3bとを有し、一対のリム部と柱部3bとによって針状ころ2を保持するポケットを形成した針状ころ軸受において、柱部3bの内径面を、針状ころ2のピッチ円径よりも外径側に位置させ、針状ころ2のピッチ円径上における針状ころ2間のころ間隙間rsを、柱部3bと針状ころ2との接点位置におけるポケット隙間csよりも狭くしたことを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の針状ころと、前記針状ころを脱落させないための保持治具とを備え、前記保持治具は、軸方向両側に配置された一対のリム部と、前記一対のリム部の径方向外側部同士を、周方向に所定間隔で連結する複数の柱部とを有し、前記一対のリム部と前記複数の柱部とによって針状ころを保持するポケットを形成した針状ころ軸受において、前記柱部の内径面が、前記針状ころのピッチ円径よりも外径側に位置し、前記針状ころのピッチ円径上における針状ころ間のころ隙間rsが、前記柱部と針状ころとの接点位置における柱部と針状ころ間に形成されるポケット隙間csよりも狭いことを特徴とする針状ころ軸受。
【請求項2】
ころ充填率が80~100%以下である請求項1記載の針状ころ軸受。
【請求項3】
前記柱部の幅が、内径側から外径側に向かって広くなっていることを特徴とする請求項1または2記載の針状ころ軸受。
【請求項4】
前記針状ころの内径側に、樹脂スリーブを嵌めていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の針状ころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、保持器付き針状ころと同様に、組み立て時の針状ころのばらけを防止すると共に、総ころと同等のころ充填率を得ることができる針状ころの保持治具付きの針状ころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
針状ころ軸受は、軸受断面積が小さく、一般軸受に比べ小さいスペースで大きな負荷容量があるため、軸受のみならず、軸受箱その他も小型化することができ、機械の軽量化、コンパクト化につながり、コストダウンにも役立つので、例えば、自動車機構部品、ロボット機構部品などで広く使用されている。
【0003】
保持器付きの針状ころ軸受では、針状ころの直径の総和が、針状ころのピッチ円径の円周長さに対する割合、すなわち、ころ充填率を増加させることによって、高負荷容量化しようとした場合、針状ころ間に配置される保持器の柱部が制約になる。
【0004】
従来、保持器付きの針状ころ軸受において、保持器の柱部を、針状ころのピッチ円径(PCD)よりも外径側に設けて柱幅を薄くし、ころ充填率を増加させるということが特許文献1や特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-46792号公報
【特許文献2】特許第6613576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の針状ころ軸受においても、運転時に生じる針状ころのスキューに対する柱部の強度を犠牲にしてまで、ころ充填率を総ころ形式と同等まで増やすことができなかった。
【0007】
一方、保持器のない総ころ形式の針状ころ軸受の場合、高負荷容量であっても、組立て時に針状ころがばらけてしまうため、組立て性に問題を抱えている。
【0008】
そこで、この発明は、針状ころ軸受において、総ころにすることによりころ充填率を上げると共に、組み立て時に針状ころがばらけてしまうのを防止するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、この発明は、複数の針状ころと、前記針状ころを脱落させないための保持治具とを備え、前記保持治具は、軸方向両側に配置された一対のリム部と、前記一対のリム部の径方向外側部同士を、周方向に所定間隔で連結する複数の柱部とを有し、前記一対のリム部と前記複数の柱部とによって針状ころを保持するポケットを形成した針状ころ軸受において、前記柱部の内径面が、前記針状ころのピッチ円径よりも外径側に位置し、前記針状ころのピッチ円径上における針状ころ間のころ間隙間rsが、前記柱部と針状ころとの接点位置における柱部と針状ころ間に形成されるポケット隙間csよりも狭いことを特徴とする。
【0010】
前記針状ころの直径の総和が、針状ころのピッチ円径の円周長さに対する割合、すなわち、ころ充填率を80~100%以下、好ましくは93~100%以下にすることにより、総ころと同程度の高負荷容量を得ることができる。
【0011】
前記柱部の幅を、内径側から外径側に向かって広くすることにより、柱部の強度を向上させることができる。
【0012】
前記針状ころの内径側に、樹脂スリーブを嵌めることにより、機器に組込む際における内径側への針状ころのばらけを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、この発明に係る針状ころ軸受は、柱部の内径面を、針状ころのピッチ円径よりも外径側に位置させ、針状ころのピッチ円径上における針状ころ間のころ間隙間rsを、柱部と針状ころとの接点位置における柱部と針状ころ間に形成されるポケット隙間csよりも狭くしているので、運転中に針状ころがスキューしたとしても、針状ころと柱部とが接触する前に、隣り合う針状ころ同士が接触する。
【0014】
このため、柱部への負荷が小さく、柱部の幅を細くして、ピッチ円径上に総ころ状態まで針状ころを配列することが可能となり、例えば、ころ充填率を80~100%以下、好ましくは93~100%以下まで増加させることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の実施形態に係る針状ころ軸受の斜視図である。
図2図1の針状ころ軸受の側面図である。
図3図1の針状ころ軸受を軸心に対して直交する面で切断した断面図である。
図4】この発明の実施形態に係る針状ころ軸受の柱部と針状ころとの関係を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
この発明に係る針状ころ軸受1は、図1図3に示すように、複数の針状ころ2と、針状ころ2を脱落させないための保持治具3とを備え、周方向に配列された針状ころ2の内径側に、組立ての際に、針状ころ2のばらけを防止する樹脂スリーブ4を嵌めている。
【0018】
樹脂スリーブ4には、針状ころ2の内径側への嵌め入れを容易にするために、周方向の数カ所に切り目4aを設けている。
【0019】
前記保持治具3は、軸方向両側に配置された一対のリム部3aと、前記一対のリム部3aの径方向外側部同士を、周方向に所定間隔で連結する複数の柱部3bとを有し、前記一対のリム部3aと前記複数の柱部3bとによって針状ころ2を保持する複数のポケットを形成している。
【0020】
前記柱部3bの内径面は、周方向に配列された針状ころ2のピッチ円径(PCD)よりも外径側に位置している。
【0021】
この発明では、図4に示すように、ピッチ円径上における針状ころ2間に形成される、ころ間隙間rsを、柱部3bと針状ころ2との接点位置における柱部と針状ころ間に形成されるポケット隙間csよりも狭く、すなわち、rs<csに設定している。
【0022】
ころ間隙間rsとは、ピッチ円径上に均等に針状ころ2を配列した際における隣り合う針状ころ2同士の間に形成される隙間であり、ピッチ円径の円周長さから針状ころ2の直径Dの総和の長さを引いた値を、針状ころ2の総数で割って求めることができる。
【0023】
また、ポケット隙間csとは、針状ころ2と柱部3bとの接点位置における柱部3bの接点から針状ころ2の接点までの距離であり、ピッチ円径上に針状ころ2を均等に配列した状態において、針状ころ2と柱部3bとの接点位置における柱間距離Bから、針状ころ2と柱部3bとの接点位置における針状ころ2の径Aを引いた長さの1/2で求めることができる。
【0024】
前記のように、ころ間隙間rsをポケット隙間csよりも狭く設定すると、運転中に針状ころ2がスキューしたとしても、針状ころ2と柱部3bとが接触する前に、隣り合う針状ころ2同士が接触するので、柱部3bへの負荷を小さくすることができる。したがって、柱部3bの柱幅を細くして、ピッチ円径上に総ころ状態まで針状ころ2を配列することが可能となり、例えば、ころ充填率を80~100%以下、好ましくは93~100%以下まで増加させることも可能になる。
【0025】
ここで、ころ充填率とは、ピッチ円径上に配列された針状ころ2の直径Dの総和と、針状ころのピッチ円径の円周長さとの比率であり、ピッチ円径上に針状ころ2を隙間なく配列した状態で、ころ充填率が100%になる。
【0026】
この発明では、前記柱部3bの内径面を、ピッチ円径よりも外径側に設けられているので、保持治具3が外径案内となり、保持治具3の強度と剛性を高く維持することができる。
【0027】
また、図3および図4に示すように、柱部3bは、両側面の形状が内径側から外径側に向かって傾斜するテーパ形状、すなわち、柱部3bの内径側の幅よりも外径側の幅を広くすることにより、柱部3bの断面積を稼ぎ、柱部3bの強度を確保している。
【0028】
保持治具3は、樹脂製または鋼板製である。保持治具3の柱部3bは、側面をフライス加工によってテーパ形状にしても良いが、コスト面を考えると、プレス加工した後、後加工で面押しによってテーパ形状にするようにしても良い。
【0029】
以上のように、この発明の針状ころ軸受1は、保持治具3付きであっても、ころ充填率を80~100%以下、好ましくは93~100%以下まで増加させることが可能であるので、多列配列される用途や高精度回転が要求される用途に適したものになる。
【0030】
この発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内の全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0031】
1 :軸受
2 :針状ころ
3 :保持治具
3a :リム部
3b :柱部
4 :樹脂スリーブ
cs :ポケット隙間
rs :ころ間隙間
図1
図2
図3
図4